(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の運転データは、発電プラントの発電端効率に影響を与える要因に応じてツリー状に階層化して展開され、前記指標値は、該ツリー状に展開された前記複数の運転データ毎に求められると共に、該運転データ毎の指標値と前記実際の運転データとの乖離を示すデータが生成されることを特徴とする請求項2に記載の発電プラント性能評価方法。
前記複数の運転データは、発電プラントの発電端効率に影響を与える要因に応じてツリー状に階層化して展開され、前記指標値は、該ツリー状に展開された前記運転データ毎に求められると共に、該運転データ毎の指標値と前記実際の運転データとの乖離を示すデータが生成されることを特徴とする請求項6に記載の発電プラント性能評価プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
本発明の実施の形態では、発電プラントの一例として、火力発電におけるコンバインドサイクル発電プラントを性能評価の対象とする。また、その性能評価を行うための運転データとしては、その代表的なものが全体の熱効率を示す発電端効率であり、
図10にツリー状に階層化して、発電端効率、GT効率、ST効率、SG効率やGTガス燃料流量、GT燃料ガス供給温度などの運転データに分類され、データベース化される。そして、このデータベースは、マイクロソフト社が提供する表計算プログラム「Excel」など汎用的な表計算プログラムを使用して作成することができる。
【0017】
図1は、コンバインドサイクル発電プラントの概略構成を示す図である。コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービン(GT: Gas Turbine)と蒸気タービン(ST: Steam Turbine)を組み合わせた発電システムであって、燃料を燃焼してガスタービンを回転させると同時に、排熱回収ボイラ(HRSG: Heat Recovery Steam Generator)により高温のガスタービン排熱を回収して蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する仕組みの発電プラントである。以下の説明及び図面において、「GT」はガスタービン、「ST」は蒸気タービン、「SG」は排熱回収ボイラの略称である。
【0018】
本発明の発電プラント性能評価方法は、出願人の保有するコンバインドサイクル発電プラントの一つである新仙台火力発電所3号系列(宮城県仙台市)の運転データを用いて行われたものである。新仙台火力発電所3号系列は、平成28年7月より営業運転が開始されている。
【0019】
発電プラントの性能評価を行う既存の熱効率解析プログラムとして、一般財団法人電力中央研究所が開発・提供している発電システム熱効率解析汎用プログラム「EnergyWin」(登録商標)(以下EWプログラムと称する)が広く利用されている。このEWプログラムは、発電プラントの構成に対応する解析モデルを作成し、以下に例示する発電プラントの運転条件、気象条件、燃料条件などを含むデータの中から解析に必要なものを入力することにより、発電プラントの熱収支バランスを解析して、各構成機器の性能状態(作動流体の流量、温度、圧力や発電端効率など)を演算し発電プラント全体の性能状態の解析を行うことができる。
【0020】
運転条件・・・発電機出力,高圧・中圧・低圧それぞれのブロー弁開度,補助蒸気流量等
気象条件・・・大気温度,大気圧力,大気湿度等
燃料条件・・・燃料発熱量,送ガス母管温度,送ガス母管圧力等
本発明の実施の形態では、このEWプログラムの演算機能など一部機能を利用することにより、性能評価方法を実施するが,EWプログラムに限らず、別の汎用解析プログラムを利用することも可能であり、また、汎用プログラムを利用せずに、既知の定義式に従った計算プログラムを作成して演算してもよい。
【0021】
本発明の実施の形態における発電プラント性能評価方法は、それを実施するための処理工程を含む発電プラント性能評価プログラムをコンピュータ装置が実行することにより実現される。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態における発電プラント性能評価方法を実施するコンピュータ装置のハードウェア構成例を示す。コンピュータ装置10は、汎用的なパーソナルコンピュータであってもよく、据置型、ノートブック型、タブレット型などの形態を問わない。従って、コンピュータ装置10は、汎用的なコンピュータ装置のハードウェア構成を有し、制御部110、入力装置120、出力装置130、記憶装置140、通信インタフェース150を有して構成される。制御部110は、CPUなどの演算処理ユニット及びRAMやROMなどのメモリを備え、記憶装置140に記憶されるデータベースを読み出して参照し、さらに、記憶装置140に記憶されるコンピュータプログラムを実行する。記憶装置140は、例えばハードディスク記憶装置やソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶媒体であり、本実施の形態における発電プラント性能評価方法を実行するための発電プラント性能評価プログラム及び各種運転データなどを記憶するデータベースである。制御部110が、このコンピュータプログラムを実行することにより、本実施の形態における発電プラント性能評価方法を実行する。通信インタフェース150は、インターネットに接続するためのインタフェースである。入力装置120は、マウスやキーボードに加えて、採取された運転データを含む外部からのデータを取り込む接続インタフェースも含む。出力装置130は、ディスプレイなどの表示手段やプリンタなどに加えて、外部へデータを出力する接続インタフェースも含む。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態における発電プラント性能評価方法の手順を示すフローチャートである。本発明の発電プラント性能評価方法では、このフローチャートに基づいて以下の工程を実施する。
【0024】
(a)基準期間における各種データの取得工程(S101)
まず、基準期間を定め、基準期間における発電プラントの各種データを取得する。この場合の基準期間とは、発電プラントが稼働している任意の期間であるが、発電プラントの熱効率等の性能は、一般に経年的に徐々に低下していくことが知られていることから、性能評価を行うためには、この基準期間は、熱効率が最も高い期間と想定される発電プラントの初期状態の一定期間であることが好ましく、例えば、運転開始から1年間くらいの期間とすることが好ましい。
【0025】
また、取得される各種データとしては、コンバインドサイクル発電プラントにおいて基準期間に測定装置によって採取される運転データや一定の関係式に基づいて演算により取得される運転データがある。例えば、
図10に示すツリー状の下層レベルに展開されるGTガス燃料流量、GT燃料ガス供給温度などの運転データは、測定装置によって採取されるものが多く、上位レベルに展開される発電端効率、GT効率、ST効率、SG効率などは、演算により取得されるものが多い。
【0026】
具体的には、例えばコンバインドサイクル発電プラントを構成するガスタービン(GT)、蒸気タービン(ST)、排熱回収ボイラ(SG)などの構成機器における燃料や作動流体(蒸気、排気、冷却水など)の入口・出口温度、入口・出口流量、入口・出口圧力などの下層レベルの運転データがあり、センサなどの測定装置により単位時間(例えば1時間)毎に定期的に実測値として採取される。
【0027】
また、上位レベルの運転データである例えば発電端効率は、後述する演算式(1)に基づいて演算により取得される。さらに、採取されるデータとしては、発電機出力や発電プラントの周辺の大気温度、大気圧力、大気湿度などの気象条件データがある。
【0028】
発電機出力は、発電プラントの出力の範囲内において、中央給電司令所からの指令により設定される運転条件として採取されるデータであり、設定された値の出力となるように常時監視・制御される。そして、この発電機出力は、電力需給などに応じて、設定値を変更して出力調整されるため、外的要因変動データの一つである。
【0029】
例えば、発電所の出力範囲が245MW〜490MWの場合、出力490MWは出力100%であり、出力245MWは出力50%となり、この範囲内で任意の出力に調整される。設定された出力となるよう発電プラントは運転され、その実際の出力の値も測定装置により採取される。
【0030】
気象条件データも、外的要因変動データの一つであり、単位時間毎に定期的に測定装置により採取される。
【0031】
このような基準期間に取得される各種データは、データベース(コンピュータ装置の記憶装置)に記録される。
【0032】
(b)相関関数作成工程(S102)
基準期間における外的要因変動データである気象データや各種運転データの取得が実施されると、続いて、基準期間に取得された各種運転データの中から、外的要因変動データと一定の相関関係を有する特定の運転データを対象データとして選択し(以下、この運転データを「対象運転データ」と称する)、この対象運転データと発電プラントの発電機出力や気象データとの相関関係を求める。例えば、対象運転データがGTガス燃料流量(t/h)である場合、このGTガス燃料流量(t/h)と発電機出力との相関関係や気象データとの相関関係を求め、具体的にはその相関関数を作成する。
【0033】
なお、このGTガス燃料流量とは、コンバインドサイクル発電プラントのガスタービン内で燃焼されるガス燃料の流量であるが、このGTガス燃料流量に限らず、
図10に示す発電端効率に影響を与える要因となる他の運転データの中から、対象運転データを選択することもできる。例えば、大気温度が低ければ、発電プラントを構成する機器の一つである空気圧縮機の運転データである空気圧縮機出口空気温度も低くなる。この様に気象条件と運転データとの間に高い相関関係を有する場合は、対象運転データの一つとして採用してもよい。
【0034】
図4は、2015年12月12日〜2016年11月26日の概ね1年間の基準期間におけるGTガス燃料流量(t/h)を表すグラフである。
図4において、GTガス燃料流量が60(t/h)付近のときは発電機出力100%(出力490MW)での運転、GT燃料流量が35(t/h)付近のときは発電機出力50%(出力245MW)での運転、GTガス燃料流量がこれらの間の47.5(t/h)付近のときは発電機出力75%(出力367.5MW)での運転である。この
図4のグラフのデータに基づいて、GTガス燃料流量と発電機出力との関係をグラフに表したのが
図5である。
【0035】
図5では、発電プラントの発電機出力は、非連続の3段階(50%、75%、100%)の値となっているが、発電機出力の増大に伴ってGTガス燃料流量も比例して増大し、高い相関関係を有していることが明らかである。そのため、最小二乗法などの既知の近似計算手法によりGTガス燃料流量と発電機出力との相関を演算により求めると、相関関数F1は正の傾きを有する一次関数として求めることができる。
【0036】
次に、
図6は、GTガス燃料流量と気温(℃)との関係を表すグラフである。
図6のグラフにおいて、
図4のグラフと同様に、GTガス燃料流量が60(t/h)付近のときは発電機出力100%での運転、GT燃料流量が35(t/h)付近のときは発電機出力50%での運転、GTガス燃料流量がこれらの間の47.5(t/h)付近のときは発電機出力75%での運転である。この
図6のグラフのデータに基づいて、発電機出力毎にGTガス燃料流量と気温との相関関係を求めると、十分なデータ数を有する発電機出力50%と100%の場合について、それぞれGTガス燃料流量と気温との相関関数を求めることができる。
【0037】
図7は、そのGTガス燃料流量と気温との相関関数を示すグラフであり、
図7(a)は発電機出力100%における相関関数F2を示し、
図7(b)は出力50%における相関関数F3を示す。いずれも気温が高くなるにつれて、GTガス燃料流量がわずかに減少していく傾向が見られ、それぞれ負の傾きを有する一次関数として求めることができる。
【0038】
このような相関関数は、上述の例と同様にして、GTガス燃料流量以外の運転データについても、外的要因変動データである発電機出力や気象データとの間に一定の相関関係を有する場合は、その運転データとの相関関数を求めると共に、その相関関数は、データベースに記録される。
【0039】
このように、上述のステップS101及びS102において実施された処理工程、すなわち基準期間における各種データの取得及び相関関数の作成が行われた後、任意又はあらかじめ設定された所定の評価期間で性能評価処理が実施される。そして、この性能評価処理は、以下の各工程に基づいて実施される。
【0040】
(c)評価期間における運転データの取得工程(S103)
発電プラントの運転中は、常時、発電機出力や気象データと、
図10に示す各種運転データなどが取得されるが、評価期間においても、基準期間と同じく、運転中の発電プラントの各種運転データや発電機出力及び気象データを取得する。この場合の評価期間とは、基準期間後の任意の期間であるが、好ましくは1週間〜1年間くらいである。
【0041】
この運転データの取得工程においては、外的要因変動データと一定の相関関係を有する運転データを対象運転データとして選択する。具体的には、例えば、上述した
図4乃至
図8に示すように、発電機出力や気象データと一定の相関関係を有する運転データとして、ガス燃料流量を選択し、このガス燃料流量の運転データを採取する。もっとも、発電機出力や気象データと一定の相関関係を有する運転データが他にもある場合は、対象運転データとしてその運転データを採取することができる。
【0042】
(d)相関関数に基づく代替の運転データの導出工程(S104)
次に、上記(b)の相関関数作成工程において作成した相関関数に基づいて、評価期間において実際に採取される運転データ(ガス燃料流量)に対応する基準期間における運転データ(ガス燃料流量)を代替の運転データとして導出する。すなわち、評価期間において実際に採取される対象運転データとしてのGT燃料流量は、基準期間における気温などの気象条件と異なる条件下で採取されるため、評価期間における発電プラントの性能を基準期間における発電プラントの性能と比較する場合、外的要因変動データの一つである気象条件を同一として比較する必要がある。そのため、評価期間において実際に採取されるGT燃料流量とは別に、上述した相関関数を用いて、GT燃料流量を実際に採取したときの発電機出力と気温のデータから基準期間におけるGT燃料流量を導出し、これを代替の運転データと称することとする。
【0043】
具体的には、例えば、評価期間の発電機出力が50%であり、気温が20℃の場合、
図7(b)に示す発電機出力50%の場合の相関関数F3を用いて、気温が20℃におけるGTガス燃料流量を相関関数F3の関数値として求め、この関数値がGTガス燃料流量の代替の運転データとなる。また、評価期間の発電機出力が80%、気温が20℃のような場合は、発電機出力80%の場合の相関関数が作成されていないが、この場合は、
図7(a)に示す発電機出力100%の相関関数F2と
図7(b)に示す発電機出力50%の相関関数F3とを用いて、それぞれの気温が20℃におけるGTガス燃料流量の値を比率で按分して導出することができる。そして、GTガス燃料流量と発電機出力との関係は、
図5で示したとおり、一次関数で表せる相関関係を有することから、按分処理により導出することができる。
【0044】
図8は、按分処理を説明する図である。
図8では、例えば発電機出力80%におけるGTガス燃料流量の値を按分処理で求める場合を例示する。相関関数が作成されていない発電機出力についても、発電機出力と対象運転データとの相関関数に基づいて、任意の発電機出力に対応する代替の運転データを導出することができる。
【0045】
以上の説明では,運転データがGTガス燃料流量である場合について説明したが,GTガス燃料流量以外に、発電機出力や気象データとの間に一定の相関関係を有する他の運転データがあるならば、これを対象運転データとしてその相関関係を求めると共に、その相関関係に基づいて、同様に代替の運転データを導出することができる。
【0046】
(e)代替の運転データと実際の運転データとの比較工程(S105)
このようにして導出される代替の運転データ(GT燃料流量など)は、発電機出力や気温の条件が評価期間における条件と同一であると仮定することができるから、あたかも基準期間における発電プラントの運転状態を再現したかの如く解される。そのため、この代替の運転データと評価期間において取得される実際の運転データとを比較することで、基準期間から評価期間までの発電プラントの経年的な性能変動が外的要因の変動に影響されずに、発電プラントの設備の劣化等に起因するものかを容易に評価・分析することが可能となる。
【0047】
この比較手法は、
図10に示すツリー状に階層化された各種運転データの中でも、下層レベルに列挙されるGTガス燃料流量やGT燃料ガス供給温度など、測定装置で実際に採取される運転データを用いて発電プラントの性能を評価する場合に適用することが好ましい。
【0048】
(f)代替の運転データを用いた指標値の演算工程(S106)
図10に示す各種運転データの中で、上位に階層される発電端効率、GT入熱、ST入熱、SG出力等の運転データは、測定装置によって採取されるデータというよりは、むしろ一定の関係式に基づいて演算により取得される場合が多い。そのため、これら運転データを用いて発電プラントの性能評価を行う場合は、上述で説明した相関関数に基づいて導出される代替の運転データを用いて演算した数値(以下、実際の運転データの値と比較するための「指標値」と称する)と実際の運転データの値とを比較することで発電プラントの性能評価を行うことが好ましい。
【0049】
以下、上位に階層される「発電端効率」を例に、GTガス燃料流量の相関関数を用いて発電端効率の指標値を演算する工程について具体的に説明する。この発電プラントの発電端効率は、以下の関係式で表される。
【0050】
発電端効率(%)=(出力(MW)×3600×1000/GT入熱(kJ/h))×100 ・・・(1)
ここで、GT入熱(kJ/h)は、
GT入熱(kJ/h)=GT燃料流量(t/h)×燃料の高位発熱量(kJ/kg)×1000
で与えられる。そして、燃料の高位発熱量(kJ/kg)は、燃料の種類によって決まる値であるため、GT燃料流量(t/h)を採取することで、発電端効率を演算で求めることができる。
一方、この発電端効率の指標値も、上記式(1)により、代替の運転データを用いて演算により求めることができる。具体的には、上記式(1)における「GT入熱」を決定する「GT燃料流量」の値として、上述した相関関数に基づいて導出するGT燃料流量の代替の運転データを用いると共に、「出力」の値として、評価期間において取得される発電機出力の値を用いることで求めることができる。
【0051】
なお、GTガス燃料流量を用いた発電端効率の演算は一例に過ぎず、他の運転データ又は複数の運転データの組み合わせに基づいた相関関数を作成し、それを用いて発電端効率の指標値を求めると共に、この発電端効率の指標値と評価期間の実際の運転データに基づく発電端効率とを比較することで、発電プラントの経年的な性能評価が可能である。特に、発電プラントの運転開始後間もない運転開始初期期間(1年程度)は、発電プラントの発電端効率は最も高く、基準期間をこの運転開始初期期間とすることで、発電プラントの経年的な性能評価を適切かつ正確に行うことが可能となる。
【0052】
また、このような指標値は、GT燃料流量以外の代替の運転データを用いることで、発電端効率だけでなく、発電プラントの運転開始初期の基準期間におけるGT入熱、ST入熱、SG出力などの運転データについても同様に求めることができる。
なお、発電端効率など各種運転データの指標値の演算は、既存の熱効率解析プログラム(例えば、上述したEWプログラム)を用いて行うことができる。
【0053】
(g)代替の運転データを用いた指標値と実際の運転データとの比較工程(S107)
次に、上記(f)の工程で演算した発電端効率の指標値と評価期間において取得した運転データから求めた実際の発電端効率とを比較すれば、代替の運転データによる比較手法の場合と同様に、外的要因の変動に影響されずに、発電プラントの経年的な性能変動が設備の劣化等に起因するものかを容易に判別・評価することが可能となる。
【0054】
この比較手法は、気象データなどの外的要因変動データとの間に一定の相関関係を有する各種の運転データについて実施することができるが、特に、上位の階層に列挙される発電端効率、GT入熱、ST入熱、SG出力等の、一定の関係式に基づいて演算により求められる運転データについて実施することが好ましい。
【0055】
図9は、比較を容易にするために、発電端効率の指標値と実際の値とを同一座標に重ねて表示したものである。この
図9の例では、対象となった新仙台火力発電所3号系列は平成28年7月の運転開始であり、運転開始から1年程度しか経過しておらず、指標値の演算では、基準期間と評価期間を同一の期間として演算したため、発電端効率の指標値と実際の値が実質的に一致している状態となっている。
【0056】
(h)各種運転データの指標値による比較工程(S108)
上記(g)の比較工程では、発電プラントの発電端効率を例にその比較手法について説明したが、発電端効率の指標値と実際の値に乖離が確認された場合には、さらに、下層レベルのGT効率、ST効率、SG効率の各運転データやこれらの各効率に影響を与えるさらに下層レベルの各種運転データについても、同様にその指標値と実際の値との比較を行うことが好ましい。
【0057】
そのためには、
図10に示すツリー状の各種運転データについて、実際の値と比較するための指標値を求める必要がある。具体的には、相関関数を求めることができる運転データについては、その相関関数に基づいて代替の運転データを導出し、この代替の運転データを指標値とする(S105工程)。
【0058】
また、相関関数を求めることができない運転データについては、相関関数を求めることができた他の運転データの代替の運転データを用いて、EWプログラムの熱効率演算機能にこの他の代替の運転データを代入することで各指標値を算出することができる。そのため、この値を指標値とすることで、
図10に示すツリー状の各種運転データの指標値を求めることができる。
【0059】
そして、ツリー状の各種運転データについて、その指標値と実際の値とを重ねて表示するような
図11を作成して比較すれば、発電プラント全体の機器の性能変動を階層を辿って絞り込んで容易に評価・分析することが可能となる。
【0060】
本発明の発電プラントの性能評価方法によれば、発電プラントの異常を検出することもできるため、発電プラントの異常兆候監視を行うことができる。
【0061】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。