(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製造業者などの経営課題の一つとして、自社が生産した真正品とは異なる偽物の対策が挙げられる。すなわち、不正な流通経路を経由して市場に流通される、安価な偽物の存在は、真正品の市場を侵食するうえに、品質の低い偽物が市場に流通すると、真正品の信用まで損なわれるおそれがある。
【0003】
そこで偽物を市場から排除するための対策として、市場に流通する商品が真正品であるか偽物であるかを判定する、真贋判定システムが用いられてきた。従来の真贋判定システムの一例として、利用者が商品に付与されているシリアル番号を入力し、真正品に関する情報が格納されているデータベースと照合し、真贋判定するというシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されているシステムは、商品にバーコードとして付されたシリアル番号を携帯電話端末で読み込み、公衆通信網を通じてサーバ装置に送信し、サーバ装置が真贋判定を行って携帯電話端末に判定結果を回答する、というシステムである。このシステムを用いれば、利用者が手にする商品が、真正品なのか偽物なのかを判定することができる。しかし生産者にとっては、その商品がどこに所在するものなのか、どのような流通経路をたどってきたものなのか、知ることができない。すなわち、このシステムで生産者が取得できる情報は、偽物が流通しているという事実のみに留まり、どこでどれだけの規模の偽物が発生したかはわからない。そのため、このシステムに基づいて具体的な偽物対策をするのは困難であるという問題があった。
【0005】
その一方で、真贋判定を行うとともに、利用者に利用者自身に関する情報を入力させて、商品の所在地の情報を収集するシステムも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示されているシステムは、利用者がどのようにして商品を入手したかという情報及び商品に付されたコードを、利用者が端末装置に入力して公衆通信網を通じてサーバ装置に送信し、サーバ装置は真贋判定を行うとともに、利用者に関する情報を収集する、というシステムである。
【0007】
このシステムを用いれば、利用者は、自分が手にする商品が真正品なのか偽物なのかを判定することができるとともに、生産者は、商品の流通に関する情報を取得することができる。しかし、このシステムでは、商品の流通に関する情報の取得の成否は、利用者の入力に委ねられるため、もしも利用者が情報の入力を怠ると、生産者は商品の流通に関する情報を得ることができない、という問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、商品の真贋判定を行って判定結果を利用者に回答するとともに、利用者に負担を課すことなく、生産者が商品の流通に関する情報を得ることができる、真贋判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、利用者の要求に応じて商品の真贋を判定し、判定結果を回答する真贋判定システムであって、サーバ装置と、当該サーバ装置にインターネットを介して接続されたクライアント装置とを備え、前記クライアント装置は、商品毎に一意に付与された識別IDが前記利用者により入力されるのを受け付ける入力手段と、当該クライアント装置の位置を示す位置情報及び前記識別IDを、前記サーバ装置に送信する送信手段とを有し、前記サーバ装置は、前記識別IDと当該識別IDが付与された商品の流通情報とを対応付けて記録した流通データベースと、前記クライアント装置から送信された前記識別IDと前記流通データベースとを照合して商品の真贋を判定する真贋判定手段と、前記真贋判定手段による判定結果を前記クライアント装置に送信する回答手段と、前記クライアント装置から送信された前記位置情報に基づき前記利用者の所在地を特定する所在地特定手段と
、前記クライアント装置から送信された前記識別ID、前記所在地特定手段により特定された前記所在地、及び前記真贋判定手段による前記判定結果が互いに対応付けられたレコードを、真贋データベースとして記録する判定結果記録手段とを有し、前記判定結果記録手段は、前記クライアント装置から前記識別IDが送信される毎に、前記レコードを前記真贋データベースの別の行に追記することを特徴とする真贋判定システムである。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、前記クライアント装置が、無線通信方式に対応した通信機能を更に有し、前記クライアント装置が無線接続される基地局の情報に基づき、前記位置情報が特定されることを特徴とする請求項
1に記載の真贋判定システムである。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、前記クライアント装置が、GPS受信機能を更に有し、GPS衛星から受信した信号に基づき、前記位置情報が特定されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の真贋判定システムである。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、前記識別IDがバーコードとして商品に付与されており、前記入力手段は、商品の前記バーコードを読み取ることによって前記識別IDの入力を受け付けることを特徴とする請求項
1〜3のいずれかに記載の真贋判定システムである。
【0015】
請求項
5に記載の発明は、利用者の要求に応じて商品の真贋を判定し、インターネットを介して接続されたクライアント装置に判定結果を送信するサーバ装置であって、商品毎に一意に付与された識別IDと当該識別IDが付与された商品の流通情報とを対応付けて記録した流通データベースと、前記利用者により前記クライアント装置に入力されインターネットを介して受信した前記識別IDと前記流通データベースとを照合して商品の真贋を判定する真贋判定手段と、前記真贋判定手段による判定結果を前記クライアント装置に送信する回答手段と、前記クライアント装置の位置を示す位置情報を当該クライアント装置からインターネットを介して受信し、当該位置情報に基づき前記利用者の所在地を特定する所在地特定手段
と、前記クライアント装置から送信された前記識別ID、前記所在地特定手段により特定された前記所在地、及び前記真贋判定手段による前記判定結果が互いに対応付けられたレコードを、真贋データベースとして記録する判定結果記録手段とを備え、前記判定結果記録手段は、前記クライアント装置から前記識別IDが送信される毎に、前記レコードを前記真贋データベースの別の行に追記することを特徴とするサーバ装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、利用者の要求に応じて商品の真贋判定を実施し、判定結果を回答するとともに、利用者の所在地に関する情報を取得することができ
、真正品及び偽物の流通情報を蓄積することができる。
【0019】
請求項
2に記載の発明によれば、クライアント装置が備える無線通信機能を使用することで、利用者の詳細な位置を特定し、確度の高い所在地を取得することができる。
【0020】
請求項
3に記載の発明によれば、クライアント装置が備えるGPS受信機能を使用することで、利用者の詳細の位置を特定し、確度の高い所在地を取得することができる。
【0021】
請求項
4に記載の発明によれば、クライアント装置を商品の近傍に移動させて商品に付されたバーコードを読み取って識別IDをそのまま送信することで、簡易な操作で利用者の詳細な位置を特定し、確度の高い所在地を取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を適用した真贋判定システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
本発明に係る真贋判定システムについて、
図1〜6に基づき説明する。
図1は、本発明に係る真贋判定システムの主要構成図である。
図2は、本発明に係る真贋判定システムのサーバ装置に格納される流通データベースの一例を示すテーブルである。
図3は、本発明に係る真贋判定システムのブロック図である。
図4は、本発明に係る真贋判定システムが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図5、本発明に係る真贋判定システムの判定結果記録手段によって記録された真贋データベースの一例を示すテーブルである。
図6は、
図5に係る真贋データベースに基づいた解析結果の一例であり、世界で流通する偽物の分布と規模を視覚化した図である。
【0025】
まず、本発明に係る真贋判定システムの主要な構成要素について、
図1に基づき説明する。符号100で示す真贋判定システム100は、商品の消費者・取引者の要求に基づいて、商品の生産者が真贋判定を行い、真贋判定結果を消費者・取引者に回答する構成となっている。真贋判定システム100は、主要な構成要素として、商品の生産者が使用するサーバ装置10、及び商品の消費者・取引者が利用するクライアント装置20を有する。サーバ装置10及びクライアント装置20は、インターネット30に接続されており、互いに通信可能に構成されている。この真贋判定システム100は、商品90に付された識別ID50が利用者によりクライアント装置20に入力されて、サーバ装置10によって商品90の真贋判定がなされ、判定結果がインターネット30を介してクライアント装置20に送信されるように構成されている。
【0026】
図1に示す真贋判定システム100は、複数の種類の異なるクライアント装置20を有している。クライアント装置20aは固定端末であり、有線でインターネット30に接続されている。クライアント装置20bは携帯端末であり、無線通信方式の一つである移動体通信により、基地局31を介してインターネット30に接続されている。クライアント装置20cも携帯端末であるが、無線通信方式の一つである無線LANにより、アクセスポイント32(基地局とも呼ばれる)を介してインターネット30に接続されている。なお、携帯端末であるクライアント装置20b,20cは、GPS(Global Positioning System)機能を備え、不図示のGPS衛星の信号を受信することにより、公知の方法で現在地を測位可能に構成されている。
【0027】
インターネット30にはクラウドサーバ41が接続されている。クラウドサーバ41には、基地局31の位置(緯度・経度)の情報、アクセスポイント32の位置(緯度・経度)の情報、及びIPアドレスと位置(緯度・経度)の対応関係に関する情報のデータが格納されており、サーバ装置10又はクライアント装置20からの要求に応じて、各装置の位置情報を、インターネット30を介して回答するよう構成されている。なお、位置情報を取得するための標準化された機能として、W3C Geolocation API(Application Programming Interface)が知られているおり、この機能を用いることで位置情報を適宜な手段で取得することが可能である。W3C Geolocation APIについては、「http://www.w3.org/TR/geolocation−API/」において詳細に説明されている。
【0028】
次に、クライアント装置20について詳しく説明する。
図1に示すクライアント装置20a,20b,20cはそれぞれ、商品に付された識別IDを利用者が入力するための入力手段を備えており、固定端末であるクライアント装置20aはキーボード29を入力手段として備え、携帯端末であるクライアント装置20b,20cは、バーコードリーダ22を入力手段として備えている。
【0029】
クライアント装置20aを用いた場合、商品90aに文字として付された識別ID50aを、利用者がキーボード29を用いて入力して真贋判定を要求する。クライアント装置20bを用いた場合、商品90bに一次元バーコードとして付された識別ID50bを、利用者がバーコードリーダ22を用いて入力して真贋判定を要求する。クライアント装置20cを用いた場合、商品90cに二次元バーコードとして付された識別ID50cを、利用者がバーコードリーダ22を用いて入力して真贋判定を要求する。
【0030】
なお、固定端末であるクライアント装置20aにバーコードリーダを設け、バーコードとして付された識別ID50b,50cを入力して真贋判定を要求するように構成することも可能である。また、携帯端末であるクライアント装置20b,20cにキーボードなどの文字入力手段を設け、文字として付された識別ID50aを入力して真贋判定を要求するように構成することも可能である。
【0031】
次にサーバ装置10について詳しく説明する。
図1に示すサーバ装置10はインターネット30に接続されており、クライアント装置20及びクラウドサーバ41と情報を交換するよう構成されている。サーバ装置10には、商品の流通情報に関するデータベースである流通データベース6が格納されており、サーバ装置10は流通データベース6に基づいて真贋判定を行う。
【0032】
ここで流通データベース6について
図2に基づいて説明する。
図2は、真贋判定システム100のサーバ装置10に格納される流通データベース6の一例を示すテーブルである。
図2に示す流通データベース6は六つの列を有しており、一つの行に収められたデータが、互いに関連付けられたデータである。
【0033】
列61には、商品の識別IDのデータが記載されている。識別IDは商品毎に一意に付与されており、重複はない。列62には、商品の商品名が記載されている。列63には、商品のロット番号が記載されており、このロット番号は品質管理に利用される。列64には、商品の出荷先が記載されており、商品がどこに向けて出荷されたかが示される。なお、
図6に示す列64には、出荷先として企業名が記載されているが、国や都市を記載することも可能である。列65には、商品が出荷された出荷日が記載されている。そして列66は備考欄であり、任意に使用される。
【0034】
流通データベース6には、生産者から出荷される全ての商品(すなわち真正品)について、識別ID、商品名、ロット番号、出荷先及び出荷日の情報が格納されている。したがって、この流通データベース6に載っていない識別IDを有する商品は、真正品ではない偽物である、ということになる。
【0035】
また、商品の現在の所在地がわかれば、この流通データベース6と照合することによって、商品が出荷先に出荷された後、どのように移動したかを把握することができる。また、出荷日からの経過時間と対比することで、どれだけの距離をどれだけの時間をかけて商品が移動したのかがわかる。
【0036】
この流通データベース6は商品の生産者により作成されるものであり、商品が出荷される毎に識別ID、商品名、ロット番号、出荷先及び出荷日の各情報が入力されて、作成される。これらの情報を入力する方法は、商品毎に逐一入力する方法、ロット毎にまとめて入力する方法等、適宜な方法を選択できる。
【0037】
なお、識別IDは商品毎に一意に付与されて、重複することはない。第三者が識別IDを複製して偽物に付与して流通させることを防止するため、識別IDは暗号化されていることが望ましい。そのため、商品に固有のシリアル番号を暗号化して、識別IDとすることが好適である。また、識別IDは商品毎に一意に付与されるものであるため、オンデマンドのラベルライターを用いて一枚づつ作成して商品に貼付するのが好適である。これにより、少量生産品についても流通データベース6を容易に作成することが可能となる。また識別IDは、
図1に示すように、文字、一次元バーコード、二次元バーコード等の適宜な形式を採用することができる。
【0038】
次に、
図3に基づき、サーバ装置10及びクライアント装置20の構成及び機能について説明する。
図3は真贋判定システム100のブロック図である。
【0039】
サーバ装置10は、記憶装置11、通信部12及び制御部13を有し、これらはバス14を介して情報を相互に交換可能に構成されている。記憶装置11には、サーバ装置10全体の制御に必要なプログラム及びデータが格納されている。また記憶装置11には、前述の流通データベース6が格納されている。また記憶装置11には、緯度・経度と国・都市の対応関係が記述された地図データも格納されている。さらに、クライアント装置20から受信した情報及びクラウドサーバ41から受信した情報も記憶装置11に格納され、真贋判定された結果も記憶装置11に格納される。
【0040】
通信部12は、クライアント装置20及びクラウドサーバ41から送信された情報を、インターネット30を介して受信するとともに、記憶装置11に格納された情報を送信するよう構成されている。図示の通信部12は有線でインターネット30に接続されているが、有線に代えて、無線通信部として構成して無線接続することも可能である。制御部13は、記憶装置11に格納されるプログラム及びデータを用いて、サーバ装置10全体を制御する。
【0041】
次にクライアント装置20は、記憶装置21、バーコードリーダ22、制御部23、入力装置24、GPS受信部25、通信部26及び表示装置27を有し、これらはバス28を介して情報を相互に交換可能に構成されている。記憶装置21には、クライアント装置20全体の制御に必要なプログラム及びデータが格納されている。また、サーバ装置10から送信された情報及びクラウドサーバ41から送信された情報は、記憶装置21に格納される。
【0042】
バーコードリーダ22は、
図1に示す通り、一次元バーコード(
図1のクライアント装置20b)又は二次元バーコード(
図1のクライアント装置20c)を読み取り可能に設けられており、読み取ったバーコードの情報はバス28に送信される。なおバーコードリーダ22は、専用装置として構成することに代えて、カメラと画像処理ソフトウェアとを組み合わせて構成することも可能である。
【0043】
制御部23は、記憶装置21に格納されるプログラム及びデータを用いて、クライアント装置20全体を制御する。入力装置24は、利用者からの入力を受け付ける装置であり、
図1に示すクライアント装置20aにおけるキーボード29のような文字入力のほか、音声入力を受け付けるよう構成することも可能である。なお、バーコードリーダ22及び入力装置24は、いずれか一方又は両方を設けることができる。バーコードリーダ22及び入力装置24はいずれも、識別IDが利用者により入力されるのを受け付ける入力手段の一形態である。
【0044】
GPS受信部25は、GPS衛星からの信号を受信する。GPS受信部25で受信された信号に基づき、制御部23が公知の方法で演算することで、クライアント装置20の位置(緯度・経度)を測位することが可能となる。
【0045】
通信部26は、サーバ装置10及びクラウドサーバ41から送信された情報を、インターネット30を介して受信するとともに、記憶装置21に格納された情報及びクライアント装置20が保有する情報を送信するよう構成されている。なお、図示の通信部26は有線でインターネット30に接続されているが、有線に代えて、無線通信部として構成して無線接続することも可能である。
【0046】
通信部26からインターネット30に送信される情報として、具体的にはクライアント装置20のIPアドレス、GPS機能により得られた位置(緯度・経度)が挙げられる。また、通信部26が無線通信部として構成された場合は、接続先の基地局及びアクセスポイントに関する情報をインターネット30に送信し、その情報に基づき特定された位置(緯度・経度)をクラウドサーバ41から受信する。
【0047】
表示装置27は、クライアント装置20が有する情報を利用者に表示する装置であり、入力装置24により入力された情報及びサーバ装置10から送信された真贋判定結果は、表示装置27に表示される。利用者はこの表示装置27を介して商品の真贋判定結果を知ることになる。
【0048】
なお、必ずしも全てのクライアント装置20が
図3に示す要素を全て備える必要ななく、例えば
図1のクライアント装置20aは固定端末であり、バーコードリーダ22及びGPS受信部25を備えない。
【0049】
なお、真贋判定システム100として行うべき演算は、サーバ装置10の制御部13及びクライアント装置20の制御部23のいずれかで行えばよく、また真贋判定システム100として必要な情報は、サーバ装置10の記憶装置11及びクライアント装置20の記憶装置21のいずれかに格納すればよい。
【0050】
また、
図1,3に示すサーバ装置10は、生産者が所有するサーバ装置である必要はなく、設置する場所も問われない。すなわち、ホスティングサーバをサーバ装置10として使用することも可能であり、クラウドサーバをサーバ装置10として使用することも可能である。また、
図1,3に示すクラウドサーバ41に代えて、同じ機能を有するサーバ装置を生産者が専有するよう構成することも可能である。
【0051】
次に、真贋判定システム100が実施する一連の処理の手順について、
図4に基づいて説明する。
図4は、本発明に係る真贋判定システム100が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【0052】
真贋判定システム100が実施する処理は、利用者がクライアント装置20を用いて真贋判定を要求することで始まり、最初のステップS11では、クライアント装置20の入力手段から、商品の識別IDが入力される。識別IDが文字として商品に付与されている場合(
図1に示す商品90aの識別ID50a)、キーボード29から入力される(
図1示すクライアント装置20a)。また、識別IDが商品にバーコードとして付与されている場合(
図1に示す商品90b,90cそれぞれの識別ID50b,50c)、バーコードリーダ22から入力される(
図1に示すクライアント装置20b,20c)。この他にも、入力装置24として音声入力装置が採用されている場合、音声で入力することもできる。なお、識別IDの入力は、利用者がウェブ画面上で入力する形態や、アプリケーションを実行することで入力する形態など適宜な形態を採用することができる。
【0053】
ステップS12では、識別ID及び位置情報がサーバ装置10に送信される。識別IDは、ステップS11で入力されたものである。位置情報は、クライアント装置20の位置を示す情報であり、クライアント装置20のIPアドレス、クライアント装置20が無線接続された基地局・アクセスポイントの情報、GPS機能により測位された緯度・経度、又はIPアドレス若しくは基地局・アクセスポイントの情報に基づき得られた緯度・経度である。
【0054】
なお、ステップS12においてクライアント装置20からサーバ装置10に送信する位置情報として、IPアドレス又は基地局・アクセスポイントの情報をサーバ装置10に送信することに代えて、これらの情報を一旦クラウドサーバ41に問い合わせて緯度・経度を取得してから、この緯度・経度をサーバ装置10に送信するよう構成することも可能である。
【0055】
ステップS13では、サーバ装置10の真贋判定手段が真贋判定を行う。真贋判定手段は、サーバ装置10の制御部13が、受信した識別IDと記憶装置11に格納された流通データベース6とを照合する構成となっている。真正品は全て流通データベース6に載っているため、受信した識別IDが流通データベース6に載っていれば真正品と判定され、流通データベース6に載っていなければ偽物と判定される。また、一つの識別IDにつき真贋判定が行われるのが二回目以降であれば、その識別IDが流通データベース6に載っていても、偽物と判定することもできる。二回目以降に真贋判定を要求される識別IDは、真正品の識別IDを不正に複製している可能性があるからである。真贋判定手段が実施する真贋判定の方法は、公知の任意の方法を採用することが可能である。
【0056】
ステップS14では、サーバ装置10の所在地特定手段が、受信した位置情報に基づいて利用者の所在地を特定する。所在地特定手段は、サーバ装置10の制御部13が、受信した位置情報を、記憶装置11に格納された地図データ又はクラウドサーバ41に照合する構成となっている。位置情報がクライアント装置20のIPアドレスである場合、このIPアドレスを、インターネット30を介してクラウドサーバ41に問い合わせることで、利用者が用いたクライアント装置20の緯度・経度及び所在する国・都市が特定される。また位置情報が、クライアント装置20の接続先の基地局又はアクセスポイントに関する情報である場合、インターネット30を介してクラウドサーバ41に問い合わせることで、クライアント装置20の緯度・経度を得て、その緯度・経度から地図データを用いて国・都市が特定される。また、位置情報が、クライアント装置20のGPS機能により測位された緯度・経度である場合、その緯度・経度から地図データを用いて国・都市が特定される。なお、前述のW3C Geolocation APIを利用した場合、クライアント装置20が有するいずれかの手段が適宜に選択されて、位置情報として緯度・経度が得られ、ステップS14では、緯度・経度から対応する国・都市が特定される。
【0057】
なお、上記の所在地特定手段はサーバ装置10が保有するよう構成されているが、クライアント装置20に所在地特定手段を保有させるように構成することも可能である。すなわち、クライアント装置20で利用者の所在地(国・都市)を特定して、その情報をサーバ装置10に送信するよう構成することも可能である。
【0058】
ステップS15では、ステップS13で得られた真贋判定結果がクライアント装置20に送信される。クライアント装置20は、送信された真贋判定結果を表示装置27に表示して、利用者に知らせる。これにより、商品が真正品であるか偽物であるかを、利用者が知ることができる。
【0059】
ステップS16では、サーバ装置10の判定結果記録手段が、商品の識別ID、識別IDがクライアント装置20から送信された日時、及び利用者の所在地を、互いに対応付けた形で真贋データベースとして記録する。判定結果記録手段は、サーバ装置10の制御部13が、記憶装置11を参照しつつ、記憶装置11に真贋データベースを書き込む構成となっている。なお真贋データベースは、真正品に関する情報だけでなく偽物に関する情報も全て書き込まれることになる。真贋データベースの形式の例については後述する。利用者がクライアント装置20を用いて真贋判定を要求することで始まった一連の処理は、このステップS16で終了する。
【0060】
次に、真贋データベースについて
図5に基づいて説明する。
図5は、真贋判定システム100の判定結果記録手段によって記録された真贋データベースの形式の一例を示すテーブルである。
図5に示す真贋データベース7は八つの列を有しており、一つの行に収められたデータが、互いに関連付けられたデータである。
【0061】
列71には、クライアント装置20から商品の識別IDが送信された日時が記載されている。列72には、クライアント装置20のIPアドレスが記載されている。なお、位置情報としてIPアドレスを用いない場合は、列72は不要となる。列73にはクライアント装置20の位置(緯度・経度)が記載されている。なお、クライアント装置の位置(緯度・経度)を用いずに所在地を特定する場合は、列73は不要となる。列74には、利用者の所在地(国・都市)が記載されている。図示の列74の記載は、国及び都市の情報で留まっているが、さらに詳細の場所まで絞り込んだ記載とすることも可能である。列75には、クライアント装置20から送信された商品の識別IDが記載される。なお、同じ識別IDが何度も送信された場合は、送信される毎に別の行に追記される。同じ識別IDが複数回送信されるということは、真正品の識別IDが不正に複製されて偽物に付与され、大量に流通している可能性を示す。列76には、真贋判定結果が記載される。列77には商品の出荷先が、列78には商品の出荷日が、それぞれ記載される。列77,78の情報は、列75に記載された識別IDに係る商品が真正品の場合(列76の真贋判定結果が真正の場合)のみ記載され、偽物の場合はブランクとなる。列77,78の情報は、流通データベースを参照して格納される。
【0062】
次に真贋データベース7を利用した解析について、
図6に基づいて説明する。
図6は、
図5に係る真贋データベース7に基づいた解析結果の一例であり、世界で発生した偽物の分布と規模を視覚化した図である。
【0063】
図6に示す図は、世界での偽物の流通状況を示す図であり、世界地
図M上に配置された円Cが、偽物の発生した場所及び規模を示している。すなわち、円Cの位置は、偽物の識別IDが送信された都市の位置を示しており、円Cの大きさは、偽物の識別IDが送信された回数を示している。この図によれば、世界のどこでどれだけの量の偽物が流通しているかを一目で把握することができる。なお、この図を作成するために必要な情報は、全て
図5に示した真贋データベース7に記載されている。
【0064】
なお
図6は、偽物の流通状況を示す図であるが、この他にも、真正品と偽物の比率、時間の経過による偽物発生件数の変化、真正品の流通経路、真正品が最終消費者に至るまでにかかる時間等、真贋データベースを解析することによって各種の有用なデータを得ることも可能となる。この解析結果を用いて、商品の生産管理・在庫管理に活かすことも可能となる。