(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配合成分として、少なくとも(A)アクリル酸エステル重合体と、(B)光硬化性多官能モノマーと、(C)マクロモノマーと、(D)光重合開始剤と、(E)熱架橋剤と、を含む粘着剤組成物であって、
前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分の配合量を0.1〜50重量部、前記(C)成分の配合量を0.1〜20重量部、前記(D)成分の配合量を0.01〜10重量部、及び前記(E)成分の配合量を0.01〜20重量部の範囲内の値とし、
かつ、JIS K 7136:2000に準拠して測定される、硬化物としてのヘイズを0.9%以下の値とすることを特徴とする粘着剤組成物。
前記(E)成分が、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物、及びアジリジン系化合物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
(F)成分として、帯電防止剤を含むとともに、当該帯電防止剤の配合量を、前記(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上、10重量部以下の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
基材上に、配合成分として、少なくとも(A)アクリル酸エステル重合体と、(B)光硬化性多官能モノマーと、(C)マクロモノマーと、(D)光重合開始剤と、(E)熱架橋剤と、を含む粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層と、を備えた粘着シートであって、
前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分の配合量を0.1〜50重量部、前記(C)成分の配合量を0.1〜20重量部、前記(D)成分の配合量を0.01〜10重量部、及び前記(E)成分の配合量を0.01〜20重量部の範囲内の値とし、
かつ、JIS K 7136:2000に準拠して測定される、硬化物としてのヘイズを0.9%以下の値とすることを特徴とする粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、配合成分として、少なくとも(A)アクリル酸エステル重合体と、(B)光硬化性多官能モノマー(光架橋剤と称する場合もある。)、(C)マクロモノマーと、(D)光重合開始剤と、(E)熱架橋剤と、を含む粘着剤組成物であって、(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量を0.1〜50重量部、(C)成分の配合量を0.1〜20重量部、(D)成分の配合量を0.01〜10重量部、及び(E)成分の配合量を0.01〜20重量部の範囲内の値とすることを特徴とする粘着剤組成物である。
以下、本発明の第1の実施形態である粘着剤組成物を、適宜図面を参照して、具体的に説明する。
【0018】
1.(A)成分:アクリル酸エステル重合体
(1)種類1
粘着剤の主成分であるアクリル酸エステル重合体の種類については、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来した、いわゆるアクリル系重合体((メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体及び共重合体をそれぞれ含む。以下、同様である。)であれば、特に制限されるものでなく、用途に応じて適宜選択することができる。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの種類の変更や配合量等によって、基材密着性や凝集力の調整が比較的容易であって、かつ、安価なアクリル酸エステル重合体とすることによって、得られる粘着剤組成物を各種用途に、適用することができる。
【0019】
また、(A)アクリル酸エステル重合体が、モノマー成分として、少なくとも下記(a1)〜(a2)成分、あるいは、少なくとも下記(a1)〜(a3)成分に由来した(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることがより好ましい。
(a1)アルキル基の炭素数が1以上、20以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー:100重量部
(a2)分子内に架橋性基を有する重合性二重結合含有モノマー:0.5重量部以上、10重量部以下
(a3)分子内に芳香環を有する重合性二重結合含有モノマー:0.1重量部以上、30重量部以下
この理由は、アクリル酸エステル重合体の分子内に導入されたヒドロキシ基を利用して、架橋が可能となるためである。
したがって、リワーク性及び所定環境下における耐久性とのバランスがさらに良好になるとともに、比較的安価かつ製造容易なアクリル系粘着剤組成物を得ることができる。
【0020】
(1)−1. モノマー成分(a1)
(A)アクリル酸エステル重合体は、重合する際のモノマー成分(a1)として、炭素数1以上、20以下のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
この理由は、かかるアルキル基の炭素数が20よりも大きな値となると、側鎖同士が配向・結晶化することにより、得られる粘着剤組成物の基材密着性が低下する場合があるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるアルキル基の炭素数の下限を1以上とすることがより好ましく、4以上とすることがさらに好ましい。
また、同アルキル基の炭素数の上限を10以下とすることがより好ましく、8以下とすることがさらに好ましい。
【0021】
また、アルキル基の炭素数が1以上、20以下の値である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、モノマー成分(a1)は、(A)アクリル酸エステル重合体を構成する主成分であるため、通常、(A)成分を構成する全モノマー成分(100重量%)に対して、その配合量の下限を50重量%以上の値とすることが好ましく、60重量%以上の値とすることがより好ましく、85重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
さらに、当該モノマー成分(a1)の上限を、99.5重量%以下の値とすることが好ましく、99重量%以下の値とすることがより好ましく、90重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0022】
(1)−2 モノマー成分(a2)
また、(A)アクリル酸エステル重合体は、重合する際のモノマー成分(a2)として、分子内に架橋性基を有する重合性二重結合含有化合物を含むことが好ましい。
この理由は、かかるモノマー成分(a2)を含むことにより、当該架橋性基、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等は、(メタ)アクリル酸エステル重合体中で架橋性官能基となるためである。
すなわち、粘着剤組成物に対し架橋剤を添加した場合に、架橋性基を介して、(A)アクリル酸エステル重合体の架橋を、効果的に行うことができ、得られる粘着剤の凝集力を向上させ、密着性や貯蔵弾性率の調整を、容易に行うことができる。
【0023】
また、分子内に架橋性基を有する重合性二重結合含有化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有ビニルエーテル、アリルアルコール、アリルグリコール、アリルジグリコールなどのビニル基含有アリルエーテル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成する主成分である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの相溶性がさらに良好なことから、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを用いることがより好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのいずれかであることがさらに好ましい。
【0024】
その他、分子内に架橋性基を有する重合性二重結合含有化合物として、アクリル酸と、ヒドロキシ基含有モノマーとを併用することも好ましい。
この理由は、両方の官能基を導入することによって、架橋性基であるヒドロキシ基と、架橋剤としてのイソシアネート化合物と、の間の架橋反応に対して促進効果を発揮するためである。
さらに言えば、アクリル酸が有するカルボキシル基自体も、イソシアネート化合物と反応するためである。
なお、分子内に架橋性基を有する重合性二重結合含有化合物として、アクリル酸と、ヒドロキシ基含有モノマーとを併用する場合、その併用割合(重量比)に関し、99:1〜1:99の範囲内の値とすることが好ましく、70:30〜30:70の範囲内の値とすることがより好ましく、65:35〜50:50の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、両者の合計量を100重量部とした時に、アクリル酸およびヒドロキシ基含有モノマーの下限値で言えば、1重量部以上とすることが好ましく、30重量部以上とすることがより好ましく、35重量部以上とすることがさらに好ましい。
また、アクリル酸およびヒドロキシ基含有モノマーの上限値で言えば、99重量部以下とすることが好ましく、70重量部以下とすることがより好ましく、65重量部以下とすることがさらに好ましい。
【0025】
また、モノマー成分(a2)の配合量を、モノマー成分(a1)100重量部に対して、0.5重量部以上、10重量部以下の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー成分(a2)の配合量が0.5重量部未満の値となると、(A)成分間の架橋が不十分となり、所定環境下における耐久性が悪化する場合があるためである。
一方、モノマー成分(a2)の配合量が10重量部を超えた値となると、粘着剤組成物を硬化させた場合の基材密着性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、モノマー成分(a2)の配合量の下限を、モノマー成分(a1)100重量部に対し、1重量部以上とすることがより好ましい。
また、モノマー成分(a2)の配合量の上限を、モノマー成分(a1)100重量部に対し、5重量部以下とすることがより好ましい。
【0026】
(1)−3 モノマー成分(a3)
また、任意モノマー成分ではあるが、(a1)及び(a2)以外のモノマー成分であって、分子内に芳香環を有する重合性二重結合含有モノマーを併用することも好ましい。
この理由は、かかる分子内に芳香環を有する重合性二重結合含有モノマー(a3)を併用することによって、得られる粘着剤組成物の屈折率を高めに誘導することができ、さらには、光漏れ性を有効に防止できるためである。
ここで、かかる分子内に芳香環を有する重合性二重結合含有モノマー(a3)の種類に関して、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシ化o−フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸1,1´−ビフェニル−2−イル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性クレゾール、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
また、かかる分子内に芳香環を有する重合性二重結合含有モノマー(a3)を併用する場合、当該配合量を、モノマー成分(a1)100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、30重量部以下の値とすることが好ましい。
この理由は、モノマー成分(a3)の配合量が0.1重量部未満の値となると、配合効果が発揮されない場合があるためである。
一方、モノマー成分(a3)の配合量が30重量部を超えた値となると、粘着剤組成物を硬化させた場合の基材密着性や透明性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、モノマー成分(a3)の配合量の下限につき、モノマー成分(a1)100重量部に対し、0.5重量部以上の値とすることがより好ましく、2重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
さらに、モノマー成分(a3)の配合量の上限については、モノマー成分(a1)100重量部に対し、8重量部以下の値とすることがより好ましく、5重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
(2)種類2
また、(A)成分の一部として、上述したアクリル酸エステル重合体と併用すべく、ポリウレタン重合体、ポリエステル重合体、ポリオレフィン重合体、ポリカーボネート重合体、天然ゴム、合成ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の少なくとも一種を用いることも好ましい。
特に、ポリウレタン重合体等であれば、(A)成分の一部として、弾性力や伸縮性に優れた粘着剤成分とすることができる。
また、シリコーン樹脂やフェノール樹脂等であれば、(A)成分の一部として、耐熱性や耐久性等にさらに優れた粘着剤成分とすることができる。
【0029】
(3)配合量
また、(A)成分であるアクリル酸エステル重合体の配合量(固形分換算値)を、粘着剤組成物の全体量を100重量%としたときに、30重量%以上、99重量%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる(A)成分の配合量が30重量%未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる(A)成分の配合量が99重量%を超えた値になると、リワーク性や耐久性等が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(A)成分の配合量の下限につき、粘着剤組成物の全体量を100重量%としたときに、50重量%以上の値とすることがより好ましく、75重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(A)成分の配合量の上限につき、粘着剤組成物の全体量を100重量%としたときに、95重量%以下の値とすることがより好ましく、90重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
2.(B)成分:光硬化性多官能モノマー
また、(B)成分として、光硬化性多官能モノマー(光架橋剤と称する場合もある。)を配合することを特徴とする。
すなわち、かかる光硬化性多官能モノマーを含有することによって、(A)成分が有する反応基等と反応して、(A)成分を高分子量化、ひいては三次元架橋化することができるためである。
したがって、粘着剤層を形成した場合の基材密着性、凝集性等を所望範囲に容易に制御することができる。
より具体的には、(B)成分としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型、例えば、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー等の一種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
また、このような(B)成分の一つである多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ヘイズ値を低く保つ観点から、骨格構造に環状構造、例えば、炭素環式構造及び複素環式構造あるいはいずれか一方の環状構造を有することが好ましく、さらに言えば、複素環式構造を有することが特に好ましい。
また、このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレートなどのイソシアヌレート構造を有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーや、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどが好適である。
これらのうち、特に、イソシアヌレート構造を有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。なお、硬化剤を使用する場合には、光や熱による重合開始剤を併存させることも好ましい。
【0032】
(2)配合量
また、(B)成分の配合量を、(A)成分であるアクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1重量部以上、50重量部以下の値とする。
この理由は、かかる(B)成分の配合量が0.1重量部未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる(B)成分の配合量が50重量部を超えた値になると、粘着剤組成物の保存安定性、基材密着性、あるいはリワーク性等の特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(B)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.5重量部以上の値とすることがより好ましく、1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(B)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、30重量部以下の値とすることがより好ましく、20重量部以下の値とすることがさらに好ましく、10重量部以下の値とすることが特に好ましい。
【0033】
3.(C)成分:マクロモノマー
(1)種類
(C)成分のマクロモノマーは、分子末端又は両末端に重合性官能基を有する、比較的高分子量のモノマー成分であり、ポリマー鎖部分と、重合性官能基部分とから構成されている。
ここで、重合性官能基としては、エチレン性不飽和二重結合を有する基(エチレン性不飽和基)が好ましい。
具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
一方、マクロモノマーを構成するポリマー鎖部分は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、あるいは、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ、シリコーン等から誘導される繰り返し単位を主構成単位とする重合体であることが好ましい。
また、かかるポリマー鎖部分は、(A)成分との相溶性をさらに良好にする観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される繰返し単位であることがより好ましく、炭素数4以上であって、8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される繰返し単位であることが特に好ましい。
そして、これらのポリマー鎖部分は単一の繰り返し単位から構成されていてもよいし、複数の繰り返し単位から構成されていても良く、また、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0034】
したがって、マクロモノマーの好適例として、下記構造式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
なお、構造式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。
また、Xは、単結合又は二価の結合基を表し、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基などが挙げられる。そして、二価の結合基中には、−NR
2−(R
2:水素又はメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基である。)、−COO−、−OCO−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−NHSO
2−、−NHCOO−、−OCONH−、又は、複素環から誘導される基、などが結合基として介在されていてもよい。
さらに、Yは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、あるいは、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ、シリコーンから選択される少なくとも1つ以上のモノマー成分を単独重合又は共重合させてなるポリマー鎖を表す。
【0037】
また、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)を2000以上、20000以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる数平均分子量(Mn)が2000未満であると、粘着組成物から粘着剤層を構成した場合に、十分な密着性や耐熱性が得られない場合があるためである。
一方、かかる数平均分子量(Mn)が、20000を超えると、粘着剤組成物の粘度が著しく上昇し、それに伴い作業性が著しく低下したり、あるいは、マクロモノマーの(A)成分等に対する相溶性や、重合性官能基の反応性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)の下限につき、3000以上の値とすることがより好ましく、4000以上の値とすることがさらに好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)の上限につき、10000以下の値とすることがより好ましく、8000以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)法により、基準となるポリスチレン換算値として、測定することができる。
【0038】
また、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)を−100℃以上、150℃以下の値とすることが好ましい。
この理由は、マクロモノマーのミクロドメインによる凝集力(物理的架橋効果)は、マクロモノマーのガラス転移温度以下の温度領域で発現し、ガラス転移温度付近では、かかる凝集力が著しく低下する場合があるためである。
したがって、充分な凝集力を確保する点から、ガラス転移温度を−100℃以上の値とすることが好ましく、タック性や接着力の低下を抑制できることから、150℃以下の温度とすることが好ましい。
したがって、マクロモノマーのガラス転移温度の下限につき、−80℃以上の値とすることがより好ましく、−50℃以上の値とすることがさらに好ましい。
また、マクロモノマーのガラス転移温度の上限につき、100℃以下の値とすることがより好ましく、0℃以下の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
さらに、マクロモノマーの製造方法については特に制限はないものの、例えば、以下の製造方法(1)〜(3)が好適である
(1)リビングアニオン重合でマクロモノマーを構成するポリマー鎖(リビングポリマーアニオン)を製造し、これにメタクリル酸クロリド等を作用させる方法
(2)メルカプト酢酸のような連鎖移動剤の存在下で、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、これをメタクリル酸グリシジル等と反応させる方法
(3)カルボキシル基を含むアゾ系重合開始剤の存在下に、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、メタクリル酸グリシジルでマクロモノマー化する方法
【0040】
そして、(C)成分のマクロモノマーとして、市販品を用いることもできる。
例えば、分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリメチルメタクリレート(PMMA)であるマクロモノマー(製品名:45%AA−6(AA−6S)、AA−6;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖がポリスチレンであるマクロモノマー(製品名:AS−6S、AS−6;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖がスチレン/アクリルニトリルの共重合体であるマクロモノマー(製品名:AN−6S;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB−6;東亞合成株式会社製)などを用いることができる。
【0041】
(2)配合量
また、(C)成分の配合量を、(A)成分であるアクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1重量部以上、20重量部以下の値とする。
この理由は、かかる(C)成分の配合量が0.1重量部未満の値になると、相溶性改良等についての添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる(C)成分の配合量が20重量部を超えた値になると、保存安定性、基材密着性、あるいはリワーク性等の特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(C)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.5重量部以上の値とすることがより好ましく、1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(C)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、20重量部以下の値とすることがより好ましく、10重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
4.(D)成分:光重合開始剤
(1)種類
(D)成分である光重合開始剤としては、紫外線等の放射線を所定量照射した場合に、ラジカル発生可能な化合物であれば使用可能であるが、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等の一種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0043】
(2)配合量
また、(D)成分の配合量を、(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上、10重量部以下の値とする。
この理由は、かかる(D)成分の配合量が0.01重量部未満の値になると、添加効果が発現せず、十分に光重合反応が生じない場合があるためである。
一方、かかる(D)成分の配合量が10重量部を超えた値になると、保存安定性、基材密着性、あるいはリワーク性等の特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(D)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、0.1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(D)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、5重量部以下の値とすることがより好ましく、3重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
5.(E)成分:熱架橋剤
(1)種類
(E)成分である熱架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物、及びアジリジン系化合物の少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、これらの熱架橋剤であれば、比較的少量の添加によっても、(A)成分が分子内に有する官能基等と、確実に反応し、架橋構造を形成できるためである。
また、これらの(E)成分のうち、特に、イソシアネート系化合物であることが好ましい。
この理由は、イソシアネート系化合物であれば、室温等の比較的低温であっても、(A)成分が有する官能基等と、確実に反応することができ、その結果、硬化物の密着性、ヘイズ、あるいは、ゲル分率や貯蔵弾性率(G´)についても、それぞれ所望範囲内の値へ調整することが容易なためである。
【0045】
また、好適なイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
そして、さらに好適には、トリレンジイソシアナート変性トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0046】
(2)配合量
また、(E)成分の配合量を、(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下の値とする。
この理由は、かかる(E)成分の配合量が0.01重量部未満の値になると、添加効果が発現せず、十分に熱架橋反応が生じない場合があるためである。
一方、かかる(E)成分の配合量が20重量部を超えた値になると、保存安定性、基材密着性、あるいはリワーク性等の特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(E)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、0.1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(E)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、10重量部以下の値とすることがより好ましく、4重量部以下の値とすることがさらに好ましく、1重量部以下の値とすることが特に好ましい。
【0047】
6.(F)成分:帯電防止剤
(1)種類
(F)成分である帯電防止剤としては、アルカリ金属塩が典型的であるが、その他、4級アンモニウムカチオン、N-アルキル化ピリジニウムカチオン、N,N´-アルキル化イミダゾリウムカチオン、N,N´-アルキル化ピペリジニウムカチオンのいずれかの含窒素オニウム塩、又は含イオウオニウム塩、又は含リンオニウム塩等の少なくとも一種が挙げられる。
そして、好適な帯電防止剤としては、アルカリ金属塩のうち、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化リン酸ナトリウム、六フッ化リン酸カリウム、テトラアルキルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラアルキルアンモニウムビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド、テトラアルキルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、六フッ化リン酸テトラアルキルアンモニウム、六フッ化リン酸1−メチル−4−アルキルピリジニウム類縁体等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
この理由は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のアルカリ金属塩であれば、比較的少量の配合で、優れた帯電防止性を発揮するためである。
【0048】
(2)配合量
また、(F)成分の配合量を、(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上、10重量部以下の値とする。
この理由は、かかる(F)成分の配合量が0.01重量部未満の値になると、添加効果が発現せず、帯電防止効果が得られない場合があるためである。
一方、かかる(F)成分の配合量が10重量部を超えた値になると、基材密着性、あるいはリワーク性等の特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、(F)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、0.1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(F)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、7重量部以下の値とすることがより好ましく、4重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
7.(G)成分:カップリング剤
(1)種類
また、(G)成分として、カップリング剤、例えば、シランカップリング剤を配合することが好ましい。
この理由は、粘着剤組成物中にカップリング剤を配合することにより、光学フィルムを構成して、液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤層と、ガラスセルとの間の密着性がより良好となることから好適配合成分である。
ここで、好適なカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
さらに、これらのカップリング剤とともに、あるいは、これらのカップリング剤とは別に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、並びにアリルアルコキシシラン類との加水分解縮合体等を配合することも好ましい。
【0050】
(2)配合量
また、(G)成分の配合量を(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上、10重量部以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる(G)成分の配合量が0.01重量部未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる(G)成分の配合量が10重量部を超えた値になると、粘着剤組成物の基材密着性やリワーク性等の制御が困難となる場合があるためである。
したがって、(G)成分の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、0.1重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(G)成分の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、5重量部以下の値とすることがより好ましく、3重量部以下の値とすることがさらに好ましく、1重量部以下の値とすることが特に好ましい。
【0051】
8.溶剤、及び他の配合成分
また、粘着剤組成物は、上述した(A)〜(G)成分以外の他の配合成分を含んでもよい。
例えば、基材等に対する塗布性や配合成分の混合性を向上させるべく、典型的には、溶剤を所定量含み、粘着剤組成物溶液として、取り扱うことが好ましい。
ここで、かかる溶剤の種類については特に制限されるものではないが、例えば、エステル類、芳香族炭化水素、ケトン類、エーテル類が挙げられる。
より具体的には、(A)成分等に対する溶解性が良好であって、取り扱いが容易なことから、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0052】
また、溶剤の配合量につき、粘着剤組成物溶液の全体量(100重量%)に対して、5重量%以上、40重量%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる溶剤の配合量が、5重量%未満となると、粘着剤組成物溶液の粘度が過度に高くなって、基材等に対する塗布性や配合成分の混合性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる溶剤の配合量が、40重量%を超えると、逆に、粘着剤組成物溶液の粘度が過度に低くなって、同様に、基材等に対する塗布性が著しく低下したり、あるいは、配合成分が沈殿等しやすくなったりする場合があるためである。
なお、溶剤の配合量に関して、(A)成分を溶液重合する際の溶剤を含んでいても良く、最終的に、所定範囲の溶剤の配合量に調整してあれば良い。
【0053】
また、溶剤以外の他の配合成分として、例えば、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、導電性材料、電気絶縁材料、抗菌剤、粘着付与剤、着色剤、充填剤、屈折率調整剤等が挙げられる。
また、他の添加剤を配合する場合、その種類にもよるが、通常、(A)成分100重量部に対して、0.001重量部以上、30重量部以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる他の添加剤の配合量が0.001重量部未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる他の添加剤の配合量が30重量部を超えた値になると、粘着剤組成物の基材密着性やリワーク性等の制御が困難となる場合があるためである。
したがって、他の添加剤の配合量の下限につき、(A)成分100重量部に対して、0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、2重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、他の添加剤の配合量の上限につき、(A)成分100重量部に対して、20重量部以下の値とすることがより好ましく、10重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、基材上に、配合成分として、少なくとも(A)アクリル酸エステル重合体と、(B)光硬化性多官能モノマーと、(C)マクロモノマーと、(D)光重合開始剤と、(E)熱架橋剤と、を含む粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層と、を備えた粘着シートであって、(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合量を0.1〜50重量部、(C)成分の配合量を0.1〜20重量部、(D)成分の配合量を0.01〜10重量部、及び(E)成分の配合量を0.01〜20重量部の範囲内の値とすることを特徴とする粘着シートである。
以下、本発明の第2の実施形態の粘着シートを、具体的に説明する。
【0055】
1.粘着剤組成物及び粘着剤層
(1)配合組成
第2の実施形態の粘着シートに用いる粘着剤組成物の配合組成は、第1の実施形態で説明したのと同様の内容とすることができることから、ここでの説明は省略する。
【0056】
(2)形態
また、粘着剤組成物からなる粘着剤層の形態についても特に制限されるものではないが、所定厚さを有する粘着剤層とすることが好ましい。
すなわち、通常、厚さが10μm以上、200μm以下の粘着剤層とすることにより、被着体に対する良好な密着性や耐久性を発揮することができる。
また、規則的又は不規則に配置されてなる点状の粘着剤層であっても良い。すなわち、円相当径が1μm以上、200μm以下の点状の粘着剤層とすることにより、被着体に対する密着性をきめ細かく制御したり、良好な再剥離性を発揮することができる。
【0057】
2.基材
(1)種類
また、基材(基材フィルム)を構成する種類としては、ポリアセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セロファン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、紙、繊維、不織布、ガラス繊維等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
そして、各種樹脂等からなる基材の表面に、コロナ処理、プライマー処理、鹸化処理、火炎酸化処理等の表面処理が施してあることも好ましい。
この理由は、かかる表面処理によって、基材に対する粘着剤層の密着性を著しく向上させることができるためである。
一方、粘着剤層の両面に基材がそれぞれ設けてあるとともに、そのうちの一方を剥離部材から構成してあることも好ましい。
すなわち、このような剥離部材を含むことにより、液晶セル等の被着体に対して、容易に適用することができる。
【0058】
(2)形態
また、基材の形態としては特に制限されるものではないが、シート状(フィルム状を含む)、不織布状、穴あきフィルム、表面凹凸フィルム等が挙げられる。
例えば、基材として、シート状の各種光学フィルムを用いることにより、偏光板、位相差板、光拡散性偏光板、反射防止フィルム等を構成することができる。
さらに、所定の着色層、装飾層、印字層、帯電防止層、ハードコート層等を有する基材を用いることにより、粘着テープ、粘着装飾シート、マーキングフィルム、粘着剤層付き帯電防止フィルム、表面保護フィルム等とすることも好ましい。
【0059】
3.製造方法
(1)粘着剤組成物の準備工程
粘着剤組成物の準備工程は、所定の配合組成を有する粘着剤組成物を作成する工程である。
したがって、例えば、撹拌装置を備え、窒素パージした重合容器内に、所定のアクリル酸エステルモノマーと、酢酸エチル等の溶剤と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の重合開始剤と、を収容した後、溶液重合により、(A)成分としてのアクリル酸エステル重合体(酢酸エチル溶液、固形分:約10〜30重量%)を得ることができる。
次いで、撹拌装置を備えた容器内に、得られた(A)成分としてのアクリル酸エステル重合体を収容した後、撹拌装置を用いて撹拌しながら、(B)成分としての光硬化性多官能モノマーと、(C)成分としてのマクロモノマーと、(D)成分としての光重合開始剤と、(E)成分としての熱架橋剤と、(F)成分としての帯電防止剤(AS剤と称する場合がある。)と、(G)成分としてのシランカップリング剤と、を順次添加する。
その後、通常、20〜60℃の温度条件に保持した状態で、10分〜24時間、連続的に撹拌混合することによって、均一配合組成を有する粘着剤組成物とすることができる。
【0060】
(2)粘着剤組成物の塗工工程
次いで、粘着剤組成物の塗工工程は、公知の塗布方法、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、グラビアコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、ダイコート法等の少なくとも一つにより、得られた粘着剤組成物を基材上に塗布し、それを乾燥して、粘着剤層とする工程である。
したがって、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルム等の基材上に、従来の塗布方法で粘着剤組成物を塗布した後、例えば、40〜120℃の温度条件で、10秒〜10分間加熱乾燥することによって所定厚さの粘着剤層とすることができる。
【0061】
なお、加熱乾燥後、粘着剤組成物に対して、紫外線照射装置や電子線照射装置を用いて、所定量の紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射を行うことにより、光硬化した粘着剤層とすることができる。
したがって、例えば、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、照度50〜1000mW/cm
2、露光量50〜1000mJ/cm
2の光硬化条件とすることが好ましい。
さらには、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、照射量が10〜1000kradの範囲となるような光硬化条件とすることが好ましい。
【0062】
その他、粘着剤組成物の塗工工程の変形例として、剥離フィルムの剥離処理面上に、粘着剤組成物を塗布した後、加熱乾燥させ、次いで、偏光板等の光学フィルムと貼り合せた後、剥離フィルムを介して、活性エネルギー線を照射して、光硬化した粘着剤層とすることも可能である。
すなわち、粘着剤組成物が未硬化の状態で、光学フィルムと貼り合せ、その後、所定量の紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射を行い、さらに言えば、後述する任意工程であるシーズニング工程を経て、光学フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの構成体とすることも可能である。
【0063】
(3)シーズニング工程
次いで、シーズニング工程は、任意工程ではあるが、基材上で粘着剤層とした粘着剤組成物の架橋反応をすすめ、凝集力が向上した粘着剤層とする工程である。
より具体的には、(A)成分であるアクリル酸エステル重合体が有する反応性基と、(E)成分である熱架橋剤とを反応させて、架橋構造を確実に形成する工程である。
したがって、かかるシーズニング工程を実施し、例えば、室温(23℃)、50%RHの条件下に、1日以上、10日以下放置して、粘着剤組成物を十分に架橋させることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0065】
[実施例1]
1.粘着剤組成物の作成
(1)(A)アクリル酸エステル重合体の作成
窒素雰囲気下において、還流装置及び撹拌装置付きの容器内に、モノマー成分としてのアクリル酸n−ブチル(BA)90重量部、アクリル酸2−フェノキシエチル(PhEA)6重量部、アクリル酸(AA)2.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)1.5重量部の割合でそれぞれ収容した後、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を添加して、トルエン希釈下、ラジカル溶液重合させ、(A)成分として、重量平均分子量が150万のアクリル酸エステル共重合体のポリマー溶液を得た。
なお、(A)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)法を用い、標準ポリスチレン換算値として、測定した。
【0066】
(2)粘着剤組成物の作成
次いで、撹拌装置付きの容器内に、得られた(A)成分としてのポリマー溶液と、(E)成分としてのトリレンジイソシアナート変性トリメチロールプロパン(TDI−tmp、綜研化学(株)製、固形分75重量%、酢酸エチル溶液)を、固形分換算で、(A)成分100重量部に対して、0.1重量部の割合となるように、撹拌しながら配合した。
次いで、(G)成分としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製、固形分100重量%)を、固形分換算で、(A)成分100重量部に対して、0.2重量部の割合となるように撹拌しながら配合した。
【0067】
次いで、同撹拌装置付きの容器内に、(B)成分としてのイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレートを、固形分換算で、(A)成分100重量部に対して、10重量部の割合となるように、撹拌しながら配合した。
次いで、同撹拌装置付きの容器内に、(C)成分としてのマクロモノマーAB−6(東亜合成社製、片末端メタクリロイル基、数平均分子量:6000、Tg:−55℃)を、固形分換算で、(A)成分100重量部に対して、5重量部の割合となるように、撹拌しながら配合した。
次いで、同撹拌装置付きの容器内に、(D)成分としての光重合開始剤としての、イルガキュア500(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ベンゾフェノン:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの混合物(重量比50:50))を、固形分換算で、(A)成分100重量部に対して、0.7重量部の割合となるように、撹拌しながら配合した。
そして、最後に、固形分濃度が20重量%となるように、酢酸エチルを希釈配合し、実施例1の粘着剤組成物溶液とした。
【0068】
2.粘着剤組成物溶液の塗布
次いで、剥離フィルムとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET3811)の剥離処理面に対し、得られた粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが20μmになるように、ナイフ式塗工機を用いて塗布し、塗布層を形成した。
次いで、90℃、1分間の条件で、塗布層に対して、加熱乾燥処理を施し、硬化処理前の粘着シートとした。
【0069】
3.紫外線照射
得られた硬化処理前の粘着シートの塗布層に対して、厚さ100μmのPETフィルム、及び厚さ100μmの表面未鹸化のTAC偏光板(トリアセチルセルロース樹脂製偏光板)を、それぞれ貼り合わせ、基材密着性等の測定用の積層体1、及び、耐久性試験用の積層体2を得た。
次いで、得られた積層体1及び2につき、それぞれ剥離フィルム側から、フージョン社製無電極ランプ(Hバブル使用)を用いて、照度200mW/cm
2、露光量:200mJ/cm
2の条件で紫外線を照射し、粘着剤組成物を紫外線硬化させた。
【0070】
4.粘着剤組成物のシーズニング
次いで、紫外線硬化してなる粘着剤組成物を有する積層体1及び積層体2を、23℃、50%RHの条件下に7日間放置(シーズニング)し、(A)成分であるアクリル酸エステル重合体が有するヒドロキシ基と、(E)成分である熱架橋剤(トリレンジイソシアナート変性トリメチロールプロパン)とを十分に反応させた。
【0071】
5.粘着剤組成物の評価
(1)密着性評価
得られた積層体1の剥離フィルムをはがした後、粘着剤層に対して、基材であるTAC(トリアセチルセルロース)フィルム及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)フィルムへそれぞれ貼合した。なお、いずれも表面未鹸化であって、一般的には、密着性に劣る基材を使用した。
次いで、裁断装置PN1−600(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた積層体1を幅25mm×長さ100mmの大きさに裁断し、温度23℃、50%RHの環境条件下に、1日放置し、測定サンプルとした。
次いで、引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、テンシロン)を用いて、剥離速度:300mm/分、剥離角度:180°の測定条件にて、測定サンプルの密着性を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0072】
(2)耐久性評価
所定条件下における偏光板に貼付した積層体2としての耐久性を評価した。
すなわち、裁断装置PN1−600(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた積層体2を幅233mm×長さ309mmの大きさに裁断した。
次いで、剥離フィルムをはがした後、無アルカリガラス1737(コーニング社製)に対して、積層体2を貼付し、測定サンプルとした。
次いで、オートクレーブ(栗原製作所製)を用いて、測定サンプルにつき、0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧した。
次いで、80℃のオーブン及び60℃、90%RH条件のオーブンに、それぞれ測定サンプルを投入し、200時間放置した。
最後に、それぞれのオーブンから、測定サンプルを取り出し、10倍ルーペを用いて外観観察し、下記基準に沿って耐久性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:外周端部において、気泡、浮き、剥がれが、いずれも観察されない。
○:外周端部から0.6mm以上の部分において、気泡、浮き、剥がれのいずれも観察されない。
△:外周端部から1mm以上の部分において、気泡、浮き、剥がれのいずれも観察されない。
×:外周端部から1mm以上の部分において、気泡、浮き、剥がれのいずれかが観察される。
【0073】
(3)ヘイズ
得られた積層体1における粘着剤層のヘイズ値を評価した。すなわち、得られた積層体1の剥離フィルムを剥がし、測定試料とし、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業(株)製、NDH−2000)を用いて、JIS K 7136:2000に準拠しながら、拡散透過率(Td%)及び全光線透過率(Tt%)を測定し、下式(1)にてヘイズ値(%)を算出した。得られた結果を表2に示す。
ヘイズ値(%)=(Td/Tt)×100 (1)
【0074】
[実施例2〜5]
実施例2〜5では、表1に示す粘着剤組成物の配合組成としたほかは、実施例1と同様に、密着性測定用の積層体1、及び、耐久性試験用の積層体2を作成して、それぞれ評価した。得られた結果を表2に示す。
すなわち、実施例2では、(C)成分のマクロモノマーの配合量を、実施例1の5重量部から、10重量部に変えて、評価した。
また、実施例3では、(B)成分の配合量を、実施例1の10重量部から、15重量部に変えて、評価した。
また、実施例4では、(B)成分の配合量を、実施例1の10重量部から、15重量部に変えるほか、(C)成分のマクロモノマーの配合量を、実施例1の5重量部から、10重量部に変えて、評価した。
さらにまた、実施例5では、(B)成分の種類をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに変えるとともに、(C)成分のマクロモノマーの配合量を、5重量部から、10重量部に変えて、評価した。
【0075】
[比較例1〜4]
比較例1〜4では、表1に示す粘着剤組成物の配合組成としたほかは、実施例1と同様に、密着性測定用の積層体1、及び、耐久性試験用の積層体2を作成して、それぞれ評価した。得られた結果を表2に示す。
すなわち、比較例1では、(B)成分及び(C)成分の配合量を、実施例1の10重量部及び5重量部から、それぞれ0重量部に変えて評価した。
また、比較例2では、(C)成分の配合量を、実施例1の5重量部から、0重量部に変えて評価した。
また、比較例3では、(B)成分の配合量を、実施例1の10重量部から、15重量部に変えるとともに、(C)成分の配合量を、実施例1の5重量部から、0重量部に変えて評価した。
また、比較例4では、(B)成分の種類をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに変えるとともに、(C)成分のマクロモノマーの配合量を、5重量部から0重量部に変えて評価した。
【0076】
【表1】
(A)アクリル酸エステル重合体
(B)光硬化性多官能モノマー
(C)マクロモノマー
(D)光重合開始剤
(E)熱架橋剤
(F)帯電防止剤
(G)カップリング剤
【0077】
【表2】
【0078】
[実施例6〜10]
実施例6〜10では、表1に示す実施例1〜5の粘着剤組成物に対して、(F)成分として、帯電防止剤である六フッ化リン酸1−ブチル−3−メチルピリジニウムを、A成分100重量部に対して、3.2重量部の割合で配合したほかは、実施例1と同様に、密着性測定用の積層体1、及び、耐久性試験用の積層体2を作成して、それぞれ評価した。
その結果、実施例6〜10では、表3に示されるように、所定の帯電防止効果が発揮された以外は、実施例1〜5と、ほぼ同様の密着性、耐久性、及びヘイズに関する測定結果が得られた。
【0079】
【表3】