(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554268
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】平坦化カバー層構造体を有するフレキシブル回路板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 P
H05K1/02 J
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-139575(P2014-139575)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2015-26833(P2015-26833A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】102126779
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509216186
【氏名又は名称】易鼎股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】蘇國富
(72)【発明者】
【氏名】林崑津
【審査官】
梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−211131(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0139655(US,A1)
【文献】
特開平01−286386(JP,A)
【文献】
特開2002−043708(JP,A)
【文献】
特開平06−028935(JP,A)
【文献】
特開平02−001198(JP,A)
【文献】
特開2009−141233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル回路板であって、
第1の面及び第2の面を備える基板、
前記基板の前記第1の面に結合した導体層であって、前記導体層は、複数の伸張する導電性信号線を備え、前記導電性信号線は、前記導電性信号線の隣接する線の間に分離領域を画定するように所定距離だけ互いに離間する、導体層、
前記導体層の表面上に形成される第1の接着層、
前記第一の接着層を介して前記導体層の前記表面上に重ねられる絶縁カバー層、及び
前記絶縁カバー層上に設置される第1の金属層、を備えるフレキシブル回路板において、
前記導体層の前記導電性信号線と前記導体層のそれぞれの表面の間の前記分離領域はそれぞれ、充填層で形成され、前記充填層は、前記導体層の前記表面よりも被覆高さだけ高い高さを有し、それにより、前記第1の接着層は、前記分離領域に平坦化高さを有し、前記平坦化高さは、前記導電性信号線の前記高さと前記被覆高さとの和に実質的に等しく、
前記導電性信号線のそれぞれは、差動モード信号である信号を伝送することを特徴とする、
フレキシブル回路板。
【請求項2】
前記導電性信号線は、矩形、台形、円及び楕円のうち1つの形状である断面を有する、請求項1に記載のフレキシブル回路板。
【請求項3】
前記充填層は、液状の低誘電率材料、低電力損失材料、テフロン材料のうち1つを前記分離領域に充填し、その後、加熱又は紫外光若しくは赤外光の照射により硬化させて固定成形させることによって形成し、こうして前記充填層を形成する、請求項1に記載のフレキシブル回路板。
【請求項4】
第2の接着層は、前記導体層を前記基板の前記第1の面に結合するために、前記基板の前記第1の面と前記導体層との間に配置される、請求項1に記載のフレキシブル回路板。
【請求項5】
前記基板の前記第2の面は、第2の金属層に結合される、請求項1に記載のフレキシブル回路板。
【請求項6】
前記第2の金属層は、第3の接着層によって前記基板の前記第2の面に結合される、請求項5に記載のフレキシブル回路板。
【請求項7】
前記基板は、片面板、両面板及び多層板のうち1つを備える、請求項1に記載のフレキシブル回路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路板の構造体の設計に関し、より詳細には、フレキシブル回路板の平坦化カバー層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック・コンピュータ、携帯情報端末及び携帯電話を含めた現在普及している様々な電子製品には、フレキシブル・フラット・ケーブル及びフレキシブル回路板が信号伝送用搬送板として一般に使用されている。
【0003】
従来のフレキシブル回路板を示す概略平面図である
図1及び断面図である
図2を参照すると、図示するように、基板1は、第1の面11及び第2の面12を有する。
【0004】
導体層2は、基板1の第1の面11に結合される。導体層2は、複数の伸張する導電性信号線21を備える。導電性信号線21は、互いに所定距離だけ離間され、それにより導電性信号線21の隣接する2本の線ごとに、分離領域22が間に画定される。導電性信号線21は、所定の線高さh1を有し、一般に銅箔材料又は複合材料製である。
【0005】
基板1は、ある伸張方向に伸張するように配置され、基板1の自由端は、複数の導電性接点13を備える。基板1の自由端は、基板1の導電性接点13が挿入スロットに設けられた対応接点を電気的に係合するように挿入スロット(図示せず)内に挿入可能である。第1の接着層31は、第1の接着層31によって絶縁カバー層4に結合した導体層2の表面上に形成される。
【0006】
公知の製造工程では、絶縁カバー層4は、第1の接着層31の接着により絶縁カバー層4が導体層2の第1の面11に確実に結合されるようにプレスにかけられる。導体層2の導電性信号線21間に存在する分離領域22のために、絶縁カバー層4を結合のためにプレスする工程中に第1の接着層31は、圧力がかけられるために変形し、凹み、それによって波状のしわが付いた表面構造体を示す。
したがって、断熱層4を設置した表面は、不規則で平坦ではない表面である。このことが、フレキシブル回路板の品質の悪化をもたらすことがあり、フレキシブル回路板上に設けられた信号伝送経路間の電気インピーダンスの不一致の結果、フレキシブル回路板の電気インピーダンスを正確に制御することを困難にするおそれがある。
【0007】
図3を参照する。
図3には、別の従来のフレキシブル回路板を例示する断面図が示されており、その構造は、
図2に示す従来のフレキシブル回路板と同様である。差異は、導体層2の導電性信号線21のそれぞれが第2の接着層32によって基板1の第
1の面
11に結合されていることである。
【0008】
実際の適用では、両方とも公知のフレキシブル回路板は、上記で説明した欠点を呈し、したがって、インピーダンス整合の不良、信号の反射、電磁波の拡散、信号の送受信エラー及び信号波形のひずみといった問題を引き起こす。こうした問題の存在により、高精度の電子機構で通常使用される回路板への障害を引き起こす。
【0009】
比較的高い動作周波数を有する電子デバイス(ノートブック・コンピュータ等)に関して、インピーダンスの精度は、より高い動作周波数に対してより厳密になる。従来の技術を用いて製造する回路板は、当産業のニーズに適していないおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、フレキシブル回路板の平坦化カバー層構造体を提供することであり、この平坦化カバー層構造体は、フレキシブル回路板の断熱カバー結合工程の間に絶縁カバー層及び接着層が変形し、凹む問題をなくす。
【0011】
本発明の別の目的は、フレキシブル回路板が平坦で規則的な表面を有することができるように平坦化カバー層を備えるフレキシブル回路板の構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、絶縁層が第1の接着層を介してフレキシブル回路板の基板上に敷設された導電性信号線の各1つの表面に結合されるように構成する。導電性信号線の隣接する線の間にそれぞれ形成される分離領域は、それぞれが充填層と共に形成され、そのため、充填層は、分離領域における平坦化高さを第1の接着層に与え、この平坦化高さは、導電性信号線の高さと実質的に等しい。
【0013】
本発明の別の実施形態では、充填層は、代替的に導体層の表面よりも被覆高さだけ高い高さであってもよく、それにより、第1の接着層は、分離領域に平坦化高さを有し、この平坦化高さは、導電性信号線の高さと被覆高さとの和に実質的に等しい。
【0014】
導電性信号線は、差動モード信号である信号を伝送するように設けられ、矩形、台形、円及び楕円のうち1つの形状である断面を有することができる。
【0015】
充填層は、液状の低誘電率材料、低電力損失(low dissipation loss)材料、テフロン(登録商標)材料のうち1つを分離領域に充填し、その後、加熱又は紫外光若しくは赤外光の照射により硬化させて固定成形することによって形成し、こうして充填層を形成する。
【0016】
絶縁カバー層は、第1の金属層を備える表面を有する。基板の第2の面は、第2の金属層に結合される。
【0017】
基板は、片面板、両面板及び多層板のうち1つを備えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果は、絶縁カバー層を結合するためにプレスする工程中に絶縁カバー層及び接着層の変形及び凹みを受けないフレキシブル回路板を提供することである。更に、フレキシブル回路板の絶縁カバー層は、規則的で平坦な表面を備える。実際の産業上の適用では、インピーダンス整合の不良、信号の反射、電磁波の拡散、信号の送受信エラー及び信号波形のひずみといった問題を効果的に改良することが可能である。
本発明によって提供する技法は、比較的高い動作周波数を有する電子デバイスに特に利益を与えるものである。
【0019】
図面を参照しながら以下の本発明の好ましい実施形態の説明を読むことによって、本発明は当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来のフレキシブル回路板を示す概略平面図である。
【
図3】別の従来のフレキシブル回路板を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示す基板の第2の面が、導体層に対応し、対向する底部導体層を備えることを示す断面図である。
【
図6】
図4に示す基板の多層板の構成を示す概略図である。
【
図7】
図4に示す基板の多層板の別の構成を示す概略図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態を示す断面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態を示す断面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面、特に
図4を参照する。
図4には、本発明の第1の実施形態の断面図が示されている。図示するように、基板1は、第1の面11及び第2の面12を備える。
【0022】
導体層2は、基板1の第1の面11に結合される。第1の接着層31は、導体層2の表面上に形成される。導体層2は、複数の伸張する導電性信号線21を備える。導電性信号線21は、所定の線高さh1を有し、一般に銅箔又は複合材料製である。
【0023】
絶縁カバー層4は、第1の接着層31を介して導体層2の表面上に重ねられる。絶縁カバー層4は、一般に絶縁材料製であり、又は代替的に純粋な樹脂、カバーレイ及びインクのうちの1つから作製される。絶縁カバー層4は、第1の金属層51を更に備える表面を有する。第1の金属層51は、銀ベースの材料層、アルミニウムベースの材料層、銅ベースの材料層、導電性炭素ペースト、導電性粒子含有樹脂層のうち1つでできている。
【0024】
導電性信号線21は、導電性信号線21の隣接する線の間に分離領域22を画定するように所定距離だけ互いに離間する。導電性信号線21は、矩形、台形、円及び楕円のうち1つの形状である断面を有し、例えば高周波差動モード信号を伝送するために設けられる。
【0025】
導体層2の導電性信号線21間の分離領域22は、それぞれが充填層6と共に形成され、それにより充填層6は、分離領域22のそれぞれにおける平坦化高さh2を第1の接着層31に与え、この平坦化高さh2は、導電性信号線21の線高さh1と実質的に等しい。
【0026】
充填層6は、印刷、被覆、ロール被覆によって、液状の低誘電率材料、低電力損失材料、テフロン材料のうち1つを分離領域22に充填し、その後、加熱又は紫外光若しくは赤外光の照射により硬化させて成形することによって形成する。
【0027】
図4に示す構成では、片面板の例に関して基板1を説明する。本発明は、両面板又は多層板にも適用可能である。例えば、
図5に示すように、基板1の第2の面12は、導体層2に対応、対向する底部導体層2aを備えることが示される。このようにして、単一基板の上面及び下面は、それぞれ導体層を備えることができ、それにより、両面板の基板の構造体を実現する。
【0028】
概略図としての
図6に示されるように、基板1は、代替的に、少なくとも2つの片面板を積層することにより形成した多層板の構成であってもよい。この構成では、接地層14が、基板1と積層基板1aとの間に形成され、積層基板1aは、導体層71から形成した底面を有する。導体層71は、複数の導電性信号線72及び充填層6aを備える。
【0029】
概略図としての
図7に示されるように、基板1は、代替的に、少なくとも2つの片面板を背中合わせに積層することにより形成した多層板の構成であってもよい。この構成では、基板1の第2の面12は、接地層15、積層基板1a及び導体層71を更に備え、それらに結合される。導体層71は、複数の導電性信号線72及び充填層6aを備える。本実施形態では、導体層2、基板1、接地層15、積層基板1a及び導体層71はそれぞれ、これらの間に加えた中間接着層34、35、36、37と結合される。
【0030】
図8は、本発明の第2の実施形態の断面図を示す。本実施形態は、
図4に示した実施形態の対応構成要素と同様の構成部品を備え、差異は、導体層2の導電性信号線21のそれぞれが第2の接着層32によって基板1の第1の面11に結合されていることである。
【0031】
更に、基板1の第2の面12は、第2の金属層52に結合される。第2の金属層52は、銀ベースの材料層、アルミニウムベースの材料層、銅ベースの材料層、導電性炭素ペースト、導電性粒子含有樹脂層のうち1つでできている。
【0032】
図9に示すように、本発明の第3の実施形態の断面図を示す。本実施形態は、
図8に示した実施形態の対応構成要素と同様の構成部品を備え、差異は、基板1の第2の面12が第3の接着層33によって第2の金属層52に結合されていることである。
【0033】
図10に示すように、本発明の第4の実施形態の断面図を示す。本実施形態は、
図4に示した実施形態の対応構成要素と同様の構成部品を備え、差異は、
図4に示す実施形態の充填層6よりも大きい厚さを有する充填層6が使用されることである。
【0034】
言い換えれば、導体層2の導電性信号線21と導電性信号線21のそれぞれの表面との間の分離領域22は、充填層6で被覆され、充填層6は、導体層2の導電性信号線21の表面よりも被覆高さh4だけ高い充填層高さh3を有し、それにより、第1の接着層31は、分離領域22に平坦化高さを有し、この平坦化高さは、導体層2の導電性信号線21の線高さh1と被覆高さh4との和に実質的に等しい。
【0035】
図11に示すように、本発明の第5の実施形態の断面図を示す。本実施形態は、
図10に示した実施形態の対応構成要素と同様の構成部品を備え、差異は、導体層2の導電性信号線21のそれぞれが第2の接着層32によって基板1の第1の面11に結合されていることである。更に、基板1の第2の面12は、第2の金属層52に結合されている。
【0036】
図12に示すように、本発明の第6の実施形態の断面図を示す。本実施形態は、
図9に示した実施形態の対応構成要素と同様の構成部品を備え、差異は、基板1の第2の面12が第3の接着層33によって第2の金属層52に結合されていることである。
【0037】
本発明を好ましい実施形態を参照しながら説明してきたが、様々な修正及び変更を本発明の範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者に明らかであり、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義されることを意図する。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
2 導体層
4 絶縁カバー層
6 充填層
11 第1の面
12 第2の面
21 導電性信号線
22 分離領域
31 第1の接着層
32 第2の接着層
33 第3の接着層
51 第1の金属層
52 第2の金属層
h1 所定の線高さ
h2 平坦化高さ
h3 充填層高さ
h4 被覆高さ