(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題に対する従来のアプローチは、栄養摂取や身体能力に関する個人間の潜在的に重要な違いを十分に考慮せずに、特定の集団に対する非個別化された一般的推奨事項を提供することを概して含んでいた。運動と特定の栄養素とを含む個別化されたアプローチのほうが、筋骨格の健康を強化するのに効率的である可能性が高い。そのような個別化された推奨事項は、対象者の栄養状態及び身体能力/状態の個別化された評価を行うことで、初めて可能となる。よって、そのような評価を短時間で行うための新規の方法が求められる。このアプローチでは、高齢者に助言及び運動を与えるための協調的な方法を用意する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、対象者の身体状況を判断するコンピュータ実施方法であって、対象者の栄養パラメータ及び身体持久力パラメータの分類システムを用意するステップと、対象者のパラメータの値を評価及び採点するステップと、得られた点数を使用して、対象者をそれぞれのパラメータに関するクラスに分類するステップと、各パラメータについて求められたクラスを使用して、対象者の身体状況を判断するステップとを含む方法に関する。
【0005】
この方法の第1のステップでは、対象者が本発明の方法を受けるのに適しているか否かを判断できる。対象者は、高齢の対象者であり得、65歳を超える人間の対象者であることが好ましい。身体状況は、対象者に所定の時間又は一定の距離を歩かせることによって評価できる。栄養パラメータは、MNA及び/又は1日の蛋白質摂取量の評価によって評価できる。この方法のステップは、20分以内又は90分以内に実行でき、30分未満で実行できることが好ましい。これらのステップは、既定の間隔で反復でき、8〜16週間ごとに反復されることが好ましい。
【0006】
さらなる実施形態では、本発明は、対象者の身体状況を向上させるコンピュータ実施方法であって、上述した方法のいずれかによって対象者の身体状況を判断するステップと、求められた点数に基づいて、栄養並びに身体持久力及び/又は抵抗力に関する推奨事項を対象者に提供するステップとを含み、栄養が、身体持久力を向上させる生体活性栄養素を含む方法に関する。
【0007】
身体状況パラメータについて求められたクラスに基づいて、求められたクラスごとに異なる特定の運動プログラムを推奨することができる。
【0008】
さらなる実施形態では、対象者の身体状況を判断する、コンピュータを備えるシステムであって、コンピュータが、対象者の栄養パラメータ及び身体持久力パラメータの分類システムを含むデータベースを格納し、コンピュータが、そのコンピュータに対象者のパラメータの値を受領及び格納させ、対象者のパラメータの値を採点させ、得られた点数を使用して対象者をそれぞれのパラメータに関するクラスに分類させ、クラスを出力させてそれによってクラスに基づいて対象者の身体状況を示させる命令を含むソフトウェアプログラムを格納するシステムである。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、対象者の身体状況の向上を促進する、コンピュータを備えるシステムであって、コンピュータが、対象者の栄養パラメータ及び身体状況パラメータの分類システムを含むデータベースを格納し、コンピュータが、そのコンピュータに対象者の前記パラメータの値を受領及び格納させ、対象者の前記パラメータの値を採点させ、得られた点数を使用して対象者をそれぞれのパラメータに関するクラスに分類させ、求められたクラスに基づいて、栄養並びに身体持久力及び/又は抵抗力に関する対象者への推奨事項を関連付けさせ、推奨事項を出力させる命令を含むソフトウェアプログラムを格納するシステムに関する。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、老人介護を個別化する方法であって、身体機能試験、及び選択された高齢患者個体群の全体的な身体状況の識別に対する身体機能試験の妥当性に関するデータベースを作成するステップと、データベースをコンピュータに格納するステップと、コンピュータに特定の高齢患者個体群の身体状況及び栄養状態に関する実施可能な機能試験の結果を判断させるコンピュータプログラムを実行するステップであり、試験結果が栄養及び身体状況に関するエンドポイントを含むステップと、エンドポイントを使用して、栄養及び運動の試験結果に基づいてガイドラインを生成するプログラムを実行するステップであり、ガイドラインを特定の高齢患者個体群のメンバーに対して栄養運動プログラムを個別化するために使用できるステップとを含む方法に関する。
【0011】
少なくとも2つ又は3つの異なるプログラムが前記コンピュータによって使用され得る。コンピュータプログラムはコンピュータにより実行して、メンバーに対して栄養運動プログラムを個別化することができる。コンピュータプログラムは、身体状況をメンバーへの推奨事項に関連付け、それらの推奨事項を出力するステップをさらに含み得る。栄養運動プログラム中にメンバーを監視して、栄養及び身体状況を判断することができる。監視の結果に応じて、栄養運動プログラムを修正することができる。栄養運動プログラムは、メンバーの特定のニーズに適合した持久力及び抵抗力の運動プログラムであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
高齢の人/成人又は高齢者とは、60歳を超える人と定義される。特に、高齢者は、65歳超、70歳超、75歳超、80歳超、85歳超、又は90歳超であり得る。また高齢者は、60〜90歳、65〜90歳、70〜90歳、75〜90歳、80〜90歳、85〜90歳、又は60〜85歳、60〜80歳、60〜75歳、60〜70歳、60〜65歳であり得る。上記のように定義される年齢の上限及び下限の任意の組み合わせも、本明細書で開示されると想定される。
【0014】
約とは、特定の数値に対する範囲を規定するものと定義される。範囲は、特定の数値に対して+/−10%、+/−7.5%、+/−5%、+/−2.5%、又は+/−1%であり得る。
【0015】
採点とは、対象者により実行された試験方法により取得された数値を追加の情報に関連付ける/変換する方法であり、追加の情報とは、通常はその対象者のその試験における成績に関する標準化された情報を与えるための追加の数値である。たとえば、対象者の歩行速度は2m/秒であり得る。0〜1m/秒の速度について、点数は1と定義されている。1m/秒超〜2.5m/秒までの速度について、得点は2と定義され、2.5m/秒を超える速度について、点数は3と定義されている。よって、対象者の歩行速度は2と採点され得る。
【0016】
身体活動準備アンケート(Physical Activity Readiness Questionnaire;PAR−Q)とは、身体活動を高める前に医者の診断を受ける必要があるか否かを確認する、既成の公的に入手可能な1ページの書式である(2013年1月4日に検索されたhttp://www.csep.ca/cmfiles/publications/parq/par−q.pdfを参照)。
【0017】
発明の詳細な説明
節見出しは主題を明確にする役割を果たすものであり、主題を限定するものと解釈されるべきではない。値の範囲が開示されている場合、個別の各値、特に各整数が、その範囲によって網羅されると考えられる。
【0018】
発明の基本概念
本発明は、高齢者を力づけ、個別化された生活様式栄養プログラムを通じて生活の質と自立を高める、新しい統合された全体的アプローチに関する。本発明は、これらの目的を達成するためのツールに関する。特に、本発明の目的は、高齢の対象者の身体状況(及び栄養状態)を評価する試験システムを推奨して、個別化された訓練プログラムについての個別化された推奨事項及び栄養推奨事項を与えられるようにすることである。
【0019】
第1の態様では、健康状態の個別の側面を評価するための多様な試験により、人、特に高齢者の健康状態を評価できるようにする方法が提供される。第2の態様では、これらの評価の結果を使用して、健康状態を向上させるための個別化された助言を被験者に提供する。
【0020】
第1の態様の評価は、2つのパラメータを評価することにより行われる。これらのパラメータは、栄養及び身体機能性である。これらのパラメータの値は、それぞれの人に対して個別に求められる。求められた値により、人を採点して特定のクラスに分けることができる。グループごとに、第2の態様で、栄養訓練プログラムについての予め定められた助言を与えることができる。重要なのは、個人の筋力及び持久力を向上させることを目的とした訓練プログラムに関する推奨事項に基づいて、栄養ニーズを適応させる必要があるということである。さらに、栄養プログラムの選択により、訓練プログラムを適応させるための新たな可能性が開ける。よって、人の筋力又は持久力及び栄養ニーズの要因に関し、相互作用が存在する。健康状態に関する高齢者のニーズに対処するにあたり、これら3つの要因の間の相互関係が考慮されるのは、これが初めてである。さらに、推奨事項は、個人のニーズに合わせた個別化レベルで提供される。
【0021】
本発明の方法の概要
上述したように、方法の始まりは、関連するパラメータ(身体状況、栄養摂取)を評価することである。
【0022】
この評価の前に、本発明の評価方法に対する準備ができているかどうか、個人を個別に試験する場合がある(PAR−Qアンケート又は虚弱指数による判断等によるプログラム準備の事前評価)。PAR−Q又は虚弱指数の結果に応じて、対象者は歩行試験(たとえば、4mの歩行試験)を行い、運動プログラムに従う能力に関連する歩行速度を評価する。
【0023】
第1ステップで、患者が脆弱性の兆候を示しているか否かを判断するのが好ましい。この判断は、対象者が虚弱の兆候を示しているか否かを虚弱指数に従って判断することにより行うことができる。対象者が脆弱な患者の兆候を示していない場合、その対象者はユニバーサルガイドラインに沿った生活様式推奨事項を受けることができる。
【0024】
人が脆弱な患者の兆候を示している場合、その人は、持久力(機能)試験及び栄養試験スクリーンである追加試験を受けることができる。これらの試験に基づき、特定の運動プログラム及び栄養推奨事項が示唆又は推奨される。
【0025】
よって、本発明は、機能低下に陥る恐れがある人を支援することを目的とする。
【0026】
よって、脆弱な患者の兆候を試験した後の体力評価は、歩行速度の評価である。達成された歩行速度に基づいて、対象者に異なる運動プログラムを推奨することができる。オプションで、対象者が機能試験の前年に転倒した場合、バランスモジュールを追加することができる。
【0027】
体力評価に加えて、機能試験で識別された各グループに対して栄養スクリーン(たとえば、MNA試験)を実行することができる。この栄養スクリーンに基づいて、栄養推奨事項を用意することができる。特に、経口栄養サプリメントを用意することができる。これらの経口栄養サプリメントは、蛋白質又は/及びビタミンDを含み得る。
【0028】
好ましい実施形態では、対象者を4つの異なる運動プログラムのいずれかに割り当て、栄養介入についての個人的な推奨事項を提供することができる。これらの運動プログラム及び栄養介入の形式については、後述する。
【0029】
それぞれの人は、個別化された栄養運動プログラムに参加することができる。このプログラムは、8〜26週間、12〜20週間、又は約16週間続く。この個別化された栄養運動プログラムが完了した後、持久力評価及び栄養評価を含む主要評価をさらに実行することができる。このようにして、測定されるパラメータに関する人の進捗を求めることができる。進捗のレポートに基づき、個別化された栄養運動プログラムを修正又はキャンセルすることができる。よって、本発明の方法により、主要評価の結果に基づいて個別化された栄養運動プログラムを修正して、人に対する恩恵を最適化することができる。よって、一実施形態では、本発明は、主要評価の結果に基づいて個別化された栄養運動プログラムを選択し、規定の期間後にそのプログラムの効果を評価し、それらの再評価に基づいて個別化された栄養運動プログラムを修正する、反復的なプロセスに関する。最後の2つのステップは、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はそれ以上実行できる。このフィードバックループの前に、方法は、人が主要評価に対して適格であるか否かを判断する事前評価を含み得る。
【0030】
第1評価
第1評価試験は、人が主要評価方法を受けるのに適しているか否かを評価する方法である。第1評価試験は、通常、被験者に対する試験条件が緩い。試験は、脆弱な患者の兆候を識別する役割を果たす(図のステップ1を参照)。試験は、たとえば身体活動準備アンケートであり得、又は人の虚弱を判断する方法であることが好ましい。
【0031】
身体活動準備アンケート(PAR−Q)は、推奨される試験及び運動が心臓の検知から医学的に安全であることをすばやく確認する役割を果たす試験である。PAR−Q試験は、脆弱な患者の兆候を識別する役割を果たすことができる(図のステップ1を参照)。PAR−Qの結果に応じて、対象者は、歩行試験(たとえば、4mの歩行試験)を実行して、その身体能力の第1評価を行うことができる。対象者は、一定の距離を歩かなければならず、その際、その距離を通常の(心地良い)ペースで歩くことを求められる。人がその距離を歩いたときに測定された速度により、その人が主要評価方法に適格であるか否かを判断することができる。測定値が予め定められた下限よりも低い場合、その人は主要評価に対して適格ではない。それらの場合、その人は得てして脆弱であり、たとえば老人病専門医による詳しい診断を受ける必要がある。測定値が予め定められた上限より高い場合も、その人は主要評価に対して適格ではない。それらの場合、その人は通常十分に健常であり、よってその生活様式についてさらなる推奨事項を受ける必要はない。測定値が予め定められた下限と予め定められた上限との間である場合、その人は、主要評価に適している。
【0032】
特定の実施形態では、歩行は2〜6m、3〜5m、又は4mの歩行であり得る。歩行は、4mの距離であることが好ましい。上述した下限は、0.4〜0.8m/秒、0.5〜0.7m/秒、又は0.6m/秒であり得る。上述した上限は、1.3〜1.7m/秒、1.4〜1.6m/秒、又は1.5m/秒であり得る。好ましい実施形態では、下限は0.6m/秒であり、上限は1.5m/秒である。
【0033】
代替で、第1評価を脆弱な患者の兆候の識別に向けることがより好ましい。これは、技術分野において公知である脆弱試験を単純に使用することにより行うことができる。特に、ここでは、Morleyら(J Nutr Health Aging、2012年7月、16(7):601〜8、「A simple frailty questionnaire(FRAIL)predicts outcomes in middle aged African Americans」)、Subraら(The journal of nutrition、health & aging、2012年10月、Volume 16、Issue 8、pp 714〜720「The integration of frailty into clinical practice: Preliminary results from the Gerontopole」)、又はKalyaniら(The journal of nutrition、health & aging、2012年10月、Volume 16、Issue 8、pp 679〜686「Frailty status and altered dynamics of circulating energy metabolism hormones after oral glucose in older women」)により開示される脆弱試験が考慮される。この第1評価の結果として、対象者を脆弱の兆候を示しているものとして特徴付けるか、又はそれらの兆候を示していないものとして特徴付けることができる。対象者が虚弱の兆候を示している場合、その対象者に主要評価を受けさせ、それによって対象者をさらなる下位クラスにグループ化又は採点することができる。対象者が虚弱の兆候を示していない場合、その対象者には運動プログラム(「グリーンプログラム」)についての推奨事項を直接提供することができる。オプションで、対象者の栄養状態も判断することができる。
【0034】
追加評価
追加評価方法は、持久力評価方法及び栄養評価方法を含む。評価では、年齢、性別、試験を受ける人の既往歴の結果などの要因を考慮することもできる。これらの要因は、求められた試験値の採点に影響を与え得る。
【0035】
持久力評価
持久力(機能性)評価方法は、対象者の持久力/機能的能力(たとえば、歩行等の日常生活作業の特定の活動を実行する能力)を評価する少なくとも1つの試験を含み得る。
【0036】
機能性試験は、人を予め定められた時間又は特定の距離にわたり歩かせることにより持久力を求める少なくとも1つの方法を含み得る。好ましい持久力評価方法では、方法は歩行試験方法を含む。
【0037】
好ましい方法では、人は4mを歩かなければならない。続いて、歩行速度が求められ、達成された歩行速度に応じて、対象者が特定のクラスに割り当てられる。対象者は、2つ、3つ、4つ、又は5つのクラスにグループ分けされ得る。よって、クラスは、達成された歩行速度の特定の上限及び下限により定義することができる。求められたクラスに基づいて、運動プログラムに関する推奨事項を作成することができる。クラスは3つであることが特に好ましい。クラスが3つである場合、境界/限度又はクラスは、歩行速度が1m/秒超、1m/秒未満、及びテストを完了できない対象者のクラスであり得る。対象者がグループ分けされるこれら3つのクラスに基づいて、運動プログラムを推奨することができる。グループが3つの場合、3つの異なる運動推奨事項を用意することができる(たとえば、歩行速度が1m/秒超のグループ、1m/秒未満のグループ、及びプログラムを完了できない対象者のクラスに対して、それぞれグリーンプログラム、イエロープログラム、及びレッドプログラムを指定)。
【0038】
栄養評価
機能テストの対象となる、各対象者の栄養状態は、栄養評価によって評価することができる。特に有用なのは、簡易栄養状態評価表(Mini−Nutritional Assessment(MNA))又は簡易栄養評価表の短縮書式(MNA−SF、http://www.mna−elderly.com/forms/mini/mna_mini_english.pdfを参照)などのアンケートである。
【0039】
簡易栄養状態評価表(Mini−Nutritional Assessment;MNA(登録商標))は、栄養失調であるか又は栄養失調に陥る恐れがある65歳以上の高齢患者を識別できる、有効な栄養スクリーニング評価ツールである。MNA(登録商標)は、約20年前に開発され、高齢者のための最も有効な栄養スクリーニングツールである。当初は18個の質問で構成されていたが、現在のMNA(登録商標)は6個の質問で構成され、スクリーニングプロセスを簡素化している。現在のMNA(登録商標)(たとえば、Skates JJ、Anthony PS. Identifying geriatric malnutrition in nursing practice:the Mini Nutritional Assessment(MNA(登録商標))−an evidence−based screening tool J Gerontol Nurs 2012;38(3):18−27;quiz 28−29及び2013年1月4日に検索されたhttp://www.mna−elderly.com/default.htmlを参照)は、栄養失調であるか又は栄養失調に陥る恐れがある高齢者を識別することにおいて、当初のMNA(登録商標)の有効性及び精度を維持している。改定されたMNA(登録商標)Short Formは、介入へのつながりが簡素化且つ迅速化されており、現在は臨床用MNA(登録商標)の好ましい書式である。
【0040】
MNA−SFを対象者に適用するのが特に好ましい。
【0041】
MNA−SFは、5つの要因、すなわち過去3か月間の食物摂取量の低下、過去3か月間の体重減少、機動性、過去3か月間に経験した精神的ストレス又は急性疾患、及び神経心理学上の問題と、1つの要因、すなわち肥満度指数(body mass index; BMI)又は利用できない場合はふくらはぎの周囲長とを考慮する。MNA−SFの採点結果に基づいて、対象者を「通常の栄養状態」クラス又は「栄養失調の恐れ」/「栄養失調」クラスにグループ化することができる。
【0042】
追加の評価
主要評価では、筋力、年齢、性別、体重、身長、試験を受ける人の既往歴など、他のパラメータを考慮することも含み得る。
【0043】
運動プログラムの推奨
これまでのステップで求められた点数に基づいて、対象者に対して運動プログラムを選択又は推奨する。低い点数は、負荷の小さい運動プログラムに関連付けられ、高い点数は、負荷の大きい運動プログラムの選択又は推奨につながる。対象者が脆弱な患者の兆候を示さず、4mの歩行を1m/秒超の速度でこなし、通常の栄養状態を示している場合、その対象者はユニバーサルガイドラインに沿った生活様式の推奨事項を受けることができる(指定:ホワイト運動プログラム)。
【0044】
対象者が脆弱な患者の兆候を示しながらも4mの歩行を1m/秒超の速度でこなす場合、以下の(指定:グリーン)運動プログラムが示され得る。このプログラムは、週(wk)に3〜6日(d)の有酸素(持久力)運動(複数可)(例:歩行、ダンス、水泳、体育用具)を含み得る。また、このプログラムは、週(wk)に10回の筋力運動(たとえば、下半身のウェイト運動、手のウェイト5ポンド(3kg)、足首のウェイト)も含み得る。有酸素訓練は150分/wkまで、筋力運動は2〜3d/wkまで進めることができる。強度も進めることができる(認識される相対強度)。運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、グリーンプログラムは中程度から高い強度までで実行される。
【0045】
対象者が脆弱な患者の兆候を示し、4mの歩行を1m/秒未満で成し遂げる場合、以下の運動プログラムが示され得る(指定:イエロー運動プログラム)。このプログラムは、有酸素(持久力)運動(例:歩行、ダンス)を含む。プログラムは、週5回の筋力運動(下半身のウェイト運動)をさらに含み得る。有酸素訓練は75分/wkまで、筋力運動は3d/wkまで進めることができる。目標は、グリーンプログラムに進むことである。
【0046】
運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、イエロープログラムは中程度の強度で実行される。
【0047】
対象者が脆弱な患者の兆候を示し、4mの歩行を行えないか、歩けないか、車いすを利用しているか、又は寝たきりの場合、以下の運動プログラムが示され得る(指定:レッド運動プログラム)。このプログラムは、有酸素(持久力)運動(例:低速の歩行、ゆっくりしたダンス。ただし可能な場合)を含む。また、週2回の筋力運動(下半身のウェイト運動)も含み得る。
【0048】
目標は、イエロープログラムに進むことである。
【0049】
運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、レッドプログラムは低い強度で実行される。
【0050】
負荷の大きい運動とは、負荷の小さい運動に比べて、より長い時間がかかり、又は/及びより高い強度レベルで行われ、又は/及び予め定められた固定時間内により頻繁に反復される運動である。また、通常の運動プログラムに比べて短い時間に高い強度で実行される運動である「課題」を実行することもできる。
【0051】
対象者をシステムに分類するために複数の試験が使用されている場合、点数は異なる可能性がある。これらは、身体の異なる被試験領域間の身体的なアンバランスを示している可能性がある。その場合、運動ユニットは、より弱い身体状況を示す身体領域を訓練するように構成され得る。
【0052】
栄養の推奨
栄養状態について得られたクラスに基づき、特定の栄養推奨事項を個人に提供することができる。栄養推奨事項は、人の身体可動性にとって重要な身体パラメータを維持又は向上させることを目的とする。特に、これらの身体パラメータは、骨量、筋肉量、筋力、及び関節の完全性である。よって、栄養は、完全な栄養の形式と補助的な栄養剤の形式の両方で、生物活性栄養素を含んでいる必要がある。本発明の生物活性栄養素は、骨量、筋肉量、筋肉強度、関節の完全性を維持する効果を有し、すなわち、関節を保護し、及び/又は人の快適さを向上させる。生物活性栄養素の例として、蛋白質補給の増加、特定の蛋白質サプリメント(乳清蛋白質など)、カルシウム、ビタミンDなどがある。
【0053】
対象者が「通常の栄養状態」グループに採点され得る場合、通常の食事を推奨することができる。一方、対象者が「栄養失調の恐れ」/「栄養失調」グループに採点され得る場合、そのような対象者のニーズに適合した食事を推奨することができる。特に、完全な経口栄養サプリメント(oral nutritional supplement;ONS)を推奨することができる。好ましい実施形態では、このONSは(補助的な)蛋白質及び/又はビタミンDを含む。
【0054】
コンピュータ実施方法及びシステム
データの受領、処理、及び出力に関する上述した方法のすべては、ソフトウェアプログラムとして実施し、コンピュータで実行することができる。
【0055】
本発明は、対象者の身体状況を判断するコンピュータ実施方法であって、対象者の栄養パラメータ及び身体持久力パラメータの分類システムを用意するステップを含み、分類システムが、パラメータの数値的に求められた値にその値の点数を関連付け、またシステムが、点数にクラスを関連付け、システムが、クラスに特定の身体状況の表示を関連付け、対象者の機能的身体試験により求められたパラメータの値を入力し、その値を使用してデータベースに応じて各パラメータのそれらの値を採点し、得られた点数を使用して対象者をデータベースに応じて各パラメータに関するクラスに分類し、各パラメータについて求められたクラスを使用して対象者の身体状況の表示を求め、対象者の身体状況の表示を出力する方法に関する。
【0056】
対象者は、高齢の対象者であり得、65歳を超える人間の対象者であることが好ましい。持久力パラメータは、少なくとも1つの持久力試験により評価することができる。持久力試験は、歩行試験で達成された距離の測定からなるグループより選択できる。
【0057】
栄養パラメータは、少なくとも1つの栄養試験により評価することができる。栄養試験はMNAであり得る。
【0058】
コンピュータ実施方法は、追加のステップを含み得る。よってデータベースは、求められたクラスに基づいて、栄養、身体持久力、及び任意で筋力に関する対象者への推奨事項も含む可能性がある。よって方法は、求められたクラスに特定の推奨事項を関連付け、それらの推奨事項を出力するステップも含む可能性がある。
【0059】
運動プログラムは、求められたクラスごとに異なる可能性があるが、個人の嗜好にも応じ得る。
【0060】
さらなる実施形態では、対象者の身体状況を判断する、コンピュータを備えるシステムが開示される。コンピュータは、対象者の栄養及び身体状況の各パラメータについての分類システムを含むデータベースを格納する。コンピュータは、コンピュータに対象者のパラメータの値を受領及び格納させ、対象者のパラメータの値を採点させ、得られた点数を使用して対象者をそれぞれのパラメータに関するクラスに分類させ、クラスに基づいて対象者の身体状況の値を計算させる命令を含むソフトウェアプログラムを格納する。
【0061】
さらに、対象者の身体状況の向上を促進する、コンピュータを備えるシステムが開示される。コンピュータは、対象者の栄養及び身体状況の各パラメータについての分類システムを含むデータベースを格納する。コンピュータは、対象者の栄養、及び身体状況の各パラメータについての分類システムを含むデータベースを格納する。コンピュータは、コンピュータに対象者のパラメータの値を受領及び格納させ、対象者のパラメータの値を採点させ、得られたスコアを使用して対象者をそれぞれのパラメータに関するクラスに分類させ、クラスに基づいて対象者の身体状況の値を計算させ、身体状況の値を対象者に対する特定の推奨事項と関連付けさせ、求められたクラスに基づいて栄養、身体持久力、及び任意で筋力に関する対象者への推奨事項を出力させる命令を含むソフトウェアプログラムを格納する。
【0062】
さらなる実施形態では、老人介護を個別化する方法は、身体機能試験、及び選択された高齢患者個体群の全体的な身体状況の識別に対する身体機能試験の妥当性に関するデータベースを作成するステップと、データベースをコンピュータに格納するステップと、コンピュータに特定の高齢患者個体群の持久力に関する実施可能な機能試験の結果を判断させるコンピュータプログラムを実行するステップであり、試験結果が栄養及び身体状況に関するエンドポイントを含むステップと、エンドポイントを使用して、栄養及び身体試験結果に基づいてガイドラインを生成するプログラムを実行するステップであり、ガイドラインを特定の高齢個体群のメンバーに対して栄養運動プログラムを個別化するために使用できるステップとを含む。
【0063】
少なくとも2つ又は3つの異なるプログラムがコンピュータによって使用される。
【0064】
コンピュータプログラムをコンピュータにより実行して、メンバーに対して栄養運動プログラムを個別化することができる。コンピュータプログラムは、身体状況をメンバーへの推奨事項に関連付け、それらの推奨事項を出力するステップをさらに含み得る。栄養運動プログラム中にメンバーを監視して、栄養及び身体状況を求めることができる。監視の結果に応じて、栄養運動プログラムを修正することができる。運動プログラムは、メンバーの特定のニーズに適合した持久力及び筋力の運動プログラムであり得る。
【0065】
例
例:アルゴリズム
本発明の実践で使用されるアルゴリズムの概要を、本例が参照する図に示す。
【0066】
患者は、最初に、脆弱性の兆候を示しているか否か、又はそれがどの程度であるかを試験され得る。
【0067】
患者が脆弱性の兆候を示していない場合、ホワイトプログラム(現時点で活発及び健康)が意図された運動プログラムである。現時点で活発な患者は、ユニバーサルガイドラインに沿った生活習慣推奨を受ける。
【0068】
患者が脆弱性の兆候を示している場合、その患者は持久力試験(たとえば、4mの歩行等の機能試験)を受けることができる。
【0069】
患者が4mの歩行を1m/秒超の速度でこなす場合、グリーン運動プログラムが示され得る。
【0070】
このグリーンプログラムは以下を含む。
3〜6d/wkの有酸素(持久力)運動(例:歩行、ダンス、水泳、体育用具)
週(wk)に10回の筋力運動(下半身ウェイト運動、手のウェイト5ポンド(3kg)、足首のウェイト)
【0071】
有酸素訓練は150分/wkまで、筋力運動は2〜3d/wkまで進めることができる。
【0072】
強度も進めることができる(認識される相対強度)。運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、グリーンプログラムは中程度から高い強度までで実行される。
【0073】
4mの歩行が1m/秒未満で成し遂げられる場合、イエロープログラムが示される。
【0074】
このイエロープログラムは以下を含む。
酸素(持久力)運動(例:歩行、ダンス)
週5回の筋力運動(下半身のウェイト運動)
【0075】
有酸素訓練は75分/wkまで、筋力運動は3d/wkまで進めることができる。
【0076】
目標は、グリーンプログラムに進むことである。
【0077】
運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、イエロープログラムは中程度の強度で実行される。
【0078】
対象者が4mの歩行を行えないか、歩けないか、車いすを利用しているか、又は寝たきりの場合、レッドプログラムが示される。
【0079】
このレッドプログラムは以下を含む。
有酸素(持久力)運動(例:低速の歩行、ゆっくりしたダンス。ただし可能な場合)
週2回の筋力運動(下半身のウェイト運動)
【0080】
目標は、イエロープログラムに進むことである。
【0081】
運動は、記録小冊子を通じて監視することができる。通常、レッドプログラムは低い強度で実行される。
【0082】
栄養介入は、栄養パラメータについて求められた値に依存する。
【0083】
栄養状態の評価(栄養十分、栄養失調の恐れ、栄養失調)は、MNAを使用して評価することができる。
【0084】
値が平常と考えられる場合、通常の食事を推奨することができる。栄養失調の恐れがあるか、又は栄養失調である患者には、たとえば補助的な蛋白質又はビタミンDを含む完全な経口栄養サプリメント(ONS)を推奨することができる。