(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自己免疫性疾患が同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円盤状ループス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発ニューロパチー、免疫介在性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、硬化性苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、実質臓器移植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される、請求項23記載の医薬組成物。
前記チャネル病が、自己免疫性辺縁系脳炎、癲癇、視神経脊髄炎、ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳炎、モルヴァン症候群、神経性筋強直症、連鎖球菌感染関連小児自己免疫性精神神経障害(PANDAS)、及びグリシン受容体抗体関連障害からなる群から選択される、請求項26記載の医薬組成物。
前記抗体がCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86と特異的に結合する、請求項33記載の医薬組成物。
前記追加の治療薬が、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロノマブ-CD3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、ベリムマブ、又はそれらの組合せである、請求項29記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
本件開示は新規FcRnアンタゴニスト組成物を提供する。これらの組成物は一般に、未改変のFc領域と比較して、増大された親和性及び低下されたpH依存性を有する、FcRnと特異的に結合するバリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む。本発明は部分的に、ある単離バリアントFc領域(例えば、それぞれEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含むバリアントFc領域)がインビボにおいてそのバリアントFc領域を含む全長抗体よりも効果的なFcRnアンタゴニストであるという驚くべき発見に基づいている。本件開示のFcRnアンタゴニスト組成物は、Fc含有薬(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベルを低下させるのに特に有用である。従って、本件開示は本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を用いて抗体介在性障害(例えば、自己免疫性疾患)を治療する方法も提供する。同様に提供されるのは、該FcRnアンタゴニスト組成物を製造するための、該FcRnアンタゴニスト組成物をコードする核酸、組換え発現ベクター及び宿主細胞、並びに該FcRnアンタゴニスト組成物を含む医薬組成物である。
【0026】
(I.定義)
本明細書に別途定義されない限り、本発明に関して使用される科学用語及び技術用語は当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。用語の意味及び範囲は明確であるべきであるが、万一隠れた曖昧さがある場合、本明細書に提供される定義がいかなる辞書又は外部の定義に先行して解釈される。さらに、文脈からそうでないことが要求されない限り、単数形の用語は複数物を含み、複数形の用語は単数物を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞培養及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質化学及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関して使用される専門用語、及びこれらの技術は、当技術分野で周知かつ通常に使用される専門用語及び技術である。
【0027】
本発明をより容易に理解できるようにするため、特定の用語をまず定義する。
【0028】
本明細書に使用される用語「FcRnアンタゴニスト」は、Fc領域を介してFcRnと特異的に結合し、FcRnと免疫グロブリンの結合を阻害するFc領域(例えば、本明細書に開示されるバリアントFc領域)を含む任意の薬剤を指す(ただし、該薬剤は全長IgG抗体ではない)。
【0029】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、その2つの重鎖のFcドメインによって形成される未改変の免疫グロブリンの部分を指す。未改変のFc領域はホモ二量体である。
【0030】
本明細書で使用される用語「バリアントFc領域」は、未改変Fc領域と比較して1以上の変化を有するFc領域を指す。変化には、アミノ酸の置換、付加及び/若しくは欠失、追加成分の連結、並びに/又は未改変のグリカンの変化を挙げることができる。この用語は構成要素であるFcドメインのそれぞれが異なっているヘテロ二量体Fc領域を包含する。そのようなヘテロ二量体Fc領域の例には、限定されることなく、例えば、その全体が本明細書に引用により組み込まれているUS 8216805において記載されている「ノブと穴」技術を用いて作製されるFc領域がある。また、この用語は例えば、その全体が本明細書に引用によりそれぞれ組み込まれているUS20090252729A1及びUS20110081345A1に記載されているように、構成要素であるFcドメインがリンカー成分によって共に連結されている単鎖Fc領域も包含する。
【0031】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域において開始し、抗体のC末端で終止する単一の免疫グロブリン重鎖の部分を指す。従って、完全なFcドメインはヒンジドメインの少なくとも一部(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒンジ領域)、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0032】
本明細書で使用される用語「FcRn結合断片」は、FcRn結合を与えるに十分なFc領域の一部を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「EU位置」は、Edelman, G.M.らの文献、Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78-85 (1969)及び「免疫学の対象となるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」U.S. Dept. Health and Human Services, 第5版, 1991中のKabatらの文献に記載されたFc領域についてのEU番号付けの慣例におけるアミノ酸位置を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「CH1ドメイン」は、約EU位置118〜215から延在する免疫グロブリン重鎖の第一の(最もアミノ末端寄りの)定常領域ドメインを指す。CH1ドメインはVHドメイン及び免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対するアミノ末端と隣接し、免疫グロブリン重鎖Fc領域の一部を形成しない。
【0035】
本明細書で使用される用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインとつなぐ重鎖分子の部分を指す。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、可撓性であり、そのため2つのN末端抗原結合領域が独立に動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの別個のドメイン:上部、中央、及び下部ヒンジドメイン(Rouxらの文献、J. Immunol. 161: 4083 (1998))へと細分することができる。本件開示のFcRnアンタゴニストは全ての又は一部のヒンジ領域を含むことができる。
【0036】
本明細書で使用される用語「CH2ドメイン」は、約EU位置231〜340から延在する重鎖免疫グロブリン分子の部分を指す。
【0037】
本明細書で使用される用語「CH3ドメイン」は、CH2ドメインのN末端からおよそ110残基に、例えば約位置341〜446(EU番号体系)から延在する重鎖免疫グロブリン分子の部分を含む。
【0038】
本明細書で使用される用語「FcRn」は、新生児のFc受容体を指す。例示的なFcRn分子はRefSeq NM_004107に記載されたFCGRT遺伝子によりコードされるヒトFcRnを含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「CD16」は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)に要求されるFcγRIII Fc受容体を指す。例示的なCD16分子はRefSeq NM_000569に記載されたヒトCD16aを含む。
【0040】
本明細書で使用される用語「遊離システイン」は、成熟FcRnアンタゴニストにおいて実質的に還元された形態で存在する未改変の、又は操作されたシステインアミノ酸残基を指す。
【0041】
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合により相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を指す。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(VHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(VLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と命名されたより保存された領域をところどころに挟む相補性決定領域(CDR)と命名された超過変性領域へとさらに細分することができる。
【0042】
本明細書で使用される用語「N-結合型グリカン」は、Fc領域のCH2ドメイン中に存在するシークオン(すなわち、Asn-X-Ser又はAsn-X-Thr配列。Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)中のアスパラギンの側鎖中の窒素(N)に結合したN-結合型グリカンを指す。そのようなN-グリカンは、例えば、その全体が引用により本明細書に組み込まれているDrickamer K及びTaylor MEの文献 (2006)「糖鎖生物学への入門(Introduction to Glycobiology)」第2版に十分に記載されている。
【0043】
本明細書で使用される用語「アフコシル化された」は、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれているUS8067232に記載されたような、コアのフコース分子を欠いているN-結合型グリカンを指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「バイセクティングGlcNac」は、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれているUS8021856に記載されているような、コアマンノース分子に連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)分子を有するN-結合型グリカンを指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「抗体介在性障害」は、対象における抗体の存在により引き起こされるか、又は悪化するあらゆる疾患又は障害を指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「Fc含有薬」は、Fc領域を含む任意の分子である。
【0047】
本明細書で使用される用語「白血球除去薬」は、投与に際し対象における白血球の数が減少する薬剤を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「B細胞除去薬」は、投与に際し対象におけるB細胞の数が減少する薬剤を指す。
【0049】
本明細書で使用される用語「T細胞除去薬」は、投与に際し対象におけるT細胞の数が減少する薬剤を指す。
【0050】
本明細書で使用される用語「自己免疫性チャネル病」は、イオンチャネルのサブユニット又は該チャネルを制御する分子に対する自己抗体によって引き起こされる疾患を指す。
【0051】
本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、本明細書に記載される治療的又は予防的手段を指す。「治療」の方法は、対象、例えばIL-6関連疾患又は障害(例えば、炎症及び癌)を有する対象、又はそのような疾患若しくは障害を有する素因のある対象に、該疾患若しくは障害、又は再発した疾患若しくは障害の1以上の症状を予防し、治癒し、遅延させ、重症度を低下させ、又は改善するために、或いはそのような治療なしで予期される生存を上回って対象の生存を延長させるために、本発明の抗体又はその抗原結合断片を投与することを利用する。本明細書で使用される用語「対象」は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「イムノアドヘシン」は、Fc領域とともに結合タンパク質(例えば、受容体、リガンド、又は細胞接着分子)の機能ドメインを含む抗体様分子を指す。
【0053】
(II.FcRnアンタゴニスト)
一態様において、本発明は新規FcRnアンタゴニスト組成物を提供する。一般に、これらの組成物は未改変のFc領域と比較して、増大された親和性及び低下されたpH依存性を有する、FcRnと特異的に結合するバリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含む。これらのFcRnアンタゴニストはインビボでFc含有薬(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)とFcRnの結合を阻害し、それによりFc含有薬の分解速度が高まり、かつ同時に、これらの薬剤の血清レベルが低下する。
【0054】
本明細書は、ある単離バリアントFc領域(例えば、それぞれEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含むバリアントFc領域)がインビボにおいて同じバリアントFc領域を含む全長抗体よりも効果的なFcRnアンタゴニストであることを初めて開示する。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は全長抗体ではない。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は抗体可変ドメインを含まない。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は抗体可変ドメインもCH1ドメインも含まない。しかしながら、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は抗体可変ドメインを含む1以上の追加の結合ドメイン又は結合成分と連結されたバリアントFc領域を含むことができる。
【0055】
任意のFc領域を変化させて、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物において使用するためのバリアントFc領域を生産することができる。一般に、Fc領域又はそのFcRn結合断片は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、該Fc領域は、例えばラクダ科動物種、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)又は非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む任意の他の哺乳類種の免疫グロブリンに由来してもよいことは理解されよう。さらに、該Fc領域又はその部分は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来してもよい。特定の実施態様において、該Fc領域はIgG Fc領域(例えば、ヒトIgG領域)である。特定の実施態様において、該Fc領域はIgG1 Fc領域(例えば、ヒトIgG1領域)である。特定の実施態様において、該Fc領域はいくつかの異なるFc領域の部分を含むキメラFc領域である。キメラFc領域の適当な例は、その全体が引用により本明細書に組み込まれているUS20110243966A1に記載されている。種々のFc領域遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)が公開寄託形式で利用可能である。本発明の範囲にはFc領域の対立遺伝子、バリアント及び変異が包含されることが理解されよう。
【0056】
Fc領域はさらに切断され、又は内部が欠失されて、その最小FcRn結合断片を生産することができる。Fc領域断片のFcRnに結合する能力は、当技術分野で認識された任意の結合検定、例えばELISAを用いて決定することができる。
【0057】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストの製造性を高めるためには、構成要素であるFc領域が、ジスルフィド結合を形成していないシステイン残基を含まないことが好ましい。従って、特定の実施態様において、該Fc領域は遊離システイン残基を含まない。
【0058】
未改変のFc領域と比較して、増大された親和性及び低下されたpH依存性を有する、FcRnと特異的に結合する任意のFcバリアント又はそのFcRn結合断片は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物に使用することができる。特定の実施態様において、バリアントFc領域は所望の特性を与えるアミノ酸変化、置換、挿入及び/又は欠失を含む。特定の実施態様において、該バリアントFc領域又は断片は、それぞれEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含む。バリアントFc領域中に使用可能なアミノ酸配列の非限定的な例は、本明細書の表1に記載されている。特定の実施態様において、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は配列番号:1、2、又は3に記載されたアミノ酸配列からなる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストはバリアントFc領域からなり、ここで該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は配列番号:1、2、又は3に記載されたアミノ酸配列からなる。
【0059】
表1.バリアントFc領域の非限定的な例であるアミノ酸配列
【表1】
【0060】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、追加のFc受容体に対する変化した(例えば、増大された又は低下された)結合親和性を有する。該バリアントFc領域は1以上のFcγ受容体、例えば、FcγRI (CD64)、FcγRIIA (CD32)、FcγRIIB (CD32)、FcγRIIIA (CD16a)、及びFcγRIIIB (CD16b)に対する変化した(例えば、増大された又は低下された)結合親和性を有することができる。追加のFc受容体に対する親和性を変化させる任意の当技術分野で認識された方法を利用することができる。特定の実施態様において、バリアントFc領域のアミノ酸配列が変化させられる。
【0061】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、Kabatの文献に記載されたEU指標により番号付けされた234、235、236、239、240、241、243、244、245、247、252、254、256、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、326、327、328、329、330、332、333、及び334からなる群から選択される1以上の位置に、天然に存在しないアミノ酸残基を含む。任意に、該Fc領域は当業者に公知の追加の及び/又は代替の位置に天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれた米国特許第5,624,821号; 第6,277,375号; 第6,737,056号; PCT特許公開第WO 01/58957号; 第WO 02/06919号; 第WO 04/016750号; 第WO 04/029207号; 第WO 04/035752号及び第WO 05/040217号を参照されたい)。
【0062】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域は、Kabatの文献に記載されたEU指標により番号付けされた234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F、236E、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、2401、240A、240T、240M、241W、241 L、241Y、241E、241R、243W、243L 243Y、243R、243Q、244H、245A、247V、247G、252Y、254T、256E、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、269H、269Y、269F、269R、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、269G、297S、297D、297E、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、313F、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、及び332Aからなる群から選択される少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸残基を含む。任意に、該Fc領域は当業者に公知の追加の及び/又は代替の天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれた米国特許第5,624,821号; 第6,277,375号; 第6,737,056号; PCT特許公開第WO 01/58957号; 第WO 02/06919号; 第WO 04/016750号; 第WO 04/029207号; 第WO 04/035752号及び第WO 05/040217号を参照されたい)。
【0063】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストにおいて使用できる他の公知のFcバリアントは、限定されることなく、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれているGhetieらの文献、1997, Nat. Biotech. 15:637-40; Duncanらの文献、1988, Nature 332:563-564; Lundらの文献、1991, J. Immunol., 147:2657-2662; Lundらの文献、1992, Mol. Immunol., 29:53-59; Alegreらの文献、1994, Transplantation 57:1537-1543; Hutchinsらの文献、1995, Proc Natl. Acad Sci USA, 92:11980-11984; Jefferisらの文献、1995, Immunol Lett., 44:111-117; Lundらの文献、1995, Faseb J., 9:115-119; Jefferisらの文献、1996, Immunol Lett., 54:101-104; Lundらの文献、1996, J. Immunol., 157:4963-4969; Armourらの文献、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624; Idusogieらの文献、2000, J. Immunol., 164:4178-4184; Reddyらの文献、2000, J. Immunol., 164:1925-1933; Xuらの文献、2000, Cell Immunol., 200:16-26; Idusogie らの文献、2001, J. Immunol., 166:2571-2575; Shieldsらの文献、2001, J Biol. Chem., 276:6591-6604; Jefferisらの文献、2002, Immunol Lett., 82:57-65; Prestaらの文献、2002, Biochem Soc Trans., 30:487-490); 米国特許第5,624,821号; 第5,885,573号; 第5,677,425号; 第6,165,745号; 第6,277,375号; 第5,869,046号; 第6,121,022号; 第5,624,821号; 第5,648,260号; 第6,528,624号; 第6,194,551号; 第6,737,056号; 第6,821,505号; 第6,277,375号; 米国特許公開第2004/0002587号及びPCT公開第WO 94/29351号; 第WO 99/58572号; 第WO 00/42072号; 第WO 02/060919号; 第WO 04/029207号; 第WO 04/099249号; 第WO 04/063351号に開示されたFcバリアントを含む。
【0064】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域はヘテロ二量体であり、ここでは構成要素であるFcドメインは互いに異なっている。Fcヘテロ二量体を生産する方法は、当技術分野で公知である(例えば、その全体が本明細書に引用により組み込まれているUS 8216805を参照されたい)。特定の実施態様において、バリアントFc領域は単鎖Fc領域であり、ここで構成要素であるFcドメインはリンカー成分により一緒に連結されている。単鎖Fc領域を生産する方法は、当技術分野で公知である(例えば、それぞれその全体が本明細書に引用により組み込まれているUS20090252729A1及びUS20110081345A1を参照されたい)。
【0065】
自己免疫性疾患において観察される病原性IgG抗体は、これらの疾患の病原性の誘因となるか、又は疾患の進行に寄与し、かつ細胞のFc受容体の不適切な活性化を介して疾患の媒体となると考えられている。凝集した自己抗体及び/又は自己抗原と複合体を形成した自己抗体(免疫複合体)は、活性化したFc受容体と結合し、非常に多くの自己免疫性疾患を引き起こす(これらは部分的に自己組織に対する免疫学的に介在される炎症が原因で発生する)(例えば、それぞれその全体が本明細書に引用により組み込まれるClarksonらの文献、NEJM 314(9), 1236-1239 (2013); US20040010124A1; US20040047862A1;及びUS2004/0265321A1を参照されたい)。従って、抗体介在性障害(例えば、自己免疫性疾患)を治療するためには、有害な自己抗体を除去すること、及びこれらの抗体の活性化したFc受容体(例えば、CD16a のようなFcγ受容体)との免疫複合体相互作用を阻止することの両方が有益であろう。
【0066】
従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストのバリアントFc領域はCD16a(例えば、ヒトCD16a)への増大された結合性を示す。このことは、該FcRnアンタゴニストが、FcRnの阻害による除去の標的となる自己抗体の、免疫複合体誘発性の炎症性応答とさらに拮抗することを可能とすることにおいて特に有利である。CD16a(例えば、ヒトCD16a)に対する親和性を高める任意の当技術分野で認識された方法を利用することができる。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは(例えば、EU位置297に)N-結合型グリカンを含むバリアントFc領域を含む。このケースにおいて、グリカン構造を変化させることによりCD16aに対する該FcRnアンタゴニストの結合親和性が高まる可能性がある。Fc領域のN-結合型グリカンの変化は、当技術分野で周知である。例えば、アフコシル化N-結合型グリカン又はバイセクティングGlcNac構造を有するN-グリカンは、CD16aに対する増大された親和性を呈することが示されている。従って、特定の実施態様において、該N-結合型グリカンは、アフコシル化されている。アフコシル化は、当技術分野で認識されている任意の方法を用いて達成することができる。例えば、FcRnアンタゴニストはフコシルトランスフェラーゼを欠損した細胞中で発現させることができ、その結果フコースは、該バリアントFc領域のEU位置297のN-結合型グリカンに付加されない(例えば、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれるUS 8,067,232を参照されたい)。特定の実施態様において、N-結合型グリカンはバイセクティングGlcNac構造を有する。該バイセクティングGlcNac構造は、当技術分野で認識された任意の方法を用いて達成することができる。例えば、FcRnアンタゴニストはβ1-4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)を発現する細胞中で発現させることができ、その結果バイセクティングGlcNacは、該バリアントFc領域のEU位置297のN-結合型グリカンに付加される(例えば、その内容の全体が本明細書に引用により組み込まれているUS 8021856を参照されたい)。さらに、又はそれに代わり、該N-結合型グリカン構造の変化も、インビトロの酵素的方法により達成できる。
【0067】
特定の実施態様において、本件開示はFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで該組成物中に含まれているFcRnアンタゴニスト分子の一部は、変化したグリカン構造を含む。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、ここで該分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)がアフコシル化されたN-結合型グリカンを有するFc領域又はそのFcRn結合断片を含む。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、ここで該分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)がバイセクティングGlcNacを有するN-結合型グリカンを含むFc領域又はそのFcRn結合断片を含む。
【0068】
特定の実施態様において、該バリアントFc領域はN-結合型グリカンを含まない。このことは、当技術分野で認識された任意の方法を用いて達成できる。例えば、該FcバリアントはN-結合型糖鎖付加をすることのできない細胞中で発現させることができる。さらに、又はそれに代わって、該Fcバリアントのアミノ酸配列を(例えば、NXTシークオンの変異により)変化させて、N-結合型糖鎖付加を妨げ、又は阻害することができる。あるいは、該Fcバリアントは無細胞系において合成することができる(例えば、化学合成)。
【0069】
特定の実施態様において、共有結合によって該FcRnアンタゴニストがFcRnに特異的に結合することが妨げられないように、例えば、FcRnアンタゴニストに分子(例えば、結合又は造影成分)を共有結合させることにより、FcRnアンタゴニスト分子を改変することができる。例えば、限定する意図はないが、該FcRnアンタゴニストは糖鎖付加、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質との連結などによって改変することができる。
【0070】
特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは半減期エクステンダーと連結されたバリアントFc領域を含む。本明細書で使用される用語「半減期エクステンダー」は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストと連結した場合、FcRnアンタゴニストの半減期を増加させる任意の分子を指す。任意の半減期エクステンダーを(共有結合的にも非共有結合的にも)該FcRnアンタゴニストに連結することができる。特定の実施態様において、該半減期エクステンダーはポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストは、対象において存在する半減期エクステンダーに特異的に結合する結合分子、例えば血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、IgG、赤血球などのような、血液により運搬される分子又は細胞に連結される。
【0071】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストは優れた製造性を有する。例えば、本明細書の実施例5に示されているように、該FcRnアンタゴニストは哺乳類細胞中で高レベルに(例えば、10 Lの撹拌タンク生物反応器中のCHO細胞で6 g/Lを)発現させることができる。さらに、プロテインAによる精製後、得られた精製FcRnアンタゴニスト組成物は非常に高いパーセンテージのFcRnアンタゴニスト単量体を有し、極度に低いレベルのFcRnアンタゴニストタンパク質凝集体及び分解産物を含む。従って、特定の実施態様において、本件開示は本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで該組成物中のFcRnアンタゴニスト分子の95%超(例えば、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9%超)が単量体である。特定の実施態様において、本件開示は本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで、該組成物中のFcRnアンタゴニスト分子の5%未満(例えば、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1%未満)が凝集体中に存在する。特定の実施態様において、本件開示は本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで、該組成物はFcRnアンタゴニスト分子の分解産物を実質的に含まない。
【0072】
(III.FcRnアンタゴニストの使用)
本件開示のFcRnアンタゴニスト組成物は、Fc含有薬(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベルを低下させるのに特に有用である。従って、一態様において、本件開示は対象においてFcRn機能を阻害する方法を提供し、該方法は一般に、該対象に有効量の本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含む。
【0073】
Fc含有薬(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)の血清レベルの低下は、抗体介在性障害(例えば、自己免疫性疾患)の治療に特に適用可能である。従って、一態様において本件開示は本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を用いて抗体介在性障害(例えば、自己免疫性疾患)を治療する方法を提供する。
【0074】
任意の抗体介在性障害は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を用いて治療することができる。特定の実施態様において、該抗体介在性障害は、IVIGによる治療に適している障害である。特定の実施態様において、該抗体介在性障害は、自己免疫性疾患である。限定されない自己免疫性疾患には、同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円盤状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発ニューロパチー、免疫介在性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、実質臓器移植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症がある。
【0075】
特定の実施態様において、該自己免疫性疾患は自己免疫性チャネル病である。限定されないチャネル病には、視神経脊髄炎、ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳炎、モルヴァン症候群、及びグリシン受容体抗体関連障害がある。
【0076】
本件開示のFcRnアンタゴニスト組成物は、血清免疫グロブリンの過剰生産を特徴とする抗体介在性障害を治療するのに特に適している。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物は、高γグロブリン血症を治療するのに使用される。
【0077】
また、FcRnアンタゴニスト組成物は、1以上の追加の治療薬と組み合わせて使用することもできる。特定の実施態様において、該追加の治療薬は、抗炎症薬である。任意の炎症薬を本明細書に開示される組成物と組み合わせて使用することができる。特定の実施態様において、該治療薬はリツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロノマブ-cd3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、又はベリムマブである。特定の実施態様において、該追加の治療薬は白血球除去薬(例えば、B細胞又はT細胞除去薬)である。任意の白血球除去薬を本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物と組み合わせて使用することができる。特定の実施態様において、該白血球除去薬は、B細胞除去薬である。特定の実施態様において、該白血球除去薬は、細胞表面マーカーに対する抗体である。適当な細胞表面マーカーには、限定されることなく、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86がある。該FcRnアンタゴニスト及び追加の治療薬(複数可)は、同じ又は異なる投与経路(複数可)を介して、該対象に同時に、又は逐次的に投与することができる。
【0078】
また、本件開示のFcRnアンタゴニスト組成物は対象におけるFc含有薬の血清レベルを速やかに低下させるのにもよく適している。そのような速やかな排除は、該Fc含有薬(例えば、抗体-薬物複合体又は免疫原性の薬剤)が毒性を有するケースで有利である。それは、そのような速やかな排除により該対象の薬物への曝露が低下するためである。また、速やかな排除は、該Fc含有薬が、造影を促進する薬剤が低い血清レベルであることを要求する造影剤であるケースにおいて有利である。従って、特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニスト組成物を使用して、Fc含有薬を投与された対象における該Fc含有薬の血清レベルを低下させる。任意のFc含有薬(例えば、治療薬又は診断薬)の血清レベルを、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を用いて低下させることができる。非限定的なFc含有薬の例には、造影剤(例えば、標識化抗体)、抗体薬物複合体、又は免疫原性薬剤(例えば、非ヒト抗体又はイムノアドヘシン)がある。FcRnアンタゴニストを該Fc含有薬と同時に、又は逐次的に(例えば、該Fc含有薬の前若しくは後に)投与することができる。
【0079】
さらに、治療薬の投与が要求される疾患又は状態において、該対象はしばしば治療薬に対する抗体(例えば、抗薬物抗体)を発達させ、その結果該治療薬がその意図された治療目的に利用可能となるのを妨げ、又は該対象における有害反応を引き起こす。従ってまた、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を使用して、対象において発達する該治療薬に対する抗体(例えば、抗薬物抗体)を除去することができる。
【0080】
また、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を治療用タンパク質と組み合わせて使用して、IgGレベルを低下させることにより該治療用タンパク質の利益を高めることができる;ここで、IgG抗体は、治療用タンパク質の生物学的利用能を低下させる原因となる。特定の実施態様において、本件開示は、凝固因子に対する免疫応答に起因する障害を治療する方法を提供し、該方法は対象に治療有効量の本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を投与することを含む。適当な凝固因子には、限定されることなく、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、又はフォン・ウィルブランド因子がある。この方法を使用して、例えば血友病A又は血友病Bに罹患する患者における凝固因子に対する免疫応答を制御、又は治療、又は予防することができる。特定の実施態様において、該方法を使用して、赤芽球癆(PRCA)に罹患する患者において例えば治療用エリスロポエチンに対する免疫応答を制御し、又は治療することができる。
【0081】
FcRnは妊娠女性における胎児への胎盤を通した母から受け継いだ抗体の輸送を担う。従って、妊娠女性にFc含有薬(例えば、治療用抗体)を投与する場合、該薬剤は胎盤を通したFcRn介在性輸送の結果として胎児に接触することができる。胎児の発達に対するFc含有薬の何らかの潜在的な有害作用を回避するため、FcRn機能を阻止することは有益であろう。従って、本件開示は妊娠女性における胎児へのFc含有薬(例えば、治療用抗体)の胎盤輸送を妨げる方法を提供し、該方法は該女性に本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を該Fc含有薬と同時に、又は逐次的に(前に又は後に)投与することを含む。
【0082】
また、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を使用して、限定はされないが、喘息、潰瘍性大腸炎、及び炎症性腸症候群、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、皮膚アレルギー(蕁麻疹/蕁麻疹、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎)、食品アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、肥満細胞症を含むアレルギー、変形性関節炎、関節リウマチ、及び脊椎関節症を含む関節炎を含む炎症性障害を治療することもできる。
【0083】
疾患又は状態の治療のための遺伝子療法の実施の成功は、導入遺伝子によりコードされた治療用タンパク質並びにおそらくは導入遺伝子の送達に用いたベクターに特異的な抗体の発達により妨害され得る。従って、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物を遺伝子療法と組み合わせて投与して、IgGのレベルを低下させることにより、コードされた治療用タンパク質の利益を高めることができる。これらの方法は、IgG抗体が遺伝子療法ベクター又はコードされた治療用タンパク質の生物学的利用能を低下させる原因となる状況において特に有用である。遺伝子療法ベクターは、例えば、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスのようなウイルスベクターとすることができる。遺伝子療法を用いて治療できる疾患には、限定はされないが、嚢胞性線維症、血友病、PRCA、筋ジストロフィー、又は例えばゴーシェ病及びファブリー病のようなリソソーム蓄積症がある。
【0084】
当業者は定例の実験により、どの程度の有効で毒性のない量のFcRnアンタゴニスト組成物が抗体介在性障害の治療目的に沿うかを決定することができるだろう。例えば、治療的活性量のポリペプチドは病期(例えば、ステージI対ステージIV)、年齢、性別、医学的併発症(例えば、免疫抑制状態又は疾患)、及び対象の体重、及び該対象において所望の応答を引き起こす抗体の能力のような因子によって変化し得る。投薬レジメンは最適治療応答を提供するように調節することができる。例えば、いくつかの分割された服薬量を毎日投与してもよいし、又は該服薬量を治療状況の緊急性によって示される通りに比例的に減らしてもよい。しかし一般に、有効な投薬量は1日当たり約0.1〜10,000 mg/kg体重の範囲内、例えば1日当たり約1〜1000 mg/kg体重、約10〜500 mg/kg体重、又は約50〜250 mg/kg体重(例えば、1日当たり約70 mg/kg体重)であると予想される。
【0085】
(IV.医薬組成物)
別の態様において、本件開示は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト又はFcRnアンタゴニスト組成物及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。適当な医薬担体の例は「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(E. W. Martin編)に記載されている。賦形剤の例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを挙げることができる。また、該組成物はpH緩衝試薬、及び湿潤剤又は乳化剤も含むことができる。
【0086】
該医薬組成物はボーラス投与による非経口投与(例えば、静脈内又は筋肉内)のために製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば防腐剤の追加されたアンプル中、又は複数回投薬容器中に提示することができる。該組成物は、懸濁液、溶液、又は油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の乳剤のような形態をとることができ、かつ懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤のような配合剤(formulatory agent)を含むことができる。あるいは、活性成分は適当なビヒクル、例えばパイロジェンフリー水で構成するための粉末形態とすることができる。
【0087】
FcRnアンタゴニストは、米国特許第5,326,856号に記載されたキレート剤のようなキレート剤と連結することができる。ペプチド-キレート剤複合体を続いて放射性標識し、IgGレベルの制御を伴う疾患又は状態の診断又は治療のための造影剤を提供することができる。
【0088】
(V.FcRnアンタゴニストの生産)
一態様において、本発明は、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストをコードするポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞を提供する。また、これらのポリヌクレオチドを発現させることを含む、FcRnアンタゴニストを製造する方法も提供される。
【0089】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストをコードするポリヌクレオチドは、典型的に所望の量の請求されるFcRnアンタゴニストを生産するために使用することができる宿主細胞に導入するための発現ベクターに挿入される。従って、特定の態様において、本発明は本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター並びにこれらのベクター及びポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0090】
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、明細書及び特許請求の範囲のために、細胞中に導入し、所望の遺伝子を細胞中で発現させるための伝達手段として、本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書において使用される。当業者に公知であるように、そのようなベクターはプラスミド、ファージ、ウイルス及びレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。一般に、本発明に適合するベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子のクローニングを容易にする適当な制限部位、及び真核細胞又は原核細胞に進入し、かつ/又は該細胞中で複製する能力を含むものとする。
【0091】
多くの発現ベクター系を本発明の目的のために利用することができる。例えば、あるクラスのベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、(RSV、MMTV又はMOMLV) 又はSV40ウイルスのような動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。他のベクターは、内部リボソーム結合部位を有する多シストロン性の系の使用を伴う。さらに、該DNAをその染色体に統合した細胞は、形質移入された宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーを導入することにより選択することができる。該マーカーは、栄養要求性の宿主に原栄養性を提供し、殺生物剤(例えば、抗生物質)耐性又は銅のような重金属への耐性を提供することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現させるDNA配列に直接連結するか、又は共形質転換により同じ細胞に導入することができる。また、最適なmRNA合成のためには、追加のエレメントも必要となり得る。これらのエレメントにはシグナル配列、スプライスシグナル、並びに転写プロモータ、エンハンサ、及び終止シグナルを含むことができる。
【0092】
より一般的には、いったんFcRnアンタゴニストをコードするベクター又はDNA配列を作製すれば、この発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することができる。すなわち、該宿主細胞を形質転換することができる。該宿主細胞へのプラスミドの導入は、当業者に周知の様々な技術によって達成することができる。これらには、限定はされないが、形質移入(電気泳動法及び電気穿孔法を含む)、原形質融合、リン酸カルシウム沈殿法、エンベロープ付きDNAによる細胞融合、微量注入、及び未加工ウイルスによる感染がある。Ridgway, A. A. G.の文献「哺乳類発現ベクター(Mammalian Expression Vectors)」 24.2章, pp. 470-472 Vectors, Rodriguez及びDenhardt編 (Butterworths, Boston, Mass. 1988)を参照されたい。最も好ましくは、該宿主へのプラスミド導入は、電気穿孔法を介する。形質転換された細胞を該FcRnアンタゴニストの生産に適当な条件下で増殖させ、FcRnアンタゴニストの発現を検定する。例示的な検定技術には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は蛍光活性化細胞選別分析(FACS)、免疫組織化学などがある。
【0093】
本明細書で使用される用語「形質転換」は、遺伝子型を変化させ、結果として受容株細胞に変化をもたらす該受容株宿主細胞へのDNAの導入を指すように、広い意味で使用されるものとする。
【0094】
これらと同様に(Along those same lines)、「宿主細胞」は組換えDNA技術を用いて構築され、かつ少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターによって形質転換された細胞を指す。組換え宿主からのポリペプチドの単離方法の記載において、用語「細胞」及び「細胞培養」は、そうでないことが明示されない限り、FcRnアンタゴニストの供給源を意味するように、互換的に使用される。言い換えれば、FcRnアンタゴニストの「細胞」からの回収は、スピンダウンされた全細胞から、又は培地及び懸濁細胞の両方を含む細胞培養から回収することを意味し得る。
【0095】
一実施態様において、FcRnアンタゴニストの発現に使用される宿主細胞株は、哺乳類を起源とする;当業者は、特定の宿主細胞株内で発現させる所望の遺伝子産物に最適な該宿主細胞株を決定することができる。例示的な宿主細胞株には、限定はされないが、DG44及びDUXB11 (チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR陰性)、HELA (ヒト子宮頸癌)、CVI (サル腎臓株)、COS (SV40 T抗原を有するCVIの派生株)、R1610 (チャイニーズハムスター線維芽細胞) BALBC/3T3 (マウス線維芽細胞)、HAK (ハムスター腎臓株)、SP2/O (マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT (ウシ内皮細胞)、RAJI (ヒトリンパ球)、293 (ヒト腎臓)がある。一実施態様において、細胞株は該細胞株から発現させたFcRnアンタゴニストの糖鎖付加の変化、例えば、アフコシル化を提供する(例えば、PER.C6.RTM. (Crucell社)又はFUT8-knock-out CHO細胞株 (Potelligent(商標) Cells) (Biowa社, Princeton, N.J.))。一実施態様において、NS0細胞を使用することができる。CHO細胞は特に好ましい。宿主細胞株は典型的に商業的サービス、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Tissue Culture Collection)、又は公表文献から入手可能である。
【0096】
インビトロでの生産により、スケールアップして大量の所望のFcRnアンタゴニストを得ることが可能となる。哺乳類細胞を組織培養条件下で培養する技術は当技術分野で公知であり、例えばエアリフト反応器又は連続撹拌反応器内での均質懸濁培養、又は例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上又はセラミックカートリッジ上での固定化細胞培養若しくは捕獲細胞培養がある。必要であり、かつ/又は所望される場合、ポリペプチドの溶液を慣例のクロマトグラフィー法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロース上でのクロマトグラフィー及び/又は(免疫)アフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0097】
また、本発明のFcRnアンタゴニストをコードする遺伝子は、細菌又は酵母又は植物細胞のような非哺乳類細胞で発現させることもできる。この関連で、細菌のような様々な単細胞非哺乳類微生物;すなわち、培養又は発酵において増殖させることのできる微生物もまた形質転換させることができることが理解されよう。細菌は形質転換を受けやすく、大腸菌(Escherichia coli)又はサルモネラ(Salmonella)の菌株のような腸内細菌科のメンバー;枯草菌(Bacillus subtilis)のようなバチルス科(Bacillaceae);肺炎連鎖球菌(Pneumococcus);ストレプトコッカス属(Streptococcus)、及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が挙げられる。細菌において発現させる場合、該FcRnアンタゴニストは封入体の一部となり得ることがさらに理解されよう。該FcRnアンタゴニストは単離され、精製され、続いて機能分子へと組立てられなくてはならない。また、原核生物に加え、真核生物の微生物も使用することができる。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち一般的なパン酵母は真核微生物の中で最も一般的に使用されるが、いくつかの他の種が一般的に利用可能である。
【0098】
また、細胞ベースの発現系に加え、該FcRnアンタゴニストは無細胞法又は化学合成法を用いて生産することもできる。特定の実施態様において、該FcRnアンタゴニストはインビトロでの化学合成により生産される。
【実施例】
【0099】
(IV.実施例)
本発明は以下の実施例によりさらに例証され、これらはさらに限定するものとして解釈されるべきではない。配列表、図面並びに本願の全体を通じて引用される全ての引用文献、特許、及び公開された特許出願の内容は、明白に引用により本明細書に組み込まれる。
【0100】
(実施例1:カニクイザルにおける血清IgGレベルに対するFc-Abdegの効果)
トレーサ抗体の血清IgGレベルに対するヒト抗リゾチームIgG(HEL-Abdeg)及びそれぞれEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含むヒトIgG Fc領域(Fc-Abdeg)(Fc-Abdeg;配列番号:2)の効果をカニクイザルにおいて決定した。具体的には、カニクイザルに1 mg/kgの抗マウスCD70 hIgG1トレーサ抗体(FR70-hIgG1; Oshimaらの文献、Int Immunol 10(4): 517-26 (1998))を静脈内ボーラス投与により投与した。5分後、動物に7 mg/kg Fc-Abdeg、20 mg/kg HEL-Abdeg、又はPBSのいずれかを注入した(群当たり2個体のサル)。注入を1時間以内に実施し、動物に10 ml/kgの分量を投与した。血液試料(3×150 μl)を投薬の5分前に採取し(「投薬前」)、注入の終了から5分、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び120時間後に採取した。トレーサレベルをmCD70結合ELISAを実施することにより決定し、データを投薬終了時のトレーサレベルに対してプロットした(
図1)。また、全カニクイザルIgGレベルも決定した(
図2)。これらの実験結果はFc-Abdegが、等量のHEL-Abdegよりも効率的にトレーサ抗体を減少させたことを示している。
【0101】
IgGの再利用経路におけるその重要な役割に加え、FcRnはアルブミンの恒常性にも関係する(Chaudhuryらの文献、J Exp Med. 197(3):315-22 (2003))。FcRnはIgG-Fc及びアルブミンと異なる部位で相互作用し、結合は同時に起こり得る(Andersenらの文献、Nat Commun. 3:610 (2012))。概念上、Abdegを改変した分子を用いてIgG再循環を阻止することにより、アルブミン-FcRn相互作用が干渉されるべきでない。この仮説はマウスのインビボ試験において確かめられた。ここでは、発明者らはAbdegを備えたhIgG1分子がアルブミンレベルに何ら影響しないことを示した(Patelらの文献、J Immunol 187(2): 1015-22 (2011))。また、先に記載の実験において、注入の終了から-3日、3日及び17日後にアルブミンレベルも決定された。マウスでの試験と同様、Fc-Abdeg又はHEL-Abdeg処置後にアルブミンレベルの有意な変化は観察されなかった(
図3を参照されたい)。
【0102】
続く実験において、Fc-Abdegの抗体除去効力をIVIGと比較した。具体的には、70 mg/kg Fc-Abdeg又は2 g/kg IVIGによる投薬の2日前に1 mg/kgトレーサ抗体 (FR70-hIgG1)をカニクイザルに投与した(群当たり2個体のサル)。Fc-Abdeg及びIVIGの注入は4時間以内に実施し、動物に20 ml/kgの分量を投与した。血液試料(3×150 μl)を投薬の5分前に採取し(「投薬前」)、注入の終了から5分、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、及び168時間後に採取した。トレーサレベルをmCD70結合ELISAにより決定し、投薬前のレベルに対してプロットした(
図4)。臨床投与量(2 g/kg)のIVIG処置と比較し、70 mg/kg Fc-Abdegは有意に高められたトレーサ排除の動態を示し、またより効率的に排除することができた(Abdegについて、4日で>95%のトレーサ排除、対しIVIGについて、7日で〜75%の排除)。
【0103】
(実施例2:Fc-AbdegのヒトCD16a及びマウスCD16-2への親和性に対するアフコシル化の効果)
Fc-AbdegのhCD16aへの結合親和性を決定し、アフコシル化形態(Fc-Abdeg-POT)と比較した。同実験には、全てのFcγRに対する親和性の向上を示すFc-Abdegバリアント(「Fc-Abdeg-S239D/I332E」)を含めた。具体的には、Maxisorpプレートを100 ng/ウェルのNeutravidinビオチン結合タンパク質(ThermoScientific, 31000)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、該プレートをPBS+1%カゼインにより室温で2時間ブロッキングした。続いて、ビオチン標識hCD16a(Sino Biological社, 10389-H27H1-B)の250 ng/ml溶液(PBS+0.1%カゼイン中に希釈)100 μl/ウェルを該プレートに加え、Fc-Abdeg又はFc-Abdeg-POT分子の濃度勾配(1 μM〜0.005 nM)を適用する前に室温で1時間インキュベートし、適用してからさらに1時間インキュベートした。hCD16aへの結合はHRP結合ポリクローナルヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch社, 109-035-008)(室温で1時間インキュベート、PBS+0.1%カゼイン中に1/50,000希釈)を用いて、続いて100 μlの室温に平衡化させたTMB(SDT社試薬 #s TMB)を追加することにより検出した。プレートを10分間インキュベートし、その後100 μl 0.5 N H
2SO
4を加え、OD450nm測定を行った。EC50値をGraphPad Prismソフトウェアを用いて決定した。
図5に記載されたこれらの実験の結果は、Fc-Abdeg分子が脱フコシル化されるとhCD16aへの親和性が>30倍上昇することを示している(Fc-Abdeg-POTについてEC
50=13 nM、対しフコシル化Fc-AbdegについてEC
50>0.4 μM)。予想された通り、Fc-Abdeg-S239D/I332EバリアントのhCD16aに対する結合親和性は野生型Fc-Abdeg (EC
50=6 nM)と比較して高かった。
【0104】
先に記載の手順と類似した実験手順を用い、マウスCD16-2(Sino Biological社, 50036-M27H-B)に対する結合親和性を決定した。
図6に記載されたこれらの実験の結果は、またしても野生型Fc-Abdegと比較してアフコシル化バリアントの親和性が高いことを示している(EC
50=11 nM対EC
50>100 nM)。野生型Fc-Abdegに対するFc-Abdeg-POTバリアントのmCD16-2に対する親和性の倍数上昇は、ヒトCD16aへの結合について観察された倍数上昇と比較して低い。この効果はFc-Abdeg-S239D/I332Eバリアント(EC
50=2 nM)については観察されず、該バリアントはヒト及びマウスCD16の両方に対し野生型Fc-Abdegと比較して同程度の親和性の倍数上昇を有する(EC
50=2 nM)。
【0105】
自己抗原と複合体を形成した自己抗体は活性化したFcγRと結合し、それにより自己免疫性疾患の誘因となる。自己免疫性疾患は部分的に自己組織に対する免疫学的介在性炎症が原因で発生する。Fc-AbdegがNK細胞上で自己免疫性抗体及びFcγRIII受容体の相互作用と拮抗する能力を、2つのADCCベースの検定において評価した。
【0106】
最初に、ADCCレポーター生物検定(Promega社, G7016)を使用して、Fc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの競合的なhCD16a結合効力を分析した。具体的には、100 ng/mlの抗CD20抗体及び上昇濃度の競合因子の存在下、10,000個のCD20発現Raji細胞(標的細胞)を、60,000個のhCD16aを発現するJurkat細胞(エフェクター細胞)とともにインキュベートした。細胞を37℃で6時間インキュベートし、その後ADCC活性の規準である生物発光シグナルを測定した。ルシフェラーゼシグナルを競合因子の非存在下で100 ng/ml抗CD20により得られたシグナルに対してプロットした(
図7を参照されたい)。これらの実験はFc-Abdeg-POT及びFc-Abdeg-S239D/I332Eの両方が抗CD20誘発性のADCCシグナルを効率的に阻止し、対して野生型Fc-AbdegによるインキュベーションがJurkat細胞上に発現するhCD16aに対する競合的結合をもたらさないことを示している。
【0107】
次のADCC検定において、Fc-Abdeg及びFc-Abdeg-POTによる抗hCD70抗体(27B3-hIgG1)の溶解活性の阻害を、競合的hCD16結合の規準として試験した。具体的には、約50,000個のhCD70発現U266細胞を、50 ng/mlの抗hCD70抗体並びにFc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT及びIVIGの濃度勾配の存在下で約300,000個の健康なドナーから直前に精製したPBMC中に添加した。U266細胞を2日間インキュベートし、続く細胞溶解をU266細胞に特異的なマーカー(CD28)を用いたFACSにより分析した。
図8に記載されたこれらの実験の結果は、抗CD70抗体が効率的にU266細胞を溶解し、Fc-Abdeg-POTの追加により、この除去を用量依存的な様式で弱めることができるが、野生型Fc-Abdeg及びIVIGのいずれによってもこの除去を弱めることができないことを示している。これらのデータはFc-Abdeg POTが野生型Fc-Abdeg及びIVIGと比較して高められた競合的CD16a結合特性を有することを示している。
【0108】
(実施例3:マウス急性ITPモデル)
Fc-Abdeg、Fc-Abdeg-POT、Fc-Abdeg-S239D/I332E分子の治療効力を急性免疫性血小板減少症のマウスモデルにおいて試験した。具体的には、C57BL/6マウスを腹腔内注入によりIVIG (20 mg/動物)、Fc-Abdeg (1 mg/動物)、Fc-Abdeg-POT (1 mg/動物)、Fc-Abdeg-S239D/I332E (1 mg/動物)又は生理食塩水で処置した(5個体の動物/群)。処置前に、ベースラインの血小板数の測定のため血液試料を採取した。1時間後、マウスを5 μg/動物の抗マウス血小板抗体MWReg30 (Nieswandtらの文献、Blood 94:684-93 (1999))で処置した。血小板数を24時間にわたりモニタリングした。各マウスについて血小板数を最初の数に対して正規化し、血小板数を抗CD61染色を介したフローサイトメトリーを用いて決定した。
図9に記載されたこれらの実験の結果は、Fc-Abdegによる前処理によりMWReg30誘発性の血小板減少症が、7倍高いモル用量のIVIGと比較して同程度の効力で低下すること、並びにさらに、180分及び1440分時点における血小板数の向上から見て取れるように、Fc-Abdeg POT及びFc-Abdeg-S239D/I332EによるFcγRの阻止はこのモデルにおいて相乗的な利益的効果を有することを示している。
【0109】
(実施例4:Fc-Abdegの製造性)
Fc-Abdeg(配列番号:2を有するFcドメインを含む)を一過性形質移入によりCHO細胞(Evitria社, Switzerland)で生産した。形質移入に続き、高力価のFc-Abdegを上清中で検出した(200〜400 mg/ml)。Fc-AbdegをCHO GS-XCEED細胞株 (Lonza社, Great-Britain)に安定的に組み込んだ発現構築物から発現させた場合も、同様の良好な生産プロファイルが見られた。安定形質移入体は10 L撹拌タンク生物反応器中で、平均して3 g/L産生し、最大で6 g/LのFc-Abdegを生産するクローンがいくつか同定された。
【0110】
先述のFc-Abdeg生産ラン(production runs)のプロテインA精製後の凝集体及び分解産物の分析により、Fc-Abdegの製造性をさらに調査した。具体的には、137 μgのFc-AbdegをAktaPurifierクロマトグラフィーシステムに接続したSuperdex 200 10/300 GLゲルろ過カラム(GE Healthcare社)上に加えた。
図10に記載されたこの実験の結果は、非常に小さなパーセンテージのFc-Abdeg凝集体(〜0.5%)のみが観察され、一方Fc-Abdeg分解産物は検出されなかったことを示していた。さらに、プロテインA精製したFc-Abdegに様々なストレス条件(凍結融解、回転又は温度ストレス)を適用しても、物理化学的及び機能的特性における容易に認められる変化をもたらさなかった。まとめると、これらのデータはFc-Abdegの優れた製造性を示している。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
バリアントFc領域、又はそのFcRn結合断片を含む単離FcRnアンタゴニストであって、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が配列番号:1、2、又は3に記載されるアミノ酸配列からなり、かつ該FcRnアンタゴニストが抗体可変領域又はCH1ドメインを含まない、前記単離FcRnアンタゴニスト。
(構成2)
野生型IgG1 Fc領域のFcγ受容体に対する親和性と比較して、前記バリアントFc領域が該Fcγ受容体に対する増大された親和性を有する、構成1記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成3)
バリアントFc領域、又はそのFcRn結合断片を含む単離FcRnアンタゴニストであって、該Fc領域のFcドメインがそれぞれEU位置252、254、256、433、434、及び436にアミノ酸Y、T、E、K、F、及びYを含み、かつ野生型IgG1 Fc領域のFcγ受容体に対する親和性と比較して、該Fc領域が該Fcγ受容体に対する増大された親和性を有する、前記単離FcRnアンタゴニスト。
(構成4)
前記Fc領域がIgG Fc領域である、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成5)
前記Fc領域がIgG1 Fc領域である、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成6)
前記Fc領域がキメラFc領域である、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成7)
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1、2、又は3に記載されるアミノ酸配列を含む、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成8)
前記バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1、2、又は3に記載されるアミノ酸配列からなる、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成9)
バリアントFc領域からなり、該バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列が配列番号:1、2、又は3に記載されるアミノ酸配列からなる、構成3記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成10)
抗体可変領域又はCH1ドメインを含まない、構成2〜9のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成11)
遊離システイン残基を含まない、構成1〜10のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成12)
前記バリアントFc領域が、CD16aに対する増大された親和性を有する、構成1〜11のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成13)
前記バリアントFc領域のFcドメインが、EU位置297にN-結合型グリカンを含まない、構成1〜12のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成14)
前記バリアントFc領域のFcドメインが、EU位置297にアフコシル化N-結合型グリカンを有するFcドメインを含む、構成1〜12のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成15)
前記バリアントFc領域のFcドメインが、該FcドメインのEU位置297にバイセクティングGlcNacを有するN-結合型グリカンを含む、構成1〜12のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成16)
前記バリアントFc領域が、半減期エクステンダーに連結されている、構成1〜15のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成17)
前記半減期エクステンダーがポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである、構成16記載のFcRnアンタゴニスト。
(構成18)
構成14記載の複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物であって、該分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)がバリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含み、アフコシル化N-結合型グリカンを含む、前記FcRnアンタゴニスト組成物。
(構成19)
構成15記載の複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物であって、該分子の少なくとも50%(任意に、少なくとも60、70、80、90、95、又は99%)がバリアントFc領域又はそのFcRn結合断片を含み、バイセクティングGlcNacを有するN-結合型グリカンを含む、前記FcRnアンタゴニスト組成物。
(構成20)
構成1〜19のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニスト又はFcRnアンタゴニスト組成物、及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
(構成21)
対象に有効量の構成20記載の医薬組成物を投与することを含む、該対象においてFcRnの機能を阻害する方法。
(構成22)
Fc含有薬を投与された対象において該Fc含有薬の血清レベルを低下させる方法であって、対象に有効量の構成20記載の医薬組成物を同時に又は逐次的に投与することを含む、前記方法。
(構成23)
前記Fc含有薬が抗体又はイムノアドヘシンである、構成22記載の方法。
(構成24)
前記Fc含有薬が治療薬又は診断薬である、構成22記載の方法。
(構成25)
前記Fc含有薬が造影剤である、構成22記載の方法。
(構成26)
前記Fc含有薬が抗体薬物複合体である、構成22記載の方法。
(構成27)
対象に有効量の構成20記載の医薬組成物を投与することを含む、該対象における抗体介在性障害を治療する方法。
(構成28)
前記抗体介在性障害が自己免疫性疾患である、構成27記載の方法。
(構成29)
前記自己免疫性疾患が同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、拡張型心筋症、円盤状ループス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgM多発ニューロパチー、免疫介在性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、硬化性苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、実質臓器移植拒絶反応、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ヘルペス状皮膚炎脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される、構成28記載の方法。
(構成30)
前記抗体介在性障害が静注用免疫グロブリン(IVIG)、血漿交換及び/又は免疫吸着を用いて治療することができる、構成27記載の方法。
(構成31)
前記自己免疫性疾患が自己免疫性チャネル病である、構成27記載の方法。
(構成32)
前記チャネル病が、自己免疫性辺縁系脳炎、癲癇、視神経脊髄炎、ランバート・イートン筋無力症症候群、重症筋無力症、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、抗α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体脳炎、モルヴァン症候群、神経性筋強直症、連鎖球菌感染関連小児自己免疫性精神神経障害(PANDAS)、及びグリシン受容体抗体関連障害からなる群から選択される、構成31記載の方法。
(構成33)
前記抗体介在性障害が高グロブリン血症である、構成27記載の方法。
(構成34)
前記FcRnアンタゴニストが追加の治療薬とともに同時に、又は逐次的に前記対象に投与される、構成27記載の方法。
(構成35)
前記追加の治療薬が抗炎症薬である、構成34記載の方法。
(構成36)
前記追加の治療薬が白血球除去薬である、構成34記載の方法。
(構成37)
前記白血球除去薬がB細胞除去薬である、構成36記載の方法。
(構成38)
前記B細胞除去薬が抗体である、構成37記載の方法。
(構成39)
前記抗体がCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、又はCD86と特異的に結合する、構成38記載の方法。
(構成40)
前記追加の治療薬が、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロノマブ-CD3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、ベリムマブ、又はそれらの組合せである、構成34記載の方法。
(構成41)
構成1〜19のいずれか1項記載のFcRnアンタゴニストをコードする、核酸分子。
(構成42)
構成41記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
(構成43)
構成42記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(構成44)
FcRnアンタゴニストが発現するような条件で、構成43記載の宿主細胞を培養することを含む、FcRnアンタゴニストの生産方法。