特許第6554090号(P6554090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554090反射材用ポリエステル樹脂組成物およびそれを含む反射材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554090
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】反射材用ポリエステル樹脂組成物およびそれを含む反射材
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20190722BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190722BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20190722BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20190722BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20190722BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20190722BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20190722BHJP
   F21V 7/22 20180101ALI20190722BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190722BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K3/013
   C08K5/14
   C08K5/3492
   C08G63/199
   G02B5/08
   H01L33/60
   F21V7/00 510
   F21V7/22
   F21Y115:10
【請求項の数】26
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-511372(P2016-511372)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2015001709
(87)【国際公開番号】WO2015151463
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72275(P2014-72275)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-170545(P2014-170545)
(32)【優先日】2014年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-250260(P2014-250260)
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】大清水 薫
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 英人
(72)【発明者】
【氏名】江端 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】濱 隆司
(72)【発明者】
【氏名】影山 文雄
(72)【発明者】
【氏名】光永 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 信宏
(72)【発明者】
【氏名】天野 晶規
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−542506(JP,A)
【文献】 特開2005−146103(JP,A)
【文献】 特開2008−308641(JP,A)
【文献】 特開2007−197651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/00−67/08
C08G63/00−63/91
C08K3/00−13/08
F21V7/00
F21V7/22
G02B5/08
H01L33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)、及び脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(b1)を含むポリエステル樹脂(A)と、白色顔料(B)と、を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)の全ジカルボン酸成分単位(a)の量に対する、前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)の量が50モル%以上であり、
前記ポリエステル樹脂(A)の全ジオール成分単位(b)の量に対する、前記脂肪族ジオール成分単位(b1)の量が50モル%以上であり、
前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、脂環式ジオール由来の脂環式ジオール成分単位(b1’)を含み、
前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、かつNMRで測定される前記シス体の割合が20モル%以上であり、
前記脂環式ジオール成分単位(b1’)が、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、かつNMRで測定される前記シス体の割合が20モル%以上50モル%以下である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸を除く脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)0〜70モル%とを含み(前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)と、前記脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)との合計は100モル%である)、
前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)30モル%〜100モル%と、前記シクロヘキサンジメタノールを除く脂肪族ジオール成分単位(b1−2)0〜70モル%とを含む(前記シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)と、前記脂肪族ジオール成分単位(b1−2)との合計は100モル%である)、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を含み、前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分単位を含む、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対する、前記ポリエステル樹脂(A)の含有量が20質量%以上80質量%未満であり、
前記反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対する、前記白色顔料(B)の含有量が5質量%以上50質量%未満である、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂(A)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定される融点(Tm)を有さない、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]が、0.05〜10dl/gである、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、過酸化物(E)0.1〜30質量部、及び架橋助剤(F)0.1〜50質量部をさらに含む、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記架橋助剤(F)が、1分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物である、請求項7に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記架橋助剤(F)が、1分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物である、請求項8に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を溶融混練して得られ、前記ポリエステル樹脂(A)の少なくとも一部が架橋した、架橋型ポリエステル樹脂(A’)を含む、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
【請求項12】
発光ダイオード素子用の反射材である、請求項11に記載の反射材。
【請求項13】
請求項10に記載の反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
【請求項14】
発光ダイオード素子用の反射材である、請求項13に記載の反射材。
【請求項15】
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が250℃以上であるポリエステル樹脂(G)と、
脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)、及び脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(h2)を含むポリエステル樹脂(H)(但し、前記ポリエステル樹脂(G)を除く)と、
白色顔料(J)と、
無機充填材(K)と、を含有する樹脂組成物であり、
前記ポリエステル樹脂(G)、前記ポリエステル樹脂(H)、前記白色顔料(J)、及び前記無機充填材(K)の合計100質量部に対する、前記ポリエステル樹脂(H)の量が3〜30質量部である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項16】
前記ポリエステル樹脂(G)、前記ポリエステル樹脂(H)、前記白色顔料(J)、及び前記無機充填材(K)の合計100質量部に対する、
前記ポリエステル樹脂(G)の含有量が20質量部以上50質量部未満であり、
前記ポリエステル樹脂(H)の含有量が3質量部以上25質量部未満であり、
前記白色顔料(J)成分の含有量が10質量部以上50質量部未満であり、
前記無機充填材(K)の含有量が5質量部以上40質量部未満である、請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項17】
前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、脂環式ジオール成分単位(h2’)を含む請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項18】
前記脂環式ジオール成分単位(h2’)が、シス/トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、かつNMRで測定される前記シス体及び前記トランス体の合計に対する前記シス体の割合が20モル%以上50モル%以下である、請求項17に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項19】
前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)が、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を除く脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)0〜70モル%とを含み(前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)と、前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)との合計は100モル%である)、
前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)30モル%〜100モル%と、前記シクロヘキサンジメタノール成分を除く脂肪族ジオール成分単位(h2−2)0〜70モル%とを含む(前記シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)と、前記脂肪族ジオール成分単位(h2−2)との合計は100モル%である)、請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項20】
前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を含み、前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分単位を含む、請求項19に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項21】
前記ポリエステル樹脂(H)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定される融点(Tm)を有さない、請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項22】
前記ポリエステル樹脂(G)が、
テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位(g1−1)30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(g1−2)0〜70モル%を含むジカルボン酸成分単位(g1)と、
炭素原子数4〜20の脂環式ジオール成分単位(g2−1)および/または脂肪族ジオール成分単位(g2−2)を含むジオール成分単位(g2)と、
を含む、請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項23】
前記脂環式ジオール成分単位(g2−1)が、シクロヘキサン骨格を有する、請求項22に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項24】
前記ジオール成分単位(g2)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(g2−1’)30〜100モル%、前記脂肪族ジオール成分単位(g2−2)0〜70モル%を含む、請求項22に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項25】
請求項15に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
【請求項26】
発光ダイオード素子用の反射材である、請求項25に記載の反射材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射材用ポリエステル樹脂組成物およびそれを含む反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、LEDと略す)や有機ELなどの光源は、低電力や高寿命といった特長を活かして、照明ならびにディスプレイのバックライトとして幅広く使用されており、今後の利用が拡大する傾向にある。これらの光源からの光を効率的に利用するため、光源からの光を反射する反射材が種々の局面で利用されている。そして反射材には、使用環境下において高い反射率を示すことが求められている。
【0003】
また、近年では、製品へのコストダウン要求から、テレビやディスプレイなどの最終製品に搭載される光源(LEDパッケージ)の数を低減することが求められている。したがって、反射材の反射性を高め、光源からの光をより効率的に利用することが求められている。
【0004】
このような反射材用の材料として、例えば、芳香族ポリエステルや芳香族ポリエステルアミド等の溶融加工性ポリエステルに、ガラス繊維や、酸化チタンを配合した樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献1)。当該樹脂組成物は、耐熱性や寸法安定性がある程度良好である。しかし、当該樹脂組成物からなる反射材では、反射率を十分に高めることが難しかった。
【0005】
これに対し、シクロヘキサンジカルボン酸由来の構造を含むポリアミド樹脂、酸化チタン、及び強化材を含む反射材用の樹脂組成物も提案されている(特許文献2)。当該樹脂組成物によれば、白色度が高く、半田リフロー耐熱性が高い反射材が得られる。
【0006】
一方、光学フィルムの材料として、シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位と、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位とを含む全脂環族ポリエステルも提案されている(特許文献3)。当該技術では、シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位中のトランス体の比率を高めることで、得られるフィルムの耐熱性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−38520号公報
【特許文献2】特開2011−21128号公報
【特許文献3】特開2005−154619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献2の樹脂組成物からなる反射材は、加熱によって変色しやすく、経時で光反射率が低下しやすかった。また、当該組成物からなる反射材は、吸水によって、寸法が変化したり、剛性が低下する、との課題もあった。一方、特許文献3の全脂環族ポリエステルは、耐熱性や耐光性が優れるものの、反射材に適用した際に、光の反射率を高められるものではなかった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、反射率の高い反射材が得られる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供する。また、当該樹脂組成物を含む反射材も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはこのような状況に鑑みて鋭意検討した結果、脂環式ジカルボン酸成分単位及び脂肪族ジオール成分単位を含むポリエステル樹脂において、脂環式ジカルボン酸成分単位に含まれるシス体の比率が20モル%以上であると、当該組成物から得られる反射材の反射率が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
またさらに、融点またはガラス転移温度が高いポリエステル樹脂(G)と、脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位を含むポリエステル樹脂(H)とを組み合わせ;当該ポリエステル樹脂(H)の含有量を特定の範囲とすることで、耐光性が非常に高く、反射率が高く、さらに耐熱性の高い反射材用ポリエステル樹脂組成物が得られることも見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明の第1は、以下に示す反射材用ポリエステル樹脂組成物及びこれを含む反射材に関する。
[1]脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)、及び脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(b1)を含むポリエステル樹脂(A)と、白色顔料(B)と、を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂(A)の全ジカルボン酸成分単位(a)の量に対する、前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)の量が50モル%以上であり、ポリエステル樹脂(A)の全ジオール成分単位(b)の量に対する、前記脂肪族ジオール成分単位(b1)の量が50モル%以上であり、前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、NMRで測定される前記シス体の割合が20モル%以上である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0013】
[2]前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、脂環式ジオール由来の脂環式ジオール成分単位(b1’)を含み、かつ前記脂環式ジオール成分単位(b1’)が、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、NMRで測定される前記シス体の割合が20モル%以上50モル%以下である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3]前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸を除く脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)0〜70モル%とを含み(前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)と、前記脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)との合計は100モル%である)、前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)30モル%〜100モル%と、前記シクロヘキサンジメタノールを除く脂肪族ジオール成分単位(b1−2)0〜70モル%とを含む(前記シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)と、前記脂肪族ジオール成分単位(b1−2)との合計は100モル%である)、[1]または[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4]前記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を含み、前記脂肪族ジオール成分単位(b1)が、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分単位を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5]前記反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対する、前記ポリエステル樹脂(A)の含有量が20質量%以上80質量%未満であり、前記反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対する、前記白色顔料(B)の含有量が5質量%以上50質量%未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6]前記ポリエステル樹脂(A)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定される融点(Tm)を有さない、[1]〜[5]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0014】
[7]前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]が、0.05〜10dl/gである、[1]〜[6]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[8]前記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、過酸化物(E)0.1〜30質量部、及び架橋助剤(F)0.1〜50質量部をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[9]前記架橋助剤(F)が、1分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物である、[8]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[10]前記架橋助剤(F)が、1分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物である、[9]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[11]前記[8]〜[10]のいずれかに記載の反射材ポリエステル樹脂組成物を溶融混練して得られ、前記ポリエステル樹脂(A)の少なくとも一部が架橋した、架橋型ポリエステル樹脂(A’)を含む、反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物。
【0015】
[12]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
[13]発光ダイオード素子用の反射材である、[12]に記載の反射材。
[14]前記[11]に記載の反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
[15]発光ダイオード素子用の反射材である、[14]に記載の反射材。
【0016】
本発明の第2は、以下に示す反射材用ポリエステル樹脂組成物及びこれを含む反射材に関する。
[16]示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(G)と、脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)、及び脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(h2)を含むポリエステル樹脂(H)(但し、前記ポリエステル樹脂(G)を除く)と、白色顔料(J)と、無機充填材(K)と、を含有する樹脂組成物であり、前記ポリエステル樹脂(G)、前記ポリエステル樹脂(H)、前記白色顔料(J)、及び前記無機充填材(K)の合計100質量部に対する、前記ポリエステル樹脂(H)の量が3〜30質量部である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0017】
[17]前記ポリエステル樹脂(G)、前記ポリエステル樹脂(H)、前記白色顔料(J)、及び前記無機充填材(K)の合計100質量部に対する、前記ポリエステル樹脂(G)の含有量が20質量部以上50質量部未満であり、前記ポリエステル樹脂(H)の含有量が3質量部以上25質量部未満であり、前記白色顔料(J)成分の含有量が10質量部以上50質量部未満であり、前記無機充填材(K)の含有量が5質量部以上40質量部未満である、[16]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[18]前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、脂環式ジオール成分単位(h2’)を含む[16]または[17]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0018】
[19]前記脂環式ジオール成分単位(h2’)が、シス/トランス異性体のシス体及びトランス体を含み、NMRで測定される前記シス体及び前記トランス体の合計に対する前記シス体の割合が20モル%以上50モル%以下である、[18]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[20]前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)が、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を除く脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)0〜70モル%とを含み(前記シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)と、前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)との合計は100モル%である)、前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)30モル%〜100モル%と、前記シクロヘキサンジメタノール成分を除く脂肪族ジオール成分単位(h2−2)0〜70モル%とを含む(前記シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)と、前記脂肪族ジオール成分単位(h2−2)との合計は100モル%である)、[16]〜[19]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0019】
[21]前記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分単位を含み、前記脂肪族ジオール成分単位(h2)が、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分単位を含む、[20]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[22]前記ポリエステル樹脂(H)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定される融点(Tm)を有さない、[16]〜[21]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[23]前記ポリエステル樹脂(G)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位(g1−1)30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(g1−2)0〜70モル%を含むジカルボン酸成分単位(g1)と、炭素原子数4〜20の脂環式ジオール成分単位(g2−1)および/または脂肪族ジオール成分単位(g2−2)を含むジオール成分単位(g2)と、を含む、[16]〜[22]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
【0020】
[24]前記脂環式ジオール成分単位(g2−1)が、シクロヘキサン骨格を有する、[23]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[25]前記ジオール成分単位(g2)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位(g2−1’)30〜100モル%、前記脂肪族ジオール成分単位(g2−2)0〜70モル%を含む、[23]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[26]前記[16]〜[25]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射材。
[27]発光ダイオード素子用の反射材である、[26]に記載の反射材。
【発明の効果】
【0021】
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物によれば、高い反射率を有する反射材が得られる。また、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物によれば、耐熱性及び耐光性が非常に高く、反射率が高い反射材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂(H)の比率と、反射率(初期反射率、及びUV500時間照射後の反射率)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、2種類の樹脂組成物及びこれを含む反射材に関する。そこで、これらについてわけて説明する。
【0024】
A.第一の態様について
A−1.反射材用ポリエステル樹脂組成物について
第一の態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A)と、白色顔料(B)とが含まれ、必要に応じてガラス繊維(C)や各種添加剤(D)、過酸化物(E)、架橋助剤(F)等が含まれる。本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、流動性、成形性に優れ、当該反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の光の反射率が高い。
【0025】
A−1−1.ポリエステル樹脂(A)について
ポリエステル樹脂(A)には、通常、ジカルボン酸由来のジカルボン酸成分単位(a)及びジオール由来のジオール成分単位(b)が含まれ;本態様では、脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)と、脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(b1)とが少なくとも含まれる。
【0026】
(ジカルボン酸成分単位(a))
ジカルボン酸成分単位(a)には、少なくとも脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)が含まれる。当該脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)の量は、全てのジカルボン酸成分単位(a)の量(モル数)に対して50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上である。脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)の量が50モル%以上であると、得られる反射材の耐光性や靱性が高まりやすい。
【0027】
また、当該脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)には、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体が含まれる。脂環式ジカルボン酸成分単位のシス体の割合(モル)は、脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、20モル%以上であり、好ましくは35モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。シス体の割合は、NMR(核磁気共鳴)により測定される。シス体の割合が20モル%以上であると、得られる反射材の反射率が高まりやすい。
【0028】
従来、脂環式ジカルボン酸成分単位を含むポリエステル樹脂では、脂環式ジカルボン酸成分単位中のトランス体の割合が多かった。しかし、脂環式ジカルボン酸成分単位中のトランス体の割合が多いと、反射材の反射率が十分に高まらない。その理由は以下の通りである。ポリエステル樹脂と白色顔料とを溶融混練し、反射材を成形すると、白色顔料が均一に分散される。一方で、成形物の温度が低下した際、ポリエステル樹脂の脂環式ジカルボン酸成分単位中のトランス体の割合が多いと、ポリエステル樹脂が結晶化する。そして、ポリエステル樹脂の結晶ドメインには、白色顔料が入り込み難いため、脂環式ジカルボン酸成分単位中のトランス体の割合が多いと、得られる反射材において、白色顔料の分散性が低くなり、反射材の反射率が低くなりやすい。
【0029】
これに対し、本態様のように、ポリエステル樹脂の脂環式ジカルボン酸成分単位中のシス体の割合が多いと、反射材の成形時にポリエステル樹脂がアモルファスになりやすい。そして、成形物の温度が低下しても、当該アモルファス状態が維持されやすい。そのため、白色顔料の分散性が維持されやすく、得られる反射材の反射率が高くなる。
【0030】
ここで、上記脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)には、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸を除く脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)0〜70モル%とが含まれることが好ましい。シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)と、脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)との合計は100モル%である。脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)に含まれるシクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)の量は、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%である。シクロヘキサンジカルボン酸は入手が容易であり、さらに脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)に含まれるシクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)の量が30モル%以上であると、ポリエステル樹脂(A)の重合時の温度を過度に高める必要がなく、重合時の温度管理が容易になる。
【0031】
シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)は、シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位である。シクロヘキサンジカルボン酸は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のいずれでもありうる。ポリエステル樹脂(A)には、これら由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。これらの中でも、重合のし易さや、得られる反射材の耐熱性や強度、剛性等の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位が特に好ましい。
【0032】
シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(a1−1)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が含まれ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0033】
一方、シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)は、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸を除く)由来の構成単位である。脂環族ジカルボン酸は、飽和または不飽和(ただし、芳香族性を有さない)の脂環式炭化水素骨格を有し、当該骨格にカルボン酸が2つ結合した化合物であれば特に制限されない。脂環式炭化水素骨格の炭素数は、好ましくは3〜14であり、より好ましくは5〜14である。脂環族ジカルボン酸の例には、1,3−シクロペンタンジカルボン酸や1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、9,10−テトラデカヒドロアントラセンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸等が含まれる。ポリエステル樹脂(A)には、これら由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0034】
当該脂環族ジカルボン酸成分単位(a1−2)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜4のアルキル基が含まれ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等が含まれる。
【0035】
ここで、ジカルボン酸成分単位(a)には、上記脂環式カルボン酸成分単位(a1)以外の構成単位が含まれてもよい。具体的には、芳香族ジカルボン酸由来の単位、または脂肪族ジカルボン酸(脂環族ジカルボン酸を除く)由来の構成単位が含まれてもよい。芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。一方、脂肪族ジカルボン酸の例には、炭素原子数が好ましくは4〜20、より好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。具体的には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等が含まれる。ポリエステル樹脂(A)には、これら由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0036】
また、ポリエステル樹脂(A)には、上記ジカルボン酸成分単位(a)と共に、多価カルボン酸成分単位が含まれてもよい。多価カルボン酸成分単位は、例えばトリメリット酸やピロメリット酸等の三塩基酸や多塩基酸由来の構成単位である。
【0037】
(ジオール成分単位)
ジオール成分単位(b)には、少なくとも脂肪族ジオール成分単位(b1)が含まれる。ここで、脂肪族ジオールには、非環状のジオールだけでなく、環状のジオール;つまり、脂環式ジオールも含まれる。当該脂肪族ジオール成分単位(b1)の量は、全てのジオール成分単位(b)の量(モル数)に対して、50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。脂肪族ジオール成分単位(b1)の量が50モル%以上であると、得られる反射材の耐光性や靱性等が高まりやすい。
【0038】
また、当該脂肪族ジオール成分単位(b1)には、後述のシクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール由来の脂環式ジオール成分単位(b1’)が含まれることが好ましい。当該脂環式ジオール成分単位(b1’)には、シス−トランス異性体のシス体及びトランス体が含まれる。脂環式ジオール成分単位(b1’)のシス体の割合(モル)は、脂環式ジオール成分単位(b1’)の総量に対して、好ましくは20〜50モル%であり、より好ましくは20〜40モル%である。シス体の割合は、NMR(核磁気共鳴)により測定される。シス体の割合が20モル%以上であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物から得られる反射材の反射率が高まりやすい。
【0039】
脂肪族ジオール成分単位(b1)には、シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)30〜100モル%と、シクロヘキサンジメタノールを除く脂肪族ジオール成分単位(b1−2)0〜70モル%とが含まれることが好ましい。これらのシクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)と、脂肪族ジオール成分単位(b1−2)との合計は100モル%である。脂肪族ジオール成分単位(b1)に含まれるシクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)の量は、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%である。シクロヘキサンジメタノールは、入手が容易であり、脂肪族ジオール成分単位(b1)にシクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)が30モル%以上含まれると、ポリエステル樹脂(A)の重合時の温度を過度に高める必要がなく、重合時の温度管理が容易になる。
【0040】
シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)は、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位である。シクロヘキサンジメタノールは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれでもありうるが、1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)には、これら由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。これらの中でも、重合のし易さや、得られる反射材の耐熱性、強度、剛性等の観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位が特に好ましい。
【0041】
シクロヘキサンジメタノール成分単位(b1−1)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0042】
一方、シクロヘキサンジメタノール以外の脂肪族ジオール成分単位(b1−2)は、脂肪族ジオール(シクロヘキサンジメタノールを除く)由来の構成単位である。脂肪族ジオールは、飽和または不飽和の非環式または環式(ただし、芳香族性を有さない)の炭化水素骨格を有し、当該脂環式炭化水素骨格にヒドロキシル基が2つ結合した化合物であれば特に制限されない。炭化水素骨格の炭素数は、好ましくは4〜20であり、より好ましくは5〜16である。脂肪族ジオールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノール、(デカヒドロナフタレン−1、4−ジイル)ジメタノール、(デカヒドロナフタレン−2、6−ジイル)ジメタノール、(テトラデカヒドロアントラセン−9,10−ジイル)ジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノールなどの脂環族ジオール;エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等の非環式脂肪族ジオールが含まれる。ポリエステル樹脂(A)には、これら由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0043】
脂肪族ジオール成分単位(b1−2)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0044】
また、ジオール成分単位(b)には、上記脂肪族ジオール成分単位(b1)以外のジオール由来の構成単位、具体的には芳香族ジオール由来の構成単位が含まれてもよい。芳香族ジオールの例には、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などが含まれる。ポリエステル樹脂(A)には、芳香族ジオール由来の構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0045】
(ポリエステル樹脂(A)の物性)
ポリエステル樹脂(A)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)を実質的に有さないことが好ましい。つまり、ポリエステル樹脂(A)がアモルファスであることが好ましい。前述のように、ポリエステル樹脂(A)がアモルファスであると、樹脂組成物を成形して得られる反射材の光の反射率が高まりやすい。
【0046】
一方、示差走査熱量計で測定されるガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲であると、樹脂組成物から得られる反射材の耐熱性が高まりやすい。なお、反射材に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は40℃未満であってもよいが、この場合、ポリエステル樹脂(A)の架橋等によって、樹脂のガラス転移温度(Tg)を高めることが好ましい。樹脂のガラス転移温度(Tg)を高める方法は、例えばポリエステル樹脂(A)の分子末端のアルコールと反応可能な官能基(例えばエポキシ基)を有する架橋剤、もしくは、ポリエステル樹脂(A)の分子末端のカルボン酸と反応可能な官能基(例えばオキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基等)を有する架橋剤で、架橋する方法でありうる。また、過酸化物(後述の過酸化物(E))や電子線などによりラジカルを発生させて、ポリエステル樹脂の主鎖のC−H結合をラジカル化し、架橋させる方法でもありうる。特に、後述の過酸化物(E)や架橋助剤(F)を用いて架橋させると、ポリエステル樹脂の主鎖どうしが架橋するため、架橋密度が高まりやすく、得られる反射材の機械強度や耐熱性が高まりやすい。またさらに、反射材の長期安定性も高まりやすい。
【0047】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]は0.05〜10dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.05〜5dl/g、さらに好ましくは0.1から2.0dl/gである。極限粘度がこのような範囲にある場合、反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性が優れる。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、ポリエステル樹脂(A)の分子量等によって調整され得る。ポリエステル樹脂の分子量の調整方法は、重縮合反応の進行度合いや単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなどを適量加える等の公知の方法でありうる。
【0048】
上記極限粘度は、ポリエステル樹脂(A)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の算式で算出される値である。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0049】
なお、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、物性の異なる複数種のポリエステル樹脂(A)が含まれてもよい。
【0050】
(ポリエステル樹脂(A)の調製方法)
ポリエステル樹脂(A)の調製方法は特に制限されず、公知のポリエステル樹脂の調製方法と同様でありうる。例えば反応系内に分子量調整剤等を配合して、ジカルボン酸と、ジオールとを、エステル化反応させる。そして、当該エステル化物を、所望の極限粘度(分子量)になるまで重縮合反応させる方法等でありうる。
【0051】
ここで、前述の脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)に含まれるシス体の割合は、原料である脂環式ジカルボン酸のシス体とトランス体との比率に大きく依存する。したがって、脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)に含まれるシス体の量を20モル%以上とするためには、原料である脂環式ジカルボン酸に含まれるシス型の脂環式ジカルボン酸の量(モル)を、全ての脂環式ジカルボン酸の量(モル)に対して20モル%以上とすることが好ましい。
【0052】
同様に、脂環式ジオール成分単位(b1’)に含まれるシス体の割合も、原料である脂環式ジオールのシス体とトランス体との比率に大きく依存する。したがって、脂環式ジオール成分単位(b1’)に含まれるシス体の量を20モル%以上とするためには、原料である脂環式ジオールに含まれるシス型の脂環式ジオールの量(モル)を、全ての脂環式ジオールの量(モル)に対して20モル%以上とすることが好ましい。
【0053】
ここで、ポリエステル樹脂(A)の調製時に、反応系内に分子量調整剤を配合すると、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度が調整される。分子量調整剤として、モノカルボン酸やモノアルコール等が挙げられる。上記モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸などが含まれる。また、芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などが含まれ、脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
【0054】
このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸とジオールとの反応の反応系におけるジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下添加することが好ましく、より好ましくは0.05モル以下である。
【0055】
A−1−2.白色顔料(B)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれる白色顔料(B)は、樹脂組成物を白色化することで、樹脂組成物を成形して得られる光反射機能を高められるものであれば特に制限されない。白色顔料(B)の具体例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナ等が含まれる。これらの白色顔料は、反射材用ポリエステル樹脂組成物に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。また、これらの白色顔料は、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。例えば、白色顔料は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
【0056】
白色顔料(B)は、特に酸化チタンが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物に酸化チタンが含まれると、得られる反射材の反射率や隠蔽性といった光学特性が高まる。酸化チタンは、ルチル型が好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.3μmである。平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに画像解析装置(ルーゼックスIIIU)等で測定される。
【0057】
また白色顔料(B)は、樹脂組成物を成形して得られる反射材の反射率を均一化させるためなどの理由で、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
【0058】
A−1−3.ガラス繊維(C)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ガラス繊維(C)が含まれてもよい。ガラス繊維(C)が含まれると、得られる反射材の強度、剛性および靭性などが高まる。特に、ガラス繊維(C)が細いほど、得られる反射材の機械物性(特に薄肉曲げ強度)が高まる。また、反射材の収縮も抑制される。
【0059】
反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維(C)の平均長は、良好な成形性の保持および得られる成形品の機械的特性や耐熱性の向上の観点から、1μm〜20mmであることが好ましく、より好ましくは5μm〜10mmであり、さらに好ましくは10μm〜5mmである。また、ガラス繊維(C)のアスペクト比は5〜2000であることが好ましく、より好ましくは30〜600である。
【0060】
ガラス繊維(C)の繊維断面のアスペクト比は、以下の通りに測定される。ガラス繊維(C)を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物や、ガラス繊維(C)を含む成形体から、樹脂成分を溶媒によって溶解して除去するか、または組成物や成形体を焼成することにより、ガラス繊維(C)を分離する。分離されたガラス繊維(C)を光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、ガラス繊維(C)の長径および短径を測定して、アスペクト比を算出する。
【0061】
上記ガラス繊維(C)は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。たとえばガラス繊維(C)は、ビニルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
【0062】
ガラス繊維(C)には、集束剤が塗布されていてもよい。集束剤の好ましい例には、アクリル系、アクリル/マレイン酸変系、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/エポキシ変性系の化合物が含まれる。集束剤は1種のみ塗布されてもよく、2種以上組み合わせて塗布されてもよい。
【0063】
さらに、ガラス繊維(C)は、表面処理剤及び集束剤の両方によって処理されていてもよい。表面処理剤及び集束剤が併用されると、ガラス繊維(C)とポリエステル樹脂(A)等との結合性が高まり、得られる反射材の外観が良好になったり、反射材の強度が高まりやすい。
【0064】
ガラス繊維(C)は、反射材用ポリエステル樹脂組成物中に均一に分散されていることが好ましく、また成形体である反射材にも均一に分散されていることが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物中にガラス繊維(C)が均一に分散されていると造粒性が高まり、成形体の機械的特性も向上する。
【0065】
A−1−4.添加剤(D)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加剤(D)が含まれてもよい。添加剤(D)の例には、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等);耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等);光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オキサニリド類等);他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等);難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等);蛍光増白剤;可塑剤;増粘剤;帯電防止剤;離型剤;顔料;結晶核剤;種々公知の配合剤;等が含まれる。
【0066】
また、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、リンを含む酸化防止剤が含まれてもよい。リンを含む酸化防止剤は、P(OR)構造を有する酸化防止剤であることが好ましい。ここで、Rはアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリーレン基などであり、3個のRは同一でも異なっていてもよく、2個のRが環構造を形成していてもよい。リンを含む酸化防止剤の例には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが含まれる。樹脂組成物にリンを含む酸化防止剤が含まれると、高温雰囲気下(特に、リフロー工程のように250℃を超える条件下)において、ポリエステル樹脂(A)の分解反応が抑制される。その結果、樹脂組成物を成形して得られる反射材の変色等が抑制される。
【0067】
なお、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、他の樹脂組成物等と組み合わせて使用する場合には、添加剤(D)として、他の組成物に含まれる成分と作用しないもの(例えば触媒毒にならない化合物)が選択されることが好ましい。
【0068】
A−1−5.過酸化物(E)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、過酸化物(E)が含まれてもよい。反射材用ポリエステル樹脂組成物に過酸化物(E)が含まれると、前述のように、ポリエステル樹脂(A)の主鎖のC−H結合をラジカル化させて、ポリエステル樹脂(A)を架橋させることができる。その結果、得られる反射材の耐熱性が高まる。
【0069】
なお、当該過酸化物(E)は、後述の架橋助剤(F)と共に、反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれることが好ましい。過酸化物(E)が熱分解し、ラジカルを生成することで、ポリエステル樹脂(A)の主鎖からの水素引き抜き反応が生じる。しかしながら、このときに、生成したラジカルどうしが結合したり、ラジカルがポリエステル樹脂(A)以外の物質と反応すると、ポリエステル樹脂(A)の架橋効率が非常に低下する。その結果、ポリエステル樹脂(A)が十分に架橋されず、得られる反射材の耐熱性が十分に高まり難くなる。これに対し、後述の架橋助剤(F)が含まれると、生成ラジカルが再結合する前に、架橋助剤(F)と生成ラジカルとが反応して安定化し、ポリエステル樹脂(A)の架橋反応が安定して行われる。
【0070】
ここで、過酸化物(E)は、公知の有機過酸化物でありうる。過酸化物(E)の例には、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等が含まれる。このような過酸化物(E)は、熱分解による半減期が1分となる温度が、100℃以上であることが好ましい。上記温度が100℃以上であれば、組成物の安定性が高まりやすい。
【0071】
より具体的な過酸化物(E)の例には、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が含まれる。市販品としては、ルペロックスLP、ルペロックスA、ルペロックス531、ルペロックス331、ルペロックスTBEC、ルペロックス230、ルペロックスDCP、ルペロックス101、ルペロックスDI(いずれもアルケマ吉富社製、「ルペロックス」は登録商標);パーヘキサMC、パーヘキサHC、パーブチルE(いずれも日本油脂社製、「パーヘキサ」及び「パーブチル」は登録商標)等が挙げられる。
【0072】
A−1−6.架橋助剤(F)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、前述のように、過酸化物(E)と併せて、架橋助剤(F)が含まれてもよい。架橋助剤(F)が含まれることで、ポリエステル樹脂(A)の架橋が促進される。
【0073】
架橋助剤(F)の種類は特に制限されない。架橋助剤の例には、エステルアクリレート類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、エーテルアクリレート類、メラミンアクリレート類、アルキドアクリレート類、シリコンアクリレート類等のアクリレート類や、エチレングリコールジメタクリレート類等の(メタ)アクリレート系架橋助剤;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等、1分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマー系架橋助剤;多官能エポキシ系架橋助剤;が含まれる。反射材用ポリエステル樹脂組成物には、架橋助剤(F)が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0074】
上記架橋助剤(F)の市販品の例には、ダイソダップ(登録商標)(ダイソー社製);TAIC(登録商標)もしくはTAIC(登録商標)−WH60(いずれも日本化成社製);SR368、SR295、DPHA(いずれもサートマー社製)等が挙げられる。
【0075】
上記架橋助剤(F)は、耐光性の観点から、分子中に芳香族環を含まないことが好ましく、より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等、1分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を含む化合物である。また特に多官能モノマー系架橋助剤であることが好ましく、具体的には、1分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有し、かつトリアジン骨格を有する多官能性モノマーであることが好ましい。このような化合物としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC(登録商標)やTAIC−WH60、いずれも日本化成社製)やトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368、サートマー社製)等が挙げられる。これらの架橋剤はポリエステル樹脂(A)との相溶性が良好であり、ポリエステル樹脂(A)の架橋が均一に進行しやすい。また、得られる反射材の耐熱性と耐光性も高まりやすい。
【0076】
A−1−7.無機充填材について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ガラス繊維(C)以外の無機充填材が含まれてもよい。無機充填材は、例えば繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の高いアスペクト比を有する形状の種々の無機化合物でありうる。
【0077】
無機充填材の平均長さは10μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜5mmである。無機充填材のアスペクト比(アスペクト比=長径/短径)は、樹脂組成物を成形して得られる反射材の強度や線膨張係数の低減等の観点から1〜500であることが好ましく、より好ましくは5〜200であり、さらに好ましくは10〜350である。無機充填材の平均長さやアスペクト比の測定は、ガラス繊維(C)の平均長さやアスペクト比の測定方法と同様でありうる。
【0078】
無機充填材の具体例には、前述のガラス繊維(C)以外のガラス繊維、カルボニル構造を有する無機化合物(例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカーなど)、ハイドロタルサイト、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、ワラストナイト、ゾノトライト等が含まれる。これらは反射材用ポリエステル樹脂組成物に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。無機充填材を2種以上組み合わせると、無機充填材のポリエステル樹脂(A)への分散性が高まることがある。無機充填材の分散性が高まると、樹脂組成物から得られる反射材の耐熱性や機械強度等が高まるだけでなく、白色顔料(B)の分散性が向上することがある。
【0079】
平均長さやアスペクト比が大きな無機充填材としては、例えばワラストナイト(珪酸カルシウム)等の珪酸塩、チタン酸カリウムウィスカーなどのチタン酸塩等が挙げられる。また、平均長さやアスペクト比が小さい無機充填材の例には、カルボニル基を有する無機充填材(BW)が挙げられる。具体的には炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー等でありうる。
【0080】
A−1−8.反射材用ポリエステル樹脂組成物の組成について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、当該反射材用ポリエステル樹脂組成物の総量(100質量%)に対してポリエステル樹脂(A)が20〜80質量%含まれることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。ポリエステル樹脂(A)の含有率が上記囲であると、成形性が良好な反射材用ポリエステル樹脂組成物が得られる。
【0081】
一方、反射材用ポリエステル樹脂組成物の総量(100質量%)に対して白色顔料(B)が5質量%以上50質量%未満含まれることが好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%未満であり、さらに好ましくは10〜40質量%である。白色顔料(B)の量が5質量%以上であると、得られる反射材の反射率が高まる。また50質量%未満であれば、相対的にポリエステル樹脂(A)の量が多くなり、樹脂組成物の成形性が良好になる。
【0082】
また、反射材用ポリエステル樹脂組成物にガラス繊維(C)が含まれる場合、反射材用ポリエステル樹脂組成物の総量(100質量%)に対してガラス繊維(C)は10〜50質量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。樹脂組成物にガラス繊維(C)が10質量%以上含まれると、樹脂組成物の射出成形時やはんだリフロー工程で高温下(例えば、250℃〜280℃)になっても、成形物が変形することがなく、また、反射率の経時安定性が高まる傾向がある。また、ガラス繊維(C)が50質量%以下含まれると、成形性および外観が良好な成形品が得られる。
【0083】
また、反射材用ポリエステル樹脂組成物に添加剤(D)が含まれる場合、添加剤(D)の添加量は、添加剤(D)の種類等によって適宜選択されるが、ポリエステル樹脂(A)100質量%に対して0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%であり、さらに好ましくは0〜1質量%の割合である。
【0084】
反射材用ポリエステル樹脂組成物に過酸化物(E)が含まれる場合、過酸化物(E)の量は、上記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。ポリエステル樹脂(A)に対して、過酸化物(E)が上記範囲含まれると、ポリエステル樹脂(A)が十分に架橋されやすくなり、得られる反射材の耐熱性が高まりやすい。
【0085】
また、反射材用ポリエステル樹脂組成物に架橋助剤(F)が含まれる場合、架橋助剤(F)の量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜35質量部である。架橋助剤(F)の量が上記範囲であると、ポリエステル樹脂(A)が十分に架橋されやすい。
【0086】
A−2.反射材用ポリエステル樹脂組成物、及び反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物の製造方法について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
【0087】
また特に、反射材用ポリエステル樹脂組成物に、過酸化物(E)及び架橋助剤(F)が含まれる場合、上記各成分を混合後、溶融混練することで、ポリエステル樹脂(A)が架橋した架橋型ポリエステル樹脂(A’)が含まれる反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物が得られる。
【0088】
上記溶融混練は回分式または連続式のいずれでもありうる。溶融混練を行う装置は、押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ローラー、ニーダー等のいずれでもありうる。架橋を均一に行うためには、各成分を均一に混合することが望ましい。
【0089】
また、ポリエステル樹脂(A)を架橋させる場合の混練温度は、「ポリエステル樹脂(A)のTg+30℃」から「過酸化物(E)の分解による半減期が1分となる温度−20℃」までの範囲内であることが好ましい。また、混練時間は30秒から20分程度であることが好ましい。混練温度が低すぎたり、混練時間が短すぎると、混練や反応が不十分となり、得られる反射材の耐熱性が十分に高まり難い。一方で、混練温度が高すぎたり、混練時間が長すぎる場合には、ポリエステル樹脂(A)が分解や着色したり、過酸化物(E)が分解したり、過酸化物(E)と他の成分とが反応したりする。
【0090】
なお、前述の各成分が、いずれも固体である場合には、予めドライブレンドしたものを混練装置に供給してもよい。また、例えば、各成分を粉体フィーダー等にて混練装置に供給してもよい。また、前述の各成分に液体状のものが含まれる場合には、ポリエステル樹脂(A)や白色顔料(B)、必要に応じてガラス繊維(C)等を予め混合・分散したものを溶融混練機に投入し、液体成分を別途、溶融混練機に供給してもよい。また特に、過酸化物(E)や架橋助剤(F)等は、溶媒等に分散させて溶融混練機に投入することで、ポリエステル樹脂(A)等と均一に混合されやすくなる。
【0091】
過酸化物(E)や架橋助剤(F)を混合するタイミングは特に制限されず、ポリエステル樹脂(A)や白色顔料(B)を混練装置に供給するタイミングと同時であってもよく、ポリエステル樹脂(A)や白色顔料(B)の混練中に投入してもよい。
【0092】
A−3.反射材用ポリエステル樹脂組成物、及び反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物の用途について
本態様の反射材は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物や反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物を任意の形状に成形した成形物である。当該反射材の光の反射率は、ポリエステル樹脂(A)及び白色顔料(B)の比率等により適宜選択されるが、波長450nmの光の反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上である。上記光の反射率が85%以上であると、高輝度が求められる各種製品に適用可能となる。上記反射率は、分光測色計で測定される。
【0093】
本態様の反射材は、機械強度が高く、反射率が非常に高く、経時的な反射率低下が少ないことから、種々の用途の反射材に好適である。特に半導体レーザーや発光ダイオード等の光源からの光線を反射する反射材に好適である。また特に、反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物は、耐熱性にも優れる。したがって、光源からの熱等を受けても非常に安定である。
【0094】
ここで、反射材とは、少なくとも光を放射する方向の面が開放された、または開放されていないケーシングやハウジング一般を包括する。より具体的には、箱状または函状の形状を有するもの、漏斗状の形状を有するもの、お椀状の形状を有するもの、パラボラ状の形状を有するもの、円柱状の形状を有するもの、円錐状の形状を有するもの、ハニカム状の形状を有するものなど、光を反射する面(平面、球面、曲面等の面)を有する三次元形状の成形体一般をも包含する。
【0095】
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる反射材は、耐熱性、反射率の経時安定性に優れ、更には靱性にも優れているので、薄肉形状でも十分な強度を持ち得る可能性が高いと考えられる。そのため、LED素子などの軽量化、小型化に寄与することが期待される。
【0096】
本態様の反射材の用途として、特に好ましくは発光ダイオード素子用の反射材が挙げられる。本態様の発光ダイオード(LED)素子用反射材は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することで得られる。そして、該反射材に、LED素子とその他の部品を組み込み、封止用樹脂により封止、接合、接着等して、発光ダイオード素子を得ることができる。
【0097】
また、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材は、LED用途のみならず、その他の光線を反射する用途にも適応することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、屋外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用の反射材として使用できる。
【0098】
B.第二の態様について
B−1.反射材用ポリエステル樹脂組成物について
第二の態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、2種類のポリエステル樹脂(G)及び(H)と、白色顔料(J)と、無機充填材(K)とを含む。
【0099】
前述のように、従来の反射材用組成物では、耐光性と、反射性と、耐熱性とを兼ね備えた反射材を得ることが難しい、という課題があった。これに対し、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ガラス転移温度もしくは融点の高いポリエステル樹脂(G)が含まれる。そのため、反射材の耐熱性が高まりやすく、さらに寸法安定性も高まる。一方で、本発明の反射材用ポリエステル樹脂には、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)と脂肪族ジオール成分単位(h2)とを含むポリエステル樹脂(H)も含まれる。そのため、反射材の反射性が高まりやすく、さらに長期間に亘って光を照射しても反射率が低下し難くなる。つまり、本態様によれば、長期間に亘って、反射率の高い反射材が得られる。
【0100】
B−1−1.ポリエステル樹脂(G)について
ポリエステル樹脂(G)とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂をいう。ポリエステル樹脂(G)の融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の下限値は好ましくは270℃以上であり、さらに好ましくは290℃である。一方、融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値としては350℃を例示でき、さらに好ましくは335℃である。前記融点やガラス転移温度が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射材(樹脂組成物の成形体)の変形が抑制される。上限温度は原則的には制限されないが、融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際してポリエステル樹脂(H)等の分解が抑制されるため好ましい。つまり、ポリエステル樹脂(G)の融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は、好ましくは270℃〜350℃であり、より好ましくは290〜335℃である。
【0101】
ここで、ポリエステル樹脂(G)は、上記融点(Tm)またはガラス転移温度(Tg)を有し、かつ主骨格にジカルボン酸成分単位(g1)及びジオール成分単位(g2)からなるポリエステル構造を含む樹脂であれば、その種類は特に制限されない。ただしポリエステル樹脂(G)に、芳香族ジカルボン酸由来の成分単位と、環状骨格を有するジオール由来の成分単位とが含まれると、得られる反射材の耐熱性が高まりやすく、さらに反射材用ポリエステル樹脂組成物の成型性が高まりやすくなる。
【0102】
(ジカルボン酸成分単位(g1))
ポリエステル樹脂(G)におけるジカルボン酸成分単位(g1)には、前述のように芳香族ジカルボン酸由来の成分単位が含まれることが好ましく、特にテレフタル酸成分単位(g1−1)30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(g1−2)0〜70モル%とが含まれることが好ましい。ジカルボン酸成分単位(g1)中の各ジカルボン酸成分単位の合計量は100モル%である。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(g1−2)としては、イソフタル酸や、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0103】
ジカルボン酸成分単位(g1)の総量(モル数)に対する、テレフタル酸成分単位(g1−1)の量は、より好ましくは40〜100モル%であり、さらに好ましくは40〜80モル%である。一方、ジカルボン酸成分単位(g1)の総量(モル数)に対する、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位(g1−2)の量は、より好ましくは0〜60モル%であり、さらに好ましくは20〜60モル%である。
【0104】
また、ジカルボン酸成分単位(g1)には、ジカルボン酸成分単位(g1)の総モル数に対して10モル%以下の脂肪族ジカルボン酸成分単位(g1−3)がさらに含まれてもよい。当該脂肪族ジカルボン酸成分単位(g1−3)が含む脂肪族鎖の炭素原子数は、特に制限されないが、4〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜12である。脂肪族ジカルボン酸成分単位(g1−3)を誘導する脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などが挙げられ、好ましくはアジピン酸である。
【0105】
また、ジカルボン酸成分単位(g1)には、ジカルボン酸成分単位(g1)の総モル数に対して10モル%以下の多価カルボン酸成分単位(g1−4)が含まれてもよい。多価カルボン酸成分単位(g1−4)は、例えばトリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸や多塩基酸でありうる。
【0106】
さらに、ジカルボン酸成分単位(g1)には、本態様の効果を損なわない範囲で、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から誘導される成分単位が含まれてもよい。
【0107】
(ジオール成分単位(g2))
ポリエステル樹脂(G)におけるジオール成分単位(g2)には、前述のように、環状骨格を有するジオール成分単位が含まれることが好ましい。環状骨格を有するジオール由来のジオール成分単位は、脂環式ジオール由来の成分単位や芳香族ジオール由来の成分単位でありうるが、耐熱性や成形性の観点から、脂環式ジオール由来の成分単位(g2−1)であることが好ましい。
【0108】
脂環式ジオール成分単位(g2−1)は、炭素数4〜20の脂環式炭化水素骨格を有するジオール由来の成分単位であることが好ましい。脂環式炭化水素骨格を有するジオールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノールなどの脂環式ジオールが挙げられる。なかでも、耐熱性や吸水性、入手容易性などの観点から、シクロヘキサン骨格を有するジオール由来の成分単位が好ましく、シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位(g2−1’)であることがさらに好ましい。
【0109】
ジオール成分単位(g2)の総量(モル数)に対する、脂環式ジオール成分単位(g2−1)の量は、50〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜100モル%である。脂環式ジオール成分単位(g2−1)の量が上記範囲であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の耐熱性が高まりやすい。
【0110】
また、脂環式ジオールには、シス/トランス構造などの異性体が存在するが、耐熱性の観点ではトランス構造のほうが好ましい。したがって、シス/トランス比は、好ましくは50/50〜0/100であり、さらに好ましくは、40/60〜0/100である。シス/トランス比は、ポリエステル樹脂(G)を、重水素化クロロホルム:トリフルオロ酢酸(体積比4:1)に溶解させて、H−NMRで測定される。H−NMR測定は、例えば日本電子社製ECA−500で、条件50℃で行うことができる。得られたデータを解析することで、脂環式ジオール成分単位におけるシス/トランス比が求まる。
【0111】
ジオール成分単位(g2)には、前記脂環式ジオール成分単位(g2−1)の他に、脂肪族ジオールから誘導される脂肪族ジオール成分単位(g2−2)が含まれることが好ましい。ジオール成分単位(g2)に脂肪族ジオール成分単位(g2−2)が含まれると、反射材用ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性が高まる。脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等が挙げられる。
【0112】
ジオール成分単位(g2)の総量(モル数)に対する、脂肪族ジオール成分単位(g2−2)の量は、0〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜40モル%である。脂肪族ジオール成分単位(g2−2)の量が上記範囲であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性が十分に高まる。
【0113】
ジオール成分単位(g2)には、前記脂環式ジオール成分単位(g2−1)の他に、必要に応じて芳香族ジオール成分単位(g2−3)がさらに含まれてもよい。芳香族ジオールとしては、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオール等が挙げられる。
【0114】
(ポリエステル樹脂(G)の物性)
ポリエステル樹脂(G)の極限粘度[η]は0.3〜1.0dl/gであることが好ましい。極限粘度がこのような範囲にある場合、反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性が優れる。ポリエステル樹脂(G)の極限粘度は、ポリエステル樹脂(G)の分子量を調整するなどして調整され得る。ポリエステル樹脂の分子量の調整方法は、重縮合反応の進行度合いや単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなどを適量加える等の公知の方法を採用することができる。
【0115】
上記極限粘度は、ポリエステル樹脂(G)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の算式で算出される値である。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0116】
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて、物性の異なる複数種のポリエステル樹脂(G)を含んでもよい。
【0117】
(ポリエステル樹脂(G)の調製方法)
ポリエステル樹脂(G)は、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合して、ジカルボン酸とジオールとを反応させて得られる。またこのとき、反応系内に分子量調整剤を配合すると、ポリエステル樹脂(G)の極限粘度が調整される。
【0118】
分子量調整剤として、モノカルボン酸およびモノアルコールを使用することができる。上記モノカルボン酸としては、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸等が挙げられる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸等が挙げられる。また、芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などが含まれ、脂環式モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
【0119】
このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸とジオールとの反応系におけるジカルボン酸の合計量1モルに対して、通常は、0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルの量で使用される。
【0120】
B−1−2.ポリエステル樹脂(H)について
ポリエステル樹脂(H)は、脂環式ジカルボン酸由来の脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)と、脂肪族ジオール由来の脂肪族ジオール成分単位(h2)とが少なくとも含まれるポリエステル樹脂である。なお本態様において、前述のポリエステル樹脂(G)に該当するものは、ポリエステル樹脂(H)には含まないものとする。
【0121】
(ジカルボン酸成分単位)
ポリエステル樹脂(H)におけるジカルボン酸成分単位には、前述のように、少なくとも脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)が含まれる。ジカルボン酸成分単位の総量(モル数)に対する、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)の量は50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)の量が50モル%以上であると、得られる反射材の耐光性や靱性が高まりやすい。
【0122】
ここで、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)には、シス/トランス異性体のシス体及びトランス体が存在する。脂環式ジカルボン酸成分単位のシス体の割合(モル)は、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)の総量(シス体及びトランス体の合計量)に対して、20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。脂環式ジカルボン酸成分単位に含まれるシス体の割合は、NMR(核磁気共鳴)により測定され、前述のポリエステル樹脂(G)の脂環式ジオール成分単位のシス/トランス比と同様に求められる。シス体の割合が20モル%以上であると、反射材の成形時にポリエステル樹脂(H)がアモルファスになりやすい。そして、成形物の温度が低下しても、当該アモルファス状態が維持されやすい。そのため、白色顔料の分散性が維持されやすく、得られる反射材の反射率が高まりやすくなる。
【0123】
脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)には、より具体的には、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)30〜100モル%と、前記シクロヘキサンジカルボン酸を除く脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)0〜70モル%とが含まれることが好ましい。シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)と、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)との合計は100モル%である。脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)に含まれるシクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)の量は、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%である。シクロヘキサンジカルボン酸は入手が容易であり、さらに脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)に含まれるシクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)の量が30モル%以上であると、ポリエステル樹脂(H)の重合時の温度を過度に高める必要がなく、重合時の温度管理が容易になる。
【0124】
シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)は、シクロヘキサンジカルボン酸由来の成分単位である。シクロヘキサンジカルボン酸は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のいずれでもありうる。ポリエステル樹脂(H)には、これら由来の成分単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。これらの中でも、重合のし易さや、得られる反射材の耐熱性や強度、剛性等の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸由来の成分単位が特に好ましい。
【0125】
なお、シクロヘキサンジカルボン酸成分単位(h1−1)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が含まれ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0126】
一方、シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)は、脂環式ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸を除く)由来の成分単位である。脂環式ジカルボン酸は、飽和または不飽和(ただし、芳香族性を有さない)の脂環式炭化水素骨格を有し、当該骨格にカルボン酸が2つ結合した化合物であれば特に制限されない。脂環式炭化水素骨格の炭素数は、好ましくは3〜14であり、より好ましくは5〜14である。脂環式ジカルボン酸の例には、1,3−シクロペンタンジカルボン酸や1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、9,10−テトラデカヒドロアントラセンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸等が含まれる。ポリエステル樹脂(H)には、これら由来の成分単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0127】
また、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1−2)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜4のアルキル基が含まれ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等でありうる。
【0128】
ここで、ジカルボン酸成分単位には、上記脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)以外の成分単位が含まれてもよい。具体的には、芳香族ジカルボン酸由来の単位、または脂肪族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸を除く)由来の成分単位が含まれてもよい。芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。一方、脂肪族ジカルボン酸の例には、炭素原子数が好ましくは4〜20、より好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。具体的には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等が含まれる。ポリエステル樹脂(H)には、これら由来の成分単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0129】
また、ポリエステル樹脂(H)には、上記ジカルボン酸成分単位と共に、多価カルボン酸単位が含まれてもよい。多価カルボン酸単位は、例えばトリメリット酸やピロメリット酸等の三塩基酸や多塩基酸由来の成分単位でありうる。
【0130】
(ジオール成分単位)
ポリエステル樹脂(H)におけるジオール成分単位には、前述のように、少なくとも脂肪族ジオール成分単位(h2)が含まれる。本態様において、脂肪族ジオールには、非環状のジオールだけでなく、環状のジオール;つまり、脂環式ジオールも含むものとする。ジオール成分単位の総量(モル数)に対する、脂肪族ジオール成分単位(h2)の量は、50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。脂肪族ジオール成分単位(h2)の量が50モル%以上であると、得られる反射材の耐光性や靱性等が高まりやすい。
【0131】
また、当該脂肪族ジオール成分単位(h2)には、例えば後述のシクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール由来の脂環式ジオール成分単位(h2’)が含まれることが好ましい。ここで、脂環式ジオール成分単位(h2’)には、シス/トランス異性体のシス体及びトランス体が存在する。脂環式ジオール成分単位(h2’)のシス体の割合(モル)は、脂環式ジオール成分単位(h2’)の総量に対して、好ましくは20〜50モル%であり、より好ましくは20〜40モル%である。シス体の割合は、NMR(核磁気共鳴)により測定され、前述のポリエステル樹脂(G)の脂環式ジオール成分単位のシス/トランス比と同様に求められる。シス体の割合が20モル%以上であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物から得られる反射材の反射率が高まりやすい。
【0132】
脂肪族ジオール成分単位(h2)には、より具体的には、シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)30〜100モル%と、シクロヘキサンジメタノールを除く脂肪族ジオール成分単位(h2−2)0〜70モル%とが含まれることが好ましい。これらのシクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)と、脂肪族ジオール成分単位(h2−2)との合計は100モル%である。脂肪族ジオール成分単位(h2)に含まれるシクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)の量は、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%である。シクロヘキサンジメタノールは、入手が容易であり、脂肪族ジオール成分単位(h2)にシクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)が30モル%以上含まれると、ポリエステル樹脂(H)の重合時の温度を過度に高める必要がなく、重合時の温度管理が容易になる。
【0133】
シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)は、シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位である。シクロヘキサンジメタノールは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれでもありうるが、1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。ポリエステル樹脂(H)には、これら由来の成分単位を1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。これらの中でも、重合のし易さや、得られる反射材の耐熱性、強度、剛性等の観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位が特に好ましい。
【0134】
シクロヘキサンジメタノール成分単位(h2−1)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0135】
一方、シクロヘキサンジメタノール以外の脂肪族ジオール成分単位(h2−2)は、脂肪族ジオール(シクロヘキサンジメタノールを除く)由来の成分単位である。脂肪族ジオールは、飽和または不飽和の非環式または環式(ただし、芳香族性を有さない)の炭化水素骨格を有し、当該脂環式炭化水素骨格にヒドロキシル基が2つ結合した化合物であれば特に制限されない。炭化水素骨格の炭素数は、好ましくは4〜20であり、より好ましくは5〜16である。脂肪族ジオールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノール、(デカヒドロナフタレン−1、4−ジイル)ジメタノール、(デカヒドロナフタレン−2、6−ジイル)ジメタノール、(テトラデカヒドロアントラセン−9,10−ジイル)ジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノールなどの脂環式ジオール;エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等の非環式脂肪族ジオールが挙げられる。ポリエステル樹脂(H)には、これら由来の成分単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0136】
脂肪族ジオール成分単位(h2−2)は、置換されていてもよい。置換基の例には、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等でありうる。
【0137】
また、ジオール成分単位には、本態様の効果を損なわない範囲で、上記脂肪族ジオール成分単位(h2)以外のジオール由来の成分単位、具体的には芳香族ジオール由来の成分単位が含まれてもよい。芳香族ジオールの例には、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などが含まれる。ポリエステル樹脂(H)には、芳香族ジオール由来の成分単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
【0138】
(ポリエステル樹脂(H)の物性)
ポリエステル樹脂(H)は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)を実質的に有さないことが好ましい。つまり、ポリエステル樹脂(H)がアモルファスであることが好ましい。前述のように、ポリエステル樹脂(H)がアモルファスであると、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の光の反射率が高まりやすい。
【0139】
一方、示差走査熱量計で測定されるガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物から得られる反射材の耐熱性が高まりやすい。また、ポリエステル樹脂(H)のガラス転移温度(Tg)は、ポリエステル樹脂(H)の架橋によって高めることができる。ポリエステル樹脂(H)のガラス転移温度(Tg)を高める方法は、例えばポリエステル樹脂(H)の分子末端のアルコールと反応可能な官能基(例えばエポキシ基)を有する架橋剤、もしくは、ポリエステル樹脂(H)の分子末端のカルボン酸と反応可能な官能基(例えばオキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基等)を有する架橋剤で、架橋する方法でありうる。また、過酸化物や電子線などによりラジカルを発生させて、ポリエステル樹脂の主鎖のC−H結合をラジカル化して、架橋させることもできる。この際、架橋助剤を用いて、架橋を促進させることもできる。
【0140】
ポリエステル樹脂(H)の極限粘度[η]は0.2〜10dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.3〜5dl/gであり、さらに好ましくは0.4〜2.0dl/gである。極限粘度がこのような範囲にあると、反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性が優れる。ポリエステル樹脂(H)の極限粘度は、ポリエステル樹脂(H)の分子量等によって調整され得る。ポリエステル樹脂の分子量の調整方法は、重縮合反応の進行度合いや単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなどを適量加える等の公知の方法でありうる。ポリエステル樹脂(H)の極限粘度の測定方法は、前述のポリエステル樹脂(G)の極限粘度の測定方法と同様でありうる。
【0141】
なお、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、物性の異なる複数種のポリエステル樹脂(H)が含まれてもよい。
【0142】
(ポリエステル樹脂(H)の調製方法)
ポリエステル樹脂(H)の調製方法は特に制限されず、前述のポリエステル樹脂(G)の調製方法と同様でありうる。例えば反応系内に分子量調整剤等を配合して、脂環式ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとを、エステル化反応させる。そして、当該エステル化物を、所望の極限粘度(分子量)になるまで重縮合反応させる方法等でありうる。
【0143】
ここで、前述の脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)に含まれるシス体の割合は、原料である脂環式ジカルボン酸のシス体とトランス体との比率に大きく依存する。したがって、脂環式ジカルボン酸成分単位(h1)に含まれるシス体の量を20モル%以上とするためには、原料である脂環式ジカルボン酸に含まれるシス型の脂環式ジカルボン酸の量(モル)を、脂環式ジカルボン酸の総量(モル)に対して20モル%以上とすることが好ましい。
【0144】
同様に、脂環式ジオール成分単位(h2’)に含まれるシス体の割合も、原料である脂環式ジオールのシス体とトランス体との比率に大きく依存する。したがって、脂環式ジオール成分単位(h2’)に含まれるシス体の量を20モル%以上とするためには、原料である脂環式ジオールに含まれるシス型の脂環式ジオールの量(モル)を、脂環式ジオールの総量(モル)に対して20モル%以上とすることが好ましい。脂環式ジカルボン酸及び脂環式ジオールにおける、シス/トランスの比率は、前述のポリエステル樹脂(G)の脂環式ジオール成分単位のシス/トランス比と同様に求められる。例えば脂環式ジカルボン酸や脂環式ジオールを、重水素化クロロホルム:トリフルオロ酢酸(体積比4:1)に溶解させて、H−NMR測定する。H−NMR測定は、日本電子社製ECA−500で、条件50℃で行うことができる。そして、得られたデータを解析することで、脂環式ジカルボン酸や脂環式ジオールにおけるシス/トランス比が求められる。
【0145】
ここで、ポリエステル樹脂(H)の調製時にも、反応系内に分子量調整剤を配合すると、ポリエステル樹脂(H)の極限粘度が調整される。分子量調整剤は、前述のポリエステル樹脂(G)の調製時に用いる分子量調整剤と同様でありうる。このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸とジオールとの反応の反応系におけるジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下添加することが好ましく、より好ましくは0.05モル以下である。
【0146】
B−1−3.白色顔料(J)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、白色顔料(J)が含まれる。白色顔料(J)は、樹脂組成物を白色化することで、反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる光反射機能を高められるものであれば特に制限されない。白色顔料(J)の具体例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナ等が含まれる。反射材用ポリエステル樹脂組成物には、これらの白色顔料を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。また、これらの白色顔料は、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。例えば、白色顔料は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
【0147】
白色顔料(J)は、特に酸化チタンが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物が酸化チタンを含むと、得られる反射材の反射率や隠蔽性といった光学特性が高まる。酸化チタンは、ルチル型が好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.3μmである。平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに画像解析装置(ルーゼックスIIIU)等で測定される。
【0148】
また白色顔料(J)は、反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の反射率を均一化させるなどの観点から、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
【0149】
B−1−4.無機充填材(K)について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、無機充填材(K)が含まれる。無機充填材(K)は、反射材用ポリエステル樹脂組成物から得られる反射材の強度を高める。無機充填材(K)は、例えば繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の高いアスペクト比を有する形状の種々の無機化合物でありうる。
【0150】
無機充填材(K)の平均長さは10μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜5mmである。無機充填材(K)のアスペクト比(アスペクト比=長径/短径)は、反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の強度や線膨張係数の低減等の観点から1〜500であることが好ましく、より好ましくは5〜200であり、さらに好ましくは10〜350である。無機充填材(K)の平均長さやアスペクト比の測定は、無機充填材(K)を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物や、成形体から、樹脂成分を溶媒によって溶解して除去するか、または組成物や成形体を焼成することにより、無機充填材(K)を分離する。分離された無機充填材(K)を光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、無機充填材(K)の長径および短径を測定して、アスペクト比を算出する。
【0151】
無機充填材(K)の具体例には、ガラス繊維、カルボニル構造を有する無機化合物(例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカーなど)、ハイドロタルサイト、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、ワラストナイト、ゾノトライト等が含まれる。これらは反射材用ポリエステル樹脂組成物に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。無機充填材を2種以上組み合わせると、無機充填材(K)のポリエステル樹脂(G)及び(H)への分散性が高まることがある。無機充填材の分散性が高まると、反射材用ポリエステル樹脂組成物から得られる反射材の耐熱性や機械強度等が高まるだけでなく、白色顔料(J)の分散性が向上することがある。
【0152】
平均長さやアスペクト比が大きな無機充填材としては、例えばワラストナイト(珪酸カルシウム)等の珪酸塩、チタン酸カリウムウィスカーなどのチタン酸塩等が挙げられる。また、平均長さやアスペクト比が小さい無機充填材の例には、カルボニル基を有する無機充填材(BW)が挙げられる。具体的には炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー等でありうる。
【0153】
ここで、無機充填剤(K)として、ガラス繊維を含むと、得られる反射材の強度、剛性および靭性などが特に高まる。特に、ガラス繊維が細いほど、得られる反射材の機械物性(特に薄肉曲げ強度)が高まる。また、反射材の収縮も抑制される。
【0154】
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維の平均長は、良好な成形性の保持および得られる成形品の機械的特性や耐熱性の向上の観点から、1μm〜20mmであることが好ましく、より好ましくは5μm〜10mmであり、さらに好ましくは10μm〜5mmである。また、ガラス繊維のアスペクト比は5〜2000であることが好ましく、より好ましくは30〜600である。
【0155】
上記ガラス繊維は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。たとえばガラス繊維は、ビニルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
【0156】
ガラス繊維には、集束剤が塗布されていてもよい。集束剤の好ましい例には、アクリル系、アクリル/マレイン酸変系、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/エポキシ変性系の化合物が含まれる。集束剤は1種のみ塗布されてもよく、2種以上組み合わせて塗布されてもよい。
【0157】
さらに、ガラス繊維は、表面処理剤及び集束剤の両方によって処理されていてもよい。表面処理剤及び集束剤が併用されると、ガラス繊維とポリエステル樹脂(G)やポリエステル樹脂(H)等との結合性が高まり、得られる反射材の外観が良好になったり、反射材の強度が高まりやすい。
【0158】
ガラス繊維は、反射材用ポリエステル樹脂組成物中に均一に分散されていることが好ましく、また成形体である反射材にも均一に分散されていることが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物中にガラス繊維が均一に分散されていると造粒性が高まり、成形体の機械的特性も向上する。
【0159】
B−1−5.その他
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加剤が含まれてもよい。添加剤の例には、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等);耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等);光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オキサニリド類等);他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等);難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等);蛍光増白剤;可塑剤;増粘剤;帯電防止剤;離型剤;顔料;結晶核剤;種々公知の配合剤;等が含まれる。
【0160】
また、反射材用ポリエステル樹脂組成物には、リンを含む酸化防止剤が含まれてもよい。リンを含む酸化防止剤は、P(OR)構造を有する酸化防止剤であることが好ましい。ここで、Rはアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリーレン基などであり、3個のRは同一でも異なっていてもよく、2個のRが環構造を形成していてもよい。リンを含む酸化防止剤の例には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが含まれる。樹脂組成物にリンを含む酸化防止剤を含むと、高温雰囲気下(特に、リフロー工程のように250℃を超える条件下)において、ポリエステル樹脂(G)やポリエステル樹脂(H)の分解反応が抑制される。その結果、反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる反射材の変色等が抑制される。
【0161】
なお、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、他の樹脂組成物等と組み合わせて使用する場合には、添加剤として、他の組成物に含まれる成分と作用しないもの(例えば触媒毒にならない化合物)を選択することが好ましい。
【0162】
B−1−6.反射材用ポリエステル樹脂組成物の組成について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(G)、ポリエステル樹脂(H)、白色顔料(J)、及び無機充填材(K)の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(H)が3〜30質量部含まれる。ポリエステル樹脂(H)は、好ましくは3質量部以上25質量部未満であり、より好ましくは5〜20質量部である。ポリエステル樹脂(H)が上記範囲含まれると、当該樹脂組成物から得られる反射材の反射性が高まりやすい。ただし、ポリエステル樹脂(H)の量が30質量部を超えると、反射材の耐熱性が低下しやすくなる。
【0163】
一方、ポリエステル樹脂(G)、ポリエステル樹脂(H)、白色顔料(J)、及び無機充填材(K)の合計100質量部に対するポリエステル樹脂(G)の量は、20質量部以上50質量部未満であることが好ましく、より好ましくは30〜50質量部である。ポリエステル樹脂(G)の量が当該範囲であると、当該樹脂組成物から得られる反射材の耐熱性や寸法安定性が高まりやすい。
【0164】
ポリエステル樹脂(G)、ポリエステル樹脂(H)、白色顔料(J)、及び無機充填材(K)の合計100質量部に対する白色顔料(J)の量は、10質量部以上50質量部未満であることが好ましく、より好ましくは15〜40質量部である。白色顔料(J)の量が当該範囲であると、当該樹脂組成物から得られる反射材の反射性が高まりやすい。
【0165】
ポリエステル樹脂(G)、ポリエステル樹脂(H)、白色顔料(J)、及び無機充填材(K)の合計100質量部に対する無機充填材(K)の量は、5質量部以上40質量部未満であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。無機充填材(K)の量が当該範囲であると、当該樹脂組成物から得られる反射材の強度が高まりやすい。
【0166】
B−2.反射材用ポリエステル樹脂組成物の製造方法について
本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
【0167】
B−3.反射材用ポリエステル樹脂組成物の用途について
本態様の反射材は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物を任意の形状に成形した成形物である。当該反射材の光の反射率は、白色顔料(J)の比率等により適宜選択されるが、波長450nmの光の反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上である。上記光の反射率が80%以上であると、高輝度が求められる各種製品に適用可能となる。上記反射率は、分光測色計で測定される。
【0168】
また、当該反射材は、出力16mW/cmで500時間、紫外線を照射後に測定される、波長450nmの光の反射率が75%以上であることが好ましく、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。上記光の反射率が75%以上であると、高輝度が求められる各種製品に反射材を適用可能となる。上記反射率は、分光測色計で測定される。なお、紫外線の照射は、例えば、ダイプラ・ウィンテス社製のスーパーウィンミニ等で行うことができる。
【0169】
本態様の反射材は、耐熱性及び耐光性が高く、さらに反射率が非常に高く、経時的な反射率低下が少ないことから、種々の用途の反射材に好適である。特に半導体レーザーや発光ダイオード等の光源からの光線を反射する反射材に好適である。
【0170】
ここで、反射材とは、少なくとも光を放射する方向の面が開放された、または開放されていないケーシングやハウジング一般を包括する。より具体的には、箱状または函状の形状を有するもの、漏斗状の形状を有するもの、お椀状の形状を有するもの、パラボラ状の形状を有するもの、円柱状の形状を有するもの、円錐状の形状を有するもの、ハニカム状の形状を有するものなど、光を反射する面(平面、球面、曲面等の面)を有する三次元形状の成形体一般をも包含する。
【0171】
また、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる反射材は、耐熱性、耐光性、反射率の経時安定性に優れ、更には靱性にも優れているので、薄肉形状でも十分な強度を持ち得る可能性が高いと考えられる。そのため、LED素子などの軽量化、小型化に寄与することが期待される。
【0172】
本態様の反射材の用途として、特に好ましくは発光ダイオード素子用の反射材が挙げられる。本態様の発光ダイオード(LED)素子用反射材は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することで得られる。そして、該反射材に、LED素子とその他の部品を組み込み、封止用樹脂により封止、接合、接着等して、発光ダイオード素子を得ることができる。
【0173】
また、本態様の反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材は、LED用途のみならず、その他の光線を反射する用途にも適応することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、屋外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用の反射材として使用できる。
【実施例】
【0174】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0175】
A.第一の態様の実施例
<ポリエステル樹脂(A)の調製>
以下の方法で、ポリエステル樹脂(A1)〜(A7)を調製した。
【0176】
[製造例A−1]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:59/41)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:25/75)(東京化成工業社製)121.6部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.083部を加え、150℃から200℃まで3時間かけて昇温し、常圧下でエステル化反応をさせた。
前記エステル化反応終了後に、常圧から1Torrまで1時間かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度250℃まで昇温し重縮合反応をさせた。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させ、生成した重合体(ポリエステル樹脂(A1))を取り出した。
【0177】
[製造例A−2]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:90/10)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)121.6部とを原料として使用した以外は、製造例A−1と同様にしてポリエステル樹脂(A2)を得た。
【0178】
[製造例A−3]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:10/90)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:22/78)(東京化成工業社製)121.6部とを原料として使用した以外は製造例A−1と同様にしてポリエステル樹脂(A3)を得た。
【0179】
[製造例A−4]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:3/97)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)121.6部とを原料として使用した以外は製造例A−1と同様にしてポリエステル樹脂(A4)を得た。
【0180】
[製造例A−5]
ジメチルテレフタレートl06.2部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)94.6部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.0037部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
前記エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。生成した重合体を取り出した。さらに、得られた重合体を260℃、1Torr以下で3時間固相重合を行ない、重合体(ポリエステル樹脂(A5))を得た。
【0181】
[製造例A−6]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:59/41)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:25/75)(東京化成工業社製)121.6部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.083部を加え、150℃から200℃まで1時間かけて昇温し、更に200℃で3時間重縮合反応をさせた。温度を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させ、生成した重合体(ポリエステル樹脂(A6))を取り出した。
【0182】
[製造例A−7]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:10/90)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)121.6部とを原料として使用した以外は製造例A−1と同様にしてポリエステル樹脂(A7)を得た。
【0183】
[評価]
得られたポリエステル樹脂(A1)〜(A7)の脂環式ジカルボン酸成分単位に含まれるシス体とトランス体との比率(モル比)、及び脂環式ジオール成分単位に含まれるシス体とトランス体との比率(モル比)、各ポリエステル樹脂の融点、極限粘度、及びTgを測定した。結果を表1に示す。各ポリエステル樹脂の融点及び極限粘度は、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定した。また、シス体とトランス体とのモル比(シス/トランス比)、及び極限粘度は以下の方法で測定した。
【0184】
(シス/トランス比の測定)
ポリエステル樹脂(A1)〜(A7)を、重水素化クロロホルム:トリフルオロ酢酸(体積比4:1)に溶解させて、H−NMR測定を行った。H−NMR測定は、日本電子社製ECA−500で、条件50℃で行った。得られたデータを解析し、脂環式ジカルボン酸成分単位におけるシス/トランス比、及び脂環式ジオール成分単位におけるシス/トランス比を求めた。
【0185】
(極限粘度の測定方法)
各ポリエステル樹脂の極限粘度は、ポリエステル樹脂(A1)〜(A7)をそれぞれ、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の算式で算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0186】
【表1】
【0187】
<反射材用ポリエステル樹脂組成物の調製>
以下の方法で、反射材用ポリエステル樹脂組成物を調製した。各実施例で使用した、ポリエステル樹脂(A1)〜(A5)以外の材料は以下の通りである。
【0188】
(原料)
・白色顔料(B):酸化チタン(粉末状、平均粒径*a0.21μm)
・ガラス繊維(C):長さ3mm、平均直径*b(平均繊維長)6μm(日本電気硝子(株)製ECS03T−790DE)
・酸化防止剤(D):アデカスタブPEP−36(アデカ(株))
*a 白色顔料(B)の平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに画像解析装置(ルーゼックスIIIU)にて測定した。
*b ガラス繊維(C)の平均繊維長は、光学顕微鏡を介して、100本のガラス繊維について目視で測定し、平均値を算出した。
【0189】
[実施例A−1]
ポリエステル樹脂(A1)54.5質量%、白色顔料(B)35.0質量%、ガラス繊維(C)10.0質量%、及び酸化防止剤(D)0.5質量%を、タンブラーブレンダーにて混合した。当該混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度130℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押し出し物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状組成物を得た。
【0190】
[実施例A−2]
ポリエステル樹脂(A1)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、及び酸化防止剤(D)を、表2に示す質量比でポリ容器に入れ混合した。混合物を、ラボプラストミル(東洋精機:4C150)にて温度200℃で5分間、原料を溶融混錬して樹脂組成物を得た。
【0191】
[実施例A−3]
ポリエステル樹脂(A2)および白色顔料(B)を表2に示す質量比とした以外は、実施例A−2と同様にして樹脂組成物を得た。
【0192】
[比較例A−1]
ポリエステル樹脂(A3)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、及び酸化防止剤(D)を、表2に示す質量比でポリ容器に入れ混合した。混合物を、ラボプラストミル(東洋精機:4C150)にて温度250℃で5分間、原料を溶融混錬して樹脂組成物を得た。
【0193】
[比較例A−2]
ポリエステル樹脂(A3)をポリエステル樹脂(A4)に変更した以外は、比較例A−1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0194】
[比較例3]
ポリエステル樹脂(A5)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、及び酸化防止剤(D)を、表2に示す組成比率でタンブラーブレンダーを用いて混合した。混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押し出し物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状組成物(樹脂組成物)を得た。
【0195】
[評価]
各実施例及び比較例で調製した反射材用ポリエステル樹脂組成物の曲げ強度、靱性、及び初期反射率を以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0196】
(曲げ強度及び靱性の測定方法)
各実施例及び比較例で得られた反射材用ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)にて下記成形条件で成形し、試験片を得た。試験片は、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmとした。
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下に24時間放置した。次いで、温度23℃、湿度50%Rhの雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行った。このときの強度及び靱性を測定した。
【0197】
・成形条件
(i)実施例A−1〜A−3の成形条件
成形機シリンダー温度:200℃
金型温度:30℃
(ii)比較例A−1及びA−2の成形条件
成形機シリンダー温度:250℃
金型温度:100℃
(iii)比較例A−3の成形条件
成形機シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
【0198】
(初期反射率の測定方法)
各実施例及び比較例で得られた反射材用ポリエステル樹脂組成物を、成形機(住友重機械工業(株)社製、SE50DU)にて、下記条件で射出成形し、試験片を得た。試験片は、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmとした。
コニカミノルタ(株)社製分光測色計CM3500dにて、当該試験片の波長領域380nmから740nmの反射率を求めた。450nmの反射率を代表値として初期反射率を評価した。
【0199】
・成形条件
(i)実施例A−1〜A−3の成形条件
成形機シリンダー温度:200℃
金型温度:30℃
(ii)比較例A−1及びA−2の成形条件
成形機シリンダー温度:250℃
金型温度:100℃
(iii)比較例A−3の成形条件
成形機シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
【0200】
【表2】
【0201】
上記表2に示されるように、ポリエステル樹脂(A)中の、脂環式ジカルボン酸成分単位(a1)に含まれるシス体の比率が20モル%以上である場合(実施例A−1〜A−3)、シス体の比率が20モル%未満である場合(比較例A−1及び比較例A−2)と比較して、波長450nmの光、及び波長550nmの光の初期反射率が高まった。これらの実施例に含まれるポリエステル樹脂(A1)及び(A2)は、融点を有さず、非晶性であったため、樹脂組成物の反射率が高まったと推察される。
【0202】
<反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物の調製>
以下の方法で、反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物を調製した。各実施例で使用した、ポリエステル樹脂(A6)及び(A7)以外の材料は以下の通りである。なお、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、及び酸化防止剤(D)については、前述の反射材用ポリエステル樹脂組成物の調製に用いたものと同様とした。
(原料)
・過酸化物(E):パーヘキサ(登録商標)HC(日本油脂株式会社製)
・架橋助剤(F1):TAIC(登録商標)トリイソシアヌレート(日本化成社製)
・架橋助剤(F2):SR295(サートマー社製)
【0203】
[実施例A−4]
ポリエステル樹脂(A6)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、酸化防止剤(D)、過酸化物(E)、及び架橋助剤(F1)を、表3に示す質量比でポリ容器に入れ混合した。混合物を、ラボプラストミル(東洋精機:4C150)にて温度100℃で5分間、原料を溶融混錬した。その後、プレス機にてシート状にし、架橋型ポリエステル樹脂(A’)を含む反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物のシートを得た。
【0204】
[実施例A−5〜A−14および比較例A−4]
ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、酸化防止剤(D)、過酸化物(E)、及び架橋助剤(F1)もしくは(F2)を表3に示す質量比とした以外は、実施例A−4と同様にして架橋型ポリエステル樹脂(A’)を含む反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0205】
[評価]
実施例A−4〜A−14、及び比較例A−4で得られた反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物の反射率、及びリフロー耐熱性評価を以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
【0206】
(初期反射率の測定方法)
前述のシート状の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、熱プレス機(神藤金属工業社製)を用いて、下記条件で成形した。試験片は、長さ45mm、幅45mm、厚さ0.5mmとした。そして、ミノルタ(株)CM3500dを用いて、当該試験片の波長領域360nm〜740nmの反射率を求めた。そして、450nmの反射率を代表値として初期反射率を評価した。
・プレス条件
金型温度:200℃
プレス時間:5分
【0207】
(紫外線照射後の反射率の測定方法)
初期反射率を測定した試験片を、下記の紫外線照射装置内で、500時間紫外線照射した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、紫外線照射後の反射率とした。
・紫外線照射条件
紫外線照射装置:ダイプラ・ウィンテス(株) スーパーウィンミニ
出力:16mW/cm
【0208】
(耐熱性評価)
初期反射率を測定した試験片を150℃のオーブンに1分間放置した。徐冷後、この試験片を目視で観察し、以下の基準により評価した。
・評価基準
A:加熱工程前後で試験片形状に全く変化がない
B:加熱工程後に試験片の骨格は維持したまま一部が変化
C:加熱工程後に試験片全体が溶融し、大きく形状が変化
【0209】
【表3】
【0210】
上記表3に示されるように、過酸化物(E)や、架橋助剤(F)を含まない、もしくはいずれか一方のみ含む実施例A−10〜A−12や、過酸化物(E)または架橋助剤(F)が少ない実施例A−13及びA−14では、初期反射率は優れるものの、紫外線照射や耐熱性試験により、変形等が生じやすかった。これに対し、過酸化物(E)及び架橋助剤(F)を含み、ポリエステル樹脂(A)が架橋された反射材用架橋型ポリエステル樹脂組成物では、紫外線照射を行っても、反射率の低下が少なく、さらに耐熱性試験の評価が非常に優れた(実施例A−4〜A−9)。
【0211】
また、ポリエステル樹脂(A)の脂環式ジカルボン酸成分単位中のシス体が少ない比較例A−4では、初期反射率も低かった。
【0212】
B.第二の態様の実施例
<ポリエステル樹脂(G)及び(H)の調製>
以下の方法で、ポリエステル樹脂(G)及びポリエステル樹脂(H)を調製した。
【0213】
[製造例B−1]
ジメチルテレフタレートl06.2部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)94.6部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.0037部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
前記エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。生成した重合体を取り出した。さらに、得られた重合体を260℃、1Torr以下で3時間固相重合を行ない、重合体(ポリエステル樹脂(G))を得た。
【0214】
[製造例B−2]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス/トランス比:59/41)(日興リカ社製)143.8部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:25/75)(東京化成工業社製)121.6部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.083部を加え、150℃から200℃まで3時間かけて昇温し、常圧下でエステル化反応をさせた。
前記エステル化反応終了後に、常圧から1Torrまで1時間かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度250℃まで昇温し重縮合反応をさせた。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させ、生成した重合体(ポリエステル樹脂(H))を取り出した。
【0215】
[評価]
得られたポリエステル樹脂(G)及び(H)の融点、Tg及び極限粘度を以下の方法で測定した。各ポリエステル樹脂の融点及びTgは、JIS−K7121に準じて示差走査熱量計で測定した。また、極限粘度は以下の方法で測定した。さらに、ポリエステル樹脂(H)の脂環式ジオール成分単位に含まれるシス体とトランス体との比率(モル比)を、以下の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0216】
(融点及びTg)
ポリエステル樹脂(G)及び(H)の融点及びTgの測定は、JIS−K7121に準じて行った。測定装置としてX−DSC7000(SII社製)を準備した。これに、ポリエステル樹脂(G)または(H)の試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/分で、320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で30℃まで降温させた。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」、ベースラインと変曲点での接線の交点「Tg」とした。
【0217】
(極限粘度の測定方法)
各ポリエステル樹脂の極限粘度は、ポリエステル樹脂(G)および(H)をそれぞれ、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の算式で算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0218】
(ポリエステル樹脂(G)および(H)の脂環式ジオール成分単位に含まれるシス体とトランス体との比率(シス/トランス比)の測定方法)
シス/トランス比(モル比)は、ポリエステル樹脂(G)または(H)を、重水素化クロロホルム:トリフルオロ酢酸(体積比4:1)に溶解させて、H−NMR測定することにより行った。H−NMR測定は、日本電子社製ECA−500で、条件50℃で行った。得られたデータを解析し、脂環式ジオール成分単位におけるシス/トランス比を求めた。
【0219】
【表4】
【0220】
<反射材用ポリエステル樹脂組成物の調製>
以下の方法で、反射材用ポリエステル樹脂組成物を調製した。各実施例で使用した、ポリエステル樹脂(G)及び(H)以外の材料は以下の通りである。
【0221】
(原料)
・白色顔料(J):酸化チタン(粉末状、平均粒径*a0.21μm)
・無機充填材(ガラス繊維)(K):長さ3mm、平均直径*b(平均繊維長)6μm(日本電気硝子(株)製ECS03T−790DE)
・酸化防止剤:IRGANOX 1010(BASF)ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5 −ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
*a 白色顔料(J)の平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに画像回折装置(ルーゼックスIIIU)にて測定した。
*b ガラス繊維(K)の平均繊維長は、光学顕微鏡を介して、100本のガラス繊維について目視で測定し、平均値を算出した。
【0222】
[実施例B−1]
前述の方法で調製したポリエステル樹脂(G)49.2質量部と、前述の方法で調製したポリエステル樹脂(H)5.5質量部と、白色顔料(酸化チタン)(J)35質量部と、無機充填材(ガラス繊維)(K)10質量部と、酸化防止剤0.3質量部とをタンブラーブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した。その後、当該混練物をストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状の反射材用樹脂組成物を得た。組成物の混合均一性(コンパウンド性)は良好であった。
【0223】
[実施例B−2、B−3および比較例B−1、参考例B−2]
以下の表5に示される組成に変更した以外は、実施例B−1と同様にしてペレット状の反射材用ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0224】
[参考例B−3]
シリンダー温度を130℃に変更し、表5に示される組成に変更した以外は実施例B−1と同様にしてペレット状の反射材用ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0225】
[評価]
各実施例および各比較例で得られた樹脂組成物の、各種反射率、曲げ強度及びリフロー耐熱性評価を、以下の方法で評価した。なお、図1に実施例B−1〜B−3及び比較例B−1の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂(H)の比率と、反射率(初期反射率、及びUV500時間照射後の反射率)とをプロットしたグラフを示す。
【0226】
<反射率>
(初期反射率)
得られたペレット状の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形した。試験片は、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmとした。ミノルタ(株)CM3500dを用いて、得られた試験片の波長領域360nm〜740nmの反射率を求めた。そして、450nmの反射率を代表値として初期反射率とした。
成形機: 住友重機械工業(株)社製、SE50DU
・成形条件
(i)実施例B−1〜B−3、比較例B−1、参考例B−2の成形条件
成形機シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
(ii)参考例B−3の成形条件
成形機シリンダー温度:200℃
金型温度:30℃
【0227】
(紫外線照射後の反射率)
初期反射率を測定した試験片を、下記の紫外線照射装置内で、500時間紫外線を照射した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、紫外線照射後の反射率とした。
紫外線照射装置:ダイプラ・ウィンテス(株) スーパーウィンミニ
出力:16mW/cm
【0228】
<曲げ強度の測定方法>
各実施例及び比較例で得られた反射材用ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)にて下記成形条件で成形し、試験片を得た。試験片は、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmとした。
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下に24時間放置した。次いで、温度23℃、湿度50%Rhの雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、このときの強度を測定した。
・成形条件
(i)実施例B−1〜B−3、比較例B−1、参考例B−2の成形条件
成形機シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
(ii)参考例B−3の成形条件
成形機シリンダー温度:200℃
金型温度:30℃
【0229】
<リフロー耐熱性評価>
初期反射率を測定した試料片を、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、試料片の表面温度を260℃とし、かつ20秒間当該温度で保持する温度プロファイルの熱処理(リフローはんだ工程と同様の熱処理)を施した。徐冷後、この試験片を目視で観察し、以下の基準により評価した。
・評価基準
A:リフロー加熱工程前後で試験片形状に変化がない
B:リフロー加熱工程前後で試験片形状に変化はないが、表面が荒れる
C:リフロー加熱工程後に試験片が一部溶融
D:リフロー加熱工程後に試験片が溶融し、形状が変化
【0230】
【表5】
【0231】
上記表5及び図1に示されるように、反射材用ポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(G)、ポリエステル樹脂(H)、白色顔料(J)、及び無機充填材(K)の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(H)の量が3質量部以上であると、初期反射率が高いだけでなく、紫外線照射後の反射率が89.0%以上と、比較例1に対して大幅に高い値を示した(実施例B−1〜B−3)。ただし、ポリエステル樹脂(H)の量が30質量部を超えると(参考例B−2及び参考例B−3)、初期の反射率が高くなるものの、リフロー耐熱性の評価結果が低くなり、さらに紫外線照射によって溶融しやすかった。つまり、耐熱性が低くなりやすかった。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本出願は、2014年3月31日出願の特願2014−072275、2014年8月25日出願の特願2014−170545、及び2014年12月10日出願の特願2014−250260に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【0233】
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形物は、高い反射率を有する。したがって、各種照明装置等の反射材に適用可能である。
図1