特許第6554208号(P6554208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6554208-フレッシュコンクリートの性状評価方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554208
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリートの性状評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20190722BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G01N11/00 E
   G01N33/38
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-101941(P2018-101941)
(22)【出願日】2018年5月29日
(62)【分割の表示】特願2013-266551(P2013-266551)の分割
【原出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2018-128475(P2018-128475A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梁 俊
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4981984(JP,B1)
【文献】 特開2010−276413(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3171788(JP,U)
【文献】 特開2014−106002(JP,A)
【文献】 特開2010−271121(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/091184(WO,A1)
【文献】 石井佑大, 宇治公隆, 上野敦,“タンピング試験におけるワーカビリティの簡易評価方法の検討”,コンクリート工学年次論文集,日本,日本コンクリート工学協会,2008年 7月30日,Vol.30, No.2,Page.37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00 − 11/16
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スランプ試験を行ったコンクリート試料に対し、スランプフローが基準径になるまで振動を与える第一工程と、
スランプフローが前記基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第二工程と、を備えるコンクリートの評価方法であって、
前記スランプ試験を行う前に前記コンクリート試料の上面の全体をフェノールフタレイン溶液により着色しておき、
前記第二工程において、前記コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されていない場合にはフレッシュコンクリートの粘性が不足していると評価することを特徴とする、フレッシュコンクリートの性状評価方法。
【請求項2】
前記第二工程において、前記コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されている場合は、
前記コンクリート試料に対し、スランプフローが前記基準径よりも大きな第二の基準径になるまでさらに振動を与える第三工程と、
スランプフローが前記第二の基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第四工程と、を行い、
前記第四工程において、当該コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されている場合にはフレッシュコンクリートの粘性が過大であると評価することを特徴とする、請求項1に記載のフレッシュコンクリートの性状評価方法。
【請求項3】
スランプ試験を行ったコンクリート試料に対し、スランプフローが基準径になるまで振動を与える第一工程と、
スランプフローが前記基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第二工程と、を備えるコンクリートの評価方法であって、
前記スランプ試験を行う前に前記コンクリート試料の上面を着色しておき、
前記第二工程では、前記コンクリート試料上面の着色部分の面積である着色面積を測定する作業と、
前記着色部分が拡散した範囲の面積である拡散面積を測定する作業と、
前記着色面積を前記拡散面積で除することで第一判定指数を算出する作業と、
前記第一判定指数に基づいてフレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する作業と、を有していることを特徴とする、フレッシュコンクリートの性状評価方法。
【請求項4】
前記第二工程において、前記フレッシュコンクリートの所望の分離抵抗性を有していると判断された場合は、
前記コンクリート試料に対してスランプフローが前記基準径よりも大きな第二の基準径になるまでさらに振動を与える第三工程と、
スランプフローが前記第二の基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第四工程と、を行い、
前記第四工程では、前記コンクリート試料上面の着色部分の面積である着色面積を測定する作業と、
前記着色部分が拡散した範囲の面積である拡散面積を測定する作業と、
前記着色面積を前記拡散面積で除することで第二判定指数を算出する作業と、
前記第二判定指数に基づいてフレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する作業と、を有していることを特徴とする、請求項3に記載のフレッシュコンクリートの性状評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレッシュコンクリートの性状評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレッシュコンクリートのワーカビリティーは、コンクリートのコンシステンシーと分離抵抗性により定められる。
従来、コンクリートのワーカビリティーはスランプ試験により評価されている。
【0003】
スランプ試験はコンクリートのコンシステンシーを評価する試験であるが、混和剤の種類が少なく、川砂、川砂利を使用した時代では、コンクリートのワーカビリティーをある程度評価することができた。
【0004】
ところが、近年では、フライアッシュやスラグ細骨材など、コンクリート用の材料が多様化しており、同一のスランプ値が得られたコンクリートであっても、骨材間の噛み合わせや、材料の分離抵抗性などに違いが現れる場合が多く存在するため、スランプ試験だけではワーカビリティーを正確に把握できないおそれがある。
【0005】
コンクリートのワーカビリティーを正確に把握するためには、スランプ試験のほかに、コンクリートの分離抵抗性も評価する必要がある。コンクリートの粘性はコンクリートの分離抵抗性に大きく影響するので、コンクリートの粘性を評価することでコンクリートの分離抵抗性をある程度は評価することができる。
【0006】
例えば、特許文献1には、スランプ試験後のコンクリート試料のモルタル分の外縁部および粗骨材の重心からの距離を計測し、この計測値が設定値内にあれば材料分離抵抗性を備えていると評価する評価方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、スランプ試験後のコンクリート試料を、直径の異なる複数のリング状部材によって複数の領域に区分けし、各領域から採取したコンクリート試料について材料分離抵抗性を評価する評価方法が開示されている。
【0008】
さらに、非特許文献1には、スランプ試験後のコンクリート試料に対して、コンクリート試料の上面の円形が消失するまでスランプ板を叩いたときのタンピング回数によりコンクリートの材料分離抵抗性を評価する評価方法が開示されている。
【0009】
ところが、特許文献1に記載の評価方法は、モルタル分の外縁部の位置の計測および複数の骨材の位置の計測やその平均値の算出等を行う必要があるため、作業に手間を要していた。
【0010】
また、特許文献2に記載の材料分離抵抗性の評価方法は、複数の領域からコンクリート試料を採取し、採取した試料毎に粗骨材質量比などを測定して評価を行うため、作業に手間を要していた。
【0011】
また、非特許文献1の評価方法は、スランプ板の設置状況の違いや、タンピングの強度が作業者ごとに異なる等の理由により、試験結果に誤差が生じるおそれがあった。
また、コンクリート試料同士の材料分離抵抗性の比較を行うことは可能であるものの、良否の判定(粘性の過不足の判定)は困難であった。
【0012】
そのため、本出願人は、安定した評価結果を簡易に得ることを目的として、特許文献3に示すように、スランプ試験後のコンクリート試料に対してスランプフローが基準径になるまで振動を与え、スランプフローが前記基準径となったコンクリート試料の上面の形状を確認することでフレッシュコンクリートの粘性を評価するフレッシュコンクリートの性状評価方法を開発した。なお、基準径は、締固め完了エネルギーに基づいて設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−267921号公報
【特許文献2】特開2003−322602号公報
【特許文献3】特許第4981984号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】石井佑大、外2名、「タンピング試験におけるワーカビリティーの簡易評価方法の検討」、コンクリート工学年次論文集、コンクリート工学協会、2008年、Vol.30、No.2、p.37−40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献3のフレッシュコンクリートの性状評価方法は、コンクリート試料の広がりと、その上面の円形の変化を確認する必要があるが、コンクリート試料上面の円形の変化および有無の判断について、試験者によって誤差が生じるおそれがあった。
【0016】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、より安定した評価結果を得ることが可能なフレッシュコンクリートの性状評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、第一の発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、スランプ試験を行ったコンクリート試料に対し、スランプフローが基準径になるまで振動を与える第一工程と、スランプフローが前記基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第二工程とを備えるものであって、前記スランプ試験を行う前に前記コンクリート試料の上面の全体をフェノールフタレイン溶液により着色しておき、前記第二工程において前記コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されていない場合にはフレッシュコンクリートの粘性が不足していると評価することを特徴としている。
【0018】
前記第二工程において、前記コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されている場合は、前記コンクリート試料に対し、スランプフローが前記基準径よりも大きな第二の基準径になるまでさらに振動を与える第三工程と、スランプフローが前記第二の基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第四工程とを行い、前記第四工程において当該コンクリート試料上面の着色部分の外縁形状が円形に保持されている場合にはフレッシュコンクリートの粘性が過大であると評価する。
【0019】
かかるフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、フレッシュコンクリートの粘性の過不足(材料分離抵抗性)の評価を簡易に行うことができる。すなわち、スランプは試験前にコンクリート試料の上面に色を付しているため、スランプコーンを抜いた際に試料の上面の外縁形状を確認しやすく、振動を与えた試料の形状の変化を目視するのみで簡易にフレッシュコンクリートの性状を評価することができる。
なお、スランプフローの径が基準径に達する前に、材料分離傾向(分離、崩れ、ペーストの先走り等)にあると認められたものは、実施工には使用し得ない不適切なコンクリー
トとみなす。
【0020】
また、着色部分を確認することで評価を行うため、作業者が異なることにより生じるばらつきを最小限に抑えることができる。
【0021】
また、第二の発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、スランプ試験を行ったコンクリート試料に対し、スランプフローが基準径になるまで振動を与える第一工程と、スランプフローが前記基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第二工程とを備えるものであって、前記スランプ試験を行う前に前記コンクリート試料の上面を着色しておき、前記第二工程では、前記コンクリート試料上面の着色部分の面積である着色面積を測定する作業と、前記着色部分が拡散した範囲の面積である拡散面積を測定する作業と、前記着色面積を前記拡散面積で除することで第一判定指数を算出する作業と、前記第一判定指数に基づいてフレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する作業とを有していることを特徴としている。
【0022】
前記第二工程において、前記フレッシュコンクリートの所望の分離抵抗性を有していると判断された場合は、前記コンクリート試料に対してスランプフローが前記基準径よりも大きな第二の基準径になるまでさらに振動を与える第三工程と、スランプフローが前記第二の基準径となった前記コンクリート試料の上面の形状を確認する第四工程とを行い、前記第四工程では、前記コンクリート試料上面の着色部分の面積である着色面積を測定する作業と、前記着色部分が拡散した範囲の面積である拡散面積を測定する作業と、前記着色面積を前記拡散面積で除することで第二判定指数を算出する作業と、前記第二判定指数に基づいてフレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する作業とを有していることを特徴としている。
【0023】
かかるフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、フレッシュコンクリートの性状を定量的に評価することが可能となり、より安定した評価結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、試験者によるバラツキを最小限に抑制し、安定した評価結果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)〜(c)は本発明の実施の形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法の各実施段階を示す斜視図である。
図2】配合の異なるコンクリート試料の加振後の状況を模式的に示す平面図であって、(a)は標準配合のコンクリートを第一基準径になるまで加振した場合、(b)は標準配合のコンクリートを第二基準径になるまで加振した場合、(c)は粗い配合のコンクリートを第一基準径になるまで加振した場合、(d)は粗い配合のコンクリートを第二基準径になるまで加振した場合、(e)は高粘性配合のコンクリートを第一基準径になるまで加振した場合、(f)は高粘性配合のコンクリートを第二基準径になるまで加振した場合である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第一の実施形態>
第一の実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法は、図1に示すように、スランプコーン2を利用してスランプ試験を行ったフレッシュコンクリート(コンクリート試料1)に対して、実施するものであって、第一工程と、第二工程と、第三工程と、第四工程とを備えている。
【0027】
第一工程は、図1の(b)に示すように、スランプ試験を行ったコンクリート試料1に対してスランプフローDが第一基準径(基準径)になるまでスランプ板3を叩いて振動を与える工程である。本実施形態では、第一基準径を470mmとする。
なお、スランプ試験は、上面内径10cm、下面内径20cm、高さ30cmのスランプコーン2を使用して行う。
【0028】
本実施形態では、コンクリート試料1が上載されたスランプ板3を、木槌4により叩くことにより振動を与える。
このとき、コンクリート試料1の上下方向の中心線が偏らないように(傾倒しないように)、コンクリート試料1の周囲をまんべんなく叩くようにする。
【0029】
コンクリート試料1は、図1の(a)に示すように、スランプ試験を行う前に上面が着色されている。
着色方法は限定されないが、本実施形態では、フェノールフタレイン溶液をコンクリート試料1の上面に噴霧することにより行う。コンクリート試料1に噴霧されたフェノールフタレイン溶液は、コンクリートのアルカリ性に反応して赤紫色に変色する。
【0030】
コンクリート試料1に振動を与えている段階で、スランプフローDが470mmになる前にコンクリート試料が崩れたりコンクリート試料1の周りに水分が流出したりするような場合には、コンクリート試料1は分離傾向にあるもの(実施工には使用し得ない不適切なコンクリート)と判断する。
【0031】
第一工程において、分離傾向にないコンクリート(適切なコンクリート)と判断された場合は、引き続き第二工程を行う。
一方、第一工程において、コンクリート試料1が分離傾向にあると判断された場合は、コンクリートを受け入れない、あるいは、コンクリートの配合を検討し直すのが望ましい。
【0032】
第二工程は、図1の(c)に示すように、スランプフローDが470mmとなったコンクリート試料1の上面の形状を確認する工程である。
【0033】
スランプコーン2の上端開口縁によって、コンクリート試料1の上端面は円形に成形されるが、スランプ試験においてスランプコーン2を引き上げた直後も分離傾向にないコンクリート試料1の上端面は円形を維持している。第一工程を行う過程でコンクリート試料1の上端面の円形が拡がることになるが、第二工程では、第一工程後のコンクリート試料1上面の着色部分5の外縁形状が円形に保持されているか否かを確認する。
【0034】
コンクリート試料1の上面に「円形」が保持されている場合(着色部分5の外縁形状が円形である場合)は、フレッシュコンクリートが施工に必要な粘性を有していると評価し、コンクリート試料1の上面に「円形」が保持されていない場合(着色部分5の外縁形状が円形でない場合)にはフレッシュコンクリートの粘性が不足していると評価する。粘性が低いと評価された場合は、コンクリートを締め固めすぎないように(過振動を加えないように)注意する。ここで、「円形」が保持されているか否かは、着色部分5の外縁形状から判定する。
【0035】
第二工程においてフレッシュコンクリートの粘性が不足していると評価された場合は、コンクリート打設時における締め固め作業を、コンクリートが分離することのないように注意して行う。なお、必要に応じてコンクリートの配合を調整してもよい。
【0036】
第三工程は、コンクリート試料1に対してスランプフローDの径が第一基準径(470
mm)よりも大きな第二基準径になるまでさらにスランプ板3を叩いて振動を与える工程である(図1の(b)参照)。第三工程は、第二工程においてコンクリート試料1の上面の着色部分5の外縁形状が円形に保持されている場合に実施される。本実施形態では、第二基準径を520mmとする。
【0037】
第三工程におけるコンクリート試料1に対して振動を与える方法は、第一工程にて実施した方法と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0038】
第四工程は、スランプフローDが520mmとなったコンクリート試料1上面の着色部分5の外縁形状を確認する工程である(図1の(c)参照)。
【0039】
第四工程において、コンクリート試料1上面の着色部分5の外縁形状が円形に保持されている場合にはフレッシュコンクリートの粘性が過大であると評価し、コンクリート試料上面の着色部分5の外縁形状が円形で無くなる場合は、フレッシュコンクリートの配合が最適な分離抵抗性を有した配合であると評価する。
【0040】
なお、第四工程において、コンクリートの粘性が過大であると評価された場合は、コンクリート打設時の締め固め作業(特に鉄筋まわり等)を念入りに行うことが望ましい。
【0041】
本実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、振動を与えたコンクリート試料1の形状の変化を目視するのみで簡易にフレッシュコンクリートの性状を評価することができる。スランプコーン2を抜いた際にコンクリート試料1の上面に形成される円形の有無を目視するのみで、フレッシュコンクリートの粘性の過不足(材料分離抵抗性)を評価することができるため、簡易である。コンクリート試料1の上面は着色されているため、コンクリート試料1上面の形状を確認しやすい。
【0042】
また、タンピングの回数ではなく、スランプフローDの直径により管理するため、作業者が異なることにより生じるばらつきを最小限に抑えることができる。
スランプ試験により流動性を測定したコンクリート試料1に対してそのまま材料分離抵抗性の評価を行うため、作業性に優れ、より正確な評価をすることができる。
【0043】
<第二の実施形態>
第二の実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法は、コンクリート試料1上面の着色部分の面積を利用してフレッシュコンクリートの性状を確認するものである。
第二の実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法は、第一工程と、第二工程と、第三工程と、第四工程とを備えている。
【0044】
第一工程は、図1の(b)に示すように、スランプ試験を行ったコンクリート試料1に対してスランプフローDが第一基準径(基準径)になるまでスランプ板3を叩いて振動を与える工程である。
なお、第一工程の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0045】
第二工程は、図1の(c)に示すように、スランプフローDが第一基準径(470mm)となったコンクリート試料1の上面の形状を確認する工程である。
【0046】
第二工程では、まず、コンクリート試料1を上方から撮影する。
次に、撮影された画像上において、コンクリート試料1上面の着色部分5の外縁(着色部分5が拡散した範囲)を多角形状の着色範囲線6により囲む(図2参照)。
【0047】
続いて、撮影された画像に対して二値化処理等の画像処理を行い、その後、コンクリート試料1上面の着色部分5の面積である着色面積A1を測定(算出)する。
また、着色面積A1の測定に伴い、画像処理により、着色範囲線6により囲まれた部分(着色部分5が拡散した範囲)の面積である拡散面積A2も測定(算出)する。
【0048】
着色面積A1および拡散面積A2を測定したら、着色面積A1を拡散面積A2で除することで第一判定指数B1(=A1/A2)を算出する。
【0049】
そして、第一判定指数B1が0.7以上である場合は、フレッシュコンクリートが施工に必要な分離抵抗性を有していると評価し、第一判定指数B1が0.7以下の場合にはフレッシュコンクリートの分離抵抗性が不足していると評価する。
なお、フレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する際の第一判定指数B1の閾値は0.7に限定されるものではなく、コンクリートの使用目的、強度や混入材料等に応じて適宜設定する。
【0050】
第二工程においてフレッシュコンクリートが所望の分離抵抗性を有していない評価された場合は、コンクリート打設時における締め固め作業を、コンクリートが分離することのないように注意して行う。なお、必要に応じてコンクリートの配合を調整してもよい。
【0051】
第三工程は、第二工程において、フレッシュコンクリートが所望の分離抵抗性を有していると判断された場合に、コンクリート試料1に対してスランプフローDの径が第一基準径(470mm)よりも大きな第二基準径(520mm)になるまでさらにスランプ板3を叩いて振動を与える工程である(図1の(b)参照)。
なお、第三工程の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0052】
第四工程は、スランプフローDが第二基準径となったコンクリート試料1上面の着色部分5の形状を確認する工程である(図1の(c)参照)。
【0053】
第四工程では、まず、コンクリート試料1を上方から撮影する。
次に、撮影された画像上において、コンクリート試料1上面の着色部分5の外縁(着色部分5が拡散した範囲)を多角形状の着色範囲線6により囲む(図2参照)。
【0054】
続いて、撮影された画像に対して二値化処理等の画像処理を行い、その後、コンクリート試料1上面の着色部分5の面積である着色面積A1を測定(算出)するとともに、着色範囲線6により囲まれた部分(着色部分5が拡散した範囲)の面積である拡散面積A2を測定(算出)する。
【0055】
着色面積A1および拡散面積A2を測定したら、着色面積A1を拡散面積A2で除することで第二判定指数B2(=A1/A2)を算出する。
【0056】
そして、第二判定指数B2が0.7〜0.5の範囲内である場合は、フレッシュコンクリートが施工に必要な分離抵抗性を有していると評価し、第二判定指数B2が0.7以上の場合にはフレッシュコンクリートの粘性(分離抵抗性)が過大であると評価する。
なお、フレッシュコンクリートの分離抵抗性を評価する際の第二判定指数B2の閾値は0.7〜0.5に限定されるものではなく、コンクリートの使用目的、強度や混入材料等に応じて適宜設定する。
【0057】
第四工程において、コンクリートの粘性が過大であると評価された場合は、コンクリート打設時の締め固め作業を念入りに行うことが望ましい。
【0058】
本実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、振動を与えたコンクリート試料1の形状の変化を測定することで、定量的に評価することが可能となり、より安定した評価結果を得ることができる。
そのため、試験者の経験度や個人差による誤差を低減することができる。
【0059】
また、タンピングの回数ではなく、スランプフローDの直径により管理するため、作業者が異なることにより生じるばらつきを最小限に抑制することができる。
スランプ試験により流動性を測定したコンクリート試料1に対してそのまま材料分離抵抗性の評価を行うため、作業性に優れ、より正確な評価をすることができる。
【0060】
次に、第二の実施形態のフレッシュコンクリートの性状評価方法における分離抵抗性の判断基準について行った実験結果を示す。
【0061】
本実験では、粘性が適正(標準)に配合されたコンクリート試料(ケース1,4)と、粗い配合のコンクリート試料(ケース2,5)と、高粘性(粘性が高すぎる)に配合されたコンクリート試料(ケース3,6)について、それぞれ第一判定指数B1および第二判定指数B2を算出し、比較を行った。
【0062】
ケース1〜ケース6の配合を表1に示す。なお、本実験では、目標スランプを8cmにした場合(ケース1〜3)と、12cmにした場合(ケース4〜6)について実施した。
【0063】
【表1】
【0064】
ケース1〜6のコンクリート試料に対して、それぞれ振動を加え、スランプフローが470mm(図2の(a)、(c)、(e)参照)および520mm(図2の(b)、(d)、(f)参照)となった時点における着色面積A1と拡散面積A2の測定を行うとともに、これらの着色面積A1と拡散面積A2により各ケースの第一判定指数B1および第二判定指数B2を算出した。
表2にケース1〜6の第一判定指数B1および第二判定指数B2を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示すように、標準配合のケース1,4および高粘性配合のケース3,6では、第一判定指数が0.7以上となった。一方、粗い配合のケース2,5では、第一判定指数がそれぞれ0.30,0.17であった。
したがって、第一判定指数B1が0.7以上であれば、必要な粘性が確保されていると言える。
【0067】
また、表2に示すように、標準配合のケース1,4では第二判定指数がそれぞれ0.56,0.65となり、高粘性配合のケース3,6では第二判定指数がそれぞれ0.75,0.73となった。
したがって、第二判定指数B2が0.7以上の場合は、フレッシュコンクリートの粘性(分離抵抗性)が過大であると評価することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0069】
例えば、前記各実施形態では、第一基準径および第二基準径を、コンクリートの締固め完了エネルギーに基づいて、それぞれ470mmと520mmに設定したが、第一基準径および第二基準径はこれに限定されるものではない。
【0070】
前記各実施形態では、木槌4でスランプ板3を叩くことにより、コンクリート試料1に振動を与えるものとしたが、コンクリート試料1に振動を与える方法は限定されない。
【0071】
第二の実施形態における着色面積A1および拡散面積A2の測定方法(算出方法)は、画像処理によるものに限定されない。
【符号の説明】
【0072】
1 コンクリート試料
2 スランプコーン
3 スランプ板
4 木槌
5 着色部分
6 着色範囲線
D スランプフロー
図1
図2