特許第6554285号(P6554285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554285
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20190722BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20190722BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
   F16H57/021
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-4126(P2015-4126)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130536(P2016-130536A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】古田 和哉
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170674(JP,A)
【文献】 特開2014−119101(JP,A)
【文献】 特表2008−513706(JP,A)
【文献】 実開平04−125994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
雌ネジ部を含む内周面を有するキャリアと、
前記内周面に回転可能に支持されており、前記外筒および前記キャリアの一方を他方に対して相対的に回転させるクランク軸と、
前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を有しており、前記クランク軸の軸方向における当該クランク軸の動きを規制する規制部材と、を備え
前記キャリアは、前記軸方向における前記規制部材の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記規制部材は、前記雄ネジ部と、前記軸方向において前記位置決め部により位置決めされる位置決め面と、前記クランク軸の前記軸方向の動きを規制する規制面と、を有する部材によって構成されている歯車装置。
【請求項2】
記位置決め面と前記規制面とが同一面上に位置している、請求項に記載の歯車装置。
【請求項3】
前記位置決め面、前記規制面とは別の面上に位置している、請求項に記載の歯車装置。
【請求項4】
前記規制部材は、当該規制部材の前記雄ネジ部を前記キャリアの前記雌ネジ部に螺合させる工具を取り付けるための取付け部を有している、請求項1〜のいずれか一項に記載の歯車装置。
【請求項5】
前記内周面は、前記キャリアを前記軸方向に貫通する貫通孔の内周面として形成されており、
前記規制部材は、前記軸方向における前記キャリアの端面側から当該キャリアに対して着脱可能となるように前記貫通孔内に配置されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯車装置として、特許文献1には、図13に示すように、外筒210と、偏心部220aを有するクランク軸220と、偏心部220aの回転に伴って揺動回転する揺動歯車230と、揺動歯車230の揺動回転に伴って外筒210に対して相対回転するキャリア240と、を備えた歯車装置200が記載されている。この歯車装置200では、クランク軸220は、キャリア240に形成された貫通孔240aに挿入されており、当該貫通孔240a内においてキャリア240に回転自在に支持されている。
【0003】
クランク軸220には、当該クランク軸220の軸方向の両側に段差部220b,220cがそれぞれ形成されている。また、貫通孔240aを形成するキャリア240の内周面240bには、クランク軸220の軸方向に離間する2つの取り付け溝が形成されており、各取付け溝に止め輪250,260が嵌め合わされている。そして、クランク軸220の軸方向において、段差部220bと止め輪250との間にワッシャ270が挟み込まれているとともに、段差部220cと止め輪260との間にワッシャ280が挟み込まれている。これにより、ワッシャ270,280がクランク軸220の軸方向への動きを規制する規制部材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−109285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯車装置200において、貫通孔240a内には、内周面240bの各取付け溝に嵌め合わされた止め輪250,260が位置しているため、当該貫通孔240a内において止め輪250,260と段差部220b,220cとの間に位置するワッシャ270,280の厚みが小さくなる可能性がある。ワッシャ270,280の厚みが小さい場合、クランク軸220が回転動作中に軸方向に移動した際に、クランク軸220からワッシャ270,280に加わる外力によって当該ワッシャ270,280が撓む虞がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、規制部材が撓むことを抑止することができる歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歯車装置は、外筒と、雌ネジ部を含む内周面を有するキャリアと、前記内周面に回転可能に支持されており、前記外筒および前記キャリアの一方を他方に対して相対的に回転させるクランク軸と、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を有しており、前記クランク軸の軸方向における当該クランク軸の動きを規制する規制部材と、を備え、前記キャリアは、前記軸方向における前記規制部材の位置決めを行う位置決め部を有し、前記規制部材は、前記雄ネジ部と、前記軸方向において前記位置決め部により位置決めされる位置決め面と、前記クランク軸の前記軸方向の動きを規制する規制面と、を有する部材によって構成されている。
【0008】
前記の歯車装置では、キャリアの雌ネジ部に規制部材の雄ネジ部が螺合することにより、規制部材がキャリアに固定されており、これにより当該規制部材がクランク軸の軸方向の動きを規制する。このため、規制部材とは別に当該規制部材をキャリアに固定するための止め輪等を設ける必要がなく、規制部材の厚みを十分に大きくすることができる。そのため、クランク軸から規制部材に外力が加わった場合に当該規制部材が撓むことを抑止することができる。
【0010】
また、規制部材がキャリアに形成された位置決め部によって位置決めされるため、キャリアに支持されるクランク軸に対する規制部材の相対位置を適切に決定することができる。しかも、規制部材が位置決め部に位置決めされた状態で雄ネジ部が雌ネジ部に螺合するため、当該規制部材をキャリアに対して強固に固定することができる。
【0011】
記位置決め面と前記規制面とが同一面上に位置していてもよい。
【0012】
前記の歯車装置では、規制部材は、クランク軸の軸方向において位置決め部と位置決め面とが接触する位置にて位置決めされ、当該位置決め面と同一面上に位置する規制面において、クランク軸の軸方向の動きを規制する。このため、規制部材の厚みによらず、位置決め部とクランク軸との位置関係によって、クランク軸に対する規制部材の規制面の相対位置が決定することになる。そのため、製造誤差による規制部材の厚みのばらつきによってクランク軸に対する規制部材の規制面の相対位置が適切な位置からずれてしまうことを抑止できる。
【0013】
前記位置決め面、前記規制面とは別の面上に位置していてもよい。
【0014】
前記の歯車装置では、当該規制面とは別の面上に位置する位置決め面と位置決め部とがクランク軸の軸方向において接触するため、規制面の位置によらず規制部材を位置決めすることができる。
【0015】
前記規制部材は、当該規制部材の前記雄ネジ部を前記キャリアの前記雌ネジ部に螺合させる工具を取り付けるための取付け部を有していてもよい。
【0016】
前記の歯車装置では、取付け部に工具を取り付け、当該工具を操作しつつ雄ネジ部を雌ネジ部に螺合させることにより、当該規制部材をキャリアに容易に取り付けることができる。しかも、キャリアに取り付けられた規制部材の取付け部に工具を取り付け、当該工具を操作しつつ雄ネジ部と雌ネジ部との螺合を解除することにより、規制部材をキャリアから容易に取り外すことができる。このように、前記の歯車装置では、規制部材が取付け部を有するため、キャリアに対する規制部材の取り付けおよび取り外しが容易となる。
【0017】
前記内周面は、前記キャリアを前記軸方向に貫通する貫通孔の内周面として形成されており、前記規制部材は、前記軸方向における前記キャリアの端面側から当該キャリアに対して着脱可能となるように前記貫通孔内に配置されていてもよい。
【0018】
前記の歯車装置では、規制部材がキャリアの端面側から当該キャリアに対して着脱可能となるように貫通孔内に配置されているため、例えば規制部材を交換する必要が生じた場合に、キャリア自体を分解することなく当該規制部材を着脱することができる。このため、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、規制部材が撓むことを抑止することができる歯車装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る歯車装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1に示した歯車装置の要部拡大図である。
図3】本実施形態に係る歯車装置の第1規制部材の概略構成を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る歯車装置の変形例1の概略構成を示す図であって、図2と同様の部位を示す要部拡大図である。
図5図4に示した変形例1の第1規制部材の概略構成を示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る歯車装置の変形例2の概略構成を示す図であって、図2と同様の部位を示す要部拡大図である。
図7】本実施形態に係る歯車装置の変形例3の概略構成を示す図であって、図2と同様の部位を示す要部拡大図である。
図8】本実施形態に係る歯車装置の変形例4の概略構成を示す断面図である。
図9】本実施形態に係る歯車装置の変形例5の概略構成を示す断面図である。
図10図9に示した変形例5の歯車装置の要部拡大図である。
図11】本実施形態に係る歯車装置の変形例6であって、図3と同様に第1規制部材の概略構成を示す斜視図である。
図12】本実施形態に係る歯車装置の変形例7であって、図3と同様に第1規制部材の概略構成を示す斜視図である。
図13】特許文献1に記載された歯車装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本実施形態に係る歯車装置X1の構成部材のうち主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態に係る歯車装置X1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0022】
図1および図2に示すように、歯車装置X1は、偏心揺動型の歯車装置であって、外筒2と、キャリア3と、揺動歯車4と、クランク軸5と、を備えている。歯車装置X1では、クランク軸5の回転に伴って揺動歯車4が揺動回転することにより、外筒2とキャリア3とが相対的に回転する。
【0023】
外筒2は、軸C1を中心軸とする略円筒形状をなしている。外筒2の内周面2aには、多数のピン溝が形成されている。各ピン溝は、軸C1方向に延びるように配置され、当該軸C1方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。各ピン溝は、外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。
【0024】
歯車装置X1は、外筒2の内周面2aに取り付けられる複数の内歯ピン8をさらに備えている。各内歯ピン8は、軸C1方向に延びる円柱形状をなしている。また、各内歯ピン8は、外筒2の内周面2aに形成された各ピン溝に取り付けられている。
【0025】
外筒2には、当該外筒2を軸C1方向に貫く取付け孔2bが複数形成されている。各取付け孔2bは外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。各取付け孔2bは、外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベース等の図略の相手側部材を取り付ける際に利用される。外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベースを取り付ける場合、外筒2は、歯車装置X1における固定側の部材となる。
【0026】
キャリア3は、軸C1方向において揺動歯車4を挟むように構成されており、外筒2と同心状に配置されている。キャリア3は、軸C1方向において互いに対向する第1部材31および第2部材32を有している。第1部材31と第2部材32とは、締結部材T1を介して互いに締結されている。
【0027】
第1部材31は、略円板状をなしている。第1部材31は、一部が外筒2の内部に位置しており、残部が軸C1方向において外筒2の外部に位置している。
【0028】
第1部材31には、中央孔31aと、クランク軸取付け部31bと、が形成されている。
【0029】
中央孔31aは、第1部材31を軸C1方向に貫くように、第1部材31の中央部分に形成されている。
【0030】
クランク軸取付け部31bは、クランク軸5が取り付けられる部位である。クランク軸取付け部31bは、中央孔31aの外側においてキャリア3の周方向に並んでいる。各クランク軸取付け部31bは、第1部位31を軸C1方向に貫く貫通孔、または第1部位31の一部が軸C1方向へ凹んだ窪み穴によって形成される。本実施形態では、各クランク軸取付け部31bは、第1部材31を軸C1方向に貫くように形成されている。また、本実施形態では、第1部材31には3つのクランク軸取付け部31bが形成されている。
【0031】
第2部材32は、略円板状の基板部32aと、当該基板部32aから第1部材31側に延びるシャフト部32bと、を有している。
【0032】
基板部32aは、一部が外筒2の内部に位置しており、残部が軸C1方向において外筒2の外部に位置している。
【0033】
シャフト部32bは、基板部32aのうち軸C1方向における第1部材31側の端面から当該軸C1方向に延びている。シャフト部32bは、キャリア3の周方向に並んで複数設けられている。本実施形態では、第2部材32は、3つのシャフト部32bを有している。
【0034】
第2部材32には、中央孔32cと、クランク軸取付け部32dと、取付孔32fと、が形成されている。
【0035】
中央孔32cは、第2部材32の基板部32aを軸C1方向に貫くように、第2部材32の中央部分に形成されている。
【0036】
クランク軸取付け部32dは、クランク軸5が取り付けられる部位である。クランク軸取付け部32dは、中央孔32cの外側においてキャリア3の周方向に並んで複数形成されている。各クランク軸取付け部32dは、基板部32aを軸C1方向に貫く貫通孔、または基板部32aの一部が軸C1方向へ凹んだ窪み穴によって形成される。本実施形態では、各クランク軸取付け部32dは、第2部材32の基板部32aを軸C1方向に貫くように形成されている。また、各クランク軸取付け部32dは、第1部材31に形成された各クランク軸取付け部31bの位置に対応して設けられている。
【0037】
取付孔32fは、第2部材32のうち第1部材31とは反対側の端面が軸C1方向に凹むように形成されている。取付孔32fは、ロボットの関節部分を構成する旋回胴等の相手側部材をキャリア3に取り付けるのに利用される。キャリア3に対してロボットの関節部分を構成する旋回胴を取り付ける場合、当該キャリア3は、歯車装置X1における回転側の部材となる。なお、例えばキャリア3に対してロボットの関節部分を構成するベースが取り付けられる場合であれば、外筒2にはロボットの関節部分を構成する旋回胴が取り付けられ、これによりキャリア3が歯車装置X1の固定側の部材となるとともに外筒2が歯車装置X1の回転側の部材となる。
【0038】
歯車装置X1は、主軸受B1,B2をさらに備えている。主軸受B1,B2は、キャリア3の外周面と外筒2の内周面2aとの間に設けられている。具体的に、主軸受B1は、第1部材31の外周面と外筒2の内周面2aとの間に設けられており、主軸受B2は、第2部材32の基板部32aの外周面と外筒2の内周面2aとの間に設けられている。主軸受B1,B2は、外筒2とキャリア3との間の相対回転を許容する。
【0039】
クランク軸5は、クランク軸取付け部31b,32dにおいて、キャリア3に回転自在に支持されている。歯車装置X1は、キャリア3に対するクランク軸5の回転を許容するクランク軸受6A,6Bを含むクランク軸受6をさらに備えており、当該クランク軸受6A,6Bを介してクランク軸5がキャリア3に支持されている。本実施形態では、クランク軸5は、キャリア3の周方向に並んで3つ設けられている。なお、クランク軸5の数は任意であって、歯車装置X1の使用態様に応じて適宜変更することができる。
【0040】
クランク軸5は、軸C1方向に延びる軸本体51と、当該軸本体51に対して偏心する偏心部54,55と、を有している。
【0041】
軸本体51は、第1,第2ジャーナル部(大径部)51b,51cと、当該第1,第2ジャーナル部51b,51cよりも少し小さい外径を有する小径部51aと、を有している。
【0042】
第1ジャーナル部51bは、第1部材31のクランク軸取付け部31b内に位置している。第1ジャーナル部51bの外周面には、第1クランク軸受6Aが取り付けられている。
【0043】
第2ジャーナル部51cは、第1ジャーナル部51bと同じ外径を有する。第2ジャーナル部51cは、第2部材32のクランク軸取付け部32d内に位置している。第2ジャーナル部51cの外周面には、第2クランク軸受6Bが取り付けられている。
【0044】
小径部51aは、軸C1方向において、第1ジャーナル部51bに隣接しており、第2ジャーナル部51cの反対側に延びている。小径部51aの一部は、クランク軸取付け部31bの外側に位置している。なお、小径部51aはなくともよく、第1ジャーナル部51bがクランク軸取付け部31b内から当該クランク軸取付け部31bの外側に亘って延びていてもよい。
【0045】
偏心部54,55は、軸C1方向において第1ジャーナル部51bと第2ジャーナル部51cとの間に位置している。偏心部54,55には、偏心部軸受A1,A2を介して揺動歯車4が取り付けられている。偏心部軸受A1,A2は、偏心部54,55と揺動歯車4との間の相対回転を許容する。
【0046】
揺動歯車4は、外筒2内に位置しており、軸C1方向において第1部材31と第2部材32の基板部32aとに挟まれている。歯車装置X1は、偏心部軸受A1,A2をさらに備えており、揺動歯車4は、偏心部軸受A1を介して第1偏心部54に取り付けられた第1揺動歯車41と、偏心部軸受A2を介し第2偏心部55に取り付けられた第2揺動歯車42と、を有している。揺動歯車41,42は、外筒2の内径よりも少し小さい外径を有しており、その外周面に複数の外歯が形成されている。揺動歯車41,42のそれぞれの外周面に形成された外歯の歯数は、内歯ピン8の数よりも僅かに少ない。これにより、第1揺動歯車41と第2揺動歯車42とは、外筒2の内部において各外歯が各内歯ピン8に噛み合うように、互いに異なる位相で揺動回転することができる。
【0047】
第1揺動歯車41には、第1部材31の中央孔31aの位置に対応する中央孔41aと、シャフト部32bが挿入された挿入孔41bと、第1偏心部54が挿入されたクランク軸取付け部41cと、が形成されている。
【0048】
第2揺動歯車42には、第2部材32の中央孔32cの位置に対応する中央孔42aと、シャフト部32bが挿入された挿入孔42bと、第2偏心部55が挿入されたクランク軸取付け部42cと、が形成されている。
【0049】
なお、本実施形態では、揺動歯車4は、第1揺動歯車41と第2揺動歯車42との2つの揺動歯車を有しているが、これに限らず、1つの揺動歯車のみを有していてもよいし、3つ以上の揺動歯車を有していてもよい。
【0050】
歯車装置X1は、クランク軸5に駆動力を伝達して当該クランク軸5を回転させる伝達歯車7をさらに備えている。本実施形態では、伝達歯車7は、3つのクランク軸5の位置に対応して3つ設けられている。伝達歯車7は、軸C1方向において第1部材31を挟んで第2部材32とは反対側に位置している。伝達歯車7は、クランク軸5の軸本体51の小径部51aに取り付けられている。伝達歯車7は、当該伝達歯車7を軸C1方向における両側から挟み込むように軸本体51の小径部51aに取り付けられた止め輪によって、当該軸C1方向の動きを規制される。
【0051】
なお、本実施形態で伝達歯車7は、軸C1方向において第1部材31を挟んで第2部材32とは反対側に位置しているが、これに限らない。伝達歯車7は、例えば第1偏心部54と第2偏心部55との間に位置していてもよい。すなわち、伝達歯車7の配置は任意であって、歯車装置X1の態様に応じて適宜変更することができる。
【0052】
伝達歯車7は、その外周面に複数の外歯を有しており、当該複数の外歯に図略のモータの入力軸等が噛み合うことにより、当該モータの駆動力(トルク)をクランク軸5に伝達する。そして、伝達歯車7から駆動力を受けたクランク軸5の偏心部54,55が回転することにより、当該回転に応じて揺動歯車4が外筒2内において揺動回転する。これにより、外筒2とキャリア3とが相対回転することになる。
【0053】
歯車装置X1は、軸C1方向におけるクランク軸5の動きを規制する規制部材9をさらに備えている。規制部材9は、軸C1方向において互いに離間する第1規制部材91および第2規制部材92を有している。第1規制部材91と第2規制部材92とは、軸C1方向においてクランク軸5を挟み込む。これにより、第1規制部材91および第2規制部材92は、軸C1方向におけるクランク軸5の動きを規制する。
【0054】
第1規制部材91は、図3に示すように、円板形状をなしている。本実施形態では、第1規制部材91には、中央部分を軸C1方向に貫く挿入孔91bが形成されている。挿入孔91bの径は、小径部51aの径よりも少し大きく、且つ第1ジャーナル部51bの径よりも小さく設定されている。第1規制部材91は、図2に示すように、小径部51aが挿入孔91b内に位置するように配置されている。
【0055】
第1規制部材91は、当該第1規制部材91をキャリア3に固定するための雄ネジ部91aと、図略の工具を取り付け可能な取付け部91eと、を有している。雄ネジ部91aは、第1規制部材91の外周部分の全周に亘って形成されている。取付け部91eは、軸C1方向における第1規制部材91の主面に形成されている。図2に示すように、第1規制部材91は、取付け部91eが形成された主面が軸C1方向において伝達歯車7側を向くように、キャリア3に取り付けられている。本実施形態では、第1規制部材91の軸C1方向における2つの主面のうち、取付け部91eが形成された主面を一方主面91Dと称し、当該一方主面91Dの反対側に位置する主面を他方主面91Aと称する。
【0056】
なお、本実施形態では、一方主面91Dに2つの取付け部91eが形成されているが、これに限らない。取付け部91eは、1つのみ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、取付け部91eは、一方主面91Dの一部が凹むことにより形成されるため、有底であるが、これに限らない。取付け部91eは、例えば第1規制部材91の一部が一方主面91Dから他方主面91Aに亘って貫通することにより形成されてもよい。
【0058】
クランク軸取付け部31bを形成する第1部材31の内周面31cは、雌ネジ部31dと、段差部31eと、支持部31fと、を有している。本実施形態では、雌ネジ部31d、段差部31e、および支持部31fは、第1部材31の外端面31A側からこの順に連続している。
【0059】
雌ネジ部31dは、軸C1方向において、外端面31A側に位置する内周面31cの端部から当該内周面31cの中間部分に亘って形成されている。雌ネジ部31dには、雄ネジ部91aが螺合している。これにより、規制部材9は、キャリア3に取り付けられている。
【0060】
段差部31eは、雌ネジ部31dと支持部31fとを繋いでいる。段差部31eは、軸C1方向における雌ネジ部31dの第1揺動歯車41側の端部から、クランク軸5の径方向の内側に延びている。本実施形態では、段差部31eは、図2に示すように、軸C1方向に直交する方向において、第1ジャーナル部51bにおける偏心部54の反対側の端面である軸方向端面51Aと並んで位置している。
【0061】
第1規制部材91の他方主面91Aにおける外周部分は、軸C1方向において段差部31eに接触している。これにより、本実施形態では、段差部31eが第1規制部材91を位置決めする位置決め部として機能する。また、第1規制部材91の他方主面91Aにおける中央部分は、第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aに接触している。これにより、軸C1方向におけるクランク軸5の伝達歯車7側への動きが規制される。このように、本実施形態では、他方主面91Aは、軸C1方向において、段差部31eに接触する位置決め面91Bと、第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aに接触する規制面91Cと、を含んでいる。そして、位置決め面91Bと規制面91Cとが、同一面上に位置している。本実施形態では、他方主面91Aは、位置決め面91Bから規制面91Cに亘って平坦状をなしている。
【0062】
なお、本実施形態では、規制面91Cは、第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aに接触しているが、これに限らない。規制面91Cは、軸C1方向において軸方向端面51Aとの間に隙間を挟んで配置されてもよい。この場合、段差部31eは、軸C1方向において軸方向端面51Aよりも外端面31A側に位置することになる。
【0063】
支持部31fは、クランク軸5の径方向における段差部31eの内端から、軸C1方向に沿って第1揺動歯車41側に延びている。
【0064】
支持部31fは、第1クランク軸受6Aを介して第1ジャーナル部51bを回転自在に支持する。第1クランク軸受6Aは、図2に示すように、軸C1方向に延びる転動体61と、当該転動体61を回転可能に保持する保持器62と、を有している。保持器62は、クランク軸5の径方向において転動体61の内側に位置する第1部位62aと、軸C1方向において外端面31A側に位置する第1部位62aの一端に繋がる第2部位62bと、軸C1方向において第1揺動歯車41側に位置する第1部位62aの他端に繋がる第3部位62cと、を有している。転動体61は、第1部位62aに形成された転動体挿入孔に挿入されており、軸C1方向の両側において第2部位62bと第3部位62cとの間に位置している。これにより、保持器62は、軸C1方向における転動体61の動きを規制する。そして、支持部31fと第1ジャーナル部51bとの間で転動体61が自在に回転することにより、キャリア3に対してクランク軸5が相対的に回転することが可能となる。
【0065】
本実施形態では、保持器62の第2部位62bの軸C1方向における外端面は、軸C1に直交する方向において第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aと並ぶように配置されている。このため、保持器62の第2部位62bは、位置決め面91Bと規制面91Cとの間において他方主面91Aに接触している。これにより、第1規制部材91は、第1クランク軸受6Aの軸C1方向の外端面31A側への動きを規制する。
【0066】
なお、本実施形態では、他方主面91Aは、第1クランク軸受6Aにおける保持器62の第2部位62bに接触しているが、これに限らない。他方主面91Aは、軸C1方向において保持器62の第2部位62bとの間に隙間を挟んで配置されてもよい。
【0067】
第1規制部材91をキャリア3に取り付ける場合、小径部51aに伝達歯車7を取り付ける前に、第1規制部材91を他方主面91A側から小径部51aに嵌める。そして、一方主面91D側から取付け部91eに図外の工具を取り付け、当該工具を回動操作することにより、第1規制部材91の雄ネジ部91aを雌ネジ部31dに螺合させる。そして、他方主面91Aの位置決め面91Bが段差部31eに接触する位置にて第1規制部材91を位置決めし、この状態で取付け部91eから工具を取り外す。このようにして、第1規制部材91をキャリア3に取り付けることができる。
【0068】
一方、第1規制部材91をキャリア3から取り外す場合、まず小径部51aから伝達歯車7を取り外し、一方主面91D側から取付け部91eに工具を取り付ける。そして、当該工具を回動操作することにより、第1規制部材91の雄ネジ部91aと雌ネジ部31dとの螺合を解消し、当該第1規制部材91を雌ネジ部31dから取り出す。このようにして、第1規制部材91をキャリア3から取り外すことができる。
【0069】
このように、第1規制部材91は、雄ネジ部91aを有しており、当該雄ネジ部91aと雌ネジ部31dとの螺合によってキャリア3に固定されるため、当該キャリア3に対して取り付けあるいは取り外しを繰り返し行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、内周面31cが段差部31eを有しているが、これに限らず、内周面31cが段差部31eを有していなくともよい。この場合、内周面31cが雌ネジ部31dから支持部31fに亘って軸C1方向に延び、雌ネジ部31dが内周面31cの外端面31A側の端部から中間部分に亘って形成される。そして、内周面31cの中間部分から外端面31Aとは反対側の端部までの内周面31cは、雌ネジ部31dが形成されていないねじれのない内周面となる。この場合、第1規制部材91をキャリア3に取り付ける際には、他方主面91Aが前記中間部分に至るまで工具を回動操作すればよい。
【0071】
第2規制部材92は、円板形状をなしている。本実施形態では、第2規制部材92には、第1規制部材91と同様に、中央部分に挿入孔92bが形成されている。また、第2規制部材92は、第1規制部材91と同様に、雄ネジ部92aと、取付け部92eと、を有している。また、クランク軸取付け部32dを形成する第2部材32の内周面32eは、第1部材31の内周面31cと同様に、雌ネジ部32gと、段差部32hと、支持部32iと、を有している。また、第2クランク軸受6Bは、第1クランク軸受6Aと同様に、転動体61と、第1部位62a、第2部位62b、および第3部位62cを有する保持器62と、を有している。第2規制部材92、第2部材32の内周面32e、および第2クランク軸受6Bのそれぞれは、第1規制部材91、第1部材31の内周面31c、および第1クランク軸受6Aのそれぞれに対して軸C1方向に対称となるように設けられている。このため、第2規制部材92、第2部材32の内周面32e、および第2クランク軸受6Bのそれぞれの形状および配置については、詳細な説明を省略する。
【0072】
第2規制部材92は、軸C1方向において、段差部32hに接触しており、この位置にて第2ジャーナル部51cの外端面32A側の端面である軸方向端面51Bに対向している。これにより、第2規制部材92は、軸C1方向におけるクランク軸5の外端面32A側への動きを規制する。また、第2規制部材92は、軸C1方向において、第2クランク軸受6Bにおける保持器62の第2部位62bに対向している。これにより、第2規制部材92は、軸C1方向におけるクランク軸5の外端面32A側への動きを規制する。
【0073】
なお、本実施形態では、第2ジャーナル部51cは、外端面32Aよりも軸C1方向の外側に突出していない。このため、第2規制部材92には、挿入孔92bが形成されていなくともよい。
【0074】
第2規制部材92をキャリア3に取り付ける場合、取付け部92eに工具を取り付けた状態で、最外面32A側から第2部材32のクランク軸取付け部32dに第2規制部材92を挿入する。そして、工具を回動操作することにより、第2規制部材92の雄ネジ部92aを雌ネジ部32gに螺合させる。そして、第2規制部材92が段差部32hに接触する位置にて当該第2規制部材92を位置決めし、この状態で取付け部92eから工具を取り外す。このようにして、第2規制部材92をキャリア3に取り付けることができる。
【0075】
一方、第2規制部材92をキャリア3から取り外す場合、まず外端面32A側から取付け部92eに工具を取り付ける。そして、当該工具を回動操作することにより、第2規制部材92の雄ネジ部92aと雌ネジ部32gとの螺合を解消し、当該第2規制部材92をクランク軸取付け部32d内から取り出す。このようにして、第2規制部材92をキャリア3から取り外すことができる。
【0076】
このように、第2規制部材92は、雄ネジ部92aを有しており、当該雄ネジ部92aと雌ネジ部32gとの螺合によってキャリア3に固定されるため、当該キャリア3に対して取り付けあるいは取り外しを繰り返し行うことができる。
【0077】
以上のとおり、歯車装置X1では、キャリア3の雌ネジ部31d,32gに第1,第2規制部材91,92の雄ネジ部91a,92aが螺合することにより、第1,第2規制部材91,92がキャリア3に固定されている。これにより、当該規制部材9が軸C1方向におけるクランク軸5の動きを規制する。このため、規制部材9とは別に当該規制部材9をキャリア3に固定するための止め輪等を設ける必要がなく、規制部材9の厚みを十分に大きくすることができる。そのため、クランク軸5から規制部材9に外力が加わった場合に、当該規制部材9が撓むことを抑止することができる。
【0078】
さらに、歯車装置X1では、第1,第2規制部材91,92がキャリア3に形成された段差部31e,32hによって位置決めされるため、キャリア3に支持されるクランク軸5に対する規制部材9の相対位置を適切に決定することができる。しかも、第1,第2規制部材91,92が段差部31e,31hに位置決めされた状態で雄ネジ部91a,92aが雌ネジ部31d,32gに螺合されるため、規制部材9をキャリア3に対して強固に固定することができる。
【0079】
さらに、歯車装置X1では、第1規制部材91は、軸C1方向において段差部31eと位置決め面91Bとが接触する位置にて位置決めされ、当該位置決め面91Bと同一面上に位置する規制面91Cにおいて、軸C1方向におけるクランク軸5の動きを規制する。このため、第1規制部材91の厚みによらず、段差部31eとクランク軸5における第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aとの位置関係によって、クランク軸5に対する第1規制部材91の規制面91Cの相対位置が決定することになる。そのため、製造誤差による第1規制部材91の厚みのばらつきによってクランク軸5に対する第1規制部材91の規制面91Cの相対位置が適切な位置からずれてしまうことを抑止できる。なお、第2規制部材92についても、第1規制部材91と同様の形状を有しているため、製造誤差による第2規制部材92の厚みのばらつきによってクランク軸5に対する第2規制部材92の規制面の相対位置が適切な位置からずれてしまうことを抑止できる。
【0080】
さらに、歯車装置X1では、取付け部91e,92eに工具を取り付け、当該工具を操作しつつ雄ネジ部91a,92aを雌ネジ部31d,32gに螺合させることにより、第1,第2規制部材91、92をキャリア3に容易に取り付けることができる。しかも、キャリア3に取り付けられた第1,第2規制部材91,92の取付け部91e,92eに工具を取り付け、当該工具を操作しつつ雄ネジ部91a,92aと雌ネジ部31d,32gとの螺合を解除することにより、第1,第2規制部材91,92をキャリア3から容易に取り外すことができる。このように、歯車装置X1では、第1,第2規制部材91,92が取付け部91e,92eを有するため、キャリア3に対する第1,第2規制部材91,92の取り付けおよび取り外しが容易となる。
【0081】
さらに、歯車装置X1では、第1規制部材91が第1部材31の外端面31A側からキャリア3に対して着脱可能となるようにクランク軸取付け部31b内に配置されており、第2規制部材92が第2部材32の外端面32A側からキャリア3に対して着脱可能となるようにクランク軸取付け部32d内に配置されている。このため、例えば第1,第2規制部材91,92を交換する必要が生じた場合に、締結部材T1を取り外すことによりキャリアを第1部材31と第2部材32とに分解しなくとも、第1,第2規制部材91,92を着脱することができる。このため、作業性が向上する。
【0082】
次に、図4および図5を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例1について説明する。
【0083】
図4および図5に示すように、変形例1に係る歯車装置X1では、第1規制部材91は、円環状をなす環状部91cと、一方主面91D側に位置する環状部91cの端部から径方向の外側に張り出したフランジ部91dと、を有している。フランジ部91dの外径は、雌ネジ部31dの内径よりも大きく設定されている。
【0084】
フランジ部91dは、軸C1方向において第1部材31の外端面31Aに対向している。そして、第1規制部材91は、軸C1方向においてフランジ部91dの外端面31A側の端面が当該外端面31Aに接触する位置にて位置決めされている。このため、変形例1では、軸C1方向におけるフランジ部91dの外端面31A側の端面が位置決め面91Bとなり、外端面31Aのうち位置決め面91Bに接触する部位が位置決め部として機能する。
【0085】
変形例1では、第1規制部材91は、フランジ部91dを有しており、外端面31Aに接触する位置決め面91Bが規制面91Cを含む他方主面91Aとは別の面上に位置している。そして、位置決め面91Bが外端面31Aに接触する位置において、他方主面91Aと段差部91eとの間には、隙間が形成されている。すなわち、変形例1では、規制面91Cとは別の面上に位置する位置決め面91Bによって第1規制部材91の位置決めが行われるため、段差部31eを位置決め部として機能させる必要がない。このため、段差部31eよりも外端面31A側に位置する内周面31cに対して、段差部31eの近傍まで雌ネジ部31dを形成する必要がなく、加工が煩雑となることを抑止できる。
【0086】
なお、変形例1のように、フランジ部91dの位置決め面91Bと外端面31Aとによってキャリア3に対する第1規制部材91の位置決めを行う場合、段差部31eは位置決め部として機能しないため、省略することができる。この場合、第1部材31の内周面31cは、雌ネジ部31dから支持部31fに亘って軸C1方向に沿って延びることになる。
【0087】
また、変形例1では、規制部材9のうち第1規制部材91のみを説明したが、第2規制部材92についても同様の形状を有していてもよい。
【0088】
次に、図6を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例2について説明する。
【0089】
図6に示すように、変形例2に係る歯車装置X1では、第1規制部材91は、本体部911と、当該本体部と別体のワッシャ912と、を有している。変形例2では、本体部911は、金属材料によって形成されており、ワッシャ912は、樹脂材料によって形成されている。
【0090】
本体部911は、円板形状をなしている。本実施形態では、本体部911には、中央部分を軸C1方向に貫く挿入孔911bが形成されている。挿入孔911bの径は、小径部51aの径よりも少し大きく設定されている。本体部911は、小径部51aが挿入孔911b内に位置するように配置されている。
【0091】
本体部911は、雌ネジ部31dに螺合する雄ネジ部911aと、図略の工具を取り付け可能な取付け部911eと、を有している。取付け部911eは、軸C1方向における本体部911の主面に形成されている。本体部911は、取付け部911eが形成された主面が軸C1方向において伝達歯車7側を向くように、キャリア3に取り付けられている。本実施形態では、本体部911の軸C1方向における2つの主面のうち、取付け部911eが形成された主面を一方主面911Dと称し、当該一方主面911Dの反対側に位置する主面を他方主面911Aと称する。
【0092】
本体部911は、軸C1方向において、他方主面911Aの外周部分が段差部31eの接触する位置にて位置決めされている。すなわち、他方主面911Aは、その外周部分に第1規制部材91を位置決めするための位置決め面911Bを有している。
【0093】
ワッシャ912は、円板形状をなしている。本実施形態では、ワッシャ912には、中央部分を軸C1方向に貫いており、小径部51aが挿入される挿入孔912aが形成されている。ワッシャ912の外径は、支持部31fの内径よりも少し小さく設定されている。
【0094】
ワッシャ912は、本体部911の他方主面911Aと第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aとの間に位置している。ワッシャ912は、軸C1方向において本体部911の他方主面911Aに対向する一方主面912Aと、当該一方主面912Aの反対側に位置する他方主面912Bと、を有している。そして、他方主面912Bの内周部分は、軸C1方向において第1ジャーナル部51bの軸方向端面51Aに対向している。変形例2では、当該他方主面912Bの内周部分がクランク軸5の軸C1方向の動きを規制する規制面912Cとなる。変形例2では、規制面912Cは、軸方向端面51Aに接触している。
【0095】
また、ワッシャ912の他方主面912Bは、規制面912Cよりも径方向の外側にて、軸C1方向において第1クランク軸受6Aにおける保持器62の第2部位62bに対向している。変形例2では、他方主面912Bは、第2部位62bに接触している。
【0096】
ところで、例えば本体部911およびクランク軸5の双方が金属材料によって形成される場合、第1ジャーナル部51bが本体部911の他方主面911Aに接触した状態でクランク軸5が回転すると、本体部911およびクランク軸5の双方が摩耗する虞がある。
【0097】
一方、変形例2では、第1規制部材91が本体部911とは別体のワッシャ912を有しており、本体部911と第1ジャーナル部51bとの間にワッシャ110が設けられることにより、本体部911と第1ジャーナル部51bとが直接接触しない。しかも、ワッシャ110が樹脂材料によって形成されている。このため、本体部911およびクランク軸5の双方が摩耗することを抑止できる。
【0098】
しかも、変形例2では、ワッシャ912は、保持器62の第2部位62bと本体部911の他方主面911Aとの間にも位置しているため、例えば保持器62が金属材料によって形成されている場合に、保持器62と本体部911とが接触することにより双方に摩耗が生じることを抑止できる。
【0099】
なお、変形例2では、第1規制部材91が本体部911とワッシャ912とを有する例についてのみを説明したが、第2規制部材92についても同様に、本体部と当該本体部とは別体のワッシャとを有していてもよい。
【0100】
また、変形例2では、本体部911とワッシャ912とが別体に形成されており、当該本体部911とワッシャ912とが接合されていないが、これに限らない。例えば、本体部911とワッシャ912とがインサート成型によって一体に形成されてもよいし、別体に形成された本体部911とワッシャ912とが接着剤あるいはボルト等によって互いに接合されることにより一体化されてもよい。なお、第2規制部材92についても同様である。
【0101】
次に、図7を参照しつつ、変形例2に係る歯車装置X1の更なる変形例3について説明する。
【0102】
図7に示すように、変形例3に係る歯車装置X1では、第1規制部材91は、変形例2と同様に、本体部911と、当該本体部911とは別体のワッシャ912と、を有している。
【0103】
変形例3に係るワッシャ912の外径は、変形例2に係るワッシャ911の外径よりも大きく設定されている。具体的には、変形例3では、ワッシャ912の外径は、支持部31fの内径よりも少し大きく設定されている。そして、ワッシャ912における他方主面912Bの外周部分は、軸C1方向において段差部31eに接触しており、これにより第1規制部材91の位置決めがなされている。すなわち、変形例3では、本体部911の他方主面912Aが段差部31eに接触しておらず、ワッシャ912の他方主面912Bが段差部31eに接触する位置決め面912Dとクランク軸5の軸C1方向の動きを規制する規制面912Cとを有している。
【0104】
なお、変形例3では、第1規制部材91が本体部911とワッシャ912とを有する例についてのみを説明したが、第2規制部材92についても同様に、本体部と当該本体部とは別体のワッシャとを有していてもよい。
【0105】
また、変形例3では、変形例2と同様に、本体部911とワッシャ912とが別体に形成されており、当該本体部911とワッシャ912とが接合されていないが、これに限らない。例えば、本体部911とワッシャ912とがインサート成型によって一体に形成されてもよいし、別体に形成された本体部911とワッシャ912とが接着剤あるいはボルト等によって互いに接合されることにより一体化されてもよい。なお、第2規制部材92についても同様である。
【0106】
次に、図8を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例4について説明する。
【0107】
図8に示すように、変形例4に係る歯車装置X1では、キャリア3における第2部材32のクランク軸取付け部32dは、有底の穴によって形成されている。すなわち、変形例4では、クランク軸取付け部32dは、基板部32aを貫通する孔によって形成されるものでなく、基板部32aにおける第2揺動歯車42側の端面の一部が外端面32A側に凹むことにより形成されている。第2ジャーナル部51cおよび第2クランク軸受6Bは、クランク軸取付け部32d内に配置されており、第2ジャーナル部51cの軸方向端面51Bおよび第2クランク軸受6Bの保持器62の第2部位62bがクランク軸取付け部32dの底面32kに接触している。これにより、クランク軸5および第2クランク軸受6Bは、軸C1方向における外端面32A側への動きを規制される。
【0108】
このように、変形例4では、クランク軸取付け部32dの底面32kによって、軸C1方向におけるクランク軸5の外端面32A側への動きが規制されるため、第2規制部材92が不要である。
【0109】
なお、底面32kは、軸C1方向において第2ジャーナル部51cの軸方向端面51Bに対向することにより、軸C1方向におけるクランク軸5の外端面32A側への動きを規制するように配置されていてればよい。このため、底面32kは、例えば軸方向端面51Bに接触していなくともよい。また、底面32kには、例えば当該底面32kの一部を軸C1方向に貫く貫通孔が形成されていてもよい。
【0110】
また、変形例4では、第2ジャーナル部51cの軸方向端面51Bおよび第2クランク軸受6Bの保持器62の第2部位62bがクランク軸取付け部32dの底面32kに接触しているが、これに限らない。例えば、軸C1方向において、軸方向端面51Bおよび保持器62の第2部位62bと底面32kとの間に樹脂材料によって形成されたワッシャを配置してもよい。
【0111】
次に、図9および図10を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例5について説明する。
【0112】
図9に示すように、変形例5に係る歯車装置X1では、軸C1方向において第1規制部材91と第2規制部材92とが偏心部54,55を挟み込むように設けられることにより、軸C1方向におけるクランク軸5の動きが規制される。
【0113】
第1規制部材91の挿入孔91bの径は、第1ジャーナル部51bの外径よりも少し大きく、第1偏心部54の外径よりも少し小さく設定されている。そして、挿入孔91bには、第1ジャーナル部51bが挿入されている。
【0114】
図10に示すように、第1部材31の内周面31cは、雌ネジ部31dと、段差部31eと、支持部31fと、を有している。雌ネジ部31d、段差部31e、および支持部31fは、軸C1方向において外端面31Aの反対側に位置する第1部材31の内端面31B側からこの順に連続している。
【0115】
第1規制部材91は、軸C1方向において、取付け部91eが形成された一方主面91Dが第1揺動歯車41側を向くように、キャリア3の第1部材31に取り付けられている。第1規制部材91は、雄ネジ部91aが雌ネジ部31dに螺合するとともに、一方主面91Dの反対側に位置する他方主面91Aの外周部分が段差部31eに接触する位置にて位置決めされている。すなわち、変形例5では、他方主面91Aは、第1規制部材91を位置決めするために段差部31eに接触する位置決め面91Bを有している。
【0116】
位置決め面91Bが段差部31eに接触した状態において、第1規制部材91の一方主面91Dの内周部分は、第1偏心部54の第1ジャーナル部51b側の端面である軸方向端面54Aに対向している。これにより、第1規制部材91は、軸C1方向におけるクランク軸5の外端面31A側への動きを規制する。すなわち、変形例5では、一方主面91Dは、軸C1方向において軸方向端面54Aに対向することによりクランク軸5の動きを規制する規制面91cを有している。
【0117】
変形例5では、第1規制部材91の内縁は、第1偏心部54の偏心方向とは反対側における第1偏心部54の外縁よりも内側(軸本体51の軸心側)に位置している。これにより、クランク軸5の周方向の全体に亘って第1規制部材91と第1偏心部54の軸方向端面54Aとが接することになる。このため、第1偏心部54の位相によらず、軸C1方向において第1規制部材91と第1偏心部54とが常に対向することになる。
【0118】
偏心部軸受A1は、転動体A3と、当該転動体A3を保持する保持器A4と、を有している。変形例5では、第1規制部材91は、軸C1方向において偏心部軸受A1の保持器A4における外端面31A側の端部A5に対向している。これにより、第1規制部材91は、軸C1方向における偏心部軸受A1の外端面31A側への動きも規制している。
【0119】
第2規制部材92は、第1規制部材91と同様の形状を有しており、当該第2規制部材92の挿入孔92bに第2ジャーナル部51cが挿入されている。また、第2部材32の内周面32eは、第1部材31の内周面31cと同様に、雌ネジ部32gと、段差部32hと、支持部32iと、を有している。雌ネジ部32g、段差部32h、および支持部32iは、軸C1方向において外端面32Aの反対側に位置する第2部材32の内端面32B側からこの順に連続している。また、偏心部軸受A2は、偏心部軸受A1と同様の形状を有している。第2規制部材92、第2部材32の内周面32e、および偏心部軸受A2のそれぞれは、第1規制部材91、第1部材31の内周面31c、および偏心部軸受A1のそれぞれに対して軸C1方向に対称となるように設けられている。このため、第2規制部材92、第2部材32の内周面32e、および偏心部軸受A2のそれぞれの形状および配置については、詳細な説明を省略する。
【0120】
第2規制部材92は、雌ネジ部32gに螺合するとともに、段差部32hに接触する位置に位置決めされている。そして、第2規制部材92は、軸C1方向における段差部32hの反対側において第2偏心部55の第2ジャーナル部51c側の端面である軸方向端面55Aに対向している。変形例5では、第2規制部材92の内縁は、第2偏心部55の偏心方向とは反対側において第2偏心部55の外縁よりも内側(軸本体51の軸心側)に位置している。これにより、クランク軸5の周方向の全体に亘って第2規制部材92と第2偏心部55の軸方向端面55Aとが接することになる。このため、第2偏心部55の位相によらず、軸C1方向において第2規制部材92と第2偏心部55とが常に対向することになる。
【0121】
また、変形例5では、第2規制部材92は、軸C1方向において偏心部軸受A2の保持器における外端面32A側の端部に対向している。これにより、第2規制部材92は、軸C1方向における偏心部軸受A2の外端面32A側への動きも規制している。
【0122】
次に、図11を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例6について説明する。
【0123】
図11に示すように、変形例6に係る歯車装置X1の第1規制部材91では、取付け部91eが一方向に延びる溝形状をなしている。なお、第2規制部材92の取付け部92eについても、第1規制部材91の取付け部91eと同様に、一方向に延びる溝形状をなしていてもよい。
【0124】
このように、取付け部91e,92eの形状は、任意であって、例えば当該取付け部91e,92eに取り付ける工具の形状に合わせて適宜変更することができる。
【0125】
次に、図12を参照しつつ、本実施形態に係る歯車装置X1の変形例7について説明する。
【0126】
図12に示すように、変形例7に係る歯車装置X1の第1規制部材91では、挿入孔91bが矩形状をなしており、当該挿入孔91bが取付け部91eとして機能する。すなわち、変形例7では、第1規制部材91の挿入孔91bに対して、当該挿入孔91bの形状に合った矩形状の工具を挿入し、当該工具を回動させることにより、雄ネジ部91aを雌ネジ部31dに螺合させることができる。なお、第2規制部材92についても、第1規制部材91と同様に、挿入孔92bが矩形状をなしており当該挿入孔92bが取付け部92eとして機能してもよい。
【0127】
このように、変形例7では、クランク軸5の一部を挿入するための挿入孔91b,92bが工具の取付け部91e,92eとしても機能するため、当該挿入孔91b,92bとは別に取付け部91e,92eを形成する必要がない。
【0128】
以上説明した本実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態および変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0129】
例えば、上記の実施形態および変形例では、クランク軸5の軸本体51は、小径部51aよりも外径が大きいジャーナル部として、第1,第2ジャーナル部51b,51cの2つのジャーナル部を有しているが、これに限らない。軸本体51は、第1,第2ジャーナル部51b,51cのいずれか一方のみを有しており、クランク軸5が当該一のジャーナル部にてキャリア3に支持されていてもよい。
【0130】
例えば、上記の実施形態および変形例では、クランク軸5の軸本体51は、小径部51aと、当該小径部51aよりも外径が大きい第1,第2ジャーナル部51b,51cと、を有しているが、これに限らない。軸本体51の外径は、当該軸本体51の長さ方向の全体に亘って一定であってもよい。このような場合であっても、軸本体51が軸C1に直交する軸方向端面を有しており、当該軸方向端面が軸C1方向において規制部材9に対向していれば、規制部材9によってクランク軸5の軸C1方向の動きを規制することができる。
【符号の説明】
【0131】
X1 歯車装置
2 外筒
3 キャリア
5 クランク軸
9 規制部材
31b,32d クランク軸取付け部(貫通孔)
31c,32e 内周面
31d,32g 雌ネジ部
31e,32h 段差部(位置決め部)
91a,92a,911a 雄ネジ部
91e,92e,911e 取付け部
91B,911B,912D 位置決め面
91C,912C 規制面
図1
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