【実施例】
【0016】
(第1実施例)
次に、第1実施例におけるスピーカ装置について
図1を参照して説明する。
【0017】
同図に示すように、スピーカ装置1は、磁気ギャップGが形成された磁気回路2と、磁気回路2が連結されるフレーム3と、磁気ギャップG内に挿入されたボイスコイル4と、ボイスコイル4を支持するコイルボビン(ボイスコイル支持部)5と、コイルボビン5を振動自在に支持するダンパ6と、振動板及びキャップ(何れも図示せず)と、ケース7と、を備えている。
【0018】
本実施例における磁気回路2は、外磁型磁気回路であり、磁石21と、磁石21の一極が磁気的に結合されたプレート22と、磁石21の他極が磁気的に結合されたヨーク23と、メッシュ24と、を有している。
【0019】
磁石21は、円板状に設けられ、中央に貫通孔21aが設けられている。
【0020】
プレート22は、円板状に設けられ、磁石21の音放射方向Y1側(=一極側)の面に重ねられ、接着剤などにより固定される。このプレート22にも、中央に貫通孔22aが設けられている。
【0021】
ヨーク23は、上記磁石21、プレート22の貫通孔21a、22aに挿入される筒状のヨーク本体23aと、ヨーク本体23aから外側に向かって突設されたフランジ部23bと、が形成されている。上述したプレート22の貫通孔22aの内周面と、貫通孔22aに挿入されたヨーク本体23aと、の間に磁気ギャップGが形成される。この磁気ギャップGは、音放射方向Y1側及びその逆方向Y2側が開口されている。
【0022】
フランジ部23bは、ヨーク本体23aの逆方向Y2側の端部から外側に向かって突出する内周部23b1と、内周部23b1の外側の端部から音放射方向Y1に向かって立設し、音放射方向Y1に向かうに従ってヨーク本体23aから離れる傾斜部23b2と、傾斜部23b2の音放射方向Y1側の端部から外側に向かって突出して形成された(即ち内周部23b1と平行に形成された)外周部23b3と、を備えている。上記内周部23b1は、後述するケース7の底部71上に搭載され、傾斜部23b2及び外周部23b3は、後述するケース7から離隔して設けられている。上記外周部23b3には、磁石21の逆方向Y2側(=他極側)の面が重ねられ、接着剤などにより固定される。
【0023】
メッシュ24は、ヨーク本体23aの音放射方向Y1側における端部に取り付けられ、フレーム3内への砂塵の侵入を防止する。なお、上記磁石21の外径(又は幅)は、プレート22の外径(又は幅)やヨーク23のフランジ部23bの外径(又は幅)よりも大きく形成されている。このため、磁石21は、プレート22やヨーク23よりも後述するケース7側に突出している。
【0024】
フレーム3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS等の樹脂から構成され、底部31と、底部31の縁端部から音放射方向Y1に向かって立設された外周部32と、を有している。
【0025】
フレーム3の底部31は、円形に設けられ、その中央に形成された貫通孔31aと、貫通孔31aを囲む複数の連結孔31bと、連結孔31bの外側にさらに形成された複数の孔部31cと、が設けられている。貫通孔31aには、ヨーク本体23a及び後述するコイル支持部5が挿入される。このため、磁気ギャップGの開口がフレーム3の底部31に設けた貫通孔31aに連通している。よって、フレーム3内に砂塵が侵入すると、底部31に設けた貫通孔31aを通って磁気ギャップG内に砂塵が侵入する恐れがある。
【0026】
連結孔31bは、磁気回路2をフレーム3に連結するための孔であり、この連結孔31bには、プレート22から突出した凸部22bが挿入される。この凸部22bの頭部を潰すことにより、磁気回路2がフレーム3に連結する。フレーム3の底部31において、プレート22(磁気回路2)と接している部分が連結部となる。複数の孔部31cは、フレーム3の底部31の連結部よりも外側に形成され、磁気回路2に向かって開口している。この複数の孔部31cから磁気回路2に空気が送り込まれ、磁気回路2が冷却される。
【0027】
フレーム3の外周部32は、第1傾斜部32aと、ダンパ取付部32bと、第2傾斜部32cと、振動板取付部32dと、を備えている。第1傾斜部32aは、底部31に連なり、音放射方向Y1に向かうに従って外径(又は幅)が大きくなるように設けられている。これにより、第1傾斜部32aの外側面に、音放射方向Y1に向かうに従って外径(又は幅)が大きくなる傾斜面32a1が設けられる。ダンパ取付部32bは、第1傾斜部32aの音放射方向Y1側の端部から外側に突出して形成され(即ち底部31と略平行に形成され)、後述するダンパ6の外周縁(縁端部)が取り付けられる。第2傾斜部32cは、ダンパ取付部32bの外側の端部から音放射方向Y1に向かって立設し、音放射方向Y1に向かうに従って外径(又は幅)が大きくなるように設けられている。振動板取付部32dは、第2傾斜部32cの音放射方向Y1側の端部から外側に突出して形成され(即ち底部31と略平行に形成され)、後述する図示しない振動板の外周縁(縁端部)が取り付けられる。
【0028】
ダンパ6よりも磁気回路2側にある、フレーム3の外周部32の一部(即ち第1傾斜部32a)は、開口が設けられていない連続面である。ダンパ6よりも磁気回路2から離れた側にある、フレーム3の外周部32の一部(即ち第2傾斜部32c)には、図示しない振動板の背圧を逃がすため複数の開口32eが設けられている。
【0029】
コイル支持部5は、筒状に設けられ、その外側面にコイル4が巻かれている。ダンパ6は、弾性部材により円形に形成され、外から中心に向かって蛇腹状に形成されている。このダンパ6の中央には、ボイスコイル4を挿入する貫通孔6aが設けられ、コイル支持部5は、このダンパ6の貫通孔6aの内側面に接着剤などにより固定される。また、ダンパ6の外周縁(縁端部)は、フレーム3のダンパ取付部32bの内側面に接着剤などにより固定される。
【0030】
図示しない振動板は、紙、ポリエーテルイミドなどの樹脂などで形成され、中央に貫通孔が形成された円形に設けられている。この振動板の貫通孔の内側面には、コイル支持部5が接着剤などにより固定される。また、振動板の外周縁(縁端部)は、フレーム3の振動板取付部32dの内側面に接着剤等により固定される。図示しないキャップは、図示しない振動板の中央に設けた貫通孔から突出するコイル支持部5を覆うように振動板に固定される。これにより、コイル4に電流を流すと、磁気回路2の磁力により、コイル支持部5が振動し、図示しない振動板が振動して、音が放射される。
【0031】
ケース7は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS等の樹脂から構成され、磁気回路2及びフレーム3を覆い、フレーム3側に向かって(音放射方向Y1側)開口されている。ケース7は、底部71と、底部71の周縁(縁端部)から立設された外周部72と、を有している。ここで、ケース7により、磁気回路2の一部又は全体が覆われていてもよい。磁気回路2に砂塵が侵入することを抑制する点で、
図1に示すようなフレーム3と対面していない、外部と対面する磁気回路2の外周面にケース7が対向するように、ケース7が磁気回路2の一部を覆っていることが好ましい。また、ケース7により、フレーム3の全体が覆われている又は、
図1に示すようなフレーム3の一部が覆われている場合であってもよい。
【0032】
底部71には、上述した磁気回路2が搭載され、筒状のヨーク本体23aの孔と連通する連通孔71aが設けられている。
【0033】
ケース7の外周部72は、フレーム3に設けた複数の孔部31cよりも音響放射側まで立設されている。また、この外周部72の縁端部72cは、孔部31cよりも外側で音響放射側にある。ケース7の外周部72とフレーム3の外周部32との間には、第1間隙S1が形成されている。この第1間隙S1とケース7の開口とは連通している。また、ケース7の外周部72は、磁気回路2との間に第2間隙S2が形成され、第1間隙S1及び第2間隙S2は、ケース7の開口から底部71まで連続して形成されている。
【0034】
ケース7の外周部72は、第1傾斜部72aと、第2傾斜部72bと、を備えている。第1傾斜部72aは、底部71と連なり、底部71から離れるに従って外径(又は幅)が大きくなるように設けられている。第2傾斜部72bは、第1傾斜部72aに連なり、第1傾斜部72aと底部71との傾斜角度より大きい傾斜角度で設けられている。この第2傾斜部72bの縁端部が、フレーム3の外周部32の傾斜面32a1に対向している。これにより、第1間隙S1は砂塵の侵入口である開口側が一番狭く設けられ、逆方向Y1に向かうに従って広くなる。
【0035】
また、上述したように磁石21は、プレート22及びヨーク23よりも外側に突出して設けられている。これにより、第2間隙S2は、中間位置(ケース7の外周部72と磁石21との間の位置)では狭く、底部71側(ケース7の外周部72とヨーク23のフランジ部23bとの間の位置)は広くなる。また、フレーム3の外周部32とフランジ傾斜部23b2との間の第2間隙S2は、底部71に近づくに従って大きくなる。このフレーム3とヨーク23のフランジ部23bとの間の空間がケース7開口から侵入してきた砂塵を収容する収容部8となる。
【0036】
上述した構成のスピーカ装置1によれば、磁気回路2を冷却するためにフレーム3の底部31に孔部31cを設ける必要がある。本実施例では、磁気回路2及びフレーム3を覆うケース7を設け、ケース7の外周部72の縁端部72cを複数の孔部31cよりも音放射方向Y1側まで立設し、ケース7の外周部72とフレーム3の外周部32との間に第1間隙S1が形成され、第1間隙S1とケース7の開口とが連通している。
【0037】
これにより、砂塵(特に砂鉄)の磁気ギャップGへの侵入経路としては、砂塵が逆方向Y2側に向かって進みケース7の開口から第1間隙S1に侵入し、その後、方向を変えて音放射方向Y1に向かって進んで孔部31cからフレーム3内に侵入し、フレーム3内から磁気ギャップGに侵入する経路となる。このため、砂塵がフレーム3内に侵入しにくく、磁気ギャップGへの砂塵の侵入を抑制できる。しかも、ケース7の開口から侵入した砂塵(特に砂鉄)は、フレーム3に連結された磁気回路2にくっつくため、より一層、フレーム3内に侵入しにくく、磁気ギャップGへの砂塵の侵入を抑制できる。
【0038】
また、フレーム3の開口は、ダンパ6や図示しない振動板、ギャップにより塞がれ、ダンパ6より磁気回路2側にあるフレーム3の外周部32(即ち第1傾斜部32a)は、開口が設けられていない連続面で形成されている。これにより、ダンパ6より磁気回路2側のフレーム3内への砂塵の侵入口を孔部31cに限定でき、より一層、磁気ギャップGへの砂塵(特に砂鉄)の侵入を抑制できる。
【0039】
また、上述したスピーカ装置1によれば、ケース7の外周部72の縁端部72cは、フレーム3の傾斜面32a1に対向している。これにより、砂塵の侵入口であるケース7開口側の第1間隙S1を狭くすることができ、ケース7内への砂塵の侵入を抑制して、より一層、磁気ギャップGへの砂塵の侵入を抑制できる。
【0040】
また、上述したスピーカ装置1によれば、フレーム3の外周部32は、磁気回路2との間に第2間隙S2が形成され、第1間隙S1及び第2間隙S2は、ケース7の底部71まで連続して形成されている。これにより、ケース7の開口から第1間隙S1内に侵入した砂塵は、そのまま逆方向Y2に進んで第2間隙S2を通り底部71まで侵入して収容部8内にためられる。これにより、ケース7の開口から侵入した砂塵が孔部71cから離れたケース7の底部71まで侵入するため、底部71まで侵入した砂塵がフレーム3の孔部31cに向かって吸い込まれることを抑制できる。
【0041】
また、上述したスピーカ装置1によれば、磁気回路2の磁石21が、プレート22及びヨーク23よりケース7側に向かって突出している。これにより、上述したように第2間隙S2は、中間部では狭く、底部71側で広く設けられる。このように、第2間隙S2の中間部を狭く設けることにより、ケース7の開口から侵入し、第2間隙S2の中間部を通りケース7の底部71まで侵入して収容部8にためられた砂塵が再び狭い第2間隙S2の中間部を通ってフレーム3の孔部31cに向かって吸い込まれることをより一層抑制できる。
【0042】
(第2実施例)
次に、第2実施例におけるスピーカ装置1について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2及び
図3においては、第1実施例で既に説明した
図1に示すスピーカ装置1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施例と第2実施例とで異なる点は、フレーム3の形状である。第1実施例では、プレート22の外径(又は幅)をフレーム3の底部31の外径(又は幅)よりも小さくし、底部31に孔部31cを設けていた。
【0043】
これに対して第2実施例では、
図2に示すようにプレート22の外径(又は幅)をフレーム3の底部31の外径(又は幅)と同じか、または、大きくしている。この場合、底部31に孔部31cを設けてもプレート22により塞がれ、空気を磁気回路2内に送り込むことが難しい。そこで、第2実施例では、底部31の外周縁部を音響放射側又はダンパ6側に向かってへこませた凹部31fを複数設け、この凹部31fの上面部31gに孔部31cを設けている。この孔部31cは、凹部31fの開口を介して外部と連通している。また、この孔部31cの周囲の一部は凹部31fを形成する側面により囲まれている。これにより、孔部31cがプレート22に塞がれて空気を送り込むことが困難になることを抑制できる。しかも、第2実施例のように凹部31fに孔部31cを設けることにより、凹部31fを形成する側面が壁となり、孔部31cへの砂塵の侵入経路を狭くして、より孔部31cからフレーム3内への砂塵の侵入を抑制することができる。
【0044】
なお、上述した第1及び第2実施例によれば、ケース7の外周部72と磁気回路2との間にも第2間隙S2が設けられていたが、これに限ったものではない。砂塵の程度によってはケース7の外周部72とフレーム3の外周部32との間の第1間隙S1だけが設けられていてもよい。
【0045】
また、上述した第1及び第2実施例によれば、フレーム3の外周部32に傾斜面32a1を設け、ケース7の外周部72の開口側の端部を傾斜面32a1に対向させていたが、これに限ったものではない。フレーム3の外周部32に傾斜面32a1を設けることは必須ではなく、底部31に対して垂直な面であってもよい。
【0046】
また、上述した第1及び第2実施例によれば、磁石21をヨーク23及びプレート22よりケース7側に突出させることにより、第2間隙S2を、中間部では狭く、底部71側では広く設けていたが、これに限ったものではない。ケース7の外周部72の中間部を内側へこませて、第2間隙S2を、中間部では狭く、底部71側では広く設けてもよい。
【0047】
また、上述した第1及び第2実施例によれば、第2間隙S2は、中間位置では狭く、底部71側では広く設けていたが、これに限ったものではない。第2間隙S2は、底部71まで同じ寸法で設けてもよい。
【0048】
また、上述した第1及び第2実施例によれば、磁気回路2は外磁型磁気回路であったが、これに限ったものではない。内磁型磁気回路であってもよい。内磁型磁気回路を採用する場合には、磁石及びプレートよりヨークの外周部をケース側に突出させることで、第2間隙2Sの中間部を狭く、底部71側にある第2間隙2Sの一部を広くすることができる。
【0049】
スピーカ装置1の搭載例としては、車両のトランクルームに配置されることが挙げられる。この場合、スピーカ装置1は、例えば音放射方向Y1が車両の天井又は運転者等の乗員に向くように配置される。
【0050】
また、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。磁石21、プレート22は同心状に形成できる。底部71に対する第2傾斜部72bの傾斜角度を略垂直にしても構わない。孔部31cの形状を、真円、楕円、トラック形状、正方形、長方形などの矩形など、任意の形状にしても構わない。