(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレス加工において、上型がワークを打ち抜いた瞬間、それまでのスライドの押力が抜け、上型が下方へ引き込まれるような現象が生じる。このような現象はブレイクスルーと呼ばれる。押力をプラス荷重とすると、ブレイクスルーの瞬間は、マイナス荷重がスライドに生じる。
【0006】
上述したスライドの押力によるプラス荷重のみならず、このようなマイナス荷重も、構成部品の損傷、或いは不良の発生などの異常の要因となり得る。或いは、ブレイクスルーによるマイナス荷重は、騒音及び振動の要因となり得る。しかし、上述のように、スライドによる押力が検出されているだけでは、ブレイクスルー時のマイナス荷重を適切に検出して異常の発生を抑えることは容易ではない。
【0007】
本発明の課題は、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる制御システム、プレス機械、及びプレス機械の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る制御システムは、スライドを昇降させてプレス加工を行うプレス機械を制御するシステムである。制御システムは、荷重検出部と、判定部と、駆動制御部と、を備える。荷重検出部は、スライドの荷重を検出する。スライドの荷重は、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重と、ブレイクスルー時のマイナス荷重とを含む。判定部は、荷重検出部によって検出されるプラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行を判定する。駆動制御部は、判定部の判定結果に基づいて、スライドの駆動を制御する。判定部は、オーバーロード判定を行う。オーバーロード判定において、判定部は、プラス荷重の最大値とマイナス荷重の最小値との差が、所定の第3オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。
【0009】
本態様に係る制御システムでは、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。また、プラス荷重とマイナス荷重との差が過大となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0010】
好ましくは、判定部は、オーバーロード判定を行う。オーバーロード判定において、判定部は、プラス荷重の最大値が所定の第1オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。この場合、プラス荷重が過大となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0011】
好ましくは、判定部は、オーバーロード判定を行う。オーバーロード判定において、判定部は、マイナス荷重の最小値の絶対値が所定の第2オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。この場合、マイナス荷重の絶対値が過大となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0012】
好ましくは、オーバーロード判定において、判定部が非常停止の実行を決定したときに、駆動制御部は、スライドを直ちに停止させる。この場合、異常の発生を迅速に停止させることができる。特に、荷重の大きさが過大となっている場合には、構成部品が損傷する可能性がある。従って、荷重の大きさが過大となっている場合に迅速にスライドを停止させることで、プレス機械の故障を防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る制御システムは、スライドを昇降させてプレス加工を行うプレス機械を制御するシステムである。制御システムは、荷重検出部と、判定部と、駆動制御部と、を備える。荷重検出部は、スライドの荷重を検出する。スライドの荷重は、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重と、ブレイクスルー時のマイナス荷重とを含む。判定部は、荷重検出部によって検出されるプラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行を判定する。駆動制御部は、判定部の判定結果に基づいて、スライドの駆動を制御する。判定部は、荷重ロアーリミット判定を行う。荷重ロアーリミット判定において、判定部は、プラス荷重の最大値とマイナス荷重の最小値との差が、所定の第3ロアーリミット判定値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。
【0014】
本態様に係る制御システムでは、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。また、プラス荷重とマイナス荷重との差が過小となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0015】
好ましくは、判定部は、荷重ロアーリミット判定を行う。荷重ロアーリミット判定において、判定部は、プラス荷重の最大値が所定の第1ロアーリミット判定値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。この場合、プラス荷重が過小となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0016】
好ましくは、判定部は、荷重ロアーリミット判定を行う。荷重ロアーリミット判定において、判定部は、マイナス荷重の最小値の絶対値が所定の第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。この場合、マイナス荷重の絶対値が過小となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0017】
好ましくは、荷重ロアーリミット判定において、判定部が非常停止の実行を決定したときに、駆動制御部は、スライドを所定の待機位置に移動させて停止させる。この場合、異常の有無を検査したのちに、加工を迅速に再開することができる。特に、荷重の大きさが過小となっている場合には、構成部品が損傷する可能性は低い。従って、荷重の大きさが過小となっている場合には、直ちにスライドを停止させるのではなく、スライドを所定の待機位置に移動させた後に停止させることで、生産性の低下を抑えることができる。
【0018】
好ましくは、荷重検出部によって検出されるプラス荷重及びマイナス荷重を表示する表示部をさらに備える。この場合、ブレイクスルー時のマイナス荷重が発生していることを使用者が容易に把握することができる。
【0019】
好ましくは、荷重検出部は、スライドの左右の荷重を検出する。表示部は、左右の荷重と、左右の荷重の合計荷重とを表示する。この場合、表示部は、プラス荷重とマイナス荷重のそれぞれについて、左右の荷重と、左右の荷重の合計荷重とを表示する。これにより、使用者は、スライドの荷重をより精度よく把握することができる。
【0020】
好ましくは、表示部は、プラス荷重及びマイナス荷重を含むスライドの荷重の変化を示す波形を表示する。この場合、使用者は、ワークの押圧時とブレイクスルー時との両方におけるスライドの荷重の変化を容易に把握することができる。
【0021】
好ましくは、スライドの目標位置と、スライドの速度と、目標位置におけるスライドの停止時間とを設定するためのモーション設定部をさらに備える。この場合、使用者はモーション設定部によってスライドの目標位置と速度と停止時間とを任意に設定することで、ブレイクスルー時の異常の発生を抑えることができる。
【0022】
好ましくは、判定部は、荷重検出部が検出した荷重がマイナス荷重であるときには、補正された荷重を用いて非常停止の実行を判定する。この場合、従来のプレス機械が備えているセンサのように、プラス荷重の検出に適しているが、マイナス荷重の検出の精度が低い場合であっても、補正された荷重の検出値を用いることで、精度良く非常停止の判定を行うことができる。
【0023】
本発明の第3の態様に係るプレス機械は、本体フレームと、スライドと、駆動機構と、上述の制御システムと、を備える。スライドは、本体フレームに昇降自在に支持される。駆動機構は、スライドを昇降させる。
【0024】
本態様に係るプレス機械では、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。
【0025】
本発明の第4の態様に係るプレス機械の制御方法は、スライドを昇降させてプレス加工を行うプレス機械の制御方法である。本態様に係る制御方法は、荷重検出ステップと、判定ステップと、駆動制御ステップと、を備える。荷重検出ステップでは、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重と、ブレイクスルー時のマイナス荷重とを含むスライドの荷重を検出する。判定ステップでは、荷重検出ステップにおいて検出されたプラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行を判定する。駆動制御ステップでは、判定ステップにおける判定結果に基づいて、スライドの駆動を制御する。判定ステップでは、オーバーロード判定を行う。オーバーロード判定では、プラス荷重の最大値とマイナス荷重の最小値との差が、所定の第3オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。
【0026】
本態様に係るプレス機械の制御方法では、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。また、プラス荷重とマイナス荷重との差が過大となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0027】
本発明の第5の態様に係るプレス機械の制御方法は、スライドを昇降させてプレス加工を行うプレス機械の制御方法である。本態様に係る制御方法は、荷重検出ステップと、判定ステップと、駆動制御ステップと、を備える。荷重検出ステップでは、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重と、ブレイクスルー時のマイナス荷重とを含むスライドの荷重を検出する。判定ステップでは、荷重検出ステップにおいて検出されたプラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行を判定する。駆動制御ステップでは、判定ステップにおける判定結果に基づいて、スライドの駆動を制御する。判定ステップでは、荷重ロアーリミット判定を行う。荷重ロアーリミット判定では、プラス荷重の最大値とマイナス荷重の最小値との差が、所定の第3ロアーリミット判定値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。
【0028】
本態様に係るプレス機械の制御方法では、プレス加工時のスライドの押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライドの非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。また、プラス荷重とマイナス荷重との差が過小となることによる異常の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、プレス機械において、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して実施形態にかかるプレス機械について説明する。
図1は、本実施形態に係るプレス機械1の斜視図である。
【0032】
図1に示すように、プレス機械1は、本体フレーム2と、ボルスタ3と、スライド4と、を備えている。本体フレーム2は、側面視においてC字型の形状を有する。ボルスタ3は、本体フレーム2の下部に配置される。ボルスタ3の上面には下型5が装着される。スライド4は、本体フレーム2の上部に昇降自在に支持される。スライド4の下面には、下型5に対向するように上型6が装着される。なお、本実施形態において、左右の各方向は、下型5及び上型6の正面に立つオペレータから見た左右の各方向を意味するものとする。
【0033】
プレス機械1は、表示入力装置7を備える。表示入力装置7は、例えばタッチパネル式のディスプレイである。表示入力装置7は、プレス機械1に関する各種の情報を表示する。また、表示入力装置7は、プレス機械1の各種の設定を行うために操作される。
【0034】
図2は、プレス機械1の要部側面図である。
図2に示すように、プレス機械1は、駆動機構8を備える。駆動機構8は、本体フレーム2に設けられている。駆動機構8は、スライド4を昇降させる。詳細には、駆動機構8は、サーボモータ9と、動力伝達機構10と、動作変換機構11と、を有する。
【0035】
動力伝達機構10は、第2プーリ12と、ベルト部材13と、第1ギア14と、第2ギア15と、を有している。第2プーリ12は、サーボモータ9の出力軸に固定されたプーリ18にベルト部材13を介して連結されている。第1ギア14は、第2プーリ12に連結されている。第1ギア14は、第2プーリ12と同軸に配置されている。第2ギア15は、第1ギア14に噛み合っている。
【0036】
動作変換機構11は、サーボモータ9の回転をスライド4の昇降に変換する。詳細には、動作変換機構11は、クランクシャフト16とコンロッド17とを有している。クランクシャフト16は、第2ギア15に連結されている。クランクシャフト16は、第2ギア15と同軸に配置されている、コンロッド17の上端部は、クランクシャフト16の偏心部分に回転自在に装着されている。コンロッド17の下端部には、スライド4が回転自在に装着されている。
【0037】
図3は、プレス機械1の制御システム20の構成を示すブロック図である。制御システム20は、サーボアンプ21と、位置検出部22と、モータ電流検出部23とを有する。上述したサーボモータ9は電動モータであり、サーボアンプ21は、サーボモータ9の駆動電流を制御する増幅器である。位置検出部22は、サーボモータ9の回転角度を検出する。モータ電流検出部23は、サーボモータ9の駆動電流を検出する。
【0038】
制御システム20は、制御部24を有する。サーボモータ9の回転角度を示す位置検出部22からの検出信号は、制御部24に入力される。サーボモータ9の駆動電流値を示すモータ電流検出部23からの検出信号は、制御部24に入力される。位置検出部22は、例えばサーボモータ9の回転軸に取り付けられたエンコーダーである。
【0039】
制御システム20は、スライド位置検出部25を有する。スライド位置検出部25は、ボルスタ3からのスライド4の高さ位置を検出する。スライド位置検出部25は、例えばリニアセンサである。スライド位置を示すスライド位置検出部25からの検出信号は、制御部24に入力される。
【0040】
制御システム20は、プレス角検出部26を有する。プレス角検出部26は、クランクシャフト16の回転角度(以下、「プレス角」と呼ぶ)を検出する。プレス角検出部26は、例えばクランクシャフト16に取り付けられたエンコーダーである。プレス角を示すプレス角検出部26からの検出信号は、制御部24に入力される。
【0041】
制御システム20は、荷重検出部27を有する。荷重検出部27は、スライド4に作用する荷重(以下、スライド荷重と呼ぶ。)検出する。詳細には、荷重検出部27は、第1荷重検出部27aと第2荷重検出部27bとを有する。後述するように、スライド荷重は、プレス加工時のスライド4の押力によるプラス荷重と、ブレイクスルー時のマイナス荷重とを含む。本実施形態において、第1荷重検出部27aは、スライド4の左側部の荷重(以下、スライド左荷重と呼ぶ)を検出し、第2荷重検出部27bは、スライド4の右側部の荷重(以下、スライド右荷重と呼ぶ)を検出する。ただし、第1荷重検出部27aが、スライド右荷重を検出し、第2荷重検出部27bが、スライド左荷重を検出してもよい。
【0042】
第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bは、例えばひずみゲージである。
図2に示すように、第1荷重検出部27aは、本体フレーム2の左側部に取り付けられている。
図1に示すように、第2荷重検出部27bは、本体フレーム2の右側部に取り付けられている。スライド左荷重を示す第1荷重検出部27aからの検出信号は、制御部24に入力される。スライド右荷重を示す第2荷重検出部27bからの検出信号は、制御部24に入力される。
【0043】
制御システム20は、モーション設定部28を有する。モーション設定部28は、スライドモーションを表わす各種のモーションデータを設定するための装置である。モーションデータの一例を
図4に示す。
図4に示すように、モーションデータは、目標プレス角と、スライド4の目標位置と、スライド4の速度と、目標位置におけるスライド4の停止時間とを含む。モーションデータは、プレス加工における工程ごとに設定される。
【0044】
図5は、1サイクルのプレス加工におけるプレス角の変化を示している。プレス角の変化はスライド位置の変化に対応している。なお、スライド4が上死点から下死点を通り再び上死点に戻るまでを1サイクルとする。1サイクルには、工程1と工程2と戻り工程とが含まれる。工程1では、スライド4が、上死点から、上型6がワークを打ち抜く直前の位置wまで移動する。
図5に示すように、上型6がワークを打ち抜く直前の位置wで時間tの間、停止することで、ブレイクスルー時の振動あるいは騒音を軽減することができる。
【0045】
工程2では、上型6がワークを打ち抜く直前の位置wから下死点まで、スライド4が移動する。そして、戻り工程では、スライド4が、下死点から上死点まで戻る。
【0046】
使用者はモーション設定部28によってモーションデータに含まれるこれらのパラメータを任意に設定することができる。モーション設定部28によって設定されたモーションデータは、制御部24に入力される。
【0047】
図3に示すように、制御システム20は、非常停止設定部29を有する。非常停止設定部29は、後述する非常停止判定に用いられる各種の判定データを設定するためのものである。非常停止設定部29によって設定された判定データは、制御部24に入力される。
【0048】
制御システム20は、表示部30を有する。表示部30は、プレス加工時に制御部24によって計測された各種のデータを制御部24からの指令信号に基づいて表示する。表示部30とモーション設定部28と非常停止設定部29とは、上述した表示入力装置7に含まれる。本実施形態では、モーション設定部28と非常停止設定部29とは、タッチパネルに表示されるソフトキーにより構成される。
【0049】
制御システム20は、記憶部31を有する。記憶部31は、モーション設定部28によって設定されたモーションデータと、非常停止設定部29によって設定された判定データとを記憶する。また、記憶部31は、成形データを記憶する。成形データは、スライド位置検出部25によって検出されたスライド位置と、プレス角検出部26とによって検出されたプレス角とを含む。また、成形データは、第1荷重検出部27aと第2荷重検出部27bとが検出したスライド荷重を含む。記憶部31は、例えば半導体メモリ、或いはハードディスク装置などの記憶装置によって構成される。
【0050】
制御部24は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータ装置を主体として構成される。制御部24は、上述したモーションデータと、上述した各種の検出部からの検出値に基づいてフィードバック制御などの所定の演算処理を行い、サーボモータ9への指令値を演算する。制御部24は、演算した指令値を示す指令信号をサーボアンプ21に出力して、スライド4を制御する。
【0051】
制御部24は、スライド位置とプレス角とスライド荷重とを所定のサンプリング周期時間毎に計測して時系列的に記憶部31に記録することで成形データを生成する。サンプリング周期時間は、例えば1msである。ただし、サンプリング周期時間は任意に設定されてもよい。制御部24は、記憶部31に記録された成形データを表示部30に表示させるデータ表示処理を行う。また、制御部24は、第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bによって検出されたスライド荷重に基づいて非常停止の実行を判定する非常停止判定を行う。以下、制御部24によって行われるデータ表示処理及び非常停止判定の処理について説明する。
【0052】
図6は、制御部24によって実行される機能を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、制御部24は、荷重データ記録部32と、判定部33と、駆動制御部34と、荷重データ出力部35とを有する。荷重データ記録部32は、所定のサンプリング周期時間毎にスライド荷重を検出して、時系列的に記憶部31に記録する。これにより、荷重データ記録部32は、荷重データを生成する。
【0053】
判定部33は、検出されたスライド荷重に基づいて非常停止判定を行う。詳細には、判定部33は、オーバーロード判定部33aと荷重ロアーリミット判定部33bとを有する。オーバーロード判定部33aは、検出されたスライド荷重と所定のオーバーロード判定値とを比較することで、非常停止の実行を判定する。荷重ロアーリミット判定部33bは、検出されたスライド荷重と所定のロアーリミット判定値とを比較することで、非常停止の実行を判定する。
【0054】
駆動制御部34は、判定部33の判定結果に基づいて、スライド4の駆動を制御する。駆動制御部34は、サーボモータ9への指令信号を出力することで、スライド4の駆動を制御する。判定部33が非常停止の実行を決定すると、駆動制御部34はスライド4を停止させる。
【0055】
荷重データ出力部35は、荷重データ記録部32によって記憶部31に記録された荷重データを表示部30に表示させる。荷重データ出力部35は、表示部30への指令信号を出力することで、表示部30に荷重データを表示させる。なお、荷重データ出力部35は、表示部30に限らず、外部の制御装置あるいは記録媒体などに荷重データを出力してもよい。
【0056】
図7は、スライド荷重の検出処理を示すフローチャートであり、主として荷重データ記録部32によって実行される。ステップS1では、プレス角が、荷重ゼロリセット角度を通過したかを判定する。荷重ゼロリセット角度は、スライド4が1サイクルのプレス加工を終えて上死点に戻ってきたことを示す値が設定される。従って、荷重ゼロリセット角度は、0度に近い値であり、例えば、約15度である。ただし、荷重ゼロリセット角度は、他の値であってもよい。
【0057】
プレス角が、荷重ゼロリセット角度を通過した場合には、ステップS2に進む。ステップS2では、最大荷重記憶値と最小荷重記憶値とをゼロにリセットする。すなわち、1サイクルごとに最大荷重記憶値と最小荷重記憶値とがリセットされる。荷重ゼロリセット角度を通過していない場合には、ステップS2をスキップしてステップS3に進む。
【0058】
ステップS3では、プレス角が荷重測定範囲内であるか判定する。荷重測定範囲は、1サイクルのうちスライド荷重を測定するプレス角の範囲として設定される。荷重測定範囲は、打ち抜きの前後を含むスライド荷重が変動する範囲を含むことが好ましい。荷重測定範囲は、例えば100度から250度であるが、これと異なる範囲であっても良い。プレス角が荷重測定範囲内である場合には、ステップS4に進む。なお、プレス角が荷重測定範囲内ではない場合には、スライド荷重の記録は行われない。
【0059】
ステップS4では、スライド荷重の検出値を読み取る。ここでは、荷重データ記録部32は、第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bによって検出された検出信号を読み取る。
【0060】
ステップS5では、読み取り値を換算する。ここでは、荷重データ記録部32は、ステップS4で読み取られた検出信号の値をスライド荷重に変換する。
【0061】
ステップS6では、スライド荷重がプラス値であるか判定する。スライド荷重がプラス値であることは、スライド4がワークを押圧していることを意味する。スライド荷重がプラス値である場合には、ステップS7に進む。
【0062】
ステップS7では、ステップS4で読み取られた最新のスライド荷重(以下、現在のスライド荷重と呼ぶ)が、所定の第1最小荷重以上であるかを判定する。所定の第1最小荷重はプラス値である。現在のスライド荷重が第1最小荷重以上である場合には、ステップS8に進む。
【0063】
ステップS8では、現在のスライド荷重が、記憶部31に記憶されている最大荷重記憶値より大きいかを判定する。現在のスライド荷重が、最大荷重記憶値より大きい場合には、ステップS9に進む。ステップS9では、現在のスライド荷重を最大荷重記憶値として記憶部31に上書きして記憶する。すなわち、ステップS9では、記憶部31に記憶されている最大荷重記憶値を現在のスライド荷重の値に更新する。
【0064】
なお、ステップS7において現在のスライド荷重が、所定の第1最小荷重以上ではない場合には、ステップS8及びステップS9をスキップする。すなわち、スライド荷重が所定の第1最小荷重より小さい0近傍の値である場合には、これを無視して最大荷重記憶値の上書きの処理を行わない。
【0065】
ステップS6において、スライド荷重がマイナス値である場合にはステップS10に進む。ステップS10では、スライド荷重の補正を行う。
図8は、本実施形態で用いられている第1、第2荷重検出部27a,27bにおける、ひずみと荷重との特性を示すグラフである。引張ひずみは、プラス荷重を発生させる。圧縮ひずみはマイナス荷重を発生させる。本実施形態で用いられている第1、第2荷重検出部27a,27bでは、プラス荷重と引張ひずみとについては精度良く対応しているが、マイナス荷重と圧縮ひずみとの対応については誤差がある。ステップS10では、誤差のあるマイナス荷重と圧縮ひずみとの対応R1を、適正なマイナス荷重と圧縮ひずみとの対応R2に補正するように、スライド荷重に所定の補正係数が、かけられる。
【0066】
ステップS11では、現在のスライド荷重が、所定の第2最小荷重以下であるかを判定する。所定の第2最小荷重はマイナス値である。現在のスライド荷重が第2最小荷重以下である場合には、ステップS12に進む。
【0067】
ステップS12では、現在のスライド荷重が、記憶部31に記憶されている最小荷重記憶値より小さいかを判定する。現在のスライド荷重が、最小荷重記憶値より小さい場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、現在のスライド荷重を最小荷重記憶値として記憶部31に上書きして記憶する。すなわち、ステップS13では、記憶部31に記憶されている最小荷重記憶値を現在のスライド荷重の値に更新する。
【0068】
なお、ステップS11において現在のスライド荷重が、所定の第2最小荷重以下ではない場合には、ステップS12及びステップS13をスキップする。すなわち、スライド荷重が所定の第2最小荷重より大きい0近傍の値である場合には、これを無視して最小荷重記憶値の上書きの処理を行わない。
【0069】
図9は、オーバーロード判定処理を示すフローチャートであり、主としてオーバーロード判定部33aによって実行される。ステップS101において、オーバーロード判定が有効であるかを判定する。使用者は、上述した非常停止設定部29によって、オーバーロード判定の有効、無効を任意に設定することができる。オーバーロード判定が有効に設定されている場合には、ステップS102に進む。オーバーロード判定が無効に設定されている場合には、後述する荷重ロアーリミット判定の処理(
図12参照)に進む。
【0070】
ステップS102では、オーバーロード判定方法として最大値が選択されているかを判定する。オーバーロード判定方法として最大値が選択されている場合には、ステップS103に進む。ステップS103では、上述した最大荷重記憶値が、所定の第1オーバーロード判定値より大きいかを判定する。最大荷重記憶値が、所定の第1オーバーロード判定値より大きい場合には、ステップS104に進む。ステップS104では急停止処理が開始される。最大荷重記憶値が、所定の第1オーバーロード判定値より大きくない場合には、後述する荷重ロアーリミット判定の処理に進む。
【0071】
図10は、非常停止設定部29によってオーバーロード判定における判定データを入力するための設定画面の一例を示している。
図10に示すように、設定画面は、オーバーロード判定方法の選択欄E1を有する。使用者は、非常停止設定部29によって、オーバーロード判定方法として、「最大値」、「最小値」、「振幅」から選択することができる。詳細には、使用者が設定画面において切替キーK1を押すごとに、選択欄において選択されるオーバーロード判定方法が「最大値」、「最小値」、「振幅」に順次、切り替えられる。
【0072】
図11は、プレス加工時のスライド荷重の変化を示している。オーバーロード判定方法として「最大値」が選択されている場合には、最大荷重記憶値Lmaxが第1オーバーロード判定値と比較されることで、オーバーロード判定が行われる。後述するように、オーバーロード判定方法として「最小値」が選択されている場合には、最小荷重記憶値Lminが第2オーバーロード判定値と比較されることで、オーバーロード判定が行われる。オーバーロード判定方法として「振幅」が選択されている場合には、最大荷重記憶値Lmaxと最小荷重記憶値Lminとの差Lamが第3オーバーロード判定値と比較されること
で、オーバーロード判定が行われる。
【0073】
ステップS102において、オーバーロード判定方法として最大値が選択されていない場合には、ステップS105に進む。ステップS105では、オーバーロード判定方法として最小値が選択されているかを判定する。オーバーロード判定方法として最小値が選択されている場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、上述した最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2オーバーロード判定値の絶対値より大きいかを判定する。最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2オーバーロード判定値の絶対値より大きい場合には、ステップS107に進む。ステップS107では急停止処理が開始される。最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2オーバーロード判定値の絶対値より大きくない場合には、後述する荷重ロアーリミット判定の処理に進む。
【0074】
ステップS105において、オーバーロード判定方法として最小値が選択されていない場合には、ステップS108に進む。ステップS108では、オーバーロード判定方法として振幅が選択されているかを判定する。オーバーロード判定方法として振幅が選択されている場合には、ステップS109に進む。ステップS109では、最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3オーバーロード判定値より大きいかを判定する。最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3オーバーロード判定値より大きい場合には、ステップS110に進む。ステップS110では急停止処理が開始される。最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3オーバーロード判定値より大きくない場合には、後述する荷重ロアーリミット判定の処理に進む。
【0075】
ステップS104、S107、S110の急停止処理では、駆動制御部34は、直ちにスライド4を停止させる処理を行なう。
【0076】
なお、上述した第1〜第3オーバーロード判定値は、非常停止設定部29によって任意の値に設定することができる。
図10に示すように、設定画面は、オーバーロード判定値の入力欄E2を有する。オーバーロード判定方法の選択欄E1において「最大値」が選択されている場合には、入力欄E2において第1オーバーロード判定値を入力することができる。同様に、オーバーロード判定方法の選択欄E1において「最小値」が選択されている場合には、入力欄E2において第2オーバーロード判定値を入力することができる。オーバーロード判定方法の選択欄E1において「振幅」が選択されている場合には、入力欄E2において第3オーバーロード判定値を入力することができる。第1〜第3オーバーロード判定値は、互いに異なる値に設定されることができる。
【0077】
また、入力欄E2では、スライド左荷重と、スライド右荷重と、スライド左荷重とスライド右荷重との合計荷重のそれぞれに対して、オーバーロード判定値を設定することができる。スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれのオーバーロード判定値は、互いに異なる値に設定されることができる。
【0078】
従って、上述したステップS103では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最大荷重記憶値が、第1オーバーロード判定値より大きいかを判定する。ステップS106では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最小荷重記憶値の絶対値が、第2オーバーロード判定値より大きいかを判定する。ステップS109では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、第3オーバーロード判定値より大きいかを判定する。
【0079】
スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重との少なくとも1つについてステップS103,S106,S109のいずれかが満たされたときには、ステップS104,S107,或いはS110において急停止処理が開始される。
【0080】
図12は、荷重ロアーリミット判定の処理を示すフローチャートであり、主として荷重ロアーリミット判定部33bによって実行される。ステップS201において、荷重ロアーリミットが有効であるかを判定する。使用者は、上述した非常停止設定部29によって、荷重ロアーリミット判定の有効、無効を任意に設定することができる。荷重ロアーリミット判定が有効に設定されている場合には、ステップS202に進む。荷重ロアーリミット判定が無効に設定されている場合には、後述するデータ表示処理(
図14参照)に進む。
【0081】
ステップS202では、荷重ロアーリミット判定方法として最大値が選択されているかを判定する。荷重ロアーリミット判定方法として最大値が選択されている場合には、ステップS203に進む。ステップS203では、上述した最大荷重記憶値が、所定の第1ロアーリミット判定値より小さいかを判定する。最大荷重記憶値が、所定の第1ロアーリミット判定値より小さい場合には、ステップS204に進む。ステップS204では待機点停止処理が開始される。最大荷重記憶値が、所定の第1ロアーリミット判定値より小さくない場合には、後述するデータ表示処理に進む。
【0082】
図13は、非常停止設定部29によって荷重ロアーリミット判定における判定データを入力するための設定画面の一例を示している。
図13に示すように、設定画面は、荷重ロアーリミット判定方法の選択欄E3を有する。使用者は、非常停止設定部29によって、荷重ロアーリミット判定方法として、「最大値」、「最小値」、「振幅」から選択することができる。詳細には、使用者が設定画面において切替キーK2を押すごとに、選択欄において選択される荷重ロアーリミット判定方法が「最大値」、「最小値」、「振幅」に順次、切り替えられる。
【0083】
ステップS202において、荷重ロアーリミット判定方法として最大値が選択されていない場合には、ステップS205に進む。ステップS205では、荷重ロアーリミット判定方法として最小値が選択されているかを判定する。荷重ロアーリミット判定方法として最小値が選択されている場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、上述した最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さいかを判定する。最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さい場合には、ステップS207に進む。ステップS207では連続処理が開始される。最小荷重記憶値の絶対値が、所定の第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さくない場合には、後述するデータ表示処理に進む。
【0084】
ステップS205において、荷重ロアーリミット判定方法として最小値が選択されていない場合には、ステップS208に進む。ステップS208では、荷重ロアーリミット判定方法として振幅が選択されているかを判定する。荷重ロアーリミット判定方法として振幅が選択されている場合には、ステップS209に進む。ステップS209では、最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3ロアーリミット判定値より小さいかを判定する。最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3ロアーリミット判定値より小さい場合には、ステップS210に進む。ステップS210では待機点停止処理が開始される。最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、所定の第3ロアーリミット判定値より小さくない場合には、後述するデータ表示処理に進む。
【0085】
ステップS204、S207、S210の待機点停止処理では、駆動制御部34は、判定が行われたときに直ちにスライド4を停止させるのではなく、スライド4を所定の待機位置に移動させて停止させる。所定の待機位置は、例えば、上死点、或いは予め設定されている上死点の近傍の位置である。或いは、所定の待機位置は、他の位置であってもよい。
【0086】
なお、上述した第1〜第3ロアーリミット判定値は、非常停止設定部29によって任意の値に設定することができる。
図13に示すように、設定画面は、ロアーリミット判定値の入力欄E4を有する。荷重ロアーリミット判定方法の選択欄E3において「最大値」が選択されている場合には、入力欄E4において第1ロアーリミット判定値を入力することができる。同様に、荷重ロアーリミット判定方法の選択欄E3において「最小値」が選択されている場合には、入力欄E4において第2ロアーリミット判定値を入力することができる。荷重オーバーロード判定方法の選択欄E3において「振幅」が選択されている場合には、入力欄E2において第3ロアーリミット判定値を入力することができる。第1〜第3ロアーリミット判定値は、互いに異なる値に設定されることができる。
【0087】
また、入力欄E4では、スライド左荷重と、スライド右荷重と、スライド左荷重とスライド右荷重との合計荷重のそれぞれに対して、ロアーリミット判定値を設定することができる。スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれのロアーリミット判定値は、互いに異なる値に設定されることができる。
【0088】
従って、上述したステップS203では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最大荷重記憶値が、第1ロアーリミット判定値より小さいかを判定する。ステップS206では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最小荷重記憶値の絶対値が、第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さいかを判定する。ステップS209では、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれの最大荷重記憶値と最小荷重記憶値との差が、第3ロアーリミット判定値より小さいかを判定する。
【0089】
スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重との少なくとも1つについてステップS203,S206,S209のいずれかが満たされたときには、ステップS204,S207,又はS210において待機点停止処理が開始される。
【0090】
図14は、データ表示処理を示すフローチャートである。ステップS301において、荷重データ記録部32は、上述したステップS4及びステップS5で読み取ったスライド荷重を荷重データとして記憶部31に記録する。上述したように、荷重データ記録部32は、所定のサンプリング周期時間毎にスライド荷重を検出して、時系列的に記憶部31に記録する。これにより、荷重データ記録部32は、荷重データを生成する。
【0091】
ステップS302において、荷重データ記録部32は、1サイクルのプレス加工が終了したかを判定する。1サイクルのプレス加工が終了していない場合、すなわち1サイクルの途中である場合には、ステップS1に戻る。1サイクルのプレス加工が終了した場合には、ステップS303に進む。
【0092】
ステップS303では、荷重データを表示する。ここでは、表示部30が荷重データを表示するように、荷重データ出力部35が指令信号を表示部30に入力する。
図15は、荷重データの表示画面の一例を示している。
【0093】
荷重データは、スライド荷重の時間変化を示しており、表示部30において波形で表わされる。荷重データは、合計荷重のデータD1と、スライド左荷重のデータD2と、スライド右荷重のデータD3と、を含む。また、
図15に示すように、表示画面は、荷重データだけではなく、プレス角データDpとスライド位置データDsとを含む。プレス角データDpは、プレス角の時間変化を示す。スライド位置データDsは、スライド位置の時間変化を示す。
【0094】
図15に示すように、合計荷重のデータD1では、時間t0において、上型6がワークに接触することで、プラス荷重が発生し、時間t1において最大となっている。時間t1において上型6がワークを打ち抜くことでブレイクスルーが発生して、時間t2以降には、マイナス荷重が発生している。そして、時間t3以降では、プラス荷重とマイナス荷重とが交互に発生して、時間の経過と共に0に収束している。
【0095】
このように、合計荷重のデータD1は、プラス荷重とマイナス荷重とを含むスライド荷重の変化を示す波形として表示されている。また、スライド左荷重のデータD2及びスライド右荷重のデータD3についても同様に、プラス荷重とマイナス荷重とを含むスライド荷重の変化を示す波形として表示されている。
【0096】
以上説明した本実施形態に係る制御システム20では、プレス加工時のスライド4の押力によるプラス荷重だけではなく、ブレイクスルー時のマイナス荷重を含む荷重が検出される。そして、プラス荷重及びマイナス荷重に基づいてスライド4の非常停止の実行が判定される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重による異常の発生を抑えることができる。
【0097】
オーバーロード判定部33aは、プラス荷重の最大荷重記憶値が第1オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。オーバーロード判定部33aは、マイナス荷重の最小荷重記憶値の絶対値が第2オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。また、オーバーロード判定部33aは、プラス荷重の最大荷重記憶値とマイナス荷重の最小荷重記憶値との差、すなわち振幅が、第3オーバーロード判定値より大きいときに、非常停止の実行を決定する。これにより、スライド荷重が過大となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0098】
オーバーロード判定において非常停止が実行される場合には、駆動制御部34は、急停止処理によりスライド4を直ちに停止させる。このため、異常の発生を迅速に停止させることができる。特に、スライド荷重の大きさが過大となっている場合には、構成部品が損傷する可能性がある。従って、迅速にスライド4を停止させることで、プレス機械1の故障を防止することができる。
【0099】
荷重ロアーリミット判定部33bは、プラス荷重の最大荷重記憶値が第1ロアーリミット判定値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。荷重ロアーリミット判定部33bは、マイナス荷重の最小荷重記憶値の絶対値が第2ロアーリミット判定値の絶対値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。荷重ロアーリミット判定部33bは、プラス荷重の最大値とマイナス荷重の最小値との差、すなわち振幅が、第3ロアーリミット判定値より小さいときに、非常停止の実行を決定する。このため、スライド荷重が過小となることによる異常の発生を抑えることができる。
【0100】
荷重ロアーリミット判定において、非常停止が実行される場合には、駆動制御部34は、待機点停止処理によりスライド4を所定の待機位置に移動させて停止させる。このため、異常の有無を検査したのちに、加工を迅速に再開することができる。特に、スライド荷重の大きさが過小となっている場合には、構成部品が損傷する可能性は低い。従って、スライド荷重の大きさが過小となっている場合には、直ちにスライド4を停止させるのではなく、スライド4を所定の待機位置に移動させた後に停止させることで、生産性の低下を抑えることができる。
【0101】
第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bによって検出されたプラス荷重及びマイナス荷重を含むスライド荷重が表示部30に表示される。このため、ブレイクスルー時のマイナス荷重が発生していることを使用者が容易に把握することができる。
【0102】
表示部30は、プラス荷重とマイナス荷重のそれぞれについて、スライド左荷重と、スライド右荷重と、合計荷重とを表示する。このため、使用者は、スライド荷重をより精度よく把握することができる。
【0103】
表示部30は、プラス荷重及びマイナス荷重を含むスライド荷重の変化を波形として表示する。このため、使用者は、ワークの押圧時とブレイクスルー時との両方におけるスライド荷重の変化を容易に把握することができる。
【0104】
また、使用者はモーション設定部28によってスライド4の目標位置と速度と停止時間とを任意に設定することができる。このため、ブレイクスルー時の異常の発生を抑えることができる。特に、使用者は、表示部30によって荷重データを確認しながらモーション設定部28による設定を変更することで、ブレイクスルー時の異常の発生を抑えることができる最適な設定を容易に見付けることができる。
【0105】
第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bが検出したスライド荷重がマイナス荷重であるときには、検出値が補正される。このため、プラス荷重の検出に適しているが、マイナス荷重の検出の精度が低いセンサが第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bとして用いられても、精度良く非常停止の判定を行うことができる。
【0106】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0107】
プレス機械1の動力伝達機構10の構成、或いは動作変換機構11の構成は、上述の実施形態の構成に限らず、変更されてもよい。
【0108】
第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bの検出値の補正は省略されてもよい。例えば、プラス荷重の検出及びマイナス荷重の検出の両方に適しているセンサが、第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bとして用いられる場合には、検出値の補正は省略されてもよい。
【0109】
第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bは、ひずみゲージに限らず、他の検出手段であってもよい。例えば、第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bは、圧電センサであってもよい。或いは、第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bは、スライド荷重による本体フレーム2の変位を計測するレーザー計測器であってもよい。
【0110】
荷重検出部の数は、上記の実施形態の第1荷重検出部27a及び第2荷重検出部27bのように2つに限らない。荷重検出部の数は1つ、或いは3つ以上であってもよい。
【0111】
スライド4の駆動手段は、電動のサーボモータ9に限らず、変更されてもよい。例えば、スライド4の駆動手段は、油圧モータであってもよい。
【0112】
上記の実施形態では、スライド荷重として、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とが検出されているが、これらの荷重の検出の一部が省略されてもよい。或いは、上記と異なる部分でのスライド荷重が検出されてもよい。例えば、スライド4の中央部の荷重が検出されてもよい。
【0113】
表示部30におけるスライド荷重の表示態様は波形に限らず、変更されてもよい。例えば、スライド荷重が数値で表示されてもよい。この場合、上述した最大荷重記憶値と最小荷重記憶値とが表示部30に表示されることが好ましい。また、スライド左荷重とスライド右荷重と合計荷重とのそれぞれについて、最大荷重記憶値と最小荷重記憶値とが表示部30に表示されることが好ましい。
【0114】
モーション設定部28は、上述したモーションデータを入力するための装置であればよく、ソフトキーに限られない。例えば、モーション設定部28は、表示部30とは別に設けられるハードキー或いはスイッチであってもよい。非常停止設定部29も同様に、上述した判定データを入力するための装置であればよく、ソフトキーに限られない。例えば、非常停止設定部29は、表示部30とは別に設けられるハードキー或いはスイッチであってもよい。
【0115】
或いは、モーション設定部28は、プレス機械1の制御システムの外部に設けられた制御装置から通信によりモーションデータを受信してもよい。非常停止設定部29は、プレス機械1の制御システムの外部に設けられた制御装置から通信により判定データを受信してもよい。
【0116】
上記の実施形態では、1サイクルごとに最大荷重記憶値及び最小荷重記憶値がリセットされているが、所定の複数サイクルごとにサイクルごとに最大荷重記憶値及び最小荷重記憶値がリセットされてもよい。或いは、所定の複数サイクルごとに荷重データが表示部に表示されてもよい。すなわち、上記の実施形態の荷重データの波形は、1サイクルごとに限らず、所定の複数サイクルごとに更新されて表示部30に表示されてもよい。