(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の静電容量型センサは、本発明の静電容量型センサは、測定対象物の回転角度の測定に用いられる静電容量型センサであって、
エラストマー製の誘電層と、上記誘電層の上面に形成された第1電極層と、上記誘電層の下面に形成された第2電極層とを含み、上記第1電極層及び上記第2電極層の対向する部分を検出部とし、可逆的に変形可能で、かつ、変形に応じて上記検出部の静電容量が変化するセンサシートと、
上記第1電極層及び上記第2電極層に接続され、上記検出部の静電容量を測定する計測部と、
上記検出部の静電容量に基づいて上記測定対象物の回転角度を算出する演算部と
を備え、
上記センサシートを上記測定対象物に貼り付けて使用することを特徴とする。
【0018】
図1は、本発明の静電容量型センサの一例を示す概略図である。
図2(a)は、本発明の静電容量型センサを構成するセンサシートの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【0019】
本発明に係る静電容量型センサ1は、
図1に示すように、誘電層を介して電極層が対向配置された検出部を有するセンサシート2と、センサシート2と外部配線を介して電気的に接続された静電容量を測定する計測部3と、計測部3での計測結果に基づいて測定対象物の回転角度を算出する演算部4とを備えている。
計測部3は、静電容量Cを周波数信号Fに変換するためのシュミットトリガ発振回路3a、周波数信号Fを電圧信号Vに変換するF/V変換回路3b、電源回路(図示せず)を備えており、センサシート2の検出部で検出された静電容量Cを周波数信号Fに変換した後、更に電圧信号Vに変換し、演算部4に送信する。なお、後述するように、計測部3の構成はこのような構成に限定されるわけではない。
演算部4は、演算回路4aに加えて、モニター4b、記憶部4cを備えており、計測部3で測定された上記静電容量Cの計測値に基づいて、測定対象回転角度を算出するとともに、静電容量Cの計測値及び算出された回転角度を、モニター4bに表示させたり、記憶部に記録データとして記憶させたりする。演算部4としては、CPU、RAM,ROM,HDD等の記憶部、モニター、各種入出力インターフェイス等を備えたコンピュータを用いることができる。
【0020】
センサシート2は、
図2(a)及び(b)に示すように、エラストマー製でシート状の誘電層11と、誘電層11の表面(おもて面:
図2中、上側)に形成された表側電極層12Aと、誘電層11の裏面(
図2中、下側)に形成された裏側電極層12Bと、表側電極層12Aに連結された表側配線13Aと、裏側電極層12Bに連結された裏側配線13Bと、表側配線13Aの表側電極層12Aと反対側の端部に取り付けられた表側接続部14Aと、裏側配線13Bの裏側電極層12Bと反対側の端部に取り付けられた裏側接続部14Bと、誘電層11の表側及び裏側のそれぞれに積層された表側保護層15A及び裏側保護層15Bと、裏側保護層15Bに積層された粘着層18を備える。
【0021】
ここで、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは、同一の平面視形状を有しており、誘電層11を挟んで表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは全体が対向している。センサシート2では、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとの対向した部分が検出部となる。
なお、本発明において、センサシートが備える表側電極層と裏側電極層とは、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。
また、センサシート2では、表側電極層12Aが第1電極層に、裏側電極層12Bが第2電極層に、それぞれ相当する。
【0022】
センサシート2では、誘電層11がエラストマー製のため、面方向に変形(伸縮)可能であり、誘電層11が面方向に変形した際には、その変形に追従して表側電極層12A及び裏側電極層12B、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)が変形する。
そして、センサシート2の変形に伴い、上記検出部の静電容量が誘電層11の変形量と相関をもって変化する。よって、静電容量の変化を検出することで、センサシート2の変形状態を把握することができる。
【0023】
本発明の静電容量型センサは、測定対象物の回転角度の測定に用いられるものである。
また、上記静電容量型センサでは、連続的又は断続的に測定対象物の回転角度を測定することにより、測定対象物の曲げ動作(回転動作)を追跡することができる。
よって、本発明では屈曲運動可能なものが測定対象物となる。
【0024】
上記測定対象物は、連結部で連結された2本のリンク相当部を有し、各リンク相当部のそれぞれが上記連結部を回転軸として回転可能に構成されたものが好ましい。このような測定対象物に対して、一方又は両方のリンク相当部を回転させつつ上記検出部の静電容量を測定すると、リンク相当部の運動に応じて上記検出部の静電容量の値が変化することとなる。そのため、上記静電容量の測定値に基づいて測定対象物の回転角度(リンク相当部の回転角度)を算出することができる。
また、このような測定対象物に対して、上記センサシートを上記連結部を覆うように貼り付けて回転角度の測定を行う場合、センサシートの検出部の静電容量と、測定対象物の回転角度とが線形の関係にあるため、簡便、かつ容易に測定対象物の回転角度を計測することができる。これについては後に詳述する。
この場合、測定対象物の回転角度とは、2本のリンク相当部が成す角度をいう。
【0025】
上記測定対象物の回転角度の具体例としては、生体(ヒトや動物等)やロボットの関節角度、蝶番(ヒンジ)の回転角度、ケーブル類や柔軟板の曲り具合等が挙げられる。
これらのなかでは、生体の関節角度が好ましい。上記センサシートは、測定対象物の曲げ運動を阻害しないことを特徴の1つとしており、この点で、生体の関節角度の測定との相性が良好だからである。
【0026】
本発明による測定の対象が生体の関節角度である場合、対象となる関節としては、曲げ伸ばし等、動かすことができる関節であれば特に限定されず、例えば、指、手首、肘、肩、首、腰、膝、足首等が挙げられる。
ここで、例えば、対象となる関節が手首の場合には、手及び前腕が上記リンク相当部に該当し、手首の関節が上記連結部に該当する。また。例えば、対象となる関節が肘である場合には、前腕及び上腕が上記リンク相当部に該当し、肘の関節が上記連結部に該当する。
【0027】
本発明の静電容量型センサを用いて関節角度を測定する場合、上記センサシートは少なくとも関節を覆うように貼り付け、さらに、上記リンク相当部に該当する部分(例えば、関節が手首の関節である場合は、手及び前腕)の一部も覆うように貼り付けることが好ましい。これにより、より正確に関節角度を測定することができるからである。
【0028】
また、上記センサシートを生体の測定箇所(関節の表面)に貼り付けて使用する場合、上記センサシートは、生体表面に直接貼り付けても良いし、衣服やサポーター、包帯等の生体表面を被覆する被覆材を介して生体表面に間接的に貼り付けてもよい。
上記センサシートを生体に貼り付けた状態で、関節を可動させつつ上記検出部の静電容量を測定すると、関節角度の変化に応じて上記検出部の静電容量の値が変化することとなる。そのため、上記静電容量の測定値に基づいて関節角度を算出することができる。
【0029】
連結部で連結された2本のリンク相当部を有し、各リンク相当部のそれぞれが上記連結部を回転軸として回転可能に構成された測定対象物の回転角度を算出する場合、上記回転角度の算出は、以下の通り行う。
【0030】
平板状の誘電層に両面に平面視矩形状の電極層が設けられたコンデンサ(センサシート)におけるコンデンサの容量Cは、下記式(1)で算出される。
【0031】
【数1】
(式中、Cは静電容量[pF]、ε
0は真空の誘電率[F/m]、ε
rは比誘電率、hは電極層の重なっている部分の長さ(長手方向の長さ)[m]、wは電極層の重なっている部分の幅(短手方向の長さ)[m]、dは電極層間の距離(誘電層の厚さ)[m]である。)
【0032】
ここで、上記センサシートは弾性体の性質を有しており、変形させた際の体積変化が実質的に無視できる。このため、上記センサシートを長手方向に変形させた際には、伸長率をnとすると、
【0033】
【数2】
となる(ここで、h
0は伸長前の長さ、d
0は伸長前の距離、W
0は伸長前の幅である。)。そのため、伸長前後において、距離dに対する幅Wの比:w/dは、一定値をとる。よって、上記静電容量Cは、下記式(2)で表すことができる。
【0034】
【数3】
(ここで、k
1は定数である。)
即ち、上記センサシートの静電容量Cは、上記センサシートが長手方向に伸縮する場合、上記電極層の長さと比例関係にある。そのため、上記センサシートが長手方向にn倍伸長した場合には、その静電容量もn倍に大きくなり、伸長率nで伸長した際のセンサシートの静電容量C
nは、C
n=nC
0(ここで、C
0は伸長前の静電容量である。)で表される。
本発明の静電容量型センサでは、上記センサシートが有するこのような性質を利用して上記測定対象物の回転角度を測定する、
【0035】
図3は、本発明の静電容量型センサを用いて測定対象物の回転角度を計測する手法を説明するための模式図である。
本発明の静電容量型センサを用いて回転角度を計測する場合、
図3に示すような、連結部51で連結された2本のリンク相当部52,53を有し、各リンク相当部52,53のそれぞれが連結部51(連結部51の中心51a)を回転軸として回転可能に構成されたものが測定対象物50となる。
上記静電容量型センサによる回転角度の測定では、このような測定対象物50に対し、センサシート2を連結部51を覆うように2本のリンク相当部52,53のそれぞれの一部にセンサシート2を貼り付ける。
【0036】
ここでは、リンク相当部52は固定したままとし、リンク相当部53を連結部51の中心51aを回転軸として回転させた際の回転角度(リンク相当部52とリンク相当部53との成す角度)を測定する例を説明する。なお、この例では、連結部51の半径rが一定であること、回転軸51aの位置及び方向が一定であること、リンク相当部52,53自体が伸縮しないこと、リンク相当部53の回転に追従したセンサシートの伸びが円弧に沿って生じることを前提条件としている。
図3に示したように、リンク相当部52とリンク相当部53が一直線上にある場合を初期状態とし、この状態からリンク相当部53が連結部51を回転軸にして下方に回転した場合(回転角θ(rad))、このリンク相当部53の回転に伴って、センサシート2は伸長し、その伸び量はrθであるため、リンク相当部53が回転した際のセンサシートにおける電極層の重なっている部分の長さhの変化量Δhは、下記式(3)で表される。
【0037】
【数4】
そして、リンク相当部53の回転角がθの場合のセンサシート2における静電容量Cの変化量ΔCは、上記式(3)を上記式(2)に代入することにより、下記式(4)で表される。
【0038】
【数5】
(ここで、k
2及びk
3はいずれも定数である。)
【0039】
よって、本発明の静電容量センサを用いた測定対象物の回転角度の測定(回転角度の追跡)では、回転角度は、センサシートの静電容量の変化量Δθを変数とする1次関数で表すことができる。このことは、後述する実施例での検証結果からも明らかである。
【0040】
そのため、上記制御部では、下記式(5)に示すような、静電容量の変化量ΔCを変数とする一次関数、
θ=aΔC+b・・・(5)
に、センサシートに検出部で検出された静電容量の変化量を代入することにより、曲げ変形後の測定対象物の回転角度を算出することができる。また、上記回転角度の算出を連続的又は断続的に行うことにより、測定対象物の回転角度の変化を追跡することができる。
【0041】
また、このような方法で測定対象物の回転角度を測定する場合、上記式(5)を求めるために、予め、キャリブレーションを行うことが好ましい。
具体的には、実際の測定と同様に、測定対象物にセンサシートを貼り付けた後、測定精度の確立された手法、例えば、デジタル角度計、ゴニオメータ、モーションキャプチャ等で測定対象物の回転角度を測定するともに、そのときのセンサシートの検出部における静電容量を測定する。ここで、上記測定精度確立された手法による回転角度の測定は、少なくとも2箇所(例えば、回転角度0°の位置と90°の位置)で行う。また、上記測定精度確立された手法による測定の測定箇所を増やすことにより、キャリブレーションの精度を向上させることができる。
その後、得られた回転角度及び静電容量の値に基づいて、上記式(5)における傾きaと切片bを算出することにより、上記式(5)を求めることができる。
【0042】
なお、測定対象物が
図3に示した測定対象物50であって、連結部51の半径rの値が既知である場合には、上記キャリブレーションを行わなくても、回転角度θと静電容量の変化量ΔCとの関係を表す一次関数を求めることができる。
【0043】
本発明の静電容量型センサでは、上記演算部でこのような計算を行うことにより、測定対象物の回転角度を算出することができる。
なお、上記センサシートを曲げ変形可能な測定対象物に貼り付けておき、上記測定対象物が曲げ変形した際に、上記曲げ変形に伴う上記検出部の静電容量の変化量ΔCを測定する工程と、上記静電容量の変化量ΔCに基づいて、曲げ変形後の上記測定対象物の回転角度θを算出する工程とを含む、上述したような回転角度の測定方法は本発明の1つである。
【0044】
本発明の静電容量型センサが備えるセンサシートは、
図2に示したセンサシート2に限定されるわけではなく、エラストマー製の第1誘電層と、上記誘電層の上面に形成された第1電極層と、上記誘電層の下面に形成された第2電極層とに加えて、更に、上記第1電極層上に積層されたエラストマー製の第2誘電層と、上記第2誘電層の上面に積層された第3電極層とを含み、上記第1電極層及び上記第2電極層の対向する部分を第1検出部、上記第1電極層及び上記第3電極層の対向する部分を第2検出部とし、可逆的に変形可能で、かつ、変形に応じて上記第1検出部及び第2検出部の静電容量が変化するセンサシートであっても良い。
【0045】
図4(a)は、本発明の静電容量型センサを構成するセンサシートの別の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線断面図である。
センサシート2′は、エラストマー製でシート状の裏側誘電層(誘電層(以下、第1誘電層ともいう))21Bと、裏側誘電層21Bの表面(おもて面:
図4中、上側)に形成された中央電極層(第1電極層)22Aと、裏側誘電層21Bの裏面(
図4中、下側)に形成された裏側電極層(第2電極層)22Cと、中央電極層22Aの表側(
図4中、上側)に積層された表側誘電層(第2誘電層)21Aと、表側誘電層21Aの表面に形成された表側電極層(第3電極層)22Bとを備える。
更に、センサシート2′は、中央電極層22Aに連結された中央配線23Aと、表側電極層22Bに連結された表側配線23Bと、裏側電極層22Cに連結された裏側配線23Cと、中央配線23Aの中央電極層22Aと反対側の端部に取り付けられた中央接続部24Aと、表側配線23Bの表側電極層22Bと反対側の端部に取り付けられた表側接続部24Bと、裏側配線23Cの裏側電極層22Cと反対側の端部に取り付けられた裏側接続部24Cとを備える。
また、センサシート2′では、表側誘電層21Aの表側及び裏側誘電層21Bの裏側のそれぞれに表側保護層(第1保護層)25A及び裏側保護層(第2保護層)25Bが設けられ、更に裏側保護層25Bに積層された粘着層28が設けられている。
【0046】
ここで、中央電極層22A、表側電極層22B及び裏側電極層22Bは、同一の平面視形状を有している。また、中央電極層22Aと表側電極層22Bとは表側誘電層21Aを挟んで全体が対向しており、中央電極層22Aと裏側電極層22Cとは裏側誘電層21Bを挟んで全体が対向している。センサシート2′では、中央電極層22Aと表側電極層22Bとの対向した部分が表側検出部(第2検出部)となり、中央電極層22Aと裏側電極層22Cとの対向した部分が裏側検出部(第1検出部)となる。
なお、上記センサシートにおいて、中央電極層と表側電極層、及び、中央電極層と裏側電極層のそれぞれは、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。
【0047】
センサシート2′では、上記表側検出部(第2検出部)の静電容量と上記裏側検出部(第1検出部)の静電容量とを加算した合計静電容量をセンサシートの検出部の静電容量とする。
そのため、センサシート2′では、表側電極層22B(表側接続部24B)と裏側電極層22C(裏側接続部24C)とが電気的に接続した状態(短絡した状態)でリード線等を介して計測部3の端子に接続され、中央電極層22A(中央接続部24A)がリード等を介して計測部3の別の端子に接続される。
【0048】
センサシート2′では、表側誘電層21A及び裏側誘電層21Bがともにエラストマー製であるため、面方向に変形(伸縮)可能であり、誘電層(表側誘電層21A及び裏側誘電層21B)が面方向に変形した際には、その変形に追従して各電極層(中央電極層22A、表側電極層22B及び裏側電極層22C)、並びに、表側保護層25A及び裏側保護層25B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)が変形する。
そして、センサシート2′の変形に伴い、各検出部の静電容量が誘電層(表側誘電層21A及び裏側誘電層21B)の変形量と相関をもって変化する。よって、センサシート2′を用いた場合も、センサシート2を用いた場合と同様、測定対象物の回転角度を計測することができる。
【0049】
また、センサシートとしてセンサシート2′を用いた静電容量型センサでは、センサシート2を用いた静電容量型センサと比べて、ノイズによる静電容量の測定値の変動を抑えることができ、ノイズが存在する状況下や測定時にノイズが変動する状況下でもより正確にセンサシートの変形状態を計測することができる点で有利である。
静電容量型センサを使用する場合、電磁ノイズや電源ノイズが入りやすい場所や、センサシートの電極層が導体と接触又は近接する環境で使用すると、使用状況によって検出部の静電容量の測定値が変動することがある。例えば、センサシートとしてセンサシート2を使用した場合には、センサシートの上面側からノイズが入りこむか(上面側がノイズ源に近接するか)、又は、下面側からノイズが入りこむか(下面側がノイズ源に近接するか)によって、静電容量の測定値が異なることがある。
更に、上面側の電極層及び下面側の電極層の両方に導体が近接し、上面側に近接した導体と下面側に近接した導体とが電気的に接続されている場合(例えば、電極層上に保護層が積層されたセンサシートの両側を水や身体で触れる場合や、電極層上に保護層が積層されたセンサシートの両側を電気的に接続された金属板で挟む場合等)にも、静電容量の測定値が異なることがある。この場合では、上面側の電極層とこれに近接した導体との間の静電容量、及び、下面側の電極層とこれに近接した導体との間の静電容量が、直列で接続された2つの静電容量の合成静電容量として、センサシートの本来の検出部の静電容量に加算されて測定されることとなる。
【0050】
これに対して、センサシートとしてセンサシート2′を使用する場合には、第1検出部の静電容量と第2検出部の静電容量とを加算した合計静電容量を測定する。即ち、上記センサシートでは、検出部の構造(第1検出部及び第2検出部の構造)を2つのコンデンサが並列に配置された構造とみなして静電容量の測定を行う。そのため、例えば、センサシート2′を備えた静電容量型センサでは、表側電極層(第3電極層)と裏側電極層(第2電極層)とを両者が電気的に接続された状態(短絡した状態)で計測部に接続する。この場合、上面側からノイズが入りこむ(上面側がノイズ源に近接する)場合も、下面側からノイズが入りこむ(下面側がノイズ源に近接する)場合も、各電極層を所定の向きで計測部に接続している限り、静電容量の測定値は略同一の値となる。
また、センサシート2′の上面側及び下面側の両側から、第3電極層及び第2電極層のそれぞれに、互いに電気的に接続された導体が近接した場合(例えば、水に浸かる、身体で保護層が積層されたセンサシートの両側を触れる、接続された2枚の金属板で保護層が積層されたセンサシートを挟む)でも、各電極層を所定の向きで計測部に接続している限り静電容量の測定値は略同一の値となる。この場合、第3電極層と第2電極層とは、同一の電位となるため、それぞれの外側電極層(第3電極層及び第2電極層)と近接した導体との間の静電容量が介入する経路が形成されず、近接する導体と各外側電極層との間の静電容量が加算されて測定されることがないからである。
よって、上述した通り、センサシート2′を用いることにより、ノイズによる静電容量の測定値の変動を抑えることができる。
なお、本発明において、外側電極層に導体が近接するとは、金属部材等の導電性の部材が近接する場合は勿論のこと、生体表面が近接する場合や、水や汗、体液等の導電性を有する液体が外側電極層に付着する場合等を含む概念である。
【0051】
以下、本発明の静電容量型センサが備える各部材について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、第1誘電層及び第2誘電層の説明に関して特に両者を区別する必要がない場合は、単に「誘電層」と表記することがあり、表側電極層、裏側電極層及び中央電極層の説明に関して特に各電極層を区別する必要がない場合は、単に「電極層」と表記することがある。
【0052】
<センサシート>
<<誘電層>>
上記センサシートは、エラストマー製の誘電層を備える。これらの誘電層は、エラストマー組成物を用いて形成することができる。
また、上記センサシートが第1誘電層と第2誘電層とを備える場合、両者は、同一のエラストマー組成物を用いて形成されていても良いし、異なるエラストー組成物を用いて形成されていても良い。両者は、同一のエラストマー組成物を用いて形成されていることが好ましい。変形時に同様の挙動を示すからである。
【0053】
上記誘電層は、エラストマー組成物を用いて形成されたシート状物であり、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。本発明において、誘電層に表裏面とは、誘電層の表(おもて)面及び裏面を意味する。
【0054】
上記エラストマー組成物としては、エラストマーと、必要に応じて他の任意成分とを含有するものが挙げられる。
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
これらのなかでは、ウレタンゴム、シリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が小さいからである。更に、シリコーンゴムに比べてカーボンナノチューブとの密着性に優れるため、電極層がカーボンナノチューブを含有する場合にはウレタンゴムが特に好ましい。
【0055】
上記ウレタンゴムは、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とが反応してなるものであり、具体例としては、例えば、オレフィン系ポリオールをポリオール成分とするオレフィン系ウレタンゴム、エステル系ポリオールをポリオール成分とするエステル系ウレタンゴム、エーテル系ポリオールをポリオール成分とするエーテル系ウレタンゴム、カーボネート系ポリオールをポリオール成分とするカーボネート系ウレタンゴム、ひまし油系ポリオールをポリオール成分とするひまし油系ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。また、上記ウレタンゴムは、2種以上の上記ポリオール成分を併用したものであってもよい。
【0056】
上記オレフィン系ポリオールとしては、例えば、エポール(出光興産社製)等が挙げられる。
また、上記エステル系ポリオールとしては、例えば、ポリライト8651(DIC社製)等が挙げられる。
また、上記エーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、PTG−2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)、パンデックスGCB−41(DIC社製)等が挙げられる。
【0057】
上記イソシアネート成分としては特に限定されず、従来公知のイソシアネート成分を用いることができる。
また、上記ウレタンゴムを合成する際には、その反応系中に必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、加硫促進剤等を加えても良い。
【0058】
また、上記エラストマー組成物は、エラストマー以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電性フィラー等を含有してもよい。
【0059】
上記誘電層の平均厚さ(第1誘電層と第2誘電層を備える場合は、それぞれの誘電層の平均厚さ)は、静電容量Cを大きくして検出感度の向上を図る観点、及び、測定対象物への追従性の向上を図る観点から、10〜1000μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
【0060】
上記誘電層は、変形時に面積(誘電層の表面の面積及び裏面の面積)が無伸長状態から30%以上増大するように変形可能であることが好ましい。このような特性を有すると、上記センサシートが関節の可動に追従して変形するのに適しているからである。
ここで、面積が30%以上増大するように変形可能であるとは、荷重を掛けて面積を30%増大させても破断することがなく、かつ、荷重を解放すると元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。上記誘電層の面積の変形可能な範囲は、50%以上増大するように変形可能であることがより好ましく、100%以上増大するように変形可能であることが更に好ましく、200%以上増大するように変形可能であることが特に好ましい。
なお、上記誘電層の面方向の変形可能な範囲は誘電層の設計(材質や形状等)により制御することができる。
【0061】
上記誘電層の常温における比誘電率は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。誘電層の比誘電率が2未満であると、検出部の静電容量が小さくなり、センサシートとして充分な感度が得られないことがある。
【0062】
上記誘電層のヤング率は、0.1〜10MPaであることが好ましい。ヤング率が0.1MPa未満であると、誘電層が軟らかすぎ、高品質な加工が難しく、充分な測定精度が得られないことがある。一方、ヤング率が10MPaを超えると、誘電層が硬すぎて測定対象物の曲げ変形(関節の動き等)を阻害するおそれがある。
【0063】
上記誘電層の硬さは、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いた硬さ(JIS A硬さ)で、0〜30°であるか、又は、JIS K 7321に準拠したタイプCデュロメータを用いた硬さ(JIS C硬さ)で10〜55°が好ましい。
誘電層が軟らかすぎると高品質な加工が難しく、充分な測定精度を確保することができない場合があり、誘電層が硬すぎると、測定対象物の曲げ変形を阻害する恐れがある。
【0064】
<<電極層>>
上記電極層は、導電材料を含有する導電性組成物からなる。
ここで、各電極層のそれぞれは、同一組成の導電性組成物から構成されていてもよいし、異なる組成の導電性組成物から構成されていてもよい。
【0065】
上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
上記導電材料としては、カーボンナノチューブが好ましい。誘電層の変形に追従して変形する電極層の形成に適しているからである。
【0066】
上記カーボンナノチューブとしては公知のカーボンナノチューブを使用することができる。上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよいし、また、2層カーボンナノチューブ(DWNT)又は3層以上の多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよい(本明細書では、両者を合わせて単に多層カーボンナノチューブと称する)。更には、層数の異なるカーボンナノチューブを2種以上併用してもよい。
また、各カーボンナノチューブの形状(平均長さや繊維径、アスペクト比)も特には限定されず、静電容量型センサの使用目的や、センサシートに要求される導電性や耐久性、更には電極層を形成するための処理や費用を総合的に判断して適宜選択すればよい。
【0067】
上記カーボンナノチューブの平均長さは、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。このような繊維長さが長いカーボンナノチューブを用いて形成された電極層は、導電性に優れ、誘電層の変形に追従して変形した際(特に伸長した際)に電気抵抗がほとんど増大せず、更に、繰り返し伸縮しても電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を有するからである。
これに対し、カーボンナノチューブの平均長さが10μm未満では、電極層の変形に伴って電気抵抗が増大したり、電極層を繰返し伸縮させた際に電気抵抗のバラツキが大きくなったりする場合がある。特に、センサシート(誘電層)の変形量が大きくなった場合にこのような不都合が発生しやすくなる。
【0068】
上記カーボンナノチューブの平均長さの好ましい上限は1000μmである。平均長さが1000μmを超えるカーボンナノチューブは、現時点では、その製造、入手が困難であり、また、後述するように、カーボンナノチューブの分散液を塗布して電極層を形成する場合に、カーボンナノチューブの分散性が不充分なため導電パスが形成されにくく、結果的に電極層の導電性が不充分となることが懸念されるからである。
【0069】
上記カーボンナノチューブの平均長さの下限は100μmがさらに好ましく、上限は600μmがさらに好ましい。上記カーボンナノチューブの平均長さが上記範囲内にあると、導電性に優れ、伸長時に電気抵抗がほとんど増大せず、繰り返し伸縮時に電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を高いレベルでより確実に確保することができる。
【0070】
上記カーボンナノチューブの繊維長さは、カーボンナノチューブを電子顕微鏡で観察し、その観察画像から測定すればよい。
また、その平均長さは、例えば、カーボンナノチューブの観察画像から無作為に選んだ10箇所のカーボンナノチューブの繊維長さに基づき平均値を算出すればよい。
【0071】
上記カーボンナノチューブの平均繊維径は特に限定されないが、0.5〜30nmが好ましい。
上記繊維径が0.5nm未満では、カーボンナノチューブの分散が悪くなり、その結果、導電パスが広がらず、電極層の導電性が不充分になることがあり、一方、30nmを超えると、同じ重量でもカーボンナノチューブの本数が少なくなり、導電性が不充分になることがある。カーボンナノチューブの平均繊維径は5〜20nmがより好ましい。
【0072】
上記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブよりも好ましい。
単層カーボンナノチューブを用いた場合、上述した好ましい範囲の平均長さを有するカーボンナノチューブを用いた場合でも、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりすることがある。
これについては次のように推測している。即ち、単層カーボンナノチューブは、通常、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの混合物として合成されるため、この半導体性カーボンナノチューブの存在が、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりする原因となっていると推測している。
なお、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとを分離し、平均長さの長い金属性の単層カーボンナノチューブを用いれば、平均長さの長い多層カーボンナノチューブを用いた場合と同様の電気特性を備えた電極層を形成することができる可能性があるが、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの分離は容易ではなく(特に、繊維長さの長いカーボンナノチューブにおいて)、両者の分離には煩雑な作業が必要となるため、電極層を形成する際の作業容易性、及び、経済性の観点からも上述した通り、上記カーボンナノチューブとしては多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0073】
上記カーボンナノチューブは、炭素純度が99重量%以上であることが好ましい。カーボンナノチューブは、その製造工程において、触媒金属や分散剤等を含むことがあり、このようなカーボンナノチューブ以外の成分(不純物)を多量に含有するカーボンナノチューブを用いた場合、導電性の低下や、電気抵抗のバラツキを引き起こすことがある。
【0074】
上記カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法で製造されたものであればよいが、基板成長法により製造されたものが好ましい。
基板成長法は、CVD法の1種であり、基板上に塗布した金属触媒に炭素源を供給することで成長させてカーボンナノチューブを製造する方法である。基板成長法は、比較的繊維長さが長く、かつ、繊維長さの揃ったカーボンナノチューブを製造するのに適した製造方法であるため、本発明で使用するカーボンナノチューブとして適している。
上記カーボンナノチューブが基板製造法により製造されたものである場合、カーボンナノチューブの繊維長さは、CNTフォレストの成長長さと実質的に同一であり、電子顕微鏡を用いて繊維長さを測定する場合は、CNTフォレストの成長長さを測定すればよい。
【0075】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料以外に、例えば、バインダー成分を含有していてもよい。
上記バインダー成分はつなぎ材料として機能し、上記バインダー成分を含有させることにより、誘電層との密着性、及び、電極層自体の強度を向上させることができる。更に、後述の方法で電極層を形成する際にカーボンナノチューブ等の導電材料の飛散を抑制することができるため、電極層形成時の安全性も高めることができる。
【0076】
上記バインダー成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
また、上記バインダー成分としては、生ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの加硫させていない状態のもの)も使用することができ、このように比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層の変形に対する電極層の追従性も高めることができる。
上記バインダー成分は、特に誘電層を構成するエラストマーと同種のものが好ましい。誘電層と電極層との密着性を顕著に向上させることができるからである。
【0077】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料及びバインダー成分以外に、更に各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、導電材料の分散性を高めるための分散剤、バインダー成分のための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、更には、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。
上記センサシートでは、上記導電材料がカーボンナノチューブである場合、電極層が実質的にカーボンナノチューブのみで形成されていてもよい。この場合も誘電層との間で充分な密着性を確保することができる。カーボンナノチューブと誘電層とはファンデルワールス力等により強固に密着する。
【0078】
上記電極層中のカーボンナノチューブの含有量は導電性が発現する濃度であれば特に限定されず、バインダー成分を含有する場合にはバインダー成分の種類によっても異なるが、電極層の全固形成分に対して0.1〜100重量%であることが好ましい。
また、カーボンナノチューブの含有量を高めれば、電極層の導電性を向上させることができる。そのため、電極層を薄くしても要求される導電性を確保することができ、その結果、電極層を薄くしたり、電極層の柔軟性を確保したりすることがより容易になる。
【0079】
上記電極層の平均厚さ(各電極層のそれぞれの平均厚さ)は、0.1〜10μmであることが好ましい。電極層の平均厚さが上記範囲にあると、電極層は、誘電層の変形に対してより優れた追従性を発揮することができる。
一方、上記平均厚さが0.1μm未満では、導電性が不足し、センサシートとしての測定精度が低下するおそれがある。一方、10μmを超えるとカーボンナノチューブ等の導電材料の補強効果によりセンサシートが硬くなり、センサシートの伸縮性が低下し、測定対象物の変形や動きに追従した変形が阻害されることがある。また、センサシートが硬くなると、測定対象物の曲げ変形等を阻害することがある。
【0080】
本発明において、「電極層の平均厚さ」は、例えば、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、VK−9510)を用いて測定することができる。具体的には、誘電層の表面に形成された電極層の厚さ方向を0.01μm刻みでスキャンし、その3D形状を測定した後、誘電層上の電極層が積層されている領域及び積層されていない領域において、それぞれ縦200×横200μmの矩形領域の平均高さを計測し、その平均高さの段差を電極層の平均厚さとすればよい。
上記センサシートを構成する、各電極層の導電性は特に限定されない。
【0081】
<<保護層>>
本発明の静電容量型センサが備えるセンサシートは、
図2、4に示した例のように、保護層(表側保護層及び裏側保護層)が積層されていることが好ましい。上記保護層を設けることにより、電極層等を外部から電気的に絶縁することができる。また、上記保護層を設けることにより、センサシートの強度や耐久性を高めることができる。
上記保護層の材質は特に限定されず、その要求特性に応じて適宜選択すればよい。上記保護層の材質の具体例としては、例えば、上記誘電層の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0082】
<<その他>>
上記センサシートは、
図2、4に示した例のように、通常、各電極層と接続された各配線が形成されている。
各配線は、誘電層の変形を阻害せず、かつ、誘電層が変形しても導電性が維持されるものであればよく、その具体例としては、例えば、上記電極層と同様の導電性組成物からなるものが挙げられる。
また、上記の各配線は必要とされる導電性が確保される範囲でその線幅が狭いことが好ましい。
【0083】
更に、上述した各配線それぞれの電極層と反対側の端部には、
図2、4に示した例のように、通常、外部配線と接続するための接続部(中央接続部、表側接続部及び裏側接続部)が形成されている。これらの各接続部としては、例えば、銅箔等を用いて形成されたものが挙げられる。
【0084】
上記センサシートは、測定対象物に貼り付けて使用されるものであるため、センサシートの裏側の最外層には粘着層が形成されており、この粘着層を介して上記センサシートを測定対象物に貼り付けることができる。
上記粘着層としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等からなる層が挙げられる。
ここで、各粘着剤は、溶剤型であってもよいし、エマルジョン型であってもよいし、ホットメルト型でもよい。上記粘着剤は、静電容量型センサの使用態様等に応じて適宜選択して用いればよい。ただし、上記粘着層は、上記誘電層の伸縮を阻害しない柔軟性が必要である。
なお、上記粘着層は、センサシートの表側の最外層にも形成されていてもよい。
【0085】
上記センサシートは、無伸長状態から一軸方向に100%伸長させた後、無伸長状態に戻すサイクルを1サイクルとする伸縮を1000サイクル繰返した際に、2サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗に対する、1000サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗の変化率([1000サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]−[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]の絶対値〕/[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]×100)が小さいことが好ましい。具体的には、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0086】
ここで、1サイクル目ではなく、2サイクル目の以降の電極層の電気抵抗を評価対象としている理由は、未伸長状態から伸長させた1回目(1サイクル目)の伸長時には、伸長時の電極層の挙動(電気抵抗の変動の仕方)が2回目(2サイクル目)以降の伸縮時と大きく異なるからである。この理由については、センサシートを作製した後、1回伸長させることによって初めて電極層を構成するカーボンナノチューブの等の導電材料の状態が安定化するためと推測している。
【0087】
次に、上記センサシートを製造する方法について説明する。ここでは、
図2に示したセンサシート2を例に、センサシートを製造する方法について説明する。
上記センサシートは、例えば、下記(1)〜(3)の工程を経ることにより作製することができる。
【0088】
(1)まず、エラストマー組成物からなるシート状の誘電層1枚と、エラストマー組成物からなるシート状の保護層2枚とを作製する。なお、誘電層と保護層とは、同様の方法により作製することができる。ここでは、誘電層の作製方法として、その作製方法を説明する。
【0089】
まず、原料組成物としてエラストマー(又はその原料)に、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、加硫促進剤、触媒、誘電フィラー、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を配合した原料組成物を調製する。次に、この原料組成物を成形することにより誘電層を作製する。なお、成形方法としては従来公知の手法を採用することができる。
【0090】
具体的には、例えば、ウレタンゴムを含む誘電層を成形する場合には下記の方法等を用いることができる。
まず、ポリオール成分、可塑剤及び酸化防止剤を計量し、加熱、減圧下において一定時間撹拌混合し、混合液を調製する。次に、混合液を計量し、温度を調整した後、触媒を添加しアジター等で撹拌する。その後、所定量のイソシアネート成分を添加し、アジター等で撹拌後、即座に混合液を
図5に示す成形装置に注入する。上記成形装置では、上記混合液を保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのシートを得る。その後、炉で一定時間後架橋させることで誘電層を製造することができる。
【0091】
図5は、誘電層の作製に使用する成形装置の一例を説明するための模式図である。
図5に示した成形装置30では、原料組成物33を、離間して配置された一対のロール32、32から連続的に送り出されるポリエチレンテレフタレート(PET)製の保護フィルム31の間隙に流し込み、その間隙に原料組成物33を保持した状態で硬化反応(架橋反応)を進行させつつ、加熱装置34内に導入し、原料組成物33を一対の保護フィルム31間で保持した状態で熱硬化させ、誘電層となるシート状物35を成形する。
【0092】
上記誘電層は、原料組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレードなどの汎用の成膜装置や成膜方法を用いて作製してもよい。
上述した通り、保護層は、誘電層の作製と同様の方法で作製すればよい。
【0093】
(2)次に、上記(1)の工程とは別に、電極層を形成するための塗布液を調製する。
ここでは、上記塗布液として、カーボンナノチューブ等の導電材料及び分散媒を含む組成物を調製する。
具体的には、まず、カーボンナノチューブ等の導電材料を分散媒に添加する。このとき、必要に応じて、バインダー成分(又は、バインダー成分の原料)等の上述した他の成分や分散剤を更に添加してもよい。
次に、導電材料を含む各成分を湿式分散機で分散媒中に分散(又は溶解)させることより電極層の形成に用いる塗布液を調製する。ここでは、例えば、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミルなどの既存の分散機を用いて分散させればよい。
【0094】
上記分散媒としては、例えば、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アルコール類、水等が挙げられる。これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0095】
上記塗布液において、導電材料がカーボンナノチューブである場合、上記カーボンナノチューブの濃度は、0.01〜10重量%が好ましい。上記濃度が0.01重量%未満では、カーボンナノチューブの濃度が薄すぎて繰返し塗布する必要が生じる場合がある。一方、10重量%を超えると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、また再凝集によりカーボンナノチューブの分散性が低下し、均一な電極層を形成することが困難となる場合がある。
【0096】
(3)次に、誘電層及び保護層を重ね合わせつつ、適時、電極層等を形成してセンサシートを作製する。本工程については、
図6を参照しながら説明する。
図6(a)〜(d)は、センサシートの作製工程を説明するための斜視図である。
【0097】
(a)まず、上記(1)の工程で作製した1枚の保護層(裏側保護層15B)の片面(表面)の所定の位置に、上記(2)の工程で調製した塗布液をスプレーコート等により塗布し、乾燥させる(
図6(a)参照)。これにより、裏側保護層15B上に、裏側電極層12Bと裏側配線13Bとを形成する。
ここで、上記塗布液の乾燥条件は特に限定されず、分散媒の種類やエラストマー組成物の組成等に応じて適宜選択すればよい。
また、上記塗布液を塗布する方法は、スプレーコートに限定されるわけではなく、その他、例えば、スクリーン印刷法、インクジエット印刷法等も採用することができる。
更に、上記塗布液を塗布する際には、電極層を形成しない位置をマスキングしてから上記塗布液を塗布してもよい。
【0098】
(b)次に、裏側電極層12Bの全体及び裏側配線13Bの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した誘電層11を裏側保護層15B上に貼り合わせることにより積層する。その後、上記(a)と同様の手法を用いて、誘電層11の上面の所定の位置に表側電極層12Aと表側配線13Aとを形成する(
図6(b)参照)。
【0099】
(c)次に、表側電極層12Aの全体及び表側配線13Aの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製したもう1枚の保護層(表側保護層15A)を積層する。
その後、表側配線13A及び裏側配線13Bのそれぞれの端部に銅箔を取り付けて、表側接続部14A及び裏側接続部14Bとする(
図6(c)参照)。
【0100】
(d)更に、裏側保護層15Bの裏面側に、ハンドローラー等を用いて予め作製しておいた粘着層18を貼り付ける。このような工程を経ることにより、
図2に示したようなセンサシート2を作製することができる。なお、粘着層18は従来公知の方法により形成すれば良い。
また、本発明で用いるセンサシートでは、表側接続部14Aや裏側接続部14Bの裏側保護層15B上にPETフィルム等の補強フィルム17を粘着テープ16を介して貼り付けてもよい。これにより各接続部を補強することができる(
図6(d)参照)。
なお、
図6(d)に示すように、上記センサシートでは、表側接続部14A及び裏側接続部14Bに外部配線となるリード線19を半田で固定する。
【0101】
また、
図4に示したような、2層の誘電層と3層の電極層とを備えたセンサシート2′を作製する場合は、予めもう1枚誘電層を作製しておき、上記(b)の工程を行った後、表側保護層を形成する前に、再度、上記(b)の工程を繰り返すことにより、第2誘電層の積層と上記第2誘電層の上面での電極層及び配線の形成とを行い、その後、上述した(c)及び(d)の工程を行えばよい。
【0102】
ここでは、裏側保護層側から順に所定の部材(誘電層、電極層及び保護層)を積み上げていく方法を説明したが、上記センサシートを作製する方法は必ずしもこのような方法に限定されるわけではなく、例えば、先に電極層が形成された誘電層を作製した後、その両面に保護層を貼り合わせてもよい。
【0103】
また、ここまで説明したセンサシートは、1箇所の検出部を備えたセンサシートであるが、本発明のセンサシートは、複数箇所の検出部を備えていても良い。これにより、測定精度を向上させることができる。また、複数部位の回転角度を同時に測定することも可能となる。
【0104】
<計測部>
上記計測部は、上記センサシートと電気的に接続されており、上記誘電層の変形に応じて変化する上記検出部の静電容量Cを測定する機能を有する。上記静電容量Cを測定する方法としては従来公知の方法を用いることができ、上記計測部は、そのために必要となる静電容量測定回路、演算回路、増幅回路、電源回路等を備えている。上記静電容量Cを測定する方法としては、例えば、LCRメータなどの計測器で計測する方法、自動平衡ブリッジ回路を利用したCV変換回路を用いて計測する方法、反転増幅回路を利用したCV変換回路を用いて計測する方法、半波倍電圧整流回路を利用したCV変換回路を用いて計測する方法、シュミットトリガ発振回路を用いたCF発振回路を用いて計測する方法、シュミットトリガ発振回路とF/V変換回路などにより静電容量を電圧や周波数に変換した後に、電圧測定器や周波数カウンター等の計測器で計測する方法、等が挙げられる。
【0105】
本発明のセンサ装置において、上記センサシートと上記計測部との電気的な接続は、測定時のノイズの影響を排除する観点から下記の要領で行うことが好ましい。
【0106】
(1−1)上記センサシートが、
図2に示したセンサシート2のような1層の誘電層とその両面の電極層(表側電極層及び裏側電極層)とを有するセンサシートであり、計測部が、シュミットトリガ発振回路のようなCF変換回路を用いた計測部である場合。
この場合には、表側電極層を計測部内の発振ブロック(検出ブロック)に接続し、裏側電極層を接地し(GND側に接続し)、かつ、上記センサシートを裏面側が測定対象物に近接するように貼り付けることが好ましい。
このような向きでセンサシートを測定対象物に貼り付け、上記のようにセンサシートと計測部とを接続することにより、ノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0107】
(1−2)上記センサシートが、
図2に示したセンサシート2のような1層の誘電層とその両面の電極層(表側電極層及び裏側電極層)とを有するセンサシートであり、計測部が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路のようなCV変換回路を用いた計測部である場合。
この場合には、表側電極層を計測部内の検出ブロックに接続し、裏側電極層を交流信号を生成するブロックに接続し、かつ、上記センサシートを裏面側が測定対象物に近接するように貼り付けることが好ましい。
このような向きでセンサシートを測定対象物に貼り付け、上記のようにセンサシートと計測部とを接続することにより、ノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0108】
(2−1)上記センサシートが、
図4に示したセンサシート2′のような2層の誘電層(第1及び第2誘電層)と各誘電層の両面に電極層(第1〜第3電極層)を有するセンサシートであり、計測部がシュミットトリガ発振回路のような、検出部の静電容量Cと抵抗Rで発振して静電容量の変化を計測するCF発振回路を用いた計測部である場合。
この場合には、第1電極層を発振ブロック(検出ブロック)に接続し、第2電極層及び第3電極層を電気的に接続された状態(短絡した状態)で接地する(GND側に接続する)ことが好ましい。
このようにセンサシートと計測部とを接続することにより、センサシートの表側及び裏側のいずれを測定対象物に近接するように接続してもノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0109】
(2−2)上記センサシートが、
図4に示したセンサシート2′のような2層の誘電層と各誘電層の両面に電極層を有するセンサシートであり、計測部が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路のような別のブロック(例えば、交流印加装置)で生成した交流信号を、センサシートに通し、センサシートの静電容量変化による交流インピーダンス変化を計測又はインピーダンス変化を利用して電圧変化を生成する方式のCV変換回路を用いた計測部である場合。
この場合には、第1電極層を検出ブロックに接続し、第2電極層及び第3電極層を電気的に接続された状態(短絡した状態)で交流信号を生成するブロックに接続することが好ましい。
このようにセンサシート2′と計測部とを接続することにより、センサシートの表側及び裏側のいずれを測定対象物に近接するように接続してもノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0110】
<演算部>
本発明の静電容量型センサは、センサシートの検出部の静電容量に基づいて測定対象物の回転角度を算出する演算部を備えている。具体的な回転角度の算出手法は、既に説明した通りである。
上記演算部は、演算回路、増幅回路、電源回路、RAM、ROM、HDD等の記憶部、モニター等を備えている。
上記演算部としては、例えば、パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末機器を利用することができる。
【0111】
また、
図1に示した静電容量型センサ1において、測定器3と演算部4との接続は有線で行われているが、本発明の静電容量型センサにおいてこれらの接続は必ずしも有線で行われている必要はなく、無線で接続されていてもよい。静電容量型センサの使用態様によっては、測定器と演算部とが物理的に分離されている方が使用しやすい場合もある。
【0112】
本発明の静電容量型センサでは、上述した通り、生体の関節角度をはじめ、曲げ変形可能な種々の測定対象物の屈曲部における回転角度を測定することができる。
そのため、医療分野や介護/リハビリ分野、健康管理分野、アパレル分野、ロボット分野、アミューズメント分野、計測分野、機器制御分野、スポーツ分野、インタフェース・コミュニケーション分野等、種々の分野で用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
<センサシートの作製>
(1)誘電層の作製
水添水酸基末端液状ポリオレフィンポリオール(エポール、出光興産株式会社製)100質量部、アルキル置換ジフェニルエーテルを主成分とした高温用潤滑油(モレスコハイルーブLB−100、MORESCO社製)100質量部を計量し、自転公転ミキサー(THINKY社製)を用いて2000rpmで3分間撹拌混合した。次に、得られた混合物に触媒(Fomrez catalyst UL−28、Momentive社製)0.07質量部を添加し、自転公転ミキサーで1.5分間撹拌した。その後、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化バイエルウレタン社製)11質量部を添加し、自転公転ミキサーで3分間撹拌し、1.5分間脱泡した後、
図5に示した成形装置30に注入し、保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ、炉内温度110℃、炉内時間30分間の条件で架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのロール巻シートを得た。その後、80℃に調節した炉で12時間後架橋させて、オレフィン系ウレタンゴムを含むエラストマー組成物からなる層厚50μmの誘電層を作製した。得られたウレタンシートを14mm×85mm×厚さ50μmに裁断し、更に、角部の一か所を7mm×7mm×厚さ50μmのサイズで切り落とし、誘電層を作製した。
【0115】
作製した誘電層について、破断時伸び(%)、体積抵抗率(Ωcm)及び比誘電率を測定したところ、破断時伸び(%)は218%、体積抵抗率は1×10
14Ωcm以上、比誘電率は3.1であった。
ここで、破断時伸びは、JIS K 6251に準拠して測定した。
体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠し、測定機器としてハイレスタUP MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)を、プローブとしてURSプローブ MCP−HTP14を使用して測定した。
比誘電率は、JIS K 6911に準拠し、測定機器としてLCRハイテスタ3522−50(日置電機株式会社製)を使用して測定した。
【0116】
(2)電極層材料の調製
基板成長法により製造した多層カーボンナノチューブである、大陽日酸社製の高配向カーボンナノチューブ(層数4〜12層、繊維径5〜20nm、繊維長さ150〜300μm、炭素純度99.5%)30mgを2−プロパノール30gに添加し、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、10倍に希釈して濃度0.05重量%のカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0117】
(3)保護層(表側保護層及び裏側保護層)の作製
上述した、(1)誘電層の作製、と同様の方法を用いてポリオレフィン系ウレタンゴム製で、14mm×85mm×厚さ50μmの裏側保護層と、14mm×77mm×厚さ50μmの表側保護層とを作製した。
【0118】
(4)粘着層の作製
粘着剤(綜研化学社製、SKダイン1720)50重量部に、メチルエチルケトン(MEK)50重量部及び硬化剤(綜研化学社製、L−45)2質量部を添加し、あわとり練太郎(Thinky社製、型番:ARE−310)で混合(2000rpm、120秒)、脱泡(2000rpm、120秒)して混合物を得た。次に、得られた混合物を、表面が離型処理されたPETフィルム(藤森工業社製、50E−0010KF)にマルチコータを用いて200μmのウエット膜厚で成膜した後、送風式のオーブンを用いて100℃、10分間の条件で硬化させ、硬化後の厚さが35μmの粘着層を作製した。
【0119】
(5)センサシートの作製
図6(a)〜(d)に示した作製工程を経てセンサシートを作製した。
まず、上記(3)の工程で作製した裏側保護層15Bの片面(表面)に、離型処理されたPETフィルムに所定の形状の開口部が形成されたマスク(図示せず)を貼り付けた。
上記マスクには、裏側電極層及び裏側配線に相当する開口部が設けられており、開口部のサイズは、裏側電極層に相当する部分が幅10mm×長さ60mm、裏側配線に相当する部分が幅3.5mm×長さ20mmである。
【0120】
次に、上記(2)の工程で調製したカーボンナノチューブ分散液3.5gを10cmの距離からエアブラシを用いて塗布し、続いて、80℃で10分間乾燥させ、裏側電極層12B及び裏側配線13Bを形成した。その後、マスクを剥離した(
図6(a)参照)。
【0121】
次に、裏側電極層12Bの全体及び裏側配線13Bの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した誘電層11を裏側保護層15B上に貼り合わせることにより積層した。
更に、誘電層11に表側に、裏側電極層12B及び裏側配線13Bの形成と同様の方法を用いて、表側電極層12A及び表側配線13Aを形成した(
図6(b)参照)。
【0122】
次に、表側電極層12A及び表側配線13Aを形成した誘電層11の表側に、表側電極層12Aの全体及び表側配線13Aの一部を被覆するように、上記(3)の工程で作製した表側保護層15Aをラミネートにより積層した。
更に、表側配線13A及び裏側配線13Bのそれぞれの端部に銅箔を取り付けて、表側接続部14A及び裏側接続部14Bとした(
図6(c)参照)。その後、表側接続部14A及び裏側接続部14Bに外部配線となるリード線19を半田で固定した。
【0123】
次に、表側接続部14A及び裏側接続部14Bの裏側保護層15B上に位置する部分に、厚さ50μmのPETフィルム17をアクリル粘着テープ(3M社製、Y−4905(厚さ0.5mm))16を介して貼り付けて補強した。
最後に、裏側保護層15Bの裏面側に上記(4)で作製した粘着層18をハンドローラーにより貼り付けてセンサシート2を完成した(
図6(d)参照)。
【0124】
次に、上述した方法で作製したセンサシートを備えた静電容量型センサを用いて、生体の関節の回転角度(関節角度)を計測するとともに、モーションキャプチャシステム(Natural Point社製、Opti Track)を用いて同じ関節の関節角度を測定した。
【0125】
(実施例1)
図7(a)に示すように、手首の外側に上記センサシートを貼り付けた。この状態で手首を背屈方向(
図7(a)中、−方向)及び掌屈方向(
図7(a)中、+方向)に約2秒周期で背屈・掌屈させ、その時のセンサシートの検出部における静電容量を測定した。なお、静電容量の測定は、リード線を介してセンサシートと接続したLCRメータ(日置電機社製、LCRハイテスタ3522−50)により行った。
その後、計測された静電容量に基づき、上記手首の関節角度(前腕と手の甲とのなす角度)を算出した。
一方、上述した静電容量の計測と同時に、モーションキャプチャシステムによる関節角度の測定を行った。具体的には、センサシートの周囲にマーカーを取り付けておき、上述した手首の背屈・掌屈の際に、上記モーションキャプチャシステムにてマーカーの3次元座標を計測し、上記手首の関節角度を算出した。
上記静電容量型センサにより取得された関節角度、及び、モーションキャプチャシステムにより取得された関節角度、の測定結果を
図7(b)に示した。
【0126】
なお、本実施例において、静電容量に基づく関節角度の算出は、下記の方法により行った。
まず、手首の3往復分の回転運動(屈曲運動)について、モーションキャプチャシステムで計測した関節角度と静電容量型センサで計測した静電容量の値を用いて、関節角度θを算出するための1次関数を算出した。このとき、モーションキャプチャシステムで計測した関節角度と静電容量型センサで計測した静電容量との組み合わせの数は、300組とした。なお、1次関数の決定(1次関数における係数の決定)は、最小二乗法により行った。
その結果、関節角度θを算出するための1次関数として、下記式(A)
θ=−1.7719×C+340.1102・・・(A)
を得た。
その後、静電容量の計測値及び上記式(A)に基づいて、手首の関節角度を算出した。
なお、本実施例では、上記式(A)におけるCとして、静電容量の変化量ΔCと初期静電容量(未伸長時の静電容量)C
0との和を用いた。即ち、式(A)においては、C=ΔC+C
0である。
【0127】
図7(b)に示したように、本発明の静電容量型センサを用いて測定した手首の関節角度と、モーションキャプチャシステムを用いた測定した手首の関節角度とは、略同様の測定結果を有しており、モーションキャプチャシステムによる測定結果に対する静電容量型センサを用いた測定結果の誤差は、平均3.5°、最大11.8°であった。このことから、本発明の静電容量型センサを用いた測定が高い測定性能を有していることが明らかとなった。
なお、
図7(b)中、実線はモーションキャプチャにより測定した関節角度であり、破線は静電容量型センサにより測定した関節角度である。
【0128】
(実施例2)
図8(a)に示すように、肘に上記センサシートを貼り付けた。この状態で肘を約2秒周期で屈曲・伸展させ、その時のセンサシートの検出部における静電容量を測定した。ただし、屈曲方向は
図8(a)中、(+)の方向である。なお、静電容量の測定は、実施例1と同様、LCRメータにより行った。
その後、計測された静電容量に基づき、上記肘の関節角度(前腕と上腕とのなす角度)を算出した。
一方、上述した静電容量の計測と同時に、モーションキャプチャシステムによる関節角度の測定を行った。具体的には、センサシートの周囲にマーカーを取り付けておき、上述した肘の屈曲・伸展の際に、上記モーションキャプチャシステムにてマーカーの3次元座標を計測し、上記肘の関節角度を算出した。
上記静電容量型センサにより取得された関節角度、及び、モーションキャプチャシステムにより取得された関節角度、の測定結果を
図8(b)に示した。
【0129】
なお、本実施例において、静電容量に基づく関節角度の算出は、下記の方法により行った。
まず、肘の3往復分の回転運動(屈曲運動)について、モーションキャプチャシステムで計測した関節角度と静電容量型センサで計測した静電容量の値を用いて、関節角度θを算出するための1次関数を算出した。このとき、モーションキャプチャシステムで計測した関節角度と静電容量型センサで計測した静電容量との組み合わせの数は、300組とした。なお、1次関数の決定(1次関数における係数の決定)は、最小二乗法により行った。
その結果、関節角度θを算出するための1次関数として、下記式(B)
θ=0.6989×C−136.1294・・・(B)
を得た。
その後、静電容量の計測値及び上記式(B)に基づいて、肘の関節角度を算出した。
なお、本実施例でも、上記式(B)におけるCとして、静電容量の変化量ΔCと初期静電容量(未伸長時の静電容量)C
0との和を用いた。即ち、式(B)においては、C=ΔC+C
0である。
【0130】
図8(b)に示したように、本発明の静電容量型センサを用いて測定した肘の関節角度と、モーションキャプチャシステムを用いた測定した肘の関節角度とは、略同様の測定結果を有しており、モーションキャプチャシステムによる測定結果に対する静電容量型センサを用いた測定結果の誤差は、平均3.1°、最大9.8°であった。このことから、本発明の静電容量型センサを用いた測定が高い測定性能を有していることが明らかとなった。
なお、
図8(b)中、実線はモーションキャプチャにより測定した関節角度であり、破線は静電容量型センサにより測定した関節角度である。
【0131】
このように、本発明の静電容量型センサを用いることにより、生体の関節角度等の測定対象物の回転角度を測定することができることが明らかとなった。
また、上記回転角度(関節角度)が、静電容量の変化を変数とする1次式で表されることも確認された。