特許第6554289号(P6554289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554289
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】収容袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20190722BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20190722BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B65D85/00 L
   B65D33/00 Z
   B65D30/02
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-19863(P2015-19863)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-141454(P2016-141454A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】松谷 直樹
【審査官】 田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−362661(JP,A)
【文献】 特開2010−254361(JP,A)
【文献】 特開2010−119459(JP,A)
【文献】 特開2014−023467(JP,A)
【文献】 特開2011−116434(JP,A)
【文献】 特開2012−076768(JP,A)
【文献】 特開2005−096466(JP,A)
【文献】 特開2006−143272(JP,A)
【文献】 特開平10−147377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
B65D 30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填時温度が120℃以上かつ粘着性又は接着性の収容対象物を収容する収容袋であって、
耐熱温度が前記充填時温度より高温の耐熱性樹脂からなる袋本体と、
前記袋本体における前記収容対象物と接するべき第1面に被膜された離型層と
を備え、前記袋本体が、筒状フィルムからなり、かつ前記筒状フィルムの筒長方向の一端部が、溶着にて封止されることによって封止部となっており、
前記第1面が、前記袋本体の外面を構成することによって、前記離型層が、前記袋本体の外面を覆っており、
前記封止部が、前記袋本体の外部に配置され、前記離型層が前記封止部の外側面にも被膜されていることを特徴とする収容袋。
【請求項2】
充填時温度が120℃以上かつ粘着性又は接着性の収容対象物を収容する収容袋であって、
耐熱温度が前記充填時温度より高温の耐熱性樹脂からなる袋本体と、
前記袋本体における前記収容対象物と接するべき第1面に被膜された離型層と
を備え、前記袋本体が、筒状フィルムからなり、かつ前記筒状フィルムの筒長方向の一端部が、溶着にて封止されることによって封止部となっており、
前記第1面が、前記袋本体の内面を構成することによって、前記離型層が、前記袋本体の内面を覆っており、
前記封止部が、前記袋本体の内部に配置され、前記離型層が前記封止部の外側面にも被膜されていることを特徴とする収容袋。
【請求項3】
前記離型層が、前記封止部の端面にも被膜されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収容袋。
【請求項4】
前記収容対象物が、ポリイソブチレン樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の収容袋。
【請求項5】
前記耐熱性樹脂の融点が、180℃以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の収容袋。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂が、エンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の収容袋。
【請求項7】
前記耐熱性樹脂が、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の収容袋。
【請求項8】
前記離型層が、シリコーン樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の収容袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容袋に関し、特に、例えばポリオレフィン系樹脂等の汎用樹脂の融点以上に加熱されることで軟化して充填可能となる粘着性又は接着性の収容対象物を収容するのに適した収容袋に関する。
【背景技術】
【0002】
収容袋の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等を用いるのが一般的である。
一方、ガムベースやホットメルト接着剤等の収容対象物を収容袋に収容する場合、収容対象物を加熱して粘度を低くすることで流動性を持たせたほうが収容袋に充填しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5590489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収容対象物によっては、ポリオレフィン等の一般的な樹脂の耐熱温度(例えば120℃程度)よりも高温加熱しないと、充填可能な粘度にならないものも有り得る。また、粘度が低くなると同時に粘着性又は粘着性が増すような収容対象物も有り得る。
本発明は、このような、充填時温度が高く、かつ粘着性又は接着性の収容対象物を収容するのに適した収容袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明は、充填時温度が120℃以上かつ粘着性又は接着性の収容対象物を収容する収容袋であって、
耐熱温度が前記充填時温度より高温の耐熱性樹脂からなる袋本体と、
前記袋本体における前記収容対象物と接するべき第1面に被膜された離型層と
を備えたことを特徴とする。
前記収容対象物を充填時温度まで加熱して軟化させることで、収容袋に容易に充填することができる。前記収容対象物が充填時温度まで加熱されていても、収容袋が溶けたり変質したりするのを防止でき、収容対象物を安定的に収容することができる。また、離型層が収容対象物と接することで、収容対象物を使用する際は、収容袋を収容対象物から容易に剥離することができる。
【0006】
前記収容対象物は、少なくとも加熱溶融時に粘着性又は接着性を具備していれば良く、常温では粘性又は接着性が低下してもよい。
前記収容対象物は、例えば、ポリイソブチレン樹脂にて構成されている。
前記収容対象物の充填時温度は、120℃程度以上であり、好ましくは150℃〜200℃程度、より好ましくは170℃程度である。
これに対し、前記耐熱性樹脂の融点は、好ましくは180℃程度以上、より好ましくは200℃程度以上である。
【0007】
前記耐熱性樹脂は、エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。これによって、耐熱性樹脂の耐熱性を確保できる。
具体的には、前記耐熱性樹脂は、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれる1つであることが好ましい。
【0008】
前記離型層は、シリコーン樹脂にて構成されていることが好ましい。これによって、離型層の耐熱性を確保できる。
【0009】
前記袋本体が、筒状フィルムからなり、かつ前記筒状フィルムの筒長方向の一端部が、溶着にて封止されることによって封止部となっていることが好ましい。
前記収容袋の作製時には、前記第1面が、前記袋本体の外面を構成することによって、前記離型層が、前記袋本体の外面を覆っていることが好ましい。これによって、離型層は、袋本体の外面に塗布すればよく、塗布作業を容易化できる。
前記収容対象物を充填する際は、収容袋をめくって内面と外面を裏返す。これによって、前記封止部が、前記袋本体の内部に配置される。かつ、前記第1面が、前記袋本体の内面を構成することによって、前記離型層が、前記袋本体の内面を覆うことになる。したがって、充填した収容対象物が、離型層と接することになる。これによって、収容対象物と収容袋との剥離容易性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の収容袋によれば、収容対象物の充填時の加熱温度に確実に耐えることができ、前記収容対象物を安定的に収容できる。また、前記収容対象物が粘着性又は接着性であっても、使用に際して収容対象物と収容袋とを確実に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態に係る収容袋を、作製〜収容対象物の充填前の状態で示す正面図である。図1(b)は、前記収容袋を、収容対象物の充填時の状態で示す正面図である。
図2図2は、図1(a)のII−II線に沿う、前記収容袋の断面図である。
図3図3は、前記収容袋の一部を拡大して示す、図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4図4は、前記収容袋を作製〜収容対象物の充填前の状態で示す、図1(a)のIV−IV線に沿う断面図である。
図5図5は、前記収容袋を収容対象物の充填時の状態で示す、図1(b)のV−V線に沿う断面図である。
図6図6は、収容袋の製造工程を示し、同図(a)は、袋本体となるべき筒状フィルム連続体の正面図である。同図(b)は、離型層の塗布工程、封止工程及び切断工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、収容袋1を示したものである。同図(b)において矢印にて示すように、収容袋1の袋内室1a(内部)に収容対象物9が収容される。収容対象物9は、例えばガムベースであり、その主成分は、ポリイソブチレン樹脂であり、好ましくは中分子量ポリイソブチレンである。ポリイソブチレンの重合度は、好ましくは50〜1000程度、より好ましくは100〜500程度である。収容対象物9は、常温では半固体状になっており、充填時温度まで加熱されることで軟化して、収容袋1内に充填可能な(具体的には水飴と同程度)の粘度になり、かつ粘着性が高まる。収容対象物9の充填時温度は、ポリオレフィン等の汎用樹脂の融点(例えば80℃〜120℃程度)より高く、好ましくは150℃〜200℃程度、より好ましくは170℃程度である。
【0013】
図3及び図4に示すように、収容袋1は、袋本体10と、離型層20とを備えている。図2に示すように、袋本体10は、筒状フィルム11にて構成されている。袋本体10すなわち筒状フィルム11の厚みは、好ましくは数十μm〜1mm以下程度である。図3図5において、筒状フィルム11の厚みは誇張されている。筒状フィルム11の材質は、耐熱性樹脂である。この耐熱性樹脂の融点(耐熱温度)は、ポリオレフィン等の汎用樹脂の融点(例えば80℃〜120℃程度)よりも十分に高く、更には収容対象物9の充填時温度より高温であり、好ましくは180℃程度以上、より好ましくは200℃以上である。そのような耐熱性樹脂として、エンジニアリングプラスチックを用いることができ、詳しくは、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を用いることができる。好ましくは、筒状フィルム11は、ポリアミドにて構成されており、より好ましくは6,6ポリアミド(6,6−ナイロン(登録商標))にて構成されている。
【0014】
図1(a)に示すように、筒状フィルム11の筒長方向の一端部(同図において下端部)が、溶着(ヒートシール)によって封止されることによって、封止部13を構成している。筒状フィルム11の他端部(同図において上端部)は、開口部10cとなっている。
【0015】
図1(a)及び図3に示すように、筒状フィルム11の第1面11aの全域に離型層20(図1において網模様の部分)が被膜されている。離型層20は、例えばシリコーン樹脂にて構成されている。離型層20の厚みは、好ましくは数μm以下程度である。なお、図3図5において、離型層20の厚みは誇張されている。
【0016】
図1(a)及び図4に示すように、収容袋1の作製時(収容対象物9の充填前)においては、第1面11aは、外方へ向けられ、収容袋1の外面を構成している。したがって、収容袋1の外面が離型層20で覆われている。収容袋1の内面(第1面11aの裏側の第2面11b)には、離型層20が設けられていない。
【0017】
これに対して、図1(b)及び図5に示すように、収容対象物9の充填時においては、収容袋1の内面と外面が裏返されている。これによって、第1面11aが、袋内室1aに面することで収容袋1の内面を構成し、第2面11bが外方を向くことで収容袋1の外面を構成している。したがって、収容袋1の内面が離型層20で覆われている。筒状フィルム11の下端部は、袋本体10の内側へ折り返され、封止部13が、袋内室1aの内部に配置されている。
【0018】
収容袋1は、次のようにして製造され、かつ使用される。
<筒状フィルム連続体作製工程>
図6(a)に示すように、6,6ポリアミド等の耐熱性樹脂を筒状に成形することで、複数の筒状フィルム11となるべき筒状フィルム連続体19を作製する。例えばインフレーションフィルム成型機(図示せず)等を用いることによって、耐熱性樹脂を筒形の連続フィルム状に成形できる。この筒状フィルム連続体19の外周面が、第1面11aに対応する第1連続面19aとなる。
【0019】
<離型層塗布工程>
図6(b)に示すように、この筒状フィルム連続体19の第1連続面19aの全周に離型層20を塗布する。塗布操作は、例えば一対の塗布ローラー2を用いて行う。この段階では、第1連続面19a(ひいては第1面11a)は外方へ向けられているから、離型層20を容易に塗布できる。
【0020】
<封止工程>
次に、ヒートシール機3を用いて、筒状フィルム連続体19の筒長方向(図6(b)において左右)の所定位置をヒートシールによって封止することで封止部13を形成する。
<切断工程>
続いて、カッター4を用いて、筒状フィルム連続体19の封止部13の近傍位置を切断する。これによって、筒状フィルム11が切り出される。
封止工程と切断工程の順序が逆であってもよい。溶着して封止すると同時に切断(溶断)することしてもよい。
【0021】
これによって、収容袋1が出来上がる。この段階では、第1面11aが収容袋1の外側に向けられ、第2面11bが収容袋1の内側に向けられている。したがって、収容袋1の外面が離型層20によって被覆された状態になっている。
【0022】
<裏返し工程>
図1(b)及び図5に示すように、収容袋1に収容対象物9を充填する際は、収容袋1をめくって裏返す。これによって、第2面11bが収容袋1の外側へ向けられるとともに、第1面11aが収容袋1の内側へ向けられる。したがって、収容袋1の内面が離型層20にて被膜された状態になる。また、収容袋1の底部が内側へ折り返され、封止部13が袋内室1aの内部に配置される。
【0023】
<充填工程>
別途、収容対象物9を例えば170℃程度まで加熱して軟化させる。この収容対象物9を開口部10cから袋内室1aに注入して充填する。
ここで、袋本体10は、6,6ポリアミド等の耐熱性樹脂で構成され、その融点は200℃以上であるから、収容対象物9の充填時温度に十分に耐えることができる。また、離型層20は、耐熱性のシリコーン樹脂にて構成されているため、前記充填時温度に十分に耐えることができる。これによって、収容袋1が収容対象物9の熱で溶けたり変質したりするのを回避でき、収容対象物9を袋内室1aに安定的に収容することができる。
【0024】
充填された収容対象物9は、直接には離型層20と接する。したがって、収容対象物9を使用する際は、収容対象物9を収容袋1から確実かつ容易に剥離することができる。これによって、収容袋1の使用容易性を確保できる。
【0025】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、収容対象物9は、ポリオレフィン系樹脂等の融点(例えば120℃程度)以上に加熱されることで充填可能な流動体になる粘着性又は接着性物質であればよく、ガムベースに限られず、ホットメルト接着剤等であってもよい。
離型層20の材質は、シリコーン系樹脂に限られず、フッ素系樹脂であってもよい。
筒状フィルム11(ないしは筒状フィルム連続体19)の材質は、ポリアミド系樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、PEEK等であってもよい。
離型層20を封止部13の端面等にも被膜してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えばポリイソブチレンからなるガムベースを収容する収容袋に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 収容袋
1a 袋内室(収容袋の内部)
9 収容対象物
10 袋本体
13 封止部
11 筒状フィルム
11a 第1面
20 離型層
図1
図2
図3
図4
図5
図6