特許第6554295号(P6554295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554295観測データ送信装置、観測システム、および、観測データ送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554295
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】観測データ送信装置、観測システム、および、観測データ送信方法
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20190722BHJP
   G08C 25/00 20060101ALI20190722BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20190722BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20190722BHJP
   G01S 19/37 20100101ALI20190722BHJP
【FI】
   G08C17/00 Z
   G08C25/00 G
   G08C19/00 H
   G01D21/00 D
   G01S19/37
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-51921(P2015-51921)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-170757(P2016-170757A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 一典
(72)【発明者】
【氏名】菅原 央也
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−185459(JP,A)
【文献】 特開2006−308431(JP,A)
【文献】 特開2007−184754(JP,A)
【文献】 特開2001−208570(JP,A)
【文献】 特開平02−049117(JP,A)
【文献】 特開平06−189009(JP,A)
【文献】 特開2012−235311(JP,A)
【文献】 特開2014−189975(JP,A)
【文献】 特開2014−155141(JP,A)
【文献】 特開2007−052588(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0161958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00−19/55
G01S 5/00− 5/14
G08C 17/00−25/00
G01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS信号を受信するGNSSアンテナと、
前記GNSSアンテナで受信した前記GNSS信号から観測データを生成するGNSS受信機と、
無線通信を制御する無線LAN制御部と、
前記観測データを記憶する記憶部と、
記無線通信による前記観測データのアップロードを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記無線通信の未確立を検出すると、前記アップロードが未完了の観測データを前記記憶部に記憶し、
前記無線通信の再確立を検出すると、最新の観測データに続けて、前記記憶部に記憶されている観測データを、新しく生成された順に読み出してアップロードし、
今回の前記再確立の時にアップロードできなかった観測データを、次回以降の前記無線通信の確立時に、前記再確立の後の最新の観測データに続けて、前記再確立の時にアップロードできなかった観測データを、新しく生成された順に読み出してアップロードする、
観測データ送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観測データ送信装置であって、
前記制御部は、
前記記憶部の容量に新たな観測データの記憶の空きがないことを検出すると、
前記記憶部に記憶されている最古の観測データに前記新たな観測データを上書きして、前記記憶部に記憶させる、
観測データ送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の観測データ送信装置であって、
前記制御部は、
前記記憶部の容量に新たな観測データの記憶の空きがないことを検出すると、
前記新たな観測データを前記記憶部に記憶しない、
観測データ送信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の観測データ送信装置であって、
前記観測データのアップロードに関する通知を外部へ行う通知部を備える、
観測データ送信装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の観測データ送信装置と、
前記観測データ送信装置の前記無線LAN制御部との間で無線通信制御を行う無線LANアクセスポイント、および、該無線LANアクセスポイントと通信ネットワークとの接続を行うルータを備えた中継機と、
前記通信ネットワークに接続し、アップロードされた観測データを記憶するファイルサーバと、
前記通信ネットワークに接続し、前記観測データを用いた解析を行う解析装置と、を備え、
前記解析装置は、
前記無線通信の切断によるアップロードの失敗の判断基準を設定し、
前記通信ネットワーク、前記中継機を介して、前記判断基準を前記観測データ送信装置の制御部に与える、
観測システム。
【請求項6】
請求項5に記載の観測システムであって、
前記解析装置は、
前記観測データ送信装置のアップロード時刻を設定し、
前記通信ネットワーク、前記中継機を介して、前記判断基準を前記観測データ送信装置の制御部に与える、
観測システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の観測システムであって、
前記解析装置は、
前記観測データを前記記憶部に記憶する法則を設定し、
前記通信ネットワーク、前記中継機を介して、前記判断基準を前記観測データ送信装置の制御部に与える、
観測システム。
【請求項8】
GNSS信号をGNSSアンテナで受信するGNSS信号受信工程と、
前記GNSSアンテナで受信した前記GNSS信号から観測データを生成するGNSS受信工程と、
前記観測データを記憶する記憶工程と、
前記観測データのアップロードを含む無線通信を制御する制御工程と、を有し、
前記制御工程は、
前記無線通信の未確立を検出すると、前記アップロードが未完了の観測データを記憶し、
前記無線通信の再確立を検出すると、最新の観測データに続けて、記憶されている観測データを、新しく生成された順に読み出してアップロードし、
前記再確立の時にアップロードできなかった観測データを、次回以降の前記無線通信の確立時に、前記再確立の後の最新の観測データに続けて、前記再確立の時にアップロードできなかった観測データを、新しく生成された順に読み出してアップロードする、
観測データ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地滑り等の物理的な変化を観測する観測データを取得して送信する観測データ送信装置、この観測データ送信装置を含む観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、防災の観点から、地滑り等の観測を行うシステムが各種考案されている。例えば、特許文献1に記載の観測データ回収システムは、複数の解析装置、複数の中継装置、および集約装置を備える。
【0003】
1つの中継装置には複数の解析装置がリンクしている。各中継装置がリンクする解析装置は異なる。集約装置は、複数の中継装置にリンクしている。
【0004】
中継装置は、自身がリンクしている複数の解析装置の観測データを取得する。中継装置は、取得した複数の観測データをまとめて、集約装置に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−185459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の解析装置が中継装置または集約装置に対して無線通信によって観測データを送信(アップロード)する場合、無線通信機器の健康状態、通信環境によって、観測データをアップロードできないていないことがある。
【0007】
従来の一般的な構成では、解析装置は、アップロード処理を行うと、当該アップロードが成功したか失敗したかに関わらす、観測データを消去していた。
【0008】
このため、一部でもアップロードを失敗していると、集約装置では観測データに部分的な欠落が生じ、観測データを用いて行う計測や予測等が不十分なものになることが考えられる。
【0009】
本発明の目的は、観測対象位置に配置された子機が取得した観測データを、より確実にアップロードすることができる観測データ送信装置、観測データ送信方法、および、これらを用いた観測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の観測データ送信装置は、GNSSアンテナ、GNSS受信機、無線LAN制御部、記憶部、および制御部を備える。GNSSアンテナは、GNSS信号を受信する。GNSS受信機は、GNSSアンテナで受信したGNSS信号から観測データを生成する。無線LAN制御部は、無線通信を制御する。記憶部は、観測データを記憶する。制御部は、無線LAN制御部の無線通信を制御する。さらに、制御部は、無線通信の切断を検出すると、観測データを記憶部に記憶する。制御部は、無線通信の再接続を検出すると、最新の観測データに続けて、記憶部に記憶されている観測データを、新しく生成された順に読み出してアップロードする。
【0011】
この構成では、無線通信の不調等によってアップロードできない観測データが生じても、リアルタイム性は低下するものの、この観測データをアップロードすることができる。
【0012】
また、この発明の観測データ送信装置では、制御部は、記憶部の容量に新たな観測データの記憶の空きがないことを検出すると、記憶部に記憶されている最古の観測データに新たな観測データを上書きして、記憶部に記憶させる。
【0013】
この構成では、アップロードできない観測データがある際に、記憶部が容量不足になっても、常に最新の観測データを記憶し続けることができる。これにより、無線通信の再構築後は、アップロードできなかった観測データ群のうち、最も新しい観測データ群をアップロードすることができる。
【0014】
また、この発明の観測データ送信装置では、制御部は、記憶部の容量に新たな観測データの記憶の空きがないことを検出すると、新たな観測データを記憶部に記憶しない。
【0015】
この構成では、アップロードできない観測データがある際に、記憶部が容量不足になっても、アップロードできなくなった時から所定時間の観測データを記憶することができる。
【0016】
また、この発明の観測システムは、上述のいずれかに記載の観測データ送信装置、中継機、ファイルサーバ、および、解析装置を備える。中継機は、観測データ送信装置の無線LAN制御部との間で無線通信制御を行う無線LANアクセスポイント、および、該無線LANアクセスポイントと通信ネットワークとの接続を行うルータを備える。ファイルサーバは、通信ネットワークに接続し、アップロードされた観測データを記憶する。解析装置は、通信ネットワークに接続し、観測データを用いた解析を行う。さらに、解析装置は、アップロードの失敗の判断基準を設定し、ファイルネットワーク、中継機を介して、判断基準を観測データ送信装置の制御部に与える。
【0017】
この構成では、観測データ送信装置におけるアップロードの成功、失敗の判断基準を、遠隔操作によって設定することができる。これにより、観測データ送信装置が解析装置から離間し、観測データ送信装置が容易に近づけない位置に配置されていても、観測データのアップロードの成功、失敗の判断基準を容易に設定することができる。
【0018】
また、この発明の観測システムでは、解析装置は、観測データ送信装置のアップロード時刻を設定し、ファイルネットワーク、中継機を介して、判断基準を観測データ送信装置の制御部に与える。
【0019】
この構成では、観測データ送信装置のアップロード時刻を遠隔操作によって設定することができる。これにより、例えば、解析頻度に応じたアップロードの間隔を設定することができる。また、例えば、複数の観測データ送信装置が配置されている場合に、観測データ送信装置毎のアップロード時間の割り当てを設定することができる。
【0020】
また、この発明の観測システムでは、解析装置は、アップロードに失敗した観測データを記憶部に記憶する法則を設定し、ファイルネットワーク、中継機を介して、判断基準を観測データ送信装置の制御部に与える。
【0021】
この構成では、観測データ送信装置における観測データを記憶部に記憶する法則を、遠隔操作することができる。これにより、観測データにおけるアップロードに失敗した観測データのうち、解析に必要な観測データを優先的に記憶して、再アップロードすることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、観測データを従来の構成および方法よりも確実にアップロードすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る観測システムのブロック図
図2】本発明の実施形態に係る観測データ送信方法のフローチャート
図3】本発明の実施形態に係る観測データ送信方法の概念を示すタイミングチャート
図4】定常時のメモリへの記憶、読み出し処理を示すメモリマップ
図5】アップロードができなかった場合の記憶、読み出し処理を示すメモリマップ
図6】複数回に亘って未完の観測データをアップロードする場合の観測データの読み出し処理を示すメモリマップ
図7】メモリの記憶容量が一杯な状態で新たな観測データを取得した場合の記憶更新の処理を示すメモリマップ
図8】メモリの記憶容量が一杯な状態で新たな観測データを取得した場合の記憶更新の処理を示すメモリマップ
図9】本発明の実施形態に係る観測データ送信方法におけるアップロード時刻を変更したタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る観測データ送信装置、観測データ送信方法、観測システムについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態で示す観測システムは、例えば、地滑り検出システム等に用いられる。しかしながら、遠隔地で取得した観測データを用いて、所定の現象について解析を行うシステムであれば、本実施形態の構成および方法を適用することができる。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る観測システムのブロック図である。観測システム10は、子機(観測データ送信装置)20、親機(中継機)30、ファイルサーバ40、解析装置50、および通信ネットワーク100を備える。
【0026】
子機20は、観測位置に配置される。観測位置が複数箇所の場合、観測位置毎に子機20が配置される。
【0027】
子機20は、制御部21、GNSS受信機22、GNSSアンテナ23、無線LAN制御部24、無線LAN用アンテナ25、メモリ26、および、通知部27を備える。子機20は、可能な限りオープンスカイな環境に配置されていることが好ましい。
【0028】
制御部21は、子機20の全体制御を行う。また、制御部21は、観測データの記憶、アップロードの制御を行う。制御部21における観測データの記憶、アップロードの制御についての具体的な内容は、後述する。
【0029】
GNSS受信機22は、制御部21に接続されている。GNSS受信機22は、GNSSアンテナ23で受信したGNSS信号から観測データを生成する。GNS受信機22は、生成した観測データを制御部21に出力する。
【0030】
GNSSとは、Global Navigation Satellite Systemの略語であり、GPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo等を含む。なお、QZSS(準天頂衛星システム)の衛星からの測位信号も、本願発明のGNSS信号に含まれる。
【0031】
GNSS受信機22で生成される観測データは、搬送波位相等、地滑りの解析、検出に利用し、GNSS信号の受信結果(捕捉、追尾によって得られるデータ)から得られるデータである。
【0032】
また、GNSS受信機22は、GNSS信号から航法メッセージを復調する。GNSS受信機22は、航法メッセージから時刻データを取得する。なお、GNSS受信機22は、GNSS信号の追尾結果から子機20を測位してもよい。この場合、観測データには、測位結果が含まれる。
【0033】
無線LAN制御部24は、無線LAN用アンテナ25、制御部21に接続されている。無線LAN制御部24は、無線LAN用アンテナ25および無線LAN用アンテナ31を介した無線LAN用AP32との無線通信を、予め決められたプロトコルによって実行する。無線LAN制御部24は、制御部21から与えられた観測データを、無線通信のプロトコルに変換して、無線LAN用アンテナ25から送信する。また、無線LAN制御部24は、無線LAN用アンテナ25で受信した親機30からの遠隔設定データをプロトコル変換して制御部21に出力する。
【0034】
メモリ26は、制御部21に接続されている。メモリ26は観測データを記憶する。メモリ26に対する観測データの書き込み仕様および読み出し仕様は、後述する。
【0035】
通知部27は、制御部21に接続されている。通知部27は、LED等の簡易な表示素子によって構成されている。通知部27は、制御部21からの通知信号によって、所定の表示態様に駆動される。
【0036】
親機30は、無線LAN用アンテナ31、無線LANAP(アクセスポイント)32、および、ルータ33を備える。
【0037】
無線LANAP32は、無線LAN用アンテナ31および無線LAN用アンテナ25を介した無線LAN制御部24との無線通信を、予め決められたプロトコルによって実行する。無線LANAP32は、ルータ33を介して取得した遠隔設定データをプロトコル変換して、無線LAN用アンテナ31から送信する。また、無線LANAP32は、無線LAN用アンテナ31で受信した子機20からの観測データをプロトコル変換してルータ33に出力する。
【0038】
ルータ33は、無線LANAP32をネットワーク100に接続する。すなわち、ルータ33は、親機30と子機20との無線通信網とネットワーク100との間でのプロトコル変換を実行する。ルータ33は、無線LANAP32から出力される観測データを、ファイルサーバ40に送信する。ルータ33は、ネットワーク100を介して接続された解析装置50からの遠隔設定データを、無線LANAP32に送信する。
【0039】
ファイルサーバ40は、親機30から送信される観測データを記憶する。また、ファイルサーバ40は、解析装置50からの読み出し要求に応じて、観測データを、解析装置50に送信する。
【0040】
解析装置50は、ファイルサーバ40から読み出した観測データを用いて、観測対象に対する検出データを生成する。例えば、観測システム10が地滑り検出システムであれば、観測データから各観測位置の位置変化および速度を取得して、地滑りを検出する。解析装置50は、親機30および子機20に対して遠隔設定データを送信する。遠隔設定データは、解析装置50に備えられた操作入力部を用いてオペレータによって設定される。また、遠隔設定データは、解析装置50がこれまでの解析結果に基づいて自動で設定してもよい。
【0041】
このような構成からなる観測システムにおいて、子機(観測データ送信装置)20は、次に示す方法によって、観測データをファイルサーバ40にアップロードする。
【0042】
図2は、本発明の実施形態に係る観測データ送信方法のフローチャートである。図3は、本発明の実施形態に係る観測データ送信方法の概念を示すタイミングチャートである。
【0043】
子機20の制御部21は、観測時刻Tob毎に、観測データDobを取得する(S101)。観測時刻Tobは、全ての子機で一致している。例えば、図3に示すように、三機の子機A,B,Cが配置されている時、これらの複数の子機A,B,Cは、同期している。観測時刻TobA,TobB,TobCは、この同期した時刻に基づいて決定されている。複数の子機A,B,Cの同期には、GNSS信号の時刻データが用いられる。これにより、基準信号発生器を用いることなく、複数の子機A,B,Cを同期させることができる。観測時刻Tob(TobA,TobB,TobC)は、例えば1秒間隔に設定されている。
【0044】
制御部21は、取得した観測データDobを、取得順にメモリ26に一時記憶する(S102)。制御部21は、観測データDobを時刻データ(観測時刻)とともに記憶する。
【0045】
制御部21は、計時しており、アップロード時刻Tupでないことを検出すると(S103:No)、継続して観測データDobを取得して一時記憶する。
【0046】
制御部21は、アップロード時刻Tupであることを検出すると(S103:Yes)、観測データDobのアップロードを実行する。
【0047】
なお、アップロード時刻Tupは、子機毎に設定されている。図3に示すように、子機Aのアップロード時刻TupA、子機Bのアップロード時刻TupB、および、子機Cのアップロード時刻TupCは異なる。そして、各子機A,B,Cは、アップロード時刻TupA,TupB,TupCによって割り当てられた時間内において、観測データのアップロードを実行する。
【0048】
具体的に、図3の例であれば、全ての子機A,B,Cからの観測データをアップロードする周期Tcyによって決まる時間を子機数で除算する。この除算によって得られる時間が各子機A,B,Cに割り当てられる。そして、各時間の起点となる時刻が、それぞれのアップロード時刻TupA,TupB,TupCに設定される。
【0049】
このような処理を行うことによって、複数の子機が同時に無線通信を行うことを防止できるので、子機と親機との間の無線通信のデータ転送速度(ビットレート)の低下を抑制できる。また、複数の子機から親機30へのアップロードされる観測データ同士が干渉しない。したがって、各子機から親機30を介してファイルサーバ40に確実に観測データをアップロードすることができる。
【0050】
制御部21は、無線LAN制御部24をウエイクアップして、無線LAN制御部24と無線LANAP32との間でのデータ通信を確立させる。また、制御部21は、ネットワーク100を介してファイルサーバ40に観測データDobをアップロードできるか否かを検出する。制御部21は、通信の確立の判断処理に対して閾値を設けている。制御部21は、通信の確立処理を閾値回数行って通信を確立できなければ、アップロード不可能と判定する。また、制御部21は、通信確立用のデータを送信してからの時間を計測し、閾値時間までに応答データを受信できなければ、アップロード不可能と判定する。
【0051】
制御部21は、アップロードが不可能であれば(S104:NO)、記憶中であるアップロードができなかった観測データ(未完了の観測データ)をそのままメモリ26に記憶し続ける(S110)。
【0052】
制御部21は、アップロードが可能であれば(S104:YES)、以前のアップロード時刻においてファイルサーバ40にアップロードできなかった観測データ(未完了の観測データ)があるか否かを検出する。
【0053】
制御部21は、未完了の観測データが無いことを検出すると(S105:YES)、今回のアップロード時刻Tupまでに記憶されている複数の観測データDobからなるアップロードデータDupをアップロードする(S106)。アップロードデータDupは、最新の観測データDobから時刻の新しい順に複数の観測データDobが並ぶデータである。例えば、図3の例であれば、子機Aは、今回のアップロード時刻TupAまでに記憶されている複数の観測データDobAからなるアップロードデータDupAをアップロードする。子機Bは、今回のアップロード時刻TupBまでに記憶されている複数の観測データDobBからなるアップロードデータDupBをアップロードする。子機Cは、今回のアップロード時刻TupCまでに記憶されている複数の観測データDobCからなるアップロードデータDupCをアップロードする。
【0054】
制御部21は、アップロードが完了したことを検出すると、メモリ26に一時記憶している観測データDobを削除する(S107)。
【0055】
制御部21は、未完了の観測データがあることを検出すると(S105:NO)、最新の観測データをアップロードする(S108)。制御部21は、最新の観測データに引き続いて、未完了の観測データをアップロードする(S109)。制御部21は、アップロードの完了したメモリ26に一時記憶している観測データDobを削除する(S107)。
【0056】
このように、本実施形態の構成を用いることによって、観測データDobがアップロードできない期間が生じても、アップロードが可能な期間に観測データDobをアップロードすることができる。これにより、ファイルサーバ40に記憶される観測データDobの欠損を抑制することができる。したがって、解析装置50による解析結果を高精度にすることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、最新の観測データから優先してアップロードされる。これにより、現状に近い観測データの欠損を抑制でき、現状に対する解析結果を高精度にすることができる。
【0058】
上述の通信の確立処理のための閾値は、解析装置40から、ネットワーク100、親機30を介して、制御部21に設定することができる。これにより、オペレータが所望の閾値を設定することができる。また、オペレータは、子機20を直接操作しなくても、閾値を設定することができる。これにより、子機20が容易に到達できない位置に配置されても、閾値を設定することができる。例えば、地滑り検出システムでは、子機20は、山中で上空が開放している位置等、人が容易に到達できない位置に配置されていることがある。しかしながら、この構成を用いることによって、このような位置に配置された子機に対しても、閾値を設定することができる。なお、子機に対する設定は、閾値に限ることなく、解析装置40から設定することができる。
【0059】
次に、具体的なメモリ26への観測データDobの記憶方法、および読み出し方法を説明する。図4は、定常時のメモリへの記憶、読み出し処理を示すメモリマップである。図5は、アップロードができなかった場合の記憶、読み出し処理を示すメモリマップである。
【0060】
制御部21は、観測データDobを取得した順に、メモリ26に記憶する。例えば、図4に示すように、制御部21は、観測時刻TobA11で観測データDob(t11)を取得すると、観測データDob(t11)をメモリ26に記憶する。制御部21は、観測時刻TobA12で観測データDob(t12)を取得すると、メモリ26における観測データDob(t11)の記憶アドレスに続くアドレスに、観測データDob(t12)を記憶する。制御部21は、この処理を順次繰り返し、アップロード時刻TupA1に達すると、アップロード時刻TupA1である観測時刻TobA1mにおける観測データDob(t1m)から観測データDob(t11)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。
【0061】
次に、前回のアップロード時刻でアップロードできなかった場合について、図5を用いて説明する。制御部21は、アップロード時刻TobA1でアップロードができなかった場合、観測データDob(t11)から観測データDob(t1m)をそのまま記憶しておく。制御部21は、観測時刻TobA21で観測データDob(t21)を取得すると、観測データDob(t21)をメモリ26に記憶する。この際、制御部21は、観測データDob(t11)から観測データDob(t1m)が記憶されたアドレスに続くアドレスに、観測データDob(t21)を記憶する。制御部21は、観測時刻TobA22で観測データDob(t22)を取得すると、メモリ26における観測データDob(t21)の記憶アドレスに続くアドレスに、観測データDob(t22)を記憶する。制御部21は、この処理を順次繰り返し、アップロード時刻TupA2に達すると、アップロード時刻TupA2である観測時刻TobA2mにおける観測データDob(t2m)から観測データDob(t21)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。さらに、制御部21は、アップロードが未完である観測データDob(t1m)から観測データDob(t11)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。
【0062】
この際、一回のアップロードによって、未完である全ての観測データをアップロードできない場合がある。この場合、制御部21は、次に示す処理を実行する。図6は、複数回に亘って未完の観測データをアップロードする場合の観測データの読み出し処理を示すメモリマップである。
【0063】
制御部21は、アップロード時刻TupA2に達すると、アップロード時刻TupA2である観測時刻TobA2mにおける観測データDob(t2m)から観測データDob(t21)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。さらに、制御部21は、子機毎に設定されたアップロード時刻から決まるアップロード期間内に収まるように、アップロードが未完である観測データDob(t1m)から観測データDob(t1k)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。制御部21は、アップロードできた観測データDob(t2m)から観測データDob(t21)、観測データDob(t1m)から観測データDob(t1k)を削除する。この処理では、アップロードが未完である観測データDob(t1j)から観測データDob(t11)は、まだアップロードできていない。制御部21は、アップロードが未完である観測データDob(t1j)から観測データDob(t11)を、メモリ26にそのまま記憶しておく。
【0064】
制御部21は、アップロード時刻TupA3に達すると、アップロード時刻TupA3である観測時刻TobA3mにおける観測データDob(t3m)から観測データDob(t31)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。さらに、制御部21は、アップロード期間内に収まるように、アップロードが未完である観測データDob(t1j)から観測データDob(t11)までの複数の観測データを、観測時刻の新しい順にアップロードする。
【0065】
このように、一度の再アップロードで全ての観測データをアップロードできなくても、複数回の再アップロードで全ての観測データをアップロードすることができる。
【0066】
また、メモリ26の容量は有限である。したがって、観測データDobに対する記憶容量も決まっている。記憶容量を超える観測データDobを新たに記憶する場合、本実施形態の制御部21は、図7図8のいずれかに示す処理を実行する。図7図8は、メモリの記憶容量が一杯な状態で新たな観測データを取得した場合の記憶更新の処理を示すメモリマップである。図7は、新たな観測データを古い観測データに上書きする場合を示し、図8は新たな観測データを記憶しない場合を示す。
【0067】
(i)新たな観測データで古い観測データを上書きする場合
図7の観測時刻TobAnh,TobAniに示すように、制御部21は、新たな観測データを記憶可能な時には、新たな観測データをそのままメモリ26に記憶させる。例えば、図7に示すように、観測時刻TobAnhでは、観測データDob(tnh)を記憶する容量が存在するので、制御部21は、観測データDob(tnh)を、メモリ26の空き領域に記憶する。観測時刻TobAnhがアップロード時刻の場合、制御部21は、観測データDob(tnh)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0068】
同様に、観測時刻TobAniでは、観測データDob(tni)を記憶する容量が存在するので、制御部21は、観測データDob(tni)を、メモリ26の空き領域に記憶する。観測時刻TobAniがアップロード時刻の場合、制御部21は、観測データDob(tni)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0069】
観測時刻TobAnjでは、図7に示すように、制御部21は、新たな観測データDob(tnj)を取得すると、メモリ26の容量不足を検出し、メモリ26に記憶されている最も観測時刻の古い観測データDob(t11)の領域に、新たな観測データDob(tnj)を上書き記憶する。観測時刻TobAnjがアップロード時刻の場合、制御部21は、観測データDob(tnj)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0070】
観測時刻TobAnkでは、図7に示すように、制御部21は、新たな観測データDob(tnk)を取得すると、メモリ26の容量不足を検出し、メモリ26に記憶されている最も観測時刻の古い観測データDob(t12)の領域に、新たな観測データDob(tnk)を上書き記憶する。観測時刻TobAnkがアップロード時刻の場合、制御部21は、観測データDob(tnk)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0071】
このような構成とすることによって、メモリ26の記憶容量を超える観測データDobを取得した場合に、観測時刻の新しい観測データを確実にアップロードすることができる。
【0072】
(ii)新たな観測データで古い観測データを上書きしない場合
図8の観測時刻TobAnh,TobAniに示すように、制御部21は、新たな観測データを記憶可能な時には、新たな観測データをそのままメモリ26に記憶させる(図7の場合と同じ処理を実行する)。
【0073】
観測時刻TobAnjでは、図8に示すように、制御部21は、新たな観測データDob(tnj)を取得すると、メモリ26の容量不足を検出し、新たな観測データDob(tnj)のメモリ26への記憶を破棄する。観測時刻TobAnjがアップロード時刻の場合、制御部21は、メモリ26に記憶されている観測データDob(tni)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0074】
観測時刻TobAnkでは、図8に示すように、制御部21は、新たな観測データDob(tnk)を取得すると、メモリ26の容量不足を検出し、新たな観測データDob(tnk)のメモリ26への記憶を破棄する。観測時刻TobAnkがアップロード時刻の場合、制御部21は、メモリ26に記憶されている観測データDob(tni)から観測時刻の新しい順に複数の観測データをアップロードする。
【0075】
このような構成とすることによって、メモリ26の記憶容量を超える観測データDobを取得した場合にも、特定の期間の観測データを確実にアップロードすることができる。このアップロードすべき期間は、解析装置40で操作入力して、制御部21に設定することができる。
【0076】
なお、上述のアップロードの周期Tcy、各子機A,B,Cのアップロード時刻TupA,TupB,TupCは適宜設定することができる。図9は、本発明の実施形態に係る観測データ送信方法におけるアップロード時刻を変更したタイミングチャートである。
【0077】
図9に示すように、アップロード時刻TupA,TupB,TupCによって決定される各子機のアップロードに割り当てられた時間長は、異ならせることができる。この時間の設定は、解析装置40で操作入力して、制御部21に設定することができる。
【0078】
この構成を用いることによって、子機毎の無線通信状況に応じて、アップロードの時間長を設定することができる。
【0079】
例えば、無線通信環境が良好な子機は、ビットレートが高い無線通信が可能である。したがって、このような子機に対しては、アップロードの時間長を短く設定することができる。
【0080】
一方、無線通信環境が悪い子機は、ビットレートが低い無線通信しかできないことがある。したがって、このような子機に対しては、アップロードの時間長を長く設定することができる。
【0081】
これにより、複数の子機の無線通信環境に応じて、観測データをより確実にアップロードすることができる。
【0082】
なお、過去の無線通信環境状況、例えば、無線通信が切れる回数、無線通信の信号強度等に基づいて、解析装置40においてアップロードの時間長の割り当てを自動で設定することもできる。また、解析装置40は、送信間隔を調整することも可能である。例えば、子機の電源寿命を長くする場合には、送信間隔を長く設定する。子機は、送信を行わない期間では、低電力状態もしくは計時機能を除いて電源をオフする設定にしておく。この電源の設定も解析装置40で設定することもできる。このような設定を行うことによって、子機の電源の長寿命化が可能になる。
【0083】
また、上述の説明では、子機で生成する解析データを、GNSS信号の受信結果から得られるものとしたが、次のデータを含むことも可能である。子機に雨量計を備えることによって、解析データに雨量を含むことができる。子機に加速度センサを備えることによって、解析データに加速度を含むことができる。子機に傾斜計を備えることによって、解析データに傾斜量を含むことができる。さらに、気候観測結果、土壌水分量、地下水位量等も、これらの計測装置を子機に備えることによって、解析データに含むことができる。
【符号の説明】
【0084】
10:観測システム
20:子機(観測データ送信装置)
21:制御部
22:GNSS受信機
23:GNSSアンテナ
24:無線LAN制御部
25:無線LAN用アンテナ
26:メモリ
27:通知部
30:親機(中継機)
40:ファイルサーバ
50:解析装置
100:通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9