(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554556
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】人工衛星を組み立て、展開するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
B64G1/64 B
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-556641(P2017-556641)
(86)(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公表番号】特表2018-515383(P2018-515383A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】US2016029518
(87)【国際公開番号】WO2016176302
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】14/700,504
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517180785
【氏名又は名称】ワールドビュー・サテライツ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ダブリュー・フィールド
(72)【発明者】
【氏名】アーメン・アスキジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・グロスマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ディー・スミス
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05199672(US,A)
【文献】
米国特許第06296206(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0179776(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0304222(US,A1)
【文献】
“Soyuz VS08 Launch Updates - 4 O3b Satellites”[online],SPACEFLIGHT 101 Space News and Beyond,2014年 7月10日,[検索日2018.06.05],URL,http://www.spaceflight101.net/soyuz-vs08-launch-updates.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星展開システムであって、
互いに取り付けられた複数の解放可能なディスペンサモジュールであって、各解放可能なディスペンサモジュールは、軌道に展開される少なくとも1つの衛星を支持するよう構成された、解放可能なディスペンサモジュールと、
コントローラであって、
打ち上げロケットから各ディスペンサモジュールを放出し、かつ
放出された各ディスペンサモジュールについて、前記放出されたディスペンサモジュールから前記少なくとも1つの衛星を宇宙空間に放出するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記各ディスペンサモジュールが径方向外面および径方向内面を有するリング形状であり、かつ互いに上に積み重ねられ、および
前記少なくとも1つの衛星がリング形状の各前記ディスペンサモジュールの径方向外面に解放可能に取り付けられ、
各ディスペンサモジュールの前記径方向内面に取り付けられた推進ユニットをさらに備え、前記コントローラが各ディスペンサモジュールのためのモジュールコントローラを含み、前記モジュールコントローラは、前記放出されたディスペンサモジュールを推進し、かつ前記少なくとも1つの衛星を宇宙空間に放出するよう構成されている、衛星展開システム。
【請求項2】
前記コントローラが各ディスペンサモジュールのためのモジュールコントローラを含み、前記モジュールコントローラは、前記少なくとも1つの衛星を宇宙空間に放出するよう構成されている、請求項1に記載の衛星展開システム。
【請求項3】
複数の衛星が関連するディスペンサモジュールに解放可能に取り付けられる、請求項1に記載の衛星展開システム。
【請求項4】
各ディスペンサモジュールが突起および凹所を有し、
前記各ディスペンサモジュールの前記凹所が第2ディスペンサモジュールの前記突起を受け入れ、および
第3ディスペンサモジュールの前記凹所が前記各ディスペンサモジュールの前記突起を受け入れる、請求項1に記載の衛星展開システム。
【請求項5】
各ディスペンサモジュールは、隣接するディスペンサモジュールを前記各ディスペンサモジュールに解放可能に取り付ける複数の分離機構を有する、請求項1に記載の衛星展開システム。
【請求項6】
前記各コントローラが前記ディスペンサモジュールを連続して放出するよう構成されている、請求項1に記載の衛星展開システム。
【請求項7】
宇宙空間に打ち上げる複数の衛星を組み立てる方法であって、
複数の解放可能なディスペンサモジュールを互いに取り付けるステップであって、取り付けられた前記ディスペンサモジュールが宇宙空間に個別に放出可能である、ステップと、
少なくとも1つの解放可能な衛星を各解放可能なディスペンサモジュールに取り付けるステップと、
を備え、
前記各ディスペンサモジュールが径方向内面および径方向外面を有するリング形状であり、および
前記複数のディスペンサモジュールが互いの上に垂直に積み重ねられ、
少なくとも1つの解放可能な衛星を取り付ける前記ステップが、前記各リング形状のディスペンサモジュールの径方向外面に複数の衛星を取り付けるステップを含み、
推進ユニットを各ディスペンサモジュールの前記径方向内面に取り付けるステップをさらに備え、前記推進ユニットは、前記各放出されたディスペンサモジュールを推進し、前記少なくとも1つの衛星を宇宙空間に放出するよう構成されている、方法。
【請求項8】
コントローラを各ディスペンサモジュールに取り付けるステップをさらに備え、各コントローラは、前記ディスペンサモジュールが打ち上げロケットから放出された後で前記各ディスペンサモジュールに取り付けられた前記少なくとも1つの衛星を放出するよう構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各ディスペンサモジュールが突起および凹所を有し、複数の解放可能なディスペンサモジュールを互いに取り付けるステップが、
第2ディスペンサモジュールの前記突起を1つのディスペンサモジュールの前記凹所に挿入するステップと、
前記1つのディスペンサモジュールの前記突起を第3ディスペンサモジュールの前記凹所に挿入するステップとを含み、
前記複数のディスペンサモジュールの各凹所は、関連する前記突起を解放するよう構成された分離機構の一部である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ロケットに取り付けられたディスペンサを有する打ち上げロケットから複数の衛星を展開する方法であって、前記ディスペンサが互いに取り付けられた複数の解放可能なディスペンサモジュールを有し、各解放可能なディスペンサモジュールが複数の衛星を支持し、前記方法は、
前記打ち上げロケットを所定の位置に配置するステップと、
前記打ち上げロケットから前記ディスペンサモジュールを連続的に放出するステップと、
各放出されたディスペンサモジュールについて、
前記各放出されたモジュールを所定の位置に移動するステップと、
前記各放出されたモジュールから前記複数の衛星を放出するステップと、
を備え、
前記複数の衛星の任意の2つの衛星の衝突を避けるために、2つの連続する放出の間に選択された時間間隔で連続的に放出され、
前記各ディスペンサモジュールが径方向内面および径方向外面を有するリング形状であり、
前記複数のディスペンサモジュールが互いの上に垂直に積み重ねられ、
前記複数の衛星が前記各リング形状のディスペンサモジュールの径方向外面に取り付けられ、
各ディスペンサモジュールの前記径方向内面に取り付けられた推進ユニットをさらに備え、前記推進ユニットは、前記各放出されたディスペンサモジュールを推進し、前記複数の衛星を宇宙空間に放出するよう構成されている、方法。
【請求項11】
所定の位置に前記各放出されたモジュールを移動する前記ステップが、前記各放出されたモジュールに取り付けられた推進ユニットを制御するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星に関し、特に、複数の衛星を組み立て、打ち上げ用ロケットから展開するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星は典型的には、個々に分離され最終的な軌道を飛行する前に、挿入軌道に到達するためにロケットなどの多段発射手段を使用する。打ち上げロケットの動力と推進力は限られているため、ペイロード内のすべての衛星は、通常は数時間以内の比較的小さな時間枠内で展開される必要がある。
【0003】
ペイロード内に少数の衛星、例えばペイロード内に10個以上の衛星が存在する場合、衛星間が近接しており、衛星の姿勢制御システムと推進システムが起動する前に衛星同士が衝突する潜在的な危険性があるため、許容時間枠内で比較的迅速に連続して衛星を展開することは、困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、多数の衛星を安全に、タイムリーかつ費用効果の高い方法で組み立てて展開するための改良されたシステムおよび方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、複数の解放可能なディスペンサモジュールを有する衛星展開システムが提供される。解放可能なディスペンサモジュールは、互いに解放可能に取り付けられ、各ディスペンサモジュールは、軌道上に展開する少なくとも1つの衛星を支持する。コントローラは、打ち上げロケットからの各ディスペンサモジュールの放出と、放出された各ディスペンサモジュールからの衛星の展開を制御する。
【0006】
本発明の別の態様では、解放可能なディスペンサモジュールを展開する方法が提供される。衛星を含む打ち上げロケットは、宇宙空間の所定の位置に配置される。その後、ディスペンサモジュールは、打ち上げロケットから個別にそして順次放出される。その後、放出された各ディスペンサモジュールは、所定の場所に移動する。そこに到達すると、放出されたディスペンサモジュールは、搭載された衛星を放出する。
【0007】
各ディスペンサモジュールは、特定の挿入軌道で打ち上げロケットから分離され、その後、独自の最終段階として機能して、衛星のサブセットを適切な高度および軌道パラメータまで運び、個々の衛星を展開する。各ディスペンサモジュールは、他のディスペンサモジュールから離れた場所に衛星を展開することができるため、衛星間での衝突の危険性が大幅に低減され、多数の衛星を安全に、タイムリーで費用効果の高い方法で打ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の一態様による衛星展開システムの斜視図を示す。
【
図4A】本発明の一態様によるディスペンサモジュールの内面の一部を示す。
【
図4B】本発明の一態様によるディスペンサモジュールの外面の一部を示す。
【
図5A】本発明の一態様による複数のディスペンサモジュールを有する衛星ディスペンサの斜視図を示す。
【
図5B】上部ディスペンサモジュールが打ち上げロケットから放出された、
図5Aの衛星ディスペンサの斜視図である。
【
図5C】いくつかの衛星が放出されたディスペンサモジュールから放出されていた、
図5Bに示すディスペンサモジュールの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本教示による人工衛星100を示す。
図2は、人工衛星100の顕著な特徴のうちのいくつかの「分解」図を示す。
図1および
図2に示すように、人工衛星100は、図のように配置された統合ペイロードモジュール102、推進モジュール114、ペイロードアンテナモジュール122、バスコンポーネントモジュール132、およびソーラーアレイシステム140を含む。
図1および
図2の人工衛星100の向きは、
図1および
図2に示すアンテナ124が、使用時には、図面において「上に」向いているアンテナ124が地球に向かって「下向き」に面しているという意味で「逆さま」である。
【0010】
統合ペイロードモジュール102は、パネル104,106、および108を備える。いくつかの実施形態では、パネルは、既知の方法で様々なコネクタなどを使用して共に接合される。ブレース109は、接続されたパネルの構造的な補強を提供する。
【0011】
パネル104,106及び108は、他の機能の中でも、人工衛星102からの熱を放射する放熱器として機能する。いくつかの実施形態では、パネルは熱除去を容易にするための改造を含む。いくつかの実施形態では、パネルは、表面シートによって挟まれたコアのような複数の材料を含む。パネルに使用するのに適した材料には、航空宇宙産業で一般的に使用されているものが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、コアは、軽量アルミニウムハニカムを含み、表面シートは、6061−T6アルミニウムを含む。
【0012】
推進モジュール114は、パネル112上に配置され、パネル112は、いくつかの実施形態では、パネル104,106、および108(例えば、アルミニウムハニカムコアおよびアルミニウム表面シートなど)と同様の方法で構成される。
図1では不明瞭なパネル112は、統合ペイロードモジュール102のパネル104,106に当接している。
【0013】
推進モジュール114は、燃料タンク116および推進制御システム118を含む。推進制御システムは、1または複数のバルブ(図示せず)を用いて、パネル114の外向きの面に配置された推進ノズル(図示せず)を介して推進ガスを放出するように制御する。推進制御システムは、地上のコマンドまたは制御プロセッサからオンボードで生成されたコマンドに応答するために適切に実装されている(つまり、ソフトウェアとハードウェア)。
【0014】
ペイロードアンテナモジュール122は、複数のアンテナ124を備える。例示的な実施形態では、16個のアンテナ124が、4×4配列で配置されている。いくつかの他の実施形態では、アンテナ124を異なる構成に編成することができ、および/または異なる数のアンテナを使用することができる。アンテナ124は、支持ウェブ120によって支持される。いくつかの実施形態では、支持ウェブは、アンテナ124を受け入れ支持するための適切な数の開口部(例示的実施形態では16個)を有する炭素繊維を含む湾曲パネルである。
【0015】
いくつかの実施形態では、アンテナ124は、電磁スペクトルの12GHzから18GHzの部分であるKuバンドで送信する。例示的な実施形態では、アンテナ124は、人工衛星通信によく使用される指数ホーンとして構成される。当技術分野で周知のように、ホーンアンテナは、一端で閉じられ、他端の開放端ホーンに向かって広がる(例示的な実施形態では円錐形)、典型的には短い矩形または円筒形の金属チューブとして実装された導波管から電波を送信する(またはそれらに集める)。
図1では、各アンテナ124の導波管部分が不明瞭である。各アンテナ124の閉端部は、増幅器(
図1および
図2では図示せず;これらはパネル104または108の内面に位置する)に連結される。
【0016】
バスコンポーネントモジュール132は、統合ペイロードモジュール102の底部に(
図1および
図2の観点から)取り付けられるパネル130に配置される。パネル130は、パネル104,106、および108(例えば、アルミニウムハニカムコアおよびアルミニウム表面シートなど)と同様の方法で構成することができる。いくつかの実施形態では、パネル130は熱除去のための特定の改造を含まない。
【0017】
モジュール132は、メインソーラーアレイモーター134と、4つのリアクションホイール136と、メイン制御プロセッサ164とを含む。リアクションホイールは、人工衛星100が、角運動量の保存によって、推進剤を使用せずに宇宙空間内で回転することを可能にする。遠心質量(図示せず)を含む各リアクションホイール136は、関連する駆動モーター(および制御電子機器)138によって駆動される。当業者には理解されるように、人工衛星100をx、y、z方向に回転させるためには、3つのリアクションホイール136だけが必要である。4つ目のリアクションホイールはスペアとして機能する。このようなリアクションホイールは、通常、この目的のために人工衛星で使用される。
【0018】
メイン制御プロセッサ164は、地上から受信されたコマンドを処理し、姿勢指示制御、推進制御、および電力システム制御を含むがこれに限定されない人工衛星100の多くの機能を自律的に実行する。
【0019】
ソーラーアレイシステム140は、ソーラーパネル142Aおよび142B、ならびにそれぞれのyバー148Aおよび148Bを含む。各ソーラーパネルは、既知の方法で太陽光を電気エネルギーに変換する複数のソーラーセル(図示せず;ソーラーパネル142Aおよび142Bの見えない側に配置される)を備える。各ソーラーパネルは、モーター144と受動回転ベアリング146を含み、yバーの一方は、モーター144およびベアリング146で各ソーラーパネルに取り付けられる。モーター144は、ソーラーパネルの各々が軸A−Aを中心として少なくとも部分的に回転することを可能にする。これにより、ソーラーパネル142Aをパネル104に平行な格納位置から、パネル104に対して展開することが容易になり、ソーラーパネル142Bをパネル106に平行な格納位置から、パネル106に対して展開することが容易になる。モーター144はまた、軸A−Aの周りの前述の回転によって、最適な太陽露出のために、パネル142Aおよび142Bを適切な角度にするように機能する。
【0020】
各yバー148Aおよび148Bの部材150は、それぞれのパネル104および106の開口部152を通って延在する。統合ペイロードモジュール102内で、部材150は、バスコンポーネントモジュール132と関連して前に説明されたメインソーラーアレイモーター134に接続される。メインソーラーアレイモーターは、図示のように、各部材150をその軸回りに少なくとも部分的に回転させることができる。これは、最適な太陽露出のためにソーラーパネル142Aおよび142Bを傾ける目的のためである。いくつかの実施形態では、部材150は、互いに独立して回転することができ、いくつかの他の実施形態では、部材150は一緒に回転する。ロック・リリース部材154は、ソーラーパネル142Aをサイドパネル104に、ソーラーパネル142Bをサイドパネル106に結合および解放するために使用される。ロック・リリース部材は、サイドパネル104,106の開口部156に結合する。
【0021】
人工衛星100はまた、統合ペイロードモジュール102の「下方」の(
図1および
図2の観点から)パネル108に適合するパネル126を含む。いくつかの実施形態では、パネル108は、航空宇宙等級材料のシート(例えば、6061−T6アルミニウムなど)である。電池モジュール128は、パネル126の内側に面する面に配置される。バッテリーモジュールは、人工衛星100に搭載されたさまざまなエネルギー消費機器に電力を供給する。バッテリーモジュール128は、ソーラーパネル142Aおよび142Bによって生成された電気で再充電される。パネルおよびモジュール128はこの目的のために電気的に結合される(ソーラーパネル142A/Bとバッテリーモジュール128との間の電気経路は
図1および
図2には示されていない)。
【0022】
人工衛星100はさらに、テレメトリおよび地上ベースコマンドおよび制御のための無指向性アンテナ158を含む。
【0023】
パネル108には、2つの「ゲートウェイ」アンテナ160が配置されている。ゲートウェイアンテナは、地球上のゲートウェイステーションとユーザデータを送受信する。ゲートウェイステーションはインターネットと通信する。アンテナ160は、可動マウント162によってパネル108に結合され、地上ベースのアンテナとの最適な位置合わせのためにアンテナを2つの軸に沿って移動させることができる。アンテナ160は、典型的には26.5GHz〜40GHzの範囲の周波数をカバーするKaバンドで送受信する。
【0024】
パネル106の内側に面する面に配置される変換モジュール110は、Ka無線周波数とKu無線周波数との間で変換する。例えば、変換モジュール110は、ゲートウェイアンテナ160からのKaバンドのアップリンク信号をアンテナ124を介するダウンリンク用のKuバンド信号に変換する。変換モジュール110は、逆方向、つまりKuからKaにも変換する。
【0025】
人工衛星100の運用において、データは、データ要求のために以下のように流れる。
・(取得データ):要求されたデータは、ゲートウェイステーションでインターネットから取得される。
・(アップリンク):データ信号は、大型の地上ベースのアンテナを介して人工衛星のゲートウェイアンテナ160に送信される(Kaバンド)。
・(ペイロード):データ信号が増幅され、ダウンリンク(Ku)バンドへの変換のために変換モジュール110に送られ、次に再び増幅される。
・ペイロード信号は、ペイロードアンテナ124に送られる。
・(ダウンリンク):アンテナ124は、増幅され周波数変換された信号をユーザ端末に送信する。
ユーザが電子メールなどのデータを(要求ではなく)送信する場合、信号は、逆方向だが同じ経路を辿る。
【0026】
簡潔には、本明細書に記載の実施形態は、打ち上げ前に互いに取り付けられたディスペンサリングの形態の複数のディスペンサモジュールからなるディスペンサを含む衛星展開システムである。それぞれのリングは、多くの個別かつ同じ衛星を支持し、運ぶ。システムは、ディスペンサリングを個別に放出することにより、打ち上げロケットを指定された挿入軌道から1または複数の最終軌道に乗せるように設計されている。各ディスペンサリングは、特定の挿入軌道で打ち上げロケットから分離され、パワーと推進力を備えた個々の最終ステージとして機能し、適切な高度と軌道パラメータまで衛星のサブセットを運び、個々の衛星を展開する。各ディスペンサリングは、衛星を他のディスペンサリングから遠くで展開することができるため、リングの総数による分離リスクが低減される。複数のリングは、最終的な高度、RAAN、および傾きを変えることによって、同じまたは異なる軌道に行くことができる。本明細書に記載の実施形態は、数十個または数百個の衛星が単一のペイロードで打ち上げられるLEOおよびMEO衛星に特に適している。
【0027】
図3は、本発明の一態様による衛星展開システム8の斜視図を示す。システム8は、互い取り付けられ、互いの上部に積み重ねられた複数の衛星ディスペンサモジュール12,13,14からなるディスペンサ10を含む。各ディスペンサモジュール12〜14は、リングの形態であり、軌道上に展開されるべき衛星100を支持する。図示の実施形態では、14個の同一の衛星100が、関連するディスペンサモジュール12〜14に解放可能に取り付けられている。ディスペンサ10は、ペイロードアダプター締結具(PAF)22によって打ち上げロケットの上段20に解放可能に取り付けられている。説明目的のために3つのディスペンサリング12〜14のみが示されているが、当業者であれば、使用される特定の打ち上げロケット及び衛星の質量及びサイズに応じてより多くのディスペンサリングを積み重ねることができることを理解するであろう。
【0028】
ペイロードコントローラ18および地上局コントローラ24(コンピュータ)は、互いに通信し、ディスペンサモジュール12〜14の放出を制御する。
【0029】
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、本発明の一態様によるディスペンサモジュール12の内面15および外面16の一部を示す。各モジュール12〜14は、2つの隣接するディスペンサモジュールをともに解放可能に取り付ける分離機構26を含む。PAF22に取り付けられた下部ディスペンサモジュール14に対して、同じ分離機構26を使用することができる。1つの例示的な分離機構26は、メリーランド州シルバースプリングのプラネタリシステム・コーポレーションから入手可能なライトバンド分離システムとすることができる。
【0030】
図示の実施形態では、各分離機構26は、上部リング26aと下部リング26bとを含む。下部リング26bは、ディスペンサモジュール12〜14の上の解放可能なロック29内の対応する凹所内にロックされる複数の突起28を有する。いくつかの実施形態では、複数の負荷ばね(図示せず)が2つのリング26a、26bの間に配置されているため、ディスペンサモジュール12〜14が放出されると、放出されたモジュールが打ち上げロケットから離れるように推進される。
【0031】
内面15において、各ディスペンサモジュール12〜14は、それ自体のディスペンサモジュールコントローラ30、推進ユニット32および姿勢制御ユニット34を有し、それらは電線36を介して互いに接続されている。
【0032】
図4Bに示すように、外面16では、複数の衛星100が分離アセンブリ38を介して各モジュール12〜14に取り付けられている。各衛星100に対して、衛星100の4つの接続ボルト40を解放可能にロックする(
図4C参照)ために4つの分離アセンブリ38が使用される。例示的な分離アセンブリは、カリフォルニア州TorranceのHi-Shear Technology Corp.によって製造された低衝撃分離アセンブリSN9400シリーズであってもよい。
【0033】
電線42は、すべての分離アセンブリ38をともに接続し、モジュールコントローラ30と通信するために、モジュール12〜14の内面15の電線36に接続される。各ディスペンサモジュール12〜14の電線36は、互いに接続され、かつペイロードコントローラ18(コンピュータ)に接続される。ディスペンサモジュールコントローラ30は、推進ユニット32および姿勢制御ユニット34を制御し、モジュールが打ち上げロケットから放出された場合に衛星100の宇宙空間への放出を制御するコンピュータである。
【0034】
次に、本発明の一態様によるペイロードを組み立てる方法を説明する。下部ディスペンサモジュール14から始め、隣接するモジュール13が下部モジュールの上に積み重ねられ、下部モジュールに分離機構26によって取り付けられる。その後、上部ディスペンサモジュール12が、中央のディスペンサモジュール13の上に積み重ねられ、分離機構26によって中央のモジュールに取り付けられる。さらに多くのディスペンサモジュールがある場合、すべてのディスペンサモジュールが積み重ねられ、互いに対して解放可能に取り付けられるまで、積み重ねおよび取り付けのプロセスが繰り返される。
【0035】
次に、衛星100は、接続ボルト40が分離アセンブリ38に解放可能に取り付けられるように、それぞれのスロットに取り付けられる。ペイロードの打ち上げ準備ができると、その上に衛星100を搭載したディスペンサ10が持ち上げられ、PAF22に解放可能に取り付けられる。一実施形態では、ディスペンサモジュール12〜14を共に取り付ける同じ分離機構26が、下部ディスペンサモジュール14をPAF22に取り付けるために使用することができる。
【0036】
また、
図5A〜
図5Cは、本発明の一実施形態による、ディスペンサモジュールの連続的な分離と衛星の放出を示す。明確にするために、内面15と外面16のいくつかの部品が省略されている。
図5Aに示すように、地上局コントローラ24およびペイロードコントローラ18の制御下で、打ち上げロケットは、第1のディスペンサモジュール12を放出するための所定の位置に配置される。この時点で、全てのディスペンサモジュール12〜14は、まだロケットに取り付けられている。ディスペンサモジュール放出の制御は、ペイロードコントローラ18、ディスペンサモジュール自身のモジュールコントローラ30、またはその両方によって行うことができる。どちらの場合でも、放出はコントローラ18,30によって、または地上局コントローラ24から受信されたコマンドによって自動的に実行されることができる。図示の実施形態では、地上局コントローラ24は、すべてのディスペンサモジュール放出コマンドをコントローラ18に送信し、コントローラ18は、次に、電線36を介して適切なディスペンサモジュールコントローラ30にコマンドを中継する。
【0037】
打ち上げロケット、ディスペンサモジュール12〜14の位置決めおよび連続的な放出、および放出された各モジュールに取り付けられた個々の衛星100の放出を制御する制御ソフトウェアは、コントローラ18,24,30のコンピュータ可読記憶メモリ(媒体)に記憶される。
【0038】
打ち上げロケットが適切な位置(上部ディスペンサモジュール12の挿入軌道)に達すると、地上コントローラ24は、上部ディスペンサモジュールを放出するコマンドを送信する。コマンドを受信すると、ペイロードコントローラ18は、適切なコマンドをディスペンサモジュール14のディスペンサモジュールコントローラ30に送る。そして、コントローラ30は、電線36を介して信号を送り、ロック29を解放する。
図5Bに示すように、ロック29が解放されると、ディスペンサモジュール12は、打ち上げロケットおよび残りのディスペンサモジュールから離れるように移動する。ディスペンサモジュール12が放出されると、次の位置(挿入軌道)に到達し、関連するディスペンサモジュールを放出するプロセスが残りのモジュール13〜14のそれぞれについて繰り返される。
【0039】
ディスペンサモジュール12が放出されると、モジュール12用のディスペンサモジュールコントローラ30は、推進ユニット32および姿勢制御ユニット34を制御してモジュールを所定の位置(第1の衛星100が放出される挿入軌道)に推進および移動させる。そこで、地上コントローラ24の制御下にあるモジュールコントローラ30は、それぞれ対応する分離アセンブリ38に放出コマンドを送信することによって個々の衛星100を順次放出する。衛星100の2つの連続する放出間隔は、互いに衝突する可能性を最小限に抑えるように選択される。いくつかの実施形態では、地上コントローラ24の制御下にあるモジュールコントローラ30は、各衛星100に適した挿入軌道にディスペンサモジュールを移動/位置決めし、次に衛星100を放出する。その後、位置決めおよび放出プロセスは、運んでいる各衛星100について繰り返される。
【0040】
図5Cに示すように、5つの衛星100が放出されている。各衛星100は順番に、自身の推進ユニットを使用して、割り当てられた軌道に自身を配置する。衛星100を放出するプロセスは、ディスペンサモジュール12に対して全ての衛星が放出されるまで繰り返される。全ての衛星100が放出されると、ディスペンサモジュール12は、最終的に燃え尽きるように地球に向かって落下するようにプログラムすることができる。他のディスペンサモジュール13〜14に対し、ディスペンサモジュール12についての衛星の位置決めおよび放出と同じステップが繰り返される。
【0041】
上述したように、各ディスペンサモジュール12〜14は、それ自体の推進ユニットによって個々の最終ステージとして機能し、衛星のサブセットを適切な高度および軌道に展開する。各ディスペンサモジュールは、他のディスペンサモジュールから離れた場所に衛星を展開することができるため、衛星間の衝突のリスクは大幅に減少する。
【0042】
本開示は、いくつかの実施形態を記載しており、本発明の多くの変形は、本開示を読んだ後に当業者によって容易に考案され得るものであることが理解されるべきである。例えば、本明細書に開示された発明の概念は、LEOおよびMEO衛星に特に適しているが、より大きなより高い軌道衛星にも適用することができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定されるものである。
【符号の説明】
【0043】
8 衛星展開システム
10 ディスペンサ
12,13,14 ディスペンサモジュール
15 内面
16 外面
18 ペイロードコントローラ
22 ペイロードアダプター締結具(PAF)
24 地上局コントローラ
26 分離機構
26a 上部リング
26b 下部リング
28 突起
29 ロック
30 モジュールコントローラ
32 推進ユニット
34 姿勢制御ユニット
36 電線
38 分離アセンブリ
40 接続ボルト
42 電線
100 人工衛星
102 統合ペイロードモジュール
104,106,108,112,126 パネル
109 ブレース
110 変換モジュール
114 推進モジュール
116 燃料タンク
118 推進制御システム
120 支持ウェブ
122 ペイロードアンテナモジュール
124 ペイロードアンテナ
128 バッテリーモジュール
130 パネル
132 バスコンポーネントモジュール
134 メインソーラーアレイモーター
136 リアクションホイール
138 駆動モーター
140 ソーラーアレイシステム
142A,142B ソーラーパネル
144 モーター
146 受動回転ベアリング
148A,148B yバー
150 部材
152 開口部
154 ロック・リリース部材
156 開口部
158 無指向性アンテナ
160 ゲートウェイアンテナ
162 可動マウント
164 メイン制御プロセッサ