(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
また、以下の説明では「先端」、「前方」との表現は、各部材等において液体噴出口に近い側の位置や方向を表し、逆に「後端」、「後方」との表現は、液体噴出口から遠い側の位置や方向を表すのに用いる。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のスプレーガンを側面から見た断面図である。
図1に示すように、本実施形態のスプレーガン1は、先端に液体噴出口2aを有するノズル2と、引金3の操作でノズル2先端の液体噴出口2aの開閉を行う引金3に連結されたニードル4と、を備えている。
【0019】
また、ニードル4の後端寄りの中間部に設けられたフランジ部4aと、一端をフランジ部4aに当接させるようにニードル4の後端側に配置されているコイルばねからなる第1弾性体5と、ニードル4の後端側に配置されて第1弾性体5の他端を受ける第1受部材6と、を備えており、この第1弾性体5によって、ニードル4は、液体噴出口2a側に常に付勢されている。
【0020】
したがって、引金3を引いていない状態のときには、ニードル4が第1弾性体5によってノズル2先端の液体噴出口2a側に付勢される。ニードル4の先端部がノズル2先端の液体噴出口2aに挿入された状態となり、液体噴出口2aはニードル4の先端部で閉塞される。
一方、引金3を引くと、引金3に連動してニードル4は後端側に移動し、ニードル4の先端部がノズル2先端の液体噴出口2aから抜けるので液体噴出口2aは開放された状態となる。
【0021】
また、ニードル4の中間部近傍には、エア流路を開閉するためのエア弁20が設けられている。ニードル4がノズル2先端の液体噴出口2a側に付勢された状態の時には、エア流路の途中の箇所21でエア供給口22から供給されるエアの流れが停止されている。
引金3を引くとエア弁20も後端側に移動し、エア流路が開放され、エアがエア流路の先端23へと供給され、先端23に供給されたエアは、エアキャップ30によって形成されるノズル2先端周囲のエア吹出口31及びパターン調節用エア吹出口32から噴出する。
【0022】
なお、パターン調節用エア吹出口32へのエア供給量は、パターンエア調節つまみ40によって調節が可能になっている。
具体的には、パターンエア調節つまみ40を回転させるとエア調節用ニードル41によってパターン調節用エア吹出口32へのエア流路の開度が変わり、パターン調節用エア吹出口32へのエアの供給がない全閉の状態まで調節ができるようになっている。
また、エア供給口22の近傍には、全体エア調節つまみ24が設けられており、この全体エア調節つまみ24を調節することで、エア流路を開閉するためのエア弁20のところに送られるエアの量を調節することが可能になっている。
【0023】
ここで、使用時には、液体供給口7に液体供給配管(図示せず)が接続されて液体供給口7からノズル2とニードル4の間の隙間8に液体が供給されている。また、エア供給口22にエア供給配管(図示せず)が接続されてエア弁20のところにエアが供給された状態になっているので、引金3を引くと、エア吹出口31及びパターン調節用エア吹出口32からエアが噴出し、続いて、ノズル2先端の液体噴出口2aから液体が噴出する。
なお、この噴出した液体は、噴出するとほぼ同時に微粒化し、微粒化液体の状態になる。
そして、引金3を引くのを止めると液体の噴出が停止し、続いて、エア吹出口31及びパターン調節用エア吹出口32からのエアの噴出も停止する。
【0024】
また、
図1に示すように、スプレーガン1は、ニードル4の後端4bから所定の距離離間するように配置された棒状の移動部材9を備えている。移動部材9は、第1受部材6の第1弾性体5の他端を受けている受面6aに形成された貫通孔6bを通じて移動部材9の先端9aがニードル4側に配置されている。
なお、後ほど、詳細に説明するが、この移動部材9の先端9aは、ニードル4の後端4bと当接する当接部を構成する。
【0025】
移動部材9は、具体的には、第1受部材6の後端側に配置される収容部材10内に収容された状態で、収容部材10が第1受部材6の後端部に取付けられることでニードル4の後端側に配置されている。
本実施形態では、第1受部材6の後端部外周に雄ネジ構造を形成し、収容部材10の先端部内周面に雌ネジ構造を形成しているので、収容部材10の先端部を第1受部材6に螺合させることで収容部材10が第1受部材6に取付けられるようになっている。
【0026】
また、移動部材9の中間部にはフランジ部9bが設けられている。一方、収容部材10の内部には、フランジ部9bより内径が小さくされた部分が設けられ、この内径が小さい部分が移動部材9のフランジ部9bを受けることで、移動部材9のニードル4側への移動を規制している。
したがって、この内径が小さい部分が移動部材9の移動を規制する規制部となる。
【0027】
さらに、移動部材9のフランジ部9bは、移動部材9の後端側に配置されるコイルばねからなる第2弾性体11の一端を受けており、第2弾性体11の他端は、収容部材10の後端側に取付けられる第2受部材12によって受けられている。
このため、移動部材9は、常に第2弾性体によりニードル4側に付勢されている。
【0028】
本実施形態では、収容部材10の後端部内周面に雌ネジ構造を形成し、第2受部材12の先端部外周面に雄ネジ構造を形成することで第2受部材12の先端部を収容部材10に螺合させることで第2受部材12が収容部材10に取付けられている。
【0029】
図2を参照しながら、各部材の具体的な組付け手順について説明すると、ニードル4のフランジ部4aに一端が当接するまで、ニードル4の後端側からニードル4を覆うように第1弾性体5を装着する。
【0030】
次に、ニードル4の後端側から装着した第1弾性体5を内部に受け入れるように第1受部材6を装着し、第1受部材6を取付部50に取付ける。
なお、取付部50の内周面には雌ネジ構造が形成されており、第1受部材6の先端部外周面には雄ネジ構造が形成されているので第1受部材6の先端部を取付部50に螺合することで取付部50に第1受部材6を取付けることが可能になっている。
【0031】
続いて、第1受部材6の後端部外周に形成された雄ネジ構造に螺合させるように位置決めナット51を取付けた後、収容部材10が位置決めナット51に当接し停止するまで第1受部材6に螺合させ、収容部材10を第1受部材6に取付ける。
【0032】
図1を参照しながら説明したように、収容部材10の内径が小さくされた部分に移動部材9のフランジ部9bが当接することで移動部材9のニードル4側への移動が規制される。収容部材10を、どの程度、第1受部材6に螺合させるのかによって、ニードル4の後端4bと移動部材9の先端9aとの離間距離を調節することができるようになっている。
したがって、引金3を引いてニードル4を後端側に移動する際に、どの程度、ニードル4が後端側に移動すると、ニードル4の後端4bが移動部材9の先端9aと当接するのかが変更できるようになっている。
【0033】
図2に戻って説明を続ける。続いて、収容部材10の後端側から移動部材9の先端9aを第1受部材6の貫通孔6bを通すように挿入した後、移動部材9のフランジ部9bに一端が当接するまで、移動部材9の後端側から移動部材9を覆うように第2弾性体11を装着する。
【0034】
最後に、第2弾性体11の他端を内部に受け入れるように第2受部材12を収容部材10の後端部に螺合させる。
このとき、
図1に示すように、移動部材9の後端9cと第2受部材12とが所定の距離離間するように第2受部材の収容部材10に対する螺合量を調節する。
【0035】
次に、引金3を引く時の上記構成の効果について
図3を参照しながら説明を行う。
図3(A)は、引金3を引く前の状態を示しており、この状態の時には、ニードル4の後端4bと当接する当接部となる移動部材9の先端9aとは所定の距離離間した状態にある。
【0036】
そして、引金3を引き、ニードル4が移動部材9側に離間距離に相当する分だけ移動すると、
図3(B)に示すように、ニードル4の後端4bと移動部材9の先端9aとが当接し、この当接した時の感触が引金3を引く指に伝わる。
したがって、この当接する位置が適切な半開の位置になるように設定することで熟練した作業者でなくても感覚的に半開の位置がわかる。そのため、繰り返し、同じ程度の微粒化液体の塗布範囲(微粒化液体の広がり範囲)になる半開を実施することができる。
【0037】
さらに、半開の状態から引き続き引金3を引くと、ニードル4の付勢に追従して移動部材9が移動し、第2受部材12に移動部材9の後端9cが当接すると、それ以上、引金3を引くことができなくなり、このとき微粒化液体の塗布範囲(広がり範囲)は最大となる(
図3(C)参照)。
【0038】
このように、本実施形態のスプレーガン1によれば、半開位置が感覚的に認識できるので、熟練した作業者でなくとも簡単に引金3の引き量を半開の状態にすることができる。
また、半開状態から、さらに、引金3を引くだけで、すぐさま、微粒化液体の最大の塗布範囲の状態にも変更が可能である。
【0039】
例えば、半開の位置以上に引金3を引くことができないようなストッパーを設け、ストッパーが設定されていると半開になり、ストッパーを外すと最大引き量まで引金3を引くことができるようにする構成も考えられるが、このような構成にすると、ストッパーを操作する必要があるので瞬時に半開と最大引き量の状態とを切換えることができない。
【0040】
一方、本実施形態のスプレーガン1であれば、そのようなストッパーの操作は必要なく、瞬時に引金3の引き量を変えることができる。
また、強制的に半開の位置で引金3が停止させられているのではないため、引金3の引き量は、半開の位置以外の位置に引くことも可能であり、微粒化液体の塗布作業の自由度が極めて高いスプレーガン1を実現することができる。
【0041】
ところで、上記の動作説明でわかるように、半開を作業者が実感できる位置は、
図3(A)に示した引金3を引いていない状態でニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとが、どの程度の距離離間しているかによって決まる。さらに、ニードル4の最大移動距離は、上記離間距離に
図3(A)の状態で移動部材9の後端9cと第2受部材12との間の離間距離を加えた距離で決まる。
【0042】
ニードル4の最大移動距離を、丁度、ニードル4の先端部がノズル2先端の液体噴出口2aから抜ける状態に設定してもよいが、そうすると、作業者の引金3の引きが甘く、最大に引金3を引いたつもりでも完全に引金3を引ききっていないような状態が起こると、作業者は、最大の微粒化液体の塗布範囲(微粒化液体が最も広がる状態)で塗布作業を行なおうとしているにも関わらず、実際に噴霧される微粒化液体の塗布範囲(微粒化液体の広がり範囲)が、その予想に反して小さい範囲となり、塗布作業がうまくいかないような場合がある。
【0043】
このことから、ニードル4の先端がノズル2先端の液体噴出口2aから完全に抜ける位置までニードル4が移動できるように、ニードル4の最大移動距離を多めに設定しておくことが好適である。
【0044】
そして、そのようにニードル4の最大移動距離を設定する場合には、ニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとの間の離間させる所定の距離を、ニードル4の最大移動距離の半分以下に設定することで適切な半開の位置とすることができる。
【0045】
また、ニードル4の最大移動距離を、どの程度に設定するのが作業者にとって使いやすいのかについては、幾分の個人差があるが、本実施形態のスプレーガン1では、第2受部材12を、どの程度、収容部材10に対して螺合させるのかによって、
図3(A)に示す移動部材9の後端9cと第2受部材12との間の離間距離を変えることが可能であるので、ニードル4の最大移動距離を自由に調節することが可能である。
【0046】
さらに、上記説明では、丁度、微粒化液体の塗布範囲が最大となる最大塗布範囲(液体の広がり方が最も大きい状態)の半分程度になる位置に半開の位置を設定する場合について説明してきたが、半開の位置は、このような位置に限定される必要はない。例えば、最大塗布範囲の1/3程度の塗布範囲となるように設定してもよく、使用頻度の高い微粒化液体の塗布範囲(微粒化液体の広がり状態)になる半開位置に設定すればよい。
【0047】
上記で説明したように、半開の位置の認識は、ニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとが当接した時の引金3を引く指に伝わる感触によるので、移動部材9の当接部となる先端9aの位置を変えることで半開の認識位置を変更することが可能である。
【0048】
半開位置の変更方法について、
図3(A)を参照して説明する。例えば、位置決めナット51を第1受部材6の先端側に移動し、第1受部材6に対して、さらに、収容部材10を螺合させ、収容部材10を先端側に移動させると、移動部材9の先端9aも、よりニードル4側に位置するようになるので、ニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとが当接し、半開が認識されるために必要な引金3の引き量を少なくするように調節することができる。
【0049】
逆に、
図3(A)の状態から、収容部材10の第1受部材6に対する螺合量を減らし、収容部材10の位置を後方に移動すると、移動部材9の先端9aも後方に移動する。つまり、ニードル4の後端4bから離れるようになるので、ニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとが当接し、半開が認識されるために必要な引金3の引き量を多くするように調節することができる。
【0050】
なお、位置決めナット51は、位置決めだけでなく、収容部材10にしっかり当接させることで、使用中の振動などによって収容部材10が徐々に回転し位置がズレるのを防止する役目を果たすため、収容部材10を後方に移動し、位置決めナット51と離間状態になるときには、位置決めナット51も後方に移動させ収容部材10にしっかり当接させるようにしておくのが好適である。
【0051】
以上、第1実施形態について説明したが本発明が、上記具体的な例示に限定されるものではない。
例えば、より半開位置で正確に引金3を停止しやすいように、第1弾性体と第2弾性体との弾性力(ばね定数)を異ならせるようにしてもよい。
【0052】
この場合、第2弾性体のばね定数を大きくし、第1弾性体のばね定数を小さくすると、ニードル4の後端4bと移動部材9の当接部となる先端9aとが当接した後に、さらに、引金3を引こうとするときの指に対する負荷が増えるので半開の位置で引金3を引く指を止めやすくすることが可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、第1弾性体5及び第2弾性体11としてコイルばねを用いる場合について説明してきたが、これら弾性体は、ニードル4及び移動部材9を先端側に付勢する役目を果たしているだけであるのでコイルばねに限定される必要はない。
【0054】
しかしながら、コイルばねにすると、上記実施形態で示したように、ニードル4及び移動部材9を覆うように装着することができ、組付けをコンパクトにすることができるだけでなく、ニードル4及び移動部材9が弾性体の弾性変形(伸び縮み)の際のガイドとしての機能を果たし、安定した弾性体の弾性変形が実現できる。
したがって、第1弾性体5及び第2弾性体11にコイルばねを用いるのが好適である。
【0055】
(第2実施形態)
次に、
図4及び
図5を参照しながら、第2実施形態のスプレーガン1について説明する。
【0056】
第2実施形態も、全体的なスプレーガン1の基本構成は、第1実施形態と同様であり、異なる点は、作業者が指に伝わる感触として半開の位置を体感できるようにする構成部分について、後方側への長さを短くし、コンパクト化を図っている点である。
したがって、以下では、この異なる部分の構成について主に説明し、同様である点については説明を割愛する場合がある。
【0057】
図4(A)は
図2に対応する分解断面図であり、
図4(B)は
図3(A)に対応する断面図である。
まず、
図4を参照しながら、各部材の具体的な取付け手順について説明し、その後、
図5を参照しながら第2実施形態のスプレーガン1も第1実施形態と同様の動作ができるようになっていることについて説明する。
なお、第1実施形態と同様の部材については、同様の番号を付している。
【0058】
図4(A)に示すように、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、スプレーガン1の後端側には取付部50が設けられており、その取付部50内に位置するニードル4のフランジ部4aに一端が当接するまで、ニードル4の後端側からニードル4を覆うように、コイルばねからなる第1弾性体5を装着する(
図4(B)参照)。
【0059】
次に、
図4(A)に示すように、第1実施形態と同様に、ニードル4の後端側から装着した第1弾性体5を内部に受け入れるように、つまり、第1弾性体5を覆うようにして、ニードル4の後端側に第1受部材6が配置される。
より具体的には、第1受部材6をスプレーガン1の後端に設けられている取付部50に取付ける。
【0060】
この取付について説明すると、第2実施形態の取付部50は、
図4(A)に示すように、前方側に小径部50aが設けられ、それに続いて大径部50bが形成されたものになっている。
なお、後ほど説明するが、大径部50bは、断面円形ではなく、例えば、断面が六角形などの角形断面である孔になっている。
【0061】
そして、小径部50aの内周面には雌ネジ構造が形成されており、一方、第1受部材6の前方側には雄ネジ構造6cが形成されているので、この雄ネジ構造6cを小径部50aの内周面の雌ネジ構造に螺合させることで、上述のように、取付部50に第1受部材6が取付けられる。
【0062】
図4(A)に示すように、第2実施形態の第1受部材6も第1実施形態の第1受部材6と同様に、第1弾性体5の他端を受ける受面6aに形成された貫通孔6bを有しており、
図4(B)に示すように、この貫通孔6bを通じて移動部材9の当接部となる先端9aがニードル4側に配置されるようになっている。
【0063】
取付部50に第1弾性体5の他端を受面6aで受けるように第1受部材6が取付けられると、次に、第2弾性体11の付勢力を移動部材9に伝達する付勢力伝達部材90を、第1受部材6を覆うように取付部50の大径部50bに挿入する。
なお、
図4(B)に示すように、この大径部50bの先端面、つまり、小径部50aと大径部50bとの境界となる段差面が付勢力伝達部材90の前端面を受けることで付勢力伝達部材90の前方側への移動が規制されるようになっている。
【0064】
第1実施形態では、
図1に示したように、第2弾性体11の一端を受けるフランジ部9bを移動部材9に直接形成するようにして、移動部材9が第2弾性体11で前方側に付勢されるようにしていたが、第2実施形態では、
図4(A)、(B)に示すように、このフランジ部9bに対応する部分を付勢力伝達部材90として別部材として構成するようにしている。
【0065】
より詳細に付勢力伝達部材90について説明を行うと、付勢力伝達部材90の前方側には第1受部材6を受け入れる受入孔部90aが設けられている。
そして、その受入孔部90aの後端面90bには、移動部材9の先端9aをニードル4側に配置させるための貫通孔90cが形成されている。
【0066】
また、付勢力伝達部材90の前方側の前端外周には、第2弾性体11の一端を受けるための外側に突出するフランジ部90dが形成されている。
このフランジ部90dの外形は、取付部50の大径部50bの内形形状に合わせるように、例えば、六角形状とされている。
このため、第1受部材6を受入孔部90aに受け入れるようにしつつ、第1受部材6と取付部50の大径部50bとの間に挿入された付勢力伝達部材90は、大径部50b内で回転することなく、前後方向に摺動するようになっている。
【0067】
このように、付勢力伝達部材90を取付部50の大径部50bに挿入して、付勢力伝達部材90が第1受部材6を覆うように配置されると、次に、付勢力伝達部材90の後端側からコイルばねからなる第2弾性体11の一端が付勢力伝達部材90のフランジ部90dに当接するまで付勢力伝達部材90を覆うように装着する。
つまり、付勢力伝達部材90の後端側から付勢力伝達部材90の外周に被せるように、第2弾性体11の一端が付勢力伝達部材90のフランジ部90dに当接するまで第2弾性体11を挿入する。
【0068】
続いて、第2弾性体11の他端側を覆うように第2受部材12を取付部50に取付ける。
具体的には、取付部50の後端側外周面に雄ネジ構造が形成されており、一方、第2受部材12の前方側内周面には、雌ネジ構造が形成されている。
このため、第2受部材12の雌ネジ構造を取付部50の後端外周面の雄ネジ構造に螺合させることで、第2受部材12が取付部50に取付けられる。
【0069】
第2受部材12は、
図4(A)に示すように、前方側に開口する有底キャップ状であり、この後端側の底面が第2弾性体11の他端を受ける受面になっており、この底面の中央には、付勢力伝達部材90の後端を挿入する貫通孔12aが形成されている。
この貫通孔12aの内径は、付勢力伝達部材90の後端側が挿入できる程度に付勢力伝達部材90の後端側の外径より若干大きく形成されている。
このため、
図4(B)に示すように、付勢力伝達部材90の後端側を覆うように第2受部材12が配置されたときに、付勢力伝達部材90の後端が貫通孔12a内に位置できるようになっている。
【0070】
ここで、
図4(B)に示す付勢力伝達部材90に注目すると、付勢力伝達部材90の外周は、前端側の外径が大きく、後端側は、段差面90eを介して外径が一段小さくなるように形成されている。
【0071】
そして、上述のように、第2受部材12の底面の中央に設けられた貫通孔12aの内径は、付勢力伝達部材90の後端側の外径より若干大きいだけであり、付勢力伝達部材90の後端側の外径にほぼ等しい内径に形成されているので、後ほど説明するが、第2弾性体11の付勢力に抗して付勢力伝達部材90が後端側に移動したときに、付勢力伝達部材90の段差面90eが、第2受部材12の底面に当接するところまでしか付勢力伝達部材90は後端側へ移動することができないようになっている。
【0072】
つまり、付勢力伝達部材90の前端側の外径が大きい部分と後端側の外径が小さい部分とを繋ぐ段差面90eが付勢力伝達部材90の後端側への移動距離を規制する規制部を構成している。
【0073】
そして、上述のように、第2受部材12は取付部50に螺合させることで取付けられているので、第2受部材12の螺合量を変えると、第2受部材12の取付位置を前後方向に調節することができるので、この調節によって、
図4(B)に示す状態のときの付勢力伝達部材90の段差面90eと第2受部材12の底面との間の距離を変えることができるので、付勢力伝達部材90の後端側への移動距離を調節することができるようになっている。
【0074】
最後に、第2受部材12の後端側から移動部材9を先端9aを付勢力伝達部材90の貫通孔90c及び第1受部材6の貫通孔6bを通してニードル4の後端4bに対向させるように、移動部材9を付勢力伝達部材90に取付ける。
【0075】
具体的には、付勢力伝達部材90の貫通孔90cの内周面には雌ネジ構造が形成されており、一方、移動部材9の外周面には雄ネジ構造が形成されているので、移動部材9の雄ネジ構造を付勢力伝達部材90の雌ネジ構造に螺合させることで移動部材9を付勢力伝達部材90に取付けることができるようになっている。
【0076】
第1実施形態で説明したように、ニードル4の後端4bと当接する移動部材9の当接部となる先端9aとニードル4の後端4bとの間の離間距離分だけ、作業者が引金3を引くと、後端4bと先端9aが当接し、その当接時の感触が引金3を引く指に伝わることで、作業者は半開の位置まで引金3を引いたことを感覚的に認識する。
【0077】
第2実施形態でも移動部材9は螺合接続で付勢力伝達部材90に取付けるようにしているため、その螺合量を変えることで、移動部材9の位置を前後方向に調節できるようになっているので、第2実施形態でも、第1実施形態で説明したのと同様に、移動部材9の付勢力伝達部材90に対する螺合量を変えて、
図4(B)に示す状態よりも、移動部材9を後方に位置させるようにしたり、前方に位置させるようにして、半開時の液体の噴出量の調整ができるようになっている。
【0078】
ところで、第2弾性体の付勢力で付勢力伝達部材90が前方側に付勢されていることから付勢力伝達部材90は回転方向に回転し難い状態にはなっているものの、移動部材9の螺合量を調節するときに、移動部材9と共に回転してしまう場合がある。
【0079】
そうすると、螺合量を変えるために、移動部材9を回転させたときに、付勢力伝達部材90が一緒に回転してしまい、螺合量の調節がやり難くなる。
そのようなことが起きないように、本実施形態では、前述したように、取付部50の大径部50bの断面形状を六角形とし、付勢力伝達部材90のフランジ部90dの外形を六角形とすることで付勢力伝達部材90の回転を禁止する回転禁止機構を構成するようにしている。
【0080】
しかしながら、回転防止機構は、このように取付部50の大径部50bの断面形状を多角形とし、フランジ部90dの外径をそれに応じた多角形の外形にすることに限定されるものではない。
【0081】
例えば、フランジ部90dにフランジ部90dから突出する凸部を設け、取付部50の大径部50bに、その凸部を受け入れてガイドする前後方向に延びる溝を設けるように回転防止機構を実現するようにしてもよく、回転防止機構は、付勢力伝達部材90の回転を禁止しつつ前後方向の摺動を許すものであれば特に限定されるものではない。
【0082】
以上のように構成される第2実施形態のスプレーガン1の動作などについて、
図5を参照しながら説明する。
図5(A)は
図3(A)に対応する図であり、
図5(B)は
図3(B)に対応する図であり、
図5(C)は
図3(C)に対応する図である。
【0083】
具体的には、
図5(A)は、引金3を引く前の状態、つまり、第1弾性体5によってニードル4が液体噴出口側に付勢され、ニードル4が液体噴出口を閉塞している状態のときを示している。
【0084】
また、移動部材9は付勢力伝達部材90を介して第2弾性体11によって、ニードル4側に付勢されているが、
図5(A)に示す引金3を引く前の状態のときには、付勢力伝達部材90の前端面が取付部50の大径部50bの先端面に当接することで、これ以上、移動部材9がニードル4側に移動することが規制されており、第1実施形態と同様に、ニードル4の後端4bと当接する当接面となる移動部材9の先端9aとが所定の距離離間した状態になっている。
【0085】
そして、第1弾性体5の付勢力に抗して引金3を引き、ニードル4が移動部材9側に離間距離に相当する分だけ移動すると、
図5(B)に示すように、ニードル4の後端4bと移動部材9の先端9aとが当接し、その時の感触が引金3を引く指に伝わることで、第1実施形態で説明したのと同様に、作業者は半開の位置を感覚的に認識することができる。
【0086】
第1実施形態でも説明したように、この離間距離は、半開の位置を認識するまでの引金3の引き量に相当するため、この離間距離を調節することで半開の位置を認識するまでの引金3の引き量を変えることができる。
つまり、この離間距離を調節することで半開時の微粒化液体の塗布範囲(微粒化液体の広がり範囲)を調節することができる。
【0087】
上述したように、移動部材9は付勢力伝達部材90に螺合接続するようにしているので、付勢力伝達部材90に対する移動部材9の螺合量を調節することで、
図5(A)に示す状態よりも、移動部材9を前方側に位置させたり、後方側に位置させたりすることが可能である。
【0088】
このため、付勢力伝達部材90に対する移動部材9の螺合量で、ニードル4の後端4bと当接する当接面となる移動部材9の先端9aの間の離間距離を調節することが可能になっている。
したがって、第2実施形態でも第1実施形態と同様に半開時の微粒化液体の塗布範囲の調節が可能になっている。
【0089】
そして、
図5(B)に示す半開の状態から引き続き引金3を引くと、第2弾性体11の付勢力に抗しながら、ニードル4の付勢に追従して移動部材9が移動し、この時、移動部材9と接続状態にある付勢力伝達部材90もニードル4の付勢に追従して移動し、付勢力伝達部材90の段差面90eが第2受部材12の底面に当接すると、それ以上、引金3を引くことができなくなり、このときに微粒化液体の塗布範囲(広がり範囲)は最大となる(
図5(C)参照)。
【0090】
つまり、付勢力伝達部材90の前端側の外径が大きい部分と後端側の外径が小さい部分とを繋ぐ部分として形成されている段差面90eは、第2受部材12の底面に当接することで、それ以上、移動部材9が移動しないように、移動部材9の移動量を規制するものになっている。
【0091】
また、ニードル4の最大移動距離は、引金3を引いていない状態から付勢力伝達部材90の段差面90eが第2受部材12の底面に当接して、それ以上、ニードル4が移動できなくなるまでの距離であるため、第2受部材12の位置が前後に移動することで、この距離が変わることになる。
【0092】
そして、前述したように、第2受部材12は取付部50に螺合接続されているので、取付部50に対する第2受部材12の螺合量を変えることで、第2受部材12の位置が前後方向に調節できるようになっている。
したがって、第1実施形態でニードル4の最大移動距離の調節ができるようになっていたのと同様に、第2実施形態でも、ニードル4の最大移動距離が、取付部50に対する第2受部材12の螺合量で調節可能になっている。
以上のように、第2実施形態でも第1実施形態と全く同様の動作を実現することができる。
【0093】
ところで、第2実施形態は、第1実施形態をよりコンパクト化したものであり、
図6に大きさが比較できるようにした図を示す。
図6の上側の図が第1実施形態の
図3(A)に対応する図であり、下側の図が第2実施形態の
図5(A)に対応する図である。
【0094】
図6に示すように、スプレーガン1の後端の取付部50が設けられる位置を基準にすると、第1実施形態では、半開の位置を作業者に感覚的に認識させるために設けられる構造部分の長さが70mmあるが、第2実施形態の場合、40mmであり、長さを30mmも削減することができている。
このように、第2実施形態の方がコンパクトで取り扱い易いスプレーガン1を実現することができる。
【0095】
なお、第2実施形態の説明では、既に、第1実施形態で説明済みである部分については、説明を割愛している部分があるが、当然、第2実施形態を実施する上で、構成上問題とならない部分については第1実施形態と同様の構成を第2実施形態に適用して良いことは言うまでもない。
【0096】
また、第1実施形態及び第2実施形態を通じて、本発明について、具体的な説明を行ってきたが、本発明は、その具体的な実施形態の状態に限定されるものではなく、上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかであり、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。