(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
1.電気駆動式作業機械の移動システム
図1は本発明の第1実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図に示した電気駆動式作業機械の移動システムは、電気駆動式作業機械100(以下、作業機械100)、電源車200、センサ203A、制御装置220(
図4)及び警告装置204(
図4)を備えている。以下の説明において断り書きのない場合は作業機械100の運転席の前方(
図1中では左)を前方とする。
【0012】
2.電気駆動式作業機械
図2は作業機械100の側面図である。同図に示した作業機械100は、油圧ポンプを駆動する原動機としてエンジン(内燃機関)に代えて電動機を搭載し、外部電源から供給される電力で電動機を駆動する作業機械である。この作業機械100は電動機駆動用のバッテリが備わっているものであっても良いが、本実施形態においては電動機駆動用のバッテリは備わっていないものとする。作業機械100は、車体110及びこの車体110に取り付けた作業機(フロント作業機)150を備えている。車体110は、走行体120及び旋回体130を含む。
【0013】
2−1.走行体
走行体120はホイール式の走行体でも良いが本実施形態ではクローラ式の走行体であり、トラックフレーム121、従動輪(アイドラ)122、駆動輪123、クローラ(履帯)124及び走行モータ125を備えている。
【0014】
トラックフレーム121は、図示していないが上方から見てH型に形成されており、左右両側の前部に従動輪122、後部に駆動輪123を回転自在に支持している。左右の駆動輪123の軸にはそれぞれ走行モータ125の出力軸が連結されている。クローラ124は左右両側において従動輪122及び駆動輪123に掛け回されている。また、トラックフレーム121の上部には旋回輪126を介して旋回体130が旋回可能に設けられている。走行モータ125は油圧モータである。走行モータ125は運転室内の操作レバー装置(不図示)の操作に応じて駆動される。
【0015】
2−2.旋回体
旋回体130は、旋回フレーム131、運転室132、カウンタウェイト133、動力室134等を備えている。
【0016】
旋回フレーム131は旋回体130のベースフレームであり、旋回輪126を介してトラックフレーム121の上部に設けられており、旋回体130が旋回中心Cを中心にして走行体120に対して旋回可能である。旋回フレーム131には、旋回輪126の付近に旋回モータ(不図示)が搭載されており、旋回モータの出力軸が旋回輪126に設けた歯車と噛み合うことで、走行体120に対して旋回体130が旋回する。旋回モータには電動モータを用いることもできるが、本実施形態では油圧モータが用いてある。
【0017】
運転室132は旋回中心Cに対して左右方向の一方側(本実施形態では左側)にオフセットした位置に配置されている。カウンタウェイト133は作業機150との重量のバランスをとるための錘であり、旋回フレーム131の後端に設けられている。動力室134は運転室132とカウンタウェイト133の間に位置している。この動力室134には、電動機135や油圧ポンプ136の他、図示していないがラジエータやオイルクーラ等の熱交換器、油圧ポンプ136から油圧アクチュエータに供給する圧油の流れを制御するバルブユニット、作動油タンクや燃料タンク等が収容されている。電動機135は原動機であり、油圧ポンプ136は電動機135により駆動され、作動油タンクの作動油を吸い込んで圧油として吐出する。油圧ポンプ136を駆動するエンジン(内燃機関)は、作業機械100には搭載されていない。油圧ポンプ136は電動機135の右側に位置している。
【0018】
旋回体130には、例えば油圧ポンプ9の前方の位置に制御盤(不図示)が配置されている。エンジン駆動式の油圧ショベルでは油圧ポンプの前方に燃料タンクが配置される場合があるが、作業機械100では燃料タンクが省略されているため、ここに制御盤を設置することができる。この制御盤は、電源車200その他の外部電源から受電する装置であり、特に図示していないが、外部電源を必要に応じて遮断及び投入するブレーカ、入力された電力の周波数を電気的に調整して出力可能なインバータ装置を備えている。電動機135の回転数に相当する周波数にインバータで調整された電力が、制御盤を介して電動機135に供給されるようになっている。旋回体130の上部には、走行体120との接触による給電ケーブル202の損傷を防止するケーブルスタンド137が設けられ、給電ケーブル202を支持している。
【0019】
2−3.作業機
作業機150は、作業腕151及び作業具であるバケット154を含む多関節型のフロント作業機である。作業腕151は、ブーム152、アーム153、ブームシリンダ155、アームシリンダ156及びアタッチメントシリンダ157を備えている。ブーム152は旋回体130の前部に上下方向に回動可能に連結され、アーム153はブーム152の先端に、バケット154はアーム153の先端に、それぞれ回動可能に連結されている。ブームシリンダ155は旋回体130及びブーム152に、アームシリンダ156はブーム152及びアーム153に、それぞれ両端が連結されている。アタッチメントシリンダ157は、基端がアーム153に連結される一方、先端がリンク158を介してアーム153の先端部及びバケット154に連結されている。ブームシリンダ155、アームシリンダ156及びアタッチメントシリンダ157はいずれも油圧アクチュエータであり、油圧ポンプ136から吐出される圧油で駆動され、伸縮動作により作業機150を駆動する。なお、作業腕151には、ブレーカやバケット、マグネット、クラムシェルバケット等の他の作業アタッチメントがバケット154に代えて装着されることもある。
【0020】
3.電源車
図3は電源車200の側面図である。同図に示した電源車200は作業機械100に接続され、作業機械100の電動機135に電力を供給する移動式電源である。この電源車200は、発電機201、車両210及び給電ケーブル202(
図1)を含んでいる。
【0021】
3−1.車両
車両201は例えばトラック等の自走式搬送車両であり、車枠211及び運転室212を備えている。車両211は原動機としてエンジン(内燃機関)を備えており、外部から供給される動力に頼ることなく自力走行可能である。但し、外部動力に頼らず自力走行可能である限りにおいては、例えばバッテリで駆動する電動機を原動機として備えた電動車両、又はエンジン及び電動機の双方を原動機として備えたハイブリッド車両を車両210に用いても良い。この車両210が荷台で発電機201を支持している。
【0022】
3−2.発電機
発電機201は例えば内燃機関を原動機として備えており、その原動機により駆動されて電力を生成する。この発電機201は車両210の荷台に搭載され、適宜固定されている。
【0023】
3−3.給電ケーブル
給電ケーブル202は、
図1に示したように発電機201と作業機械100とを接続する。具体的には、給電ケーブル202の一端は発電機201の出力部に接続され、他端は作業機械100の前述した制御盤との接続部に接続される。給電ケーブル202の長さは、作業機械100と電源車200が予め設定した適当な車間距離を保って移動する限りにおいて、過度な張力が作用したり接地して引き摺られたりすることがないように調整されている。
【0024】
4.センサ
センサ203Aは、作業機械100と電源車200の相対距離に応じて変化する物理量を検出するセンサである。本実施形態では作業機械100と電源車200の相対距離そのものを検出対象の物理量としている。センサ203Aには、レーザ等の光や超音波等を利用した非接触式の距離センサが用いられる。検出対象は「相対距離」であるため、作業機械100のどの部分から車両210のどの部分までの距離かは限定されず、給電ケーブル202の緊張及び弛緩の状態の推定に寄与し得るデータが得られれば良い。本実施形態では、作業機械100に車両210が伴走する際の互いの対向部の距離(車間距離)を計測する構成を例示している。センサ203Aが対象物に向けて光や超音波を発信すると共に対象物で反射した反射波を受信するタイプ(発信機及び受信機を兼ねるタイプ)の距離センサであれば、作業機械100及び電源車200の互いの対向部の少なくとも一方に設置すれば良い。センサ203Aが一対の発信専用機及び受信専用機を用いるタイプの距離センサであれば、いずれか一方を作業機械100及び電源車200の互いの対向部の一方に、他方を対向部の他方に設置すれば良い。
【0025】
本実施形態では作業機械100及び電源車200を背中合わせに配置し、作業機械100が前進する場合に電源車200の車両210が後進して伴走するシステムを例示している。従って、作業機械100及び電源車200の対向部には、作業機械100の旋回体130の後部(本実施形態ではカウンタウェイト133の下部)、及び車両210の荷台の前部(車両単体で見れば後部)が該当する。但し、作業機械100と電源車200の前進方向が合うようにシステムを組む場合もあり、その場合には車両の運転席が作業機械100に対向する。特に図示していないが、センサ203Aは制御装置220(
図4)に有線又は無線により接続されており、出力した信号Sは制御装置220に入力される。
【0026】
5.制御装置
図4は制御装置220の機能ブロック図である。制御装置220は、例えば車両21又は作業機械100に搭載されており、センサ203A及び警告装置204と有線又は無線により接続されている。この制御装置220は、入力装置221、離反検出装置222A及び接近検出装置222Bを備えている。
【0027】
・入力装置
入力装置221は、センサ203Aからの信号S等を入力する装置である。センサ203Aから出力される信号Sがアナログ信号である場合には、入力装置221にはアナログデジタル変換機能が備えられる。
【0028】
・離反検出装置
離反検出装置222Aは、互いの相対距離Lが予め設定した上限値L1を超えて作業機械100と車両210とが離反したことをセンサ203Aから入力された信号Sを基に検出し、離反警告装置204Aに警告指令信号である離反警告信号を出力する装置である。この離反検出装置222Aは、第1記憶装置223A、第1比較装置224A、離反判定装置225A及び第1出力装置226Aを備えている。
【0029】
第1記憶装置223Aは、相対距離Lが上限値L1に達した(上限値L1まで増大した)際にセンサ203Aで検出される信号Sの値に相当する第1閾値S1を記憶した記憶部である。第1記憶装置223Aには、ROMやRAM等を用いることができる。
【0030】
第1比較装置224Aは、第1記憶装置223Aから読み出した第1閾値S1とセンサ203Aから入力された信号Sとを比較する機能部である。第1比較装置224Aの出力信号には、信号S及び第1閾値S1の大小関係の情報が含まれる。この例では、S>S1であるかS≦S1であるかが、第1比較装置224Aの信号で識別される。
【0031】
離反判定装置225Aは、第1比較装置224Aの信号を基に相対距離Lが上限値L1を超えていると判定される場合にその旨を識別する離反識別信号を出力する機能部である。第1比較装置224Aの出力信号がS>S1を識別する信号であって相対距離Lが上限値L1を超えていると推定される場合に、離反判定装置225Aから離反識別信号が出力される。第1比較装置224Aの出力信号がS≦S1を識別する信号であって相対距離Lが上限値L1以下であると推定される場合は、離反判定装置225Aからその旨の信号が出力されるようにしても良いし、何も信号が出力されないようにしても良い。
【0032】
第1出力装置226Aは、離反判定装置225Aから入力された離反識別信号に基づいて離反警告信号を生成し、必要に応じてアナログ信号に変換して離反警告装置204Aに出力する機能部である。離反警告信号は、相対距離Lが上限値L1を超えている旨を作業者に認知させるための離反警告装置204Aの所定の報知動作を指令する信号である。
【0033】
・接近検出装置
接近検出装置222Bは、互いの相対距離Lが予め設定した下限値L2を下回って作業機械100と車両210とが接近したことをセンサ203Aから入力された信号Sを基に検出し、接近警告装置204Bに警告指令信号である接近警告信号を出力する装置である。なお、言うまでもないが下限値L2<上限値L1である。接近検出装置222Bは、第2記憶装置223B、第2比較装置224B、接近判定装置225B及び第2出力装置226Bを備えている。
【0034】
第2記憶装置223Bは、相対距離Lが下限値L2に達した(下限値L2まで減少した)際にセンサ203Aから出力される信号Sの値に相当する第2閾値S2を記憶した記憶部である。第1記憶装置223Aと同様、第2記憶装置223Bには、ROMやRAM等を用いることができる。
【0035】
第2比較装置224Bは、第2記憶装置223Bから読み出した第2閾値S2とセンサ203Aから入力された信号Sとを比較する機能部である。第1比較装置224Aの出力信号と同じように、第2比較装置224Bの出力信号には、信号S及び第2閾値S2の大小関係の情報が含まれる。この例では、S<S2であるかS≧S1であるかが、第2比較装置224Bの信号で識別される。
【0036】
接近判定装置225Bは、第2比較装置224Bの信号を基に相対距離Lが下限値L2を下回っていると判定される場合にその旨を識別する接近識別信号を出力する機能部である。第2比較装置224Bの出力信号がS<S2を識別する信号であって相対距離Lが下限値L2を下回っていると推定される場合に、接近判定装置225Bから接近識別信号が出力される。第2比較装置224Bの出力信号がS≧S2を識別する信号であって相対距離Lが下限値L2以上であると推定される場合は、接近判定装置225Bからその旨の信号が出力されるようにしても良いし、何も信号が出力されないようにしても良い。
【0037】
第2出力装置226Bは、接近判定装置225Bから入力された接近識別信号に基づいて接近警告信号を生成し、必要に応じてアナログ信号に変換して接近警告装置204Bに出力する機能部である。接近警告信号は、相対距離Lが上限値L1を超えている旨を作業者に認知させるための接近警告装置204Bの所定の報知動作を指令する信号である。
【0038】
6.警告装置
警告装置204は、例えば視覚や聴覚に訴える態様で作業者に報知動作をする装置であり、例えば車両210及び作業機械100の少なくとも一方の警笛装置(ホーン)を利用することができる。作業機械100や電源車200に警告灯がある場合には、警告灯を用いることもできる。また、作業機械100や車両210に備わった既設装置に限らず、別途用意した警笛装置や警告灯を作業機械100及び車両210の少なくとも一方に設置して用いることとしても良い。
【0039】
図4に示したように警告装置204には離反警告装置204A及び接近警告装置204Bが含まれる。
【0040】
離反警告装置204Aは、離反検出装置222Aから警告指令信号として入力される離反警告信号により警告動作する装置である。接近警告装置204Bは、接近検出装置222Bから警告指令信号として入力される接近警告信号により警告動作する装置である。
【0041】
なお、作業機械100と電源車200の「接近」と「離反」は同時には生じない反対事象である。そのため、単一の警笛装置を離反警告装置204A及び接近警告装置204Bとして兼ねることもできるが、離反警告装置204A及び接近警告装置204Bを別々にした構成とすることもできる。具体的には、本実施形態では共通の警笛装置を利用しているので、警笛態様を変えることで共通の警笛装置を離反警告装置204A又は接近警告装置204Bとして機能させることができる。例えば、間欠的に警笛を発して報知動作をする場合、離反警告装置204Aとして機能させるときと接近警告装置204Bとして機能させるときとで警笛間隔を変える等である。また、作業機械100と車両210の双方の警笛装置を用いる場合、一方を離反警告装置204Aとして、他方を接近警告装置204Bとして役割を分担することもできる。例えば先行する作業機械100の警笛装置を離反警告装置204Aとして、後続する車両210の警笛装置を接近警告装置204Bとして用いることができる。
【0042】
7.動作
7−1.移動作業
本実施形態に係る移動用システムが用いられる場面は、作業機械100の搬出入時や現場内における移動時である。作業機械100は外部電源からの電力供給を受けないと移動することができない。そのため、稼働現場の搬出入場所においてケーブルの届く範囲に外部電源がないと、トレーラ等の輸送車両に対して作業機械100を自走機能により積み降ろしすることができない。また、例えば搬出入場所から稼働現場までの移動の際にも、ケーブルの届く範囲に外部電源がないと作業機械100を自走機能により移動させることができない。本実施形態に係る移動用システムが用いられる場面は、こうした作業機械100の搬出入や現場内における移動の場面である。
【0043】
作業機械100を自走機能により移動させる場合、まず一人の作業者が車両210の運転室に搭乗し、車両210を運転して作業機械100に対して
図1のように背中合わせになるように電源車200を移動させる。その後、給電ケーブル202で電源車200と作業機械100を接続し、発電機201を運転して作業機械100への電力の供給を開始する。発電機201の始動と給電ケーブル202の接続の手順は逆でも良い。
【0044】
以上の準備を終えたら、二人の作業者がそれぞれ作業機械100の運転室132と車両210の運転室に搭乗し、走行開始のタイミング、走行速度及び走行方向を合わせて作業機械100及び電源車200を移動させる。電源車200が伴走することにより、作業機械100は電源車200から電力供給を受けつつ移動することができる。
【0045】
その後、作業機械100が目的地に到着したら、給電ケーブル202を作業機械100から外す。例えば作業機械100を現場から搬出する場合には、搬送車両(不図示)の荷台に作業機械100を固定し、輸送の準備をする。また、目的地で掘削等の作業に移行する場合には、作業機械100から給電ケーブル202を外した後、現場に備え付けられた外部電源からの給電ケーブルを作業機械100に接続し直し、現場の外部電源からの電力供給を受けて掘削等の作業ができる状態とする。
【0046】
7−2.警告動作
図5は制御装置220による警告指令の手順を表すフローチャートである。この図の手順は制御装置220に備わった記憶装置(不図示)に格納されたプログラムに従って実行され、作業機械100と電源車200を並走させて移動させる間、制御装置220は所定のサイクルタイム(例えば0.1s)で同図の手順を繰り返し実行する。
【0047】
(ステップS101)
図5の手順を開始すると、まずステップS101として、制御装置220はセンサ203Aから出力される信号Sを入力装置221により入力する。入力された信号Sは離反検出装置222A及び接近検出装置222Bに出力され、必要に応じて記憶装置(不図示)に記憶される。以上のステップS101の手順を実行するのが入力装置221である。
【0048】
(ステップS102−S104)
ステップS102−S104の手順は、離反検出装置222Aにより実行される手順である。
【0049】
・ステップS102
ステップS102に手順を移すと、制御装置220は、第1比較装置224Aにより、現在のサイクルのステップS101で入力された信号Sを第1記憶装置223Aから読み込んだ第1閾値S1と比較する。第1比較装置224Aでは、比較の結果、信号S及び第1閾値S1の大小関係が識別可能な信号が離反判定装置225Aに出力される。以上のステップS102の手順を実行するのが第1比較装置224Aである。
【0050】
・ステップS103
ステップS103に手順を移すと、制御装置220は、離反判定装置225Aにより、信号Sが第1閾値S1を超えているか否かを判定する。S>S1で判定が満たされる場合、作業機械100と電源車200の相対距離Lが上限値L1を超えていると推定される。この場合、S>S1である旨(L>L1が推定される旨)を識別する離反識別信号が離反判定装置225Aから第1出力装置226Aに出力され、制御装置220はステップS104に手順を移す。他方、S≦S1で判定が満たされない場合、相対距離Lは上限値L1以下であると推定される。この場合、S≦S1である旨(L≦L1が推定される旨)を識別する識別信号が離反判定装置225Aから第1出力装置226Aに出力され(或いは何等の識別信号も出力されることなく)、制御装置220はステップS105に手順を移す。以上のステップS103の手順を実行するのが離反判定装置225Aである。
【0051】
・ステップS104
ステップS104に手順を移すと、制御装置220は、第1出力装置226Aにより、離反識別信号に基づいて離反警告信号を生成し、離反警告装置204Aに出力して
図5の手順を終える。これにより離反警告信号に従って離反警告装置204Aが所定の警告動作をし、作業機械100及び電源車200を運転する作業者に作業機械100と電源車200が適正範囲を逸脱して離れている旨が報知され、例えば走行停止等の適切な対処が促される。以上のステップS104の手順を実行するのが第1出力装置226Aである。
【0052】
(ステップS105−S107)
ステップS105−S107の手順は、接近検出装置222Bにより実行される手順である。
【0053】
・ステップS105
ステップS105に手順を移すと、制御装置220は、第2比較装置224Bにより、現在のサイクルのステップS101で入力された信号Sを第2記憶装置223Bから読み込んだ第2閾値S2と比較する。第2比較装置224Bでは、比較の結果、信号S及び第2閾値S2の大小関係が識別可能な信号が接近判定装置225Bに出力される。以上のステップS105の手順を実行するのが第2比較装置224Bである。
【0054】
・ステップS106
ステップS106に手順を移すと、制御装置220は、接近判定装置225Bにより、信号Sが第2閾値S2を下回っているか否かを判定する。S<S2で判定が満たされる場合、作業機械100と電源車200の相対距離Lが下限値L2を下回っていると推定される。この場合、S<S2である旨(L<L2が推定される旨)を識別する接近識別信号が接近判定装置225Bから第2出力装置226Bに出力され、制御装置220はステップS107に手順を移す。他方、S≧S2で判定が満たされない場合、相対距離Lは下限値L2以上であると推定される。この場合、S≧S2である旨(L≧L2が推定される旨)を識別する識別信号が接近判定装置225Bから第2出力装置226Bに出力され(或いは何等の識別信号も出力されることなく)、制御装置220は
図5の手順を終える。このステップの判定が満たされない場合は、ステップS103の判定も満たされないので、下限値L2以上で上限値L1以下の適切な範囲に相対距離Lが収まっていることが推定され、特別な警報動作は実行されない。以上のステップS106の手順を実行するのが接近判定装置225Bである。
【0055】
・ステップS107
ステップS107に手順を移すと、制御装置220は、第2出力装置226Bにより、接近識別信号に基づいて接近警告信号を生成し、接近警告装置204Bに出力して
図5の手順を終える。これにより接近警告信号に従って接近警告装置204Bが所定の警告動作をし、作業機械100及び電源車200を運転する作業者に作業機械100と電源車200が適正範囲を逸脱して接近している旨が報知され、例えば走行停止等の適切な対処が促される。以上のステップS107の手順を実行するのが第2出力装置226Bである。
【0056】
なお、離反警告装置222AによるステップS102−S104の手順と接近警告装置222BによるステップS105−S107の手順は、どちらが先に実行されるようにしても良いし、並行して実行されるようにしても良い。
【0057】
8.効果
8−1.給電ケーブルの緊張抑制
本実施形態によれば、上記のように上限値L1を超えて作業機械100と電源車200が離れていると推定される場合、その旨を作業機械100及び電源車200を運転する双方の作業者に離反警告装置204Aによって知らせることができる。これにより作業機械100及び電源車200の位置関係の確認、走行停止、車間距離の調整等の適切な操作を作業者に促すことができる。従って、給電ケーブル202に過度な張力が作用することを抑制することができ、給電ケーブル202の抜けや損傷の発生を抑制することができる。このように、本実施形態によれば作業機械100と電源車200との距離を適当な状態(範囲)に保ち給電ケーブル202を保護することができる。よって、搬送車両に対する積み降ろしや現場内の移動等の際、電源車200から作業機械100にトラブルなく電力を供給することができ、現場の固定電源に接続できないような場所でも作業機械100を円滑に移動走行させることができる。
【0058】
8−2.給電ケーブルの弛緩抑制
本実施形態においては、下限値L2を下回って作業機械100と電源車200が接近していると推定される場合には、その旨を作業機械100及び電源車200を運転する双方の作業者に接近警告装置204Bによって知らせることができる。離反を知らせる場合と同様、作業機械100及び電源車200の位置関係の確認、走行停止、車間距離の調整等の適切な操作を作業者に促すことができる。給電ケーブル202の長さの余裕の取り方によっては、給電ケーブル202が過度に弛緩すると、給電ケーブル202が接地して地面に引き摺られたり車両210等に踏まれたりしないとも限らない。本実施形態によれば、このような事態の発生を抑制することができ、これによっても給電ケーブル202を保護することができる。
【0059】
8−3.他の効果
警告装置204は作業者に対する報知ができれば機能的には足りるので、車両210や作業機械100の警笛装置を利用することができる。車両210も発電機201を積載して走行できるものであれば、通常のトラックを利用することができる。発電機201も作業機械100を1台動作させられるだけの発電容量が確保できるものであればば良い。このように多くの構成要素に既設装置を利用しつつセンサ203Aや制御装置220を組み合わせることによって、電源車200を構成することができる。作業機械100の搬出入や現場内移動等の限定的な用途に用いられる電源車200にあって、大掛かりな専用品を過度に必要としないことも、労力やコストその他の面でメリットである。
【0060】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0061】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、作業機械100と電源車200の相対距離Lに応じて変化する物理量として検出する対象が、車間距離そのものではなく給電ケーブル202と地面との距離である点である。本実施形態ではセンサ203Aに代えて、給電ケーブル202と地面との距離を検出する距離センサであるセンサ203Bが設けられている。
【0062】
本実施形態で用いるセンサ203Bは、センサ203Aと同様、例えば光や超音波を利用した非接触式の距離センサ、特に対象物に向けて光や超音波を発信すると共に対象物で反射した反射波を受信するタイプの距離センサを用いることができる。センサ203Bの取り付け対象は給電ケーブル202であり、最も地面に近付き得る部位を選んで光等を下向き(地面に向けて)発信する姿勢で給電ケーブル202に固定する。給電ケーブル202の最も地面に近付き得る部位としては、作業機械100と車両210の車間の中央部、給電ケーブル202の長さ方向の中央部等が例示できる。また、
図6のように作業機械100及び電源車200に給電ケーブル202を接続してみて、実際に地面に最も近付く部位にセンサ203Bを取り付けることもできる。このようにセンサ203Bを設置することで、給電ケーブル203と地面との距離を検出することができる。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態の場合、相対距離Lが大きくなれば給電ケーブル202が緊張するので、センサ203Bで検出される距離の値(信号S)が大きくなる。反対に、センサ203Bで検出される距離の値(信号S)は相対距離Lの減少に伴って小さくなる。検出対象とする物理量は異なるが、相対距離Lの増減と信号Sの増減の対応関係は第1実施形態と同じであるため、制御装置220の構成も制御手順(フローチャート)も第1実施形態と同様とすることができる。但し、検出する物理量が異なるので、第1記憶装置223Aに記憶させておく第1閾値S1、及び第2記憶装置223Bに記憶させておく第2閾値S2を調整する必要がある。具体的には、相対距離Lが上限値L1になった際にセンサ203Bから出力される信号Sに相当する値を第1閾値S1に、下限値L2になった際にセンサ203Bから出力される信号Sに相当する値を第2閾値S2に設定すれば良い。
【0064】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施形態が第1及び第2実施形態と相違する点は、作業機械100と電源車200の相対距離Lに応じて変化する物理量として検出する対象が、給電ケーブル202の張力である点である。本実施形態ではセンサ203Aに代えて、給電ケーブル202の張力を検出する張力センサであるセンサ203Cが設けられている。
【0067】
図8はセンサ203Cの一構成例を表す模式図である。同図に示したセンサ203Cは、ケーシング231、ガイドローラ232及び荷重計233(例えばロードセル)を備えており、給電ケーブル202に取り付けられている。ケーシング231は例えば筒状の部材、或いは対面する2枚の板材等である。このケーシング231の内側には2つのガイドローラ232が回転自在に支持されている。2つのガイドローラ232の回転軸は平行である。図示していないがガイドローラ232の外周面には周方向に延びる溝が形成されており、この溝に給電ケーブル202が掛かるようになっている。本実施形態では2つのガイドローラ232の大きさ及び形状は同一であるものとする。
【0068】
荷重計233は、ケーシング231の内側において2つのガイドローラ232の間に位置し、かつ2つのガイドローラ232との間に給電ケーブル202を挟み込むようにして、ケーシング231に取り付けられている。給電ケーブル202の張り具合によって給電ケーブル202から荷重計233に掛かる荷重が変化する構成である。ガイドローラ232に対する荷重計233の位置は、上記相対距離Lが設定した適正値である場合の荷重計233の信号を基準として、給電ケーブル202の張力変化によって荷重計233の信号に増大代と減少代の双方が確保されるように調整されている。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態の場合、相対距離Lが大きくなれば給電ケーブル202が緊張するので、センサ203Cで検出される張力の値(信号S)が大きくなる。反対に、センサ203Cで検出される張力(信号S)の値は相対距離Lの減少に伴って小さくなる。検出対象とする物理量は異なるが、本実施形態においても相対距離Lの増減と信号Sの増減の対応関係は第1実施形態と同じであるため、制御装置220の構成も制御手順(フローチャート)も第1実施形態と同様とすることができる。但し、検出する物理量が異なるので、第1記憶装置223Aに記憶させておく第1閾値S1、及び第2記憶装置223Bに記憶させておく第2閾値S2を調整する必要がある。具体的には、相対距離Lが上限値L1になった際にセンサ203Cから出力される信号Sに相当する値を第1閾値S1に、下限値L2になった際にセンサ203Cから出力される信号Sに相当する値を第2閾値S2に設定すれば良い。
【0070】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、給電ケーブル202に掛かる張力を直接検出することができるので、特に作業機械100と電源車200が離れた際の警告の妥当性が向上する。
【0071】
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施形態が第1−第3実施形態と相違する点は、作業機械100と電源車200の相対距離Lに応じて変化する物理量として検出する対象が、作業機械100と車両210とを連結するワイヤ234の張力である点である。本実施形態ではセンサ203Aに代えて、ワイヤ234の張力を検出する張力センサであるセンサ203Dが設けられている。
【0073】
本実施形態では作業機械100と電源車200との対向部同士をワイヤ234で連結している。ワイヤ234は、伸びきった状態でも給電ケーブル202に過度な張力が掛からない程度の長さに調整されている。このワイヤ234に設置するセンサ203Dには、
図8に示したセンサ203Cと同様のものを用いることができる。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態の場合、相対距離Lが大きくなればワイヤ234が緊張するので、センサ203Dで検出される張力の値(信号S)が大きくなる。反対に、センサ203Dで検出される張力の値(信号S)は相対距離Lの減少に伴って小さくなる。検出対象とする物理量は異なるが、相対距離Lの増減と信号Sの増減の対応関係は第1実施形態と同じであるため、制御装置220の構成も制御手順(フローチャート)も第1実施形態と同様とすることができる。但し、検出する物理量が異なるので、第1記憶装置223Aに記憶させておく第1閾値S1、及び第2記憶装置223Bに記憶させておく第2閾値S2を調整する必要がある。具体的には、相対距離Lが上限値L1になった際にセンサ203Dから出力される信号Sに相当する値を第1閾値S1に、下限値L2になった際にセンサ203Dから出力される信号Sに相当する値を第2閾値S2に設定すれば良い。
【0075】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、作業機械100と電源車200が離れた際、給電ケーブル202より先に掛かるワイヤ234の張力を検出して離反警告動作が実行されるので、給電ケーブル202に過度な張力が掛かることをより効果的に抑制することができる。
【0076】
(第5実施形態)
図10は本発明の第5実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0077】
本実施形態は、作業機械100と電源車200の相対距離Lに応じて変化する物理量として検出する対象が、給電ケーブル202の張力である点で第3実施形態と共通する。第3実施形態とは検出機構が相違する。本実施形態ではセンサ203Aに代えて、給電ケーブル202の張力を検出する張力センサであるセンサ203Eが設けられている。
【0078】
図11はセンサ203Eの一構成例を表す模式図である。同図に示したセンサ203Eは、ベース241、ポスト242、アーム243、ホルダー244、スプリング245及び荷重計246(例えばロードセル)を備えている。ベース241はセンサ203Eの基礎構造体であり、発電機201に対する給電ケーブル202の接続部よりも作業機械100に近い位置で車両210の荷台上に固定されている。アーム243は水平に延びる回転軸を介して、ベース241上に立つポスト242に対して回動可能に連結されている。アーム242の先端にはホルダー244が取り付けられている。ホルダー244は例えば筒状の部材であり、これに給電ケーブル202が通される。荷重計246はアーム243及びベース241の間に介在するようにベース241に固定されている。スプリング245はアーム243及びベース241の間に介在し、アーム243及びベース241を連結している。本実施形態では、アーム243及びホルダー244の重量がスプリング243に掛かっており、かつアーム243が荷重計246で支持されているときの長さを、スプリング245の自然長と定義する。ホルダー244は、スプリング245が自然長であって上記相対距離Lが設定した適正値である場合に、給電ケーブル202がその内周面に触れない(又は設定値以上の荷重が掛からない)ように高さが調整されている。また、スプリング245が自然長で相対距離Lが適正値である場合に、荷重計246に対して測定範囲の中間値の荷重が掛かるように各要素の位置等が調整してある。給電ケーブル202の張り具合によって荷重計246に掛かる荷重が増減する構成である。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態の場合、相対距離Lが大きくなれば給電ケーブル202が緊張してホルダー244に上向きの力が掛かる。アーム243にスプリング245が連結されているので一定以下の荷重はスプリング245で支持されるが、ホルダー244を持ち上げる力がばね力を上回ると、ホルダー244が持ち上がってセンサ203Eで検出される張力の値(信号S)が小さくなる。反対に、相対距離Lが小さくなれば給電ケーブル202が弛緩してホルダー244に下向きの力が掛かる。これが一定以下の荷重であればスプリング245で支持されるが、ホルダー244を押し下げる力がばね力を上回ると、ホルダー244が押し下げられてセンサ203Eで検出される張力の値(信号S)が大きくなる。本実施形態においては、相対距離Lの増減と信号Sの増減の対応関係が第1実施形態と逆になる。従って、先の
図5においてステップS103の判定内容を“S<S1?”,ステップS106の判定内容を“S>S2?”と変更した上で、第1実施形態の制御装置220及びその制御手順(フローチャート)を本実施形態にも適用することができる。但し、第1記憶装置223Aに記憶させておく第1閾値S1、及び第2記憶装置223Bに記憶させておく第2閾値S2については調整する必要がある。相対距離Lが上限値L1になった際にセンサ203Eから出力される信号Sに相当する値を第1閾値S1に、下限値L2になった際にセンサ203Eから出力される信号Sに相当する値を第2閾値S2(>S1)に設定すれば良い。
【0080】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、給電ケーブル202に掛かる張力を直接検出することができるので、特に作業機械100と電源車200が離れた際の警告の妥当性が向上する。
【0081】
(第6実施形態)
図12は本発明の第6実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0082】
本実施形態が第1−第5実施形態と相違する点は、検出した物理量から相対距離Lを推定する代わりに、相対距離Lに応じて挙動する給電ケーブル202が近接スイッチに触れるか否かで相対距離Lと上限値L1及び下限値L2との大小関係を判定することにある。本実施形態では、センサ203Aに代えてセンサ203Fが設けられている。
【0083】
図13はセンサ203Fの一構成例を表す模式図である。同図に示したセンサ203Fは、ベース251、ポスト252、ホルダー253及び近接スイッチ203Fa,203Fbを備えている。ベース251はセンサ203Fの基礎構造体であり、発電機201に対する給電ケーブル202の接続部よりも作業機械100に近い位置で車両210の荷台上に固定されている。このベース251上にはポスト252を介してホルダー253が支持されている。ホルダー253は例えば筒状の部材であり、これに給電ケーブル202が通される。近接スイッチ203Fa,203Fbは給電ケーブル202の挙動を検出するセンサであって、それぞれホルダー253の内部空間の天井面及び床面に固定され、ホルダー253に通された給電ケーブル202を挟んで上下に対向している。上記相対距離Lが設定した適正値である場合に、給電ケーブル202が近接スイッチ203Fa,203Fbの中間部に位置するようにホルダー253の高さが調整されている。この状態では、近接スイッチ203Fa,203Fbは双方とも給電ケーブル202から離れている。上側の近接スイッチ203Faは、相対距離Lの増大に伴う緊張時に給電ケーブル202が接触するように設置されている。下側の近接スイッチ203Fbは、相対距離Lの減少に伴う弛緩時に給電ケーブル202が接触するように設置されたている。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0084】
図14は本実施形態の電気駆動式作業機械の移動用システムに備えられた制御装置220’の機能ブロック図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図4と同符号を付して説明を省略する。制御装置220’は、制御装置220と同様、例えば車両21又は作業機械100に搭載されており、センサ203F(近接スイッチ203Fa,203Fb)及び警告装置204と有線又は無線により接続されている。この制御装置220’は、離反検出装置222A’及び接近検出装置222B’を備えている。制御装置220に備わっていた入力装置221は、この例では省略されている。
【0085】
離反検出装置222A’は、離反検出装置222Aと同じく、相対距離Lが上限値L1を超えて離反したことをセンサ203Fから入力された信号を基に検出し、離反警告装置204Aに警告指令信号である離反警告信号を出力する装置である。この離反検出装置222A’は、離反判定装置225A’及び第1出力装置226Aを備えている。離反判定装置225A’は、第1実施形態の離反検出装置222Aに備わっていた離反判定装置225Aに代わる構成要素である。また、離反検出装置222Aに備わっていた第1記憶装置223A及び第1比較装置224Aは、この例では省略されている。
【0086】
離反判定装置225A’は、センサ203Fからの入力信号の有無に応じて相対距離Lが上限値L1を超えていると判定される場合にその旨を識別する離反識別信号を出力する装置である。本実施形態では、上側の近接スイッチ203Faからの信号Saが入力された場合に、相対距離Lが上限値L1を超えていると離反判定装置225A’で判定され、離反識別信号が出力される。近接スイッチ203Faからの信号Saが入力されず相対距離Lが上限値L1以下であると推定される場合は、離反判定装置225A’からその旨の信号が出力されるようにしても良いし、何も信号が出力されないようにしても良い。離反判定装置225A’の出力に対する第1出力装置226Aの処理内容は第1実施形態と同様である。
【0087】
接近検出装置222B’は、接近検出装置222Bと同じく、相対距離Lが下限値L2を下回って接近したことをセンサ203Fから入力された信号を基に検出し、接近警告装置204Bに警告指令信号である接近警告信号を出力する装置である。この接近検出装置222B’は、接近判定装置225B’及び第2出力装置226Bを備えている。接近判定装置225B’は、第1実施形態の接近検出装置222Bに備わっていた接近判定装置225Bに代わる構成要素である。また、接近検出装置222Bに備わっていた第2記憶装置223B及び第2比較装置224Bは、この例では省略されている。
【0088】
接近判定装置225B’は、センサ203Fからの入力信号の有無に応じて相対距離Lが下限値L2を超えていると判定される場合にその旨を識別する接近識別信号を出力する装置である。本実施形態では、下側の近接スイッチ203Fbからの信号Sbが入力された場合に、相対距離Lが下限値L2を下回っていると接近判定装置225B’で判定され、接近識別信号が出力される。近接スイッチ203Fbからの信号Sbが入力されず相対距離Lが下限値L2以上であると推定される場合は、接近判定装置225B’からその旨の信号が出力されるようにしても良いし、何も信号が出力されないようにしても良い。接近判定装置225B’の出力に対する第2出力装置226Bの処理内容は第1実施形態と同様である。
【0089】
図15は制御装置220’による警告指令の手順を表すフローチャートである。この図の手順は制御装置220’に備わった記憶装置(不図示)に格納されたプログラムに従って実行され、作業機械100と電源車200を並走させて移動させる間、制御装置220は所定のサイクルタイム(例えば0.1s)で同図の手順を繰り返し実行する。
【0090】
(ステップS201,S202)
ステップS201,S202の手順は、離反検出装置222A’により実行される手順である。
【0091】
・ステップS201
図15の手順を開始すると、制御装置220’は、離反判定装置225A’により、上側の近接スイッチ203Faからの信号Saが入力されているか否かを判定する。信号Saが入力されていて判定が満たされる場合、作業機械100と電源車200の相対距離Lが上限値L1を超えていると推定される。この場合、L>L1が推定される旨を識別する離反識別信号が離反判定装置225A’から第1出力装置226Aに出力され、制御装置220’はステップS202に手順を移す。他方、信号Saが入力されておらず判定が満たされない場合、相対距離Lは上限値L1以下であると推定される。この場合、L≦L1が推定される旨を識別する識別信号が離反判定装置225A’から第1出力装置226Aに出力され(或いは何等の識別信号も出力されることなく)、制御装置220’はステップS203に手順を移す。以上のステップS201の手順を実行するのが離反判定装置225A’である。
【0092】
・ステップS202
ステップS202に手順を移すと、制御装置220’は、第1出力装置226Aにより、離反識別信号に基づいて離反警告信号を生成し、離反警告装置204Aに出力して
図15の手順を終える。ステップS202の手順は
図5のステップS104の手順と同様である。
【0093】
(ステップS203,S204)
ステップS203,S204の手順は、接近検出装置222B’により実行される手順である。
【0094】
・ステップS203
ステップS203に手順を移すと、制御装置220’は、接近判定装置225Bにより、下側の近接スイッチ203Fbからの信号Sbが入力されているか否かを判定する。信号Saが入力されていて判定が満たされる場合、作業機械100と電源車200の相対距離Lが下限値L2を下回っていると推定される。この場合、L<L2が推定される旨を識別する接近識別信号が接近判定装置225B’から第2出力装置226Bに出力され、制御装置220’はステップS204に手順を移す。他方、信号Sbが入力されておらず判定が満たされない場合、相対距離Lは下限値L2以上であると推定される。この場合、L≧L2が推定される旨を識別する識別信号が接近判定装置225B’から第2出力装置226Bに出力され(或いは何等の識別信号も出力されることなく)、制御装置220’は
図15の手順を終える。このステップの判定が満たされない場合は、ステップS201の判定も満たされないので、下限値L2以上で上限値L1以下の適切な範囲に相対距離Lが収まっていることが推定され、特別な警報動作は実行されない。以上のステップS203の手順を実行するのが接近判定装置225B’である。
【0095】
・ステップS204
ステップS204に手順を移すと、制御装置220’は、第2出力装置226Bにより、接近識別信号に基づいて接近警告信号を生成し、接近警告装置204Bに出力して
図15の手順を終える。ステップS204の手順は
図5のステップS107の手順と同様である。
【0096】
なお、離反警告装置222A’によるステップS201,S202の手順と接近警告装置222B’によるステップS203,S204の手順は、どちらが先に実行されるようにしても良いし、並行して実行されるようにしても良い。
【0097】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
なお、可撓性によって相対距離Lの割に給電ケーブル202の弛みが大きく、下側の近接スイッチ203Fbに対して給電ケーブル202が必要以上に接触する場合が考えられる。この場合には、ホルダー253やベース251等の静止構造物に対して給電ケーブル202を適当なばね力のばねで支持し、相対距離Lが下限値L2に対して余裕があるのに必要以上に接近警告動作が実行されることを抑制することができる。
【0099】
(第7実施形態)
図16は本発明の第7実施形態に係る電気駆動式作業機械の移動システムの全体構成を表す側面図である。同図において第1実施形態と同一又は対応する部分には
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0100】
本実施形態は、給電ケーブル202が近接スイッチに触れるか否かで相対距離Lと上限値L1及び下限値L2との大小関係を判定する点で第6実施形態と共通する。第6実施形態とは検出機構が相違する。本実施形態ではセンサ203Aに代えて、給電ケーブル202の張力を検出する張力センサであるセンサ203Gが設けられている。
【0101】
図17はセンサ203Gの一構成例を表す模式図である。同図に示したセンサ203Gは、近接スイッチ203Ga,203Gbとこれを支持する台車260を備えている。台車260は、キャスタ261、ボディ262及びホルダー263を備えている。ボディ262は連結部材264(
図16)で車両210に連結されており、作業機械100と車両210の車間に位置している。連結部材264は例えば高剛性の棒状の鋼材等である。ボディ262は作業機械100に連結しても良い。また、連結部材264にワイヤやチェーン等の可撓性の部材を用いることもできるが、この場合には作業機械100及び車両210の双方にボディ262を連結することが望ましい。ボディ262の下部にはキャスタ261が取り付けられており、センサ203Gは車両210又は作業機械100に伴って任意の水平方向に移動可能な構成となっている。
【0102】
ホルダー263の下部には、上下に延びるポスト265が取り付けられている。ポスト265はボディ262の上面を貫通しており、ボディ262に対してスプリング266を介して弾性的に支持されている。ホルダー263は筒状の部材であり、内部に給電ケーブル202が通されている。ホルダー263にはトリガー267が、ポスト265にはトリガー268が取り付けられている。つまり、ホルダー263、ポスト265及びトリガー267,268は、給電ケーブル202に伴って移動する構造物である。このとき、上記相対距離Lが設定した適正値である場合に、給電ケーブル202がホルダー263の内周面に触れない(又は設定値超える荷重が内周面に掛からない)ようにホルダー263の高さが調整されている。
【0103】
近接スイッチ203Gaは支持部材269を介して、近接スイッチ203Gbは支持部材270を介してボディ262に支持されている。近接スイッチ203Ga,203Gbは、相対距離Lが適正値である(ホルダー263が押し上げ及び押し下げられていない)状態で、近接スイッチ203Gaがトリガー267に触れ、近接スイッチ203Gbがトリガー268から離れるように配置されている。この状態から給電ケーブル202が緊張してホルダー263が押し上げられると、近接スイッチ203Gaが切り状態になる(近接スイッチ203Ga,203GbともOFFになる)。反対に給電ケーブル202が弛緩してホルダー263が押し下げられると、近接スイッチ203Gbが入り状態になる(近接スイッチ203Ga,203GbともONになる)。
【0104】
なお、本実施形態では、車両210等の警笛装置の代わりに、ボディ262の上部に設けた警告灯装置を警告装置204に用いている。この警告装置204は例えば3色の警告灯を備えており、一例としては通常時は平常色(例えば緑色)で警告灯を点灯させ、警告時は警告色(赤色等)で警告灯を点灯又は点滅させる警告動作をするように構成されている。点灯又は点滅、又は点灯色のパターンを変えて離反警告動作と接近警告動作とが区別できるようにすることが望ましい。また、本実施形態では第6実施形態の制御装置220’(
図14)が適用されるが、制御装置220’をボディ262の内部に収納する構成としても良い。その他の主要なハード構成の要素及び要素同士の関係は第1実施形態と同様である。
【0105】
本実施形態の場合、相対距離Lが大きくなれば給電ケーブル202が緊張してホルダー263に上向きの力が掛かる。ホルダー263はスプリング266で弾性支持されているので一定以下の荷重はスプリング266で支持されるが、ホルダー263を持ち上げる力がばね力を上回ると、ホルダー263が持ち上がって近接スイッチ203Gaの信号SaがOFFになる。反対に、相対距離Lが小さくなれば給電ケーブル202が弛緩してホルダー263に下向きの力が掛かる。これが一定以下の荷重であればスプリング266で支持されるが、ホルダー263を押し下げる力がばね力を上回ると、ホルダー263が押し下げられて近接スイッチ203Gbの信号SbがONになる。従って、先の
図15においてステップS201の判定内容を“信号SaはOFF?”と変更した上で、第6実施形態の制御装置220’及びその制御手順(フローチャート)を本実施形態にも適用することができる。
【0106】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
図18はセンサ203Gの他の構成例を表す模式図である。同図において
図17と同一又は対応する部分には同符号を付して説明を省略する。近接スイッチ203Ga,203Gbの配置は、L<L2,L2≦L≦L1,L>L1の3つの状態が入り切りの組み合わせで識別できさえすれば適宜変更可能である。例えば
図17の例では近接スイッチ203Gaをボディ262の上部に設け、近接スイッチ203Gbのみをボディ262の内部に収容したが、
図18のように近接スイッチ203Ga,203Gbの双方をボディ262の内部に配置する構成とすることもできる。近接スイッチ203Ga,203Gbを共にボディ262の内部に配置することは、近接スイッチ203Ga,203Gbの塵埃からの保護にも寄与する。
図18の構成例でも、L>L1のときにのみ近接スイッチ203Gaが切り状態となり、L<L2のときにのみ近接スイッチ203Gbが入り状態となるように構成できる。また、L<L2,L2≦L≦L1,L>L1の状態と入り切りの組み合わせの対応関係も適宜変更可能であり、例えば近接スイッチ203GaはL>L1のときにのみ入り状態になるようにトリガー267と共に配置変更可能である。また、近接スイッチ203GbはL<L2のときにのみ切り状態となるようにトリガー268と共に配置変更可能である。
【0108】
(その他)
以上の実施形態では、相対距離Lが上限値L1を超えた場合、下限値L2を下回った場合にのみ警告動作をするように構成した場合を例に挙げて説明したが、警告動作を段階的なものとすることもできる。例えば上限値L1よりも小さい中間的な制限値を追加して設定し、これに対応するセンサ出力についての閾値として中間値S1’を設定すれば、信号Sが第1閾値S1に到達する前に中間値S1’を超えたところで注意を促す報知動作を行うようにすることもできる。下限値L2側についても同様の概念で中間値を設定し、第2閾値S2を下回る前に中間値を下回った時点で報知動作を行うようにすることができる。
【0109】
また、以上においては作業機械100と電源車200が接近し過ぎないように接近警告動作をする例を説明したが、給電ケーブル202に過度な引っ張り荷重が掛からないように注意喚起するという本質的効果を得る上では、離反警告動作が実行されれば良い。接近警告の機能を省略する場合には、これに関連する構成要素や手順を省略することができる。