(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554101
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】洋上風力タービンの基礎を設置する方法及び洋上風力タービンの基礎を設置するのに用いるテンプレート
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20190722BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20190722BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
F03D13/25
【請求項の数】35
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-537137(P2016-537137)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公表番号】特表2016-529426(P2016-529426A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】DK2014000043
(87)【国際公開番号】WO2015028020
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】PA201370470
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】314008563
【氏名又は名称】エムエイチアイ ヴェスタス オフショア ウィンド エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン,イアナー
(72)【発明者】
【氏名】オルセン,ニールス クリスティアン
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−049029(JP,A)
【文献】
特開2011−144532(JP,A)
【文献】
特開2012−012930(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0183101(US,A1)
【文献】
特開平11−158886(JP,A)
【文献】
米国特許第04733993(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0321732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 5/22〜 5/80
E02D 7/00〜 13/10
E02B 3/04〜 3/14
F03D 1/00〜 80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービンの基礎を設置する方法であって、該方法は、
パイル(P1、P2、P3、P4)を受けるように構成されている少なくとも1つの中空のガイド部材(110)と、少なくとも1つのサクションバケット(130)と、前記少なくとも1つの中空のガイド部材及び前記少なくとも1つのサクションバケットに結合するフレーム体(120)とを備えるテンプレート(100)を準備することと、
前記テンプレートを海底(SF)に配置することと、
該サクションバケットを海底に打ち込むことにより前記テンプレートを海底に解放可能に固定するために、前記少なくとも1つのサクションバケットに負圧を与えることと、
前記フレーム体を海底に対して水平にするように前記少なくとも1つのサクションバケットの根入れ深さを調整するため、前記少なくとも1つのサクションバケットに与えられる前記負圧を制御することと、
前記少なくとも1つのパイルを前記中空のガイド部材内に配置することと、
前記中空のガイド部材によってガイドされる前記少なくとも1つのパイルを海底に打ち込むことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フレーム体の所定の基準レベルに対する前記フレーム体の傾斜を求めることと、少なくとも1つのサクションバケットに与えられる前記負圧を調整することとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フレーム体を水平にするように、該フレーム体の前記求められた傾斜に基づいて前記少なくとも1つのサクションバケットの前記根入れ深さを決定することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記決定された根入れ深さに応じて前記負圧を制御することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記負圧を制御することは、前記フレーム体の傾斜を連続的に感知することと、該感知された傾斜に応じて前記少なくとも1つのサクションバケットに与えられる前記負圧を調整することとを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記負圧を与えている間の少なくとも1つのサクションバケットの実際の根入れ深さを決定することと、該実際の根入れ深さに応じて前記負圧を制御することとを更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
複数のサクションバケットが設けられ、前記方法は、各サクションバケットを個別のポンプシステムに接続することを更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数のサクションバケットが設けられ、前記方法は、前記複数のサクションバケットを、単一のポンプを有するポンプシステムに接続することを更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポンプシステムは、各サクションバケットに個々に負圧を与えるように構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記負圧を制御することは、各サクションバケットの弁部材を制御して、各サクションバケットに与えられる前記負圧を個々に制御することを含み、前記ポンプは前記弁部材に結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記負圧を制御することは、前記少なくとも1つのサクションバケットから汲み出される水の量及び流量のうちの少なくとも一方を制御することを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパイルを海底に打ち込んだ際、前記少なくとも1つのサクションバケットに正圧を与えることにより、海底から前記サクションバケット、ひいては前記テンプレートを解放することを更に含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記正圧は、前記サクションバケットに水を汲み入れることによって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記正圧は、前記サクションバケットに圧縮空気を供給することによって得られる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記サクションバケットの前記解放は、前記サクションバケット及び/又は前記テンプレートに引上力を付加的に印加することによって更に補助される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記テンプレートの解放を容易にするために、パルス化された正圧がもたらされる、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記テンプレートの解放を容易にするように空気の充填されたバルーンが用いられる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記テンプレートの個々の中空のガイド部材を通して少なくとも3つのパイル、例えば4つのパイルが海底に打ち込まれる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記テンプレートを海底に解放可能に固定することと、前記少なくとも1つのパイルを海底に打ち込むことと、前記テンプレートを解放することとに際して、前記テンプレートは、洋上風力タービンの少なくとも1つの他の基礎を設置するために第2の場所に移送される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
洋上風力タービンの複数の基礎を設置する方法であって、該方法は、請求項1〜18のいずれか1項にしたがって基礎を個々に設置することを含み、前記テンプレートは、少なくとも2つの別個の基礎の間に移送され、該少なくとも2つの別個の基礎に対して用いられる、方法。
【請求項21】
前記テンプレートは、外的な補助/制御なしに、単独で水面下を動き回り、複数のパイル打ち基礎を構成する手段を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ジャケット式基礎を海底の前記パイルと結合することによって、該ジャケット式基礎を設置及び固定することを更に含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
洋上風力タービンの基礎を設置するのに用いるテンプレート(100)であって、
パイル(P1、P2、P3、P4)を受ける少なくとも1つの中空のガイド部材(110)と、
少なくとも1つのサクションバケット(130)と、
前記少なくとも1つの中空のガイド部材と前記少なくとも1つのサクションバケットとを結合するフレーム体(120)と、
前記少なくとも1つのサクションバケットに圧力を与えるように構成されている制御手段と、を備え、
前記テンプレートは海底に解放可能に固定される、テンプレート。
【請求項24】
第1の圧力感知装置及び/又は第2の圧力感知装置を更に備え、該第1の圧力感知装置は、前記少なくとも1つのサクションバケットのうちの1つに結合され、該サクションバケット内の圧力を感知するように構成されており、該第2の圧力感知装置は、前記テンプレートの所定の位置において周囲の水圧を感知するように構成されている、請求項23に記載のテンプレート。
【請求項25】
前記フレーム体は、該フレーム体が多角形状になるように連結されるフレーム部材(122)によって形成される、請求項23又は24に記載のテンプレート。
【請求項26】
少なくとも3つのサクションバケット及び少なくとも3つの中空のガイド部材を備え、該少なくとも3つのサクションバケット及び該少なくとも3つの中空のガイド部材のそれぞれは、少なくとも1つのフレーム部材に機械的に結合される、請求項25に記載のテンプレート。
【請求項27】
前記フレーム部材は、各フレーム部材を補強する横梁部材を有する2つの平行な梁によって形成される、請求項25又は26に記載のテンプレート。
【請求項28】
前記サクションバケットは、前記サクションバケット(130)の上面に固定される上部部材(136)を備える片側に開口を有する円筒形のバケット(132)によってもたらされる、請求項23〜27のいずれか1項に記載のテンプレート。
【請求項29】
前記上部部材は、前記サクションバケットをポンプシステムのホースに連結する弁部材を備える、請求項28に記載のテンプレート。
【請求項30】
前記上部部材には、前記バケット内の圧力及び前記バケット外の圧力のうちの少なくとも一方を感知し、前記フレーム体(120)の傾斜を求める圧力感知装置が設けられる、請求項28又は29に記載のテンプレート。
【請求項31】
気泡水準感知装置、ジャイロメーターに基づく水準感知装置、及びレーザーからなる群から選択される少なくとも1つに基づく機械的手段が水準感知装置に設けられる、請求項28〜30のいずれか1項に記載のテンプレート。
【請求項32】
前記中空のガイド部材は、円筒形のスリーブ部材(312)と、パイルを受けるのを容易にするように該円筒形のスリーブ部材(312)のそれぞれの側に、外方に突出するフランジ部(314a、314b)とを有する、請求項23〜31のいずれか1項に記載のテンプレート。
【請求項33】
前記テンプレートの解放を容易にするように空気が充填されているバルーンを更に備える、請求項23〜32のいずれか1項に記載のテンプレート。
【請求項34】
前記テンプレートは、前記水面下を動き回るための移送手段を備える、請求項23〜33のいずれか1項に記載のテンプレート。
【請求項35】
前記移送手段は、プロペラ、GPSシステム、及びモーターからなる群から選択される少なくとも1つを備える、請求項34に記載のテンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、洋上風力タービンの基礎を設置する方法及び洋上風力タービンの基礎を設置するのに用いるテンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備、洋上プラットフォーム、沈水式水力駆動タービン(submerged water-driven turbine)設備等のような洋上施設の設置の際、多くの場合、複数の柱又はパイル(杭)を海底に打ち込むことによって基礎を設ける。例えば、風力設備の支持構造物は、地中の基礎に結合することができる円筒形のタワー部分によって構成されることが多い。検討する洋上施設の種類に関わらず、洋上施設の安定性は、基礎によって与えられる支持に大きく依存する。風力設備等の洋上施設のための基礎は、設置場所における水深の徹底的な分析及び設置場所の海底の土壌条件に基づいて計画及び建設される。風力設備の場合、ナセルの重量、回転速度等を含むタービンの仕様等の更なる問題が考慮される。したがって、洋上基礎の計画及び建設は、基礎の安定性をリスクにさらさないようにあらゆる不具合を排除する必要がある複雑な作業であることが容易にわかる。
【0003】
通常、重力着底式基礎及びジャケット式基礎の2つのタイプの基礎が使用される。従来の重力着底式基礎は、自重によって適所に保持される円筒形/円錐形のコンクリート製支持構造物を含む。ジャケット式基礎は、通常、補強材(braces)により互いに連結される4つの脚部を備える鋼製構造物である。一般的に、脚部は、海底の土壌に打ち込まれるパイルにグラウト(grout)が詰められる。ジャケット式基礎は、重力着底式基礎に比べて設置場所への移送が簡単である。
【0004】
更に、重力着底式基礎は、海底が岩盤である浅い沿岸におけるプロジェクトの場合のより小さい風力タービンに対して主として用いられてきた。より大きいタービン及びより深い水深の場合、一般的にはジャケット式基礎の方が重力着底式基礎よりも好ましい。
【0005】
安定性を確保するために、海底におけるパイルの設置は入念に計画され、パイルは所定の設置計画にしたがって設置される。ここでは、基礎の信頼性は、所定の設置計画の質に加えて、所定の設置計画の正確な実現によるものであり、計画から逸脱することは、基礎の構造の弱体化につながる場合があるため、パイルの正確な位置合わせは非常に重要である。特に、第1のパイルに対する第2のパイルの相対位置及び鉛直の基準方向に対するパイルの向きは、基礎の安定性を決定する際に基づく重要なパラメーターである。これらのパラメーターに関して、位置がずれていると基礎にかかる荷重を安全に保持できない場合があるので、位置合わせを達成するべきである。
【0006】
パイルを設置する際の位置合わせは、従来、テンプレートによって達成され、このテンプレートにしたがって、幾何学的パターンのパイルを海底に設置することができる。しかし、海底の設置場所が平坦でない可能性があるため、テンプレートが基準レベル位置、通常は水平レベルから逸脱するレベル位置をとることによってパイルの位置ずれが起こり得る。
【0007】
特許文献1は、ジャッキアッププラットフォームによって位置決めされる洋上基礎を提供するフレーム付きテンプレートを示している。ここでは、フレーム付きテンプレートは、海底に向かってスパッドポール(spud pole)に沿って降下され、パイルはテンプレートのスリーブガイド部材を通して海底に打ち込まれる。しかし、ジャッキアッププラットフォームを設置場所に設置するには、スパッドポールを海底に固定する必要があるため、パイルを迅速に設置することは不可能である。更に、特に非常に深いところ及び海の荒い状態では、ジャッキアッププラットフォームの使用は可能でない場合があり、同時に、フレーム付きテンプレートの向きの正確さは、スパッドポールの向きに依存するため、スパッドポールの位置ずれはフレーム付きテンプレートの位置ずれを引き起こす。
【0008】
特許文献2は、プラットフォームを水平位置に調整し、柱又はパイルを海底の所定の位置に固定することができる、削孔機及び伸縮式脚部を備える沈水式プラットフォームを示している。しかし、プラットフォームは、海底に対する移動を起こす場合があり、それにより、所定の設置場所に対するプラットフォームの位置ずれが起こる場合がある。
【0009】
特許文献3は、海底に水中削孔ベースプレートを設置する方法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2354321号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2469190号明細書
【特許文献3】中国実用新案公告第200971492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、洋上基礎を設置する際のパイルの正確な位置合わせを確実にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様において、洋上風力タービンの基礎を設置する方法が提供される。本発明の例示的な一実施形態において、本方法は、パイルを受けるように構成されている少なくとも1つの中空のガイド部材と、少なくとも1つのサクションバケット(suction bucket)と、少なくとも1つの中空のガイド部材及び少なくとも1つのサクションバケットに結合するフレーム体とを備えるテンプレートを準備することを含むことができる。本方法は、テンプレートを海底に配置することと、サクションバケットを海底に打ち込むために少なくとも1つのサクションバケットに負圧を与えることと、フレーム体を海底に対して水平にするように少なくとも1つのサクションバケットの根入れ深さを調節するために少なくとも1つのサクションバケットに与えられる負圧を制御することとを更に含むことができる。更に、本方法は、中空のガイド部材内にパイルを配置してパイルを海底に設置することを含む。
【0013】
このようにして、テンプレートは海底の固定位置に解放可能に固定することができ、同時に、少なくとも1つのサクションバケットの根入れ深さを調整することによってテンプレートを水平にすることができ、それにより、正確な位置合わせが確実になる。
【0014】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、本方法は、フレーム体の所定の基準レベルに対するフレーム体の傾斜を求めることと、少なくとも1つのサクションバケットに与えられる負圧を調整することとを更に含むことができる。したがって、少なくとも1つのサクションバケットの挿入を制御して行うことができ、それにより、正確な位置合わせを達成することができる。
【0015】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、本方法は、フレーム体を水平にするように、少なくとも1つのサクションバケットの根入れ深さを決定することを更に含むことができる。このようにして、テンプレートがさらされる海底の固有の状態に関わらず、フレームの非常に正確な水平化(leveling)を簡単かつ確実に達成することができる。
【0016】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、本方法は、負圧を決定された根入れ深さに応じて制御することを更に含むことができる。このようにして、海底にテンプレートを確実に固定する間、直接的かつ迅速な水平化を達成することができる。
【0017】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、負圧を制御することは、フレーム体の傾斜を連続的に感知することと、感知された傾斜に応じて少なくとも1つのサクションバケットに与えられる負圧を調整することとを含むことができる。このようにして、フィードバック結合された制御を実施することができる。
【0018】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、複数のサクションバケットを設けることができ、本方法は、各サクションバケットを個別のポンプシステムに接続することを更に含むことができる。このようにして、テンプレートの確実な固定及び水平化を達成することができる。
【0019】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、複数のサクションバケットが設けられ、本方法は、複数のサクションバケットを、単一のポンプを有するポンプシステムに接続することを更に含むことができる。このようにして、単一のポンプを備えるポンプシステムの単純な構成によって、固定及び水平化を達成することができる。
【0020】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、ポンプシステムは、各サクションバケットに個々に負圧を与えるように構成することができる。このようにして、単一のポンプに関してテンプレートの確実な固定及び水平化を達成することができる。
【0021】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、各サクションバケットの弁部材を制御して、各サクションバケットに与えられる負圧を個々に制御することを含むことができ、ポンプは弁部材に結合される。このようにして、複数のサクションバケットは単一のポンプによって確実に制御することができる。
【0022】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、負圧を制御することは、少なくとも1つのサクションバケットから汲み出される水の量及び流量のうちの少なくとも一方を制御することを含むことができる。このようにして、海底における少なくとも1つのサクションバケットの所定の根入れ深さを簡単に調整することができる。
【0023】
本発明の別の態様において、洋上基礎を設置するのに用いるテンプレートが提供される。本発明の例示的な一実施形態において、テンプレートは、パイルを受ける少なくとも1つの中空のガイド部材と、少なくとも1つのサクションバケットと、少なくとも1つの中空のガイド部材及び少なくとも1つのサクションバケットに結合するフレーム体とを備える。更に、テンプレートは、少なくとも1つのサクションバケットに圧力を与えるように構成されている制御手段を備える。
【0024】
このようにして、海底に迅速かつ解放可能に固定することが可能なテンプレートが提供される。
【0025】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、テンプレートは、第1の圧力感知装置及び/又は第2の圧力感知装置を更に備えることができ、第1の圧力感知装置は、少なくとも1つのサクションバケットのうちの1つに結合され、サクションバケット内の圧力を感知するように構成されており、第2の圧力感知装置は、テンプレートの所定の位置において周囲の水圧を感知するように構成されている。このようにして、傾斜及び/又は根入れ深さを簡単に確定することができる。
【0026】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、テンプレートのフレーム体は、フレーム体が多角形状になるように連結されるフレーム部材によって形成することができる。このようにして、所定のパターンにしたがってパイルの設置を実施するために有利な形状を有するテンプレートを提供することができる。
【0027】
本発明の更なる例示的な一実施形態において、テンプレートは、少なくとも3つのサクションバケットを備えることができ、少なくとも3つのサクションバケットのそれぞれは、1つのフレーム部材に機械的に結合される。このようにして、テンプレートの確実な固定及び水平化を迅速に達成することができる。
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】本発明の例示的な一実施形態に係るテンプレートの概略斜視図である。
【
図1b】
図1aに示すテンプレートの概略側面図である。
【
図1c】
図1aに示すテンプレートの概略上面図である。
【
図2】本発明の代替的な一実施形態に係るテンプレートの概略斜視図である。
【
図3】本発明の別の代替的な実施形態に係るテンプレートの概略斜視図である。
【
図4】本発明のいくつかの例示的な実施形態に係るサクションバケットの動作モードの概略図である。
【
図5a】本発明の例示的な一実施形態に係るジャケット式基礎を設置する方法の概略図である。
【
図5b】本発明の例示的な一実施形態に係るジャケット式基礎を設置する方法の概略図である。
【
図5c】本発明の例示的な一実施形態に係るジャケット式基礎を設置する方法の概略図である。
【
図5d】本発明の例示的な一実施形態に係るジャケット式基礎を設置する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1a、
図1b及び
図1cにおいて、本発明の例示的な一実施形態に係るテンプレート100を記載する。
図1aに示すテンプレート100は、略四角形のフレーム体120によって形成される。フレーム体120は、四角形の辺にしたがって構成されたフレーム部材122によって設けられる。フレーム部材122は、四角形のフレーム体120の角部に配置された中空のガイド部材110に結合されている。フレーム部材122は、中空のガイド部材110を互いに対して所定の固定位置に配置するように構成することができる。中空のガイド部材110は、フレーム体120の角部に配置され、隣り合うフレーム部材122を接続するものとして示しているが、本発明の限定は意図していない。代替的には、中空のガイド部材110は、例えば、フレーム部材122に沿った異なる位置においてフレーム部材122に取り付けられてもよい。本明細書の或る特定の例において、各中空のガイド部材110は、それぞれのフレーム部材122の中央部に配置することができる。
【0031】
少なくとも1つの中空のガイド部材110が取り付けられたフレーム体を実施するのに、任意の他の適した幾何形状、例えば三角形又は一般に多角形を考慮することができることが当業者には理解される。
【0032】
図1aに示すように、フレーム部材122は、各フレーム部材122を補強する横梁部材を有する2つの平行な梁によって形成される。しかしながら、このことは本発明にいかなる限定も与えず、フレーム部材は、補強用横梁部材を伴って又は伴わずに、多角幾何形状の辺に相当する1つ又は2つよりも多い梁で実施することができる。
【0033】
図1aに示すように、テンプレート100は4つのサクションバケット130を更に備える。4つのサクションバケット130は、各サクションバケット130が中空のガイド部材110のうちの1つに対置されるように、フレーム体120によって囲まれる領域内のテンプレート100の各角部に配置される。
図1aは4つのサクションバケット130を明示しているが、代替的には、任意の他の数のサクションバケット、一般に少なくとも1つのサクションバケットを設けてもよいことが当業者には理解される。例えば、2つのサクションバケット130を、対向する位置においてフレーム体120に結合することができる。別の代替例では、3つのサクションバケットをフレーム体120に結合することができる。代替的には、サクションバケットは、フレーム部材122に沿った各フレーム部材122の中央部に近い位置、すなわちフレーム部材122に沿った2つの中空のガイド部材110の中間の位置等、角部から離れた位置に配置してもよいことが当業者には理解される。
【0034】
各サクションバケット130は、片側(
図1aの下側)に開口を有する円筒形のバケット132によって実質的に設けられる。サクションバケット130の上側には、上部部材136が取り付けられている。上部部材136は横梁122に結合され、サクションバケット130は、例えば
図1aに示す2つのフレーム部材122等、中空のガイド部材110及び少なくとも1つのフレーム部材122のうちの少なくとも一方と結合する。代替的には、バケット132は、中空のガイド部材110に直接結合するか、又はサクションバケット130をフレーム体120に結合するようにフレーム部材122に直接結合してもよい。
【0035】
加えて又は代替的には、各サクションバケット130の上部部材136は、ポンプシステムと接続するように構成してもよい。本明細書のいくつかの特定の例示的な例において、上部部材136は、サクションバケット130をポンプシステム(図示せず)のホースに接続するのに用いる弁部材(図示せず)を備えてもよい。或る特定の例示的な例によれば、弁部材は、与える圧力を制御する手段に相当することができる。一般に、サクションバケットへ与える圧力を制御することができるとともに所定の圧力を調整することができるように、サクションバケットに圧力を与える場合の制御動作をもたらすように構成された任意の既知の装置を使用することができる。したがって、代替的には、サクションバケットは、例えばホース等のいくつかの接続手段によって圧力容器に接続してもよく、例えば、この容器の弁部材によって、又は圧力容器からの圧力放出及び/又は圧力容器からサクションバケットへの圧力伝達の制御に好適な任意の他の手段によって、いくつかの制御手段を呈することができる。
【0036】
いくつかの例示的な例において、上部部材136には、バケット132内側の圧力及びバケット外側の圧力、すなわち周囲の水圧のうちの少なくとも一方を感知する圧力感知装置を設けることができる。少なくとも2つのサクションバケットの位置での周囲の水圧を比較することで、フレーム体120の傾斜を求めることができることが当業者には理解される。代替的には、サクションバケット130の地点に、及び/又はフレーム部材120の地点に若しくはフレーム部材120内に、及び/又は中空のガイド手段110の地点に又は中空のガイド手段110内に、気泡水準感知装置を設けることができる。気泡水準感知装置、ジャイロメーターに基づくレベル感知装置、レーザー等に基づく機械的手段によって、全般的な水準感知装置を設けることができることが当業者には理解される。異なる位置でフレームに取り付けられた、空気が充填されたバルーンであって、これらのバルーンを水上に浮遊させた場合、各バルーンに取り付けられたロープの長さを比較する、バルーンを用いることも更に可能である。このことは本発明にいかなる限定も与えず、他の技法を用いて水準感知を達成することができることが当業者には理解される。
【0037】
図1bは、フレーム部材120のうちの1つに沿ったテンプレート100の側面図を示している。サクションバケット130は、フレーム部材120の下側の梁においてフレーム部材120に取り付けられ、サクションバケット130、特に下側が開口しているバケット132が、海底(図示せず)に面するようになっている。バケット132の下側と中空のガイド部材110との下側との高さの差は、サクションバケット130の最大根入れ深さを示す。
【0038】
図1cは、本発明の或る特定の例示的な例を示す、
図1aに示すテンプレート100の上面図を示している。
【0039】
例示的な一代替実施形態が
図2に概略的に示されている。
図2は、三角形のフレーム体220を備え、フレーム体220の各角部に中空のガイド部材210を有するテンプレート200を示している。フレーム体220は、中空のガイド部材210が結合されたフレーム部材222によって実現される。更に、テンプレート200は、それぞれの中空のガイド部材210に対置した状態でフレーム体220にそれぞれ結合された3つのサクションバケット230を備える。3つの別個の点によって3つの次元で平面が規定され、
図2に示す実施形態は、テンプレート200の直接かつ容易な位置合わせを高精度に可能にすることが当業者には理解される。
【0040】
中空のガイド部材210及び/又はサクションバケット230は、中空のガイド部材210及び/又はサクションバケット230が単一のフレーム部材222に沿って、例えば単一のフレーム部材222の中央の方にそれぞれ配置されるように、フレーム体220に結合することができることが留意される。
【0041】
図2は3つのサクションバケットを示しているが、単に1つのサクションバケットを使用して、サクションバケットに対向するフレーム部材に対応した軸の回りにテンプレートを傾動させることで、位置合わせをもはや達成することができることが当業者には理解される。代替的には、2つのサクションバケットを使用して、サクションバケットに対向するフレーム部材にそれぞれ対応した2つの軸の回りでの傾動を達成することができる。この場合、
図2に示す3つのサクションバケットのうちの1つ又は2つのサクションバケットを、海底に設置される足場部材(footing element)等の支持部材(図示せず)で置換することができる。
【0042】
更なる例示的な一代替実施形態が
図3に示されている。
図3は、単一のフレーム部材320によって設けられるフレーム体によって結合された1つの中空のガイド部材310及び1つのサクションバケット330を備えるテンプレート300を示している。中空のガイド部材310は、円筒形のスリーブ部材312と、円筒形のスリーブ部材312のそれぞれの側に、外方に突出するフランジ部314a及び314bとを備えている。フランジ部314aによって、パイルの受容を容易にすることができることが当業者には理解される。
【0043】
上記明示的な例では、サクションバケットは、チャンバー334a、334b、334c、334dを更に有する。これらのチャンバーは、壁部材336a、336b、336c、336dによって画定される。可能なチャンバー数は1つ以上とすることができることが当業者には理解される。1つよりも多い数のチャンバーが存在することは、解除可能な固定に加えて、テンプレート300の中心を通って延びるテンプレート300の縦方向寸法によって与えられる鉛直軸に対してテンプレート300を傾斜させることを可能にする。チャンバー334a、334b、334c、334dのそれぞれは、ホース352a、352b、352c、352dによって示されるようにポンプシステム350に接続することができる。
【0044】
1つのサクションバケットを備える更なる一代替形態のテンプレートは、
図3に示す実施形態からフレーム部材320をより長いフレーム部材で置換し、このより長いフレーム部材のサクションバケットが配置される端部とは反対側の端部に支持構造体を結合することによって得ることができる。この代替形態の中空のガイド部材は、このより長いフレーム部材の長さに亘って、このより長いフレーム部材に結合することができる。この代替的な実施形態のサクションバケットに関しては、1つのチャンバーを有するサクションバケットが好ましい。この場合、サクションバケットを海底に打ち込むことによって水平化を得ることができることが当業者には理解される。ここでは、サクションバケットの根入れ深さを増大することで、サクションバケットに向かっての傾斜が得られる。このようにして、サクションバケットを支持するフレーム部材の端部が、反対側の端部よりも高い位置となっているフレーム部材の傾斜を均衡させることができる。
【0045】
図4において、本発明の更なる例示的な実施形態に関するサクションバケットの動作を記載する。
【0046】
図4は、本発明の別の例示的な実施形態に係る単一のサクションバケット430を用いるテンプレートを概略的に示している。説明しやすいように、テンプレートのフレーム体(
図1aの参照符号120、
図2の参照符号220、
図3の参照符号320を参照)及びテンプレートの中空のガイド部材(
図1aの参照符号110、
図2の参照符号210、
図3の参照符号310)は示していない。適用可能な場合、追加のサクションバケットを設けることができるが、
図4には示していない。テンプレート、特にサクションバケット430を海底SFに配置する際、サクションバケット430は、サクションバケット430の開口側が海底SFに面する状態で海底SFに配置される。
【0047】
図4に示すサクションバケット430は、バケット432及び上部部材436を備える。上部部材436は弁部材440を有し、弁部材440は、ポンプシステム450に接続するように構成されている。これは、
図4ではホース252によって概略的に示されている。ポンプシステム450は、
図4に示すように船に配置してもよいし、代替的には設置プラットフォーム(図示せず)に配置してもよい。
【0048】
サクションバケット430に負圧を与えて、特にポンプシステム450によってサクションバケット430の内部から水を汲み出すことにより(
図2に矢印NPで示す)、
図4に矢印Pで示すように、サクションバケットに作用するサクションバケット上方の水柱の圧力に対する差圧が生じる。サクションバケットから水を汲み出すと、流砂領域QSがバケット432のリムの回りに発生する。これは、
図4に矢印A1及びA2で示すように、海底SFの堆積物を介してバケットに流れ込む水によって引き起こされる。流砂領域QS及びサクションバケット430外側の水圧に対する差圧Pにより、サクションバケット430は、容易かつ迅速に海底SFに貫入する。
【0049】
図4は、海底SFに根入れ深さDまで貫入したサクションバケット430を示している。サクションバケット430からの水の汲み出しを停止すると、サクションバケットの海底SF内での強力な固定がもたらされる。なぜなら、サクションバケットを引き抜くには、サクションバケット430から汲み出された水量によって実現される周囲の水圧に対する真空に打ち勝つために大きい力が必要であるからである。サクションバケット430の根入れ深さDを制御することで、サクションバケット430の海底への強力な固定をもたらしながら、テンプレート(図示せず)の水平化を確実に達成することができることが当業者には理解される。
【0050】
サクションバケット430は、(
図4の矢印NPの方向を反転して)サクションバケット430内に水を汲み入れ、したがってサクションバケット430を海底SFにおけるその固定位置から押し離すことにより、海底SFから解放することができる。したがって、それぞれサクションバケット430内に水を汲み入れるとともにサクションバケット430に正圧を与えることにより、サクションバケットのしっかりした確実な固定を容易に解除することができる。それぞれサクションバケット430内に正圧を与えるとともに水を汲み入れるのと同時に、サクションバケット及び/又はフレーム(図示せず)に引上力を付加的に印加することによって更に補助することができる。本明細書の有利な一例において、設置されたパイル(複数の場合もある)の損傷可能性及び/又は位置ずれを回避する程度以上にテンプレートの水平方向の位置合わせを変更しないように、正圧が印加される。加えて又は代替的には、テンプレートの解放を容易にするために、パルス化された正圧をもたらすことができる。
【0051】
本発明の例示的な一実施形態によれば、1つ又は複数のサクションバケット(
図1aの130、
図4の430)がバケットの開口側で海底(
図4のSF)に面するようにテンプレート(
図1aの100を参照)を海底に設けることによって、パイルを設置するように、テンプレートを解除可能に固定するサクションバケットの動作を実行することができる。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態において、テンプレートを海底に配置した際、サクションバケット430及び/又は少なくとも1つのフレーム部材(
図1a〜
図1cの120、
図2の220、
図3の320を参照)及び/又は少なくとも1つの中空のガイド部材(
図1a〜
図1cの110、
図2の210、
図3の310を参照)に実装される傾斜感知装置又は水準感知手段によって、所望の水平レベルに対するテンプレートの傾斜を求めることができる。テンプレートの感知された傾斜に基づき、テンプレートを水平にするように、少なくとも1つのサクションバケット(
図1aの130、
図2の230、
図3の330、
図4の430)の根入れ深さ(
図4のD)を決定することができ、及び/又は、(
図4の矢印NPで示す)サクションバケット430からの水の量及び流量(時間あたりの量)のうちの少なくとも一方を決定することができる。加えて又は代替的には、サクションバケット430を海底に所定の根入れ深さDまで貫入することによりテンプレートの水平化を達成するように、負圧を与えることから始まる時間間隔についての少なくとも1つのサクションバケット430からの水の流量プロファイルを計算することができる。
【0053】
続いて、サクションバケット(
図1aの130、
図2の230、
図3の330、
図4の430)の内部から水を汲み出すことにより、少なくとも1つのサクションバケット(
図1aの130、
図2の230、
図3の330、
図4の430)に負圧を与えて、サクションバケットを海底に固定することができる。サクションバケットに負圧を与える際、テンプレートの傾斜を感知することができ、及び/又は、サクションバケットの内部からの水の量及び/又は流量を制御することにより、サクションバケットへ与える負圧を制御することができる。例えば、負圧は、汲み出される水の流量を制御し、水平化及び/又は固定が達成されるまで流れを停止することなく所望の根入れ深さに達するように流量を調整することによって制御することができる。本明細書のいくつかの特定の例示的な例において、サクションバケット(
図1aの130、
図2の230、
図3の330、
図4の430)内の圧力、及び/又は周囲の水圧、すなわちテンプレートの高さ位置におけるサクションバケット外側にある水に相当する、テンプレートを囲む水の圧力を感知することができ、サクションバケットから汲み出される水の流量を、感知されたサクションバケット内側の圧力及び感知された周囲の水圧のうちの少なくとも一方に応じて制御することができる。例えば、サクションバケット内の圧力を感知することができるように、第1の圧力感知装置を配置することができ、及び/又は、テンプレートに近い位置、すなわちフレーム体及び/又は中空のガイド部材及び/又はサクションバケットのところで周囲の水圧を感知することができるように、第2の圧力感知装置をテンプレートに結合することができる。本明細書のいくつかの特定の例示的な例において、第2の圧力感知装置は、フレーム体に沿った2つ以上の位置において圧力を感知することができるように、フレーム体に沿って移動可能とすることができる。代替的には、2つ以上のサクションバケット内で及び/又は2つ以上の位置で圧力を感知するように、複数の第1の圧力感知装置及び/又は第2の圧力感知装置を設けてもよい。テンプレートに沿った2つ以上の位置で周囲の水圧を感知することで、テンプレートの傾斜を求めることができる。異なるサクションバケットの周囲の水圧及び/又はテンプレートの異なる位置での周囲の水圧を比較することで、テンプレートの傾斜を求めることができることが当業者には理解される。
【0054】
いくつかの例示的な実施形態において、本明細書に記載のように、基礎を設置する前に海底地形図を求めることができる。海底地形図は、利用可能なデータベースによって得ることができるか、又は、光学撮像装置を介した直接の観察又はソナー等のような他の技術によって求めることができる。地形図に基づいて水平化データを決定することができ、ポンプシステムの対応する動作、すなわちテンプレートの少なくとも1つのサクションバケットの負圧制御を決定することができる。
【0055】
本発明のいくつかの例示的な実施形態において、複数のサクションバケット(
図1aの130、
図2の230、
図4の430)を設けることができ、ここでは、複数のサクションバケットの各サクションバケットは、ポンプシステムに個々に接続され、各サクションバケットへ与える負圧を個々に制御することができるようになっている。
【0056】
他の例示的な実施形態において、複数のサクションバケットを設けることができ、ここでは代替的に、複数のサクションバケットは、単一のポンプを有するポンプシステムに接続されている。本明細書のいくつかの特定の例示的な例において、ポンプシステムは、複数のサクションバケットのそれぞれに適切な負圧を個々に与えることができるように構成することができる。本発明の或る特定の例において、複数のサクションバケットの各サクションバケットは弁部材を有することができ、この弁部材を適切に制御することにより、各サクションバケットに与えられる負圧を個々に制御することができるようになっている。
【0057】
テンプレートを海底に解放可能に固定した後、中空のガイド部材のうちの1つのガイド部材に設けられた、又はガイド部材に受容された、少なくとも1つのパイルを海底に打ち込むことにより、そのパイルを海底に設置することができる。
【0058】
以下、
図5a、
図5b、
図5c、及び
図5dにおいて、海洋基礎を設置するための例示的な一実施形態を記載する。
図5aは、水面WS下で海底SFに配置されているテンプレート500を概略的に示している。説明のために、テンプレート500は、上記で
図1a〜
図1cに関して記載したテンプレート100に対応するものとする。しかしながら、このことは本発明にいかなる限定も与えず、上述の別の実施形態に係るテンプレートを代わりに用いてもよい。
【0059】
テンプレート500は、フレーム体520に結合された中空のガイド部材510と、中空のガイド部材510に対置されたサクションバケット530とを備える。フレーム体520は、中空のガイド部材510及びサクションバケット530が結合されたフレーム部材522によって形成される。
【0060】
テンプレート500は、ポンプシステム550に接続されるが、これは
図5aではホース552によって概略的に示されている。ホース552のそれぞれは、サクションバケット530をポンプシステム550に接続する。
【0061】
固定と、必要であれば上述の水平化操作とを行った後、パイルはテンプレートにしたがって海底に設置される。
図5bは、第1のパイルP1が海底SFに設置され、矢印A3で示す方向に沿って第2のパイルP2を中空のガイド部材510に挿入することにより、パイルP2が中空のガイド部材510に取り付けられる段階でのパイルの設置を示している。
【0062】
図5cは、パイルP1、P2、P3、P4が海底SFに設置され、テンプレートが除去された後の段階でのジャケット式基礎の設置を示している。図示のように、ジャケット式基礎560は、矢印A4、A5で示すようにジャケット式基礎をパイルP1、P2、P3、P4と結合することによって設置される。ジャケット式基礎560は、それぞれのパイルP1、P2、P3、P4に係合するスリーブ部材561、562、563、564を有する。したがって、スリーブ部材561、562、563、564をそれぞれのパイルP1、P2、P3、P4と結合することで、
図5dに示すようにジャケット式基礎が海底SFに確実に固定される。
【0063】
いくつかの例示的な例において、ジャケット式基礎560は、洋上風力発電プラントの基礎に相当することができる。
【0064】
通常、より大型のタービン及びより深い水域では、重力着底式基礎又はモノポール式基礎よりもジャケット式基礎が好ましい。本発明は、ジャケット式基礎を改善するのに特によく適している。ジャケット式基礎は、通常は3つ又は4つの脚部を備えるので、したがって3つ又は4つのパイルを必要とする。
【0065】
ジャケットをパイルに据え付ける場合、所望の精度を得るために穏やかな天候が必要とされる。いくつかの従来技術の方法と同じやり方では、例えばパイルのガイドを水上から制御するので、パイルを海底に挿入するのにも穏やかな天候を必要とした。本発明では、プロセスは専ら水面下で行われるので、おおよそどのような天候でもパイルを配置することが可能である。これは、基礎へのジャケットの据付けにしか穏やかな天候が必要とされないので、複数の基礎を従来よりも少ない時間でセットすることができるという点で、従来技術に優る大きい利点をもたらす。更に、テンプレートを海底に配置することが可能であることにより、パイル間の個々の正確な距離を得ることが、ガイド部材を水面に有するのに比較して容易になることが明らかである。
【0066】
海底へのパイルの打込みは、通常はパイルの約1mのみが海底を超えるように行われる。例えば、パイルは、中空のガイド部材の上面とおおよそ同一平面となるように下へ打ち込むことができる。ジャケットの高さが大きく、例えば100mである場合、それによりmmスケールのほんの僅かな位置ずれでさえも比較的大きい程度の傾斜を引き起こす可能性があることを主な理由として、かなりの精度が望まれる。したがって、パイルが海底に挿入された後、厳密な上面高さが測定され、必要であれば、パイルに据え付ける前のジャケットの個々の脚部に更なるリングが付加される。正確な位置決めが得られると、パイルは、ジャケットの脚部とともにグラウトで固められる。
【0067】
要約すると、洋上基礎を設置する方法及び洋上基礎を設置するのに用いるテンプレートが提供される。例示的な実施形態において、テンプレートは海底に解放可能に固定され、テンプレートはパイルを設置する前に水平にされる。本発明のいくつかの例示的な実施形態に係る方法において、パイルを受ける少なくとも1つの中空のガイド部材と、少なくとも1つのサクションバケットと、少なくとも1つの中空のガイド部材及び少なくとも1つのサクションバケットに結合するフレーム体と、少なくとも1つのサクションバケットに圧力を与えるように構成されている制御手段とを備えるテンプレートを準備することができる。本方法は、テンプレートを海底に配置することと、少なくとも1つのサクションバケットに負圧を与えてサクションバケットを海底に打ち込むことと、少なくとも1つのサクションバケットに与えられる負圧を制御して、フレームを海底に対して水平にするように少なくとも1つのサクションバケットの根入れ深さを調整することとを含むことができる。
【0068】
上述の方法は、洋上風力タービンの複数の基礎を設置するのに特に有用である。洋上風力タービンは、必要とされる陸上へのケーブルを最大限活用するために、最も多くは少なくとも10基のタービンの敷地にもたらされる。本発明では、1つのテンプレートをタービンの複数の基礎を設置するのに用いることができる。更なる実施形態において、テンプレートは、外的な補助/制御なしに、単独で水面下を動き回り、複数のパイル打ち基礎を構成するように、モーター、プロペラ、及びGPSシステムを備えることができる。そのような実施形態において、複数のプロペラ及び/又は多回転プロペラは、海面下を三次元において操縦することが可能である必要がある。いくつかの実施形態では、テンプレートの移動は遠隔で制御することができ、他の実施形態では、この移動は設定されたプログラムによって行うことができ、それによりテンプレートは、いくぶん自律的に移動する。
【0069】
本明細書において使用される「パイル」という用語は、当業者には理解されるように、基礎に対して有用な任意の細長い直立部材を意味することが意図されている。一般的な既製のパイルは、杭打ち機を用いて又は吸引によって海底に打ち込まれる。