(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
手袋を裏返し、手袋の中指部分に47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンからなる群から選ばれる一種の薬液を10ml入れた状態で、該中指部分を純水30mlに浸漬し、室温で2時間放置後、純水中に溶出してきた該薬剤を、イオンクロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにより定量する方法により、測定される薬剤の透過量が下記のいずれか一以上:
フッ素イオン透過量:0.1g以下
メタノール透過量及びエタノール透過量:それぞれ0.3g以下
アセトン透過量:5.0g以下
N−メチルピロリドン透過量:0.15g以下
を満たす、請求項6又は7記載の手袋。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはない。
<カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー>
カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマー(以下、「XNBR」と記す。)は、23〜30重量%のアクリロニトリル残基、及び3〜8重量%の不飽和カルボン酸残基を含むものであり、広く、ゴムの主鎖を構成するアクリロニトリル及びブタジエン、少なくとも一種の不飽和カルボン酸、並びに、所望により他の共重合性モノマーを共重合させて得られる、カルボキシル基を含むエラストマーを包含する。カルボキシル基の一部は、誘導体化(例えばエステル、アミド等)されて、架橋構造を形成していてもよい。
このXNBRは、非硫黄架橋構造を有するので、硫黄架橋を必要とせず、したがって、手袋を形成した際に、硫黄成分に起因するアレルギー等の問題を引き起こすことがない。
【0011】
アクリロニトリル残基は、XNBR重量の23〜30重量%、又は23重量%以上30重量%未満、好ましくは25〜29重量%の量で含まれる。アクリロニトリル残基の量は、元素分析により求められる窒素原子の量からニトリル基の量を換算して、求めることができる。
本発明者らは、先に、30〜40重量%のアクリロニトリル残基及び3〜8重量%の不飽和カルボン酸残基を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーと、該エラストマーを用いた手袋の発明を完成させ、特願2012−191264号として特許出願を行った。この先の出願の実施形態に対し、本発明の実施形態ではXNBRのアクリロニトリル残基の量を減らしたことを特徴とし、これにより、0.15mm以上の厚みを有する厚手の手袋を、柔軟性を維持しつつ形成することができ、かつ、耐薬品性も確保することができる。
【0012】
すなわち、アクリロニトリル成分は、耐薬品性(耐溶剤性)を高める成分であるが、一方で、剛性を高める作用も有するため、XNBR中の量が前記上限値の30重量%を超えると、0.15mm以上の厚みを有する厚手の手袋を成形したときに、柔軟性が低下する傾向がみられる。アクリロニトリル残基量が23〜30重量%の範囲では、例えば、厚さ0.15mmで比較すると、アクリロニトリル含有量の高い、前記の先の出願のエラストマーより、100%モジュラス等の柔軟性に優れている。
一方、XNBR中のアクリロニトリル残基の量が前記下限値の23重量%未満では、好ましい実施形態である厚み0.15mm〜0.6mmの手袋を形成したときに、耐薬品性が不十分となる恐れがある。
【0013】
XNBRは、該XNBR重量の3〜8重量%、好ましくは4〜6重量%の不飽和カルボン酸残基を含む。不飽和カルボン酸残基の量が前記下限値の3重量%未満では、後述する二価イオンによる架橋形成が十分に得られない恐れがある。一方で、不飽和カルボン酸残基の量が前記上限値の8重量%を超えると、架橋形成が過多となって、最終製品であるゴム手袋の、引張強度、引張応力等の物性低下を導く恐れがある。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸(以下「(メタ)アクリル酸」という。)が好ましく使用され、より好ましくはメタクリル酸が使用される。
不飽和カルボン酸残基の量は、カルボキシル基、カルボキシル基由来のカルボニル基を、赤外分光(IR)等によって定量することによって求めることができる。
【0014】
XNBRの他の構成要素は、ブタジエン残基と架橋構造を含む。ブタジエン残基を構成するブタジエンとしては、1,3−ブタジエンが好ましい。
ブタジエン残基の量は、該ブタジエン残基、上記アクリロニトリル残基及び上記不飽和カルボン酸残基の合計量100重量%に対して、62〜74重量%であることが好ましく、さらに好ましくは66〜72重量%である。該ブタジエン残基の量が該範囲内において、様々な物性に優れた最終製品を得ることができる。
【0015】
XNBRは、ムーニー粘度(ML
(1+4)(100℃))が100〜220、好ましくは100〜190である。ムーニー粘度が100未満では粘性が低く、手袋の製品特性として十分な強度を得ることが難しくなる。一方、ムーニー粘度の前記上限値(220)は、ムーニー粘度計の実際上の測定限界であり、これを超えるムーニー粘度を有するXNBRは、粘性が高く成形加工が困難となる。
ムーニー粘度は、JIS K6300−1:2001 「未加硫ゴム−物理特性、第1部ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準拠して測定することができる。
【0016】
XNBRの架橋構造は、非硫黄架橋構造であり、これにより硫黄元素の含有量を、XNBR重量の1重量%以下に抑えることができる。硫黄元素の量は、XNBR燃焼ガス吸収液の中和滴定法により検出することができる。この定量方法は、XNBR試料0.01gを空気中、1350℃で10〜12分燃焼させて発生する燃焼ガスを、混合指示薬を加えたH
2O
2水に吸収させ、0.01NのNaOH水溶液で中和滴定する方法である。
【0017】
非硫黄架橋構造としては、特に限定されず、例えば、有機過酸化物、オキシム等による主鎖間の架橋;酸無水物等のカルボキシル基間の架橋;架橋剤、例えばポリエポキシド、ポリオール、ポリイミド、モノ及びポリカルボジイミド、ポリイソシアネート等を用いたカルボキシル基間の架橋;カルボキシル基と反応性の基、例えばグリシジル基等を有する構成単位を主鎖に導入し、該基とカルボキシル基との反応による架橋;等が挙げられる。
【0018】
非硫黄架橋構造は、自己架橋であることが好ましい。即ち、通常の保存状態では安定であるが、例えば、水を蒸発させ、もしくは加熱することによって、或いはpHの変化によって、別途架橋剤を加えずとも、形成される架橋である。このような自己架橋の例としては、カルボキシル基の自動酸化によるもの、メチロールアミド基としてN−メチロールアクリルアミド単位を導入し、それらを自己縮合させたもの、アセトアセトキシ基と不飽和結合とのマイケル反応等が挙げられる。
ポリオール、ポリイミド、N−メチロールアクリルアミド等に代表される自己架橋成分あるいは自己架橋剤は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
XNBRは、アクリロニトリル残基、不飽和カルボン酸残基、及びブタジエン残基以外に、必要に応じて、他の不飽和モノマー残基を含むことができる。
他の不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;及び酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、いずれか1種、又は複数種を組み合わせて、任意に用いることができる。
【0020】
XNBRは、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、1、3−ブタジエン等のブタジエン、及び、必要に応じて架橋構造等を形成するための他の不飽和モノマーを、定法に従い、乳化重合することによって調製することができる。乳化重合に際しては、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等を使用することができる。
【0021】
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル等のカチオン性界面活性剤;及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、アニオン性界面活性剤が使用される。
【0022】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0023】
分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素挙げられる。なかでも、メルカプタン類が好ましい。
さらに、必要に応じて、分散剤、pH調整剤等を用いることができる。
【0024】
次いで、乳化重合により得られたポリマーを、加熱し、もしくは水を蒸発させる等して、非硫黄架橋(自己架橋等)に付して、XNBRを得る。但し、この架橋工程は、後述する二価金属イオンによる架橋と同時に、もしくは、該イオン架橋の後の加熱工程で行ってもよい。
【0025】
<ポリ(アクリロニトリルブタジエン)エラストマー>
ポリ(アクリロニトリルブタジエン)エラストマー(以下、「NBR」という。)は、その20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%のアクリロニトリル残基を含み、残りがブタジエン残基のエラストマーである。アクリロニトリル残基の量が20重量%未満では、手袋の耐薬品性が低下する恐れがあり、50重量%を超えると、分子鎖が剛直となって柔軟性が損なわれる恐れがある。
【0026】
NBRの分子量は、スチレン換算の重量平均分子量で、7,000〜50,000であることが好ましく、9,000〜30,000であることがより好ましい。NBRが所定の分子量を有することにより、手袋表面への移行(ブリード)の問題が生じないが、該分子量が7,000未満では、NBRの手袋表面への移行が懸念され、50,000を超えると、手袋の柔軟性が不足する場合がある。
【0027】
<エマルジョン組成物>
エマルジョン組成物は、成分(1)として上記XNBR、及び成分(2)として上記NBRを含む、エマルジョン状の組成物である。
成分(1)と成分(2)の混合比は、成分(1)/成分(2)の重量比で70/30〜90/10であることが好ましく、70/30〜85/15であることがより好ましい。
成分(1)と成分(2)の合計100に対し成分(1)が70未満では、手袋の耐薬品性が不十分となり、成分(1)が90を超えると、手袋の十分な柔軟性を達成することが難しくなる恐れがある。この混合比は、実施例において詳述するように、還流下でのメチルエチルケトン抽出で成分(2)を抽出することによって、求めることができる。すなわち、成分(2)は低分子量であるため、メチルエチルケトンで抽出され(成分(1)は高分子量成分であり不溶解分であるので抽出されない)、該抽出分の重量から成分(1)/(2)比を計算することができる。
【0028】
エマルジョン組成物は、成分(1)と成分(2)に加えて、二価金属酸化物と分散剤を含むことが好ましい。二価金属酸化物は、主として、成分(1)中のカルボキシル基の間をイオン架橋するものである。該エマルジョン組成物は、XNBRを、NBRを共存させて(NBRの存在下に)二価金属イオンにより架橋したエラストマーエマルジョン組成物である。
【0029】
二価金属酸化物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の酸化物が挙げられ、なかでも酸化亜鉛が好ましい。二価金属酸化物の含有量は、樹脂分、即ち成分(1)と成分(2)の合計100重量部に対して、0.5〜4.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3.0である。
【0030】
分散剤としては、アニオン界面活性剤が好ましく、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリリン酸エステル、高分子化アルキルアリールスルフォネート、高分子化スルホン化ナフタレン、高分子化ナフタレン/ホルムアルデヒド縮合重合体等が挙げられ、好ましくはスルホン酸塩が使用される。分散剤の含有量は、成分(1)と成分(2)の合計100重量部に対して、0.5〜4重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜3重量部である。
【0031】
エマルジョン組成物は、上記各成分に加え、慣用の添加剤を含むことができる。慣用の添加剤としては、pH調整剤、顔料、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合開始剤等が挙げられる。エマルジョン組成物のpHは8以上に調製されることが好ましく、pH調整剤としては、通常、水酸化カリウムが用いられ、その使用量は、通常、組成物100重量部に対して0.1〜2.0重量部であることが好ましい。顔料としては、例えば二酸化チタンが使用される。特に限定はされないが、酸化防止剤としてはヒンダードフェノールタイプの酸化防止剤を、連鎖移動剤としてはt−ドデシルメルカプタン等に代表されるメルカプタン類を、重合開始剤としては過硫酸ナトリウム等に代表される無機過酸化物、ベンゾイルパ-オキサイド等に代表される有機過酸化物、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等に代表されるキレート化剤等を、それぞれ使用することができる。
【0032】
エマルジョン組成物は、成分(1)、成分(2)、二価金属酸化物、分散剤、各添加剤及び水を、慣用の混合手段、例えば、ミキサー等で混合して製造することができる。エマルジョン組成物は、その固形分濃度が30〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜50重量%である。
【0033】
<手袋>
上記エマルジョン組成物を用いて、下記の工程(1)〜(4)を含むディッピング法により、手袋を製造することができる。
手袋は、0.15mm(150μm)以上の厚みを有することが、耐薬品性と柔軟性を確保するために好ましく、0.18mm以上の厚みであることがより好ましい。厚みの上限値は、特に限定はされないが、特に柔軟性が求められるクリーンルーム内での使用等に適した厚みとして、0.6mm(600μm)以下であるのことが好ましい。
【0034】
(1)ディップ成形型(以下、「フォーマ」という。)を凝固剤(凝集剤)液中に浸して、該凝固剤をフォーマに付着させる。凝集剤としては、エラストマーを析出させる効果を有する無機塩であれば特に限定されず、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の5〜20重量%水溶液を好ましく使用できる。
(2)凝固剤が付着したフォーマを、たとえば50〜70℃の温度で乾燥させた後、エマルジョン組成物中に、手袋の目的とする厚みに応じた時間、一般的には1〜60秒程度、通常は1〜20秒間浸す。得られる手袋が所望の厚みとなるよう、前記(1)と(2)を繰り返して、凝固剤液とエマルジョン組成物に複数回、フォーマを浸漬させてもよい。
(3)エマルジョン組成物でコーティングされたフォーマを、80〜120℃で、20〜70秒間加熱した後、水洗する。
(4)水洗後、ビーディング(袖巻き工程)し、120〜150℃の後加熱工程に付する。
【0035】
上記のようにして得られる手袋は、弗酸等の薬品に耐性でありながら、柔軟性に富むため、クリーンルーム内での作業等に特に適している。
手袋は、還流下でのメチルエチルケトン(MEK)抽出分が、手袋の10〜30重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。この抽出分は、手袋をMEK中に浸漬して、還流下で8時間抽出した後、得られた抽出液を回収し、濃縮・乾燥後の残留物の重量を測定することにより計算できる。
【0036】
手袋の耐薬品性については、47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンのいずれか1以上の化合物を用いて評価することが好ましい。
具体的には、手袋を裏返し、手袋の中指部分に47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンのいずれか一種を10ml入れ、その状態でこの中指部分を純水30mlに浸漬し、室温で2時間放置し、純水中に溶出してきた成分を、イオンクロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにより定量することにより評価できる。各々の薬剤の透過量は、それぞれ以下の基準を満たすことが好ましい。
フッ素イオン透過量:0.1g以下(さらに好ましくは、0.09g以下)
メタノール透過量及びエタノール透過量:それぞれ0.3g以下(さらに好ましくは、0.27g以下)
アセトン透過量:5.0g以下(さらに好ましくは、4.0g以下)
N−メチルピロリドン透過量:0.15g以下(さらに好ましくは、0.12g以下)
【0037】
手袋は、上記各薬剤透過量のいずれか一つ以上の基準を満たすものであることが好ましく、全ての基準を満たすことが一層好ましい。
さらに、上記47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンの5種類の化合物(薬剤)の透過量の合計値は、5.85g以下であることが好ましく、5.0g以下であることがより一層好ましい。
【0038】
手袋のトルエン重量膨潤率は、180〜350重量%であることが好ましく、より好ましくは250〜340重量%である。トルエンの膨潤比率が低い程、手袋における架橋密度は高くなる。架橋ポリマーをトルエンのような良溶媒中に浸漬すると、良溶媒はポリマー鎖を溶かして広げようとするが、架橋ポリマーの網目の弾力で抑えられて膨潤平衡に達するため、架橋ポリマーの架橋密度は良溶媒中の平衡膨潤率と逆比例の関係になる。トルエン重量膨潤率が350重量%を超えると架橋密度が低く、手袋にした際の強度が不足し、180重量%未満では架橋密度が高く、柔軟性が不足する恐れがある。
【0039】
JIS K6251:2010に従って測定される手袋の機械的特性については、手袋として十分かつ適正な、つまり剛直すぎない強度を保つために、ゴム手袋の強度を示す引張強度(数値が大きい程強度が高い)は、23〜35MPaの範囲内であることが好ましい。ゴム手袋の柔軟性を示す破断時伸び(数値が大きい程柔軟性が高い)は、400%以上であることが好ましい。同様にゴム手袋の柔軟性を示す100%モジュラス(100%弾性率又は100%引張強度ともいう。)は、手袋装着時の風合いを損なわないために、1〜3MPaの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜3、比較例1〜8]
1.XNBRの調製
表1に示す7種類のXNBR(XNBR−A〜XNBR−G)を、以下の手順に従って調製した。
【0042】
アクリロニトリル28重量部、1,3-ブタジエン66重量部、メタクリル酸6重量部、N-メチロールアクリルアミド0.3重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、及びエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量にイオン交換水120部を加えた乳化液を、攪拌機つきの耐圧重合反応器に仕込み、40℃に保持して18時間反応させた。その後、反応停止剤を添加して重合を終了した。
得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去し、共重合体ラテックスのpHおよび濃度を調整して、pH8.5、固形分濃度45重量%のXNBR−Aのエマルジョンを得た。
上記共重合体ラテックスは、アクリロニトリル−ブタジエンに付加させたメタクリル酸の末端カルボキシル基を、N-メチロールアクリルアミドと反応させること(架橋反応)により得られたものである。
【0043】
XNBR−Bは、アクリロニトリル30重量部、1,3-ブタジエン64重量部、メタクリル酸6重量部、N−メチロールアクリルアミド0.4重量部を用い、30℃に保持して24時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
XNBR−Cは、アクリロニトリル25重量部、1,3-ブタジエン69重量部、N−メチロールアクリルアミド0.3重量部を用い、40℃に保持して18時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
XNBR−Dは、アクリロニトリル28重量部、1,3-ブタジエン66重量部、N−メチロールアクリルアミド0.5重量部を用い、30℃に保持し24時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
XNBR−Eは、アクリロニトリル20重量部、1,3-ブタジエン74重量部、N−メチロールアクリルアミド0.3重量部を用い、40℃に保持し18時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
XNBR−Fは、アクリロニトリル28重量部、1,3-ブタジエン66重量部を用い、N−メチロールアクリルアミドを用いず、50℃に保持し16時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
XNBR−Gは、アクリロニトリル28重量部、1,3-ブタジエン66重量部、N−メチロールアクリルアミド0.5重量部を用い、30℃に保持し24時間反応させ、それ以外は総てXNBR−Aと同様にして製造した。
【0044】
得られた各XNBRの特性を、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
表1に示されるとおり、XNBR−E、XNBR−F、及びXNBR−Gは、後述する比較例の手袋に使用されるものである。
【0045】
<不飽和カルボン酸残基>
各XNBRのエマルジョンを乾燥してフィルムを作成した。該フィルムをFT-IRで測定し、1699cm
−1と2237cm
−1における吸光度(Abs)の比を求め、下記式から不飽和カルボン酸残基量を求めた。
不飽和カルボン酸残基量(wt%)
=[Abs(1699cm
−1)/Abs(2237cm
−1)]/0.2661(式1)
上式(1)において、「0.2661」は、不飽和カルボン酸残基量とアクリロニトリル残基量が既知の複数の試料のデータから検量線を作って求めた係数である。
【0046】
<ムーニー粘度>
硝酸カルシウムと炭酸カルシウムの4:1混合物の飽和水溶液(凝固液)200mlを、室温にて攪拌し、その中に、各XNBRのエマルジョンをピペットにより滴下して、固形ゴムを析出させた。得られた固形ゴムを凝固液から取り出し、イオン交換水約1000mlでの攪拌洗浄を10回繰り返した。その後、固形ゴムを搾って脱水し、真空乾燥(60℃、72時間)して、ムーニー粘度測定用ゴム試料を得た。
得られた測定用ゴムを、ロール温度50℃、ロール間隙約0.5mmの6インチロールに、ゴムがまとまるまで数回通したものを、JIS K6300−1:2001 「未加硫ゴム−物理特性、第1部ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準拠して測定した。なお、XNBR-Gのムーニー粘度は、測定温度100℃での測定上限値を超えていた。
【0047】
<硫黄含有量>
各XNBRのエマルジョン中の固形物0.1gを1350℃で12分間、燃焼炉で燃焼し、発生した燃焼ガスを吸収液(希硫酸を1〜数滴加えたH
2O
2水混合液)へ吸収させた後、0.01NのNaOH水を用いて中和滴定して定量した。
【0048】
表1中、「NMA」はN−メチロールアクリルアミド、「ML(1+4)100℃」は測定温度100℃のムーニー粘度、「S(wt%)」は硫黄元素含有量をそれぞれ表す。
【表1】
【0049】
2.NBRの調製
表2に示す3種類のNBR(NBR−a〜NBR−c)を、以下の手順に従って調製した。
アクリロ二トリル35重量部、1,3-ブタジエン65重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05重量、及びt-ドデシルメルカプタン1.0重量部にイオン交換水120部を加えた乳化液を、攪拌機つきの耐圧重合反応器にて、60〜80℃で5時間反応させた。反応後、反応停止剤を添加して重合を終了した。
得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去し、共重合体ラテックスのpHおよび濃度を調整して、pH8.5、固形分濃度46%のNBR−aを得た。NBR−aのGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、19700であった。
GPCによる重量平均分子量の測定条件は次のとおりである。
装置:東ソー(株)製 HLC―8220GPC
カラム:Shodex KF−G+KF−805L×2本+KF−800D
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40℃
流速:1.0ml/min
濃度:0.1wt/vol%
注入量:100μl
前処理:0.2μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0050】
NBR−bは、t-ドデシルメルカプタンを0.5重量部にした以外はNBR−aと同様にして製造した。固形分濃度は46%、ポリスチレン換算の重量平均分子量は10900であった。
NBR−cは、t-ドデシルメルカプタンを0.8重量部にした以外はNBR−aと同様にして製造した。ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6600であった。
【0051】
表2に、得られたNBR−a〜cの重量平均分子量(Mw)、t-ドデシルメルカプタン重量%、及び固形分濃度をまとめて示す。表2に示されるとおり、NBR−cは重量平均分子量が小さく、後述する比較例の手袋に使用されるものである。
【0052】
【表2】
【0053】
3.エマルジョン組成物の調製
上記表1に示すXNBRと表2に示すNBRの各々を、表3に示す種類と比率で混合し、この混合樹脂分100重量部に対して、表4に示す添加剤を加え、ミキサーで攪拌して、実施例1〜3及び比較例1〜8に使用するエマルジョン組成物1〜11を調製した。表3において、A〜GはXNBR−A〜XNBR−Gを、a〜cはNBR−a〜NBR−cをそれぞれ表し、例えば、表3の実施例1のエマルジョン組成物1は、XNBR−AとNBR−aとを、重量比85対15で混合して、表4の添加剤を加えたものである。表4において、分散剤はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、抗酸化剤は2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、着色剤はファストグリーンFCFである。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
4.手袋の製造
上記各エマルジョン組成物を用いて、以下のディッピング法により,実施例及び比較例の手袋を製造した。
(1)手袋の型であるフォーマを、洗浄液、次いで冷水で洗浄して乾燥した後、凝固剤である硝酸カルシウムが、Ca
2+イオン濃度が10重量%となる量で溶解されている水溶液中に、15秒間浸した。
(2−a)凝固剤が付着したフォーマを60℃で1分程度、部分的に乾燥した。
(2−b)フォーマを、30℃に調整したエマルジョン組成物中に20秒間浸した。
(2−c)フォーマを、エマルジョン組成物の付着量が所望の量(膜厚)となるまで、凝固剤及びエマルジョン組成物に、複数回交互に浸漬した。
(3)フォーマをエマルジョン組成物から取り出して水で洗浄した後、温水(50℃)中に140秒間浸した。
(4)エマルジョン組成物の膜で覆われたフォーマを120℃で300秒間乾燥した後、60℃で80秒間維持し、得られた手袋をフォーマから取り外した。
【0057】
得られた手袋の諸特性を以下の方法で評価した。結果を表5に示す。
<手袋のメチルエチルケトン熱抽出成分>
手袋をメチルエチルケトン(MEK)に浸漬し、還流下で8時間抽出した後、得られた抽出液を回収して、濃縮・乾燥後の残留物を4桁天秤で計量した。
【0058】
<トルエン膨潤比率>
手袋を常温でトルエンに浸漬し、72時間後の重量を初期重量で除して膨潤比率(%)を求めた。
【0059】
<手袋の柔軟性>
手袋の柔軟性を、引張特性により評価した。
手袋からJIS K6251:2010のダンベル状5号試験片を切り出し、株式会社A&D製のTENSILON万能引張試験機「RTC−1310A」を用い、試験速度500mm/min、チャック間75mm、標線間25mmで、引張強度(MPa)、破断時伸び(%)、及び100%モジュラス(100%引張弾性率)(MPa)を測定した。
【0060】
<手袋の耐薬品性>
以下の方法で、手袋を透過する薬剤量により、手袋の耐薬品性を調べた。
手袋を裏返し、手袋の中指部分に47%フッ化水素(HF)酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドン(NMP)から選ばれる一種の薬液を10ml入れた状態で、この中指部分を純水30mlに浸漬し、室温で2時間放置後、純水中に溶出してきた上記各薬剤の重量(g)を、イオンクロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにより、下記のように定量した。表5において、「ND」は検出限界以下であったことを示す。
<イオンクロマトグラフィーの測定条件>
対象成分:47%フッ化水素(HF)酸中のフッ素イオン(F)
装置名:DIONEX社製 DX−500型
ガードカラム:IonPac AG−17
分離カラム:IonPac AG−17
サプレッサー:ASRS 300 4mm
溶離液:15mmol/l 水酸化カリウム
流量:2.0ml/min
<ガスクロマトグラフィーの測定条件>
対象成分:メタノール、エタノール、アセトン、N−メチルピロリドン
装置名:島津製作所製GC−2014
カラム:DBWAX(60m、0.25mmφ、膜厚0.25μm)
Heガス:0.6ml/min、注入温度:200℃、検出器温度210℃
温度:40℃(3min)⇒200℃(10min)、10℃/minで昇温
検出器:FID
【0061】
【表5】
【0062】
表5に示されるとおり、実施例1〜3の手袋では、測定されるフッ素イオン透過量が0.1g以下、メタノール透過量及びエタノール透過量が、それぞれ0.3g以下、アセトン透過量が5.0g以下、NMP透過量が0.15g以下であって、良好な耐薬品性が示された。また、実施例1〜3の手袋は、いずれも柔軟性にも優れていた。
【0063】
これに対し、比較例1の手袋は、エマルジョン組成物においてXNBRに対するNBR量が少ないため、実施例1と比較して100%引張強度が大きく、柔軟性に劣っていた。比較例2の手袋は、実施例1と同じエマルジョン組成物を用いて製造されたものであるが、膜厚が0.1mmと薄いために、耐薬品性に劣っていた。比較例3と4の手袋は、エマルジョン組成物においてXNBRに対するNBR量が少ないため、手袋の厚みにかかわらず100%引張強度が大きく、柔軟性に劣っていた。比較例5の手袋は、XNBR中のアクリロニトリル残基が20重量%と少ないため、手袋の厚みが厚くても耐薬品性に劣っていた。比較例6の手袋は、ムーニー粘度が低いXNBRを用い、比較例7の手袋は、ムーニー粘度が高いXNBRを用いたため、引張強度に劣っていた。また、比較例8の手袋は、エマルジョン組成物においてXNBRに加えるNBR量が多いため、引張強度に劣り、かつ、メチルエチルケトン(MEK)抽出分が多かった。
【0064】
本発明の実施形態の手袋及び該手袋用組成物は、クリーンルームでの作業等に使用されるものである。