特許第6554229号(P6554229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554229防炎、難燃、準不燃合板天井材、およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554229
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】防炎、難燃、準不燃合板天井材、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20190722BHJP
   B27K 3/08 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   E04B1/94 Q
   B27K3/08
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-509580(P2018-509580)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公表番号】特表2018-532907(P2018-532907A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】KR2016009089
(87)【国際公開番号】WO2017030385
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0117037
(32)【優先日】2015年8月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】312004743
【氏名又は名称】インダストリアル コーペレーション ファウンデーション チョンブク ナショナル ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL COOPERATION FOUNDATION CHONBUK NATIONAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】パク・ヒジュン
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−346902(JP,A)
【文献】 特開平10−037346(JP,A)
【文献】 特開2007−030226(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0098286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
B27K 3/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板に複数の孔を穿孔するステップと、
前記穿孔された合板を真空チャンバーに移送するステップと、
前記真空チャンバーを減圧して真空状態に維持し、水溶性リン系難燃樹脂を前記真空チャンバーの内部に注入するステップと、
前記難燃樹脂が充填された前記真空チャンバーに一定の圧力を加圧して前記難燃樹脂を前記孔を介して前記合板に含浸させるステップと、
前記樹脂が含浸された合板を乾燥させるステップと、を含み、
前記難燃樹脂には、水100重量部に対して、リン系難燃剤10〜100重量部、グアニジン系難燃剤5〜45重量部、および水溶性エチレングリコール1〜10重量部が含まれ,
前記天井材は、1〜10mmの直径の孔が30〜100mmの間隔で形成し、
前記合板に適切な樹脂の含有量が含浸されると、真空チャンバー内の残留樹脂をポンプを作動させて回収した上で、前記合板を乾燥機に移送させ、
前記含浸ステップで、前記孔に充填された水溶性リン系難燃剤は、真空チャンバーで残留樹脂が回収される過程と、乾燥ステップの間に除去されて、穿孔された前記孔が残存する、難燃準不燃および吸音天井材の製造方法。
【請求項2】
前記含浸ステップは、前記真空チャンバー内の加圧力を15kg/cm以上に維持し、
前記天井材が合板である、ことを特徴とする請求項1に記載の難燃準不燃および吸音天井材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防炎、難燃、準不燃天井材、およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、代表的な木材板状材料である合板の表面に防炎または難燃樹脂を単純塗布して表面に浸透させたり、合板の表面を穿孔した後、難燃樹脂を真空状態で加圧注入して製造された防炎、難燃、準不燃天井材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装用天井材は、学校、病院、ホテル、商店街などの複数の施設の建築物の天井に設置され、屋根裏面の壁の内側を指している屋根裏や上層の床構造を隠すための建築材料である。
【0003】
天井材は、構造体や天井に設置された配管、配線などを隠し別途の外装をして、風雨、熱、音などをある程度遮断、吸収、反射する機能も果たしている。
【0004】
また、火災時の炎が天井材を介して拡散して広がることを防止するために、建築法施行令、建築物の避難・防火構造などの基準に関する規則、多重利用業所の安全管理に関する特別法などの火災安全に関連して、室内装飾物または内装仕上げ材に適用するためには、適用場所、適用面積に応じて防炎、難燃、および準不燃性能以上の材料を使用するよう、関連法令に規定されている。
【0005】
しかし、木材を原料として用いて製造する代表的な木材材料である合板、パーティクルボード、中密度繊維板などの材料では、現在までの防炎、難燃、準不燃性能以上の天井材材料で製造するには非常に困難であることが実情である。
【0006】
例えば、パーティクルボードと中密度繊維板は、製造の特性上、高密度で熱圧縮して製造することで、重量が重く、寸法安定性が悪くて、火災に弱いという短所などで天井材として適用することには無理がある。
【0007】
図1は、代表的な木材板状材料の一つである合板の構造を示す。図1を参照にすると、合板(plywood)は木材を薄板、すなわち単板(veneer)にして、これらを繊維方向が互いに直交するように奇数枚積層接着させて製造した広々板状材料を意味し、木材の板目模様、質感、吸音性、温湿度調節機能、優れた強度的性能、割裂や変形などを生じにくいなどの木材の利点を持ち、特に木材に比べて寸法安定性に優れており、木材としては、製造が困難である広幅の材料で製造することができる長所を持っている。
【0008】
今まで、単板(veneer)に難燃処理をした後、乾燥後複数枚を積層接着して難燃合板を製造しようとする試みがあったが、単板が非常に薄い関係で取り扱いが難しいだけでなく、製造時の不良が多く発生し、製造コストが非常に高いこと、これに対して難燃性能が大きく向上していないという問題が依然として提起された。このような理由から、現在韓国で生産および流通している防炎、難燃合板はまったくないというのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、関連法令および規則で提示した防炎、難燃、および準不燃性能の基準を満たす、非常に優れた天井材として適用可能な合板天井材を製造する。
【0010】
本発明は、製造方法が簡単で、製造コストを下げることができる防炎、難燃、および準不燃性能を有する天井材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、
製造された合板の表面を乾燥して研磨するステップと、
前記合板の表面に所定の難燃樹脂を塗布するステップと、
塗布された樹脂が表層の単板に浸み込んで乾燥されるステップと、
を含み、乾燥された合板が防炎性能基準を満たす防炎合板天井材の製造方法に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、
合板の表面に複数の孔を穿孔するステップと、
前記穿孔された合板を真空チャンバーに移送するステップと、
前記真空チャンバーを減圧して真空状態に維持し、難燃樹脂を前記真空チャンバーの内部に注入するステップと、
前記難燃樹脂が充填された前記真空チャンバーに一定の圧力を加圧して前記難燃樹脂を前記合板の内部に含浸させるステップと、
前記樹脂が含浸された合板を乾燥させるステップと、
を含む、難燃および準不燃合板天井材の製造方法に関する。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、本発明は、
孔が複数個穿孔された合板と、
前記孔を介して合板の内部に含浸された難燃樹脂と、
を含む、難燃および準不燃天井材に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、合板の表面に所定の防炎や難燃樹脂を塗布して表層に浸透し、乾燥させて防炎性能基準に適合した防炎合板を製造して、関連基準で認証する防炎基準点検済証を付することができる防炎合板を製造するものである。
【0015】
また、本発明は、合板に穿孔された孔を介して難燃樹脂が各層の単板の繊維方向に沿って短時間に注入することができ、接着層に印加する膨張応力を最小限に抑えることができ、乾燥時間の短縮による収縮応力も減少させることができる。したがって、本発明は、火災安全基準に適合するように十分な量の難燃樹脂を合板内部に含浸させることができ、木材系難燃および準不燃天井材を提供することができる。
【0016】
また、本発明の天井材は、製造された合板を使用するため、軽量ながら強度が大きく、特にアスベスト含有、ラドン放射能の放出、湿気、および水分に弱い石膏ボードなどの無機質系天井材を取り替えることができる。
【0017】
また、本発明の天井材は、木材系合板を使用するので、温湿度の調節、美しい自然の板目模様と色を維持することができ、多数の孔が穿孔されており、優れた吸音効果を提供することができる。
【0018】
また、本発明の天井材は、木材では製造が困難であり、均一で寸法安定性に優れた広幅の板状天井材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】は、合板の構造を示す。
図2】および図3は、本発明に係る天井材の製造方法を示すフローチャートである。
図4】は、図2の方法で製造された本発明の天井材を図示したものである。
図5】は、天井材に孔を貫通して形成したことを示す断面図である。
図6】は、天井材に孔を所定の深さに穿孔したことを示す断面図である。
図7】は、本発明に使用可能な積載装置の一例である。
図8】および図9は、本発明において難燃樹脂を加圧する方法を示す。
図10】は、実施例1で製造された合板天井材(a)と、これを天井に付着した施工事例(b)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、下記の説明に基づいて、すべて達成することができる。下記の説明は、本発明の好ましい具体例を記述することと理解されるべきであり、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0021】
図2および図3は、本発明に係る天井材の製造方法を図示するフローチャートである。図4は、図2の方法で製造された本発明の天井材を図示したものである。図5は、天井材に孔を貫通して形成したことを示す断面図であり、図6は、天井材に孔を所定の深さに穿孔したことを示す断面図である。
【0022】
図2を参照すると、本発明は、穿孔ステップ(S1)、真空チャンバーへの合板の移送ステップ(S2)、真空および樹脂の注入ステップ(S3)、樹脂の含浸ステップ(S4)、および合板の乾燥ステップ(S5)を含む難燃および準不燃天井材の製造方法である。
【0023】
前記穿孔ステップ(S1)は、合板に孔を穿孔するステップである。
【0024】
前記穿孔ステップは、合板に所定のサイズの孔を開けるステップである。前記穿孔ステップは、合板を貫通して穿孔することができる。また、前記穿孔ステップは、合板の厚さの1/4以上の深さ、好ましくは1/2以上の厚さに穿孔することができる。
【0025】
前記穿孔ステップは、1〜10mmの直径の孔を30〜100mmの間隔で形成することができる。前記穿孔は、公知されたスクリューなどを制限なく使用することができる。
【0026】
図4図6を参照すると、合板10に複数の孔20が穿孔される。図4を参照すると、単板Aと単板Bは、互いに繊維方向に直交してて接着される。単板と単板との間には、接着剤層があり、単板を互いに結合させる。
【0027】
図5図6を参照すると、孔20が合板を貫通したり、合板の内部の1/4以上まで穿孔されている。前記孔20は、難燃樹脂が孔を介して注入された後、各単板の側面に、すなわち、各層の単板の繊維方向に沿って加圧注入される経路を提供する。
【0028】
一方、本発明は、合板の表面を凹凸処理することにより、難燃樹脂を容易に注入することができる。前記凹凸処理は、所定の大きさの孔を所定の深さに合板の表面全体に渡って繰り返して形成することができる。例えば、2mm〜6mmの大きさの孔を1mm〜3mmの深さに形成し、これらの孔を数mm〜数cmの間隔で合板全体に渡って形成することができる。前記方法は、前記孔を介して難燃樹脂を強制的に注入することができ、また、前記孔によって吸音性能も向上させることができる。
【0029】
前記合板の移送ステップ(S2)は、穿孔された合板を積載装置30に搭載した後、真空チャンバーに移送するステップである。前記積載装置30は、合板を搭載し、これを固定可能な装置を制限なく使用することができる。図7は、本発明に使用可能な積載装置の一例である。
【0030】
難燃樹脂や防炎樹脂(以下、難燃樹脂と総称する。)を真空チャンバーに移送させるステップ(S3)は、前記真空チャンバーを減圧して真空状態に維持し、難燃樹脂を注入するステップである。
【0031】
前記ステップ(S3)は、真空チャンバーを真空状態に維持した後、前記難燃樹脂を注入する。前記真空チャンバー内の真空度は、常圧(760mmHg)よりも低い範囲である。
【0032】
真空チャンバーの内部が真空状態である場合、前記樹脂の注入ステップで、より迅速に樹脂を薬剤タンクから真空チャンバーに移動させることができ、より多くの量の樹脂を合板の内部に注入させることができる。より具体的に説明すると、本発明において、加圧前の真空状態を一定時間維持させ、タンクと合板の内部に含まれている空気と水分を最大限に除去する。つまり、木材の単板の細胞空隙と細胞間隙などに空気と水分が含まれている場合は、外部から強い圧力を加えても薬剤が十分に浸透しにくい。したがって、薬剤を加圧する前に、十分な真空状態で木材内の空気と水分を除去することで、短い時間に十分な薬剤を注入することができる。
【0033】
前記難燃樹脂を合板に含浸させるステップ(S4)は、樹脂が充填された前記真空チャンバーに一定の圧力を加えて、前記難燃樹脂を合板の内部に強制的に注入させるステップである。前記含浸ステップ(S4)は、真空チャンバー内の難燃樹脂が完全に充填されると、加圧ポンプを作動して難燃樹脂を木材内に強制的に注入させる。
【0034】
難燃樹脂および準不燃性能を持つ合板を製造するためには、長時間、所定量(400kg/m)以上の難燃樹脂を注入しなければならない。しかし、合板は単板と単板との間に接着層(接着剤膜)が形成されており、多くの薬剤を注入するために、長時間加圧すると、接着層によって薬剤の注入が困難になるだけでなく、難燃樹脂を注入した後、乾燥時の収縮応力の発生などで接着層が破壊される問題がある。つまり、合板を一般の木材と同様の方法で加圧注入する場合、注入時間も非常に長くかかって、接着層が破壊され、単板が分離される問題が発生して、製品としての価値を失うことになる。
【0035】
図8および図9は、本発明において、難燃樹脂を加圧して注入する方法を示す。図8および図9を参照すると、前記難燃樹脂40は、合板に穿孔された孔を介して合板の内部まで迅速に注入された後、各単板の側面、すなわち、木材の単板の繊維方向に沿って同時に注入される。
【0036】
本発明は、上層の単板から下層の単板に順次に難燃樹脂を含浸させるのではなく、各単板を同時に含浸させ、さらに単板の木材の繊維方向に難燃樹脂を注入することができるので、含浸速度が非常に速いという長所と、所定の注入量を含浸させることができるという長所がある。また、本発明は、接着剤層を通過したり、横切って難燃樹脂を注入せずので、接着剤層の接着性能に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。すなわち、本発明の方法は、接着層に加わる膨張応力を最小限に抑えることができ、乾燥時間の短縮による収縮応力も減少させることができるので、単板の分離(剥離)が発生しない。
【0037】
本発明における前記含浸ステップ(S4)は、圧力および時間を合板の厚さや種類に応じて、樹脂の組成比、難燃性、準不燃性、不燃性の基準等に応じて任意に設定することができる。
【0038】
本願発明では、含浸ステップでの加圧力が10kg/cmを超え、好ましくは15kg/cm以上に処理し、生産性を高めるためには、加圧力を20kgf/cm以上にすることができる。前記含浸ステップでの圧力が15kg/cm以下の場合には、基準量以上の難燃樹脂を合板の内部に注入しにくくなるだけでなく、所定の樹脂注入量以上に注入させるためには、長い時間がかかる。
【0039】
前記加圧ステップでは、10kg/cmの圧力、好ましくは15kg/cm以上を継続的に維持するために、加圧ポンプに所定の時間間隔で断続的に10kg/cmを超え、好ましくは15kg/cmを超える圧力を加えることができる。
【0040】
前記合板に適切な樹脂の含有量が含浸されると、真空チャンバー内の残留樹脂をポンプを作動させて回収した上で、前記合板を乾燥機に移送させる。
【0041】
前記乾燥ステップ(S5)は、樹脂が含浸された合板を乾燥させるステップである。
【0042】
前記乾燥ステップは、合板の内部に樹脂と共に含浸されて存在する水を蒸発させて除去するステップである。
【0043】
前記含浸ステップで、水溶液の状態で合板の内部の空間に存在する難燃剤が、前記乾燥ステップによって水が蒸発することで、固形分状態で単板の木材の内部空間を充填して残存することになる。前記乾燥ステップは、乾燥機内で温度、湿度、そして送風を調節して、前記合板を乾燥するステップである。前記乾燥ステップは、合板を100度以下の低温で人工乾燥させることができ、例えば、40度を超え100度以下、好ましくは60度〜80度以下の温度で乾燥することができる。
【0044】
前記乾燥ステップを経て、水が蒸発することにより、前記難燃樹脂の成分(難燃剤、水溶性グリコール類、その他の添加剤など)が(樹脂)固形分として存在することになる。
【0045】
前記含浸ステップで、前記孔に充填された水溶性リン系難燃剤は、真空チャンバーで残留樹脂が回収される過程と、乾燥ステップの間に除去されて、穿孔された前記孔が残存する。
【0046】
本発明に使用可能な難燃樹脂は、水、水溶性難燃剤、および水溶性グリコール類を含む。
【0047】
本発明に使用可能な前記水溶性グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどがあり、好ましくはエチレングリコールである。また、水溶性グリコール類として高分子樹脂を使用することもでき、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがある。前記水溶性グリコール類は、好ましくは、分子量が1,000以内、さらに好ましくは500以内であることがよい。
【0048】
前記水溶性グリコール類は、水溶性難燃剤の蒸発を防ぎ、木材を柔らかくして、木材の内部に含浸されて木材の寸法安定性を向上させることができ、また、水溶性難燃剤が冬季に凍結することを防止する凍結防止剤としての機能を付与する。
【0049】
前記木材含浸用難燃樹脂は、水100重量部に対して、前記水溶性グリコール類1〜10重量部、好ましくは1〜3重量部を含む。
【0050】
前記水溶性難燃剤は、グアニジン(guanidine)系難燃剤およびリン系難燃剤の一つ以上を使用することができる。
【0051】
前記リン系難燃剤は、炭素原子を有するリン系ポリマーである。前記リン系難燃剤としては、リン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン系ポリマー、リン酸尿素、ウレタンリン酸化合物またはリン酸化合物である。前記リン酸は、難燃機能ではなく、リン系難燃剤を溶解させる目的で使用される。
【0052】
前記グアニジン系難燃剤としては、グアニジン、スルファミン酸グアニジン、グアニジンリン酸などが使用される。
【0053】
前記リン系難燃剤は、リンと窒素が結合したポリマーとして接着力に優れて架橋が容易であるだけでなく、難燃性が強い特徴がある。また、炭素原子を有するリン系難燃剤は、木材内の細胞内腔、細胞間隙などの微細な空隙に乾燥された後に接着され、木材の表面に残存しても、白化現象が発生しなく、接着や塗装および外観に影響を与えない。
【0054】
グアニジンリン酸化合物は、混合されたリン系難燃剤とグアニジン難燃剤の一部が反応して形成された化合物である
【0055】
前記グアニジンリン酸化合物は、紙内の微細な空隙に吸着されて紙面に残存しても、白化現象が発生されず、接着力が低下しないようにする。
【0056】
前記難燃樹脂には、水100重量部に対して、リン酸1〜10重量部、(ポリ)リン酸アンモニウム5〜45重量部、およびエチレングリコール1〜3重量部が含まれる。
【0057】
前記難燃樹脂には、水100重量部に対して、リン系難燃剤10〜100重量部、グアニジン系難燃剤5〜45重量部、および水溶性エチレングリコール1〜10重量部が含まれる。
【0058】
前記難燃樹脂には、水100重量部に対して、リン酸1〜10重量部、リン酸アンモニウム10〜99重量部、グアニジン5〜45重量部、および水溶性エチレングリコール1〜10重量部が含まれる。
【0059】
前記難燃樹脂には、炭素原子を備えるリン系ポリマー、ウレタン系難燃剤、メラミン、アクリル分散剤、スルファミン酸グアニジン、および尿素の一つ以上の補助剤がさらに含まらる。
【0060】
前記リン系ポリマーは、炭素原子を具備するものであり、例えば、リン酸化合物、ポリウレタン酸化合物、エチレンジアミンホスフェート、サイクリックホスフェート、ジエチル(エチル)ホスフェート、ジエチルホスフェート、ジメチル(メチル)ホスフェート、およびトリエチレンホスフェートからなる群より選択される1つ以上から選択される。
【0061】
本発明は、前記難燃性樹脂に他の添加剤が含まれる。
【0062】
その他の添加剤としては、防黴剤、防腐剤、着色剤、芳香剤などが水100重量部に対して1〜10重量部含まれる。これ以外にも、調湿作用をする多孔質アルミナ、シリカゲル、塩化カルシウムなどの無機質成分が含まれる。
【0063】
別の態様において、本発明は、合板天井材に関する。図4を参照すると、本発明の天井材は、孔20が複数穿孔されたり、表面が凹凸処理された合板10、および前記孔を介して合板の内部に含浸された難燃樹脂を含んでいる。
【0064】
前記天井材は、1〜10mmの直径の孔が30〜100mmの間隔で形成され、前記孔は、合板の厚さの1/4以上の深さに形成され、また、前記孔が天井材を完全に貫通して形成される。
【0065】
前記孔20は、天井材に吸音性能を提供する。前記孔の大きさと形状は多様に形成される。
【0066】
例えば、前記天井材に異なるサイズの孔が互いに繰り返し、規則的に形成され、または異なるサイズの孔が不規則に配置される。小さいサイズの孔と大きいサイズの孔は、異なる周波数帯域の音波をフィルタリングすることができるので、本発明の天井材は、様々な帯域の音波に吸音性能を提供することができる。また、前記天井材は、表面が凹凸処理されている。
【0067】
前記天井材については、上述した天井材の製造方法を参照することができる。
【0068】
以下で実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の実施例は、様々な変形され、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0069】
実施例1
厚さ7mmカラ松合板の表面に直径4mmの孔(50mmの間隔)を加工した合板を圧力18kgf/cm、真空時間10分、加圧時間2時間で水溶性難燃樹脂を真空加圧して含浸させた。
【0070】
比較例1
厚さ7mmのカラ松合板を穿孔処理せずに、実施例1と同一の条件で難燃樹脂を真空加圧して含浸させた。
【0071】
下記の表1は、実施例1と比較例1の樹脂含浸量の結果を示し、図10は、実施例1で製造された合板天井材(a)と、これを天井に付着した施工事例(b)を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1は、比較例1に比べて難燃樹脂注入性が約23%向上したこと示す。下記の表2は、実施例1と比較例1の準不燃性能を測定した結果を示したものである。
【0074】
【表2】
【0075】
表2を参照すると、実施例1は、比較例1に比べて難燃性能が大幅に改良したことを知ることができる。
【0076】
実施例2
厚さ11mmのカラ松合板の表面に直径4mmの孔を穿孔した合板を圧力18kgf/cm、真空時間10分、加圧時間2時間で水溶性難燃樹脂を真空加圧して含浸させた。
【0077】
表3および表4は、それぞれ実施例2で注入された樹脂量と準不燃性能を示す。性能試験は、韓国建設生活環境試験研究院 KS F ISO 5660−1(2015.06.08)に依頼して行ったものである。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
通常、カラ松の場合は、樹脂注入性が非常に困難な樹種に分類され、基準量以上の薬剤および樹脂注入処理が不可能なものとして知られるが、本発明の方法を使用すると、表3および表4のようにカラ松で製造された合板でも準不燃天井材を製造することができることを示している。
【0081】
実施例3
厚さ11mmのヒノキ合板の表面に難燃樹脂の塗布量(g/m)に基づく防炎性能を測定した。
【0082】
表5は、実施例3で合板の表面に塗布された塗布量(g/m)消防防災庁の基準に従った防炎性能を示した表である。表に示すように、合板の表面に難燃樹脂を0〜30g/m塗布する場合には、不合格の性能を示し、60〜90g/m塗布する場合には、合格したが合格基準境界値を示し、十分な防炎性能を示すと判断が難しく、120g/m以上の塗布時には、性能基準に十分満足することが分かった。
【0083】
【表5】
【0084】
本発明の単純な変形ないし変更は、当業者により容易に利用されることができ、このような変形や変更はすべて本発明の範囲に含まれるものと見られる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、防炎、難燃天井材として使用することができ、特に、アスベストを含有した石膏ボードなどの無機質系天井材を取り替えることができる。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
合板に複数の孔を穿孔するステップと、
前記穿孔された合板を真空チャンバーに移送するステップと、
前記真空チャンバーを減圧して真空状態に維持し、水溶性リン系難燃樹脂を前記真空チャンバーの内部に注入するステップと、
前記難燃樹脂が充填された前記真空チャンバーに一定の圧力を加圧して前記難燃樹脂を前記孔を介して前記合板に含浸させるステップと、
前記樹脂が含浸された合板を乾燥させるステップと、
を含む、難燃および準不燃天井材の製造方法。
<請求項2>
合板に凹凸処理を実行するステップと、
前記凹凸処理された合板を真空チャンバーに移送するステップと、
前記真空チャンバーを減圧して真空状態に維持し、難燃樹脂を前記真空チャンバーの内部に注入するステップと、
前記難燃樹脂が充填された前記真空チャンバーに一定の圧力を加圧して前記難燃樹脂を前記合板に含浸させるステップと、
前記樹脂が含浸された合板を乾燥させるステップと、
を含む、難燃および準不燃天井材の製造方法。
<請求項3>
前記穿孔ステップは、合板を貫通したり、合板の厚さの1/4以上の深さに穿孔することを特徴とする請求項1に記載の難燃および準不燃天井材の製造方法。
<請求項4>
1〜10mmの直径の孔を30〜100mmの間隔で穿孔することを特徴とする請求項1に記載の難燃および準不燃合板天井材の製造方法。
<請求項5>
前記含浸ステップは、前記真空チャンバー内の加圧力を15kg/cm以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の難燃および準不燃合板天井材の製造方法。
<請求項6>
孔が複数個穿孔されたり、表面が凹凸処理された合板と、
前記孔を介して合板の内部に含浸された難燃樹脂と、
を含む難燃および準不燃天井材。
<請求項7>
前記天井材は、1〜10mmの直径の孔が30〜100mmの間隔で形成されたことを特徴とする請求項6に記載の難燃および準不燃天井材。
<請求項8>
前記孔が合板の厚さの1/4以上の深さに形成されたことを特徴とする請求項6に記載の難燃および準不燃天井材。
<請求項9>
製造された合板の表面を乾燥して研磨するステップと、
前記合板の表面に水溶性リン系難燃樹脂を100g/m以上塗布するステップと、
塗布された樹脂が表層の単板に浸み込んで乾燥されるステップと、
を含み、乾燥された合板が防炎性能基準を満たす防炎合板天井材の製造方法。
図1
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図8
図9
図10(a)】
図10(b)】