特許第6554375号(P6554375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6554375-レンジフード 図000002
  • 特許6554375-レンジフード 図000003
  • 特許6554375-レンジフード 図000004
  • 特許6554375-レンジフード 図000005
  • 特許6554375-レンジフード 図000006
  • 特許6554375-レンジフード 図000007
  • 特許6554375-レンジフード 図000008
  • 特許6554375-レンジフード 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554375
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20190722BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F24F7/007 C
   F24F7/06 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-192550(P2015-192550)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67357(P2017-67357A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 康司
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−198435(JP,U)
【文献】 特開平04−198642(JP,A)
【文献】 特開平10−019332(JP,A)
【文献】 特開2007−040659(JP,A)
【文献】 特開2014−153041(JP,A)
【文献】 特開2011−112251(JP,A)
【文献】 特開平04−169727(JP,A)
【文献】 特開平5−231683(JP,A)
【文献】 特開2009−144964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007、
F24F 7/06、
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の駆動により調理で発生した油煙等を捕集して排出するレンジフードであって、
前記捕集する油煙等の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの検知した温度に応じてレンジフードを運転制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検知温度が設定温度となった時点からの温度上昇率を算出し、その温度上昇率が設定値以上の場合にレンジフードの運転を停止する運転停止モードを有し、
前記設定温度は、レンジフードの運転に支障が生じる危険温度よりも低い温度であることを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有している請求項1記載のレンジフード。
【請求項3】
前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有し、
設定温度の低い運転停止モードの温度上昇率の設定値は、設定温度の高い運転停止モードの温度上昇率の設定値より大きく、設定温度の低い1つの運転停止モードで温度上昇率を算出している途中で設定温度が次に高い他の運転停止モードの設定温度を温度センサが検知した場合は、併行して前記他の運転停止モードで温度上昇率を算出開始する構成とした請求項1記載のレンジフード。
【請求項4】
前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有し、
設定温度の低い運転停止モードの温度上昇率の設定値は、設定温度の高い運転停止モードの温度上昇率の設定値より大きく、設定温度の低い1つの運転停止モードで温度上昇率の算出が終了した後に、終了時に温度センサが検出した温度に見合う設定温度の運転停止モードで温度上昇率を算出開始する構成とした請求項1記載のレンジフード。
【請求項5】
前記制御装置は、異常時運転停止モードを有し、
前記異常時運転停止モードは、前記温度センサが前記危険温度を検知し、かつ危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度以上を検知した場合にレンジフードの運転を停止し、かつ前記温度センサが危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度未満を検知した場合にはレンジフードの運転を停止しない構成である請求項1〜4いずれか1項記載のレンジフード。
【請求項6】
前記制御装置は、運転復帰モードを有し、
前記運転復帰モードは、前記運転停止モードによりレンジフードの運転停止後に前記温度センサが運転復帰設定温度を検知し、かつ運転復帰設定温度を検知してから規定時間経過後に運転復帰設定温度以下を検知した場合に、レンジフードの運転を再開する構成で、
前記運転復帰設定温度は、前記運転停止モードの設定温度より低くした請求項1〜5いずれか1項記載のレンジフード。
【請求項7】
レンジフードはフィルタユニットを有した室内循環式で、
前記危険温度は、火災が発生した可能性がある温度とし、
前記レンジフードの運転停止は、送風機の停止、電動式シャッタの閉、レンジフードへの通電のOFFのいずれか1つ又は複数の組み合わせである請求項1〜6いずれか1項記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用加熱器具の周囲に設置され、調理によって発生した油煙等を捕集して排出するレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調理用加熱器具の周囲に設置され、調理によって発生した油煙、燃料ガス、臭気など(以下油煙等という)を捕集して室内に排出する室内循環式のレンジフードが種々提案されている。
室内循環式のレンジフードにおいては、捕集した油煙等をフィルタユニットを通すことで、油煙等から油脂分、臭気、すすなどを除去し、清浄の空気として室内に排出している。
【0003】
一方、調理用加熱器具で調理しているときに天ぷら火災などの調理による火災が発生し、火災による炎がレンジフード内部に入り込むことがある。
フィルタユニットが可燃性である場合には、調理による火災が発生した場合には、レンジフード内部に入り込んだ火災による炎によりフィルタユニットが燃焼することがある。また、火災による炎がレンジフード内部に入り込んでしまった場合には、空気を室内に排出する排出口から炎が吹出し、他に燃え移る危険性があった。
【0004】
このことを解消できるようにしたレンジフードが特許文献1で提案されている。
つまり、フード内に送風機と電動式シャッタとフィルタユニットを設け、フード内に捕集する油煙等の温度を検知する温度センサをフードに取り付けたレンジフードである。
【0005】
このレンジフードは、送風機を駆動すると共に、電動式シャッタを開とすることで、調理によって発生した油煙等をフード内に捕集し、電動式シャッタ、フィルタユニットを通して室内に排出する。
前述のようにして油煙等を室内に排出しているとき(つまり、レンジフード運転時)に、調理による火災が発生した場合には、温度センサの検知温度が設定温度となることで調理による火災発生を検知し、送風機を停止したり、電動式シャッタを閉とし、火災による炎がレンジフード内部に入り込むことがないようにしてフィルタユニットが火災の炎で燃焼しないようにする。
【0006】
また、特許文献2では、主にアイランドキッチンにおいて、吸込口を有するフードを、調理台の天板上部における調理用加熱器具の奥側に設け、フードの吸込口から吸い込まれる油煙等を吸引する送風機を有する本体を、調理台内部に設けたレンジフードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−58762号公報
【特許文献2】特開2007−29389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案されたレンジフードは、温度センサが設定温度を検知することで送風機を停止、電動式シャッタを閉とするから、設定温度は火災が発生している時の値としている。
なぜなら、設定温度を火災が発生している時の温度よりも低い温度とすると、調理による火災が発生せずにフィルタユニットが燃焼することがないときにも送風機が停止、電動式シャッタが閉となり、レンジフードの稼動効率が低下する等の問題が生じるので、設定温度を火災が発生している時の温度としている。
また、温度センサが設定温度を検知してから送風機が停止、電動式シャッタが閉となるまでにタイムラグがある。
これらのことから、温度センサが設定温度を検知し、送風機が停止、電動式シャッタが閉となる以前に設定温度以上の空気(火災の炎)がレンジフード内部に入り込むことがある。
【0009】
このために、実際に調理による火災が発生した場合に、温度センサが設定温度を検知してから送風機を停止、電動式シャッタ閉とする以前に火災による炎がレンジフード内部に入り込みフィルタユニットが火災による炎で燃焼することがあるから危険である。
このことは、温度上昇が急な火災の場合により一層発生し易い。
【0010】
特許文献2で提案されたレンジフードでは、天井に取り付けられるレンジフードと比べて調理用加熱器具(調理物)とフードの吸込口の距離が非常に短いため、調理による火災発生時にはフード内部に炎が入り込み、フィルタユニットが燃焼する危険性がより高い。
【0011】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、調理による火災が発生した場合にレンジフード内部に火災による炎が入り込むことがないようにしたレンジフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、送風機の駆動により調理で発生した油煙等を捕集して排出するレンジフードであって、
前記捕集する油煙等の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの検知した温度に応じてレンジフードを運転制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検知温度が設定温度となった時点からの温度上昇率を算出し、その温度上昇率が設定値以上の場合にレンジフードの運転を停止する運転停止モードを有し、
前記設定温度は、レンジフードの運転に支障が生じる危険温度よりも低い温度であることを特徴とするレンジフードである。
【0013】
本発明のレンジフードにおいては、前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有した構成とすることができる。
【0014】
本発明のレンジフードにおいては、前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有し、
設定温度の低い運転停止モードの温度上昇率の設定値は、設定温度の高い運転停止モードの温度上昇率の設定値より大きく、設定温度の低い1つの運転停止モードで温度上昇率を算出している途中で設定温度が次に高い他の運転停止モードの設定温度を温度センサが検知した場合は、併行して前記他の運転停止モードで温度上昇率を算出開始する構成とすることができる。
【0015】
このようにすれば、調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇することをより早く検知することができる。
【0016】
本発明のレンジフードにおいては、前記制御装置は、設定温度と温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる複数の運転停止モードを有し、
設定温度の低い運転停止モードの温度上昇率の設定値は、設定温度の高い運転停止モードの温度上昇率の設定値より大きく、設定温度の低い1つの運転停止モードで温度上昇率の算出が終了した後に、終了時に温度センサが検出した温度に見合う設定温度の運転停止モードで温度上昇率を算出開始する構成とすることができる。
【0017】
本発明のレンジフードにおいては、前記制御装置は、異常時運転停止モードを有し、前記異常時運転停止モードは、前記温度センサが前記危険温度を検知し、かつ危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度以上を検知した場合にレンジフードの運転を停止し、かつ前記温度センサが危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度未満を検知した場合にはレンジフードの運転を停止しない構成とすることができる。
【0018】
このようにすることで、危険温度以上の温度が所定時間よりも短い時間だけ発生した異常の場合にレンジフードが停止しないから、レンジフードが不必要に運転停止することがなく、調理時に発生した油煙等を確実に排出できる。
【0019】
本発明のレンジフードにおいては、前記制御装置は、運転復帰モードを有し、
前記運転復帰モードは、前記運転停止モードによりレンジフードの運転停止後に前記温度センサが運転復帰設定温度を検知し、かつ運転復帰設定温度を検知してから規定時間経過後に運転復帰設定温度以下を検知した場合に、レンジフードの運転を再開する構成で、
前記運転復帰設定温度は、前記運転停止モードの設定温度より低くした構成とすることができる。
【0020】
このようにすれば、調理により発生した火災が発生した可能性がある危険温度を脱した場合には誤動作せずに確実に調理を再開することができる。
【0021】
本発明のレンジフードにおいては、レンジフードはフィルタユニットを有した室内循環式で、
前記危険温度は、火災が発生した可能性がある温度とし、
前記レンジフードの運転停止は、送風機の停止、電動式シャッタの閉、レンジフードへの通電のOFFのいずれか1つ又は複数の組み合わせである構成とすることができる。
【0022】
このようにすれば、調理による火災が発生した場合に火災による炎がレンジフード内部に入り込んでフィルタユニットに引火し、燃焼することがない。また、火災による炎がレンジフード内部に入り込んでレンジフード内部を通り、排出口から炎を吹出すことがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレンジフードによれば、調理による火災が発生する可能性がある危険温度まで上昇すると判断した場合には直ちにレンジフードの運転が停止するので、火災による炎がレンジフード内部に入り込むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】レンジフードの実施形態を示す断面図である。
図2】制御装置の説明図である。
図3】運転停止モードの動作の一例を示す図表である。
図4】運転停止モードの動作の他の例を示す図表である。
図5】異常時運転停止モードの動作の一例を示す図表である。
図6】異常時運転停止モードの動作の他の例を示す図表である。
図7】運転復帰モードの動作の一例を示す図表である。
図8】運転停止モードの他の実施形態の動作の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のレンジフードの全体構成を図1に基づいて説明する。
レンジフードは、フード2と本体3と送風機4とフィルタユニット5を備えている。
フード2は、フード本体20と吸込部21と排出部22を有している。
フード本体20は吸込口20aを有し、その吸込口20aに吸い込みされる空気(つまり、調理時に発生した油煙等)の温度を検知する温度センサ6がフード本体20に設けてある。
吸込部21は、吸込口20aと連通した吸込通路21aを有している。
排気部22は、室内に開口した排気通路22aを有している。
【0026】
フード2は、その吸込部21、排出部22の下部を調理台1の天板10における調理用加熱器具11よりも奥に挿入して固定することで調理台1に設置されている。
フード2のフード本体20は調理用加熱器具11の上方に位置し、調理時に発生した油煙等はフード20の吸込口20aに向けて上昇する。
【0027】
本体3は、流入路30と送風機収容室31とフィルタユニット取付室32と流出路33を有している。
送風機収容室31に送風機4が収容してある。送風機4はモータ40で駆動されるファン41を有している。送風機4の吸込側に流入路30が開口連通し、吐出側はフィルタユニット取付室32に開口連通している。
フィルタユニット取付室32にフィルタユニット5が取り付けてある。フィルタユニット5は油吸着フィルタ50、脱煙フィルタ51、脱臭フィルタ52、エアフィルタ53を有している。
【0028】
本体3は、調理台1内に設置されている。流入路30と吸込通路21aが連通している。流出路33と排気通路22aが連通している。
【0029】
レンジフードは次のように稼働する。
モータ40に通電してファン41を回転(送風機4を駆動)することで、調理時に発生した油煙等は、吸込口20a、吸込通路21a、流入路30を通り送風機4で吸い込まれる。
吸い込まれた油煙等は、油吸着フィルタ50で油脂分が除去され、脱煙フィルタ51で煙分が除去され、脱臭フィルタ52で臭気が除去され、エアフィルタ53で細かい塵や埃が取り除かれて清浄な空気となる。
清浄な空気は流出路33、排気通路22aを通り室内に排出される。
これにより、実施形態のレンジフードは室内循環式のレンジフードである。
【0030】
制御装置を図2に基づいて説明する。
制御装置7は、マイコンなどのコントローラ70を備えている。
コントローラ70は、操作部材71から入力される運転信号に応じて送風機4のモータ40に通電して速度制御する。
例えば、操作部材71から強運転信号が入力されるとモータ40を高速回転する。中運転信号が入力されるとモータ40を中速回転する。弱運転信号が入力されるとモータ40を低速回転する。
操作部材71から停止信号が入力されるとモータ40への通電を止めて送風機4を停止する。
【0031】
コントローラ70は、操作部材71から強、中、弱いずれかの運転信号が入力されているとき(レンジフード運転時)に、温度センサ6から入力される検知温度に応じてレンジフードを運転制御する。例えばモータ40への通電を止めて送風機4を停止する。
【0032】
次に、温度センサ6から入力される検知温度による動作を説明する。
コントローラ70は、レンジフードの運転を停止する運転停止モード72と、異常時運転停止モード73と、運転停止しているレンジフード1を再運転する運転復帰モード74を備えている。
運転停止モード72は、温度センサ6の検知温度が設定温度となった時点からの温度上昇率を検知する機能と、検知した温度上昇率が設定値以上である場合にレンジフードの運転を停止する信号を出力する運転停止機能を有している。
つまり、温度上昇率が設定値以上であると、調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断し、運転停止信号を出力してレンジフードの運転を停止する。
【0033】
設定温度は、危険温度よりも低い温度である。好ましくは、運転停止信号を出力してからレンジフードが運転停止するまでのタイムラグにより検知温度が危険温度まで上昇しない温度である。
危険温度は、レンジフードの運転に支障が生じる温度である。例えば、フィルタユニット5が燃焼開始する温度である。
なお、フィルタユニット5を備えていないレンジフードであっても、そのレンジフード内部が高温の熱により変形等して運転に支障を生じることがあるので、フィルタユニット5を備えていないレンジフードの場合には、火災が発生した可能性がある温度であって、火災が発生して炎を引き込んだ場合にレンジフード内部が変形等開始する温度を危険温度とする。
【0034】
温度上昇率は、一定時間に上昇した温度の値で決定される温度包配で、温度センサ6が検知した温度(設定温度)と、一定時間経過後に温度センサ6が検知した検知温度で算出される。
温度上昇率の設定値は、一定時間に上昇する温度の最大値である。
レンジフードの運転停止とは、レンジフードが調理時に発生した油煙等がレンジフード内部に入り込まない状態とすることである。例えば、送風機4のモータ40への通電を止め、送風機4を停止し、油煙等がレンジフード1内部に入り込まないようにすることである。
なお、送風機4の吸込側などに電動式シャッタを設け、電動式シャッタを閉とすることで、レンジフードの運転停止としても良い。また、送風機停止と電動式シャッタ閉を同時に行うことでレンジフードの運転停止としても良い。さらに、レンジフード1への通電をOFFして運転停止としても良い。
【0035】
運転停止モード72の具体例を説明する。
危険温度を70℃とし、設定温度を58℃とする。
温度上昇率の設定値を、1秒間に上昇する温度を5℃とする。
そして、温度センサ6が58℃を検知してから1秒後に温度センサ6が63℃以上を検知した場合に、コントローラ70は調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断し、モータ40への通電をOFFとする。
【0036】
このようであるから、調理による火災が発生した場合に火災による炎(危険温度(70℃)以上の空気)がレンジフード内部に入り込むことがない。
したがって、調理による火災が発生した場合に、フィルタユニット5が火災による炎で燃焼することがない。また、火災による炎がレンジフード内部に入り込んでレンジフード内部を通り、排出口から炎を吹出すことがない。
【0037】
実施形態では複数の運転停止モード72を有している。
各運転停止モード72は、設定温度、温度上昇率の設定値がそれぞれ異なる。
温度上昇率の設定値は設定温度が低いほど大きく、設定温度の低い運転停止モードが温度上昇率を算出している途中に、次に高い設定温度まで上昇した場合は、その次に高い設定温度の運転停止モードが温度上昇率を算出開始する。
つまり、温度センサ6が低い設定温度を検知し、低い設定温度の運転停止モードが温度上昇率を算出している途中で、温度センサ6は次に高い設定温度を検知した場合は、その次に高い設定温度の運転停止モードが温度上昇率を算出する。この動作を順次行う。
【0038】
具体的には、第1・第2・第3・第4・第5運転停止モード72−1,72−2,72−3,72−4,72−5を有している。
第1〜第5運転停止モード72−1〜72−5は、第1〜第5設定温度、第1〜第5温度上昇率の設定値をそれぞれ有している。
第1設定温度は最も低く、第2設定温度は第1設定温度より高く、第3設定温度は第2設定温度より高く、第4設定温度は第3設定温度より高く、第5設定温度が第4設定温度より高く最も高い。
第1温度上昇率の設定値は最も大きく、第2温度上昇率の設定値は第1温度上昇率の設定値より小さい。
第3温度上昇率の設定値は第2温度上昇率の設定値より小さく、第4温度上昇率の設定値は第3温度上昇率の設定値より小さい。
第5温度上昇率の設定値は第4温度上昇率の設定値よりも小さく、最も小さい。
【0039】
例えば、危険温度を70℃とし、第1設定温度は58℃、第2設定温度は60℃、第3設定温度は62℃、第4設定温度は64℃、第5設定温度は66℃である。
第1温度上昇率の一定時間は1秒で、設定値は5℃である。
第2温度上昇率の一定時間は1秒で、設定値は4℃である。
第3温度上昇率の一定時間は1秒で、設定値は3℃である。
第4温度上昇率の一定時間は1秒で、設定値は2℃である。
第5温度上昇率の一定時間は1秒で、設定値は1℃である。
【0040】
つまり、第1運転停止モード72−1は、温度センサ6が58℃を検知してから1秒後に63℃以上を検知した場合に火災発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力する。
第2運転停止モード72−2は、温度センサ6が60℃を検知してから1秒後に64℃以上を検知した場合に火災発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力する。
第3運転停止モード72−3は、温度センサ6が62℃を検知してから1秒後に65℃以上を検知した場合に火災発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力する。
第4運転停止モード72−4は、温度センサ6が64℃を検知してから1秒後に66℃以上を検知した場合に火災発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力する。
第5運転停止モード72−5は、温度センサ6が66℃を検知してから1秒後に67℃以上を検知した場合に火災発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力する。
【0041】
そして、温度センサ6の検知温度が図3のAを示すように上昇する場合は、温度センサ6が58℃を検知してから1秒後に62℃を検知し、第1温度上昇率の設定値5℃を越えないので、第1運転停止モード72−1は火災発生した可能性がある危険温度までは上昇しないと判断し、運転停止信号を出力しない。
温度センサ6が58℃を検知してから0.5秒後に60℃を検知するので、第1運転停止モード72−1が温度上昇率を算出している途中で第2運転停止モード72−2が温度上昇率を算出開始する。
温度センサ6が60℃を検知してから1秒後に65℃を検知し、第2温度上昇率の設定値4℃を越えるので、第2運転停止モード72−2は調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力し、モータ40への通電をOFFし、レンジフードの運転を停止する。
【0042】
温度センサ6の検知温度が図4のBに示すように上昇する場合は、前述と同様に第1運転停止モード72−1は火災発生した可能性がある危険温度までは上昇しないと判断し、運転停止信号を出力しない。
温度センサ6が58℃を検知してから0.5秒後に60℃を検知するので、第1運転停止モード72−1が温度上昇率を算出している途中で第2運転停止モード72−2が温度上昇率を算出開始する。
温度センサ6が60℃を検知してから1秒後に63℃を検知し、第2温度上昇率の設定値4℃を越えないので、第2運転停止モード72−2は火災発生した可能性がある危険温度までは上昇しないと判断し、運転停止信号を出力しない。
【0043】
温度センサ6が60℃を検知してから0.5秒後に62℃を検知するので、第2運転停止モード72−2が温度上昇率を算出している途中で第3運転停止モード72−3が温度上昇率を算出開始する。
温度センサ6が62℃を検知してから1秒後に67℃を検知し、第3温度上昇率の設定値3℃を越えるので、第3運転停止モード72−3は調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇すると判断して運転停止信号を出力し、モータ40への通電を停止し、レンジフードの運転を停止する。
【0044】
このように、温度センサ6が危険温度(70℃)よりも低い温度を検知したときであっても、温度上昇率に基づいて調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇すると予測してレンジフードを停止するから、危険温度以上の空気がレンジフード内部に入り込むことがない。
また、複数の運転停止モードを有し、設定温度の低い1つの運転停止モードが温度上昇率を算出して途中で、設定温度が次に高い運転停止モードが温度上昇率を検出開始するから、調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇することをより早く検知することができる。
【0045】
本発明にかかる製品は、送風機により空気を吸い込むレンジフードであるため、製品使用時には常に吸込み気流が発生しているものであることから、例えば瞬間的な気流の乱れ等により温度が瞬時的に急激な変化を起こすことがあり、これを検知してしまうと誤動作の原因となってしまう。
そこで、本発明では、ある一定の計測時間後の温度との比較により上述の瞬時的な変化を検知しないようにしている。
しかしながらそのように計測時間を長くすることは、すばやく温度変化から異常温度をとらえるという目的に対して不利な条件となってしまう。
このため、さらに本発明では、複数のモードを用意して各所定時間内にオーバーラップさせて他のモードを同時に実行することでこのデメリットを解決し、かつ、ノイズによる誤動作を防ぐという効果を奏するようにしている。
この一定時間は0.5秒以上が好ましい、1秒以上であるとより好ましいものである。
【0046】
異常時運転停止モード73は、温度センサ6の検知温度が危険温度に達し、所定時間経過後も危険温度を検知している場合に調理による火災が発生した可能性がある危険温度であると判断し、運転停止信号を出力してレンジフードを停止する。
また、温度センサ6が危険温度を検知し、所定時間経過後は危険温度未満の温度を検知している場合は運転停止信号を出力しない。
【0047】
つまり、異常時運転停止モード73は、温度センサ6が危険温度を検知し、かつ危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度以上を検知した場合に運転停止信号を出力し、温度センサ6が危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度未満を検知した場合には運転停止信号を出力しない。
【0048】
つまり、運転停止モード72における温度上昇率を算出する時間(1秒)以内に危険温度(70℃)まで上昇することがある。この場合には危険温度となっても運転停止モード72は機能せずに運転停止信号を出力しないので、異常時運転停止モード73から運転停止信号を出力する。
しかしながら、温度センサ6が危険温度を所定時間(例えば0.5秒)よりも短い時間だけ検知した場合に異常時運転停止モード73が運転停止信号を出力すると、レンジフードが不必要に停止してしまうので、温度センサ6が危険温度を所定温度よりも短い時間だけ検知した場合には運転停止信号を出力しないようにしている。
【0049】
例えば、温度センサ6の検知温度が図5のCで示すように上昇する場合は、第1運転停止モード72−1の第1設定温度58℃を検知してから0.5秒以内に70℃を検知する。
これにより、第1〜第5運転停止モード72−1〜72−5は機能しない。
温度センサ6の検知温度が5秒連続して70℃以上であると異常時運転停止モード73は、調理による火災が発生した可能性がある危険温度に達したと判断し、運転停止信号を出力することで、レンジフードの運転を停止する。
【0050】
また、温度センサ6の検知温度が図6のDで示すように上昇する場合には、第1・第2運転停止モード72−1,72−2が調理による火災が発生した可能性がある危険温度まで上昇しないと判断し、第3運転停止モード72−3が温度上昇を算出開始するが、その温度上昇率を算出している途中で温度センサ6が70℃を検知する。
この場合には、温度センサ6が70℃以上を0.5秒においても検知することで、異常時運転停止モード73が調理による火災が発生した可能性がある危険温度に達したと判断し、運転停止信号を出力することで、レンジフードの運転を停止する。
【0051】
これにより、調理による火災が発生した可能性がある危険温度に達した場合にはレンジフードの運転が停止し、火災が発生した可能性がある危険温度に達したのではなく、何らかの原因で危険温度以上の温度が所定時間よりも短い時間だけ発生した異常の場合に、レンジフードの運転が停止することがないので、レンジフードが必要なく運転停止しないから、調理時に発生した油煙等を確実に排出できる。
【0052】
運転復帰モード74は、運転停止モード72が運転停止信号を出力し、レンジフードの運転が停止した後に温度センサ6が運転復帰設定温度を検知し、かつ運転復帰設定温度を検知してから規定時間経過後に運転復帰設定温度以下を検知した場合に運転再開信号を出力する。
運転再開信号が出力されることでレンジフードが運転開始する。例えば、モータ40に通電して送風機4を駆動してレンジフードを運転開始する。電動式シャッタを閉とした場合には開とする。レンジフードへの通電をOFFした場合は通電をONとする。
【0053】
運転復帰設定温度は運転停止モード72の設定温度以下の温度、例えば50℃である。
規定時間は20秒である。
【0054】
運転復帰モード74の動作の一例を説明する。
温度センサ6の検知温度が図7のEに示すように下降する場合、温度センサ6の検知温度が50℃となった後に、運転復帰設定温度を検知してから20秒後に50℃以下を検知したときに運転復帰モード74は運転再開と判断し、運転再開信号を出力する。
【0055】
このようであるから、調理による火災が発生した可能性がある危険温度を脱した場合には、調理を再開することができる。
また、運転復帰設定温度を検知してから規定時間経過後に50℃以下を検知してから運転再開するので、誤動作がなく調理による火災が発生した可能性がある危険温度を脱した後にレンジフードを確実に運転再開することができる。
【0056】
制御装置7の運転停止モード72は次のように構成しても良い。
つまり、前述した運転停止モード72は、設定温度の低い運転停止モードが温度上昇率を算出している途中で、次に高い設定温度まで上昇した場合は、その次に高い設定温度の運転停止モードが温度上昇率を算出開始するようにしたが、運転停止モードが温度上昇率を算出終了しないと次に高い設定温度の運転停止モードが温度上昇率を算出開始しないようにする。
【0057】
例えば、温度センサ6の検知温度が図8のFに示すように上昇する場合、温度センサ6が58℃を検知して第1運転停止モード72−1の温度上昇率を算出開始し、その算出終了後(1秒後)に次の運転停止モードの温度は上昇するが、第1運転停止モード72−1の温度上昇部を算出終了した時点(1秒後)では温度センサ6の検知温度は62℃である。
このために、第2運転停止モード72−2の温度上昇率は算出せずに第3運転停止モード72−3の温度上昇率を算出する。
【0058】
実施形態のレンジフードは、運転停止モード72を5パターン設定したが、これに限らず、2パターン以上あれば良いものとする。
【0059】
また、異常運転停止モード73は、温度センサ6が危険温度を検知し、かつ危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度以上を検知した場合にレンジフードの運転を停止し、かつ温度センサ6が危険温度を検知してから所定時間経過後に危険温度未満を検知した場合にはレンジフードの運転を停止しない構成としたが、これに限らず、異常時運転停止モード73は、温度センサ6が前記危険温度を所定時間以上検知している場合にレンジフードの運転を停止し、かつ温度センサ6が前記危険温度を所定時間よりも短い時間だけ検知した場合にはレンジフードの運転を停止しない構成としても良い。
【0060】
また、異常運転停止モード73は、温度センサ6が危険温度を検知してから所定時間経過後まで温度を検知し続け、所定時間内における検知温度の平均値が危険温度以上であった場合にレンジフードの運転を停止し、かつ温度センサ6が危険温度を検知してから所定時間経過後まで温度を検知し続け、所定時間内における検知温度の平均値が危険温度未満であった場合にはレンジフードの運転を停止しない構成としても良い。
【0061】
実施の形態のレンジフードは室内循環式のレンジフードであるが、捕集した油煙等を室外に排出する室外排出式のレンジフードでも良い。
また、実施形態のレンジフードは調理台に設置するタイプであるが、天井に設置するタイプのレンジフードでも良い。
【符号の説明】
【0062】
2…フード、3…本体、4…送風機、5…フィルタユニット、6…温度センサ、7…制御装置、40…モータ、41…ファン、70…コントローラ、72…運転停止モード、73…異常時運転停止モード、74…運転復帰モード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8