(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗工液を吐出する吐出口を有し、該吐出口に対して相対的に移動している被塗工物に、前記吐出口から前記塗工液を吐出して塗工する塗工装置を用いて、前記被塗工物に前記塗工液を塗工して塗工膜を形成する塗工膜形成方法であって、
前記塗工液として所定の伸長度を有するものを用い、前記吐出口から前記被塗工物に前記塗工液が吐出されているとき、前記吐出口側において膨らんでいる膨出部分と、該膨出部分から前記被塗工物まで先細りとなるように前記被塗工物の移動方向下流側に延びている延在部分とを有するビードを形成しつつ前記吐出口と前記被塗工物とを結ぶ状態を維持しながら前記被塗工物に前記塗工液を塗工し、且つ、
前記膨出部分の大きさに応じて、前記膨出部分が前記被塗工物に接触しないように前記吐出口と前記被塗工物との間のギャップを調整して前記被塗工物に前記塗工液を塗工し、
前記塗工装置が、ダイコーターであり、
前記所定の伸長度が2mm以上であり、
前記被塗工物と前記吐出口との間隔たるギャップを、0.5〜2mmとし、
前記吐出口の間隔たるスロット幅を、0.05〜1.5mmとし、
前記吐出口は、側方を向くように配されており、
前記塗工装置は、該吐出口に対して相対的に上下方向に移動している前記被塗工物に前記塗工液を吐出するようになっている、塗工膜形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の塗工装置においては、スリット(スロット)の出口間隔(スロット幅)が0.1mm以下と狭い。このため、被塗工物に塗工液を塗工する際、この狭さに起因して、被塗工物の幅方向におけるスロットの加工精度のバラツキが塗工液のウェット厚みのバラツキに大きな影響を及ぼし、その結果、塗工ムラを有する塗工膜が得られるおそれがある。このような塗工膜は、品質が低下したものとなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、塗工ムラによる品質低下が抑制された塗工膜を得ることが可能な塗工膜形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意研究したところ、以下の知見を見出した。
すなわち、
図8に示すように塗工を行うと(近接塗工)、ギャップに異物が引っかかるという不具合が生じるおそれがある。
【0011】
ここで、塗工膜を連続して形成しようとすると、被塗工物同士を接合し、接合された被塗工物に塗工する必要がある。この場合、ギャップが小さいと、継ぎ目がギャップに引っかかってしまうおそれがあるため、被塗工物または塗工部を一時的に退避させる必要が生じ得る。そうすると、作業性の低下に繋がる。
【0012】
また、被塗工物をロールによって支持しながら移動させる場合には、ギャップが小さいと、その分、ロールの加工精度(円筒度、振れ、撓み等)のバラツキが塗工膜のウェット厚みに及ぼす影響が大きくなるため、得られる塗工膜の厚みにバラツキが生じるおそれがある。
【0013】
一方、特許文献1の塗工装置のようにギャップを大きくすれば、上記した近接塗工に起因する不具合は解消し得る。
【0014】
しかし、特許文献1では、
図8の塗工装置とは異なり、真っすぐに、且つ、膜状となるように塗工液を噴出させている。このため、被塗工物に塗工液を塗工する際、被塗工物の幅方向におけるスロットの加工精度のバラツキが塗工液のウェット厚みのバラツキに大きな影響を及ぼし、その結果、塗工ムラを有する塗工膜が得られるおそれがある。
【0015】
そこで、本発明者らは、吐出口から吐出された後、被塗工物に至るまでの間に存在している塗工液の外観形状に着目して、さらに鋭意研究した。
【0016】
その結果、吐出口から塗工液を吐出しているとき、吐出口と被塗工物とを結んでいる塗工液(ビード)が、吐出口側において膨らんでいる膨出部分と、該膨出部分から被塗工物まで、被塗工物の移動方向下流側に先細りとなるように延びている延在部分とを有する形状となっている場合に、塗工ムラが生じることなく被塗工物に塗工液を塗工し得ることを見出した。また、このような形状は、膨出部分と延在部分とが形成される程度の伸長度を有する塗工液を用い、かかる塗工液に応じて吐出口と被塗工物との間隔を調整することによって実現され得ることを見出した。
【0017】
これに対し、
図8に示すような近接塗工では、膨出部分が形成されない。
一方、近接塗工よりもギャップが大きくても、その大きさが十分でないと、例えば
図5に示すように、膨らんだ部分が被塗工物に接触して延在部分が存在しなくなり、その結果、ウェット厚みのバラツキが、被塗工物の移動方向にも、該移動方向と垂直な方向(幅方向)にも大きくなって、塗工ムラが発生するおそれがある。また、ギャップが大きくなり過ぎると、
図6及び
図7に示すように、延在部分が途切れてしまい(吐出口と被塗工物とが塗工液によって結ばれなくなり)、塗工不能となったり、塗工できたとしても、スジ状の塗工ムラが発生したりするおそれがある。
【0018】
このように、ギャップ内の塗工液の形状が上記特定の形状である場合に、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜を得ることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明に係る塗工膜形成方法は、
塗工液を吐出する吐出口を有し、該吐出口に対して相対的に移動している被塗工物に、前記吐出口から前記塗工液を吐出して塗工する塗工装置を用いて、前記被塗工物に前記塗工液を塗工して塗工膜を形成する塗工膜形成方法であって、
前記塗工液として所定の伸長度を有するものを用い、前記吐出口から前記被塗工物に前記塗工液が吐出されているとき、前記吐出口側において膨らんでいる膨出部分と、該膨出部分から前記被塗工物まで先細りとなるように前記被塗工物の移動方向下流側に延びている延在部分とを有するビードを形成しつつ前記吐出口と前記被塗工物とを結ぶ状態を維持しながら前記被塗工物に前記塗工液を塗工し、且つ、
前記膨出部分の大きさに応じて、前記膨出部分が前記被塗工物に接触しないように前記吐出口と前記被塗工物との間のギャップを調整して前記被塗工物に前記塗工液を塗工する方法である。
【0020】
ここで、膨出部分とは、吐出口側において被塗工物側の部分(延在部分)よりも膨らんでいる部分であって、且つ、被塗工物と直接接触しないように、被塗工物との間に隙間が形成されているような部分を意味する。
また、伸長度とは、内径2mmの円筒部材の開口から、該開口から1mm離れた位置にて30m/minの回転速度で回転するロールに、塗工液を5g/minの速度で吐出させ、円筒部材の開口とロールとの間隔(測定ギャップD)を1mmから大きくしていったとき、開口とロールとを結んでいる塗工液が切断されたときの上記開口とロールとの間隔を表す数値(mm)を意味する。
【0021】
かかる構成によれば、従来の近接塗工よりもギャップが大きくなるため、ギャップが小さ過ぎることに起因する塗工ムラの発生を抑制し得る。
また、近接塗工よりもギャップは大きいものの、その大きさが十分でないと塗工液の膨らんだ部分(膨出部分)が被塗工物に接触するおそれがある。しかし、上記のようにギャップを調整することによって、この接触によって生じる、塗工膜のウェット厚みのバラツキに起因する塗工ムラの発生を、抑制し得る。
さらに、ギャップが大き過ぎることによって生じる、塗工液が途切れることに起因する塗工ムラの発生を抑制し得る。
しかも、吐出口から真っ直ぐ且つ膜状に塗工液を噴出させるべくスロット幅を小さくする必要がある特許文献1の場合と比較して、膨出部分と延在部分とが存在し得る程度に塗工液を吐出する勢いを弱めるべくスロット幅を大きくして塗工液を吐出することが可能となるため、その分、塗工膜のウェット厚みのバラツキが発生することを、抑制し得る。
このように、ギャップが小さ過ぎることに起因する塗工ムラや、ギャップは大きいものの勢いよく塗工液が被塗工物に衝突することに起因する塗工ムラを抑制し得る。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜を得ることが可能となる。
【0022】
上記構成の塗工膜形成方法においては、
前記所定の伸長度が2mm以上であってもよい。
【0023】
伸長度が2mm以上であることによって、塗工液が十分に伸び易くなるため、被塗工物に接触しないように膨出部分を形成し易くなり、また、途切れることなく延在部分を形成し易くなる。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜を、より確実に得ることが可能となる。
【0024】
上記構成の塗工膜形成方法においては、
前記被塗工物と前記吐出口との間のギャップを、0.5〜2mmとしてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、上記ギャップを0.5mm以上とすることによって、塗工膜の外観不良、特に点欠点を、より抑制することができ、ギャップを2mm以下とすることによって、巻取り不良(耳高)を、より抑制し得る。
【0026】
上記構成の塗工膜形成方法においては、
前記吐出口の間隔を、0.05〜1.5mmとしてもよい。
【0027】
ここで、吐出口の間隔が小さ過ぎると、スロットの加工精度のバラツキが塗工膜のウェット厚みのバラツキに及ぼす悪影響が大きくなり過ぎ、そのバラツキが許容できないものとなるおそれがあり、吐出口の間隔が大き過ぎると、ダイの内圧が低下してダイ内部で幅方向に塗工液を均一に分配できず、塗工膜のウェット厚みのバラツキが許容できなくなるおそれがある。
しかし、吐出口の間隔を0.05mm以上とすることによって、スロットの加工精度のバラツキが塗工膜のウェット厚みに及ぼす悪影響を小さくすることができる。また、吐出口の間隔を1.5mm以下とすることによって、ダイの内圧の低下を抑制してダイ内部で幅方向に塗工液をより均一に分配することができるため、塗工膜のウェット厚みのバラツキを抑制することができる。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜を、より確実に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上の通り、本発明によれば、塗工ムラによる品質低下が抑制された塗工膜を得ることが可能な塗工膜形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本発明の一実施形態の塗工膜形成方法に用いられる塗工装置について説明する。
【0031】
図1、
図2に示すように、本実施形態の塗工膜形成方法に用いられる塗工装置1は、
塗工液23を吐出する吐出口3aaを有し、該吐出口3aaに対して相対的に移動している被塗工物21に、前記吐出口3aaから前記塗工液23を吐出して塗工する塗工部3を備え、
前記塗工部3によって前記被塗工物21に塗工された前記塗工液23を固化させて塗工膜25を形成するように構成されている。
塗工装置1は、前記吐出口3aaから前記被塗工物21に所定の伸長度を有する前記塗工液23が吐出されているとき、前記塗工液23が、前記吐出口3aa側において膨らんでいる膨出部分23aと、該膨出部分23aから前記被塗工物21まで先細りとなるように前記被塗工物21の移動方向Mの下流側に向かって斜めに延びている延在部分23bとを有するビードを形成しつつ前記吐出口3aaと前記被塗工物21とを結ぶ状態を維持するように構成されている。
塗工装置1は、前記膨出部分23aの大きさに応じて、前記膨出部分23aが前記被塗工物21に接触しないように前記吐出口3aaと前記被塗工物21との間のギャップGが調整されるように構成されている。
【0032】
塗工装置1は、さらに、塗工部3によって塗工された塗工液23を固化させて塗工膜25を形成する固化部13を備えている。
【0033】
塗工装置1は、さらに、被塗工物21を表面で支持しつつ、該被塗工物21の長手方向において塗工部3に対して相対的に移動させる支持部15を備えている。
【0034】
被塗工物21としては、特に限定されないが、例えば、
図1に示すような帯状のものが挙げられ、例えば、帯状のシート部材等が挙げられる。
かかるシート部材としては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、以下に示すような樹脂フィルム等が挙げられる。
すなわち、樹脂フィルムは、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択され得る。例えば、光学用途として用いられる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムを好適に使用することができる。
さらに、光学用途として用いられる樹脂フィルムとしては、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども挙げることができる。
被塗工物21については、後述する。
【0035】
支持部15は、長手方向に移動する被塗工物21を、塗工部3の反対側から支持するものである。支持部15に支持されて塗工部3に対して相対的に移動する被塗工物21に塗工液23が塗工される。
かかる支持部15としては、ロール等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、支持部15は、塗工部3の吐出口3aaと対向する位置において、該吐出口3aaに対して、被塗工物21を相対的に一方(
図1の上方)から他方(
図1の下方)に移動させるようになっている。
【0037】
固化部13は、塗工液23を固化させて塗工膜25を形成するように構成されている。この固化部13によって固化されることにより、塗工膜25が形成される。固化部13は、塗工液23を固化させ得るものであればよく、特に限定されない。かかる固化部13は、塗工液23の種類等に応じて適宜設定される。
【0038】
本実施形態では、塗工部3として、スロット8を有するダイが採用されている。このようにダイを備えた塗工装置1は、ダイコーターと呼ばれる。
【0039】
塗工部3は、スロット8の吐出口3aaから塗工液23を吐出して、相対的に移動している被塗工物21上に塗工液23を塗工するようになっている。
塗工部3は、スロット8の吐出口3aaが側方を向くように配されており、吐出口3aaに対して相対的に上下方向に移動している被塗工物21に塗工液23を吐出するようになっている。塗工部3には、塗工液23の収容部(不図示)から、配管(不図示)及びポンプ(不図示)を介して塗工液23が供給されるようになっている。
【0040】
具体的には、塗工部3は、上流側のダイブロック5と、上流側のダイブロック5と対向して配された下流側のダイブロック7とを備える。塗工部3は、上流側のダイブロック5と下流側のダイブロック7とを合掌させることによって形成されている。このように両ダイブロック5、7を合掌させることによって、これらの間には、ポンプ(不図示)によって供給された塗工液23が溜められるマニホールド9と、該マニホールド9から先端縁に向かって配されたスロット8とが形成されている。また、上流側のダイブロック5の先端縁である上流側リップ部5aと下流側のダイブロック7の先端縁である下流側リップ部7aとの間の隙間が、スロット8の吐出口3aaとなっている。
【0041】
上流側リップ部5aと下流側リップ部7aとは、支持部15の径方向Rと垂直な平面上に位置するように配されている。スロット8は、支持部15の径方向Rと平行に配されている。
吐出口3aaの間隔、すなわち、被塗工物21の移動方向Mにおける長さ(スロット幅)は、特に限定されず、適宜設定され得る。
例えば、スロット幅が小さ過ぎると、スロット8の加工精度のバラツキが塗工膜25のウェット厚みのバラツキに及ぼす悪影響が大きくなり過ぎ、そのバラツキが許容できないものとなるおそれがある。一方、スロット幅が大き過ぎると、ダイの内圧が低下してダイ内部で幅方向に塗工液23を均一に分配できず、塗工膜25のウェット厚みのバラツキが許容できなくなるおそれがある。
かかる観点を考慮すると、スロット幅は、例えば、0.05〜1.5mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましく、0.3〜1.2mmがさらに好ましい。特に、後述する実施例に示すように、スロット幅が0.3〜1.2mmである場合には、この数値範囲でスロット幅を変化させても塗工可能な条件範囲が変わらないため、この点でも、好ましい。
【0042】
下流側リップ部7aの長さが小さい程、膨出部分23aが小さくなるため、その分、膨出部分23aと被塗工物21とが非接触である状態を維持しつつ被塗工物21と吐出口3aaとの距離(ギャップ)Gを小さくすることができる。かかる観点を考慮すると、下流側リップ部7aの長さは、0.1mm以上4mm以下であることが好ましい。
ギャップGは、塗工された塗工液23の固化前の厚み(塗工膜25のウェット厚み)の2.5〜20倍が好ましく、3〜15倍がより好ましい。また、ギャップGは、0.5〜2mmが好ましく、0.5〜1.5mmがより好ましい。
【0043】
図1には、塗工部3が、相対的に移動する帯状の被塗工物21に対して連続して塗工液23を吐出して塗工する態様を示すが、塗工部3が塗工液23を塗工する態様は、
図1の態様に限定されるものではない。また、
図1には、被塗工物21が時計回りに移動する態様を示すが、被塗工物21の移動方向も特に限定されるものではない。
【0044】
次いで、上記塗工装置1を用いる本実施形態の塗工膜形成方法について説明する。
【0045】
本実施形態の塗工膜形成方法は、塗工液23を吐出する吐出口3aaを有し、該吐出口3aaに対して相対的に移動している被塗工物21に、前記吐出口3aaから前記塗工液23を吐出して塗工する塗工装置1を用いて、前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工して塗工膜を形成する方法である。
【0046】
該塗工膜形成方法においては、前記塗工液23として所定の伸長度を有するものを用いる。すなわち、下記の形状のビードを形成可能なものを用いる。
該塗工膜形成方法においては、前記吐出口3aaから前記被塗工物21に前記塗工液23が吐出されているとき、前記吐出口3aa側において膨らんでいる膨出部分23aと、該膨出部分23aから前記被塗工物21まで先細りとなるように前記被塗工物21の移動方向Mの下流側に向かって斜めに延びている延在部分23bとを有するビードを形成しつつ前記吐出口3aaと前記被塗工物21とを結ぶ状態を維持しながら前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工する。
【0047】
しかも、該塗工膜形成方法においては、前記膨出部分23aの大きさに応じて、前記膨出部分23aが前記被塗工物21に接触しないように前記吐出口3aaと前記被塗工物21との間のギャップGを調整して前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工する。
【0048】
具体的には、本実施形態の塗工膜形成方法は、
上記伸長度を有する塗工液23を用い、膨出部分23aの大きさに応じて、膨出部分23aが被塗工物21に接触しないようにギャップGを調整した塗工装置1の塗工部3の吐出口3aaから塗工液23を吐出し、該吐出口3aaに対して相対的に移動している被塗工物21に該塗工液23を塗工する工程と、
被塗工物21に塗工された塗工液23を固化させて塗工膜25を得る工程とを備える。
【0049】
より具体的には、本実施形態の塗工膜形成方法においては、まず、吐出口3aaと被塗工物21とを結ぶ塗工液23が、上記した膨出部分23aと延在部分23bとを有するビードが形成されるように、且つ、膨出部分23aが被塗工物21に接触しないように、塗工液23の種類及び性状に応じて、吐出口3aaからの塗工液23の吐出量、被塗工物21の移動速度、及び、被塗工物21に対する塗工部3の配置を設定する。塗工部3の配置の設定においては、上記伸長度を有する塗工液23を用い、膨出部分23aの大きさに応じて、膨出部分23aが被塗工物21に接触しないようにギャップGを調整する。そして、設定した条件で、塗工部3の吐出口3aaから被塗工物21に塗工液23を吐出して塗工する。次いで、被塗工物21上に塗工された塗工液23を、固化部13によって固化させて、塗工膜25を得る。
【0050】
かかる塗工液23の膨出部分23a及び延在部分23bの形状は、塗工液23の種類、塗工膜25のウェット厚みT、被塗工物21の移動速度に応じて吐出口3aaと被塗工物21との間のギャップGが調整されることによって、決定される。
【0051】
かかる塗工液23は、固化成分を含有し、被塗工物21に塗工されて、該被塗工物21上で固化されるものである。
【0052】
かかる塗工液23の種類は、吐出口3aaと被塗工物21とを結ぶ塗工液23が、上記した膨出部分23aと延在部分23bとを有する形状となるような所定の伸長度を有するように、適宜設定され得る。
【0053】
ここで、伸長度は、
図3に示すように、内径2mmの円筒部材(伸長度の測定用の円筒部材)の開口から、該開口から1mm離れた位置にて30m/minの回転速度で回転するロール(伸長度の測定用のロール)に、塗工液23を5g/minの速度で吐出させ、円筒部材の開口とロールとの間隔(測定ギャップD)を1mmから大きくしていったとき、開口とロールとを結んでいる塗工液23が切断された際の上記開口とロールとの間隔を表す数値(mm)である。
伸長度の測定の際、室温23℃、相対湿度50%RHの環境下において、塗工液23の温度は、23±2℃に設定される。
上記膨出部分23aと延在部分23bとを有する形状となり易いという点で、塗工液23の伸長度は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。
【0054】
塗工液23の伸長度が2mm以上であることによって、塗工液23が十分に伸び易くなるため、被塗工物21に接触しないように膨出部分23aを形成し易くなり、また、途切れることなく延在部分23bを形成し易くなる。
このように、膨出部分23aと延在部分23bとの形成が容易となる。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜25を、より確実に得ることが可能となる。
【0055】
上記伸長度の上限は、特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。例えば、塗工液23の伸長度が大きくなり過ぎると、塗工液の液切れが悪くなり、これに起因して、塗工液のハンドリング性が悪化するという不具合が生じる傾向にある。従って、例えば、かかる不具合の発生を抑えるという観点を考慮すれば、塗工液23の伸長度は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましい。
【0056】
このような塗工液23としては、例えばポリマー溶液が挙げられ、上記固化成分として用いられる材料としては、熱硬化性材料、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等が挙げられる。
【0057】
塗工液23としては、具体的には、例えば、粘着剤が挙げられる。
これらのうち、塗工液23としては、例えば、アクリル系ポリマーが好ましい。これを用いることよって、偏光板を作製し得るという利点がある。
【0058】
塗工液23の粘度は、0.1Pa・s以上100Pa・s以下が好適であり、0.5Pa・s以上20Pa・s以下がより好適であり、1Pa・s以上20Pa・s以下がさらに好適である。かかる粘度は、後述する実施例に記載された測定方法によって測定された値である。
塗工液23の粘度が0.1Pa・s以上である場合には、乾燥による塗工膜への影響を受け難いという利点がある。
塗工液23の粘度が100Pa・s以下である場合には、公知のポンプが幅広く使用可能となり、また、塗工液のハンドリング性に優れるという利点がある。
【0059】
塗工液23の密度は、700〜1500kg/m
3が好ましく、800〜1400kg/m
3がより好ましく、800〜1000kg/m
3がさらに好ましい。かかる密度は、後述する実施例に記載された測定方法によって測定された値である。
【0060】
塗工された塗工液23の厚み(塗工膜25のウェット厚み)Tは、特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。かかる厚みTは、例えば、塗工液23の粘度に応じて、塗工部3からの塗工液23の吐出量及び被塗工物21の移動速度の少なくとも一方を調整することによって、調整され得る。
塗工された塗工液23の厚みTは、1μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上300μm以下がより好ましい。
かかる厚みTは、後述する実施例に記載された測定方法によって測定された値である。
【0061】
塗工部3の吐出口3aaからの塗工液23の吐出量(流束)は、例えば、8.3×10
−8〜2.5×10
−3m
2/sとし得る。
吐出口3aaからの塗工液23の吐出量は、例えば、上記ポンプ(不図示)によって塗工部3に供給する塗工液の供給速度を調整することによって、調整され得る。
【0062】
被塗工物21の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、5〜500μmであることが好ましい。
図1では、被塗工物21が可撓性を有する長尺状のものである態様を示すが、その他、被塗工物21が、単板状である態様や、非可撓性を有する態様を採用することもできる。
【0063】
かかる被塗工物21の移動速度は、例えば、支持部15の回転速度を調整することによって、調整され得る。かかる移動速度は、5〜300m/minであることが好ましく、10〜100m/minがより好ましく、10〜50m/minがさらに好ましい。
被塗工物21の移動速度が、5m/min以上であることによって、駆動系が安定するという利点がある。
被塗工物21の移動速度が、300m/min以下であることによって、被塗工物21と塗工液23との間に空気が入り込み難く、また、被塗工物21と支持部15との間への空気の同伴による蛇行を抑制し得るという利点がある。
【0064】
このように、本実施形態の塗工膜形成方法においては、塗工液23が、1〜20Pa・sの粘度を有し、800〜1000kg/m
3の密度を有し、被塗工物21の移動速度が5〜50m/minであることがより好適である。
【0065】
被塗工物21と吐出口3aaとの間のギャップGは、膨出部分23aが被塗工物21に接触しないように適宜設定されればよく、特に限定されないが、前述したように、例えば、0.5〜2mmが好ましく、0.5〜1.5mmがより好ましい。
【0066】
上記の通り、本実施形態の塗工膜形成方法は、
塗工液23を吐出する吐出口3aaを有し、該吐出口3aaに対して相対的に移動している被塗工物21に、前記吐出口3aaから前記塗工液23を吐出して塗工する塗工装置1を用いて、前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工して塗工膜25を形成する塗工膜形成方法であって、
前記塗工液23として所定の伸長度を有するものを用い、前記吐出口3aaから前記被塗工物21に吐出されているとき、前記吐出口3aa側において膨らんでいる膨出部分23aと、該膨出部分23aから前記被塗工物21まで先細りとなるように前記被塗工物21の移動方向Mの下流側に延びている延在部分23bとを有するビードを形成しつつ前記吐出口3aaと前記被塗工物21とを結ぶ状態を維持しながら前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工し、且つ、
前記膨出部分23aの大きさに応じて、前記膨出部分23aが前記被塗工物21に接触しないように前記吐出口3aaと前記被塗工物21との間のギャップGを調整して前記被塗工物21に前記塗工液23を塗工する方法である。
【0067】
かかる構成によれば、
図8に示すような従来の近接塗工よりもギャップGが大きくなるため、ギャップGが小さ過ぎることに起因する塗工ムラの発生を抑制し得る。
また、近接塗工よりもギャップGは大きいものの、その大きさが十分でないと塗工液23の膨らんだ部分(膨出部分)23aが被塗工物21に接触するおそれがある。しかし、上記のようにギャップGを調整することによって、この接触によって生じる、塗工膜25のウェット厚みのバラツキに起因する塗工ムラの発生を、抑制し得る。
さらに、ギャップGが大き過ぎることによって生じる、塗工液23が途切れることに起因する塗工ムラの発生を抑制し得る。
しかも、吐出口3aaから真っ直ぐ且つ膜状に塗工液23を噴出させるべくスロット幅を小さくする必要がある特許文献1の場合と比較して、膨出部分23aと延在部分23bとが存在し得る程度に塗工液23を吐出する勢いを弱めるべくスロット幅を大きくして塗工液23を吐出することが可能となるため、その分、塗工膜25のウェット厚みのバラツキが発生することを、抑制し得る。
このように、ギャップがG小さ過ぎることに起因する塗工ムラや、ギャップGは大きいものの勢いよく塗工液23が被塗工物21に衝突することに起因する塗工ムラを抑制し得る。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜25を得ることが可能となる。
【0068】
本実施形態の塗工膜形成方法においては、前記所定の伸長度が2mm以上であることが好ましい。
伸長度が2mm以上である塗工液を用いることによって、塗工液23が十分に伸び易くなるため、被塗工物21に接触しないように膨出部分23aを形成し易くなり、また、途切れることなく延在部分23bを形成し易くなる。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜25を、より確実に得ることが可能となる。
【0069】
本実施形態の塗工膜形成方法においては、前記被塗工物21と前記吐出口3aaとの間のギャップGを、0.5〜2mmとすることが好ましい。
上記ギャップGを0.5mm以上とすることによって、塗工膜25の外観不良、特に点欠点を、より抑制することができ、ギャップGを2mm以下とすることによって、巻取り不良(耳高)を、より抑制し得る。
【0070】
本実施形態の塗工膜形成方法においては、前記吐出口3aaの間隔(スロット幅)を、0.05〜1.5mmとすることが好ましい。
ここで、吐出口3aaの間隔が小さ過ぎると、スロット8の加工精度のバラツキが塗工膜25のウェット厚みのバラツキに及ぼす悪影響が大きくなり過ぎ、そのバラツキが許容できないものとなるおそれがあり、吐出口3aaの間隔が大き過ぎると、ダイの内圧が低下してダイ内部で幅方向に塗工液23を均一に分配できず、塗工膜25のウェット厚みのバラツキが許容できなくなるおそれがある。
しかし、吐出口3aaの間隔を0.05mm以上とすることによって、スロット8の加工精度のバラツキが塗工膜25のウェット厚みに及ぼす悪影響を小さくすることができる。また、吐出口3aaの間隔を1.5mm以下とすることによって、ダイの内圧の低下を抑制してダイ内部で幅方向に塗工液23をより均一に分配することができるため、塗工膜25のウェット厚みのバラツキを抑制することができる。
従って、塗工ムラに起因する品質低下が抑制された塗工膜25を、より確実に得ることが可能となる。
【0071】
以上の通り、本実施形態によれば、塗工ムラによる品質低下が抑制された塗工膜形成方法が提供される。
【0072】
本実施形態の塗工膜形成方法は、上記の通りであるが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更されることが可能である。
【実施例】
【0073】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、特に規定のない限り、測定環境条件は全て23℃50%RHである。
【0074】
(使用材料)
・被塗工物:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ダイヤホイール、 三菱樹脂社製)
・塗工液:アクリルポリマー溶液A〜H(表1参照)、溶媒:トルエン、酢酸エチル
【0075】
(密度の測定方法)
コリオリ式流量計(プロマス83F、エンドレスハウザー社製)の密度測定機能を用いることによって、塗工液の密度を測定した。
【0076】
(粘度の測定方法)
治具(コーンの直径が25〜50mm、コーンの角度が0.5〜2°であるコーンプレート)を備えたレオメータ(MCR302、冶具:直径50mm、角度1°のコーンプレート、Anton Paar社製)を用い、21〜25℃の温度条件下で、せん断速度1(1/s)の条件で、塗工液の粘度を測定した。
【0077】
(伸長度の測定方法)
前述した
図3に示すように、内径2mmの円筒部材(伸長度の測定用の円筒部材)の開口から、該開口から1mm離れた位置にて30m/minの回転速度で回転するロール(伸長度の測定用のロール)に、塗工液23を5g/minの速度で吐出させ、円筒部材の開口とロールとの間隔(測定ギャップD)を1mmから大きくしていったとき、開口とロールとを結んでいる塗工液23が切断された際の上記開口とロールとの間隔を表す数値(mm)を測定した。測定の際、塗工液23の温度は、23℃±2℃に設定した。
【0078】
(実験例1)
上記材料を用い、下記及び表1の条件で被塗工物に塗工液を吐出し、下記の方法で塗工状態を調べた。結果を、表1に示す。また、ギャップが1.0mmの場合における塗工状態についての結果を
図4に示し、ギャップが0.2mmの場合における塗工状態についての結果を
図5に示し、ギャップが5.0mmの場合における塗工状態についての結果を
図6及び
図7に示す。
【0079】
(塗工条件)
・塗工液の吐出量(流束):4.2×10
−5m
2/s
・スロット幅:0.6mm
・被塗工物の移動速度:25m/min
・塗工部の下流側リップ部の長さ:1.0mm
・塗工膜のウェット厚み:100μm
・塗工幅:150mm
・被塗工物と吐出口との距離(ギャップ):0.2〜5.0mm
【0080】
(塗工膜のウェット厚みの測定方法)
分光干渉厚み計(Si−T、キーエンス社製)を用い、インラインで塗工膜のウェット厚みを測定した。
【0081】
(塗工状態の評価)
・膨出部分及び延在部分の形成の有無
塗工部と被塗工物との間において塗工部から吐出されている塗工液を目視にて観察することによって、吐出された塗工液において膨出部分及び延在部分が形成されているか否かを調べ、下記のようにして評価した。
○:膨出部分及び延在部分が形成されており、塗工状態が良好である。
△:ビードは形成されたものの、膨出部分及及び延在部分は形成されておらず、いわゆる近接塗工の状態になっている。
*:膨出部分となるべき領域が被塗工物と接触していることからビードが形成されておらず、塗工状態が不良である。
×:塗工液が下方に垂れていることからビードが形成されておらず、よって、塗工することができず、塗工状態が不良である。
【0082】
・被塗工物に塗工された固化される前の塗工液の外観状態
被塗工物に塗工され、固化される前の塗工液(ウェット状態の塗工膜)を目視にて観察することによって、該塗工液の外観状態を調べ、下記のようにして評価した。
◎:被塗工物に塗工された固化される前の塗工液に外観不良が発生しておらず、その外観が非常に良好である。
○:被塗工物に塗工された固化される前の塗工液に巻き取り不可能な程度の外観不良(両端部が盛り上がる、いわゆる耳高)が発生しておらず、点欠点、スジ、ムラといったその他の外観不良も発生しておらず、その外観が良好である。
△:被塗工物に塗工された固化される前の塗工液に外観不良(点欠点)が発生しており、その外観が不良である。
*:被塗工物に塗工された固化される前の塗工液に外観不良(スジ、ムラ)が発生しており、その外観が不良である。
×:被塗工物に塗工された固化される前の塗工液に巻き取り不可能な程度の外観不良(耳高)が発生しており、その外観が不良である。
−:塗工液が被塗工物に到達しないことから塗工膜が形成されない。
【0083】
【表1】
【0084】
その結果、表1及び
図4に示すように、ギャップ内において、塗工液が膨出部分と延在部分とを有する場合には、塗工不良が観察されなかった。
【0085】
表1、
図6及び
図7に示すように、ギャップが5.0mmである場合には、塗工液が吐出口と被塗工物とを結ぶことができず、塗工液が途切れたため、塗工膜が形成されなかった。
【0086】
表1及び
図5に示すように、ギャップが0.2mmである場合には、近接塗工の状態となり、外観不良(点欠点)が発生した。アクリルポリマー溶液D、E、Fでは、ギャップが0.5mmである場合に、吐出口と被塗工物とを結ぶ塗工液が、膨らんだような部分と延在部分とを有するものの、膨らんだような部分が被塗工物に接触し、膨出部分が形成されなかった。
【0087】
また、ギャップが2.5mmであり、耳高の外観不良が発生した試料について、被塗工物に塗工された塗工液を固化させた後、被塗工物を巻き取ると、巻ずれが発生し、良好に巻き取ることができなかった。この結果、ギャップが2.5mm以上になると、耳高の外観不良が発生し、巻き取り不良が生じ得ることがわかった。
【0088】
(実験例2)
実験例1のアクリルポリマー溶液D、G(表1参照)を用い、スロット幅を0.3mm、1.2mmに変更すること以外は実験例1と同様にして、被塗工物に塗工液を塗工し、塗工状態を評価した。結果を表2に示す。なお、表2において、アクリルポリマー溶液D、Gにおいて、スロット幅が0.6mmである場合の結果は、実験例1での結果を転記した。
【0089】
【表2】
【0090】
(実験例3)
実験例1のアクリルポリマー溶液D(表1参照)を用い、ギャップが1.5mmである場合において、下流側リップ部の長さを0.5mm、1.5mmに変更すること以外は実験例1と同様にして、被塗工物に塗工液を塗工し、塗工状態を評価した。結果を、表3に示す。なお、表3において、下流側リップ部の長さが1.0mmである場合の結果は、実験例1での結果を転記した。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示すように、下流側リップ部の長さを変更しても、膨出部分及び延在部分を形成することができ、塗工不良も観察されなかった。
【0093】
(参考例1)
下記表4に示されるように、特許文献1の無次元数Mが0.2よりも大きくなるように(M=(ρ・U・hw2)/(μ・d)>0.2)塗工液を選択し、表4及び下記に示すように各条件を設定した。設定した各条件で下記被塗工物に対して塗工を行ったところ、塗工液が垂れて塗工することができなかった。
【0094】
・被塗工物:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ダイヤホイール、三菱樹脂社製)
【0095】
・塗工液(1):アクリル系ポリマー溶液、溶媒:トルエン、酢酸エチル
ポリマー平均重量分子量:約80万
ポリマー濃度:2.6wt%
(塗工条件)
塗工液の吐出量(流束):5.0×10
−6〜1.0×10
−4m
2/s
スロット幅:19〜25μm
被塗工物の移動速度:25m/min
塗工部の下流側リップ部の長さ:1.0mm
塗工膜のウェット厚み:10〜200μm
塗工幅:150mm
被塗工物と吐出口との距離(ギャップ):0.5mm
【0096】
・塗工液(2):グリセリン水溶液、溶媒:水
グリセリン濃度:60wt%
(塗工条件)
塗工液の吐出量(流束):8.3×10
−6〜1.33×10
−4m
2/s
スロット幅:19〜75μm
被塗工物の移動速度:25m/min
塗工部の下流側リップ部の長さ:1.0mm
塗工膜のウェット厚み:5〜80μm
塗工幅:150mm
被塗工物と吐出口との距離(ギャップ):0.5mm
【0097】
【表4】
【0098】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】 塗工液を吐出する吐出口を有し、該吐出口に対して相対的に移動している被塗工物に、前記吐出口から前記塗工液を吐出して塗工する塗工装置を用いて、前記被塗工物に前記塗工液を塗工して塗工膜を形成する塗工膜形成方法であって、前記塗工液として所定の伸長度を有するものを用い、膨出部分と延在部分とを有するビードを形成しつつ、前記膨出部分が前記被塗工物に接触しないように前記吐出口と前記被塗工物との間のギャップを調整する、塗工膜形成方法。