(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記コゲーション防止添加剤が、グリセロールエトキシレート、グリセロールプロポキシレート、ポリエチレングリコール、およびトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンからなる群から選択されることを特徴とするインクジェットインク。
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記1種以上の共溶媒が、スルホラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、1,3−プロパンジオール、2−ピロリドン、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択されることを特徴とするインクジェットインク。
請求項3に記載のインクジェットインクにおいて、式(A)で示されるアルコキシル化グリセロール化合物が0.5〜5wt.%の範囲内の量で存在することを特徴とするインクジェットインク。
請求項3に記載のインクジェットインクにおいて、前記腐食防止添加剤の量が、式(A)で示されるアルコキシル化グリセロール化合物の量の少なくとも1.5倍であることを特徴とするインクジェットインク。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、媒体幅全体に延在する固定Memjet(登録商標)プリントヘッドを利用する多くの高速インクジェットプリンターを開発してきた。これとは対照的に、実質的にすべての他の型のインクジェットプリンターは、媒体幅全体を横切る走査プリントヘッドを利用する。
【0003】
高速ページ幅プリンティングは、必然的に、従来型のインクジェットプリントヘッドと比較してプリントヘッドの設計にさらなる要求を突きつける。ノズルデバイスは、自己冷却設計、高いインク補充速度、および高い熱効率を有していなければならない。この目的のために、本出願人は、サスペンド抵抗ヒーターエレメントを有するもの(たとえば、米国特許第6,755,509号明細書、米国特許第7,246,886号明細書、米国特許第7,401,910号明細書、および米国特許第7,658,977号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの)ならびに埋込み(「結合」)抵抗ヒーターエレメントを有するもの(たとえば、米国特許第7,377,623号明細書、米国特許第7,431,431号明細書、米国特許出願公開第2006/250453号明細書、および米国特許第7,491,911号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの)をはじめとする一連の熱バブル形成プリントヘッドを開発してきた。
【0004】
サスペンドヒーターエレメントを有するノズルデバイスは、ヒーターエレメントからインクへの効率的熱伝達および自己冷却特性の利点を提供する。しかしながら、サスペンドヒーターエレメントが典型的にはその結合カウンターパートほどロバストでないので、プリントヘッドの寿命が比較的短いという欠点を抱えている。
【0005】
プリントヘッドの寿命を向上させる一方法は、ヒーターエレメントを保護コーティングで被覆することである。たとえば、米国特許第6,719,406号明細書(本出願人に譲渡された)には、ヒーターエレメントのロバスト性を向上させるとともにプリントヘッドの寿命を向上させるコンフォーマル保護コーティングを有するサスペンドヒーターエレメントが記載されている。しかしながら、保護コーティングはいくつかの理由で望ましくない。すなわち、抵抗ヒーターエレメントから周囲のインクへの熱伝達効率を低下させるので、結果的に、自己冷却特性に影響を及ぼすとともにさらなるMEMS製造課題をもたらす。
【0006】
したがって、一般に、Memjet(登録商標)プリントヘッドでは非被覆(「ネイキッド」)ヒーターエレメントまたは少なくとも非常に薄い(たとえば50nm未満の)コーティングを有するヒーターエレメントを利用することが好ましい。ある程度は、ヒーター材料の選択により非被覆ヒーターエレメントの使用の影響を軽減することが可能である。たとえば、米国特許第7,431,431号明細書には、窒化チタンなどのより従来型の材料と比較して寿命が向上したセルフパッシベート窒化チタンアルミニウムヒーターエレメントの使用が記載されている。それにもかかわらず、Memjet(登録商標)プリントヘッドとくに非被覆ヒーターエレメントを利用するものの寿命を向上させる必要性が依然として存在する。
【0007】
ある特定のインクはヒーターエレメントに対してとくに攻撃的であることが判明した。たとえば、多くの染料系インクはヒーターエレメントを腐食してプリントヘッドの寿命を短くすることが判明した。マルチカラープリントヘッド(たとえばCMYK)では、プリントヘッドの寿命は、かなりの程度まで、最も短い寿命を有するカラーチャネルの寿命によって決まる。たとえば、ブラック染料系インクがヒーターエレメントに対してとくに腐食性であることが判明した場合、ブラックカラーチャネルが故障すると、すべての他のカラーチャネルが依然として良好に機能したとしても、プリントヘッドの寿命はブラックチャネルの寿命によって決まるであろう。
【0008】
本発明との関連では、ノズルデバイスの「故障」とは、許容できないプリント品質をもたらす任意の液滴吐出特性の変化を意味する。たとえば、故障は、インクの液滴速度の低下、不十分な液滴の方向性、または非吐出により引き起こされうる。さらに、故障の基準はカラーから異なれば異なりうる。たとえば、ブラックインクはヒトの目にはより見えやすいので(すなわち、ブラックインクはホワイトペーパー上でより高いルミナンスを有するので)、イエローチャネルのプリント品質の低下はブラックチャネルのプリント品質の対応する低下よりも許容しうる。つまり、攻撃的な性質の多くのブラック染料と組み合わせた場合、Memjet(登録商標)プリントヘッドのブラックチャネルは、典型的には、プリントヘッドの寿命に関して制限的なカラーチャネルである。
【0009】
抵抗ヒーターエレメントを利用するプリントヘッドの寿命を向上させることが望ましいであろう。
【0010】
2014年6月出願の米国特許出願第14/310,298号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)には、プリントヘッドの寿命を向上させるためのエトキシル化ブチン−1,2−ジオールの使用が記載されている。
【0011】
米国特許第5,180,425号明細書には、プリントヘッドの寿命を向上させるためのエトキシル化グリセロール共溶媒を含む顔料系インク組成物が記載されている。
【0012】
2014年3月28日出願の米国仮特許出願第61/971,985号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)には、プリントヘッドの寿命を向上させるためのある特定の染料と共溶媒との組合せが記載されている。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様では、本発明は、
水性系インクビヒクルと、
着色剤と、
−(CH
2CH
2O)−、−(CH
2CH(Me)O)−、および−CH
2OHからなる群から選択される少なくとも3つの部分を有する第1の有機化合物を含むコゲーション防止添加剤と、
少なくとも1つのアセチレン性部分を有する第2の有機化合物を含む腐食防止添加剤であって、アセチレン性部分には第3級α炭素原子も第4級α炭素原子もなんら存在しない、腐食防止添加剤と、
を含むインクジェットインクを提供する。
【0014】
本発明に係るインクジェットインクは、たとえば、コゲーション防止添加剤または腐食防止添加剤のいずれかを単独で含む同等のインクと比較して、プリントヘッドの並外れた寿命を提供する。したがって、2種の化合物はin situで相乗的に挙動することによりサーマルアクチュエーターを保護してその寿命を伸ばすことが、本発明者らにより結論付けられた。さらに、相乗的組合せは、プリントヘッドの目標寿命を達成するのに利用可能な腐食防止剤およびコゲーション防止剤の範囲を拡張する。添加剤の有用な組合せの範囲が拡張されるので、他のインク要件、たとえば、表面張力、粘度、脱水性能などを満たす配合ウィンドウがより広くなる。
【0015】
好ましくは、第1の有機化合物は、少なくとも6個、好ましくは少なくとも9個のエトキシレート基またはプロポキシレート基を有する。最大のエトキシル化度またはプロポキシル化度はとくに限定されるものではないが、第1の有機化合物は50個までまたは100個までのエトキシレート基またはプロポキシレート基を有しうる。
【0016】
好ましくは、コゲーション防止添加剤は、グリセロールエトキシレート、グリセロールプロポキシレート、エリトリトールエトキシレート、エリトリトールプロポキシレート、アラビトールエトキシレート、アラビトールプロポキシレート、マンニトールエトキシレート、マンニトールプロポキシレート、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、ペンタエリトリトールエトキシレート、ペンタエリトリトールプロポキシレート、ポリエチレングリコール(たとえば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000など)、ポリプロピレングリコール、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンエトキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンプロポキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシドエトキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシドプロポキシレート、トリエタノールアミン、トリエタノールアミンエトキシレート、トリエタノールアミンプロポキシレート、エチレンジアミンエトキシレート、およびエチレンジアミンプロポキシレートからなる群から選択される。
【0017】
好ましくは、コゲーション防止添加剤は、グリセロールエトキシレート、グリセロールプロポキシレート、ポリエチレングリコール、およびトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンからなる群から選択される。
【0018】
好ましくは、コゲーション防止添加剤は、式(A):
(式中、
R
x、R
y、およびR
zは、水素およびメチルからなる群から独立して選択され、かつ
x、y、およびzは、それぞれ、1〜50の範囲内の整数である)
で示されるアルコキシル化グリセロール化合物である。
【0019】
好ましくは、R
x、R
y、およびR
zは、それぞれ、水素であり、かつx+y+z=3〜30である。式(B)で示される市販のアルコキシル化グリセロール化合物の好ましい例は、Lipo Chemicalsから入手可能なLiponic(登録商標)EG−1(当技術分野ではときには「LEG−1」としても知られる)である。
【0020】
腐食防止添加剤は、一般に、アセチレン性基には第3級α炭素原子も第4級α炭素原子もなんら存在しないのでほとんどまたはまったく界面活性を有していない。
【0021】
好ましくは、腐食防止添加剤は、式(B):
R
1−C≡C−(CH
2)
mCH(R
2)−(OCH
2R
3)
n−OH (B)
(式中、
R
1は、H、C
1〜3アルキル、−(CH
2)
pCH(R
4)(R
5)、および−(C≡C)−(CH
2)
pCH(R
4)(R
5)からなる群から選択され、
R
2は、HおよびC
1〜3アルキルからなる群から選択され、
R
3は、−CH
2−および−CH(CH
3)−からなる群から選択され、
R
4は、HおよびC
1〜3アルキルからなる群から選択され、
R
5は、H、C
1〜3アルキル、−OH、および−(OCH
2R
3)
q−OHからなる群から選択され、
mは、0、1、2、または3であり、
pは、0、1、2、または3であり、
nは、0または1〜50の範囲内の整数であり、かつ
qは、1〜50の範囲内の整数である)
で示されるアセチレン性化合物である。
【0022】
好ましくは、R
1は、H、C
1〜3アルキル、および−(CH
2)
pCH(R
4)(R
5)からなる群から選択され、
好ましくは、R
5は、−OHおよび−(OCH
2R
3)
q−OHからなる群から選択され、
好ましくは、nは、1〜50の範囲内の整数である。
【0023】
好ましくは、腐食防止添加剤は、式(C):
R
6−C≡C−(CH
2)(OCH
2CH
2)OH (C)
(式中、
R
6は、−CH
2OHおよび−CH
2(OCH
2CH
2)−OHからなる群から選択される)
で示される。
【0024】
式(B)および(C)で示される市販のアセチレン性化合物の好ましい例は、体系名1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ブチンを有するButoxyne(商標)497である。
【0025】
好ましくは、水性系インクビヒクルは水と1種以上の共溶媒とを含む。
【0026】
好ましくは、1種以上の共溶媒は、スルホラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、1,3−プロパンジオール、2−ピロリドン、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される。いくつかの好ましい共溶媒の組合せは、2014年3月28日出願の米国仮特許出願第61/971,985号明細書に記載されている。たとえば、スルホランと高次グリコール(たとえば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど)とを含む染料系インクは、いくつかの実施形態では利用しうる。
【0027】
好ましくは、水性系インクビヒクルは1種以上の界面活性剤を含む。界面活性剤の選択は、とくに限定されるものではなく、任意の非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の界面活性剤を含みうる。好適な界面活性剤の例は、より詳細に本明細書に記載されている。
【0028】
好ましくは、コゲーション防止添加剤は、0.5〜10wt.%、または好ましくは0.5〜5wt.%、または好ましくは1〜3wt.%の範囲内の量で存在する。
【0029】
好ましくは、腐食防止添加剤は、0.5〜5wt.%、または好ましくは1〜5wt.%、または好ましくは0.5〜3wt.%の範囲内の量で存在する。
【0030】
好ましくは、腐食防止添加剤とコゲーション防止添加剤との比は1:5〜5:1の範囲内である。
【0031】
いくつかの実施形態では、コゲーション防止添加剤は高粘度を有し、許容可能な閾値を超えてインクの粘度が上昇しないように最小量のコゲーション防止添加剤を利用することが望ましい。好ましくは、コゲーション防止添加剤の量は、インクの粘度増加を最小限に抑えるために2wt.%以下である。
【0032】
好ましくは、腐食防止添加剤の量は、コゲーション防止添加剤が式(A)で示されるアルコキシル化グリセロール化合物である場合、コゲーション防止添加剤の量よりも多い。好ましくは、腐食防止添加剤の量は、コゲーション防止添加剤が式(A)で示されるアルコキシル化グリセロール化合物である場合、コゲーション防止添加剤の量の少なくとも1.5倍または少なくとも2倍である。腐食防止添加剤の相対量を多くすると、プリントヘッドの最適寿命を提供することが示された。
【0033】
好ましくは、コゲーション防止添加剤と腐食防止添加剤とを組み合わせた量は、1〜10wt.%または1〜5wt.%の範囲内である。プリントヘッドの寿命の有意な向上をもたらすのに必要とされる添加剤の全量が比較的少ないことは、本発明の利点である。したがって、これらの添加剤を使用しても、良好な液滴吐出性能、迅速なノズルチャンバー補充、効率的なプリントヘッドプライミングなどに必要とされるインク特性の全体的バランスに深刻な影響を及ぼさない。
【0034】
着色剤のタイプはとくに限定されるものではなく、染料であっても顔料であってもよい。本発明の有効性は、さまざまな着色インクの範囲により実証された。好適な着色剤の例は、より詳細に本明細書に記載されている。
【0035】
米国特許出願第14/310,298号明細書に記載されるように、アセチレン性腐食防止添加剤はほとんどまたはまったく界面活性を有していないので、インクの表面張力に及ぼす影響は最小限に抑えられる。したがって、このアセチレン性化合物を添加しても、インクの性質の全体的バランスに及ぼす影響は最小限に抑えられるので、ある特定の表面張力および粘度のパラメーターの範囲内でインクを配合する場合にとくに有利である。
【0036】
第2の態様では、
以上に記載のインクをプリントヘッドのノズルチャンバーに供給する工程であって、各ノズルチャンバーがインクに接触した関連アクチュエーターを有する、工程と、
アクチュエーターの1つ以上を作動させてプリントヘッドからインクを吐出する工程と、
を含む、インクジェットプリントヘッドの寿命を向上させる方法が提供される。
【0037】
好ましくは、各アクチュエーターは抵抗ヒーターエレメントを含む。
【0038】
好ましくは、ヒーターエレメントは被覆されていない。
【0039】
好ましくは、ヒーターエレメントは、チタン合金(たとえば、TiAl合金)、窒化チタン、およびチタン合金の窒化物(たとえば、窒化チタンアルミニウム)からなる群から選択される材料を含む。
【0040】
好ましくは、プリントヘッドの各アクチュエーターは、少なくとも1.5億回の吐出、好ましくは少なくとも2億回の吐出、好ましくは少なくとも3億回の吐出、または好ましくは少なくとも4億回の吐出の寿命を有する。
【0041】
第3の態様では、
複数のノズルチャンバーを有するインクジェットプリントヘッドであって、各ノズルチャンバーが接触インクに対する関連アクチュエーターを有する、インクジェットプリントヘッドと、
ノズルチャンバーに流体連通するインクリザーバーであって、以上に記載のインクを含有するインクリザーバーと、
を含むインクジェットプリンターが提供される。
【0042】
第2および第3の態様の好ましい実施形態は以上から自明であろう。好ましい実施形態は、記載される場合、本発明のいずれかの特定の態様に限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明者らは、インク配合物中の種々の添加剤を調べることによりプリントヘッドの寿命を向上させるという問題の解決策を探求してきた。以上で事前に示したように、プリントヘッドの設計のいかなる変更も回避できる可能性があるので、インク配合物はプリントヘッドの寿命を向上させるという問題の魅力的な解決策である。
【0046】
驚くべきことに、以上に規定したように水性系インクジェットインク組成物でコゲーション防止添加剤と腐食防止添加剤とを組み合わせることにより、プリントヘッドの寿命の並外れた向上が達成されたことが判明した。重要なこととして、この向上は、インク組成物に添加した場合、いずれかの添加剤単独で達成されたいずれの向上も上回る。したがって、コゲーション防止化合物と腐食防止化合物との間に相乗効果が存在すると結論付けられた。この相乗作用は、これまで先行技術にはどこにも提案されていない。この相乗効果を裏付ける実験観測は、より詳細に以下に記載されている。
【0047】
着色剤
本発明で利用されるインクは、染料系であっても顔料系であってもよい。
【0048】
インクジェット染料は当業者に周知であり、本発明は特定の型の染料になんら限定されるものではない。例として、本発明で使用するのに好適な染料としては、アゾ染料(たとえばフードブラック2)、金属錯体染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カルボニウム染料、キノン−イミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料(ナフタロシアニン染料を含む)、および金属フタロシアニン染料(金属ナフタロシアニン染料を含む)、たとえば、米国特許第7,148,345号明細書に記載のもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0049】
好適な染料の例としては、CIダイレクトブラック4、9、11、17、19、22、32、80、151、154、168、171、194、および195、CIダイレクトブルー1、2、6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199、200、201、202、203、207、218、236、および287、CIダイレクトレッド1、2、4、8、9、11、13、15、20、28、31、33、37、39、51、59、62、63、73、75、80、81、83、87、90、94、95、99、101、110、189、225、および227、CIダイレクトイエロー1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、41、44、48、86、87、88、132、135、142、および144、CIフードブラック1および2、CIアシッドブラック1、2、7、16、24、26、28、31、48、52、63、107、112、118、119、121、172、194、および208、CIアシッドブルー1、7、9、15、22、23、27、29、40、43、55、59、62、78、80、81、90、102、104、111、185、および254、CIアシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、38、41、42、44、53、55、61、71、76、および79、CIリアクティブブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、および46、CIリアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、49、50、58、59、63、64、および180、CIリアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、および42、CIリアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14および18の、Pro−Jet(登録商標)ファーストシアン2(Fujifilm Imaging Colorants)、Pro−Jet(登録商標)ファーストマゼンタ2(Fujifilm Imaging Colorants)、Pro−Jet(登録商標)ファーストイエロー2(Fujifilm Imaging Colorants)、およびPro−Jet(登録商標)ファーストブラック2(Fujifilm Imaging Colorants)が挙げられる。
【0050】
2014年3月28日出願の米国仮特許出願第61/971,985号明細書に記載されるジスアゾ染料は、本発明のいくつかの実施形態では利用しうる。
一般に、かかる染料は、式:
(式中、
Aは、−SO
3M、ニトロ、カルボキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜4アルキルアミノ、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4アルキル、C
1〜4ハロアルキル、シアノ、スルホンアミド、カルバモイル、C
1〜4アルキルアミド、およびC
1〜4アルコキシカルボニルからなる群から選択される0、1、2、3、4、または5個の置換基を有するC
6〜14アリール基であり、Bは、−SO
3M、ニトロ、カルボキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜4アルキルアミノ、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4アルキル、C
1〜4ハロアルキル、シアノ、スルホンアミド、カルバモイル、C
1〜4アルキルアミド、およびC
1〜4アルコキシカルボニルからなる群から選択される0、1、2、3、4、または5個の置換基を有するC
6〜14アリール基であり、各Mは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、および第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、かつ式(I)で示される染料は、式−SO
3Mで示される少なくとも3個の基を含む)
で示される。
【0051】
好ましくは、Aは、−SO
3M、ニトロ、カルボキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜4アルコキシ、およびC
1〜4アルキルからなる群から選択される1、2、または3個の置換基を有するフェニル基またはナフチル基であり、かつBは、−SO3M、ニトロ、カルボキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜4アルコキシ、およびC
1〜4アルキルからなる群から選択される1、2、または3個の置換基を有するフェニル基またはナフチル基である。
【0052】
本発明で使用するのに好適な従来の顔料は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。従来の顔料の例は、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロ−ピロール、アントラキノン、ベンゾイミダゾロン、アントラピリミジン、アゾ顔料、フタロシアニン顔料(ナフトロシアニン顔料を含めて)、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、インダントレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、キノフタロン顔料、および金属錯体顔料である。
【0053】
好適な顔料の例としては、シアンCOJ450(Cabot)、D71C、およびD75C(Diamond Dispersions)、マゼンタCOJ465(Cabot)、D71M、D75M、D71PV19(Diamond Dispersions)、HostajetマゼンタE−PT VP2690およびHostajetマゼンタE5B−PT VP3565(Clariant)、イエローCOJ270およびCOJ470(Cabot)、またはD71Y、D71Y155、D75Y(Diamond Dispersions)、およびHostajetイエロー4G−PT VP2669(Clariant)、ブラックCW1、CW2、CW3(Orient)またはCOJ200、COJ300、COJ400(Cabot)またはSDP1000、SDP2000(Sensient)、またはD71K、D75K、D77K、D80K(Diamond Dispersions)およびHostajetブラックのO−PT(Clariant)、レッドD71R(Diamond Dispersions)、ブルーD71B(Diamond Dispersions)が挙げられる。
【0054】
顔料は、表面改質顔料などの自己分散性顔料でありうる。表面改質は、陰イオン性基、陽イオン性基、または顔料表面の直接改質によるものでありうる。典型的な表面改質基は、カルボキシレート基およびスルホネート基である。しかしながら、陰イオン性ホスフェート基や陽イオン性アンモニウム基などの他の表面改質基もまた、使用しうる。
【0055】
好適な水性の表面改質顔料ディスパージョンの具体例は、Sensijet(登録商標)ブラックSDP2000およびSDP100(Sensient Colors Inc.から入手可能)、ならびにCAB−O−JET(登録商標)200、300、250C、260M、および270Y(Cabot Corporationから入手可能)である。
【0056】
インクジェットインク中の顔料粒子の平均粒子サイズは、任意選択的に50〜500nmの範囲内である。
【0057】
顔料および染料は、単独またはそれらの2種以上の組合せのいずれかでインクジェットインクで使用しうる。
【0058】
インクビヒクル
本発明で使用されるインクビヒクルは、典型的には、少なくとも40wt%の水、少なくとも50wt%の水、または少なくとも60wt%の水を含む従来の水性インクビヒクルである。通常、インクジェットインク中に存在する水の量は、40wt%〜90wt%または任意選択的に50wt%〜70wt%の範囲内である。
【0059】
インクビヒクルは、1種以上の共溶媒(保湿剤、浸透剤、湿潤剤などを含む)、界面活性剤、殺生物剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、粘度調整剤などを含みうる。
【0060】
共溶媒は、典型的には水溶性有機溶媒である。好適な水溶性有機溶媒としては、C
1〜4アルキルアルコール、たとえば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、2−プロパノールなど、グリコール、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコールなど、グリコールエーテル、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなど、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビトール、ソルビタン、グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、およびスルホラン、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0061】
共溶媒として使用しうる他の有用な水溶性有機溶媒としては、極性溶媒、たとえば、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、モルホリン、N−エチルモルホリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0062】
グリコール化合物のほかに、インクジェットインクは、インク組成物に保水性および湿潤性を付与するための湿潤剤または保湿剤として機能可能な他の高沸点水溶性有機溶媒を共溶媒として含有しうる。高沸点水溶性有機溶媒の例は、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール,およびそれらの組合せである。
【0063】
他の好適な湿潤剤または保湿剤としては、糖(単糖、オリゴ糖、および多糖を含む)およびそれらの誘導体(たとえば、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸塩、アルドン酸、ウロン酸など)が挙げられる。
【0064】
インクジェットインクはまた、記録媒体中への水性インクの浸透を加速のための浸透剤を共溶媒の1つとして含有うる。好適な浸透剤としては、多価アルコールアルキルエーテル(グリコールエーテル)および/または1,2−アルキルジオールが挙げられる。好適な多価アルコールアルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。好適な1,2−アルキルジオールの例は、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールである。浸透剤はまた、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールなどの直鎖状炭化水素ジオールからも選択しうる。グリセロールはまた、浸透剤としても使用しうる。
【0065】
典型的には、インク中に存在する共溶媒の全量は、約10wt%〜60wt%、または任意選択的に15wt%〜50wt%の範囲内である。
【0066】
インクジェットインクはまた、1種以上の界面活性剤、たとえば、陰イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそれらの混合物を含有しうる。有用な陰イオン性界面活性剤としては、スルホン酸型、たとえば、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アシルメチルタウリン、およびジアルキルスルホコハク酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、カルボン酸型、たとえば、脂肪酸塩およびアルキルサルコシン塩、ならびにリン酸エステル型、たとえば、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、およびグリセロリン酸エステル塩が挙げられる。陰イオン性界面活性剤の具体例は、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムラウレート、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェートアンモニウム塩である。
【0067】
双性イオン性界面活性剤の例としては、N,N−ジメチル−N−オクチルアミンオキシド、N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンオキシド、N,N−ジメチル−N−テトラデシルアミンオキシド、N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアミンオキシド、N,N−ジメチル−N−オクタデシルアミンオキシド、およびN(N−ジメチル−N−(Z−9−オクタデセニル)−N−アミンオキシド)が挙げられる。
【0068】
非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシド付加体型、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、およびポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオールエステル型、たとえば、グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、および糖アルキルエステル、ポリエーテル型、たとえば、多価アルコールアルキルエーテル、ならびにアルカノールアミド型、たとえば、アルカノールアミン脂肪酸アミドが挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体例は、エーテル、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシアルキレンアルキルエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ならびにエステル、たとえば、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンオレエートエステル、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、およびポリオキシエチレンステアレートである。
【0069】
アセチレングリコール界面活性剤、たとえば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを使用することも可能である。本発明で使用しうる非イオン性界面活性剤の具体例は、Surfynol(登録商標)465およびSurfynol(登録商標)440(Air Products and Chemicals,Incから入手可能)である。
【0070】
界面活性剤は、典型的には、0.05wt.%〜2wt%または0.1〜1wt.%の範囲内の量で水性インクジェットインク中に存在する。
【0071】
水性インクジェットインクはまた、pH調整剤または緩衝剤、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、および酒石酸水素カリウム、アンモニア、ならびにアミン、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、プロパノールアミン、4−モルホリンエタンスルホン酸、および4−モルホリンプロパンスルホン酸(「MOPS」)を含みうる。pH調整剤の量は、存在する場合、典型的には0.01〜2wt.%または0.05〜1wt.%の範囲内である。本発明で使用されるインクジェットインクは一般にアルカリ性である。
【0072】
水性インクジェットインクはまた、殺生物剤、たとえば、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸のエステル、ナトリウムデヒドロアセテート、1,2−ベンチアゾリン−3−オン(Arch Chemicals,Inc.から入手可能な「Proxel(登録商標)GXL」)、3,4−イソチアゾリン−3−オン、または4,4−ジメチルオキサゾリジンを含みうる。殺生物剤の量は、存在する場合、典型的には0.01〜2wt.%または0.05〜1wt.%の範囲内である。
【0073】
水性インクジェットインクはまた、金属イオン封鎖剤、たとえば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有しうる。
【0074】
インクジェットプリントヘッド
本発明に係るインクは、主にサーマルインクジェットプリントヘッドに関連した使用に供されるが、他の型のプリントヘッド、とりわけ、アクチュエーターがインクに接触するものにも使用しうる。完全性を期すために、次に、米国特許第7,303,930号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される本出願人のサーマルインクジェットプリントヘッドの1つの簡単な説明をたどる。
【0075】
図1を参照すると、複数のノズルアセンブリーを含むプリントヘッドの一部が示されている。
図2および3は、これらのノズルアセンブリーの1つを側断面図および破断斜視図で示している。
【0076】
各ノズルアセンブリーは、シリコンウエハ基材2上にMEMS製造技術により形成されたノズルチャンバー24を含む。ノズルチャンバー24は、ルーフ21と、ルーフ21からシリコン基材2まで延在するサイドウォール22と、により規定される。
図1に示されるように、各ルーフは、プリントヘッドの吐出面を横切って延在するノズルプレート56の一部により規定される。ノズルプレート56およびサイドウォール22は、MEMS製造時にフォトレジストの犠牲足場を覆うようにPECVDにより堆積された同一の材料で形成される。典型的には、ノズルプレート56およびサイドウォール21は、二酸化ケイ素や窒化ケイ素などのセラミック材料で形成される。これらの硬質材料は、プリントヘッドのロバスト性に関して優れた性質を有し、それらが本質的に親水性であることは、毛管作用によりノズルチャンバー24にインクを供給するうえで有利である。
【0077】
ノズルチャンバー24の細部に戻ると、ノズル開口26は各ノズルチャンバー24のルーフ内に規定されていることが分かるであろう。各ノズル開口26は一般に楕円形であり、関連ノズルリム25を有する。ノズルリム25は、プリント時に液滴の方向性を支援し、さらには少なくともある程度までノズル開口26からのインクのフラッディングを低減する。ノズルチャンバー24からインクを吐出するためのアクチュエーターは、ノズル開口26の下に位置決めされかつピット8を横切ってサスペンドされたヒーターエレメント29である。電流は、基材2の下側CMOS層の駆動回路に接続された電極9を介してヒーターエレメント29に供給される。電流がヒーターエレメント29を流れると周囲のインクが急速に過熱されてガスバブルが生成されるので、ノズル開口26を介してインクが押し出される。ヒーターエレメント29をサスペンドすることにより、ノズルチャンバー24のプライミング時にインク内に完全に浸漬される。こうすると、より少ない熱が下側基材2中に散逸し、より多くの入力エネルギーがバブル生成に使用されるので、プリントヘッドの効率を向上する。典型的には、ヒーターエレメントは、金属または伝導性セラミック材料を含む。好適な材料の例としては、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、およびチタンアルミニウム合金が挙げられる。
【0078】
図1で最も明確に分かるように、ノズルは、列をなして配置され、列に沿って長手方向に延在するインク供給チャネル27は、列の各ノズルにインクを供給する。インク供給チャネル27は、各ノズルに対してインク入口通路15にインクを送り、インク導管23を介してノズル開口26の側方からノズルチャンバー24にインクを供給する。
【0079】
かかるプリントヘッドを製造するためのMEMS製造プロセスは、米国特許第7,303,930号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0080】
サスペンドヒーターエレメントを有するプリントヘッドの動作は、本出願人の米国特許第7,278,717号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0081】
本出願人はまた、埋込みヒーターエレメントを有する熱バブル形成インクジェットプリントヘッドを記載してきた。かかるプリントヘッドは、たとえば、米国特許第7,246,876号明細書および米国特許出願公開第2006/0250453号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0082】
本発明のインクジェットインクは、以上に記載のように、本出願人のサーマルインクジェットプリントヘッドと組み合わせて最適に機能する。しかしながら、その使用は本出願人の熱プリントヘッドに限定されるものではない。本明細書に記載のインクは、他の型の熱バブル形成インクジェットプリントヘッド、圧電プリントヘッド、およびサーマルベンドアクチュエートプリントヘッド(たとえば、米国特許第7,926,915号明細書、米国特許第7,669,967号明細書、および米国特許出願公開第2011/0050806号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの)などで使用しうる。
【0083】
完全性を期すために、本出願人のサーマルインクジェットプリントヘッドが組み込まれたインクジェットプリンターは、たとえば、米国特許第7,201,468号明細書、米国特許第7,360,861号明細書、米国特許第7,380,910号明細書、および米国特許第7,357,496号明細書(それらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0084】
図4は、本出願人の米国特許第8,066,359号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるサーマルインクジェットプリンター用のプリントエンジン103を示している。プリントエンジン103は、ページ幅プリントヘッドを含む取外し可能なプリントカートリッジ102と、ユーザーが交換可能なインクカートリッジ128のバンクと、を含む。各カラーチャネルは、典型的には、プリントヘッドに供給されるインクの静水圧を調整するために、それ自体のインクリザーバー128と、対応する圧力調整チャンバー106と、を有する。したがって、プリントエンジン103は、5つのインクリザーバー128と、5つの対応する圧力調整チャンバー106と、を有する。典型的には、この5チャネルプリントエンジン103で利用されるインクチャネル(「カラーチャネル」)は、CMYK
1K
2である。インクチャネル順序は、米国特許出願公開第2013/0070024号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、プリントヘッドのノズルプレートにおける好ましいインクカラー混合効果を最適化するように配置しうる。たとえば、シアン(C)を最も下流に位置決めし、かつイエロー(Y)を最も上流に位置決めする場合、YK
1MK
2Cのインクチャネル順序を利用しうる。
【0085】
インクカートリッジ128の少なくとも1つは、本明細書に記載のインクジェットインクを含みうる。
図4には種々のコンポーネント間の流体接続が示されないが、たとえば、米国特許第8,066,359号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のフルイディクスシステムに従って好適なホースでこれらの接続を行いうることは分かるであろう。
【実施例】
【0086】
実験の部
以下に記載の方法に従って加速プリントヘッド寿命試験を行った。
【0087】
改変プリンティング装置で操作するために、サスペンド非被覆抵抗ヒーターエレメントを備えたノズルデバイスを有するMemjet(登録商標)プリントヘッド集積回路(PHIC)を個別に取り付けた。インクに暴露されるヒーターエレメント材料は窒化チタンアルミニウムである。
【0088】
11kHzの周波数でインクを吐出するようにデバイスを動作させた。アクチュエーションパルス幅を制御して、それ以外は改変されていないプリンターで動作をレプリケートした。テストパターンを周期的にプリントし、目視検査によりデバイスの健全性を決定した。プリント品質が所定の閾値を下回ったら、PHICは、その寿命の終りに達成したとみなして試験を停止する。プリントヘッドの寿命の指標となるように、プリントヘッド故障時の吐出回数を記録した。
【0089】
ブラックインク
表1に記載されるようにブラックインクを配合し、使用前に濾過した(0.2ミクロン)。
【0090】
以上に記載の改変プリンティング装置でブラックインク1および比較ブラックインク2〜4を試験し、標準化プリント品質テストパターンの目視検査により判断してプリントヘッドが故障する前の吐出回数を決定した。これらの加速プリントヘッド寿命試験の結果は表2に示されている。
【0091】
表2から、添加剤を有していないベースラインインク(比較ブラックインク2)は故障前にドロップレットを約1.7億回吐出したことが分かる。これは、2014年3月28日出願の米国仮特許出願第61/971,985号明細書で報告された類似のインクの性能と一致している。
【0092】
比較ブラックインク3でエトキシル化グリセロール(「LEG−1”)を添加したとき、プリントヘッドの寿命の相対的向上(2.4億回の吐出)が観測された。同様に、比較ブラックインク4でエトキシル化ブチンジオール(Butoxyne(商標)497)を添加したとき、プリントヘッドの寿命の相対的向上(2.6億回の吐出)が観測された。これは、米国特許出願第14/310,298号明細書に報告される予想インク性能とほぼ一致している。
【0093】
しかしながら、ブラックインク1でエトキシル化グリセロールおよびエトキシル化ブチンジオールを添加したとき、プリントヘッドの寿命の並外れた向上が観測された。とくに、プリントヘッドの寿命は、両方の添加剤の組合せにより約2.5倍の4.25億回の吐出に増加した。したがって、添加剤は、in situで相乗的に挙動することによりプリントヘッドのヒーターエレメントを保護して寿命を向上させると結論付けられた。相乗的挙動は、先行技術からも単独の各添加剤の性能からも予測できなかった。
【0094】
マゼンタインク
表1および2は、一連の同等のブラックインク配合物でプリントヘッド寿命性能の向上に関してエトキシル化グリセロールとエトキシル化ブチンジオールとの相乗効果を実証する。一連のマゼンタインク配合物でプリントヘッドの寿命の最適化を調べた。
【0095】
表3に記載されるようにマゼンタインクを配合し、使用前に濾過した(0.2ミクロン)。
【0096】
以上に記載の改変プリンティング装置でマゼンタインク1〜8および比較マゼンタインク1を試験し、標準化プリント品質テストパターンの目視検査により判断してプリントヘッドが故障する前の吐出回数を決定した。これらの加速プリントヘッド寿命試験の結果は表4に示されている。
【0097】
表3および4から、マゼンタインク3および4は、エトキシル化ブチンジオールの量がエトキシル化グリセロールの量よりも多い場合に優れた性能を示したことが分かる。プリントヘッドの最適寿命に関して、エトキシル化ブチンジオールの量は、好ましくは、エトキシル化グリセロールの量の少なくとも1.5倍または少なくとも2倍である。さらに、エトキシル化グリセロールの量は、好ましくは3wt.%未満または2wt.%未満であり、典型的には0.5〜3wt.%のまたは0.5〜2wt.%範囲内である。エトキシル化ブチンジオールの量は、好ましくは少なくとも1wt.%であり、典型的には1〜5wt.%の範囲内である。
【0098】
表3および4から、PEG300は、腐食防止添加剤としてのエトキシル化ブチンジオールと組み合わせるとコゲーション防止添加剤として優れた性能を示したことも分かる。Liponic(登録商標)EG−1をPEG300で置き換えると、腐食防止添加剤に対するコゲーション防止添加剤の量がより多く必要になった。
【0099】
シアンインク
一連のシアンインク配合物でプリントヘッドの寿命の最適化を調べた。表5に記載されるようにシアンインクを配合し、使用前に濾過した(0.2ミクロン)。
【0100】
以上に記載のプリントヘッド寿命試験で比較シアンインク1〜3およびシアンインク1を試験した。結果は表6に示されている。
【0101】
表5および6から、エトキシル化ブチンジオールとエトキシル化グリセロールとを含有するシアンインクのみがプリントヘッドの寿命の有意な向上を示したことが分かる。
【0102】
表7に示されるシアンインク配合物で一連の他のコゲーション防止添加剤を試験した。
【0103】
以上に記載のプリントヘッド寿命試験で比較シアンインク4およびシアンインク2〜6を試験した。結果は表8に示されている。
【0104】
表7および8から、エトキシル化ブチンジオールとさまざまな他の選択肢のコゲーション防止添加剤との組合せを含有するシアンインクはプリントヘッドの寿命の有意な向上を示したことが分かる。
【0105】
以上から、さまざまな着色染料系インクでかなりの向上が観測されたことが理解されよう。類似の向上は顔料系インクでも観測された。したがって、本明細書に記載の添加剤の組合せの驚くべき有利な効果は、一連のインクに普遍的に適用可能であると考えられ、特定の着色剤またはインクビヒクルになんら限定されるものではない。
【0106】
当然ながら、本発明は単なる例により説明されてきたにすぎず、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で細部の変更を行いうることは分かるであろう。