(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554700
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】充填物を有する缶詰食品製品
(51)【国際特許分類】
A23B 4/00 20060101AFI20190729BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20190729BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20190729BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20190729BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20190729BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
A23B4/00 101B
A23K50/40
A23K10/20
A23L13/00 Z
A23L17/00 Z
A23L3/00 101B
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-513118(P2015-513118)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公表番号】特表2015-526061(P2015-526061A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013060253
(87)【国際公開番号】WO2013174748
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/649,605
(32)【優先日】2012年5月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ピバロット, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】コマレク, ダヴィド
【審査官】
池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−065565(JP,A)
【文献】
特開平11−276118(JP,A)
【文献】
特開平07−184621(JP,A)
【文献】
特開昭52−065085(JP,A)
【文献】
特開2007−020417(JP,A)
【文献】
特表2000−515379(JP,A)
【文献】
特表2002−505863(JP,A)
【文献】
特表2000−510348(JP,A)
【文献】
特表2005−536219(JP,A)
【文献】
米国特許第02682471(US,A)
【文献】
特開昭62−104566(JP,A)
【文献】
社団法人日本缶詰協会監修, 缶びん詰・レトルト食品事典, 1985年12月, 株式会社朝倉書店, p.147-151
【文献】
吉松籐子ほか編, 理論と実際の調理学辞典, 1997年9月, 株式会社朝倉書店, p.53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 4/00
A23L 3/00
A23L 13/00
A23L 17/00
A23K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の混合物と、
前記第1の混合物を包んでいる第2の混合物と、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物を収容する缶と、
を有し、
前記第1の混合物が、ウシ属、ウマ科、ヒツジ類、鳥類、ブタ類、ヤギ類又は魚類の肉由来の繊維状タンパク質と、デンプン、ガム、カルボキシメチルセルロース及びそれらの混合物からなる群から選択される多糖と、水と、を含み、
前記第2の混合物が、肉を含まず、卵黄由来のタンパク質と、乳由来のタンパク質と、水と、脂と、を含み、かつ、
前記第2の混合物には、少なくとも1種の球状タンパク質又は少なくとも1種のミセル状タンパク質が含まれており、
前記第1の混合物が25〜75%を占め、前記第2の混合物が75〜25%を占める、
缶詰食品製品。
【請求項2】
前記第1の混合物が、筋肉及びコラーゲンを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記第2の混合物が、卵白、血液又は野菜由来のタンパク質をさらに含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記第1の混合物及び前記第2の混合物の少なくとも一方が、嗜好性増強剤、着色料、保存料、原材料の目に見える小片、可溶化された栄養原材料、風味化合物、芳香化合物、カプセル化された風味料、及びカプセル化された栄養素からなる群から選択される要素を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記第2の混合物が、前記第1の混合物を完全に包んでいる、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記第2の混合物が、前記第1の混合物の20%未満が表面に見えるように、前記第1の混合物を包んでいる、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
缶詰されたコンパニオンアニマル用食品製品である、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
缶詰食品製品を製造するための方法であって、
第1の混合物を形成するステップ、
第2の混合物を形成するステップ、及び、
前記第2の混合物が前記第1の混合物を包むように、前記第1の混合物及び前記第2の混合物を缶に充填するステップを含み、
前記第1の混合物が、ウシ属、ウマ科、ヒツジ類、鳥類、ブタ類、ヤギ類又は魚類の肉由来の繊維状タンパク質と、デンプン、ガム、カルボキシメチルセルロース及びそれらの混合物からなる群から選択される多糖と、水と、を含み、
前記第2の混合物が、肉を含まず、卵黄由来のタンパク質と、乳由来のタンパク質と、水と、脂と、を含み、かつ、
前記第2の混合物には、少なくとも1種の球状タンパク質又は少なくとも1種のミセル状タンパク質が含まれており、
前記第1の混合物が前記製品の25〜75%を占め、前記第2の混合物が前記製品の75〜25%を占める、方法。
【請求項9】
前記缶を密封するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記充填された缶をレトルト処理するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記充填された缶が、レトルト処理の前に逆さにされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填された缶が、121℃の温度で25〜50分間レトルト処理される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記レトルト処理された缶を冷却するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記レトルト処理された缶が、20℃〜35℃の温度に冷却される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の混合物で前記缶を充填するステップ及び前記第2の混合物で前記缶を充填するステップが、前記第2の混合物の一部分を前記缶に送達するステップと、前記第1の混合物を前記第2の混合物の前記部分の上に加えるステップと、前記第2の混合物の残りの部分で前記第1の混合物を覆うステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の混合物で前記缶を充填するステップ及び前記第2の混合物で前記缶を充填するステップが、前記第2の混合物を前記缶に送達するステップと、前記第1の混合物を前記第2の混合物内に注入するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の混合物で前記缶を充填するステップ及び前記第2の混合物で前記缶を充填するステップが、前記第1の混合物を第1の速度で、前記第2の混合物を第2の速度で共押出するステップと、前記第1の速度及び前記第2の速度を調整して、前記第2の混合物が前記第1の混合物を包むことを可能にするステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の混合物が、前記第1の混合物を完全に包む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の混合物が、前記第1の混合物の20%未満が表面に見えるように、前記第1の混合物を包む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本出願は、2012年5月21日に出願された米国仮出願第61/649605号の優先権を主張し、同仮出願の開示は、本参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
[0002]本発明は、一般には、缶詰食品製品に関し、詳細には、異なる外観及び食感を有する第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含有する缶詰食品製品並びにそのような食品製品を製造するための方法に関する。
【0003】
[0003]缶詰食品は、ミートローフから空気を含んだムースまで、食感及び外観が様々であるローフタイプとすることができる。これらの缶詰食品は、典型的に、生肉材料を粉砕し、これを水、塩、香辛料、硬化剤、ゲル化剤、及び必要であれば脂と混合して、生地を形成することにより製造される。次いで、生地を加熱する。次いで、加熱した生地を缶に充填して、レトルト処理及び冷却後、ミートローフを形成する。ローフの食感及び外観の変化は、生地における微粒化の程度、並びに配合中の結合剤のタイプ及び濃度により達成される。
【0004】
[0004]缶詰食品の別の通常の形態は、グレービー又はソースに漬けた肉又は肉類似物のチャンク(米国特許第4,781,939号、第6,379,738号、及び第6,692,787号に記載されている)若しくはスライス(欧州特許出願公開第1565069号に記載されている)である。他の変化形としては、肉又は肉類似物のチャンクの、ローフ(米国特許第6,440,485号に記載されている)、アスピック、又はゲル形態が挙げられる。缶詰食品のイメージのさらなる変化形としては、チャンク及びローフ形態の明確な二層化(米国特許第6,582,740号に記載されている)又はチャンク及びローフ形態の多層化(米国特許第6,911,224号に記載されている)が挙げられる。他の変化形は、中心充填物を導入することにより製造され、ここで、中心充填物層は、色若しくは食感又は両方が異なるローフ生地であるか、又は中心充填物は、グレービーに漬けたチャンクである(欧州特許第1061815号に記載されている)。この製品では、中心充填物は、蓋(上部)を取り外すと、また中(底部)を空けると目に見えるものであった。
【0005】
[0005]これらの缶詰食品製品は、それらの目的のためには十分である。しかしながら、ペットの飼い主及び世話人などの缶詰食品製品の消費者は、新規のさらに魅力的な缶詰食品の形態又は種類を絶えず求めている。したがって、消費者が切望している肉充填タイプの製品など、消費者に多様性及び魅力をもたらす新たな缶詰食品製品が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
[0006]したがって、本発明の一目的は、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを収容する缶を含む缶詰食品製品を提供することである。
【0007】
[0007]本発明の別の目的は、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含む食品製品を提供することである。
【0008】
[0008]本発明のさらなる目的は、第2のエマルジョンと比較して異なる外観及び食感を有する第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含有する食品製品を製造するための方法を提供することである。
【0009】
[0009]本発明のさらなる目的は、本発明の缶詰食品製品のマルチパックパッケージを提供することである。
【0010】
[0010]上記の又は他の目的のうちの1つ又は複数は、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含む食品製品を提供することにより達成される。上記第1のエマルジョンは、第1の相を有し、上記第2のエマルジョンは、第2の相を有し、上記第1の相及び上記第2の相は異なるものである。一般に、第1のエマルジョンは、肉エマルジョンであり、第2のエマルジョンは、肉以外のタンパク質エマルジョンである。第1のエマルジョン及び第2のエマルジョンの低混和性又は非混和性に起因して、本発明の食品製品は、2つの別々の相を有する食品製品である。
【0011】
[0011]本発明の他の並びにさらなる目的、特徴、及び利点は、当業者には容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の一実施形態における、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含有する食品製品の斜視図である。
【0013】
【
図1B】
図1Aの、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンを含有する食品製品の断面図である。
【0014】
定義
[0014]用語「包まれた」とは、肉エマルジョンが、肉以外のタンパク質エマルジョンに完全に又は実質的に包み込まれていることを意味し、ここで、肉エマルジョンの20%未満が食品製品の表面に見えている場合、肉エマルジョンは実質的に包み込まれている。
【0015】
[0015]用語「缶」とは、レトルト処理可能な硬質容器、例えば、金属又は金属合金の缶などの金属容器、プラスチック容器、ガラス容器、及びそれらの組合せを意味する。
【0016】
[0016]用語「缶詰」とは、食品製品が、缶に収容されていることを意味する。
【0017】
[0017]用語「コンパニオンアニマル」とは、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、スナネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタなどの家畜化された動物を意味する。
【0018】
[0018]本明細書で使用する場合、範囲は、範囲内のありとあらゆる値を列挙し記載する必要を避けるために、省略表現として本明細書で使用される。必要に応じて、範囲内の任意の適切な値を、上限値、下限値、又は範囲の末端値として選択することができる。
【0019】
[0019]本明細書で使用する場合、単語の単数形は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形を含み、逆もまた同様である。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という言及は、一般に、それぞれの用語の複数形を包括する。例えば、「食品組成物」又は「食品組成物を製造する方法」への言及は、複数のそのような「食品組成物」又は「方法」を含む。同様に、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、排他的ではなく包括的に捉えられるべきである。同じように、用語「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及び「又は」は、文脈上明らかに妨げられない限り、すべて包括的であると解釈されるべきである。
【0020】
[0020]用語「含んでいる(comprising)」又は「含んでいる(including)」は、用語「本質的にからなる」及び「からなる」が包含する実施形態を含むことが意図される。同様に、用語「本質的にからなる」は、用語「からなる」が包含する実施形態を含むことが意図される。
【0021】
[0021]本明細書で表されるすべてのパーセンテージは、別段に表されていない限り、食品組成物の全重量に対する重量によるものである。例えば、25重量%の量の原材料とは、原材料の量が、食品組成物の全重量の25%であることを意味する。したがって、食品組成物の全重量が100グラムである場合、25重量%に相当する原材料の実際の量は、25グラムとなる。
【0022】
[0022]本明細書で開示された製品及び方法並びに他の進歩は、本明細書に記載された特定の方法、手順、原材料、構成要素、及び試薬に限定されず、その理由は、当業者には理解されるように、これらの方法、手順、原材料、構成要素、及び試薬は変化し得るからである。さらに、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、開示された又は特許請求されたものの範囲を限定することは意図されず、現に限定するものではない。
【0023】
[0023]別段に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語、業界用語、並びに頭字語は、本発明の分野、又は用語が使用される分野の当業者により通常理解される意味を有する。本発明の実施において、本明細書に記載された組成物、方法、製造品、又は他の手段若しくは材料と同様又は同等のあらゆるものを使用することができるが、好ましい組成物、方法、製造品、又は他の手段若しくは材料が本明細書に記載されている。
【0024】
[0024]本明細書で引用又は参照された、すべての特許、特許出願、刊行物、技術論文及び/又は学術論文、並びに他の参考文献は、それらの文献の全体が、法律により許容される程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。それらの参考文献についての考察は、それらの参考文献においてなされた主張を要約することを意図するものにすぎない。そのような特許、特許出願、刊行物、若しくは参考文献のいずれも、又はそれらの文献のいずれの部分も、関連の技術、肝要な技術、又は先行技術であるとは承認されない。そのような特許、特許出願、刊行物、及び他の参考文献が、関連の技術、肝要な技術、又は先行技術であるという、あらゆる主張の正確性及び妥当性について異議を申し立てる権利は、明確に留保されている。
発明
【0025】
[0025]一態様では、本発明は、缶を含む製品であって、上記缶が、缶の内部の第1のエマルジョンと、第1のエマルジョンを包んでいる第2のエマルジョンとを有する、製品を提供する。一般に、第2のエマルジョンは、第1のエマルジョンを包んでいる外側マトリックスを形成し、第1のエマルジョン及び第2のエマルジョンは、異なる外観、食感、又は他の識別特性を有する。
図1A〜1Bにより示される一実施形態では、本発明は、第1のエマルジョン30を包んでいる外側マトリックスを形成するしっかりと固まった第2のエマルジョン20を含む食品製品10を提供する。
【0026】
[0026]第1のエマルジョン30及び第2のエマルジョン20は、食品製品10の任意の適切な量を占める。様々な実施形態では、第1のエマルジョンは、食品製品の約20〜約80%、好ましくは約30〜約70%を占める。ある特定の実施形態では、第1のエマルジョンは、食品製品の約25〜約75%を占め、第2のエマルジョンは、食品製品の残りの75〜25%を占める。
【0027】
[0027]一般に、第1のエマルジョン30は、肉エマルジョンであり、第2のエマルジョン20は、肉以外のタンパク質エマルジョンである。
【0028】
[0028]肉以外のタンパク質エマルジョンは、任意の適切な原材料、例えば、球状タンパク質及び/又はミセル状タンパク質を含む。肉以外のタンパク質エマルジョン中のタンパク質は、野菜、卵、乳、又は血液など、任意の適切な肉以外のタンパク質源に由来し得る。適切な野菜源としては、例えば、大豆、エンドウ豆、ジャガイモ、アルファルファ、及びラッカセイが挙げられる。肉以外のタンパク質エマルジョン中のタンパク質は、卵、乳、又は血液に由来することが好ましい。
【0029】
[0029]球状タンパク質は、水に可溶化又は懸濁することができる。適切な球状タンパク質としては、グロブリン、アルブミン、又はそれらの混合物が挙げられる。ミセル状の懸濁タンパク質としては、例えば、カゼインを挙げることができる。
【0030】
[0030]肉エマルジョンは、任意の適切な原材料、例えば、繊維状タンパク質及び多糖を含む。適切な繊維状タンパク質としては、ミオシン、アクチン、アクトミオシン、コラーゲン、及びそれらの混合物、例えば、ウシ属、ウマ科、ヒツジ類、鳥類、ブタ類、ヤギ類、ヒツジ類、及び魚類由来のタンパク質が挙げられる。適切な多糖の例としては、デンプン、ガム、又はそれらの混合物が挙げられる。肉エマルジョンは、ゲル、ムース、ソース様充填物、汁気の多い充填物、又はクリーム状の充填物の形態であってもよい。
【0031】
[0031]別の実施形態では、肉エマルジョンは、ゲルの形態であり、筋肉及びコラーゲンを含む。肉以外のタンパク質エマルジョンは、球状タンパク質及びミセル状タンパク質を含む。得られる食品製品10は、ゲル化した肉エマルジョン30を包んでいるしっかりと固まったタンパク質マトリックス20である。肉エマルジョン30は、食品製品10の25〜75%を占め、第2の肉以外のタンパク質エマルジョン20は、それに応じて、食品製品10の残りの75〜25%を占める。
【0032】
[0032]肉エマルジョンは、場合により、非ゲル化増粘剤を含んでもよい。非ゲル化増粘剤は、レトルト処理の際、しっかりと固まった外側の肉以外のタンパク質マトリックスに包まれた、クリーム状の肉様ソース充填物を作り出す。
【0033】
[0033]第1のエマルジョン30及び第2のエマルジョン20は、混和性がなく、又は混和性が低いため、食品製品が形成される際に混合しない2つの異なる相を形成する。したがって、食品製品10は、2つの別々の相(第1のエマルジョン30に相当する内側相及び第2のエマルジョン20に相当する外側相)から構成される。相分離は、以下に起因して得られる:(1)球状タンパク質及び繊維状タンパク質の非混和性又は不十分な混和性、並びに(2)肉エマルジョンの非混和性又は不十分な混和性、例えば、肉エマルジョンと混合された多糖は、球状タンパク質及びミセル状タンパク質との混和性が不十分である。
【0034】
[0034]第1のエマルジョン30及び第2のエマルジョン20の少なくとも一方は、場合により、追加の原材料を含んでもよい。例えば、第1のエマルジョン30及び/又は第2のエマルジョン20は、美的魅力又は栄養機能のため、本物又は模造の原材料の目に見える小片を含む。いくつかの実施形態では、第1のエマルジョン30又は第2のエマルジョン20の少なくとも一方は、可溶化若しくは分散された栄養原材料、風味化合物若しくは芳香化合物、又はレトルト処理中に、口内で、若しくは消化管において放出されるカプセル化された風味料若しくは栄養素を含む。
【0035】
[0035]別の態様では、本発明は、製品を製造するための方法を提供する。本方法は、第1のエマルジョンを形成するステップ、第2のエマルジョンを形成するステップ、第2のエマルジョンが第1のエマルジョンを包むように、第1のエマルジョン及び第2のエマルジョンを缶に充填するステップを含む。一実施形態では、食品製品10を製造するための方法は、第1のエマルジョン30を形成するステップと、第2のエマルジョン20を別個に形成するステップと、第1のエマルジョン30を缶内にポンプで注入するステップと、第2のエマルジョンが第1のエマルジョンを包むように、第2のエマルジョン20を缶内にポンプで注入するステップとを含む。本方法は、第1のエマルジョン30及び第2のエマルジョン20が缶に充填された後、缶に蓋をするステップと、缶に封をする(缶を密封する)ステップと、缶をレトルト処理するステップとをさらに含んでもよい。一般に、缶をその後、室温に冷却する又は平衡化させる。得られる食品製品10は、第1のエマルジョン30を完全に又は実質的に包んでいる外側マトリックスを形成するしっかりと固まった第2のエマルジョン20である。
【0036】
[0036]缶は、任意の適切な温度で適切な時間にわたりレトルト処理してもよい。例えば、缶は、121℃で25〜50分間レトルト処理してもよい。
【0037】
[0037]缶は、任意の適切な温度に冷却してもよい。例えば、缶は、20〜35℃の温度に冷却してもよい。一実施形態では、缶は、22〜26℃に冷却される。
【0038】
[0038]充填された缶は、場合により、レトルト処理の前に逆さにしてもよい。
【0039】
[0039]本発明の食品製品は、そのような食品製品を消費する任意の動物用の食品製品として有用である。好ましい実施形態では、食品製品は、コンパニオンアニマル用食品製品、例えば、イヌ又はネコ用のペットフードである。
【0040】
[0040]代替の実施形態では、食品製品10を製造するための方法は、第2のエマルジョン20の半分を缶内にポンプで注入し、続いて第1のエマルジョン30を第2のエマルジョン20の上にポンプで注入し、第2のエマルジョン20の残りの半分を、第1のエマルジョン30を覆うように第1のエマルジョン30の上にポンプで注入することにより缶を充填するステップを含む。本方法は、充填された缶に蓋をするステップと、充填された缶を密封するステップと、充填された缶をレトルト処理するステップと、レトルト処理された缶を冷却するステップとをさらに含んでもよい。
【0041】
[0041]食品製品10を製造するための代替の方法は、第2のエマルジョン20を缶に送達するステップと、第1のエマルジョン30を第2のエマルジョン20内に注入するステップとを含む。食品製品10は、第1のエマルジョン30を第1の速度で、第2のエマルジョン20を第2の速度で共押出するステップと、第1の速度及び第2の速度を調整して、第2のエマルジョン20が第1のエマルジョン30を包むことを可能にするステップとにより製造することもできる。
【0042】
[0042]肉エマルジョン及び肉以外のエマルジョン並びにそのようなエマルジョンを製造するための方法は、当業者には公知である。
【0043】
[0043]別の態様では、本発明は、本発明の缶詰食品製品を消費者に便利に提供するのに有用なマルチパックパッケージを提供する。マルチパックパッケージは、アレイ状に配置された、本発明の缶詰食品製品を収容する複数の缶と、缶をアレイ状に保持するための1つ又は複数の用具とを含む。いくつかの実施形態では、マルチパックパッケージは、パッケージの取り扱い及び輸送を容易にするためにパッケージに付けられた1つ又は複数の持ち手を有する。様々な実施形態では、用具は、紙、プラスチック、ポリマー、及びそれらの組合せから作製される箱である。他の実施形態では、用具は、各容器に付けられたプラスチックリングを連結したシステムである。さらに他の実施形態では、用具は、同様の材料のプラスチック包装、例えば、12個の缶をアレイ状に積み重ねてプラスチックに包装したものである。好ましい実施形態では、マルチパックパッケージは、パッケージ中の容器の中身を説明する1つ又は複数の表示、例えば、ラベル、パッケージ上の印刷、ステッカーなどをさらに含む。他の実施形態では、用具は、マルチパックパッケージを開けることなくパッケージの中身が見えるようにする1つ又は複数の窓部をさらに含む。いくつかの実施形態では、窓部は、用具の透明な部分である。他の実施形態では、窓部は、マルチパックパッケージを開けることなく容器が見えるようにする、用具の欠けている部分である。
【実施例】
【0044】
[0044]本発明は、以下の実施例によってさらに例示され得るが、これらの実施例は、例示目的のために含まれるにすぎず、特に別段に明示されていない限り、本発明の範囲を限定することは意図されないことが理解されよう。
【0045】
実施例1
[0045]肉エマルジョン(充填物)調製物のバッチ50Kgを、表1(a)に示す配合により作製した。魚肉を約10cmのサイズの小片に破砕し、次いで、小片を肉挽き機で3.175mmの開口を通して挽いた。別個に、高速ブレンダーを備える混合ベッセルで、キャロブガム及び血液を水に分散させた。次いで、挽いた魚肉を、ミキサークッカーに移した。ミキサーを作動させながら、ガム/血液分散体を、挽いた魚肉に加え、混合物を蒸気注入により40℃に加熱した。
【表1(a)】
【0046】
[0046]肉以外のタンパク質エマルジョンのバッチ100Kgを、表1(b)に示す配合により調製した。
【表1(b)】
【0047】
[0047]卵黄粉末を除く乾燥原材料を、ステンレス製ケトル中の水に加え、泡が形成されるまで5分間泡立てた。家禽脂を70℃に予熱し、次いで、卵黄と一緒に、泡立った混合物に継続して泡立てながら加えた。混合物を、20分間蒸気により間接的に加熱した。
【0048】
実施例2
[0048]肉エマルジョン及び肉以外のタンパク質エマルジョンを、以下のように合わせた。30グラムの肉エマルジョンを、充填ヘッドにより85グラム缶に送達した。次いで、50グラムのタンパク質エマルジョンを缶に加え、そこで、タンパク質エマルジョンが肉エマルジョンを取り囲んだ。缶を逆さにし、121℃で40分間レトルト処理し、次いで、室温(20〜23℃)に冷却した。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉以外のエマルジョンに完全に包まれた肉エマルジョンであった。
【0049】
実施例3
[0049]肉エマルジョンについては表2(a)に、肉以外のタンパク質エマルジョンについては表2(b)に示す配合を使用して、実施例2のように製品を作製した。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉以外のエマルジョンに完全に包まれた肉エマルジョンであった。
【表2(a)】
【表2(b)】
【0050】
実施例4
[0050]肉エマルジョンについては表3(a)に、肉以外のタンパク質エマルジョンについては表3(b)に示す配合を使用して、実施例2のように製品を作製した。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉以外のエマルジョンに完全に包まれた肉エマルジョンであった。
【表3(a)】
【表3(b)】
【0051】
実施例5
[0051]肉エマルジョンについては表4(a)に、肉以外のタンパク質エマルジョンについては表4(b)に示す配合を使用して、実施例2のように製品を作製した。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉以外のエマルジョンに完全に包まれた肉エマルジョンであった。
【表4(a)】
【表4(b)】
【0052】
実施例6
[0052]肉エマルジョン(充填物)調製物のバッチ100Kgを、表5(a)に示す配合により作製した。肉原材料を秤量し、約10cmのサイズの小片に破砕した。次いで、小片を、肉挽き機で3.175mmの開口を通して挽き、ステンレス製ミキサーに移した。65kgの飲用水を加え、次いで、ミキサーをオンにした。継続的に混合しながら、乾燥原材料(デンプン、ガム、ビタミン/ミネラル/赤色色素/風味料ブレンド)をゆっくりと加えた。さらに5分間混合を継続した。次いで、この肉混合物をグリッド乳化機(grid emulsifier)に通すことにより、均質な肉エマルジョンが得られた。
【表5(a)】
【0053】
[0053]肉以外のタンパク質エマルジョンを、表5(b)に示す比率により、以下のように調製した。液体1は、室温(22〜26℃)にて、電動撹拌機を備えるステンレス鋼製ベッセルで、200グラムの塩化ナトリウムを46Kgの水に溶解することにより調製した。次いで、20Kgの卵白粉末を、継続的に撹拌しながら注ぎ入れた。混合物を約10分間撹拌すると、卵白粉末が完全に分散し、泡が発生した。液体2は、6Kgの卵黄粉末及び15Kgの水を使用して、液体1とは別個の容器で調製した。液体3は、45Kgの粉乳及び120Kgの水を使用して、液体2とは別個の容器で調製した。
【表5(b)】
【0054】
[0054]液体4は、電動混合アタッチメントを備えるジャケット付きベッセルで、90Kgの家禽脂を80℃に加熱することにより調製した。この温度を維持しつつ、継続的に混合しながら、22.5Kgの小麦粉を、一定の流れで脂に注ぎ入れた。小麦粉を加え終わったら、均質なクリーム状の混合物が得られるまで、さらに7分間混合を継続した。これが得られたら、液体4を継続的に混合し、液体3を液体4に注ぎ入れ、続いて液体2を注ぎ入れることにより、肉以外のタンパク質エマルジョンを作製した。5分間混合を継続した。次いで、液体1を混合物と合わせて、均質な泡状の肉以外のタンパク質エマルジョンを形成した。
【0055】
実施例7
[0055]実施例6の肉エマルジョン及び肉以外のタンパク質エマルジョンを、以下のように二通りに合わせた。(A)30グラムの肉エマルジョンを、充填ヘッドにより85グラム缶に送達した。次いで、50グラムの肉以外のタンパク質エマルジョンを缶に加え、そこで、肉以外のタンパク質エマルジョンが肉エマルジョンを取り囲んだ;(B)40グラムの肉エマルジョンを、充填ヘッドにより85グラム缶に送達した。次いで、40グラムの肉以外のタンパク質エマルジョンを缶に加え、そこで、肉以外のタンパク質エマルジョンが肉エマルジョンを取り囲んだ。次いで、缶を121℃で40分間レトルト処理し、室温(22〜26℃)に冷却した。缶を開け、検査した。缶内の食品製品は、肉以外のエマルジョンに完全に包まれた肉エマルジョンであった。
【0056】
[0056]本明細書では、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示してきた。具体的な用語を用いたが、これらの具体的な用語は、一般的且つ説明的な意味で使用されるにすぎず、限定する目的では使用されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において規定される。上記の教示を踏まえて、本発明の多くの改変及び変化が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内において、本発明を、明確に記載されたのとは別の様式で実施してもよいことは理解されるはずである。