特許第6554301号(P6554301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554301
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】分注装置、自動分析装置および分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20190722BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
   G01N35/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-65954(P2015-65954)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186429(P2016-186429A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 泰広
(72)【発明者】
【氏名】元津 和典
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−032928(JP,A)
【文献】 特開2014−149187(JP,A)
【文献】 特開2004−125780(JP,A)
【文献】 特開平09−127136(JP,A)
【文献】 特開平11−271328(JP,A)
【文献】 特開2003−057096(JP,A)
【文献】 特開2011−027480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0319108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注部と、
前記分注部による前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知部と、
前記液面検知部が前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定部と、
前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬が分注優先試薬に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注部に前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬が前記分注優先試薬に該当しない場合に、前記分注部に前記試薬の分注を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注部と、
前記分注部による前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知部と、
前記液面検知部が前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定部と、
前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記分注部による前記試薬の分注工程が最初の工程を除く後工程に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注部に前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の分注工程が前記後工程に該当しない場合に、前記分注部に前記試薬の分注を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項3】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注部と、
前記分注部による前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知部と、
前記液面検知部が前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定部と、
前記分注部の吸引吐出部を洗浄する洗浄部と、
前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記洗浄部による前記試薬の洗浄工程が特定洗浄工程に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注部に前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の洗浄工程が前記特定洗浄工程に該当しない場合に、前記分注部に前記試薬の分注を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項4】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注部と、
前記分注部による前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知部と、
前記液面検知部が前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定部と、
前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の残量が所定量以下である場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注部に前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の残量が前記所定量を超える場合に、前記分注部に前記試薬の分注を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の分注装置であって、
前記液面検知部による前記液面の検知感度を調整可能な感度調整部をさらに備え、
前記制御部は、前記分注部による前記試薬の再分注時に、前記検知感度を下げることを特徴とする分注装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の分注装置であって、
報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記分注部による前記試薬の再分注時に、前記報知部に再分注に関する報知を行わせることを特徴とする分注装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の分注装置と、
前記反応容器の反応結果を光学的に測定する光学測定装置と、を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注ステップと、
前記分注ステップによる前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知ステップと、
前記液面検知ステップで前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定ステップと、
前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬が分注優先試薬に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注ステップによる前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬が前記分注優先試薬に該当しない場合に、前記分注ステップによる前記試薬の分注を停止させる制御ステップと、
を実行する分注方法。
【請求項9】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注ステップと、
前記分注ステップによる前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知ステップと、
前記液面検知ステップで前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定ステップと、
前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記分注ステップによる前記試薬の分注工程が最初の工程を除く後工程に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注ステップによる前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記分注ステップによる前記試薬の分注工程が前記後工程に該当しない場合に、前記分注ステップによる前記試薬の分注を停止させる制御ステップと、
を実行することを特徴とする分注方法。
【請求項10】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注ステップと、
前記分注ステップによる前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知ステップと、
前記液面検知ステップで前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定ステップと、
前記分注ステップで吸引吐出を行うための吸引吐出部を洗浄する洗浄ステップと、
前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記洗浄ステップによる前記試薬の洗浄工程が特定洗浄工程に該当する場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注ステップによる前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定ステップによって前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記洗浄ステップによる前記試薬の洗浄工程が前記特定洗浄工程に該当しない場合に、前記分注ステップによる前記試薬の分注を停止させる制御ステップと、
を備えたことを特徴とする分注方法。
【請求項11】
試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注ステップと、
前記分注ステップによる前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知ステップと、
前記液面検知ステップで前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定ステップと、
前記誤検知判定ステップで前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の残量が所定量以下である場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注ステップによる前記試薬の再分注を行わせ、前記誤検知判定ステップで前記液面が誤検知であると判定され、かつ前記試薬の残量が前記所定量を超える場合に、前記分注ステップによる前記試薬の分注を停止させる制御ステップと、
を実行することを特徴とする分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を分注する分注装置、当該分注装置を備えた自動分析装置および分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させることによって、当該検体の成分を分析する自動分析装置が知られている。自動分析装置は、検体および試薬を細管状のプローブによって吸引する。自動分析装置は、検体および試薬の液面を検知する機能(液面検知機能)を備えている。
【0003】
しかし、液面検知機能は、例えば容器の内部に泡が発生していると、当該泡にプローブの先端が接触することによって液面と誤検知してしまうことがあった。そこで、例えば特許文献1においては、液面を誤検知した場合でも、分注動作を継続して行うことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−271328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、全ての試薬について分注動作を継続させる必要は無い。例えば分注動作を停止して再度洗浄等を行う場合でも経済的コストまたは時間的ロスが最小限にとどめられる場合もある。また、試薬間で影響がある組み合わせも存在し、試薬容器への汚染を考慮して、分注動作を停止することが望ましい場合もある。
【0006】
そこで、この発明は、経済的コストまたは時間的ロスの低減を考慮した分注動作を行う分注装置、自動分析装置および分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の分注装置は、試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注部と、前記分注部による前記試薬の吸引時に、前記試薬の液面を検知する液面検知部と、前記液面検知部が前記液面を誤検知したか否かを判定する誤検知判定部と、前記誤検知判定部によって前記液面が誤検知であると判定され、かつ所定の条件を満たす場合に、前記液面の誤検知を解除して、前記分注部に前記試薬の再分注を行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
所定の条件とは、例えば、試薬が予め設定された試薬に該当する場合、分注部による試薬の分注工程が予め設定された分注工程に該当する場合、洗浄部による試薬の洗浄工程が予め設定された洗浄工程に該当する場合、または試薬の残量が所定量以下である場合、等である。
【0009】
予め設定された試薬とは、実際に分析に用いる複数の試薬のうち、例えば最も高価な試薬である。高価な試薬である場合、分注動作を停止して再度洗浄等を行うと、コストへの影響が相対的に大きいため、再分注を行わせる。一方で、他の試薬の場合は、相対的にコストへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。
【0010】
また、予め設定された分注工程とは、複数の分注工程のうち、例えば最終工程、最終工程の1つ前の工程、あるいは高価な試薬の分注工程の後の他の試薬の分注工程等の後工程の場合である。例えば最終工程において分注動作を停止して再度洗浄等を行うと、最初の工程から分注を再開する必要があり、コストおよび時間ロスへの影響が相対的に大きいため、再分注を行わせる。一方で、例えば最初の工程である場合、相対的にコストおよび時間ロスへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。
【0011】
また、予め設定された洗浄工程とは、例えば粘度が高い場合等で洗浄に時間を要する試薬に対する洗浄工程である。時間を要する洗浄工程である場合、時間ロスへの影響が相対的に大きいため、再分注を行わせる。一方で、相対的に洗浄が容易であり、短時間で済む洗浄工程である場合、相対的に時間ロスへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。あるいは、試薬間で影響の大きい場合、試薬容器への汚染を考慮して、分注動作を停止することが望ましい場合もある。
【0012】
ある試薬の残量が所定量以下である場合、全ての試薬を破棄して新たな試薬に変更する必要がある。そこで、いずれか1つの試薬の残量が所定量以下となった場合、他の試薬を無駄にしないために、再分注を行わせる。
【0013】
なお、液面の誤検知は、例えば試薬を吸引するプローブが試薬容器の開口部に付着した試薬(または結露した水)に接触する場合、あるいは試薬容器内の気泡に接触する場合に発生する。このような場合、再分注を行ったとしても、再び液面を誤検知する場合がある。そこで、分注装置は、前記液面検知部による前記液面の検知感度を調整可能な感度調整部をさらに備え、前記制御部は、前記分注部による前記試薬の再分注時に、前記検知感度を下げることが好ましい。
【0014】
また、分注装置は、報知部をさらに備え、前記制御部は、前記分注部による前記試薬の再分注時に、前記報知部に再分注に関する報知を行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、コストまたは工程ロスの低減を考慮した分注動作を行う分注装置、自動分析装置および分注方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は、自動分析装置100の構成を示す平面図であり、図1(B)は、断面図である。
図2】自動分析装置100の構成を示すブロック図である。
図3】分注動作を示すフローチャートである。
図4】再分注を行うか否かを示す表である。
図5】分注動作を示すフローチャートである。
図6】再分注を行うか否かを示す表である。
図7】分注動作を示すフローチャートである。
図8】再分注を行うか否かを示す表である。
図9】分注動作を示すフローチャートである。
図10】分注動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(A)は、本発明の自動分析装置100の構成を示す平面図であり、図1(B)は、試薬庫1および試薬分注ユニット4の構成を示す断面図である。図2は、自動分析装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0018】
自動分析装置100は、試薬庫1、反応庫2、検体庫3、試薬分注ユニット4、検体分注ユニット5、洗浄部8、洗浄部9、および光学測定装置51を備えている。また、図2に示すように、自動分析装置100は、機能的に、駆動部30、分注部31、制御部32、液面検知部33、誤検知判定部34、感度調整部35、および表示部36をさらに備えている。
【0019】
駆動部30、分注部31、制御部32、液面検知部33、誤検知判定部34、感度調整部35、表示部36、洗浄部8、および洗浄部9により、分注装置19が実現される。
【0020】
試薬庫1には、複数の試薬容器11が配置されている。各試薬容器11は、所定の温度(例えば4℃程度)で保冷されている。反応庫2には、検体と試薬とを反応させるための反応容器21が複数配置されている。検体庫3には、検体を収納するための検体容器300が複数配置されている。なお、図1(A)においては、試薬容器11、反応容器21、および検体容器300は、一部のみ図示している。実際にはさらに多数の容器が配置されている。
【0021】
自動分析装置100は、検体分注ユニット5によって検体容器300から反応容器21に検体を分注する。また、自動分析装置100は、試薬分注ユニット4によって、試薬容器11から反応容器21に試薬を分注する。そして、体温程度に保温された反応容器21で検体と試薬とを反応させ、光学測定装置51により光学特性を測定する。
【0022】
図1(B)に示すように、試薬分注ユニット4は、プローブ40、アーム41、および支軸42を備えている。
【0023】
プローブ40は、試薬容器11から試薬を吸引し、反応容器21に当該試薬を吐出する。試薬の吸引および吐出は、分注部31により制御される。
【0024】
プローブ40の上端には、アーム41の一端が取り付けられている。アーム41の他端には、支軸42が取り付けられている。支軸42は、アーム41の他端を支持するとともに、平面視して当該支軸42を軸としてアーム41を回転させる。また、支軸42は、アーム41を上下に移動させる。これにより、支軸42は、プローブ40を所定の位置に移動させる。支軸42の回転および上下移動は、駆動部30により行われる。
【0025】
同様に、検体分注ユニット5は、プローブ(不図示)、アーム50、および支軸52を備えている。検体分注ユニット5のプローブは、検体容器300から検体を吸引し、反応容器21に当該検体を吐出する。検体の吸引および吐出は、分注部31により制御される。
【0026】
支軸52は、アーム50を回転および上下に移動させることで、プローブを所定の位置に移動させる。支軸52の回転および上下移動は、駆動部30により行われる。
【0027】
洗浄部8は、試薬庫1と反応庫2との間に配置され、試薬分注ユニット4のプローブ40を洗浄する。また、洗浄部9は、検体庫3と反応庫2との間に配置され、検体分注ユニット5のプローブを洗浄する。洗浄部8および洗浄部9の動作は、制御部32により制御される。
【0028】
反応庫2には、光学測定装置51が設置されている。光学測定装置51は、反応容器21内で生じた反応結果を光学的に測定する。光学測定装置51は、例えば、反応容器21を透過する光の強度を測定する測光ユニットと、測定ユニットの測定結果を用いて検体の分析を行う分析ユニットと、からなる。分析ユニットは、例えばパーソナルコンピュータにより実現される。
【0029】
試薬庫1は、図1(B)に示すように、円盤状のテーブル15と、テーブル15を回転自在に保持する軸部16と、を備えている。テーブル15には、異なる試薬が収納された複数の試薬容器11がそれぞれ設置され、軸部16およびテーブル15が回転することにより、所定の試薬をプローブ40が吸引することが可能となっている。軸部16およびテーブル15は、駆動部30により回転される。反応庫2および検体庫3についても同様の構造を有する。
【0030】
なお、試薬庫1は、試薬容器11を攪拌するための機能を備えていてもよい。例えば、免疫用の試薬である場合、検知目的の物質以外を分離させるために、磁性粒子を分散混入させている場合がある。この場合、試薬庫1は、免疫用の試薬を配置するために、攪拌する機能を備えていることが好ましい。
【0031】
次に、液面検知部33および誤検知判定部34について説明する。液面検知部33は、プローブ40の先端が試薬容器11内の試薬の液面に達しているか否かを検知する。液面検知部33は、プローブ40と電気的に接続されていて、プローブ40に生じる静電容量を検知する。プローブ40が液面に到達すると、当該静電容量が大きく変化する。したがって、液面検知部33は、静電容量が所定しきい値H1以上変化した場合に、液面を検知したことを誤検知判定部34に通知する。所定しきい値H1は、感度調整部35により調整される。
【0032】
誤検知判定部34は、液面検知部33から液面を検知した旨の通知を受けた場合に、当該液面の検知が正しいか否かを判定する。例えば、誤検知判定部34は、試薬容器11の表面の色彩または濃淡を光学的に検知することにより、試薬容器11内の液面の位置を判定する。誤検知判定部34は、液面検知部33から液面を検知した旨の通知を受けた場合に、光学的に測定した液面の位置と、プローブ40の先端の位置とが対応する場合に、プローブ40が液面に達したと判断し、光学的に測定した液面の位置と、プローブ40の先端の位置とが所定距離以上離れていた場合に、誤検知であると判定する。なお、プローブ40の位置は、制御部32により通知される。
【0033】
次に、図3は、分注方法の動作を示すフローチャートである。分注動作が始まると、制御部32は、感度調整部35を介して、液面検知部33における静電容量のしきい値を所定しきい値H1に設定する(s11:通常液面検知パラメータ設定)。
【0034】
次に、制御部32は、駆動部30を制御して、プローブ40を下降させる(s12)。その後、液面検知部33が所定しきい値H1以上の静電容量の変化を検知した場合、制御部32は、プローブ40を停止させる(s13)。
【0035】
そして、誤検知判定部34は、液面検知部33から液面を検知した旨の通知を受けた場合に、当該液面の検知が正しいか否かを判定する(s14)。誤検知判定部34において、プローブ40が正常に液面に達したと判断した場合、制御部32は、プローブ40に試薬を吸引させる(s15)。その後、制御部32は、プローブ40を反応容器21まで移動させて反応容器21に当該試薬を吐出させる。
【0036】
一方、誤検知判定部34において、液面の誤検知であると判定した場合、制御部32は、現在分注しようとしている試薬が分注優先試薬(予め設定された試薬)であるか否かを判定する(s16)。制御部32は、分注優先試薬でないと判定した場合、分注動作を停止し(s17)、分注優先試薬であると判定した場合、感度調整部35を介して再液面検知パラメータ設定(s18)を行い、プローブを下降させて再分注を行う(s12)。このとき、制御部32は、表示部36に再分注を行う旨の表示を行うことで再分注の報知を行う(あるいはスピーカから音を鳴らしてもよい)。
【0037】
再液面検知パラメータ設定では、液面検知部33のしきい値を、上記所定しきい値H1よりも低い閾値H2に設定し、検知感度を下げる。液面の誤検知は、例えば試薬を吸引するプローブが試薬容器11の開口部11Aに付着した試薬(または結露した水)に接触する場合、あるいは試薬容器11内の気泡に接触する場合に発生する。
【0038】
このような場合、再分注を行ったとしても、再び液面を誤検知する場合がある。そこで、再分注を行う場合には、液面検知部33のしきい値を、上記所定しきい値H1よりも低い閾値H2に設定し、検知感度を下げる。
【0039】
分注優先試薬とは、実際に分析に用いる複数の試薬のうち、例えば最も高価な試薬である。高価な試薬である場合、分注動作を停止して再度洗浄等を行うと、コストへの影響が相対的に大きいため、再分注を行わせる。一方で、他の相対的に安価な試薬の場合は、相対的にコストへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。
【0040】
例えば、図4の表に示すように、工程1において試薬R1、工程2において試薬R2、および工程3において試薬R3を分注する場合において、試薬R3が相対的に最も高価である場合、パターン1に示すように、試薬R3の分注を行う工程3において液面の誤検知であると判定した場合には、分注動作を停止せずに、次の工程4において試薬R3の再分注を行う。一方で、試薬R1の分注を行う工程1または試薬R2の分注を行う工程2において液面の誤検知であると判定した場合には、パターン2またはパターン3に示すように、分注動作を停止する。
【0041】
例えば、パターン2においては、試薬R2の分注を行う工程2において液面の誤検知であると判定されたため、工程3では試薬R2の分注を停止して、洗浄を行って試薬R1から分注をやり直すか、または次のオーダー(別の検体の検査)に移行する。また、パターン3においては、試薬R1の分注を行う工程1において液面の誤検知であると判定されたため、工程2では洗浄を行って試薬R1の分注をやり直すか、または次のオーダー(別の検体の検査)に移行する。一方で、パターン4においては、試薬R3まで全て液面検知が正常であると判定されたため、工程4において次のオーダーに移行する。
【0042】
このようにして、分注装置19は、試薬の価格に応じて再分注を行うか否かを判断するため、コストへの影響を考慮しながら分注動作を停止させたり、再分注を行ったりすることができる。なお、図3および図4の例では、最も高価な試薬についてのみ再分注を行う例を示したが、例えば最も高価な試薬の次に高価な試薬(例えば試薬R2)の分注時に液面を誤検知した場合にも、再分注を行うようにしてもよい。
【0043】
また、再分注を行うか否かは、図3に示すような試薬の価格に応じて行う例に限るものではない。図5は、別の分注方法の動作を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、図3に示したフローチャートと同じ処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
この例では、制御部32は、図3で示した分注優先試薬(予め設定された試薬)であるか否かの判定処理(s16)に代えて、後工程(予め設定された分注工程)であるか否かを判断する(s21)。ここで、後工程は、本実施形態では、例えば最終工程である。制御部32は、最終工程でないと判定した場合、分注動作を停止し(s17)、最終工程であると判定した場合、感度調整部35を介して再液面検知パラメータ設定(s18)を行い、プローブを下降させて再分注を行う(s12)。
【0045】
例えば、図6に示すように、試薬R3の分注が最終工程である場合において、パターン1に示すように、工程3で液面の誤検知であると判定した場合には、分注動作を停止せずに、次の工程4において試薬R3の再分注を行う。一方で、最終工程ではない試薬R1の分注を行う工程1または試薬R2の分注を行う工程2において液面の誤検知であると判定した場合には、パターン2またはパターン3に示すように、分注動作を停止する。
【0046】
このように、図5および図6に示した例では、最終工程において分注動作を停止して再度洗浄等を行うと、最初の工程から分注を再開する必要があり、コストおよび時間ロスへの影響が相対的に大きいため、最終工程においては、再分注を行わせる。一方で、例えば最初の工程である場合、相対的にコストおよび時間ロスへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。
【0047】
なお、図5および図6の例では、後工程は最終工程であったが、これに限定されるものではなく、最終工程よりも所定工程数前の分注工程であってもよいことは言うまでもない。
【0048】
また、後工程は、例えば最も高価な試薬の分注工程の後の他の試薬の分注工程であってもよい。これにより、当該他の試薬の分注工程において誤検知した場合にも再分注を行わせるので、最も高価な試薬のコストロスを低減できる。
【0049】
次に、図7は、さらに別の分注方法の動作を示すフローチャートである。図7のフローチャートにおいて、図3に示したフローチャートと同じ処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
この例では、制御部32は、図3で示した分注優先試薬(予め設定された試薬)であるか否かの判定処理(s16)に代えて、特定洗浄工程(予め設定された洗浄工程)であるか否かを判断する(s22)。制御部32は、特定洗浄工程でないと判定した場合、分注動作を停止し(s17)、特定洗浄工程であると判定した場合、感度調整部35を介して再液面検知パラメータ設定(s18)を行い、プローブを下降させ、再分注を行う(s12)。
【0051】
特定洗浄工程は、例えば粘度が高い場合等で洗浄に時間を要する試薬に対する洗浄工程である。時間を要する洗浄工程である場合、時間ロスへの影響が相対的に大きいため、再分注を行わせる。一方で、相対的に洗浄が容易であり、短時間で済む洗浄工程である場合、相対的に時間ロスへの影響が小さいため、分注動作を停止して再度洗浄を行う。あるいは、試薬間で影響の大きい場合(例えば試薬R3に試薬R2が混入すると、測定への影響が大きい場合)、試薬R3の試薬容器11への汚染を考慮して、試薬R2の分注時には、液面を誤検知したとしても分注動作を停止する(すなわち、試薬R2の分注工程では、特定洗浄工程ではないものとしておく)。
【0052】
例えば、図8に示すように、試薬R3の分注後の洗浄工程が特定洗浄工程である場合、パターン1に示すように、試薬R3の分注を行う工程3において液面の誤検知であると判定した場合には、分注動作を停止せずに、次の工程4において試薬R3の再分注を行う。一方で、特定洗浄工程ではない試薬R1の分注を行う工程1または試薬R2の分注を行う工程2において液面の誤検知であると判定した場合には、パターン2またはパターン3に示すように、分注動作を停止する。
【0053】
次に、図9は、さらに別の分注方法の動作を示すフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、図3に示したフローチャートと同じ処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
この例では、図3で示した分注優先試薬(予め設定された試薬)であるか否かの判定処理(s16)に代えて、制御部32は、試薬の残量が所定値以下であるか否かを判断する(s22)。試薬の残量が所定値以下であるとは、例えば誤検知判定部34で光学的に測定した液面の位置が、所定の下限位置以下の場合である。
【0055】
制御部32は、試薬の残量が所定値よりも多いと判定した場合、分注動作を停止し(s17)、試薬の残量が所定値以下であると判定した場合、感度調整部35を介して再液面検知パラメータ設定(s18)を行い、プローブを下降させる(s12)。
【0056】
複数の試薬を用いる場合、測定精度の関係から、各試薬は、ロットを揃える必要がある。したがって、ある試薬が試薬容器11から無くなった場合、他の試薬の残量が十分であったとしても、全ての試薬を破棄して新たな試薬に変更する必要がある。そこで、いずれか1つの試薬の残量が所定量以下となった場合、他の試薬を無駄にしないために、再分注を行わせる。
【0057】
なお、図3乃至図9に示した各種の分注方法は、適宜組み合わせることができる。例えば、図10に示すように、制御部32は、分注優先試薬(予め設定された試薬)であるか否かの判定処理(s16)で、分注優先試薬ではないと判定した場合であっても、さらに最終工程(予め設定された分注工程)であるか否かを判断し(s21)、最終工程ではない場合に分注動作を停止するようにしてもよい。また、制御部32は、最終工程であると判定した場合であっても、特定洗浄工程(予め設定された洗浄工程)であるか否かを判断し(s22)、特定洗浄工程でない場合には、分注動作を停止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…試薬庫
2…反応庫
3…検体庫
4…試薬分注ユニット
5…検体分注ユニット
8,9…洗浄部
11…試薬容器
11A…開口部
15…テーブル
16…軸部
19…分注装置
21…反応容器
30…駆動部
31…分注部
32…制御部
33…液面検知部
34…誤検知判定部
35…感度調整部
36…表示部
40…プローブ
41,50…アーム
42,52…支軸
51…光学測定装置
100…自動分析装置
300…検体容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10