特許第6554298号(P6554298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554298
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】可撓性ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/24 20060101AFI20190722BHJP
   A47L 9/24 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F16L11/24
   A47L9/24 A
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-53618(P2015-53618)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-171916(P2016-171916A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正英
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−049978(JP,A)
【文献】 米国特許第07123826(US,B2)
【文献】 米国特許第07266293(US,B1)
【文献】 特開2001−004073(JP,A)
【文献】 実公昭49−026745(JP,Y1)
【文献】 特開平11−225927(JP,A)
【文献】 特開2013−244323(JP,A)
【文献】 特開平11−123169(JP,A)
【文献】 実開昭53−081421(JP,U)
【文献】 実開昭51−114720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/24
F16L 11/16
F16L 11/12
A47L 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂帯状体(11、41)を螺旋巻回し、先行する樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)と後続の樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)とを融着一体化することでホース壁(10)を形成する可撓性ホースであって、前記樹脂帯状体(11、41)は、内部樹脂層(13、43)と、この内部樹脂層(13、43)と異なる物性とされ、内部樹脂層(13、43)を包み込む外部樹脂層(14、44)とを有し、前記先行する樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)と後続の樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)との融着部分は、厚み方向全体に亘り外部樹脂層(14、44)となっており、前記外部樹脂層(14、44)の重合度が、前記内部樹脂層(13、43)の重合度よりも大とされていることを特徴とする可撓性ホース。
【請求項2】
先行する樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)と後続の樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)とを径方向に重ね合わせ融着一体化している請求項1記載の可撓性ホース。
【請求項3】
ホース内周側又は/及びホース外周側に補強芯(20、50)を備える請求項1又は2記載の可撓性ホース。
【請求項4】
前記補強芯(20、50)は、前記先行する樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)と後続の樹脂帯状体(11、41)の端部(12、42)との融着部分に設けられる請求項3記載の可撓性ホース。
【請求項5】
前記補強芯(20)は樹脂被覆硬鋼線である請求項3又は4記載の可撓性ホース。
【請求項6】
前記内部樹脂層(13、43)に比べて前記外部樹脂層(14、44)が硬質である請求項1から5のいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項7】
前記外部樹脂層(14、44)及び内部樹脂層(13、43)が塩化ビニル樹脂で構成されている請求項1から6のいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項8】
前記外部樹脂層(14、44)の重合度が2500〜3000とされ、前記内部樹脂層(13、43)の重合度が1000〜1700とされている請求項1〜7のいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項9】
前記外部樹脂層(14、44)に着色剤が配合されている請求項1からのいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項10】
掃除機用ホースである請求項1からのいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項11】
粉体搬送用ホースである請求項1からのいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項12】
流体搬送用ホースである請求項1からのいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項13】
前記内部樹脂層(13、43)が導電発熱性を有する請求項1から4のいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項14】
前記補強芯(20、50)が導電発熱性を有する請求項3又は4記載の可撓性ホース。
【請求項15】
医療用ホースである請求項13又は14記載の可撓性ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟質樹脂によって構成される可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
螺旋巻回した補強芯の外周に、軟質樹脂を帯状に成型してなる樹脂帯状体を螺旋巻回することで構成された可撓性ホースは、例えば電気掃除機用のホースや洗濯機の排水用ホース等として、従来から広く一般に使用されている。なお、このような構成の可撓性ホースは、例えば特許文献1に開示されているように、樹脂帯状体を螺旋巻回するにあたって、先行する樹脂帯状体の端部に後続の樹脂帯状体の端部を融着一体化することで、ホース軸方向に連続するホース壁を形成することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−22334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば高重合度の軟質塩化ビニル樹脂のみで樹脂帯状体を形成し、この樹脂帯状体を用いてホース壁を形成した場合、コストが高くなる。その代わりに低重合度の軟質塩化ビニル樹脂を用いてホース壁を形成すると、コストは下がるが、繰り返し屈曲によりホース壁に亀裂を生じるという不具合がある。
【0005】
そこで、近年、物性の異なる樹脂を複数積層することで樹脂帯状体を構成し、屈曲性や耐久性等の向上を図ることが行われている。このような樹脂帯状体は、樹脂毎に異なる特性をそれぞれ生かすことができることから、種々の用途が想定されるホースを製造するにあたって特に好適である。
【0006】
ところが、融着によりホース壁を形成する場合には、以下のような問題が生じていた。すなわち、樹脂帯状体の端部同士を融着させるにあたって、融着部分から下層の樹脂がはみ出す等してホース表面に色彩や質感のムラが生じ、見栄えを損なっていたのである。特に、融着を行い易くするために、予め樹脂帯状体の端部を先細り状に形成した場合には、先細り状に形成する際に、最外層の厚みが極端に薄くなって内側の層が透けて見えたり、端部から内側の層が露出しやすい。なお、この問題は、先細り状に形成した端部同士を圧縮しながら融着(圧着)する際にも生じ得る。圧着により樹脂帯状体の厚みが薄くなり、結果として最外層の厚みも薄くなるためである。
【0007】
そこで、この発明は、上記不具合を解消して、高性能化や低コスト化を図ることが可能で、且つ見栄えも良好な可撓性ホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この可撓性ホースHは、樹脂帯状体11、41を螺旋巻回し、先行する樹脂帯状体11、41の端部12、42と後続の樹脂帯状体11、41の端部12、42とを融着一体化することでホース壁10を形成する可撓性ホースであって、樹脂帯状体11、41は、内部樹脂層13、43と、この内部樹脂層13、43と異なる物性とされ、内部樹脂層13、43を包み込む外部樹脂層14、44とを有し、先行する樹脂帯状体11、41の端部12、42と後続の樹脂帯状体11、41の端部12、42との融着部分は、厚み方向全体に亘り外部樹脂層14、44となっていることを特徴としている。
【0009】
また、先行する樹脂帯状体11、41の端部12、42と後続の樹脂帯状体11、41の端部12、42とを径方向に重ね合わせ融着一体化していることが好ましい。
【0010】
さらに、ホース内周側又は/及びホース外周側に補強芯20、50を備えることが好ましい。特に、補強芯20、50は、先行する樹脂帯状体11、41の端部12、42と後続の樹脂帯状体11、41の端部12、42との融着部分に設けられることが好ましい。また、補強芯20は樹脂被覆硬鋼線であることが好ましい。
【0011】
また、内部樹脂層13、43に比べて外部樹脂層14、44が硬質であることが好ましい。また、外部樹脂層14、44及び内部樹脂層13、43が塩化ビニル樹脂で構成されていることが好ましい。また、外部樹脂層14、44の重合度が、内部樹脂層13、43の重合度よりも大とされていることが好ましい。より具体的には、外部樹脂層14、44の重合度が2500〜3000とされ、内部樹脂層13、43の重合度が1000〜1700とされていることが好ましい。
【0012】
また、外部樹脂層14、44に着色剤が配合されていることが好ましい。そして、掃除機用ホースであることが好ましい。または、粉体搬送用ホース、流体搬送用ホースであることが好ましい。
【0013】
外部樹脂層44がウレタン樹脂で構成され、内部樹脂層43が軟質塩化ビニル樹脂で構成された耐摩耗用ホースであっても良い。
【0014】
また、内部樹脂層13、43が導電発熱性を有することが好ましい。また、補強芯20、50が導電発熱性を有することが好ましい。そして、医療用ホースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の可撓性ホースでは、樹脂帯状体が内部樹脂層と外部樹脂層とを有しているものの、先行する樹脂帯状体の端部と後続の樹脂帯状体の端部との融着部分は、厚み方向全体に亘り外部樹脂層となっているため、内部樹脂層が透けて見えたり、端部から内部樹脂層が露出するといったことはなく、均一な表面を持つ見栄えの良いホースとすることができる。また、融着部分以外については、ホース壁が内部樹脂層と外部樹脂層とから構成されるため、ホースの高性能化や低コスト化を図ることができる。
【0016】
また、補強芯を備えることで可撓性を有しながらも耐圧性や保形性の向上を図ることができる。さらに、補強芯を、先行する樹脂帯状体の端部と後続の樹脂帯状体の端部との融着部分に設ければ、樹脂帯状体の端部同士を融着するにあたって、補強芯を裏支えとして用いることができ、融着作業を簡単且つ確実に行うことができる。
【0017】
また、内部樹脂層に比べて外部樹脂層が硬質であれば、耐久性と可撓性とを両立させることができる。また、内部樹脂層と外部樹脂層とがともに塩化ビニル樹脂から構成されていれば、変形時において内部樹脂層と外部樹脂層とがほぼ同様の挙動を示すこととなり、例えばホースを湾曲させた場合に均一な曲がりが得られる。
【0018】
また、外部樹脂層の重合度が、内部樹脂層の重合度よりも大とされている、具体的には、外部樹脂層の重合度が2500〜3000とされ、内部樹脂層の重合度が1000〜1700とされることで、耐久性(耐傷性、耐摩耗性等)に優れた可撓性ホースを低コストに製造することができる。また、屈曲性等を調整することも可能となる。
【0019】
また、本発明の可撓性ホースでは、先行する樹脂帯状体の端部と後続の樹脂帯状体の端部との重ね合わせ部分が、厚み方向全体に亘り外部樹脂層となっているため、外部樹脂層に着色剤を配合すれば、ホース全長に亘って均一な色彩を得ることができ、見栄えの良好なホースとすることができる。そして、掃除機用ホースとしても好適に用いることができる。または、粉体搬送用ホース、流体搬送用ホースとしても好適に用いることができる。
【0020】
また、外部樹脂層をウレタン樹脂で構成し、内部樹脂層を軟質塩化ビニル樹脂で構成することで、耐摩耗用ホースとして用いることができるが、ホース表面に色彩や質感のムラが生じないため、磨耗箇所を早期に発見することができ、好適である。また、ホース壁をウレタン樹脂のみで形成した場合、可撓性の低下を招くとともに、繰り返し屈曲によってホース壁に亀裂を生じることがあるが、軟質塩化ビニル樹脂からなる内部樹脂層を有することで、耐摩耗性と耐屈曲性とを両立する高機能なホースとすることができる。
【0021】
また、内部樹脂層や補強芯が導電発熱性を有することで、ホース内を通過する流体を保温したり加熱したりすることができ、例えば医療用ホースとして用いることができるが、ホース表面に色彩や質感のムラが生じないため、汚れや破損等を発見し易く、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の第1実施形態に係る可撓性ホースの要部拡大断面図である。
図2】可撓性ホースの一部破断側面図である。
図3】製造過程を模式的に示す図である。
図4】電気掃除機を示す側面図である。
図5】この発明の第2実施形態に係る可撓性ホースの要部拡大断面図である。
図6】この発明の第3実施形態に係る可撓性ホースの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、この発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る可撓性ホースHは、図1及び図2に示すように、可撓性を有するホース壁10と、このホース壁10の内周面に沿って螺旋状に巻回された複数(図2では3本)の補強芯20とを備えており、これら補強芯20によってホース壁10の保形性が良好に維持されている。
【0024】
ホース壁10は、図1及び図3に示すように、先行する樹脂帯状体11の端部12に後続の樹脂帯状体11の端部12を重ね合わせるように螺旋巻回することで形成されている。
【0025】
この樹脂帯状体11は、異なる樹脂を厚み方向に積層する、具体的には、重合度が1000〜1700と比較的低重合度で且つ柔軟な軟質塩化ビニル樹脂(PVC)からなる内部樹脂層(中間層)13を、重合度が2500〜3000と比較的高重合度で且つ硬質な軟質塩化ビニル樹脂からなる外部樹脂層(外層)14によって包み込むようにして構成されている。従って、樹脂帯状体11が螺旋巻回された状態においては、最もホース径外側に位置する上層と、最もホース径内側に位置する下層と、これら上下層に挟まれた中層とからなる3層構造となる。ただ、3層構造となるのは、樹脂帯状体11のホース軸方向の中央部であって、ホース軸方向の両端部(樹脂帯状体11、11同士が重なり合い、融着される部分)12、12については、中間層13が設けられておらず、外層14のみで構成されている。なお、外層14は着色を施すための添加剤(着色剤)が配合される等して不透明であり、外観上、どの位置に中間層13が内包されているのかは分からないようになっている。中間層13については着色、無着色のいずれでも良い。
【0026】
また、この樹脂帯状体11には、ホース軸方向に所定の間隔W1を保ちながら、例えば3本の螺旋状の凸部15がホース径外方向へ膨出して形成され、これら凸部15、15間が平坦部16とされている。そして、凸部15のホース内周面側が、断面略U字状の凹溝17となっていて、補強芯20を取り付ける補強芯取付部位とされている。なお、凹溝17は、3本に限らず、凸部15の本数を増減させることで、1本又は2本或いは4本以上としても良い。但し、3層構造となっている部分に少なくとも1本以上の凹溝17が形成されるように、換言すれば、3層構造となっている部分に少なくとも1本以上の補強芯20が位置(対向)するように構成することが好ましい。
【0027】
凹溝17内には、補強芯20がそれぞれ収容されている。なお、補強芯20は、3本に限らず、凹溝17の本数に合わせて1本又は2本或いは4本以上としても良い。また、凹溝17の形状については、断面略U字状に限らず、例えば断面略コ字形や断面略V字形としても良い。
【0028】
各補強芯20は、例えば鋼線やピアノ線、これらの線に防錆メッキを施した硬質の線材等からなる硬鋼線製の芯材21を被覆材22によって被覆してなる樹脂被覆硬鋼線であって、例えば断面略円形に形成されている。
【0029】
次に、上記可撓性ホースHの製造方法について説明する。まず、図3に示すように、3本の補強芯20、20、20を一組として、所定の間隔W1を保った状態で心棒の周囲に螺旋状に巻回する。
【0030】
続いて、共押出機を使用して、ホース壁成形用の樹脂帯状体11を押し出し成型していく。この樹脂帯状体11は、補強芯20の間隔W1の凡そ3倍分に相当する横幅W2を有している。また、上述の通り、ホース軸方向の中央部においては中間層13と外層14との3層構造とされているが、端部12においては外層14のみとされている。さらに、端部12は融着作業(熱圧着作業)を容易に行うために先細り状に、すなわち、幅方向の端に行くほど厚みが薄くなるように形成されている。なお、先細り状に押し出したとしても、端部12は外層14のみで構成されているため、中間層13が透けて見えたり、端部12からはみ出すといったことはない。
【0031】
そして、この樹脂帯状体11を、先行する樹脂帯状体11の端部12上に後続する樹脂帯状体11の端部12を重ねるようにして補強芯20上に螺旋状に巻回していく。なお、この際、端部12、12の重なり合った部分が補強芯20上に位置するようにする。そして、この重なり合った部分を例えば圧接しながら融着(圧着)することで、ホース壁10の凹溝17内に補強芯20を収容した可撓性ホースHが製造される。なお、補強芯20と樹脂帯状体11との一体化にあたっては、例えば合成樹脂押出機から押し出された樹脂帯状体11の熱により、補強芯20を凹溝17に融着しても良いし、樹脂帯状体11を予め巻回してホース壁10を形成した後に、補強芯20を圧着するようにしても良い。さらに、融着以外に接着剤を用いて接着させるようにしても良い。
【0032】
上記構成の可撓性ホースHでは、樹脂帯状体11のホース軸方向端部12であって、先行する樹脂帯状体11と後続する樹脂帯状体11とが互いに重なり合う部分が外層14のみの単層とされているため、先行する樹脂帯状体11と後続する樹脂帯状体11の端部12、12同士の重ね合わせ部分(融着部分)は、樹脂帯状体11の厚み方向全体に亘って外層14だけとなっており、融着によって外層14の厚みが薄くなって中間層13が透けて見える、または、中間層13が端部12から露出するといったことは生じ得ない。従って、端部12、12の重ね合わせ部分(融着された部分)においても均一な状態を維持することができる。また、樹脂帯状体11、11同士の融着は、必ず外層14、14間で行われることとなるため、確実かつ強固な融着となる。また、端部12以外の部分において
は、重合度や硬度が互いに異なる中間層13と外層14とから構成されているため、ホース壁10の屈曲性や耐久性を向上させながらも、高重合度の樹脂のみで構成する場合に比べてコスト削減を図ることができる。特に、ホース径外側及び径内側に位置する外層14が中間層13に比べて硬質で且つ高重合度とされているため、耐摩耗性や耐傷性等の向上を図ることができ、長期に亘り使用可能なホースとすることができる。また、外層14に比べて軟質である中間層13によって、ホース全体としては十分な可撓性を得ることができ、使い勝手も良い。
【0033】
なお、上記可撓性ホースHは、例えば図4に示すように、電気掃除機30において、吸引ノズルを備えた操作筒31と掃除機本体32との間に連結接続されることで使用される。具体的には、可撓性ホースHの両端に接続筒体33、33を接続して、その一端側の接続筒体33を掃除機本体32側に差し込み連結し、他端側の接続筒体33を操作筒31側に差し込み連結させる。なお、電気掃除機30に用いる場合には、補強芯20を、操作筒31側と掃除機本体32側とを電気的に接続する導電線として使用しても良い。
【0034】
このようにして、掃除機本体32と操作筒31とを可撓性ホースHを介して連結することで、掃除機本体32と吸引ノズルとの間に一連の空気経路を形成している。また、複数の補強芯20を導電線として機能させれば、掃除機本体32のON−OFF用電源回路と、掃除機本体32の電源と吸引ノズルに装備してあるモータとの間の通電路とが形成されている。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態に係る可撓性ホースHについて説明する。上記実施形態においては、先行する樹脂帯状体11の端部12と後続の樹脂帯状体11の端部12とを可撓性ホースHの径方向に重ね合わせ融着一体化していたが、本実施形態では、図5に示すように、樹脂帯状体11の端部12の端面同士を当接させ融着一体化させている点に特徴がある。このような構成の場合、樹脂帯状体11、11同士の融着強度は低くなるものの、樹脂帯状体11の厚み方向に端部12、12同士が重なり合っていないため、上記実施形態に比べて中間層13が設けられていない区間を短くすることができ、中間層13の効果をより得ることができる。
【0036】
図6は、この発明の第3実施形態に係る可撓性ホースHを示したものである。図に示すように、この可撓性ホースHは、両端部42、42が斜めに形成された、扁平な平行四辺形の断面の樹脂帯状体41を螺旋巻回し、端部42の斜め部分を重ね合わせ融着一体化することで、ホース内周面を凹凸の無い平滑面としている点、また、樹脂帯状体41、41の融着部分のホース外周側に補強芯50を螺旋巻回し、固定している点で上記実施形態と大きく相違している。
【0037】
ただ、このような構成であっても、中間層43及び外層44の材質としては、上記実施形態と同様のものであり、高い耐久性と十分な可撓性とを両立する可撓性ホースHとなっている。すなわち、ホースは内外表面に生じた傷やひび割れ等をきっかけに破壊が進行することから、床面や搬送物と接触する外層44は硬質であることが好ましい反面、硬質樹脂のみで形成すると可撓性が著しく低下する。そこで、軟質樹脂によって中間層43を形成し、ホース壁10の硬さを調節することで、高い耐久性と十分な可撓性とを両立させているのである。このようなホースは、例えば、木屑等、ホースの内面が傷付き易い粉体を搬送するための粉体搬送用ホースや、空気を搬送する洗車機ダクト等の流体搬送用ホースにおいて、繰り返し屈曲させて使用してもホース壁が破損し難いものとして好適に使用可能である。
【0038】
なお、図6に示す構造において、中間層43の材質として軟質塩化ビニル樹脂を用い、外層44の材料としてウレタン樹脂を用いれば、ホース外周に設けられた補強芯50の効
果も相まって耐摩耗性に優れたホース(耐摩耗性用ホース)として利用することもできる。補強芯50としては、中間層43や外層44の材質にかかわらず、耐摩耗性を有する硬質の樹脂からなるものが好ましいが、樹脂被覆硬鋼線であっても良く、用途に合わせて種々のものを使用可能である。
【0039】
以上に、この発明の代表的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0040】
例えば、中間層13、43や補強芯20、50に導電発熱性を持たせる、具体的には、中間層13、43として導電性カーボンや金属粉、導電性高分子を含有した樹脂を用いたり、補強芯20、50としてニクロム線等の高抵抗の金属線を用いて、通電時に搬送物を保温したり、加熱したりすることができるホースとしても良い。この場合、例えば呼吸機器用保温(加温)ホース等の医療用ホースとして利用することができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、中間層13、43の周りに外層14、44を設ける3層構造としていたが、2層構造としたり、4層以上樹脂を積層したりしても良い。また、3層以上とする場合に、上層と下層とで異なる樹脂を用いても良い。このような場合であっても、樹脂帯状体の端部(融着部分)を最外層(最もホース径外側に位置する層)と同一の樹脂だけで構成すれば、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。ただ、最もホース径外側に位置する層と、最もホース径内側に位置する層とで同一の樹脂を用い、その間に位置される層を包み込むようにすれば、外層と中間層とで融着し難い樹脂同士を使用した場合であっても、簡単且つ確実に樹脂帯状体を構成することができる。なお、「包み込む」との表現には、中間層の全体を包むものの他に、中間層の一部を包むものも含まれる。補強芯20、50については、ホース内周面側、外周面側のいずれか一方に限らず、双方に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
H・・可撓性ホース、10・・ホース壁、11、41・・樹脂帯状体、12、42・・端部、13、43・・内部樹脂層(中間層)、14、44・・外部樹脂層(外層)、15・・凸部、16・・平坦部、17・・凹溝、20、50・・補強芯、21・・芯材、22・・被覆材、30・・電気掃除機、31・操作筒、32・・掃除機本体、33・・接続筒体、W1・・補強芯の間隔、W2・・樹脂帯状体の横幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6