特許第6554343号(P6554343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554343
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】遊技機の報知装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   A63F7/02 308G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-130573(P2015-130573)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-12329(P2017-12329A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】500077959
【氏名又は名称】株式会社MRD
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】市川 智靖
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢治
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−190433(JP,A)
【文献】 特開2003−164577(JP,A)
【文献】 特開2004−073275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機において、遊技中に遊技者の手が触れる遊技機部分に、突出して遊技者の手を押圧することにより遊技状態を報知する可動子を備え、当該可動子の基端を移動体に固定し、当該移動体は前記可動子の突出方向へ可聴周波数以下で電磁的に直線往復動させられるものであり、かつ前記可動子と当該可動子以外の前記遊技機部分との間に配設されて前記可動子を反突出方向へ付勢するバネ部材と、前記可動子以外の前記遊技機部分に設けられて、前記可動子の一部を当接させて当該可動子の突出方向への移動範囲を規制するとともに前記可動子の他の一部を当接させて当該可動子の反突出方向への移動範囲を規制する移動規制部とを備える遊技機の報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊技機の報知装置に関し、特に、遊技機の遊技状態を確実に遊技者へ報知することができる遊技機の報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機の遊技状態を報知する報知装置としては視覚的なものが多いが、遊技に熱中する遊技者は往々にして見逃すおそれがあり、より確実な報知装置が望まれていた。そこで、例えば特許文献1には、遊技球発射ハンドル内に振動板を設けて、電磁コイルによって振動板をハンドル軸方向へ振動させることによって遊技者に確実に遊技状態を報知できる報知装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−099137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の報知装置では、ハンドルに設けた振動板の振動が周辺構造物に伝わったり振動に伴う音が発生することにより、遊技者がハンドルに触れていなくても振動していることがわかってしまい、せっかくの演出効果が半減してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、安価かつ簡単な構造で遊技状態を特定部位に触れている遊技者へ確実に報知できる遊技機の報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、遊技機において、遊技中に遊技者の手が触れる遊技機部分(H)に、突出して遊技者の手を押圧することにより遊技状態を報知する可動子(3)を備え、当該可動子(3)の基端(341)を移動体(5)に固定し、当該移動体(5)は前記可動子(3)の突出方向へ可聴周波数以下で電磁的に直線往復動させられるものであり、かつ前記可動子(3)と当該可動子(3)以外の前記遊技機部分(H)との間に配設されて前記可動子(3)を反突出方向へ付勢するバネ部材(41)と、前記可動子(3)以外の前記遊技機部分(H)に設けられて、前記可動子(3)の一部(331)を当接させて当該可動子(3)の突出方向への移動範囲を規制するとともに前記可動子(3)の他の一部(32)を当接させて当該可動子(3)の反突出方向への移動範囲を規制する移動規制部(421,223)とを備える。
【0007】
本第1発明によれば、可聴周波数以下の適度な頻度で可動子によって遊技者の手を押圧することによって、手を痺れさせることなく、遊技者に確実かつ効果的に遊技状態を報知することができる。移動体の駆動には電磁力を使用するだけなので、駆動機構が安価かつ簡易に実現される。また周波数や振幅を変化させるだけの簡単な制御で、移動速度や移動量を容易に変化させることができる。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の遊技機の報知装置によれば、安価かつ簡単な構造で遊技状態を特定部位に触れている遊技者へわかりやすく報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】報知装置を備えた遊技球発射ハンドルを前方から見た斜視図である。
図2】報知装置を備えた遊技球発射ハンドルの側面図である。
図3】報知装置を備えた遊技球発射ハンドルの縦断面斜視図である。
図4】ハンドルキャップおよびバネ受け板を除いた状態での報知装置を備えた遊技球発射ハンドルの正面図である。
図5】報知装置作動時の遊技球発射ハンドルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1には本発明の報知装置を備えたパチンコ遊技機(以下、単に遊技機という)の遊技球発射ハンドルHを前方から見た斜視図を示し、図2にはその側面図を示す。遊技球発射ハンドルHは図1図2に示す水平姿勢で公知のように遊技機の前面下部に設置される。遊技球発射ハンドルHは基端部1が矩形のケーシング状となっており、当該基端部1内に、後述する電磁駆動機構が収容されている。
【0015】
基端部1の前面にハンドル部2が設けられている。ハンドル部2は、遊技者が指を掛けるための径方向突出部211〜213を周方向の三箇所に形成したリング状のハンドル体21を備えている。ハンドル体21の前後にはこれと小間隙をおいて、略半球状に前方へ膨出するハンドルキャップ22と、円形半容器状のハンドルベース23が位置している。ハンドルベース23はその容器底が上記基端部1に固定されるとともに、その容器前方開口がハンドル体21に対向している。
【0016】
ハンドルキャップ22は図示しない適宜位置でハンドルベース21に固定されている。そして、ハンドルキャップ22の頂面中心部には円形開口221が形成されて、当該開口221内に可動子3を構成する円形の頭部31が位置している。頭部31の表面はハンドルキャップ22の表面に滑らかに連続する曲面となっている。
【0017】
図3には遊技球発射ハンドルHの縦断面斜視図を示す。可動子3の頭部31は後方へ開放する容器状に成形されており、その円形開口は蓋板32で閉鎖されている。蓋板32は板面の径方向二箇所(一箇所のみ図示)が円筒状をなして後方へ延出し、当該延出部321はハンドルキャップ22内に固定されたLED基板222を貫通して、可動子3を構成する可動子ベース33の板面にネジ固定されている。
【0018】
可動子ベース33の中心は、可動子3を構成する主軸部34の前端にネジ固定されており、主軸部34は水平に延びてハンドルベース23の底面中心を後方へ貫通している。可動子3は主軸部34の中間部がハンドルベース23の底部中心に支持されるとともに、主軸部34と一体化された頭部31の外周がハンドルキャップ22の円形開口221の内周に支持され、安定的な前後方向の移動を実現している。可動子ベース33の段付きに外後方へ延びる外周部にはコイル状のバネ部材41の一端が係止されており、バネ部材41はハンドルキャップ22内に固定された筒状のバネ受け板42の内周に沿って位置して、バネ部材41の他端はバネ受け板42の周状溝内に係止されている。そして、このようなバネ部材41の伸長バネ力によって、主軸部34およびこれと一体の可動子ベース33、蓋板32、頭部31は後退方向へ付勢されており、この状態では頭部31の表面はハンドルキャップ22の表面と面一になっている。
【0019】
図4はハンドルキャップ22および可動子ベース33を除いた状態で遊技球発射ハンドルHを前方(図3の左方)から見た正面図である。図4において、ハンドル体21はリング状の本体部24と、上記主軸部34の外周に回動可能に嵌装されたボス部25を備えており、本体部24は内周の周方向二箇所で、ボス部25の外周から延びる腕部251,252に連続している。これによりハンドル体21は主軸部34を中心に回動操作可能であり、かつ主軸部34の周囲で、ボス部25の外周に配設されたバネ部材43の両端がそれぞれハンドル体21とハンドルベース23に係止されて、バネ部材43のバネ力によってハンドル体21は原位置(図4の状態)に戻し付勢されている。
【0020】
図3において、ボス部25の後面には筒状スペーサ26の一端が固定されており、当該スペーサ26はボス部25と同心に主軸部34の外周に回動可能に嵌装されている。上記スペーサ26の外周には一部に歯形261が形成されてギヤ27と噛合しており、ギヤ27は、ハンドルベース23に設けた可変抵抗器28の入力軸に装着されている。これにより、ハンドル体21の回転に応じて可変抵抗器28が回転して、ハンドル体21の回転角に応じた出力信号が図略の発射制御回路から同じく図略の遊技球発射装置へ出力される。
【0021】
主軸部34の後端(基端)341は遊技球発射ハンドルHの基端部1内へ至っており、この後端341は、基端部1内に位置する移動体5の円形基部の中心にネジ固定されている。基端部内には電磁駆動機構6が収容されており、本実施形態では電磁駆動機構6は電磁力を利用したものである。
【0022】
すなわち、移動体5の円形基部の後面外周には、電磁駆動機構6を構成する薄肉筒状のボビン61の前端開口が嵌着してあり、ボビン61は後方へ向けて水平に延びている。ボビン61の前端部外周からは、山形断面の凹凸を同心状に形成した蛇腹状の円形ダンパ62が径方向において外方へ延びている。ダンパ62の外周縁は、電磁駆動機構6のハウジング63の内周に固定されている。また、ボビン61の後端部外周にはコイル(ボイスコイル)64が巻回されている。コイル64は遊技球発射ハンドルH外の交流電源に接続されている。なお、ボビン61と移動体5は樹脂により一体成形してもよい。
【0023】
ボビン61内にはその後端開口から、円形の外側ヨーク65の中心筒部651がボビン61内周面に近接して挿入されている。また、上記コイル64に近接させてその外方にリング状の内側ヨーク66が配設されている。そして、両ヨーク65,66の板面間にリング状の磁石体67が配設されている。なお、本実施形態では、移動体5はボビン(コイル)61に一体化するようにしたが、移動体5を磁石体67(又は可動鉄心)と一体化し、コイル64をハウジング63側に固定するようにしてもよい。
【0024】
以上の構造の遊技球発射ハンドルHは、遊技状態では遊技者がハンドル体21に指を掛けてこれを適宜回動操作する。その際、遊技者の手の平部分は常時ハンドルキャップ22の膨出する前面に接している。この状態で、遊技者に遊技状態を報知したい場合には、遊技状態に応じて予め定められた可聴周波数以下の周波数、例えば1Hz〜10Hz、かつ所定の振幅で交流電流をコイル64に供給する。
【0025】
これにより、磁石体67の磁界内にあるコイル64に電磁力が作用して、上記交流電流に周波数及び振幅に応じた移動速度(振動数)と移動量で、可動子3全体が前後方向へ直線移動させられる。そして、前進時には可動子3の頭部31が図5に示すように、ハンドルキャップ22の表面から突出して遊技者の手の平部分を押圧する。これによって遊技者に遊技状態が確実に報知される。なお、本実施例では交流電流を供給しているが、例えば直流電流(矩形波)を利用したパルス幅変調方式(PWM)による擬似的波形を供給してもよい。
【0026】
ここで、移動体5の前後移動範囲を規制する移動規制部が設けられている。すなわち、移動体5が前方に移動したときは、移動体5と一体化した可動子3の一部である可動子ベース33の外周部から径方向に伸びた突出部331とバネ受け板42の周壁で前記突出部331に対応する位置に設けられた切欠き部421によって移動規制部が形成され、突出部331と切欠き部421の対向面が当接することでそれ以上前方に移動体5及び可動子3が移動しないようになっている。移動体5が後方に移動したときは、蓋体32の周縁部後面とハンドルキャップ22の円形開口221の内周面から内側に向けて伸びるフランジ223によって移動規制部が形成され、蓋体32の周縁部後面とフランジ223前面が当接することでそれ以上後方に移動体5及び可動子3が移動しないようになっている。以上のように、移動範囲を規制することで電磁駆動機構6や周辺部品の破損を防ぐことができる。
【0027】
本実施形態では可聴周波数以下の適度な頻度で可動子の頭部によって遊技者の手が周期的に押圧されるから、手が痺れることがなく、遊技球発射ハンドルの操作に支障をきたすことがないとともに、周波数の高い他の機械振動と区別して可動子の動きを明確に覚知することができる。さらに、遊技球発射ハンドルのハンドルキャップの中心部に可動子(の頭部)が設けられていることにより、ハンドル体を掴む指に振動が伝達されることが無く、これによっても遊技球発射ハンドルの操作に支障をきたすことが防止される。なお、可動子は必ずしも遊技球発射ハンドルに設ける必要は無く、演出用操作部として遊技者が操作する入力装置や遊技中に遊技者が手を置くための手置き部等、遊技者が触れることにより報知状態を認識できるその他の場所に設けても良い。
【0028】
本実施形態では、移動体を駆動させるのに電磁力を利用するだけなので、駆動機構が安価かつ簡易に実現できる。また周波数や振幅を変化させるだけの簡単な制御で、可動子の移動速度や移動量を容易に変化させることができる。
【0029】
上記実施形態において、上記可動子を画像や音声の演出に合わせて動作させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
H…遊技球発射ハンドル、1…基端部、2…ハンドル部、21…ハンドル体、22…ハンドルキャップ、23…ハンドルベース、3…可動子、31…頭部、34…主軸部、341…基端、5…移動体、6…電磁駆動機構、61…ボビン、62…ダンパ、64…コイル、67…磁石体。
図1
図2
図3
図4
図5