(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554544
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】圧力降下可変型の喫煙具
(51)【国際特許分類】
A24D 3/04 20060101AFI20190722BHJP
A24D 1/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
A24D3/04
A24D1/02
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-536013(P2017-536013)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2018-500916(P2018-500916A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015080642
(87)【国際公開番号】WO2016110404
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年9月29日
(31)【優先権主張番号】15150264.8
(32)【優先日】2015年1月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松浦 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】トリッツ,フランツヨゼフ
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/140216(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/053813(WO,A1)
【文献】
特表2013−523110(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02777409(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00− 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙具の製造方法であって、
第1及び第2のセグメントを有するフィルタ材のプラグを備えたフィルタ部材を供給する工程であって、ここで前記両セグメントは共通の長手方向軸に沿って配置され、該第1のセグメントは該第2のセグメントに対し、該長手方向軸の周りに2つの終端地点間で回動可能とする工程と、
前記フィルタ部材の一端を、該フィルタ部材の前記長手方向軸の周りに互いに回動可能な第1及び第2のセクションを有する包装材と合わせて喫煙材のロッドに取り付ける工程であって、ここで前記第1のセクションは前記第1のセグメントを被覆し、該第1のセクションは重複領域内において前記第2のセグメントを部分的に被覆し、前記第2のセクションは該第2のセグメントの残余部を被覆し、該第1及び第2のセクションは各々該第1及び第2のセグメントに接着されるが、該第1のセクションは前記重複領域において前記プラグに接着されない工程と、
前記第1のセグメントと第1のセクションとを、前記第2のセグメントと第2のセクションとに対し、前記2つの終端地点のうちの一方である第1の終端地点まで回動させる工程と、
前記第1のセグメントが前記第1の終端地点まで回動された時に、前記第1のセクションと前記フィルタ材とを前記重複領域において穿孔し、該第1の終端地点において通気量を最大とし、前記2つの終端地点のうちの前記第1の終端地点とは異なる方である第2の終端地点で通気量を最小とする様な通気オリフィスを形成する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記包装材の外面に強度インジケータをマーキングする工程を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強度インジケータは、前記第1及び第2のセグメントが前記第1の終端地点に位置している時に味強度を最小とし、該第1及び第2のセグメントが前記第2の終端地点に位置している時に味強度を最大とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強度インジケータは、包装紙の対向する各セクションに形成されたスケールと対応するポインタとを備え、前記第1のセグメントが前記第2のセグメントに対して前記2つの終端地点間で回動することにより、該ポインタが該スケールの全長に亘って移動可能である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記通気オリフィスを形成する工程の後に、前記第1のセグメントと第1のセクションとを前記第2のセグメントと第2のセクションとに対して前記第2の終端地点まで回動させる工程を更に含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記2つの終端地点間の回動角が40〜100°、好ましくは50〜80°の範囲である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記通気オリフィスがスリットである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スリットの長さが2〜6mmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルタ材のプラグがプラグラップの外層を備え、前記通気オリフィスが該プラグラップの通孔からなる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラグラップが多孔性又は非多孔性のプラグラップである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルタ材のプラグが酢酸セルロース及び/又は紙である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
通気オリフィスは少なくとも2つ、好ましくは3つ形成され、個々の通気オリフィスは前記第1の終端地点で通気量を最大、前記第2の終端地点で通気量を最小とする如く構成された、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルタ部材を供給する工程は更に、
フィルタ材の円筒形のプラグに、長手方向軸を横切る方向に部分的な切込みを入れることにより第1及び第2のセグメントを形成する工程であって、該第1及び第2のセグメントはこれら両者間の長手方向に延在する共通の芯の周りに相互に回動可能とする工程を備え、
前記フィルタ部材を取り付ける工程は更に、前記プラグを包装材で被覆し、該包装材に周回する切込みを入れることにより、該包装材に第1及び第2のセクションを形成する工程を備える、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙具と喫煙具の製造方法に関し、特に、フィルタ通過時の圧力降下を変化させる機構を設けることで、吸入するタバコスモークと空気の比率をユーザー側で変更可能としたフィルタ部材を備える喫煙具に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙具用のフィルタ部材は言うまでも無くよく知られている。また、フィルタ通過時の圧力降下を変化させる機構を設け、吸入するタバコスモークと空気の比率をユーザー側で変更可能とする手段を備えたフィルタ部材を提供することもよく知られている。かかる構成の一例が米国特許第4570649号に開示されている。この構成によれば、フィルタの通気量、ひいては喫煙具のスモーク濃度とタール送達量とを変化させることができ、タール送達量またはフレーバー濃度を最大化又は最小化することができる。上記フィルタ部材は通常、フィルタの一部分を残余の部分に対して左右いずれかへ約45°回すことにより最小状態から最大状態への調節が行える構成とされている。したがって、包装紙の外面に「MIN(最小)」の表示があり、その両側に2つの「MAX(最大)」の表示がある。
【発明の概要】
【0003】
このようなフィルタ部材を内蔵した喫煙具は、しばしば圧力降下可変型(VPD: variable pressure drop)シガレットと呼ばれる。しかし、第二のMAXが設けられていることでVPDシガレットの使い方が解りにくくなっている実態が消費者調査で明らかとなった。このため、第二のMAXを廃止して、フィルタを1ヶ所のMAXと1ヶ所のMINの2点間のみでシンプルに調節する方が好ましいと考えられる。その為には、以下に述べるような新しいタイプの喫煙具が必要である。
【0004】
本発明の第1の側面によれば、喫煙具の製造方法であって、
第1及び第2のセグメントを有するフィルタ材のプラグを備えたフィルタ部材を供給する工程であって、ここで上記両セグメントは共通の長手方向軸に沿って配置され、上記第1のセグメントは上記第2のセグメントに対し、上記長手方向軸の周りに2つの終端地点間で回動可能とする工程と、
上記フィルタ部材の一端を、上記フィルタ部材の上記長手方向軸の周りに互いに回動可能な第1及び第2のセクションを有する包装材と合わせて喫煙材のロッドに取り付ける工程であって、ここで上記第1のセクションは上記第1のセグメントを被覆し、上記第1のセクションは重複領域内において上記第2のセグメントを部分的に被覆し、上記第2のセクションは上記第2のセグメントの残余部を被覆し、上記第1及び第2のセクションは各々上記第1及び第2のセグメントに接着されるが、上記第1のセクションは上記重複領域において上記プラグに接着されない工程と、
上記第1のセグメントと上記第1のセクションとを、上記第2のセグメントと上記第2のセクションとに対し、上記第1の終端地点まで回動させる工程と、
上記第1のセグメントが上記第1の終端地点まで回動された時に、上記第1のセクションと上記フィルタ材とを上記重複領域において穿孔し、上記第1の終端地点において通気量を最大とし、上記第2の終端地点で通気量を最小とする様な通気オリフィスを形成する工程と、
を備える方法が提供される。
【0005】
この様にして、スモーク濃度を1ヶ所の最大フレーバー状態と最小フレーバー状態の2点間のみで調節できるフィルタ部材を備える喫煙具の製造方法が提供される。こうして、より使いやすいVPDシガレットを生産することができる。そのためには、現行の製造方法を若干変更し、通気オリフィスを2つの終端地点の中間に形成するのではなく、通気オリフィスを形成する前に先ずフィルタプラグを第1の終端地点 (これ以上には安全に回動できない地点)まで捻っておく。この方法は、既存の製造プロセスに追加工程を発生させるが、それでも最小限の追加コストで実施できる。一例において、上記第1及び第2の終端地点は、上記第1のセクションとセグメントとをその共通の長手方向軸の周りに相互に捻った(回動させた)時に、捻りに対する抵抗が有意に及び/又は急激に増加することをもって規定される。この抵抗の増大は、第1セグメントと第2のセグメントとを繋ぐフィルタ部材の共通の未切断部分がその材料強度の限界に近づくことに伴うもので、この限界点を超えるとフィルタ部材の破壊が始まる。
【0006】
上記方法は、包装材の外面に強度インジケータをマーキングする工程を更に備えることが好ましい。この強度インジケータは、通気オリフィスがどのくらい開き、或いは閉じているかをユーザーが視認し、ひいてはフィルタを通じて送達されるスモークの濃度(「フレーバー」又タールと称する場合もある)を知る手段を提供する。強度インジケータは、上記第1及び第2のセグメントが第1の終端地点に位置している時は最小の味強度を、又、該第1及び第2のセグメントが第2の終端地点に位置している時は最大の味強度を示すことが好ましい。更に、強度インジケータは包装紙の対向する各セクションに形成されたスケールとこれに対応するポインタを備えることが好ましく、上記第1のセグメントが上記第2のセグメントに対して2つの終端地点間で回動することにより、該ポインタが該スケールをその全長に亘って移動可能である。上記スケールは如何なる種類の印であってよく、色や数字による識別体系が例示される。
【0007】
上記方法は更に、上記通気オリフィスを形成する工程の後に、上記第1のセグメントと上記第1のセクションとを上記第2のセグメントと上記第2のセクションとに対して上記第2の終端地点まで回動させる工程を更に含むことが好ましい。この工程をもって喫煙具の製造プロセスは終了するが、この喫煙具はパッケージングされユーザーに販売される時点で最大濃度のタールを送達できる状態とされる。2つの終端地点間の回動角は40〜100°であることが好ましく、50〜80°であることがより好ましい。
【0008】
上記通気オリフィスは、スリットであることが好ましい。更に、スリットの長さが2〜6mmであることが好ましい。フィルタ材のプラグはプラグラップの外層を備えてよく、上記通気オリフィスが該プラグラップの通孔を備えてよい。このプラグラップは多孔性又は非多孔性のプラグラップであってよい。更に、上記フィルタ材のプラグは酢酸セルロース及び/又は紙であることが好ましい。
【0009】
上記通気オリフィスは少なくとも2つ、好ましくは3つ形成され、個々の通気オリフィスは前記第1の終端地点で通気量を最大、前記第2の終端地点で通気量を最小とする如く構成される。但し、通気オリフィスの数は3つ以下であることが好ましい。
【0010】
フィルタ部材を供給する工程は、前記フィルタ材の円筒形のプラグに、その長手方向軸を横切る方向に部分的に切込みを入れることにより前記第1及び第2のセグメントを形成する工程であって、該第1及び第2のセグメントはこれら両者間の長手方向に延在する共通の芯の周りに相互に回動可能である様な工程を備えることが好ましい。前記フィルタ部材を取り付ける工程は更に、プラグを包装材で被覆し、該包装材を周回する切込みを入れることにより、該包装材に第1及び第2のセクションを形成する工程を備えることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の側面によれば、包装材によりフィルタ部材に取り付けられた喫煙材ロッドを備えた喫煙具であって、
上記フィルタ部材は、第1及び第2のセグメントを有するフィルタ材プラグを備え、上記両セグメントは共通の長手方向軸に沿って配置され、上記第1のセグメントは上記第2のセグメントに対し、上記長手方向軸の周りに2つの終端地点間を回動可能であり、上記フィルタ部材は更に、上記フィルタ部材の上記長手方向軸の周りに相互に回動可能な第1及び第2のセクションを有する包装材を備え、上記第1のセクションは上記第1のセグメントを被覆し、上記第1のセクションは重複領域内において上記第2のセグメントを部分的に被覆し、上記第2のセクションは上記第2のセグメントの残余部を被覆し、上記第1及び第2のセクションは各々上記第1及び第2のセグメントに接着されているが、上記第1のセクションは上記重複領域において上記プラグに接着されておらず、
上記フィルタ部材は更に、上記第1の終端地点で通気量を最大とし、上記第2の終端地点で通気量を最小とする如く構成された通気オリフィスを備える、喫煙具が提供される。
【0012】
上記喫煙具は上記包装材の外面に形成された強度インジケータを更に備えることが好ましく、上記強度インジケータは前記第1及び第2のセグメントが第1の終端地点に位置している時に最小の味強度状態を示し、該第1及び第2のセグメントが第2の終端地点に位置している時に最大の味強度状態を示すことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の一例を、その製造方法と共に、添付図面を参照しながら説明する。
【
図3】本発明の喫煙具用のフィルタ部材の中央部を示す模式図である。
【
図5】従来の圧力降下可変型シガレットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜3に示す様に、フィルタ付きシガレット1はタバコロッド2と、共通の長手方向軸に沿って配されたフィルタ部材3とを備える。このフィルタ部材3は、ユーザーがその通気量を調節することでシガレット1の味強度を変更できる構成とされている。当該フィルタ部材3は酢酸セルロースのトウ等のフィルタ材からなる円筒形のプラグを備え、該プラグはその外表面に沿って延在するプラグラップ4を備える。該プラグラップは実質的に空気不透過性(即ち「非多孔性」)である。
【0015】
上記フィルタ部材3は、これを周回する横断的な切込み7により、第1のセグメント5(又は「吸い口側フィルタセグメント」)と、第2のセグメント6(又は「タバコ側フィルタセグメント」)とに分割されており、該切込み7は上記シガレットの長手方向軸に対して垂直である。この切込み7は、
図3に示す様に、2つのセグメント5,6間でフィルタ材の中心結合部材、即ち「芯」15を残す如く、フィルタプラグ4の直径の一部のみに施されている。この結合部材15は、セグメント5,6が相対的に回動してフィルタ通気量を変化させる際の回転軸として上手く機能する。上記第1のセグメント5は上記第2のセグメント6に対し、その長手方向軸の周りに、ニュートラル位置(プラグが捻られていない)から時計回りに回動して第1の終端地点に到達するか、又は反時計回りに回動して第2の終端地点に到達する。この第1のセグメント5は、(例えば芯15の部分で)プラグが損傷又は破壊するほどの過剰な力を加えない限り、いずれかの終端地点を超えて回動することはできない。
【0016】
セグメント5,6上には包装材(即ち「ティッピング紙」)9が巻かれている。この包装材9は2つのセクション、即ちティッピング帯10,11から成り、両者は切れ目12にて分割できる。
図3では、フィルタ材プラグを覆う上記包装紙は、切れ目12と共に破線で示してある。実施態様によっては、予めミシン目を入れた包装紙9を用いてもよい。或いは、ティッピング紙9の2つのセクション10,11間の切れ目12を規定する為にミシン目と切れ目を入れてもよく、予め切り目を入れておくことが好ましい。第1のセクション10は通常、シガレット1の第1のセグメント5に糊付けされている。上記第1のセクション10は、上記第1のセグメント5、芯15及び第2のセグメント6の全周に亘って延在している。当該第1のセクション10は、第1のセグメント5と芯6についてはその長手方向軸に沿って全長に亘り延在しているが、第2のセグメント6についてはその長手方向軸の一部分(「重複領域」19)に延在しており、芯15又は第2のセグメント6のいずれにも取り付けられていない。第2のセグメント6に対してセグメント5を第1の終端地点まで回動させ、レーザー光(又は刃物)を用いて第1のセクションとその下の第2のセグメント6のプラグラップとを同時に穿孔する(フィルタ部材3の芯に向かって)。この様にして、第1のセクション10の重複領域19に横長のスロット13が形成され、このスロットは打抜穴8との組合せで可変式の通気オリフィス8,13を構成し、フィルタ付きシガレットの吸い口側から引き出されるタバコスモークの空気に対する割合を制御可能とする。或いは、スロット13と打抜穴8とを別々に形成し、その後、包装して包装紙9をプラグに接着する際に上記第1の終端地点に位置合わせしてもよい。包装紙9の第2のセクション11は、第1のセクション10と重複していない第2セグメント6の残余部分を周回して糊付けされ、又タバコロッド2上へも一部延在することで、フィルタ部材3をタバコロッド2へ取り付ける。
【0017】
使用時には、ユーザーは第1のセグメント5を第2のセグメント6に対して回動させることで、スロット13と打抜穴8との相対位置を変化させ、タバコロッド2に着火してフィルタ部材3の吸い口端からユーザーが吸入する空気混合量を変化させることでフィルタ部材3の通気量を変化させる。包装紙9の外面には強度インジケータ19が記されており、通気オリフィルの開き具合、ひいては送達されるスモークの濃度(「フレーバー」又はタールと称する場合もある)を確認できる構成とされている。かかる構成の一例を
図2に示す。切れ目12の脇の第1のセクション10上にはポインタ(矢印)が設けられ、これに対応する「MAX−MIN(最大〜最小)」の表示が切れ目12を挟んで対岸の第2のセクション11に設けられている。包装紙9は、第1のセグメント5を第1の終端地点まで回し切った時(ここでスロット13と打抜穴8とが全面的に合致する)にポインタ(矢印)がMIN(最小)の表示と合致する様に巻回される。この矢印は、第2の終端地点(ここではスロット13と打抜穴8とは重ならない)ではMAX(最大)の表示と合致する。矢印はMINとMAXの表示位置で規定されるスケールの範囲内を移動することができるが、フィルタ部材3に損傷を与えること無くこのスケールを超えて移動することはできない。
【0018】
最後に、第1のセグメント5を第2のセグメント6に対して回動させて打抜穴8とスロット13との位置をずらし、シガレット1の通気量を最小とする。通常はこれが初期状態である。2つの終端地点間の回動角は40〜100°の範囲内であり、好ましくは50〜80°である。完成したシガレット製品は集めて束にし、パッケージに収めて販売される。
【0019】
図4は打抜穴8とスロット13の位置で切断したフィルタ部材3の断面図である。この図より、第1のセグメント5を第2のセグメント6に対していずれかの方向に回動させることでスロット13と打抜穴8との相対位置を変化させ、シガレット1の喫煙中に該スロット13と打抜穴8とを組み合わせた穴からフィルタ部材3へ送られる空気の量を調節できる様子が解る。左の図ではフィルタ部材3が第1の終端地点にあり、ここではフィルタ部材3の壁を通じて取り込まれる空気の量が最大となる。中央の図では、第1のセグメント5は第2のセグメント6に対してニュートラル位置へ回動されており、芯15は捻られていないが、打抜穴8は第1のセクション10で一部遮蔽された状態となる。右の図では、第1のセグメント5が第2のセグメント6に対して第2の終端地点へと回動され、ここで打抜穴8は第1のセクション10で全面的に遮蔽され、通気オリフィス8,13は閉鎖される。
【0020】
フィルタ部材3の通気量を変化させるという同じ目的の為に、複数の打抜穴8又はスロット13、或いはその両方を設けることも可能である。この場合も、吸い口側のセグメント5をタバコ側のセグメント6に対して回動させ、複数の打抜穴8とスロット13との合致/不合致に基づいて通気量を変化させるという原理は変わらない。
【0021】
複数の打抜穴8は同じ長さであることが好ましく、その範囲は例えば2.00〜6mmである。好ましい一実施態様において、プラグラップに3つの打抜穴8を、同一面上で互いに約120°の角度をなす様に形成することができる。
【0022】
本発明の他の例において、プラグラップを多孔質とし、空気が常にフィルタ部材3を通過できる構成としてもよく、これにより若干弱くはあるが吸入するスモークを希釈する空気流が恒久的に得られる。
【0023】
図5は本発明との比較として、従来の圧力降下可変型シガレット21を示す図である。このシガレット21は前述した例と同様の物であり、同様の流量可変フィルタを内蔵している。但し、この従来例では打抜穴8とスロット13とが2つの終端地点の中間であるニュートラル位置にある(したがって、第1の終端地点には無い)。このため、強度インジケータはニュートラル位置である中央にMINの表示があり、MAXの表示が第1及び第2の終端地点(MIN表示の両側)にそれぞれある。本願発明の方法では第1のセグメント5を第2のセグメント6に対し第1の終端地点まで最初に捻っておくことが必要である。この追加工程により製造プロセスの効率はほぼ気付かれないレベルで僅かに低下するが、ユーザーにとってより直感的に使いやすい強度インジケータが提供される。