【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による住戸(第1の発明による住戸)は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸であって、スケルトンを構成する少なくとも1つの躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層が配置され、前記軟質断熱材層の室内側に硬質断熱材層が配置され、
前記躯体の天井および床に固定された複数の横木が配置され、前記複数の横木と前記躯体との間には前記軟質断熱材層と前記硬質断熱材層が配置され、前記硬質断熱材層の室内側に複数の枠体が配置され
て、前記横木に固定され、前記枠体は、縦桟および横桟を備え、前記横桟の厚さは、前記縦桟
および前記横木の厚さよりも薄くなされており、前記複数の枠体と前記躯体との間には前記軟質断熱材層と前記硬質断熱材層が配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
硬質断熱材層を形成する断熱材は、例えばJISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材から得ることができる。JISA9511準拠の発泡プラスチック系断熱材としては、フェノール樹脂発泡体、硬質ウレタンフォームなどが例示される。硬質断熱材層を形成する断熱材は、軟質断熱材層に比べて断熱性に優れるものであれば、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材以外のものであってもよい。
【0009】
軟質断熱材層は、硬質断熱材層の断熱材に比べて軟らかい材質の断熱材で形成される。具体的には、スポンジ、グラスウールなどとされる。スポンジとしては、ポリウレタンスポンジ、ゴムスポンジ、ポリエチレンスポンジなどを使用できる。グラスウールを使用する場合、保護シートなどでカバーされていないものが好ましい。
【0010】
枠体は、通常、1対の縦桟および複数の横桟からなるものとされる。1対の縦桟と上下に隣り合う横桟との間に形成される空間が断熱材片配置空間とされ、この空間に断熱材片が充填される。1つの集合住宅(の住戸)で使用される枠体は、1種類としてもよく、横桟の数や位置などが異なる複数種類としてもよい。
【0011】
枠体内に充填される断熱材片の形状は、枠体の空間に合わせて方形板状とされる。断熱材片は、例えばJISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材から得ることができる。断熱材片を形成する断熱材は、硬質断熱材層を形成する断熱材と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。断熱材片を形成する断熱材は、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材以外のものであってもよい。
【0012】
軟質断熱材層を形成する断熱材は、断熱性よりも変形容易性を重視して選定され、軟質断熱材層が躯体の室内側に配置されることで、躯体の表面にある凹凸や傾斜が軟質断熱材層によって吸収され、軟質断熱材層と躯体との間に隙間ができることが防止される。したがって、隙間に室内空気が流入することによる結露発生が防止される。
【0013】
軟質断熱材層は、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材に比べると、断熱性が劣っており、軟質断熱材層1層だけで所要の断熱性を得ようとすると、断熱材層の厚さを厚くする必要があり、室内面積が狭くなるという問題が生じる。断熱材層を軟質断熱材層と硬質断熱材層との2層構造とすることで、室内面積が狭くなるというデメリットを抑えて、断熱性能の向上および結露の防止が可能となる。
【0014】
枠体内にも断熱材片が充填されることで、軟質断熱材層および硬質断熱材層の2層と枠体内の断熱材片とを合わせた3層の断熱構造となり、さらに、断熱性能が向上したものとなる。枠体を使用することで、内壁の構造強度を高いものとできる。枠体は、天井および床に固定された横木に固定され、これにより、枠体表面の面一が形成される。このようにすることで、枠体を天井および床に対して適正かつ確実に位置決めすることができ、より精度の高い内壁用表面材の面一が形成される。また、枠体を利用して、内壁面から種々物品のビス、釘固定が可能となる。枠体を使用した場合には、枠体が熱橋となる恐れがあるが、枠体の躯体側全面に硬質断熱材層が配置されることで、熱橋ができることが防止されるので、内壁の構造強度確保と断熱性能の向上とを両立させることができる。
【0015】
軟質断熱材層、硬質断熱材層および断熱材片(枠体)の厚さは、特に限定されるものではなく、断熱性能の向上および結露の防止を考慮して適宜設定される。気密をとる硬質断熱材層の厚みを薄くして、不足分を断熱材片で補うことが好ましく、軟質断熱材層の厚み<硬質断熱材層の厚み<断熱材片の厚みとされていることがより好ましい。
【0016】
硬質断熱材層および/または断熱材片に使用される好ましい断熱材の1例は、フェノール樹脂発泡体であり、好ましいフェノール樹脂のタイプは、レゾール樹脂である。レゾール樹脂は、フェノール、又はクレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニールフェノール、レゾルシノール等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの、触媒としての水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、又はトリメチルアミンやトリエチルアミン等の脂肪族アミンの存在下での化学反応によって得ることができる。又、密度は20Kg/m
2以上、制限酸素指数26%以上、ホルムキャッチャー剤を使用し、VOC発生を抑制したものが好ましい。
【0017】
通常、硬質断熱材層および/または断熱材片を形成する断熱材の両面には、ガラス繊維混抄紙、寒冷紗、織布、不織布、紙、ライナー紙、エンボス加工紙、複合紙などの面材が積層される。
【0018】
上記の住戸を設置するに際し、軟質断熱材層、硬質断熱材層および枠体内の断熱材片は、それぞれ、別個に取り付けられるようにしてもよく、また、枠体に予め取り付けられているようにしてもよい。
【0019】
第1の発明による住戸の断熱工法は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸の断熱工法であって、まず、スケルトンを構成する躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層を配置し、次いで、前記軟質断熱材層の室内側表面に硬質断熱材層を配置し、次いで、前記硬質断熱材層の室内側に複数の枠体を互いに接するように配置することを特徴とするものである。
【0020】
第2の発明による住戸の断熱工法は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸の断熱工法であって、まず、スケルトンを構成する躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層を配置し、次いで、前記軟質断熱材層の室内側に、躯体側に硬質断熱材層が配置された複数の枠体を互いに接するように配置する
ことを特徴とする
ものである。
【0021】
第3の発明による住戸の断熱工法は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸の断熱工法であって、まず、スケルトンを構成する躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層および硬質断熱材層が躯体側からこの順に配置された複数の枠体を予め用意し、これらの複数の枠体を躯体の室内側に互いに接するように配置することを特徴とするものである。
【0022】
第1から第3までの発明の住戸の断熱工法のいずれを使用するかは、断熱の対象となるスケルトンを構成する各躯体の状況(大きさ、形状など)に応じて適宜選択することができる。第1から第3までの住戸の断熱工法の2つ以上を組み合わせて使用することもできる。いずれにしろ、この発明の住戸の断熱工法によると、断熱性能の向上および結露の防止を可能とする上記の住戸(これに類似した構造物を含む)を容易に設置することができる。
【0023】
各発明の住戸の断熱工法の実施に際しては、硬質断熱材層に生じた目地を室内側から塞ぐことが好ましい。また、枠体と断熱材片との間に生じた目地を室内側から塞ぐことが好ましい。目地を塞ぐには、例えば室内側から気密テープを貼り付ければよい。
【0024】
各発明の住戸の断熱工法の実施に際し、断熱材片を接着剤によって硬質断熱材層に貼り付けるようにしてもよい。この場合、枠体と断熱材片との間に生じた目地を室内側から塞ぐ作業(枠体と断熱材片との間の気密テープ)を省略することが好ましい。このようにすることで、施工性と気密性とを高いレベルで両立させることができる。
【0025】
各発明の住戸の断熱工法の実施に際し、各枠体の縦桟の断面形状がL字状とされており、コーナー部の納まり用として、全体として断面が方形になるように、断面形状がL字状の縦桟(単体の縦桟)を枠体の縦桟に嵌め合わせることが好ましい。
【0026】
出隅においては、L字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第1の枠体とL字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第2の枠体とが直交するように直接突き合わされることで、別途の角材は不要とされる。
【0027】
入隅においては、L字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第1の枠体とL字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第2の枠体とが直交するように角材を介して突き合わされる。
【0028】
上記の住戸を構成する(各住戸の断熱工法で使用される)部材としては、1対の縦桟および複数の横桟からなる枠体が単体で使用されることがあり、また、必要に応じて、この枠体に断熱材層(硬質断熱材層のみまたは硬質断熱材層および軟質断熱材層の両方)が予め貼り付けられたもの(この明細書において「枠部材」と称す)が使用されることがある。
【0029】
1対の縦桟および複数の横桟は、いずれも断面方形状であってよいが、縦桟については、隣り合う枠体の縦桟に嵌め合わせ可能な嵌合部が形成されていることが好ましい。このような嵌合部を得るには、例えば、縦桟の断面形状をL字状として、一方の縦桟の向きと他方の縦桟の向きとが逆になるようにすればよい。
【0030】
このようにすると、隣り合う枠体間の相対位置が若干ずれたとしても、隙間が生じにくいものとなり、仕上げ精度の向上が図れるとともに、気密性が向上する。
【0031】
また、上記の枠体としては、1対の縦桟および複数の横桟からなり、各横桟の室内側の面は、各縦桟の室内側の面よりも凹まされていることが好ましい。
【0032】
このようにすると、横桟の室内側にスペースが形成され、このスペースを利用して配線等を通すことができる。
【0033】
複数の横桟のうち縦桟の端部に配置されているものは、縦桟の端面よりも突出するようになされていることがある。
【0034】
このようにすると、端部の横桟を使用して、相手側の横桟等との正面からのビス固定が可能となり、固定を容易にかつ確実に行うことができる。
【0035】
第2の発明の住戸の断熱工法で使用される枠体は、枠体の躯体側に硬質断熱材層が固定されたものとされる。
【0036】
硬質断熱材層は、例えば、枠体の躯体側の全面に貼り付けられる。硬質断熱材層の枠体への貼り付けは、硬質断熱材層の一部(例えば左半面)だけを枠体に重ね合わせて貼り付けるようにし、硬質断熱材層の残部(例えば右半面)を枠体から露出するようにして行ってもよい。硬質断熱材層の大きさ(面積)は、枠体と同じであってもよく、枠体よりも大きくてもよい。
【0037】
また、第3の発明の住戸の断熱工法で使用される枠体は、枠体の躯体側に硬質断熱材層が固定され、硬質断熱材層の躯体側に軟質断熱材層が固定されたものとされる。
【0038】
硬質断熱材層は、例えば、枠体の躯体側の全面に貼り付けられる。硬質断熱材層の枠体への貼り付けは、硬質断熱材層の一部(例えば左半面)だけを枠体に重ね合わせて貼り付けるようにし、硬質断熱材層の残部(例えば右半面)を枠体から露出するようにして行ってもよい。硬質断熱材層の大きさ(面積)は、枠体と同じであってもよく、枠体よりも大きくてもよい。軟質断熱材層は、硬質断熱材層の躯体側の全面に貼り付ければよく、軟質断熱材層の一部(例えば右半面)だけを硬質断熱材層に重ね合わせて貼り付けるようにし、軟質断熱材層の残部(例えば左半面)を硬質断熱材層から露出するようにして行ってもよい。
【0039】
この発明による住戸(第2の発明による住戸)は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸であって、スケルトンを構成する少なくとも1つの躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層が配置され、前記軟質断熱材層の室内側に硬質断熱材層が配置され、前記躯体の天井および床に固定された複数の横木が配置され、前記複数の横木と前記躯体との間には前記軟質断熱材層と前記硬質断熱材層が配置されていることを特徴とするものである。
【0040】
この発明による住戸(第3の発明による住戸)は、スケルトンの内部にインフィルを配備した住戸であって、スケルトンを構成する少なくとも1つの躯体の平面状の室内側表面に軟質断熱材層が配置され、前記軟質断熱材層の室内側に硬質断熱材層が配置され、
前記躯体の天井および床に固定された複数の横木が配置され、前記複数の横木と前記躯体との間には前記軟質断熱材層と前記硬質断熱材層が配置され、前記硬質断熱材層の室内側に複数の枠体が配置され
て、前記横木に固定され、前記複数の枠体と前記躯体との間には前記軟質断熱材層と前記硬質断熱材層が配置されて、前記枠体は1対の縦桟および複数の横桟からなり、前記横桟の厚さは、前記縦桟
および前記横木の厚さよりも薄くなされており、前記縦桟および前記横桟に囲まれた空間が室内側に形成されていることを特徴とするものである。