(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0010】
[衣類用梱包箱の構成]
まず、本実施の形態に係る衣類用梱包箱100の構成について説明する。
図1は、衣類用梱包箱100が閉じられている状態を示す外観図である。
図1に示すように、衣類用梱包箱100は、閉じられている状態において扁平な略直方体形状を有する箱体であって、その一側面に、顧客等の使用者が把持し得る把持部10Aを備えている。
衣類用梱包箱100は、コートボール紙、段ボール紙等の剛性を有する紙材によって形成されている。把持部10Aは、布材によって形成されているが、衣類用梱包箱100と同様の紙材が用いられても良い。
【0011】
図2は、衣類用梱包箱100が開かれている状態を示す外観図である。
図2に示すように、衣類用梱包箱100は、その内部空間に衣類Sが収容されるものであり、例えば、衣類の製造元や販売元において衣類Sを梱包して、顧客に配送するために用いられる。衣類Sとしては、例えば、顧客からのオーダーを受けて作製(縫製)されたオーダーメイドのスーツなど、上衣(ジャケット等)及び下衣(パンツ、スカート等)を有する衣類が挙げられるが、衣類の種類に特に限定はない。また、上衣及び下衣のいずれか一方でも良いのは勿論である。
【0012】
図3は、衣類用梱包箱100の構成を説明するための図である。
図3に示すように、衣類用梱包箱100は、衣類Sを収容するための収容空間200を形成する本体部10と、収容空間200を閉塞するための蓋部20と、衣類用梱包箱100の内部において、収容空間200に収容された衣類Sを上方から抑えるための中蓋部30と、を備えている。
【0013】
本体部10は、板状の部材により形成された矩形状の底面11と、底面11の4つの縁部それぞれから上方に立設された前側面12、後側面13、右端面14及び左端面15を有し、これら5つの面により囲われて形成された内部空間が、収容空間200となる。
本体部10において収容空間200を介して底面11と対向する領域、すなわち、前側面12、後側面13、右端面14及び左端面15の上縁により囲われた領域は、開口部16であって、この開口部16から衣類Sの出し入れをすることができる。
なお、前側面12には、把持部10Aが設けられている。
【0014】
蓋部20は、後側面13の上縁から連続して設けられた、本体部10の開口部16を開閉可能に覆う板状の部材である。
蓋部20は、開口部16を閉じた状態(収容空間200を閉塞した状態)において衣類用梱包箱100の表面となる主面部21と、主面部21の左右両端から下方に延出するように設けられた差し込み片22、22と、主面部21の前端から下方に延出するように設けられた開封片23と、を備えている。
蓋部20を閉じる場合、収容空間200の左右内面に接触するよう差し込み片22、22が差し込まれ、前側面12の外面を開封片23が覆うようにして、主面部21が開口部16を閉塞させることとなる。また、蓋部20を開く場合、開封片23を上方に引っ張ることで、差し込み片22、22が収容空間200から引き抜かれ、主面部21が開口部16を解放することとなる。
また、開封片23は、切り離し線に囲われた開口形成部23bを備えており、開口形成部23bを切り離すことで、把持部10Aを挿通させるための開口である挿通部23a(
図1、2参照)を形成することができる。
衣類用梱包箱100が配送された顧客は、これを持ち歩く必要が生じた場合などに、開口形成部23aを切り離して挿通部23aを形成し、把持部10Aを、挿通部23aを通して外部に出すことができる。ここで、挿通部23aを形成しないまま(把持部10Aを外部に出さない状態のまま)、衣類用梱包箱100を使用することも可能なのは勿論である。
なお、配送時に把持部10Aが外部に出て邪魔になることを防ぐため上記構成が好ましいが、配送前から挿通部23aが形成された構成であっても良い。
【0015】
中蓋部30は、板状の部材により形成され、本体部10の収容空間200に衣類Sを収容した状態において、その衣類Sに上方から被せるように用いられる(
図2参照)。
具体的には、中蓋部30は、開口部16に合致するサイズを有する矩形状の上面部30Aと、上面部30Aの前後両端から下方に延出するように設けられた折曲片30B、30Bと、を備えている。
本体部10の収容空間200に衣類Sが収容された後、収容空間200の前後内面に接触するよう折曲片30B、30Bが差し込まれ、上面部30Aにより衣類Sを上方から軽く抑えるようにして、中蓋部30が載置される。
これにより、配送中等に衣類Sが衣類用梱包箱100内を移動し、よれたり型崩れしたりするのを防ぐことができる。
【0016】
また、中蓋部30の上面には、メッセージカード等を着脱可能に保持させるための保持部30Cが備えられ、衣類の製造元・販売元や顧客の任意で、所望のメッセージカードを付与することが可能となる。
本実施の形態では、保持部30Cとしては、矩形状のカードの2つの角部をそれぞれ抜き差し可能な2つの切欠きを有する構成であるが、カードを保持できるものであれば、保持部30Cの構成はこれに限定されない。例えば、カードを抜き差し可能なポケット等を有する構成でも良い。
【0017】
この中蓋部30は、衣類Sを吊り下げるためのハンガー50(
図5参照)に組み立てることが可能である。これにより、衣類Sが配送された顧客は、板状の部材である中蓋部30からハンガー50を組み立て、収容されていた衣類Sを吊り下げることが可能となる。
【0018】
図4は、中蓋部30を広げた状態を示す平面図である。
なお、ハンガー50を組み立てるにあたっては、
図4に示すように、上面部30Aと折曲片30B、30Bが面一となるように、中蓋部30を広げた状態とする。
図4に示すように、中蓋部30は、ハンガー50のフック部51(
図5参照)となる第1領域31と、ハンガー50のハンガー本体部52(
図5参照)となる第2領域32と、ハンガー50の吊り下げ部53(
図5参照)となる第3領域33と、を備える。
また、中蓋部30の上面には、ハンガー50の組み立てる手順を示したガイダンス部40を有している。
【0019】
第1領域31は、広げた状態の中蓋部30の長手方向の一端に位置し、衣類用梱包箱100に衣類Sを収容している際には、第2領域32の下面側に折り曲げられている。
第1領域31は、折曲線311を挟んで対称状に配置された2つのフック片31a、31aを備えている。折曲線311には「山折り」の指示が記載されている。
折曲線311を折曲し、2つのフック片31a、31aを重ねることでハンガー50のフック部51が形成される。
【0020】
第2領域32は、中蓋部30を衣類Sに被せた際にその大部分を覆うこととなる領域であり、その上面に、ガイダンス部40及び保持部30Cが備えられる。
第2領域32は、第1スリット321と、第1スリット321の両端部の周辺にそれぞれ設けられた折曲部322、322と、第2スリット323と、を備えている。
【0021】
第1スリット321は、中蓋部30の短手方向に沿って延在するよう設けられ、2つのフック片31a、31aを重ねたフック部51を、下方から挿通させるためのものである。
【0022】
折曲部322、322は、第1スリット321の両端部周辺において当該第1スリットに対して対称に配され、第1スリット321の両端部各々から放射状に延びる複数の折曲線を有する。各折曲線には「山折り」又は「谷折り」の指示が記載されている。
折曲部322、322の折曲線を、指示に従い折曲することで、徐々に前後方向の厚みが増すような形状の肩当接部521、521(
図5参照)を形成することができる。そして、第1スリット321に、下面側からフック部51を差し込むことで、ハンガー本体部52が形成されるとともに、ハンガー本体部52に対してフック部51が固定される。
【0023】
第2スリット323は、第1スリット321から所定間隔離間した位置に、第1スリット321と平行となるように設けられ、吊り下げ部53の突出片531(
図5参照)を、上方から挿通させるためのものである。
【0024】
第3領域33は、広げた状態の中蓋部30の長手方向の他端に位置する。
第3領域33は、切り離し線331と、切り離し線331の両端部をつなぐ折曲線332を備えている。切り離し線331は、全体として中蓋部30の短手方向に沿って延在し、短手方向の中央部において湾曲部331aを有する。折曲線332には「山折り」の指示が記載されている。
切り離し線331が湾曲部331aを有することで、当該切り離し線331を切り離した際に突出片531(
図5参照)が形成される。また、折曲線332を折曲することで、開口部532(
図5参照)が形成される。そして、第2スリット323に突出片531を差し込んで、ハンガー本体部52に対して吊り下げ部53が固定される。
【0025】
ガイダンス部40は、中蓋部30をハンガー50に組み立てる手順を示す概略
図41と、概略
図41に対応した説明文42と、を備えている。
顧客は、概略
図41及び説明文42を参照しつつ、上記第1領域31、第2領域32及び第3領域33からハンガー50の各部を作成、組み立てることができる。
【0026】
図5は、中蓋部30を組み立てて形成されたハンガー50を示す斜視図である。また、
図6は、
図5のハンガー50の正面図であり、
図7は、
図5のハンガー50の側面図である。
図5〜
図7に示すように、ハンガー50は、フック部51と、上衣の内面に当接して上衣を保持するハンガー本体部52と、下衣を引掛けることで下衣を保持する吊り下げ部53と、を備えている。
【0027】
フック部51は、ハンガー50の長手方向の中央部に位置している。
フック部51は、2つのフック片31a、31aが重なって形成されているため、必要な強度が担保されている。
【0028】
ハンガー本体部52は、上衣の左右肩部の内面に当接する2つの肩当接部521、521と、上衣の胸部及び背部どちらかの内面にそれぞれ当接する2つの胸背面部522、522と、を有する。
肩当接部521は、フック部51の基端の両側からそれぞれ斜め下方に延在し、
図5に示すように、フック部51の基端から離れるにつれて、徐々に前後方向の厚みが増すように形成されている。
胸背面部522は、左右の肩当接部521、521の前側縁部同士、後ろ側縁部同士をそれぞれ連結させる面である。
このようにハンガー本体部52が立体的な形状であることで、衣類Sを保持させた際に、その衣類Sの形状を確実に再現させることができる。
【0029】
吊り下げ部53は、一方の胸背面部522の下端から連続して設けられる。吊り下げ部53は、ハンガー50の長手方向に沿って長尺な開口部532を備え、開口部532に、下衣を掛けることができる。
【0030】
[衣類用梱包箱の使用方法]
次に、衣類用梱包箱100の使用方法について説明する。
上述したように、この衣類用梱包箱100は、顧客からのオーダーを受けて作製(縫製)されたスーツなどの衣類Sを梱包して、顧客に配送するために用いられる。
ここで、衣類Sは、縫製作業が完了した後、所定の温度にて所定時間乾燥させ、所定の低湿度状態を維持したまま、気密性の包装袋に入れられていることが好ましい。
なお、衣類を乾燥させる際の温度や時間は、衣類を構成している生地の材質等によって適宜設定される。すなわち、衣類を乾燥させる際の温度や時間は、乾燥後の「所定の低湿度状態」が、各生地にとって皺が発生しにくい最適なものとなるように、各生地の性質に応じて適宜設定される。
このように、衣類Sを所定条件下で気密性の包装袋に入れることで、開梱後、衣類Sを包装袋から出して通常のハンガー等に掛けておくだけで、皺の無い良好な状態の衣服に復元させることができる。
【0031】
衣類用梱包箱100においては、その本体部10にこのような気密性の包装袋に入れられた衣類Sが収容され、中蓋部30が被せられた後、蓋部20が閉じられて、顧客に配送される。
このとき、衣類Sに板状の中蓋部30が被せられることで、衣類用梱包箱100の内部で衣類Sが抑えられ、衣類Sが衣類用梱包箱100内を移動するのを防ぐことができるとともに、衣類用梱包箱100の全体のサイズをコンパクトにすることができる。
また、衣類Sが気密性の包装袋に入れられていることで、衣類Sに皺が発生するのをより確実に防ぎつつ、よりコンパクトに梱包することが可能となる。
【0032】
そして、衣類用梱包箱100が顧客に配送された後、顧客により、当該衣類用梱包箱100の中蓋部30はハンガー50に組み立てられ、衣類Sを掛けて吊るすのに用いることができる。
このため、配送先にハンガー50が無かった場合でも、組み立てたハンガー50に衣類Sを掛けて吊るすことで、衣類Sの皺や折れ線等がのびて、衣類Sを所期の状態にすることが可能となる。
ここで、本実施の形態のハンガー50によれば、ハンガー本体部52が前後方向に厚みを有することで強度が担保され、長時間、衣類Sを吊るすことが可能となる。
また、肩当接部521、521が厚みを有することで、上衣の肩部の形状を確実に再現させることができる。また、吊り下げ部53を有することで、下衣を吊るすことが可能となる。従って、衣類Sが、スーツなどのような、上衣及び下衣を有し且つ肩部が立体的な形状のものである場合にも、組み立てたハンガー50を用いることで、迅速に所期の状態にすることができる。
また、このハンガー50は紙製であるため、衣類Sの皺がのばされた後、焼却処理が可能である。
【0033】
[本実施の形態の効果]
以上のように、本実施の形態によれば、衣類用梱包箱100は、開口部16を介して収容空間200に衣類Sを収容する本体部10と、本体部10の開口部16を開閉可能に閉塞する蓋部20と、収容空間200に収容された衣類Sに対して上方から載置される板状の中蓋部30と、を有し、中蓋部30は、紙材により形成され、ハンガー50に組み立て可能である。
このため、梱包時、衣類Sを収容するにあたってハンガーを用いることなく、また、収容した衣類Sを中蓋部30により抑えることができるので、衣類Sをコンパクトに梱包することが可能となる。また、中蓋部30がハンガー50に組み立てられるため、開梱後、収容されていた衣類Sを広げてハンガー50に掛けることができる。
よって、衣類Sをコンパクトに梱包でき、かつ、梱包されていた衣類Sを迅速に所期の状態にすることが可能となる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、中蓋部30の上面には、当該中蓋部30をハンガー50に組み立てる手順を示したガイダンス部40を備える。
このため、中蓋部30を、容易にハンガー50に組み立てることが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、ハンガー50は、フック部51と、衣類Sを保持するハンガー本体部52と、を備え、ハンガー本体部52は、フック部51の基端から両側に延設されて衣類Sの左右肩部の内面に当接する2つの肩当接部521、521を有し、2つの肩当接部521、521は、フック部51の基端から離れるにつれて徐々に前後方向の厚みが増すように形成されている。
このため、ハンガー50により衣類Sの上衣を保持した際、上衣の肩部の形状を確実に再現させることができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、中蓋部30は、フック部51となる第1領域31と、ハンガー本体部52となる第2領域32と、を備え、第2領域32は、フック部51を挿通させる第1スリット321と、第1スリット321の両端部周辺において当該第1スリットに対して対称に配され、2つの肩当接部521、521となる2つの折曲部322、322と、を備え、2つの折曲部322、322は、第1スリット321の端部から放射状に延びる複数の折曲線を有する。
このため、中蓋部30により、ハンガー50のフック部51とハンガー本体部52を組み立てることができ、また、ハンガー本体部52において、衣類Sの上衣の肩部の形状に対応する立体的な肩当接部521、521を形成することが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、ハンガー50は、衣類Sを吊り下げて支持する開口部532が形成された吊り下げ部53を備える。
このため、ハンガー50により衣類Sの下衣を保持可能となり、下衣の形状を再現させることができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、中蓋部30は、吊り下げ部53となる第3領域33を備える。
このため、中蓋部30により、ハンガー50の吊り下げ部53を組み立てることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、衣類Sは、気密性の包装袋に入れられたスーツである。
このため、衣類用梱包箱100を用いて、スーツをよりコンパクトに梱包でき、かつ、梱包されていたスーツを迅速に所期の状態とすることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、本体部10の側面には、使用者が衣類用梱包箱100を把持するための把持部10Aが備えられている。
このため、使用者が衣類用梱包箱100を持ち運びやすくすることができる。
【0041】
[その他]
なお、以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、かかる実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0042】
例えば、上記実施の形態においては、衣類用梱包箱100として、本体部10と蓋部20とが一体となった構成を例示して説明したが、本体部10と蓋部20とを別体としても良い。
【0043】
また、上記実施の形態においては、衣類用梱包箱100は、扁平な略直方体形状(蓋部20が閉じられている際)であるものを例示して説明したが、衣類Sを収容し得る内部空間が形成されるものであれば、その形状はこれに限定されない。
例えば、扁平な直方体以外の直方体状や立方体状等の六面体状のものでも良いし、六面体状以外でも良い。また、これらの形状において、二つの面の稜線部分を面取りしたもの等であっても良い。
【0044】
また、上記実施の形態においては、気密性の包装袋に入れられた衣類Sを梱包する場合を例示して説明したが、衣類Sは、気密性の包装袋に入れられていなくとも良い。
また、上記実施の形態においては、本体部10には把持部10Aが備えられているが、把持部10Aを備えないこととしても良い。
【0045】
また、上記実施の形態においては、衣類用梱包箱100の中蓋部30をハンガー50に組み立てる構成を例示したが、ハンガー50に組み立て可能な板状の部材は中蓋部30に限定されない。
【解決手段】衣類用梱包箱100は、開口部16を介して収容空間200に衣類Sを収容する本体部10と、本体部10の開口部16を開閉可能に閉塞する蓋部20と、収容空間200に収容された衣類Sに対して上方から載置される板状の中蓋部30と、を有し、中蓋部30は、紙材により形成され、ハンガー50に組み立て可能である。