(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解によってアルカリイオン水を生成する電解水生成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。近年、上記アルカリイオン水は、電気分解に伴って生成された水素が溶け込むことから水素水とも称されている。
【0003】
上記特許文献1に開示されている電解水生成装置は、ユーザーの要求に応じて水を電気分解し、生成された水素水を供給する構成である。このため、溶存水素濃度の安定した水素水が提供されるまで待機することが必要な場合がある。従って、上記待機の時間を短くすることが検討されている。
【0004】
そこで、電解槽で生成された電解水をタンクに貯え、随時提供可能とした水素水サーバーが本願発明者らによって検討されている。この水素水サーバーでは、タンク内の水素水が消費されると、電気分解前の原水がタンクに補充される。そして、タンク内の水が流入する電解手段には電気分解のための電解電流が供給され、水素水が生成される。電解槽及びタンク間で電解水を循環させながら、電気分解を継続することにより、タンク内の水の溶存水素濃度が高められる。
【0005】
電解槽は、隔膜によって第1給電体が配された第1極室と第2給電体が配された第2極室とに区切られている。このうち、電気分解に伴って一方の極室では水素が生成され、他方の極室(以下、第2極室と記す)では酸素が生成される。第2極室で生成される酸素は、タンク内の水の溶存水素濃度の上昇を妨げるおそれがあるため、電解水の循環経路から速やかに排出されるのが望ましい。そこで、発明者らは、第2極室に排気路を接続し、その先端部に酸素を排出するためのガス抜き弁を設けることを検討している。
【0006】
図8は、上記タンク、電解槽、排気路及びガス抜き弁を備えた水素水サーバーの要部を示している。この水素水サーバー500では、排気路12eは、第2極室40Bから上方にのび、電気分解によって生じた気体を第2極室40Bから排出する。ガス抜き弁24は、排気路12e内の水から気体のみを分離して排出する。さらに、水素水サーバー500は、排気路12eとタンク3とを接続し、排気路12e内の水をタンク3へと導く帰還水路12fを備え、タンク3と第2極室40Bとの間で水が循環するように構成されている。
【0007】
図9は、ガス抜き弁24を示している。ガス抜き弁24は、その構造上、本体24aが接続される排気路12eの水圧を大気圧以上に維持することにより、弁体24bと排気口24cとの気密性が保たれている。電解槽4及びタンク3を含む循環経路12に水が流れると、電解槽4よりも流路断面積(水が流れる方向に垂直な断面積)の小さい排気路12e及び帰還水路12fでは、ベンチュリー効果が生じて水の流速が高まることにより、水圧が低下する。排気路12eの水圧が大気圧未満に低下した場合、矢印A2で示されるように、ガス抜き弁24の外部から空気が吸い込まれ循環経路12に流入する。この循環経路12に流入した空気の一部がタンク3内の水に溶け込むと、上記水の溶存水素濃度の上昇が妨げられるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の電解水サーバーの一実施形態である水素水サーバー1の一例の概略構成を示している。水素水サーバー1は、水素が溶け込んだ水素水を随時提供可能に貯える装置である。水素水サーバー1によって提供された水素水は、飲用又は料理用等の水として用いることができる。
【0018】
水素水サーバー1は、浄水フィルター2と、タンク3と、電解槽4とを備えている。
【0019】
浄水フィルター2は、タンク3に供給される水を浄化する。浄水フィルター2は、水素水サーバー1の本体部に対して着脱により交換可能に構成されている。浄水フィルター2は、タンク3の上流側の入水路11に設けられている。入水路11には、原水が供給される。原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、井戸水、地下水等を用いることができる。入水路11は、入水弁21を有する。入水弁21は、水素水サーバー1への通水量を制御する。
【0020】
本実施形態の浄水フィルター2は、プレフィルター2A、カーボン(活性炭)フィルター2B及び中空糸膜フィルター2Cを含む。プレフィルター2Aは、最も上流側に配され、例えば、原水に含まれる0.5μm以上の物質を除去する。カーボンフィルター2Bは、プレフィルター2Aの下流側に配され、プレフィルター2Aを通過した物質を吸着によって除去する。中空糸膜フィルター2Cは、カーボンフィルター2Bの下流側に配され、プレフィルター2A及びカーボンフィルター2Bを通過した例えば0.1μm以上の物質を除去する。
【0021】
タンク3は、浄水フィルター2を通過した水を貯える。入水弁21の開閉を適宜制御することにより、タンク3の貯水量が適正化される。
【0022】
タンク3と電解槽4との間には、循環経路12が設けられている。循環経路12は、タンク3と電解槽4との間で水を循環させるための流路である。タンク3に貯えられた水は、循環経路12を介して電解槽4に供給され、電気分解された後、循環経路12を介してタンク3に戻る。これにより、タンク3内の水の溶存水素濃度が高められる。
【0023】
電解槽4は、電解手段として機能する。電解槽4は、タンク3から供給された水を電気分解することにより水素水を生成する。電解槽4は、電解室40と、第1給電体41と、第2給電体42と、隔膜43とを有している。電解室40は、隔膜43によって、第1給電体41側の第1極室40Aと、第2給電体42側の第2極室40Bとに区切られる。
【0024】
第1給電体41及び第2給電体42には、例えば、チタニウム等からなるエクスパンドメタル等の網状金属の表面に白金のめっき層が形成されたものが適用されている。このような網状の第1給電体41及び第2給電体42は、隔膜43を挟持しながら、隔膜43の表面に水を行き渡らせることができ、電解室40内での電気分解を促進する。
【0025】
第1給電体41及び第2給電体42の一方は陽極給電体として適用され、他方は陰極給電体として適用される。電解室40の第1極室40A及び第2極室40Bの両方に水が供給され、第1給電体41及び第2給電体42に直流電圧が印加されることにより、電解室40内で水の電気分解が生ずる。
【0026】
隔膜43には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜等が適宜用いられている。隔膜43の両面には、白金からなるめっき層が形成されている。隔膜43のめっき層と第1給電体41及び第2給電体42とは、当接し、電気的に接続される。隔膜43は、電気分解で生じたイオンを通過させる。隔膜43を介して第1給電体41と第2給電体42とが電気的に接続される。
【0027】
電解室40内で水が電気分解されることにより、水素ガス及び酸素ガスが発生する。例えば、第1給電体41が陰極給電体として適用される場合、第1極室40Aでは、水素ガスが発生し、水素ガスが溶け込んだ水素水が生成される。このような電気分解を伴って生成された水素水は、「電解水素水」と称される。一方、第2極室40Bでは、酸素ガスが発生し、酸素ガスが溶け込んだ「電解酸素水」が生成される。第1給電体41が陽極給電体として適用される場合、第1極室40Aでは、酸素ガスが発生し、酸素ガスが溶け込んだ電解酸素水が生成される。一方、第2極室40Bでは、水素ガスが発生し、水素ガスが溶け込んだ電解水素水が生成される。
【0028】
循環経路12は、電解槽4の上流側に配された水路12a、12b及び12cと、電解槽4の下流側に配された水路12d、排気路12e及び帰還水路12fとを含む。水路12aは、上流の一端側でタンク3に接続され、下流の他端側で水路12b及び12cに分岐する。水路12aには、ポンプ22が設けられている。ポンプ22は、循環経路12内の水を駆動して、循環経路12内を循環させる。
【0029】
水路12bは、下流側で第1極室40Aに接続され、水路12cは、下流側で第2極室40Bに接続されている。水路12a、12bによって第1給水路が構成される。第1給水路は、タンク3と第1極室40Aとを接続し、第1極室40Aに電気分解される水を供給する。同様に、水路12a、12cによって第2給水路が構成される。第2給水路は、タンク3と第2極室40Bとを接続し、第2極室40Bに電気分解される水を供給する。
【0030】
水路12bには流量センサー27Aが、水路12cには流量センサー27Bがそれぞれ設けられている。流量センサー27Aは、第1極室40Aに流れ込む水の流量を検出する。流量センサー27Bは、第2極室40Bに流れ込む水の流量を検出する。
【0031】
水路12dは、上流の一端側で第1極室40Aに接続され、下流の他端側でタンク3に接続されている。第1給電体41が陰極給電体として適用される場合、タンク3、水路12a、12b、第1極室40A及び水路12dによって、陰極側の循環経路12が構成される。
【0032】
排気路12eは、第2極室40Bから上方にのびている。排気路12eは、第2極室40B内で電気分解によって生じた気体を第2極室40Bから排出する。本実施形態では、排気路12eは、第2極室40Bの上端に接続されている。これにより、第2極室40Bで生成された気体が、効率よく排出される。排気路12eの先端部には、ガス抜き弁24が設けられている。ガス抜き弁24は、排気路12e内の流体から気体のみを分離して排出する。第2給電体42が陽極給電体として適用される場合、ガス抜き弁24は、排気路12e内の電解水から酸素ガスのみを分離して排出する。
【0033】
帰還水路12fは、排気路12eとタンク3とを接続し、排気路12e内の電解水をタンク3へと導く。帰還水路12fは、第2極室40Bとガス抜き弁24との間で排気路12eに接続されている。第1給電体41が陰極給電体として適用される場合、タンク3、水路12a、12c、第2極室40B、排気路12e及び帰還水路12fによって、陽極側の循環経路12が構成される。
【0034】
水素水サーバー1は、第1極室40Aに接続された吐水路13を備える。吐水路13は、第1極室40Aで生成された電解水を吐出するための流路である。本実施形態の吐水路13は、水路12dを介して第1極室40Aに接続されている。これにより、水素水サーバー1の構成が簡素化される。なお、吐水路13は、第1極室40Aに直接的に接続されていてもよい。
【0035】
水路12dには、流路切替弁23が配されている。流路切替弁23には、いわゆる三方弁が適用されうる。流路切替弁23は、水素水サーバー1の運転モードに応じて後述する制御手段6(
図2参照)によって制御され、流路切替弁23よりも下流側の流路の一部又は全部を水路12d又は吐水路13に切り替える。すなわち、電解水素水を生成するモードでは、流路切替弁23よりも下流側の流路の全部がタンク3側の水路12dとされる。そして、電解水素水を吐出するモードでは、流路切替弁23よりも下流側の流路の一部又は全部が吐水路13へと切り替えられる。これにより、簡素な構成で流路の切替が実現可能となる。
【0036】
吐水路13の先端側には、吐水口13aが設けられている。吐水口13aの下方には、カップ100等を載置可能な空間が形成され、カップ100からこぼれた水を収集するための受け皿部13bが設けられている。
【0037】
本実施形態の水素水サーバー1は、循環経路12を循環する水素水を電解槽4で電気分解することにより、水素水の溶存水素濃度を高めつつタンク3に貯える。こうして生成された水素水は、吐水路13を介してユーザーに提供されうる。従って、ユーザーの要求に応じて、高い溶存水素濃度の水素水を随時提供することが可能となる。
【0038】
図2は、水素水サーバー1の電気的構成を示している。水素水サーバー1は、ユーザーによって操作される操作部5と、入水弁21、第1給電体41、第2給電体42等の各部の制御を司る制御手段6と、第1給電体41及び第2給電体42に電解電流を供給する電流供給手段61とを備えている。電流供給手段61は、制御手段6に統合されていてもよい。
【0039】
操作部5は、ユーザーによって操作されるスイッチ又は静電容量を検出するタッチパネル等(図示せず)を有する。ユーザーは、操作部5を操作することにより、例えば、後述する水素水サーバー1の運転モードを設定することができる。ユーザーによって操作部5が操作されると、操作部5は対応する電気信号を制御手段6に出力する。
【0040】
制御手段6は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等を有している。第1給電体41と電流供給手段61との間の電流供給ラインには、電流検出手段44が設けられている。電流検出手段44は、第2給電体42と電流供給手段61との間の電流供給ラインに設けられていてもよい。電流検出手段44は、第1給電体41、第2給電体42に供給する電解電流Iを検出し、その値に相当する電気信号を制御手段6に出力する。
【0041】
制御手段6は、例えば、電流検出手段44から出力された電気信号に基づいて、電流供給手段61が第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御手段6は、予め設定された溶存水素濃度に応じて、電流検出手段44によって検出される電解電流Iが所望の値となるように、電流供給手段61が第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流Iが過大である場合、制御手段6は、上記電圧を減少させ、電解電流Iが過小である場合、制御手段6は、上記電圧を増加させる。これにより、電流供給手段61が第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流Iが適切に制御される。
【0042】
制御手段6は、第1給電体41及び第2給電体42の極性を制御するように構成されていてもよい。第1給電体41及び第2給電体42の極性を相互に変更することにより、電解水素水又は電解酸素水のうち所望の電解水が吐水路13から吐水されうる。以下、特に断りのない限り、第1給電体41が陰極給電体として適用される場合について説明するが、第1給電体41が陽極給電体として適用される場合についても同様である。
【0043】
制御手段6は、水量センサー31から出力された電気信号に基づいて、入水弁21の開閉を制御する。入水弁21は、浄水フィルター2の上流に配され、浄水フィルター2及びタンク3に電気分解前の原水を供給する原水供給手段として機能する。
図1に示されるように、本実施形態の水量センサー31は、タンク3に設けられている。水量センサー31は、タンク3内の貯水量に対応する電気信号を制御手段6に出力する。
【0044】
制御手段6は、水量センサー31から入力される電気信号に応じて、入水弁21を制御する。例えば、タンク3に貯えられた水素水が消費され、タンク3内の水位が低下すると、制御手段6は、水量センサー31から出力された電気信号に基づいて、入水弁21を開放し、入水路11からタンク3に水が補充される。これにより、タンク3に水が適宜補充され、貯水量が適切に維持される。
【0045】
水素水の循環にあたって、制御手段6は、ポンプ22の駆動電圧を制御する。このとき、制御手段6は、流量センサー27A及び27Bによって検出された流量を監視しながら、ポンプ22の駆動電圧を制御する。これにより、タンク3に貯えられた水素水が、タンク3と電解槽4との間の循環経路12を循環し、第1極室40A及び第2極室40Bに電解水が満たされる。さらに制御手段6は、第1給電体41及び第2給電体42に電解電圧を印加する。これにより、電解槽4に供給された電解水がさらに電気分解され、タンク3内に貯えられた水素水の溶存水素濃度が高く維持されうる。
【0046】
図3は、水素水サーバー1の要部を示している。本発明では、ガス抜き弁24は、タンク3内の水面h1よりも下方に配されている。これにより、ガス抜き弁24には、タンク3内の水の圧力がかけられる。
【0047】
図4は、ガス抜き弁24の構成を示している。本実施形態のガス抜き弁24は、本体24aと、本体24aに収容される球状の弁体24bと、本体24aの上部に配された上端が開口された排気口24cとを有している。同図では、本体24aに水が満たされた状態のガス抜き弁24が示されている。弁体24bは、排気路12e及び帰還水路12f内の水よりも比重の小さい材料によって形成されている。ガス抜き弁24に水圧がかかり、本体24aに電解水が満たされている状態では、弁体24bに浮力が生じ、弁体24bは上方に移動し、排気口24cを閉じる。これにより、排気口24cからの電解水の流出が防止されると共に、ガス抜き弁24の外部から弁体24bへの空気の流入が抑制される。
【0048】
図5は、ガス抜き弁24で、本体24a内の気体が排出される様子を示している。電解槽4での電気分解の進行に伴い、第2極室40Bで生成された酸素ガスOが排気路12eを介して本体24a内に侵入すると、本体24a内の水位が低下し、弁体24bは下降する。これに伴い、排気口24cが開放され、矢印A1で示されるように、本体24a内の酸素ガスOが排出され、
図4に示す密封状態に復帰する。
【0049】
排気路12e及び帰還水路12fの流路断面積は、第2極室40Bの流路断面積よりも小さい。従って、第2極室40B、排気路12e及び帰還水路12fを含む循環経路12に水が流れると、排気路12e及び帰還水路12fでは、ベンチュリー効果が生じ、水圧が低下する傾向となる。
【0050】
しかしながら、本発明では、
図1及び3に示されるように、ガス抜き弁24がタンク3内の水面h1よりも下方に配されているので、ガス抜き弁24の本体24a及び弁体24bには、タンク3内の水の圧力がかけられる。従って、排気路12e及び帰還水路12fの水圧が大気圧未満に低下することが抑制され、ガス抜き弁24の密封状態が維持される。これにより、ガス抜き弁24の外部から空気が吸い込まれて循環経路12に流入することが抑制され、タンク3内での水の溶存水素濃度の上昇が妨げられない。しかも、本発明によれば、逆止弁を必要とすることなく、排気路12eへの空気の流入が抑制されるため、水素水サーバー1の小型化及びコストダウンを図ることが可能となる。
【0051】
図3に示されるように、ガス抜き弁24の下端は、タンク3の内壁面35よりも下方に配されているのが望ましい。このような形態では、ガス抜き弁24にかかる水圧を容易に高めることができる。また、タンク3内の水が完全に消費される場合を除き、タンク3の内壁面35の上方に残留している水の水圧がガス抜き弁24にかかり、ガス抜き弁24の密封状態が維持される。
【0052】
図1及び3に示されるように、水素水サーバー1では、第2極室40Bに沿って並行水路14が設けられていてもよい。並行水路14は、排気路12eと第2極室40Bの下端部とを連通させる。本実施形態では、並行水路14は、帰還水路12f及び水路12cと接続されている。すなわち、並行水路14は、帰還水路12fを介して排気路12eに接続され、水路12cを介して第2極室40Bに接続されている。並行水路14は、排気路12e及び第2極室40Bに直接的に接続されていてもよい。
【0053】
第2極室40Bで電気分解によって生成された酸素ガスOは、排気路12eを介して第2極室40Bから排出される。このとき、排気路12eと第2極室40Bの下端部とを連通させる並行水路14に充填された水の圧力によって、第2極室40B内の酸素ガスOが上方に押し上げられ、排気路12eに移動する。これにより、電気分解中の第2極室40Bに水を供給することなく(すなわち、第2極室40Bに水流を生じさせることなく)、第2極室40Bで生じた酸素ガスOが第2極室40Bから排出される。従って、第2給電体42の表面に十分な水が供給され、電解室40内での電気分解が効率よく実行される。これにより、水の利用効率が極限まで高められると共に、第1極室40Aで生成される電解水素水の溶存水素濃度が容易に高められる。
【0054】
水路12cには、水路12cから第2極室40Bへの給水を制御する給水制御弁25が設けられていてもよい。給水制御弁25には、例えば、電磁力を原動力として開閉動作する電磁弁が適用されうる。給水制御弁25の動作は、制御手段6によって制御される。例えば、電解槽4にて電気分解を行なっているとき、給水制御弁25は閉じられている。これにより、第2極室40Bへの給水が停止され、水の利用効率が極限まで高められる。この場合にあっても、第2極室40Bで発生した酸素ガスが上述した並行水路14の水圧によって排出されるので、第1極室40Aで生成される電解水素水の溶存水素濃度は高められる。
【0055】
給水制御弁25は、並行水路14が水路12cに連通する箇所よりも下方に設けられている。これにより、電気分解に伴う第2極室40B内の水の消費に応じて、並行水路14から第2極室40Bに水が補充される。
【0056】
なお、制御手段6は、電解槽4での電気分解を停止した後、給水制御弁25を開く。これにより、水路12cから第2極室40Bへの給水が再開され、排気路12e内の水面h2が元の高さに復帰する。
【0057】
排気路12eには、排気路12e内の水位を検出するための水位検出手段28が設けられていてもよい。水位検出手段28は、第2極室40B内の水が酸素に分解され消費されることによる排気路12e内の水位の低下を検出し、制御手段6にその旨の電気信号を出力する。排気路12e内の水位と並行水路14内の水位とは同等であるので、水位検出手段28は、並行水路14に設けられていてもよい。この場合、水位検出手段28は、並行水路14内の水位を検出する。
【0058】
制御手段6は、水位検出手段28から出力された電気信号に基づいて、電解槽4の動作を制御する。例えば、排気路12e内の水位が、水位検出手段28の検出領域よりも低下した場合、制御手段6は、第1給電体41及び第2給電体42への電解電流Iの供給を停止する。これにより、電解室40での電気分解が停止され、排気路12e内の水位のさらなる低下が抑制され、隔膜43の損傷が抑制されうる。
【0059】
水素水の循環にあたって、制御手段6は、ポンプ22の駆動電圧を制御する。このとき、制御手段6は、流量センサー27Aによって検出された流量を監視しながら、ポンプ22の駆動電圧を制御する。これにより、タンク3に貯えられた水素水が、タンク3と第1極室40Aとの間の循環経路12を循環する。さらに制御手段6は、第1給電体41及び第2給電体42に電解電圧を印加する。これにより、電解室40に供給された電解水がさらに電気分解され、タンク3内に貯えられた水素水の溶存水素濃度が高く維持されうる。
【0060】
何らかの事情により、流量センサー27A及び27Bによって検出された流量が十分な値に満たない場合は、制御手段6は、第1給電体41及び第2給電体42への電解電圧の印加を停止する。これにより、電解室40に電解水が十分に供給されていない状態での電解電圧の印加が防止されうる。
【0061】
タンク3に貯えられた水素水が消費されると、水量センサー31から出力された電気信号に基づいて、制御手段6は、入水弁21を開放し、入水路11からタンク3に水が補充される。このとき、タンク3に貯えられた水素水の溶存水素濃度が低下するため、制御手段6は、タンク3と第1極室40Aとの間の循環経路12でタンク3に貯えられた水素水を再び循環させながら、電解室40で電気分解し、溶存水素濃度を高める。
【0062】
図1に示されるように、タンク3には、冷却装置7が接続されている。冷却装置7は、冷媒を冷却してタンク3の外壁に供給することにより、タンク3を冷却する。冷却装置7の動作は、制御手段6によって制御される。これにより、冷却装置7によってタンク3に貯えられた水素水が所望の温度に冷却される。従って、ユーザーの要求に応じて、冷却された水素水を随時提供することが可能となり、水素水サーバー1の商品価値が高められる。
【0063】
本実施形態では、制御手段6による管理の下で、タンク3に貯えられた水素水は、定期的に入れ替えられる。水素水の入れ替えにあたっては、まず、タンク3に貯えられた水素水が排出され、その後、入水路11から新たな水がタンク3に供給される。
【0064】
タンク3には、水素水を排出するための排水路17が接続されている。本実施形態では、水路12aの一部を介してタンク3と排水路17とが接続されている。タンク3と排水路17とが直接的に接続される構成であってもよい。
【0065】
排水路17には、排水弁26が設けられている。排水弁26は、制御手段6によって制御され開閉動作する。排水弁26が開かれると、タンク3に貯えられた水素水が排水口17aから排出される。
【0066】
上記受け皿部13bは、水路13cを介して排水路17に接続されている。受け皿部13bによって収集された水は、水路13cを経由して排水路17から排出される。
【0067】
図1に示されるように、タンク3には、水を加熱するためのヒーター(加熱手段)8が設けられている。ヒーター8は、ジュール熱によって発熱し、タンク3に貯えられた水を加熱する。また、循環経路12のタンク3とポンプ22との間には、ヒーター(加熱手段)8Aが設けられている。ヒーター8Aは、循環経路12を構成する管の一部に設けられている。ヒーター8Aは、ジュール熱によって発熱し、循環経路12内の水を加熱する。ヒーター8及び8Aは、制御手段6によって制御される。ヒーター8又は8Aのうち、いずれか一方のみが加熱手段として適用されていてもよい。
【0068】
制御手段6は、ヒーター8及び8Aを制御して、タンク3に貯えられた水及び循環経路12内の水を加熱させる。これにより、タンク3内及び循環経路12内で熱水が生成され、タンク3及び循環経路12内が熱水によって殺菌され、細菌等の繁殖が抑制される。
【0069】
水素水サーバー1は、運転モードとして、電気分解によって水素水を生成し、タンク3に貯える「電解水生成モード」と、タンク3に貯えられた水素水を吐水する「吐水モード」とを有する。
【0070】
図3及び6は、「電解水生成モード」での水素水サーバー1の各部の動作及び水の流れを示している。
図3乃至6では、水の満たされている領域がハッチングで示されている(以下、
図7乃至9においても同様とする)。
【0071】
電解水生成モードでは、流路切替弁23のタンク3側の流路は開かれ、吐水路13側の流路は閉じられている。また、水路12cの給水制御弁25は、閉じられている。さらに、排水弁26は閉じられ、入水弁21はタンク3の貯水量に応じて適宜開閉される。
【0072】
図3に示される初期状態では、排気路12e内の水面h2の高さは、タンク3の水面h1の高さと同等である。ポンプ22が駆動され、第1給電体41及び第2給電体42に電解電圧が印加されると、第1極室40A及び第2極室40Bで電気分解が生じる。第1極室40Aで発生した水素ガスは、電解水に溶け込んだ状態でタンク3に回収され、タンク3内の水の溶存水素濃度が高められる。
【0073】
一方、第2極室40Bで発生した酸素ガスOは、気泡となって、排気路12e及びガス抜き弁24を介して排出される。既に述べたように、本実施形態では、並行水路14に充填された水の圧力によって、第2極室40B内の酸素ガスOが上方に押し上げられ、排気路12eに移動する。これにより、電気分解中の第2極室40Bに水を供給することなく、第2極室40Bで生じた酸素ガスOが第2極室40Bから排出される。従って、第2給電体42の表面に十分な水が供給され、電解室40内での電気分解が効率よく実行される。
【0074】
電解水生成モードでは、給水制御弁25が閉じられているので、第2極室40B内の水は、排気路12e及び帰還水路12fを介してタンク3に戻ることはない。従って、第2極室40B内の水の流入によって、タンク3内の水の溶存水素濃度の上昇が阻害されることがなく、電解水素水の溶存水素濃度を容易に高めることが可能となる。
【0075】
電解水生成モードでは、給水制御弁25が閉じられていることに伴い、第2極室40B内の水は消費され、排気路12e内及び並行水路14内の水位が徐々に低下する。
【0076】
そして、
図6に示されるように、排気路12e内で低下した水面h2が水位検出手段28によって検知されると、制御手段6は、ポンプ22を停止すると共に、第1給電体41及び第2給電体42への電解電圧の印加を停止する。これにより、電解室40での電気分解が停止される。そして、制御手段6は、給水制御弁25を開くことにより、水路12cから第2極室40B及び並行水路14に水が供給され、排気路12eの水位が
図3に示される初期状態に復帰する。給水制御弁25を開いて排気路12eの水位を初期状態に復帰させる際には、ポンプ22の駆動が併用されてもよい。この場合、より短時間で排気路12eの水位が初期状態に復帰する。また、第1給電体41及び第2給電体42への電解電圧の印加が継続されていてもよい。
【0077】
図7は、「吐水モード」での水素水サーバー1の各部の動作及び水の流れを示している。吐水モードでは、
図3、6に示される電解水生成モードの状態から、流路切替弁23によって、第1極室40Aを通過した電解水素水の流路が切り替えられる。すなわち、吐水モードでは、タンク3側の流路は閉じられ、吐水路13側の流路が開かれる。この状態でポンプ22が駆動することにより、第1極室40Aを通過した電解水素水は、吐水路13に流入し、吐水口13aから吐出される。このとき、制御手段6が、第1給電体41及び第2給電体42に電解電圧を印加するように、構成されていてよい。
【0078】
以上、本実施形態の水素水サーバー1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、電解水生成サーバーは、少なくとも、水を貯えるタンク3と、隔膜43によって第1給電体41が配された第1極室40Aと第2給電体42が配された第2極室40Bとに区切られ、タンク3から供給された水を電気分解することにより電解水を生成する電解槽4と、タンク3と第1極室40Aとを接続し、第1極室40Aに電気分解される水を供給する第1給水路と、タンク3と第2極室40Bとを接続し、第2極室40Bに電気分解される水を供給する第2給水路と、第1極室40A内の電解水を第1極室40Aから外部へ吐出する吐水路13と、第2極室40Bから上方にのび、電気分解によって生じた気体を第2極室40Bから排出する排気路12eと、排気路12eの先端部に設けられ、排気路12e内の流体から気体のみを分離して排出するガス抜き弁24と、第2極室40Bとガス抜き弁24との間で排気路12eに接続され、排気路12e内の水をタンク3へと導く帰還水路12fとを備え、ガス抜き弁24は、タンク3内の水面h1よりも下方に配されていればよい。