(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554420
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】タンニン系弾性発泡材を製造するための組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20190722BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20190722BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20190722BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/32 071
C08G18/32 018
C08G18/50 021
C08G101:00
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-555611(P2015-555611)
(86)(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公表番号】特表2016-509105(P2016-509105A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014000271
(87)【国際公開番号】WO2014117946
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】TO2013A000091
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514016843
【氏名又は名称】シルバチミカ エス.アール.エル.
(73)【特許権者】
【識別番号】509296214
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド ロレーヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LORRAINE
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】バッソ、 マリア セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンド、 サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ピッツィ、 アントニオ
【審査官】
前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03654194(US,A)
【文献】
米国特許第03577358(US,A)
【文献】
米国特許第04032483(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0080203(US,A1)
【文献】
米国特許第03546199(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的に10重量%を超える量のタンニンと、5重量%以上の量のポリイソシアナートとを含む、タンニン系弾性発泡材を製造するための組成物であって、
前記組成物が、80重量%未満の量のタンニンと、5重量%〜80重量%の量のポリイソシアナートとを含み、
前記組成物が少なくとも、アミン官能性とアルコキシ化官能性とを有する物質を含み、
前記アミン官能性とアルコキシ化官能性とを有する物質は、8〜22個の炭素原子を含む脂肪族アミンのアルコキシ化誘導体である、
組成物。
【請求項2】
前記アルコキシ化誘導体は、エトキシ化アミン、プロポキシ化アミンまたはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコキシ化誘導体は、アルコキシ化度が1〜40である、エトキシ化アミンおよび/もしくはプロポキシ化アミンまたはこれらの混合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ化誘導体は、プロポキシ化アミンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコキシ化誘導体は、エトキシ化脂肪族アミンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルコキシ化誘導体は、ココヤシアミン、獣脂アミン、オレイルアミン、および/またはステアリルアミンのアルコキシ化誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記アルコキシ化誘導体を80重量%以下の量で含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記タンニンが、縮合型タンニン、および/もしくは加水分解型タンニンであり、化学的に修飾されていてもよく、ならびに/またはこれらの混合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、タンニンおよび他の存在し得る成分中に含まれる水分に加えて、最大40重量%の水を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1つの発泡剤、および/または少なくとも1つの発泡のための低沸点物質、および/またはこれらの混合物をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、初期混合物の粘度を減少させるのに適合する少なくとも1つの化合物を、前記組成物中に含まれるタンニンに対して40重量%〜100重量%の量でさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、50重量%以下の比率で、少なくとも1つの添加剤をさらに含み、前記添加剤が例えば、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、可塑剤もしくは発泡剤もしくはオープンセル/クローズドセルの比率を制御することができる添加剤、ならびに/または耐火性を向上させるための化合物もしくは自然消火時間を短くするための化合物もしくは耐火剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物から得ることができる、タンニン系弾性発泡材。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物から出発する、タンニン系弾性発泡材の製造方法であって、前記製造方法が、
添加量の粉末状タンニンと、前記アルコキシ化誘導体とを含む混合物を調製するステップであって、タンニンの添加量が組成物の80重量%未満であり、前記アルコキシ化誘導体の量が組成物の80重量%以下である、ステップと;
混合物を機械的に撹拌することにより第1の混合段階を実施するステップと;
得られた混合物に、少なくとも1つの使用可能な添加剤を、50重量%以下の比率で添加するステップと;
得られた混合物を均一化する段階を実施するステップと;
混合物にポリイソシアナートを、組成物の5重量%〜80重量%の量で添加するステップと;
得られた混合物を撹拌する段階を実施するステップと;
混合物を予め用意した型に流し込むステップと;
型の中での混合物の伸長反応と、得られた発泡材の硬化とを待つステップ
とを含む、タンニン系弾性発泡材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、発泡材、あるいは泡状または多孔性の材料と称される材料に関し、より詳細には、このような弾性特性を有するタンニン系材料を得るための組成物に関する。
【0002】
タンニンは、植物由来の天然化合物であり、したがって、石油化学系物質に由来して潜在的に汚染物質である合成材料とは異なり、非毒性であって一般的に環境の観点から許容可能と考えられている。タンニンは、高い反応性と抵コストという特徴を有すると共に、再生可能または環境適合性である。
【0003】
特に、植物性タンニンは、フェノール性を有し、そのためタンニン/フラン型の硬質の発泡体や泡状材料の合成にて用いることができる。
【0004】
タンニン系発泡材は、例えばイタリア特許出願TO2011A000656およびTO2012A000860、ならびに科学刊行物(G. Tondi, A. Pizzi, Industrial Crops and Products, 29, 2009, 356-363; C. Lacoste, M.C. Basso, A. Pizzi, M.-P. Laborie, A. Celzard, V. Fierro, Industrial Crops and Products, 43, 2013, 245-250)から既知である。この種類の発泡材は、縮合型(ポリフラボノイド)タンニン類、フルフリルアルコール、揮発性溶媒および/またはin situで泡化剤を生成するのに適合する化合物、使用可能な架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド)、ならびに酸触媒(通常、パラトルエンスルホン酸(p-TSA))から構成される混合物を用いることにより、水性媒体中にて製造することができる。
【0005】
詳細には、本発明は、発泡性または多孔性のタンニン系材料を製造するために用いることができる組成物に関し、この材料は添付の請求項1のプリアンブルに記載される特徴を有する。
【0006】
上述のような特徴を有する発泡材の物理的特性および機械的特性は、商業的に知られている従来の発泡材の特性に完全に匹敵することに加え、天然由来であって、ポリウレタン材と比較して耐火特性が改善されているという利点を有する。
【0007】
しかしながら、完全に合成由来であるフェノール性発泡材と全く同様に、これらの既知のタンニン系材料は、硬質で脆いという欠点を有するため、多様な用途にはより不向きとなる。
【0008】
これらの既知の材料の硬さを低減することを目的として、グリセロールなどの添加剤が用いられてきた(X. Li, A. Pizzi, M. Cangemi, V. Fierro, A. Celzard, Industrial Crops and Products, 37, 2012, 389-393)が、これによっては認識できるほどの改善が得られなかった。実際、問題の発泡材は、未だに非常に脆く、衝撃に対して耐性をほとんど示さない。
【0009】
本発明の主な目的は、弾性と柔軟性とを示すタンニン系発泡材を得ることを可能にする組成物を提供することであり、これにより、材料のオープンセルとクローズドセルとの割合を自在に制御することを可能にする。したがって、このタンニン系発泡材は、断熱材(insulating material)および/または機械的応力緩衝材として用いるのに適し、輸送、建築、包装、家具および建具の製造などの様々な分野において使用可能である。
【0010】
この目的は、本発明によって、添付の特許請求の範囲に記載された組成物を用いることにより達成される。
【0011】
本発明の組成物が80重量%未満のタンニン類と5重量%〜80重量%の範囲のイソシアナートとを含むということのおかげで、ならびに、本発明の組成物がアミン官能基ならびにアルコキシラート官能基を有する物質を少なくとも含み、その物質が少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含むということのおかげで、弾性および柔軟性について所望の特性を有する発泡材を得ることができる。さらに、本発明の組成物から得られる発泡材は、脆くなく、また、応力を加えた結果として材料が変形した後、材料がその元の形状に実質的に回復することができるので、弾性形状記憶特性を有する。
【0012】
上述した物質の少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基は、同一の分子の一部であるかまたは異なる分子の一部であり得る。
【0013】
詳細には、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質は、アミノ基が存在するため、組成物の成分の反応中において触媒機能を果たし、また、アルコキシ化官能基が存在するため、弾性について所望の特性を発泡材に賦与することができる。
【0014】
さらに、この物質のアルコキシ化官能基は、タンニン類に対するその親和性のために、この物質の懸濁物を得ることを可能にし、また、イソシアナートおよびタンニン分子中(特に、複素環に結合するアルコール基)の-OH基と発熱的に反応して、反応を促進させる。さらに、この物質はまた、イソシアナートとタンニン類との間の反応が確実に起こり得るようにするのに適するpH値を得ることを可能にする。
【0015】
また、本発明の組成物は、プロシアニジン型およびプロデルフィニジン型の両方(例えば、マツ、ペカン、モミ、ダグラスモミなどの木から得られる)、および/またはプロロビネチニジン型、および/またはプロフィセチニジン型(例えば、ミモザ、ケブラチョなどの木から得られる)から構成される縮合型タンニン類、ならびに加水分解型タンニン類(例えば、クリ、タラ(tara)などの木から得られる)の使用を可能にするという利点を有し、この利点は、縮合型タンニン類からのみ製造することができる既知のタンニン/フラン型発泡体の組成物よりも、本発明の組成物をより用途の広いものにする。本発明において用いられるタンニン類は、上述のタンニン類の混合物からなるものであってよく、また、上述のタンニン類の化学変換または化学修飾(例えば酸化、アセチル化、エステル化、エトキシ化されたタンニン類)、および/またはアミノ基の導入により誘導されてよい。
【0016】
要するに、本発明の組成物は、簡便な方法でスポンジ型の発泡材を製造することを可能にするものであり、この組成物は、石油化学系物質に由来する工業製品から得られるためにほとんどすべてが合成物である、商業的に入手可能な弾性発泡材とは異なり、高い割合の天然原料を含む。
【0017】
さらに、石油化学系物質を原料とする非常に柔軟性の高い他の発泡材(例えば、スポンジゴムなど)とは異なり、本発明のタンニン系発泡材は、燃焼中における、潜在的に着火源となり得る燃焼液滴または燃焼粒子の形成および分離という現象に曝されない。この特徴は、このような材料の燃焼の場合に、このような材料の使用における安全性を確保するために最も重要である。
【0018】
いわゆる「フォギング(fogging)」の一因となる揮発性有機物質を出す成分及び添加剤を含むため、発泡材が高温条件に曝された結果、蒸気を発生させ、その蒸気が冷表面で凝縮され得る、他の既知の柔軟性の高い発泡材(例えばポリウレタン発泡材など)とは異なり、本発明のタンニン系発泡材は、揮発性有機化合物(VOC)、特に気体状物質(FOG)を出す量が低減される。本発明の発泡材の燃焼の場合にも、このように揮発性有機化合物(VOC)が出る量は少ない。本発明の発泡材のこの特徴は、自動車両の車室内で用いられなければならないために、例えば窓やフロントガラス表面において凝縮し得る蒸気を出さない発泡材が必要とされる、自動車産業による使用の観点から、重要である。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む上述の物質は、少なくとも1つのアルコキシ化アミン(例えば、エトキシ化アミン、および/またはプロポキシ化アミン、またはこれらの混合物)から構成される。
【0020】
エトキシ化アミンの場合、本発明の発泡材の弾性特性は、主に、エトキシ化された鎖と組成物の様々な成分の反応の間に生成されるウレタン基とが存在することに由来する。
【0021】
有利なことには、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む上述の物質がエトキシ化アミンから構成される場合、その物質はエトキシ化脂肪族アミンから構成される。
【0022】
また、本発明は、上述の組成物から出発する植物性タンニン系の発泡材を製造する方法、ならびに上述の組成物および上述の方法から得られる発泡材を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な実施例を用い、添付される図面を参照することにより説明される下記の詳細な説明から、より明らかとなるであろう。
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の組成物から得られ、下記の実施例においてサンプルA8として示される、発泡材のサンプルの断面のSEMによる拡大画像である。
【
図2】
図2は、繰り返し圧縮試験にかけたサンプルA8の機械的挙動に関し、変形の関数としての応力値を表す曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、オープンセルおよび/またはクローズドセルを有する種類の気泡型発泡材の製造を可能にするように適合される組成物であって、縮合型タンニン類および/または加水分解型タンニン類から構成されるタンニン類の混合物、イソシアナート、ならびに少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基(詳細には、少なくとも1つのアルコキシ化アミン、例えばアルコキシ化脂肪族アミン)とを含む少なくとも1つの物質、ならびに任意に1つ以上の添加剤を含む組成物に関する。
【0026】
タンニン類と、イソシアナートと、上述の物質との間で生じる反応は、下記のスキームで表される。
【化1】
【0027】
この反応において、mは0または0超の整数であり、XおよびX
1は、水素基であるか、あるいは、それぞれエトキシ化アミンの場合またはプロポキシ化アミンの場合に、エトキシ基および/またはプロポキシ基を表してよく、あるいはさらに、例えば飽和または不飽和の脂肪族、芳香族、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子などの様々な構造を表し得る。mの値が大きければ大きいほど、発泡材の弾性特性はより高くなる。
【0028】
少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質は、任意の物質または分子から構成されてよいが、但し、その物質または分子の中にはアミノ官能性とアルコキシ化官能性との両方が存在する。例えば、この物質は、これらの官能性の両方を含む単一の分子から構成されてもよく、あるいは、独立して個々にこれらの官能性を有する複数の分子から構成されてもよい。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質は、1つのアルコキシ化アミンから構成される。
【0030】
都合の良いことには、上述の少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質が、1つのアルコキシ化アミンから構成される場合には、この物質は、直鎖構造または分岐鎖構造を有し得る、8〜22個の炭素原子を含む(あるいは、炭素数が8〜22個に分布するアルキル基を含む)アルコキシ化アルキルアミンから構成されるが、これに限定されるものと解釈されるべきではない。
【0031】
この場合、詳細には、ココヤシアミン、獣脂アミン、オレイルアミン、および/またはステアリルアミンのアルコキシ化誘導体が好ましい。
【0032】
上記のアルコキシ化アミンのアルコキシ基は、エトキシ基、プロポキシ基、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0033】
好ましくは、アルコキシ基はエトキシ基である。アルコキシ化アミンのアルコキシ化度は、1〜40であることが有利である。
【0034】
少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質としては、アルコキシ化ポリアミン類が、上述のエトキシ化アミンの代替として用いられ得るが、あるいはまた、エトキシ化アミンと共に混合物の形態で、例えばエトキシ化獣脂ジアミンを3〜15モルのエトキシ化されたポリオキシアミン類またはポリエチレングリコールビスアミン類と共に用いてもよいが、これらに限定されない。
【0035】
少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質は、ポリ(エチレンオキシド)基から得られる少なくとも1つのポリエトキシ化化合物、および/またはポリ(プロポキシオキシド)基から得られるポリプロポキシ化化合物、例えば、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸エステル、エトキシ-プロポキシ ブロックコポリマー、エトキシ化ポリシロキサンと、アルカリ触媒とから構成されてよい。この場合、アミン官能性とアルコキシ化官能性は、同一の分子内には存在しない。
【0036】
さらに、例えば、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸エステル、エトキシ-プロポキシ ブロックコポリマー、エトキシ化ポリシロキサンに基づく、ポリエトキシ化化合物および/またはポリプロポキシ化化合物の形態での添加剤が、上述のアルコキシ化官能基に加えられ得る。
【0037】
上述の少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質はまた、その構造によっては、イソシアナートとさらに反応し得る。
【0038】
上述の物質とイソシアナートおよびタンニンとの間で生じる反応において、詳細にはアルコキシ化アミンの場合において、様々な反応物の比率は、好ましくは化学量論量となるように選択され、これにより、アルコキシ化アミンおよび/または他の潜在的にイソシアナートと反応し得る添加剤が、イソシアナートそのものとの反応においてタンニン類と置き換わるのを防ぐ。
【0039】
組成物の製造の間、タンニン類は、粉末の形態で、組成物の最大80重量%の量で、好都合には組成物の最大50重量%の量で用いられる。
【0040】
下記の非限定的な実施例に関連して、縮合型タンニンであるプロフィセチニジン型がタンニンとして用いられ得るが、このプロフィセチニジン型タンニンはケブラチョの木から抽出され、Silvateam社によって商品名Tupafin ATOで販売されている。加えて、縮合型タンニン類であるプロシアニジン型および/もしくはプロデルフィニジン型および/もしくはプロロビネチニジン型、ならびに/または加水分解型タンニン類などの、他の型のタンニン類もまた用いられ得る。さらに、上述のタンニン類の混合物の形態、および/または上述のタンニン類の化学変換もしくは化学修飾から得られるタンニン類の形態でのタンニン類が用いられ得る。
【0041】
イソシアナートは、組成物の5重量%〜80重量%を構成する量、例えば、10重量%〜35重量%を構成する量で、モノマー型、ポリマー型、もしくは修飾型のイソシアナートの形態で、またはこれらの混合物の形態で、または一成分型ポリウレタンイソシアナートの形態で、加えられる。
【0042】
少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質、例えばアルコキシ化アミンは、組成物の最大80重量%の比率で用いられる。
【0043】
組成物は、最大40重量%の水をさらに含んでよく、この水は、タンニン類および他の反応物中にもともと存在する水分に加えて、組成物自体に加えられる。
【0044】
さらに、組成物は、発泡剤(例えば二酸化炭素など)、気体を発生させる塩類、または沸点が低い物質(例えばn-ペンタン、シクロペンタン、イソペンタンおよびこれらの混合物)を含み得る。
【0045】
初期混合物の粘度を減少させることができる化合物、例えばトリエチルホスファート、トリフェニルホスファート、またはトリス(2-クロロイソプロピル)-ホスファートもまた、タンニンに対して40重量%〜100重量%の比率で、組成物中にて用いられ得る。
【0046】
組成物は、50重量%を超えない比率、好都合には20重量%未満で、1つ以上の添加剤を含む可能性がある。これらの添加剤には、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、可塑剤、ならびに耐火性を向上させるために自然消火時間を短くする化合物、無機充填剤または有機充填剤、着色剤、保存剤、オープンセル/クローズドセルの比率を制御する添加剤などが含まれ得るが、その機能を限定することを意図しない。さらに、アルブミンなどのタンパク質が、より親水性の高い発泡材を得るために、限られた比率で、組成物中に含まれ得る。
【0047】
例えばホルムアルデヒド、グリオキサール、ヘキサミン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、フルアルデヒドなどの架橋剤もまた、用いられ得る。これらの添加剤は、イソシアナートと反応する可能性があるため、詳細には、伸長過程および得られる材料の物理的機械特性に影響を及ぼす可能性があるため、これらの添加剤の選択には注意が払われなければならない。例えば、低VOC発生材料の場合、使用可能な添加剤は、VOCの発生を増加させ得ないように、選択されなければならない。
【0048】
組成物から得られる発泡材の弾性度は、第一に、タンニンと少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのアルコキシ化官能基を含む物質との比率、タンニンとイソシアナートとの比率、ならびに、アルコキシ化官能基のアルコキシ化度、および用いられる添加剤に依存する。
【0049】
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
一般的に10重量%を超える量のタンニン類と、5重量%以上の量のイソシアナートとを含む、タンニン系弾性発泡材を製造するための組成物であって、
前記組成物が、80重量%未満の量のタンニン類と、5重量%〜80重量%の量のイソシアナートとを含み、
前記組成物が少なくとも、アミン官能性とアルコキシ化官能性とを有する物質を含み、この物質は、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含み、前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基は、同じ分子の一部であるか、または異なる分子の一部である、
組成物。
[2]
前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質が、少なくとも1つのアルコキシ化アミンから構成され、アルコキシ化アミンは例えば、エトキシ化アミンおよび/もしくはプロポキシ化アミンまたはこれらの混合物、好ましくは8〜22個の炭素原子を含むアルコキシ化アルキルアミンである、[1]に記載の組成物。
[3]
前記少なくとも1つのアルコキシ化アミンが、アルコキシ化度が好ましくは1〜40である、エトキシ化アミンおよび/もしくはプロポキシ化アミンまたはこれらの混合物を含む、[2]に記載の組成物。
[4]
前記少なくとも1つのアルコキシ化アミンがプロポキシ化アミンであるか、あるいは、前記組成物がポリエトキシ化化合物および/またはポリプロポキシ化化合物の形態での添加剤を含む、[3]に記載の組成物。
[5]
前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質が、エトキシ化アミン、好ましくはエトキシ化脂肪族アミンである、[1]または[2]に記載の組成物。
[6]
前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質が、ココヤシアミン、獣脂アミン、オレイルアミン、および/またはステアリルアミンのアルコキシ化誘導体である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]
前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質が、ポリエトキシ化化合物および/またはポリプロポキシ化化合物と、アルカリ触媒とから構成される、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8]
前記組成物が、前記少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質を80重量%以下の量で含む、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物。
[9]
前記タンニンが、縮合型タンニン類、および/もしくは加水分解型タンニン類であり、化学的に修飾されていてもよく、ならびに/またはこれらの混合物であり、好ましくは粉末形態であり、80重量%以下の量で用いられる、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[10]
前記組成物が、タンニン類および他の存在し得る成分中に含まれる水分に加えて、最大40重量%の水を含む、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11]
前記組成物が、少なくとも1つの発泡剤、および/または少なくとも1つの低沸点物質、および/またはこれらの混合物をさらに含む、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12]
前記組成物が、初期混合物の粘度を減少させるのに適合する少なくとも1つの化合物を、前記組成物中に含まれるタンニンに対して40重量%〜100重量%の量でさらに含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の組成物。
[13]
前記組成物が、50重量%以下の比率で、好都合には20重量%未満の比率で、少なくとも1つの添加剤をさらに含み、前記添加剤が例えば、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、可塑剤もしくは発泡剤、オープンセル/クローズドセルの比率を制御することができる添加剤、ならびに/または耐火性を向上させるための化合物もしくは自然消火時間を短くするための化合物もしくは耐火剤である、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の組成物。
[14]
[1]〜[13]のいずれか1項に記載の組成物から得ることができる、タンニン系弾性発泡材。
[15]
[1]〜[13]のいずれか1項に記載の組成物から出発する、タンニン系弾性発泡材の製造方法であって、前記製造方法が、
添加量の粉末状タンニンと、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのアルコキシ化官能基を含む物質とを含む混合物を調製するステップであって、タンニンの添加量が組成物の80重量%未満であり、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのアルコキシ化官能基を含む物質の量が組成物の80重量%以下である、ステップと;
混合物を機械的に撹拌することにより第1の混合段階を実施するステップと;
得られた混合物に、少なくとも1つの使用可能な添加剤を、50重量%以下の比率で、好都合には20重量%未満の比率で、添加するステップと;
得られた混合物を均一化する段階を実施するステップと;
混合物にイソシアナートを、組成物の5重量%〜80重量%の量で添加するステップと;
得られた混合物を撹拌する段階を実施するステップと;
混合物を予め用意した型に流し込むステップと;
型の中での混合物の伸長反応と、得られた発泡材の硬化とを待つステップ
とを含む、タンニン系弾性発泡材の製造方法。
本発明は、タンニン系弾性発泡材を得ることを可能にする組成物および方法についての、下記の非限定的な実施例に関連して、より詳細に説明される。
【実施例】
【0050】
本発明の組成物を製造するために、上述の少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質(例えば、アルコキシ化アミンの形態で)、ならびに使用可能な添加剤を含む予備組成物を製造する最初のステップを含む方法が用いられた。
【0051】
次に、タンニンがこの予備組成物に加えられ、得られる混合物を均一化するステップが実施された。その後、イソシアナートが加えられ、混合物の最終的な均一化ステップが実施された。
【0052】
上述のようにして製造された本発明の組成物を使用することにより、発泡材の4つのサンプルが作成された。これらのサンプルは、下記においてサンプルA8、A9、A10、およびA20と称される。
【0053】
各サンプルの具体的な組成物は、下記に説明されるようにして得られた。
【0054】
上述の製品Tupafin ATOからなるタンニン粉末(サンプルA8およびA9については5 g、サンプルA10およびA20については6 g)は、機械的撹拌により、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのアルコキシ化官能基とを含む物質、この場合にはココヤシ エトキシ化脂肪族アミン 12モル(サンプルA8およびA9については7 g、サンプルA10およびA20については6 g)に混合した。また、サンプルA10およびA20については、それぞれ3.5および4 g、耐火剤の機能を有するトリス(2-クロロイソプロピル)-ホスファート(TCPP)もまた添加された。サンプルA20の製造の場合においてのみ、発泡剤(n-ペンタン)が1.2 gの量で添加された。
【0055】
それぞれの組成物を混合して、均一な混合物を得た。
【0056】
その後、イソシアナート、詳細にはポリイソシアナート(ポリ メチレンジフェニル ジイソシアナート(pMDI))を、サンプルA8については4 g、サンプルA9については2.5 g、サンプルA10については3.5 g、サンプルA20については3.5 gの量で、各混合物に加えた。
【0057】
下記の表1は、サンプルA8、A9、A10、およびA20のそれぞれの発泡材についての組成物を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
各混合物はその後、15秒間さらに撹拌した。このステップとの後、各混合物は、所望の形状を有する予め用意された型の中に流し込まれ、そして、様々な混合物の伸長反応が、関係する型の中で直ちに開始された。したがって、このときが、このようにして得られる発泡材を硬化させる時であると予想された。
【0060】
サンプルのすべての組成物は、バッチ式製造および連続式製造の両方、ならびにin situ適用に特に適していることが判明した。
【0061】
その後、得られたサンプルを分析した。
【0062】
このようにして得られたそれぞれのサンプルの外観は、均一な、淡赤褐色であった。どのサンプルにも、脆さや他の肉眼で見える欠陥などの特徴はいずれも見られなかった。
【0063】
各サンプルはその後カットされて、既知の大きさを有する平行六面体形状の試験片を得、それぞれの試験片について、重さをはかることにより、見かけの密度を測定した。
【0064】
このようにして得られた様々なサンプルの試験片はその後、一定重量になるまでオーブンにて60℃の温度で乾燥させた後、デシケータ中に保管した。
【0065】
走査型電子顕微鏡(SEM) HITACHI TM3000が、様々なサンプルの微視的構造を評価するために用いられた。
図1は、サンプルA8の断面について得られるSEM画像(倍率100x)を示す。
【0066】
得られたサンプルの試験片についての機械的挙動の評価は、INSTRON 5944万能試験機を用いて、周囲温度条件下で実施された。詳細には、それぞれのサンプルの機械的特性の分析は、各サンプルを、歪み速度100 mm/分で50%にて、次の圧縮サイクルとの間の間隔1 sで、繰り返し圧縮試験(50サイクル)にかけることにより、実施した。
【0067】
図2は、サンプルA8の試験片について得られた圧縮カーブを示すものであり、
図2では、明確にするために、圧縮-解放サイクル1、2、5、10、および50のみが示されている。
【0068】
また、発泡材A8およびA10についての燃焼反応は、各試験片の底端部に15秒間向けられた炎を用いて、燃焼領域における高さ150 mmに到達するのに必要な、炎が当たった点より上への燃焼領域の到達時間を記録することにより、EN-ISO 11925-2基準(炎を直接作用させた結果としての建築資材の可燃性に関連する)に従って評価された。また、それぞれの試験片において、炎を当てた後20秒間、燃焼粒子または燃焼液滴の分離の可能性が評価された。
【0069】
同様の試験は、比較目的のために、タンニン類なしで製造されたがココヤシ エトキシ化アミンおよびイソシアナートを(それぞれ12 gおよび4 g)含む発泡材のサンプル(ASTと称する)について、ならびに市販のポリウレタン発泡ゴム(ACと称する)の試験片について、実施された。
【0070】
測定により、サンプルA8およびA10の見かけ密度は0.14 g/cm
3であり、サンプルA9の見かけ密度は0.12 g/cm
3であることが分かった。発泡剤を含むサンプルA20については、見かけ密度は0.09 g/cm
3である。
【0071】
サンプルA8(その画像は、倍率100xで、
図1に示されている)は、楕円形形状が優位なオープンセルによって形成され、その直径が約50〜230μmである、ハニカム構造を有する。
【0072】
下記の表2は、上述のサンプルA8、A10、AST、およびACについての試験片に対してEN-ISO 11925-2基準を適用することにより実施された試験から得られた結果を示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示された結果から、サンプルA10が、耐火性に関して最適な挙動を示すことが理解され得る。また、サンプルA8については、その組成物には耐火剤がふくまれないものであるが、燃焼粒子または燃焼液滴の分離も落下も観察されなかった。対照的に、サンプルAST(タンニンなし)および市販の発泡ゴムサンプルACについては、材料が放出されて燃えるのが観察され、これは、新たな火の発生および延焼の発生のリスクを伴うものである。
【0075】
図2に示される線図から、本発明の発泡材は、高い弾性度を有することが推測され得る。試験条件下において、第1の圧縮サイクルの後、その元の形状の95%までの回復が得られた。第5サイクルの後、回復率は90%であり、圧縮サイクル50サイクルの後においてさえ、回復率は80%を超える任意の率であった。
【0076】
結論として、本発明による新規の組成物および方法により、柔軟性および弾性特性を有し、多くの用途に用いるのに適し、かつ、耐火性および揮発性有機化合物(VOC)の発生の両方に関して石油化学系物質に由来する原料に基づく他の柔軟性材料と比較して有利である、タンニン系発泡材の製造が可能となる。本発明の発泡材は、その組成物が広く利用可能な再生可能な供給源に由来する原材料を高い割合で含み、したがって環境負荷が低いので、迅速かつ簡単に実施することができる方法により製造することができる。