(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電部材は、長尺の板状部材であり、前記第2の端子部が、前記導電部材の長手方向に所定の間隔で複数設けられ、前記導電部材の幅が所定の間隔毎に順次狭くなっていること、
を特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の端子ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来のリアクトルでは、導電部材であるバスバーは、その少なくとも一部が樹脂部材に埋め込まれている。そのため、バスバーで発生した熱はバスバーが埋め込まれた樹脂を介して自然に放熱されるが、バスバーが樹脂部材に埋め込まれていることから熱がこもりやすい。特に、バスバーに大電流を流した場合に顕著である。
【0006】
上記のような問題は、電気部品に対して通電するための導電部材と、この導電部材が樹脂などの絶縁部材で被覆されている端子ユニットが設置された電気部品でも同様に生じる問題である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、導電部材の熱を効率的に放熱することのできる端子ユニット及びその端子ユニットを用いたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端子ユニットは、導電部材と、前記導電部材の少なくとも一部を被覆する樹脂部材と、を備え、次の構成を有することを特徴とする。
(1)前記導電部材は、外部から電力供給を受けるための第1の端子部と、電気的に接続される部材に、前記第1の端子部が受けた電力を供給するための所定間隔毎に設けられた複数の第2の端子部と、を有し、前記第1の端子部及び前記第2の端子部は外部に露出し、前記第2の端子部は、前記第1の端子部より表面積がより小さいこと。
(2)前記樹脂部材は、
前記第1の端子部の近傍に設けられ、前記樹脂部材を他の部材に固定するための第1の固定部と、前記樹脂部材を前記他の部材に固定するための第2の固定部と、を有すること。
(3)前記第2の固定部は、放熱性を有する放熱部であること。
(
4)前記放熱部は、前記樹脂部材の、前記第1の端子部より前記第2の端子部に近い箇所に設けられていること。
(5)前記第2の固定部には、金属製のカラーが埋め込まれていること。
【0009】
本発明の端子ユニットは、次の構成の少なくとも何れかを有していても良い。
(
6)前記放熱部は、前記樹脂部材の前記第2の端子部間のうち、前記第1の端子部から最も遠い前記第2の端子部間に設けられていること
。
(7)前記他の部材は、放熱部材であり、前記第2の固定部は、前記放熱部材に接していること
。
(8)前記第2の固定部には、放熱性を有する締結具が差し込まれ、前記第2の固定部と前記放熱部材とが締結されていること。
(9)前記第2の固定部は、前記樹脂部材から一続きに突出し、前記樹脂部材と同じ樹脂からなること。
(10)前記導電部材は、長尺の板状部材であり、前記第2の端子部が、前記導電部材の長手方向に所定の間隔で複数設けられ、前記導電部材の幅が所定の間隔毎に順次狭くなっていること。
【0010】
本発明のリアクトルは、次の構成を有することを特徴とする。
(11)コアと前記コアに装着されたコイルとを有するリアクトル本体。
(12)前記リアクトル本体を収容する収容部材。
(13)上記(1)〜(
5)の構成を有する端子ユニット、又は、上記(1)〜(
5)の構成及び上記(
6)〜(10)の構成の少なくとも何れかを有する端子ユニット。
【0011】
本発明のリアクトルは、次の構成を有していても良い。
(14)前記収容部材は放熱部材であり、前記端子ユニットは、前記収容部材に固定されていること。
(15)前記第2の固定部には、その座面から突出したピンが設けられ、前記収容部材には、前記ピンが挿入される凹部が設けられ、前記ピンと前記凹部が接していること。
(16)前記ピンは、熱伝導性を有する樹脂又は金属からなること。
(17)前記ピンは、前記金属
製のカラーより前記導電部材の近くに配置されていること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電部材の熱を効率的に放熱することのできる端子ユニット及びその端子ユニットを用いたリアクトルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の端子ユニットとこれを用いたリアクトルについて説明する。本実施形態は、導電部材としてバスバーを用いたものである。また、請求項に記載の「他の部材」として、ケースを例にしている。但し、ケースに限らず、ヒートシンクとして放熱機能を有するものであれば良い。
【0015】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される電気回路の主要部品である。この電気回路は、リアクトルの他、IGBT等の半導体スイッチング素子を有する。リアクトルは、半導体スイッチング素子のオンオフが高速に行われることにより、外部電源から供給される電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、当該エネルギーの蓄積及び放出を繰り返し、電流や電圧を抑制する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るリアクトルを正面方向から見た斜視図であり、
図2は、本実施形態に係るリアクトルを背面方向から見た斜視図である。
図3は、本実施形態のリアクトルの分解斜視図である。
【0017】
図1〜
図3に示すように、リアクトルは、リアクトル本体1と、リアクトル本体1を内部に収容するケース2と、リアクトル本体1とケース2との間に注入固化された充填材3と、ケース2に固定され、リアクトル本体1と接続される端子ユニット6を有する。本実施形態では、リアクトル本体1を2つの単位リアクトル本体10で構成しているが、単位リアクトル本体10は1つであっても3つ以上であっても良い。また、本実施形態の2つの単位リアクトル本体10は同じ構成として説明するが、異なる構成としても良い。
【0018】
ケース2は、上面が開口し、全体として略直方体形状の収容部材であり、収容部21を備える。収容部21は、リアクトル本体1を収容するスペースであり、リアクトル本体1の大きさに合わせた寸法を有する。収容部21内に壁を設けず複数の単位リアクトル本体10を収容しても良いし、単位リアクトル本体10毎に収容スペースを設けても良い。本実施形態では、ケース2において単位リアクトル本体10間に壁を設けており、収容部21が2つある。
【0019】
ケース2には、リアクトル本体1をケース2に固定するためのボルト71を締結するためのネジ穴22が収容部21底面の四隅に設けられている。また、ケース2には、その側面から突出した突出部23が設けられ、この突出部23に、端子ユニット6を固定するためのネジ穴24と、端子ユニット6を位置決めするための凹部25が設けられている。
【0020】
ケース2は、熱伝導性の高い金属で形成されており、リアクトル本体1を収容するとともに、リアクトル本体1から発生する熱の放熱部材としての機能を有する。熱伝導性の高い金属としては、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。また、必ずしも金属である必要はなく、熱伝導性に優れた樹脂や、樹脂の一部に金属製の放熱板を埋め込んだもの、金属製のフィラーを含有した樹脂を使用しても良い。
【0021】
充填材3は、リアクトル本体1とケース2との隙間に充填、固化されて形成されている。そのため、充填材3は、その上側は、リアクトル本体10の底面に対する形状に倣った形状をなし、反対の下側は、ケース2の内面に倣った形状をなす。充填材3としては、リアクトル本体10の放熱性能の確保及びリアクトル本体10からケース2への振動伝搬の軽減のため、固化しても多少の弾力性と熱伝導性を有する樹脂を使用することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等の放熱用の材料を含有したエポキシ系、ポリアクリレート系、シリコーン系の樹脂製のポッティング剤をその硬化度を調整することで使用できる。
【0022】
リアクトル本体1は、2つの環状コア11、12と、各環状コア11、12の一部の外周に装着されたコイル51〜54とを有している。環状コア11、12の外周には、環状コア11、12の形状に倣って被覆され形成された、環状コア11、12とコイル51〜54とを絶縁する樹脂部材が設けられている。
【0023】
環状コア11、12は、圧粉磁心、フェライト磁心、又は積層鋼板などの環状の磁性体である。環状コア11、12は複数のコア部材を環状になるように接続して構成される。コア部材間にスペーサを設けても良い。環状コア11、12は、環状の一部に一対の平行な直線部分と、これらの直線部分を繋ぐU字形状の連結部分とを有する。
【0024】
コイル51〜54は、絶縁被覆を有する導線である。本実施形態では、コイル51〜54は、平角線のエッジワイズコイルである。但し、コイル51〜54の線材や巻き方は平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
【0025】
このようなコイル51〜54は、環状コア11、12の平行な直線部分の周囲に装着されており、所定間隔隔てて互いに平行に配列されている。各コイル51〜54の両端部51a〜54a、51b〜54bは、ケース2の対向する2つの辺の縁に向かって引き出されており、ケース2の上方においてケース2の縁より突出している。リアクトル本体1は、各環状コア11、12の四隅をボルト71によって締結することで、ケース2に固定されている。
【0026】
端子ユニット6は、導電部材であるバスバー61をインサート成型法により樹脂に埋め込んだ複合体であり、バスバー61の一部が外部に露出し、他の部分が樹脂により覆われている。端子ユニット6は、全体として長尺であり、ケース2の側面と平行にケース2に固定される。すなわち、ケース2の対向する2つの2辺のうち、コイル51〜54の端部51a〜54a側でケース2に固定されている。一方、他方のコイル51〜54の端部51b〜54b側には、2つの端子台91、92がケース2に固定されている。
【0027】
図4は、端子ユニット6の全体構成を示す図である。
図5は、端子ユニット6の分解斜視図である。
図5に示すように、端子ユニット6は、導電部材であるバスバー61と、バスバー61の少なくとも一部を被覆する樹脂部材62とを有する。
【0028】
図4及び
図5に示すように、バスバー61は、例えば銅やアルミニウムからなる長尺の板状導体であり、外部機器と接続され、リアクトル本体1に電力を供給する。すなわち、バスバー61は、外部電源などの外部機器と電気的に接続される端子部611と、コイル51〜54の端部51a〜54aと電気的に接続される端子部612〜615と、一方向に延びる長板形状で、これらの端子部611〜615を繋ぐ導電本体616とを有する。
【0029】
端子部611は、その表面部分が樹脂部材62から外部に露出し、角が丸く平板状に形成されている。なお、端子部611の形状はその角が丸い形状に限定されない。端子部611は、短冊形状の導電本体616の一端部に直交するように水平に設けられている。端子部611の表面積は、端子部612〜615と比べて大きく設定されている。端子部611の中央には外部機器の配線を接続するための締結孔611aが設けられている。この締結孔611aにはネジが差し込まれて端子部611と外部の配線がネジ締結される。
【0030】
端子部612〜615は、導電本体616から突出しており、樹脂部材62から外部に露出するとともに、導電本体616の長手方向の片側縁に所定の間隔隔てて設けられている。この所定の間隔は、リアクトル本体10の大きさにより適宜設計変更可能である。また、所定の間隔とは、各端子部間ごとの間隔であり、等間隔である場合も、端子部間で間隔が異なる場合も含む。例えば端子部612,613間と端子部613,614間が必ずしも同じでなくても良い。端子部612〜615は、導電本体616の長手方向の縁から分岐した張出部81と、この張出部81から導電本体616に対して直角に突出した接続部82とから構成されている。4つの接続部82が、コイル51〜54の端部51a〜54aと溶着等により電気的に接続されている。端子部611に接続された外部機器から、導電本体616及び端部51a〜54aを介してコイル51〜54に電流が流れると、コイル51〜54を貫通する磁束が発生するようになっている。
【0031】
導電本体616は、長尺の平板状であり、その長手方向に延びるエッジE1、E2を有する。エッジE1、E2は、平板状の導電本体616の辺であり、導電本体616の長手方向と直交する断面における角である。換言すれば、エッジE1、E2は、導電本体616の端子部611〜615が設けられている側の縁を上縁とし、この上縁に対向する縁を下縁とすると、エッジE1は、導電本体616の上縁を成す上面と側面とで形成される辺であり、エッジE2は、導電本体616の下縁を成す下面と側面とで形成される辺である。つまり、エッジE1は、導電本体616上縁の長手方向の2辺であり、エッジE2は、その上縁と対向する下縁の2辺である。
【0032】
図5に示すように、導電本体616は、その幅が、これら端子部612〜615を設けた箇所から導電容量に応じて順次階段状に狭くなっており、端子部611で受けた電力を各端子部612〜615に分配する。ここにいう幅は、長板状の導電本体616が延びる長手方向と直交する短手方向の長さである。
図5のバスバー61は、導電本体616の幅が順次階段状に狭くなっていく場合の実施例を示したものであるが、その形状はこれに限定されない。テーパー状に狭くなっていく形状や、幅が均一の長方形など、種々の形状を含む。
【0033】
導電本体616は、長尺の平板状であり、この平板から直角方向に屈曲した屈曲部616bを介して端子部611が設けられている。この屈曲部616bは端子部611の根元である。この屈曲部616bの端には、隣接して切欠き部616cが設けられている。切欠き部616cは、導電本体616の幅方向に食い込むように導電本体616に設けられた切欠きである。切欠き部616cは、一つの概略L字状の平板から、端子部611及び導電本体616を成形する際に、L字の短片を直角に折り曲げて端子部611を成形しやすくするために設けられている。
【0034】
導電本体616の上縁に設けられた屈曲部616bと対向する下縁には、導電本体616に対して直角に形成された折り曲げ部616aが設けられている。折り曲げ部616aは、締結孔611aを介した締結の際に導電本体616に加わる応力に対して剛性を高める。具体的には、折り曲げ部616aは、導電本体616がその長手方向に沿って折り曲げられて形成され、角部である切欠き部616cと対向して導電本体616の下縁側に設けられている。折り曲げ部616aは、端子部611と平行に形成され、本実施形態では端子部611と反対方向に延びている。折り曲げ部616aの導電本体616の長手方向の長さは、端子部611のその方向の長さよりも長く、導電本体616の端から端子部612が設けられる箇所までの長さである。折り曲げ部616aの幅は、端子部611と外部機器の配線との締結の際に加わる締結孔611a周りの締結トルクに対して導電本体616を補強できるように設計する。
【0035】
樹脂部材62は、樹脂を主材として構成され、ガラス繊維又は炭素繊維などの繊維を含んで構成される。この樹脂部材62は、バスバー61の少なくとも一部を被覆し、全体としてバスバー61と対応する形状になっている。樹脂部材62は、他の部材から絶縁するとともに、バスバー61をケース2に対して固定する。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。樹脂部材62は、断熱材ではなく熱伝導性を有する。
【0036】
樹脂部材62には、バスバー61の一端に設けられた平板状の端子部611を支持する端子台621と、導電本体616を被覆する被覆部622と、張出部81を被覆する被覆部623と、端子台621の近傍に設けられた2つの固定部624、625と、端子部614、615間の導電本体616を被覆する箇所に設けられた固定部626とが設けられている。これら各部621〜626は金型を用いたモールド成型法によって樹脂により一体に形成されている。すなわち、各部621〜626は継ぎ目無く一続きに成型されている。
【0037】
端子台621は、端子部611と同形状の凹部が設けられ、この凹部に端子部611が配置される。端子台621の体積及び表面積は、被覆部623の体積及び表面積よりも大きく構成されており、大気への放熱性が高くなっている。
【0038】
被覆部622、623は、それぞれ導電本体616、張出部81の外周面を覆っているが、被覆部622については、導電本体616の一部を被覆していない。
図6は、
図4のA−A断面斜視図である。
図6に示すように、被覆部622は、導電本体616を断面J字状に被覆している。より詳細には、被覆部622は、ケース2と接触或いは近接する箇所を重点的に被覆し、端子部611〜615が設けられている上縁側は導電本体616が露出している。
【0039】
換言すれば、被覆部622は、導電本体616の端子部611〜615が設けられたエッジE1とは反対側のエッジE2を被覆しており、ケース2との絶縁を図る。一方、導電本体616の上縁側には、エッジE1が露出する切欠き部622aが形成されており、被覆部622から端子部611〜615が設けられた導電本体616のエッジE1が開放されている。言い換えると、切欠き部622aは、エッジE1を形成する導電本体616の2面の一部を、そのエッジE1を含んで露出させている。これにより、バスバー61と樹脂部材62の線膨張差による応力が、被覆部622のエッジE2を被覆する箇所に加わったとしても、他方のエッジE1が開放されているのでその応力を逃がすことができる。本実施形態では、導電本体616において、端子部611、612間、端子部612、613間、及び端子部613、614間が開放されている。
【0040】
本実施形態では、樹脂部材62の底部には、
図7に示すように、モールド成型時において金型内に樹脂を注入した際に形成された注入部627が設けられている。すなわち、注入部627は、導電本体616の下縁を成すエッジE2近傍に設けられ、切欠き部622aは、注入部627及び導電本体616の下縁と対向する上縁を露出させるように設けられている。この注入部627は、樹脂部材62の底部において、その長手方向に沿って所定の間隔、例えば5箇所の端子部611〜615が設けられる間隔で、バスバー61とケース2表面との間に位置するように設けられている。なお、注入部627は、導電本体616の側方、すなわち上縁と下縁の間に設けてもよい。
【0041】
固定部624〜626は、端子ユニット6をケース2に固定する締結点である。すなわち、固定部624〜626には、ボルト72によって端子ユニット6をケース2に締結固定するための締結孔624a、625a、626aが設けられており、締結具であるボルト72が挿入されてネジ締結される。
【0042】
固定部624、625は、平板状の端子部611の一辺に沿うように、端子台621の近傍かつ端子部611、612間に並べて設けられている。
【0043】
固定部626は、熱伝導性を有する樹脂で構成されており、放熱部としても機能する。すなわち、固定部626は、被覆部622から突出して設けられており、固定部626の表面積の分だけ大気と接する面積が大きくなる。この固定部626は、樹脂部材62において、端子部611より端子部612〜615の何れかに近い箇所に設けられている。固定部626は、端子部612〜615間に設けられていることが好ましい。端子部612〜615間は、各端子部612〜615の直下も含む。本実施形態の固定部626は、樹脂部材62の端子部612〜615間のうち、端子部611から最も離れた端子部614、615間に設けられている。さらに、端子部614、615間において、端子部614より端子部615の近くに設けられることが好ましい。従って、固定部624、625と固定部626は、全体として長尺な樹脂部材62の両端付近にそれぞれ設けられ、互いに離れている。
【0044】
さらに、固定部626は、ケース2と接している。より好ましくは、ケース2と密着している。固定部626には、例えばインサート成型法により金属製のカラー626bが埋め込まれている。すなわち、固定部626の締結孔626aに金属製のカラー626bが嵌め込まれている。カラー626bは円筒形状であり、その中央の穴にボルト72を差し込んで締結する。なお、固定部624、625においても金属製のカラー624b、625bが埋め込まれている。本実施形態において、これらのカラー624b、625b、626bは、鉄、銅、アルミニウムなどの金属製であるが、樹脂製としても良い。
【0045】
図8は、樹脂部材62を底面から見た固定部626周辺の拡大斜視図である。
図9は、
図4のB−B断面斜視図であり、端子ユニット6における固定部626を含んだ断面斜視図である。固定部626のケース2と接する座面626dには、端子ユニット6をケース2に組み付ける場合の位置決めに用いられるピン626cが突出して設けられている。ピン626cは、金属製のカラー626bよりもバスバー61に近くに配置されている。このピン626cは、概略円柱形状であり、ケース2の突出部23に設けられた凹部25に嵌まり、ピン626cの外周面又は底面が凹部25内周面又は底面と接する。ピン626cは、凹部25内周面又は底面の少なくとも一部と接していれば良く、全部に一致していても良い。ピン626cは、本実施形態では樹脂部材62と一体成形されており、固定部626と一続きで樹脂部材62と同じ樹脂からなるが、金属で構成しても良い。この場合、樹脂部材62を成型する金型にインサート成型しても良いし、別途作製して固定部626の座面626dに取り付けるようにしても良い。
【0046】
端子台91、92は、端子ユニット6が固定されたケース2の一辺とは反対側に、ボルト73によってケース2に固定されている。この2つの端子台91、92には、それぞれ出力側バスバー93がモールド成型法により一体化されており、これら出力側バスバー93の一端が、コイル51〜54の端部51b〜54bと溶着等により電気的に接続されている。出力側バスバー93の他端には、2つの端子台91、92上に配置され、その部分に出力側の外部配線が接続される。
【0047】
[1−2.作用]
本実施形態の端子ユニットの作用について説明する。端子部611に外部電源などの外部機器が接続され、電力供給されると、導電本体616を介して、端子部612〜615に電流が分配される。例えば、端子部611から400Aの大電流の入力を受けて、導電本体616を介して端子部612〜615にそれぞれ100Aずつ分配する。
【0048】
上記のようにバスバー61は、通電されると発熱する。バスバー61の端子部611〜615は、大気中に露出した部分又は端子台621及び被覆部623の樹脂から放熱される。特に、端子部611は、他の4つの端子部612〜615よりも表面積を大きくしているので、主たる放熱路となる。なお、放熱路が主か副かは、各部周辺の導電部材の温度を測り、低い方を主放熱路とし、高い方を副放熱路とする。
【0049】
一方、端子部611が他の端子部612〜615に分配する電力を一手に引き受けるものであるから、4つの各端子部612〜615は、端子部611よりも表面積や体積が小さいものとなり、4つの端子部612〜615の放熱効果は小さいものとなる。導電本体616や端子部612〜615の接続部82は、樹脂部材62の被覆部622、623により被覆されているため、熱がこもりやすい。主たる放熱箇所となる端子部611から遠い程、温度が上昇する。特に、導電本体616の端子部614、615間における箇所での温度上昇が最も大きい。
【0050】
本実施形態では、この導電本体616の端子部614、615間における箇所に、固定部626を設けているため、固定部626から大気中へ熱を逃がすことができる。さらに、この固定部626がケース2に接しているため、導電本体616の熱は被覆部622、固定部626を介してケース2へ逃がすことができる。すなわち、被覆部622及び固定部626によって放熱路が形成される。
【0051】
図10は、端子部612から端子部615までの導電本体616の温度分布である。
図10に示すように、固定部626及びカラー626bを設けた実施例と、これらが設けられていない比較例のグラフが示されている。これらのグラフを全体的に見ると、端子部612から端子部615にかけて温度が上昇していることが分かる。特に、主たる放熱路である端子部611から最も遠い端子部614、615間で温度が最も高くなっているが、当該箇所に固定部626及び金属製のカラー626bを設けた実施例は、これらを設けない比較例より1度温度が下がっており、放熱効果が確認できる。また、固定部626にカラー626bを設けた場合が最も放熱効果が高いが、固定部626にカラー626bを設けない場合でも放熱効果は得られる。固定部626が設けられていない場合が最も放熱効果が低い。
【0052】
なお、
図10中のグラフを参照すると、4つの端子部612〜615が配設される箇所では、グラフの形状に若干の凹みがあり、温度下降が確認できる。これは、各端子部612〜615が副次的な放熱路となっていることを示している。
【0053】
また、カラー626bに差し込まれる金属製のボルト72も放熱路となる。さらに、固定部626のケース2と接する座面626dには、ピン626cを突出して設けるとともに、ケース2に設けた凹部25に嵌まり、接するようにしているので、被覆部622及びピン626cによっても放熱路が形成される。
【0054】
[1−3.効果]
(1)本実施形態の端子ユニット6は、バスバー61と、バスバー61の少なくとも一部を被覆する樹脂部材62と、を備え、バスバー61は、外部機器と電気的に接続される第1の端子部611と、外部部材であるコイル51〜54と電気的に接続され、互いに隔てて設けられた複数の第2の端子部612〜615と、を有し、第1の端子部611及び第2の端子部612〜615は外部に露出し、第2の端子部612〜615は、第1の端子部611より表面積がより小さく、樹脂部材62は、放熱性を有する放熱部となる固定部626を有し、固定部626は、樹脂部材62の、第1の端子部611より第2の端子部612〜615に近い箇所に設けるようにした。特に、樹脂部材の、第1の端子部611から最も遠い第2の端子部間614、615に設けるようにした。
【0055】
このように、バスバー61の熱が逃げにくい端子部612〜615近傍に、放熱性を有する固定部626を設けたので、効率的にバスバー61の熱を放熱することができる。
【0056】
(2)樹脂部材62は、第1の端子部611の近傍に設けられ、樹脂部材62を放熱部材であるケース2に固定するための固定部624、625と、樹脂部材62をケース2に固定するための固定部626と、を有し、固定部626を放熱部とするようにした。これにより、固定部626を、端子ユニット6をケース2に固定する機能と、バスバー61の熱を放熱する機能とに兼用できる。
【0057】
すなわち、従来のリアクトルのバスバー構造は、配線作業を容易にすることや、バスバーとその他の部材との絶縁を確保することが目的であるから、バスバーの熱を放熱する積極的な構造にはなっていなかった。そのため、バスバーを被覆する樹脂部材には、当該樹脂部材を、リアクトル本体を収容するケースに固定するための固定部が設けられる場合があるが、その設置位置は、固定することを目的に決められるものであり、放熱のために位置を決定するという考慮がされたものではなかった。
【0058】
これに対して、本実施形態では、第1の固定部624、625と第2の固定部626は、全体として長尺な樹脂部材62において互いに離れた位置に設けられているため、樹脂部材62をケース2に対して安定して固定することができる。また、樹脂部材62において、主放熱路となる第1の端子部611から最も離れた第2の端子部614、615間は、最もバスバー61の熱が逃げにくい箇所であるが、当該箇所に熱伝導性を有する第2の固定部626を設けて、放熱部としても機能させたので、端子ユニット6及びリアクトル全体として省スペース化を図ることができる。
【0059】
さらに、この固定部626が、放熱部材であるケース2と接するようにしたので、放熱効率を向上させることができる。第2の固定部626が副放熱路を形成し、ケース2がヒートシンクとして機能する。そのため、最も熱がこもりやすい位置から効率的に外部に放熱することができる。
【0060】
(3)第2の固定部626には、金属製のカラー626bを埋め込むようにした。金属は熱伝導性が高いので、締結部材として用いられるカラー626bを放熱部材としても用いることができ、放熱効果を向上させることができる。
【0061】
(4)第2の固定部626には、放熱性を有する締結具であるボルト72を差し込み、第2の固定部626とケース2とを締結するようにした。これにより、締結具であるボルト72も放熱路となるため、放熱効果を向上させることができる。締結具は金属製であればなお好ましく、ボルト72に限らず、他の金属締結具であっても良い。
【0062】
(5)第2の固定部626は、樹脂部材62から一続きに突出し、樹脂部材62と同じ樹脂からなるようにした。いわゆる一体成形により固定部626を成形したことにより、固定部を別途作製し、接着剤等により樹脂部材の表面に取り付ける場合に比べて、製造の工数及び製造コストを削減することができる。
【0063】
(6)バスバー61は、長尺の板状部材であり、第2の端子部612〜615が、バスバー61の長手方向に所定の間隔で複数設けられ、その長手方向と直交するバスバー61の幅が所定の間隔毎に順次狭くなるようにした。バスバー61の幅が、これら複数の第2の端子部612〜615を設けた箇所から導電容量に応じて順次狭くしているので、バスバー61を導電容量に応じた最小限の寸法、形状とすることができ、バスバー61や樹脂部材62の小型化や材料の削減が可能となる。
【0064】
(7)上記(1)〜(6)の何れかの端子ユニット6を用いたリアクトルは、放熱部として固定部626を設けているので、バスバー61に大電流を流す場合であっても効率的に放熱することができる。
【0065】
(8)上記の(1)〜(5)の何れかの端子ユニット6を用いたリアクトルは、固定部626が固定と放熱の両方を兼ねているので、放熱機構を別途設ける必要がなくなるので、小型化が可能になる。
【0066】
(9)第2の固定部626には、その座面626dから突出したピン626cが設けられ、ケース2には、ピン626cが挿入される凹部25が設けられ、ピン626cと凹部25が接するようにした。これにより、固定部626とは別に、ピン626cによって放熱路が形成されるので、放熱効率を更に向上させることができる。
【0067】
(10)ピン626cは、熱伝導性を有する樹脂又は金属からなるようにした。これにより、放熱効率を更に向上させることができる。
【0068】
(11)ピン626cは、金属製のカラー626bよりバスバー61の近くに配置するようにした。これにより、金属製のカラー626bは熱伝導性が高いことから、導電部材であるバスバー61の熱は当該カラー626bの方に流れていく。ピン626cは、カラー626bよりバスバー61の近くに配置するようにしたので、バスバー61からカラー626bまでの熱伝導経路上に位置することになる。すなわち、当該熱伝導経路に伝わる熱の一部がピン626cを介してケース2の方へ流れる放熱経路が、カラー626bを介しての放熱経路とは別に形成できる。これにより、放熱効率を向上させることができる。
【0069】
[2.他の実施形態]
本発明は、第1の実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、第1の実施形態及び下記の他の実施形態の少なくともいずれか2つを組み合わせた形態も包含する。
【0070】
(1)第1の実施形態では、環状コア11、12を構成するために、コア部材としてU字型コア及びI字型コアを用いたが、これに限定されない。これらの他にもコア部材として、E字型コア、T字型コア、C字型コア、J字型コアその他の環状コア11、12を構成可能な形状を有するコアを用いることができる。また、環状コア11、12は、必ずしも分割されたコア部材により構成しなくても良く、単一の環状コアとしても良い。