(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のプリンタ及び搬送装置について図面を参照して実施形態を説明する。
(第1実施形態)
【0016】
図1は、本発明の一実施形態のプリンタ100の外観を示す図であり、印刷媒体の搬送方向と垂直な横方向から見た図である。印刷媒体は
図1の向って左から右に、供給ローラ101から繰り出され、巻き取りローラ103まで搬送される。供給側のセンサ部102および巻取り側のセンサ部104は、図に向かって奥行側に平行に配置された、
図2に示すテンションバー201、204の外側の両端のどちらか片側に配置され、それぞれテンションバー201、204の位置を検出する。ここで、センサ部102、104は、テンションバー201、204の外側の片側に配置すると説明したが、これに限られず、両側に配置してより精度の高い検出を図ることができる。
【0017】
図2は、
図1のセンサ部102、104および筐体の一部を取り除いたときの側面図である。搬送経路の上の、供給ローラ101とプラテン209との間に供給側のテンションバー201が配置され、巻取りローラ103と引張ローラ206との間に巻取り側のテンションバー204が配置される。テンションバー201および204は、それぞれガイドレール202および205により支持され、ガイドレールに沿って上下することにより、印刷媒体に安定したテンションを付与する。なお、センサ部102および104は、点線で示す位置のガイドレールの外側の両端に配置され、ガイドレール上のテンションバーの位置を検出するよう構成される。
【0018】
また、ガイドレール202および205上部には、テンションバー固定部203が備えられ、印刷媒体のロールの交換の際、テンションバーを上部に固定し、ロールの交換がしやすいようにする。一般に、近年のプリンタではその構造上テンションバーは床面に近い位置まで移動することが可能なため、印刷媒体のロールを交換するとき、テンションバーを低い位置に置いたままだと、印刷媒体の一部が床に接触して、毀損する可能性がある。このため、本実施形態ではロールを交換する際、テンションバーをできるだけ上方に固定することにより、交換時の印刷媒体の毀損を回避している。
【0019】
なお、テンションバーの両端にはピニオンが取り付けられており、ガイドレール202および205のラックと噛合している。このため、テンションバー固定部203は、テンションバーの両端のうちのどちらか片方に備えておけば、ラック&ピニオン機構でテンションバー固定部203がない側も固定される。また、テンションバーは両端にラック&ピニオン機構を有するので、印刷媒体を介してテンションバーに力が加わったとしても、テンションバーの両端を同じ高さに維持することができる。なお、テンションバーの両端に取り付けられたピニオンと噛合するラックの位置は任意である。つまり、ラックは、ガイドレール202および205以外の場所に設けられていてもよく、例えば、プリンタ100の本体に取り付けられていてもよい。
【0020】
印刷媒体の搬送を概念的に示したのが
図11である。
図11を参照すると、印刷媒体1101は、供給ローラ101から繰り出され、テンションバー201に当接して搬送され、プラテン209の上に載り、ピンチローラ1102、グリッドローラ208を通ってキャリッジ207の下において印刷が行われる。ここで、ピンチローラ1102とグリッドローラ208とは、上下方向に相対しており印刷媒体1101を上下方向から挟持する構成となっている。すなわち、プラテン209上での印刷媒体1101の搬送方向は、
図11の左から右に向かう方向である。印刷された印刷媒体1101は、引張ローラ206、テンションバー204を通って巻取りローラ103に巻き取られる。ここで、本実施形態では、印刷媒体1101をピンチローラ1102、グリッドローラ208で挟持して搬送する例を説明したが、これに限られず、
図17に示すように搬送用ベルト1701で印刷媒体1101を搬送することもできる。
図17では、搬送用ベルト1701は2つのローラ1702により駆動されるが、搬送用ベルト1701を駆動するローラの数は任意である。
【0021】
また、
図11では、引張ローラ206で印刷媒体1101を搬送方向に引っ張ることにより、ピンチローラ1102、グリッドローラ208と引張ローラ206との間の印刷媒体にテンションを加えている。しかし、印刷媒体1101の種類によっては、引張ローラ206は必須の構成ではない。
【0022】
プリンタヘッドを保持するキャリッジ207は、図示しないガイドレールに移動自在に支持され、プラテン209上での印刷媒体1101の搬送方向に直交する方向である主走査方向に移動する。主走査方向は、
図11では、紙面の手前から奥へ向かう方向又はその逆の方向である。本実施形態では、プリンタヘッドは、例えば、キャリッジ207の下面に印刷媒体1101と所定ギャップを隔てて設けられ、各々微細なインク滴を噴射する多数のノズルが印刷媒体1101の搬送方向に直線状に整列したノズル列を有する。プリンタヘッドが有するノズル列の数は任意であり、主走査方向に複数のノズル列が配置されていてもよい。
【0023】
プラテン209上での印刷媒体1101の搬送は、ピンチローラ1102、グリッドローラ208及び引張ローラ206により行われるが、一般的に印刷を行い供給ローラに巻かれた印刷媒体の量が減少すると巻径が細くなって、印刷媒体1101のテンションバー201への進入、進出角度が変化し、安定してテンションを付与できない。このため、テンションバー201は、ガイドレール202に沿って上下することにより、印刷媒体1101にテンションが安定して付与されるよう動作する。巻取り側も同様である。
【0024】
特に、印刷媒体1101が軟質ポリ塩化ビニルや布帛などの柔らかい媒体である場合は、より正確なテンション付与が必要である。テンションの正確で安定した付与のためには、記録媒体1101のテンションバー201及び204への進入、進出角度の制御が必要であり、そのためにはテンションバーの位置を正確に検出する必要がある。
【0025】
また、従来のテンションバーの位置を上限または下限のみで制御する方法では、上限あるいは下限が検出された時のみでテンションバーの制御をするため、瞬間的にテンションバーが大きく動き、印刷媒体1101に加えられるテンションの変化が印刷品質に影響する恐れがある。このため、本実施形態では、上限、下限センサに加え、正確な位置検出を行うためリニアエンコーダを用いた位置センサを採用する。
【0026】
さらに、テンションバーが回転することにより印刷媒体に不要なテンションを加えないようにする必要がある。具体的には、後述するように本実施形態のようなラック&ピニオン機構によりテンションバーの水平を保つ装置では、テンションバーの両端にあるピニオンによりテンションバーが上下するたびにテンションバー自体が回転する。このテンションバーの回転方向は、テンションバーが上方に移動するか下方に移動するかで変動するが、いずれにしても不要なテンションを印刷媒体に加えることとなるので、このようなことが起こらないように、本実施形態ではテンションバーを後述するような二重構造とする。
【0027】
また、印刷媒体に合わせたテンションを付与するため、テンションバーの自重に加え、後述するようにテンションバーに当接する印刷媒体に不要なテンションを及ぼさないような形態でウェイトを装着できるようにし、種々の印刷媒体に適応できるようにする。
【0028】
なお、以下、本実施形態のセンサ部、テンションバーおよびそのウェイトについて説明するが、これらを用いてローラ等の搬送機構を制御し、適切なウェイトを選択してテンションバーの位置を適切な位置に保ち、印刷媒体に的確なテンションを付与する手法については、本技術分野で知られたいずれの方法も使用することができる。
【0029】
例えば、本技術分野で知られた方法により供給ローラ101の外径寸法と、供給ローラ101の繰出し時の回転方向とに基づいて、供給ローラ101に対するテンションバー201の相対位置が所定位置となるように、ステッピングモータ等を制御して、供給ローラ101と引張ローラ206との間における印刷媒体1101の弛み量を変化させることができるが、これに限られず本技術分野で知られた種々の手法を用いることができる
(本実施形態のセンサ部)
【0030】
図3は、本実施形態のセンサ部104の構成を示す図である。センサ部104はテンションバー204の位置を検出するものであるが、センサ部として供給側のテンションバー201および巻取り側テンションバー204の近傍に各々同じものが設けられるので、以降センサ部104として説明する。
【0031】
センサ部104は、センサヘッド302、センサヘッド302の下部に取り付けられた従動板303並びに従動板303の位置を検出する光センサ305および306を備える。センサヘッド302は、後述するガイドレールに沿って上下に移動し、従動板303もセンサヘッド302の移動と連動して上下に移動する。
【0032】
光センサ305、306は各々、
図3の奥行き方向の隙間において相対するように一対の発光素子と受光素子を備え、この隙間に従動板が存在すれば光が遮断され受光素子からは信号が出力されないようになっており、この状態を従動板が存在するのでONとする。光センサ305、306の隙間に従動板がない場合は、受光素子は発光素子から発射された光を受光し、信号が出力される。この状態を従動板が存在しないのでOFFとする。後述するようにセンサヘッドの2つの光センサのON、OFFの出力のパターンにより絶対位置を判定する。
【0033】
ここで、センサヘッド302の通常の適切な印刷時の移動範囲は、移動下限301から移動上限304の間となり、
図3に示すように、移動下限では従動板303は光センサ305のみON状態で、光センサ306はOFF状態となり、これを超えるとどちらもOFF状態となる。逆に、移動上限では従動板303は光センサ305のみOFF状態で、光センサ306はON状態となり、これを超えるとどちらもOFF状態となる。
【0034】
従来は、テンションバーの位置制御として、このような上限または下限を定めておき、その範囲内でテンション付与する程度の制御で印刷を行うことができる場合もあったが、本実施形態の印刷媒体は上述のようにより正確な制御を必要とすることから、この光センサによる位置検出に加えリニアスケールによるセンサヘッドの位置の測定を行って、より正確なテンションバーの位置検出を行う。もちろん、本実施形態のプリンタでも、特殊な状況下においては、テンションバーの位置について上限、下限のみの制御でテンションを付与することもできる。
【0035】
図4は、本実施形態のセンサ部のより詳細な図である。センサヘッド302は、ガイドレール402に沿って上述のように上下に移動し、上限403までで通常の印刷を行う。センサヘッド302の相対的な位置は、センサヘッド302でリニアスケール401を読み取ることにより測定する。本実施形態では、本技術分野で知られたいずれのリニアスケールを有するリニアエンコーダを用いることができ、例えば光学式、磁気式のいずれでもよく、本実施形態の構成に合わせて使用することができる。
【0036】
図5〜7を参照して、リニアエンコーダを用いた相対的な位置の測定について説明する。
図5は、センサ部の断面図であり、
図6は、センサ部の斜視図である。
図7は、本実施形態のセンサ部とテンションバーのピニオン部の拡大図である。
図5及び7に、テンションバー201、204と連動してテンションバーの位置を取得するための爪502が示されている。爪502はセンサヘッド302に取り付けられており、爪502がテンションバーの移動に連動して移動すると、センサヘッド302も移動する。なお、リニアスケールで読み取った相対的な値から、後述する光センサにより読み取られる上限の位置又は下限の位置を用いて、実際の位置が算出される。
【0037】
本実施形態のセンサ部104は、そのガイドレールを、例えば、テンションバー201、204のガイドレール202、205と平行になるように設置されてあり、ガイドバー201、204の端部705に爪502を引っかけるようになっている。
図7を参照すると、爪502はテンションバーの端部706に下方から接触しており、テンションバーが上方に移動すると、図示しないバネ等により爪502は上方に吊り上げられているので、テンションバーに追随して上方に移動する。ここで、センサ部104のガイドレールを、テンションバー201、204のガイドレール202、205と平行に配置するのは必須の要件ではない。例えば、センサ部104のガイドレールが伸びる方向と水平面がなす角度を、テンションバーのガイドレールが伸びる方向と水平面がなす角度よりも小さくしても良い。すなわち、センサ部104のガイドレールと、テンションバーのガイドレールとに角度をつけて、所定の爪502の移動量に対するテンションバーの移動量をより小さくするようにすることができる。このような構成とすることで、テンションバーが鉛直方向に単位長さだけ移動した場合におけるセンサヘッド302の移動量を、センサ部104のガイドレールをテンションバーのガイドレールと平行になるように配置した場合よりも大きくすることができる。したがって、センサ部104の感度(検出精度)を上昇させることができる。
【0038】
また、センサ部104のガイドレールが伸びる方向と水平面がなす角度を、テンションバーのガイドレールが伸びる方向と水平面がなす角度よりも大きくすることもできる。このような構成とすることで、テンションバーが鉛直方向に単位長さだけ移動した場合におけるセンサヘッド302の移動量を、センサ部104のガイドレールをテンションバーのガイドレールと平行になるように配置した場合よりも小さくすることができる。したがって、センサ部104をコンパクトにすることができる。
【0039】
上述したように、爪502は、センサヘッド302に取り付けられているので、テンションバーの移動に追随してセンサヘッド302も移動する。このため、センサヘッドの絶対位置、相対位置を検出、測定することによりテンションバーの位置を正確に検出することができる。このように本実施形態では、テンションバーの正確な位置が分かるので、従来の上限、下限の検出による場合に比べ、テンションバーの滑らかな制御ができる。このため、テンションバーの位置変化の影響が印刷結果に及ぶことを防止できる。
【0040】
図6及び7を参照するとリニアスケール401およびセンサヘッド302に取り付けられた読取ヘッド501により、リニアスケールにおける相対的な位置を測定する。すなわち、読取ヘッド501は、センサヘッド302に取り付けられているので、ガイドレール402上をセンサヘッド302が移動すると、これに連動して読取ヘッド501もガイドレール402に平行に配置されたリニアスケール401に沿って移動する。この際、読取ヘッド501は、リニアスケール401の値を読み取って図示しない制御部に、測定結果を一定期間ごと、あるいは値が変化した際等に送る。これにより、テンションバーの相対的な位置を取得することができる。
(本実施形態のテンションバー)
【0041】
上述のように、従来のテンションバーは、両端にピニオンを備えられ、ラック&ピニオン機構によりテンションバーの水平を保つことができる。しかし、テンションバーの両端にあるピニオンによりテンションバーが上下するたびにテンションバー自体が回転してしまう。これを回避するため、本実施形態のテンションバーは、ピニオンが両端についた内側バーと印刷媒体に当接する外側バーとの二重構造とする。
【0042】
本実施形態の説明上、テンションバーと総称する場合は、この二重構造を有する棒状の部品を意味し、いわゆるテンション付与手段、あるいはテンション付与機構と同義である。一方、二重構造の棒状部品のうちピニオンギアが付き内側に配された部品は、内側バー、あるいはピニオンによるテンションバー水平安定機能を有することから、本願ではピニオンバーと称する。
【0043】
また、外側に位置する部品は、外側バー、あるいは印刷媒体に当接しテンションを付与する機能を有することから本願ではテンション付与バーと称する。本実施形態では、テンション付与手段は、テンション付与バーと、ピニオンバーを有するので、ピニオンバーの回転の影響を印刷媒体に及ぼすことを防止できる。特に、ピニオンバーが上下に動く際の回転方向が、印刷媒体の搬送方向と逆となった場合に、この効果は大きくなる。なお、ここでいう二重構造では、以下説明するようにピニオンバーとテンション付与バーとが同軸で回転するように構成されているが、これに限られることなく、回転軸が重なっておらず別の軸で各々回転するようにすることもできる。
【0044】
図8および14を参照して、本実施形態の二重構造について説明すると、テンションバーはガイドレール202、205にボールベアリング803を介して接触することにより滑らかに上下動できるようになっている。すなわち、ピニオンバーである内側バー801は上下動とともに回転するので、ボールベアリング803でこれを吸収し、ガイドレール202、205の片側のレール上をボールベアリング803の外側が車輪のように回転していくように接触して保持されている。これにより、内側バー801のガイドレール202、205上の滑らかな移動が可能になる。また、ピニオン702はピニオンバー801よりも径が小さくなっており、これによりラック703の一部でピニオンバー801の肩部807を抑えるような構造となり、テンション付与手段が横方向に外れるのを防止している。
【0045】
一方、内側バー801の両側の端部近くにはピニオンギア702が同軸で取り付けられ、ピニオンギア702は、ラックギア703に噛合しており、テンションバーの上下動に伴いピニオンギア702は回転する。このように構成する結果、内側バー801の両端のピニオンのうち1つが上下に動いてもピニオンが回転し、その結果内側バー801と反対側のピニオンも同じ回転をするから、ラックギア703のギアを飛ばしてピニオンギア702が動くことはなく、内側バー801が傾くことを防止できる。また、ラックギア703及びピニオンギア702の幅(
図8では上下方向の長さ)は、広い方が望ましい。ラックギア703及びピニオンギア702の幅が広いほど、内側バー801が傾くことを防止できる(内側バー801と水平面がなす角度が大きくなることを防止できる)。
【0046】
本実施形態では、上述のように、ピニオンギア702を介してラックギア703と、ボールベアリング803を介してガイドレール202、205で、内側バー801を支持する。このため、テンションバーの
図8の左右方向での移動を防止することができる。また、ピニオンギア702及びラックギア703で構成されるラック&ピニオン機構のみでテンションバーを支持すると、ラックに不要な力がかかり耐久性に問題が出る場合がある。しかし、本実施形態では、ピニオンギア702を介してラックギア703と、ボールベアリング803を介してガイドレール202、205で内側バー801を支持するので、ピニオンギア702及びラックギア703の耐久性に問題が生じることを防止することができる。
また、ピニオンギア702及びラックギア703は、金属で形成することが望ましい。ピニオンギア702及びラックギア703を形成する際に用いる金属は、例えば、ステンレスである。
本実施形態では、ラックギア703と、ガイドレール202、205を用いて内側バー801を支持する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、本技術分野で知られたいずれかの手法を採用することもできる。
【0047】
上述したように、テンションバーの上下動でピニオン702が回転するが、内側バー801もピニオン702に同軸で接続されているので回転する。しかし、
図14に示すように、内側バー801とテンション付与バーである外側バー704とは、ボールベアリング1401で自由に回転できるように接続されているので、ピニオン702が回転し、内側バー801が回転しても外側バー704が回転することはない。
【0048】
図8に示すテンションバーの二重構造部分805が、このような二重構造となっており、
図14に示すように、外側バー704の内側に同軸でより細い内側バー801が嵌め込まれている。これにより、ラック&ピニオン機構によりテンションバーの水平を保ちつつ、印刷媒体に当接する外側バー704はテンションバーが上下しても回転することはないから、ラック&ピニオン機構により生じる、印刷媒体に対する不要なテンションの付加を回避するようにすることができ、安定した搬送を可能にすることができる。これは、後述する本実施形態のセンサ部による正確な位置検出処理と、これによる適切なテンション付与制御に加えて、印刷媒体への付与テンションの、安定した正確な制御が可能となる。
【0049】
また、本実施形態のテンション付与手段であるテンションバーは、ウェイト(重り)を取り付けられるようになっており、自重に加えて、必要に応じて重量を加えて印刷媒体に付与するテンションを調整することができる。すなわち、一般に印刷媒体や、印刷内容によっては付与が必要なテンションは異なってくる。特に、本実施形態で使用する印刷媒体は安定した印刷を実現するため、プラテンに印刷媒体を空気圧で吸着するような機構があり、これにより付与するテンションが通常より増大し、印刷媒体や、印刷内容により調整が必要である。また、吸着力とテンションバーとで調整を取る必要がある場合もある。しかし、従来のテンションを調整する方法では、背景技術で説明したように、テンションバーの端に紐を用いて重りを吊るしており、様々な問題があって実際にはほとんど使用することができない。
【0050】
本実施形態では、従来のように重りを吊るすようなことはせずに、
図7に示すように中空円柱状のウェイト705を、テンションバーと同軸に取り付ける。具体的には、
図8に示すように内側バー801に同軸に取り付けられた皿状のウェイト取付け部802に、2つの取り付け棒804が皿面に垂直に取り付けられており、取り付け棒804にウェイト705嵌め込むことにより固定する。ウェイト705は
図9に示すように、半円板901、902に取り付け棒804に嵌め込むための穴905があけられ、ウェイト取付け部802に取り付けると、中空円柱状になるようになっている。中心部分は外側バー704の外径よりも大きな穴を形成しておき、外側バー704とは同軸かつ隙間ができるようになっている。このため、ウェイト705は、外側バー704とは接せずに、内側バー801とともに回転する。ここで、本実施形態で取り付け棒は2つであるが、これに限られずテンションバーその他の構成に合わせ種々の数とすることができる。
【0051】
ウェイト705をテンションバーに固定するときには、半円板901、902でテンションバーを挟むように固定する。この際横断面
図903、904を参照すると理解できるように穴905付近が重なって固定できるように相互にくぼみができている。このような構造とすることにより、テンションバーを取り外すことなく、容易にウェイトを取り付け、取り外すことが可能である。図示しない固定具により、本技術分野で知られた手法でウェイトを固定することもできる。
【0052】
また、ウェイトをウェイト取付け皿802に取り付けると中心部は外側バー704には接触しないようになっているので、これにより、ウェイトがテンションバーに固定され、外側バー704に搬送する印刷媒体に当接ことにより生じる回転力が加わっても、ウェイト705にはその力は負荷されないようになっている。すなわち、ウェイト取付け皿802が内側バー801に取り付けられており、その結果外側バー704からウェイト705は離間しているから、ウェイト705を取り付けても外側バー704のモーメントが変化することはない。
【0053】
一般に、テンションバーは印刷媒体に当接し、印刷媒体は搬送されていくことから、印刷時にテンションバーの外側バー704は搬送に合わせて回転力が付加されている。ここで、もし本実施形態のような形状のウェイトを外側バー704に取り付けると、外側バー704のモーメントが大きくなり、例えば印刷を停止した際に大きな慣性モーメントが働き、特に柔らかい印刷媒体の場合、伸びてしまう等の恐れがある。
【0054】
また、伸びないまでも印刷媒体の搬送とともに回転する外側バー704が大きなモーメントを持たせるのは、搬送機構としても問題がある。上述の通り、本実施形態では、ウェイト705は内側バー801に固定されているので、外側バー704とともに回転することがなく、印刷媒体を毀損したり、搬送を不安定にしたりすることはなく、印刷媒体や印刷内容に応じて付与するテンションを調整することができる。
(本実施形態の位置検出処理)
【0055】
次に、光センサ305、306を用いたテンションバーの絶対的な位置の検出方法を
図12および13を参照して説明する。基本的には、
図13のいずれかのパターンに示すように、従動板303の位置を2つの光センサ305、306を用いて検出する。すなわち、制御部は、2つの光センサの検出状況(従動板で発光素子から発射された光が遮られるか否か)に応じて従動板の位置を判定することによってセンサヘッドの位置を判定する。この際、2つのセンサの出力の組み合わせは、光センサ305、306の順でON:ON、ON:OFF、OFF:ON、OFF:OFFの4つの状態が存在する。本実施形態では、制御部は、この光センサの出力の組み合わせが、従動板が移動することにより変化すると、変化後のパターンを読み取り、変化のパターンを判定する。
【0056】
従動板303は上下に動いて、上下に並んだ光センサ305、306を順次通過するから、2つの光センサの変化のパターンは
図13に示す6パターンとなる。ここで、通常のテンションバー制御時にはテンションバーは所定の範囲で上下するように制御されることから、テンションバーの位置を検出するセンサヘッドの位置も上記のように上限304と下限301とが存在する。通常の印刷時に、センサヘッドの位置が上限304から下限301の範囲を超えれば、センサヘッドが範囲内に収まるように制御される。センサヘッドの位置が、上限304と下限301の範囲を超えた後、所定の時間経過しても上限304と下限301の範囲に戻らない場合には、適切な印刷が行えないとしてエラーや警告の表示、又は印刷の中断を行ってもよい。
【0057】
また、例えば、印刷媒体の取り換えのため供給ローラを取り外す際や、初期化時等には、この範囲外となるので、上述のリニアエンコーダを用いた測定を行う際には上限又は下限の位置を検出して、イニシャライズする必要がある。そこで、光センサ305、306を用いて上限又は下限位置を判定する方法を説明する。なお、本実施形態では光センサ305、306により初期化を行って、リニアスケールの測定値を用いるが、アブソリュートタイプのリニアエンコーダを用いれば、リニアエンコーダだけで位置制御をすることもできる。
【0058】
まず、光センサの出力の組み合わせの変動パターンを検討すると、
図13に示すように6パターンが考えられる。本実施形態では、この6種類のパターンのうち、装置上の都合で従動板が下方に移動するパターン1、3、5となる変動時の位置を絶対位置の基準値とするが、これに限られず6パターンを用いることもできるし、別のパターンの組み合わせで基準値を用いることもできる。
【0059】
具体的には、従動板の寸法や取り付け位置、光センサの取り付け位置に基づいて各パターンの変動時のセンサヘッドの絶対的な位置を求めるための基準値を予め算出しておけば、その基準値をもとにいずれのパターンが検出されたかで、その時点のセンサヘッドの位置を算出することができ、それをもとに上述のリニアスケールから正確なテンションバーの位置を取得することができる。例えば、パターン1の時の基準値はa
1、パターン3の時がa
3、パターン5の時がa
5とする。ここで、基準値とは、例えば、テンションバーの位置を、パターン1、3、5となる変動時の位置から、所定の位置となるまで上げた場合のリニアエンコーダのカウント数である。ここで、テンションバーの所定の位置とは、例えば、テンションバーを用いて印刷媒体に所望のテンションを付加することのできる位置である。
【0060】
パターン1、3、5検出後のリニアエンコーダで測定される相対値がLとすると、パターン1の変動以降光センサの検出状態の変動がない場合は、テンションバーの位置は、リニアエンコーダのカウント数を用いてLをa
1とするよう制御すればテンションバーを所望の位置で保持することができる。このように、光センサを用いて変動パターンを判定することにより、素早く基準値を得ることができ初期化、セッティング時間を短縮することができるがこれに限られず、Lにオフセット値を加えてテンションバーの絶対値を取得して制御することもできる。
【0061】
次に、従動板の位置検出パターンの判定方法を説明する。
図12のフローチャートに示すように、制御部は、先ず光センサ305および306の出力の組み合わせを読取り(S1201)、光センサ305および306の出力の組み合わせが変化したかを監視する(S1202)。
【0062】
テンションバーの位置が変動し、それに伴って従動板303が移動し、光センサ305および306の出力の組み合わせが変化すると(S1202のYes)、どのように光センサ305および306の出力の組み合わせが変化したかを判定する(S1204)。このとき、変動のパターンは6種類存在しうるが、本実施形態では、
図13に示すパターン1、3、5の場合(S1204のYes)には、制御部は、パターン1、3、5のそれぞれでの基準値を取得する(S1205)。上述のように、リニアスケールを用いてテンションバーの高さを制御する際の基準値は、例えば、テンションバーによって印刷媒体に所望のテンションを付加することのできる値である。具体的には、基準値は、
図13において、従動板303の上下方向の中央の位置が、光センサ305および306の上下方向の中央と一致する位置に相当する値である。
【0063】
上述の通り、一般にこの基準値はパターン1、3、5のそれぞれによって異なるので、予め装置構成をもとに得られた各基準値を図示しないメモリ等に格納しておき、パターンが判定されたらそのパターン用の基準値を読み出して使用等するが、具体的な手法はこれに限られない。
【0064】
制御部は、リニアスケールを用いてテンションバーの高さを制御する際の基準値を予め設定した値とした後(S1205)、テンションバーの高さを制御するのに用いるセンサを光センサ305および306から、リニアエンコーダに切り替える。制御部は、テンションバーの高さを制御するのに用いるセンサをリニアエンコーダに切り替えた後、リニアスケールを読取り、テンションバーの位置が所定の位置となるように制御する(S1205)。
【0065】
なお、テンションバーの高さを制御するのに用いるセンサを光センサ305および306からリニアエンコーダに切り替えた後も、光センサ305および306の出力をエラーの検出等に用いてもよい。例えば、
図13のパターン2の変化が検出された後、所定の時間が経過しても光センサ305および306の出力の組み合わせが変化しない場合には、異常が発生したと判断することができる。この場合、テンションバーの位置は、所定の範囲よりも上に上がっており、所定の時間を経過しても所定の範囲内に戻っていない。
【0066】
以上、本実施形態のプリンタ及び搬送装置は、上述のような構成を有することにより、印刷媒体にテンションバーの回転を伝えず、安定した搬送を実現することができる。また、高精度にテンションを制御し、安定したテンションを付与することができる。
(第2実施形態)
【0067】
本実施形態は、基本的に上述の第1実施形態と同様であるが、テンション付与手段の二重構造の具体的な構成が異なる。すなわち、本実施形態でもテンション付与手段は内側バーと外側バーで構成されているが、本実施形態の内側バーは
図15に示すように1本の棒ではなく、中心部分には内側バーはなく、両側にある2本の内側バーはつながっていない。
【0068】
具体的に、
図15を参照して説明すると、本実施形態の内側バー1501、1502は端部近くにピニオン702を備えボールベアリング1401で外側バー704に同軸で回転可能に取りつけられている。しかし、本実施形態では、上述の第1実施形態とは異なり、外側バー704の中心部の内部1503には内側バー801が存在せず、ピニオンが取り付けられた短い2本の内側バー1501、1502が各々ボールベアリング1401に接続されている。このような構成を取ることにより、重量が軽減されるほか、短い内側バーを取り付けるだけなので、製造コストの軽減も図ることができる。
【0069】
ただし、2つの内側バー1501、1502はつながっているのではなく、両側でピニオンが自由に回転するため、第1実施形態に比較にして左右で傾きが発生する可能性があるが、ピニオンのギアの幅を広げることで、一定程度水平に保つことが可能である。すなわち、ラックギア703及びピニオンギア702の幅が広いほど、内側バー801が傾くことを防止できる。つまり、内側バー801と水平面がなす角度が大きくなることを防止できる。
【0070】
さらに、本実施形態では、2つの内側バー1501、1502の両端にピニオンギア702を有するのは必須の要件ではない。すなわち、本実施形態では、2つの内側バー1501、1502の両端のうち、いずれかにピニオンギア702を有する構成とすれば、ラックギア703及びピニオンギア702によりテンションバーが傾くのを防止することが
できる。したがって、2つの内側バー1501、1502のいずれかにピニオンギア702を有すれば、テンションバーを一定程度水平に保つことが可能である。
【0071】
以上本実施形態の構成を有することにより、テンション付与手段の重量が軽減されるほか、短い内側バーを取り付けるだけなので、製造コストの軽減も図ることができる。
(第3実施形態)
【0072】
本実施形態も、基本的には、第1実施形態と同様であるが、本実施形態では、テンションバーを通常の範囲以外でも使用する。すなわち、第1実施形態で説明したように、テンションバーの位置はセンサを用いて精度よく一定範囲内に制御されるが、印刷媒体、印刷内容などによっては、通常とは異なる位置でテンションバーを制御する方が望ましい場合もある。例えば、印刷媒体の皺防止等のために、ピンチローラ1102及びグリッドローラ208とテンションバーの間に存在する印刷媒体の長さと、引張ローラ206とテンションバーの間に存在する印刷媒体の長さがより短くなるように調整した方が良い場合がある。
【0073】
テンションバーの位置を検出するセンサは、テンションバーの位置に応じた位置に配置され、テンションバーの移動を検知する必要がある。したがって、テンションバーの移動する範囲が、センサヘッド302の移動できる範囲である上限304と下限301の範囲を超える場合には、例えば、センサ部104の鉛直方向の位置を変更する機構を設ける必要がある。しかし、センサ部104を固定するのではなく、複雑な位置変更機構を設けるようにすると、コスト上昇の原因となる。そこで、本実施形態では、簡単な部品の取り付けだけで容易にテンションバー位置検出範囲の変更を可能とする。
【0074】
図7を参照すると、第1実施形態の爪502は、テンションバーの端部706に下方から「直接」接触する。この構成では、センサヘッド302が、テンションバーの位置を検出できる上限は爪503の位置になり、これよりも上の範囲ではテンションバーの位置検出自体ができない。このため、通常の印刷時の位置より上方の位置でテンションバーの位置制御を行うのが望ましい場合に対応することができない。
【0075】
そこで、本実施形態では、爪502の鉛直方向上側に位置調整機構1601を設ける。位置調整機構1601の下端を爪502と接触させ、位置調整機構1601の上端をテンションバーの端部706と接触させることにより、センサが検出することができるテンションバーの位置の範囲を容易に変更することができる。位置調整機構1601は、例えば、棒状の部品である。
【0076】
本実施形態は、位置調整機構1601を有するので、ピンチローラ1102及びグリッドローラ208とテンションバーの間に存在する印刷媒体の長さと、引張ローラ206とテンションバーの間に存在する印刷媒体の長さを変更することができる。すなわち、この位置調整機構1601を備えることにより、センサ部104の鉛直方向の位置を変更するための複雑な機構を設けなくても、センサ部104の鉛直方向の位置を変更したと同じ効果を得ることができる。
以上本実施形態の構成を有することにより、様々な印刷条件に合わせテンションバーの移動範囲を変更することができる。
【0077】
前述したように、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、これらに限定されない。本発明では、実施形態をその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせの変更等を行うことができる。例えば、本実施形態のテンション付与手段は、本願で一例として挙げたいずれのプリンタにも限定されず、印刷媒体を搬送させながら印刷するプリンタ全般に使用することができる。同様に、本実施形態で説明したセンサ部も、テンションバーの位置検出に限られることなく、一般に一定の範囲で動作し、正確な位置をリニアに知ることにより動作する搬送機構に適用することができる。