特許第6554712号(P6554712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554712偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6554712
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   G01S7/40 121
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-255221(P2017-255221)
(22)【出願日】2017年12月29日
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】201711453852.6
(32)【優先日】2017年12月28日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519220870
【氏名又は名称】蒋 歓
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蒋 歓
【審査官】 大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−187479(JP,A)
【文献】 特開2013−140173(JP,A)
【文献】 特開2010−14533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ波を送信する送信ユニットと、外部対象から送信されたレーダ波を受信する受信ユニットとを含む、偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置であって、
前記受信ユニットは、アンテナモジュール、2つのマイクロ波フロントエンドモジュール、2つの局部発振モジュール、2つの中間周波増幅モジュール、2つのアナログデジタル変換モジュール、メモリモジュール、偏波デジタル処理モジュール、偏波制御モジュール、車速検出トリガーモジュール、整流モジュール、トランジスタ、第1抵抗、第2抵抗、第1コンデンサ、第1スイッチモジュールを含み、
前記アンテナモジュールと前記局部発振モジュールは、いずれも2つのマイクロ波フロントエンドモジュールに接続され、前記の2つのマイクロ波フロントエンドモジュールは、それぞれ2つの中間周波増幅モジュールに接続され、2つの中間周波増幅モジュールは、それぞれ2つのアナログデジタル変換モジュールに接続され、2つのアナログデジタル変換モジュールは、いずれもメモリモジュールに接続され、前記メモリモジュールは、偏波デジタル処理モジュールに接続され、前記偏波制御モジュールは、前記アンテナモジュールに接続され、前記車速検出トリガーモジュールは、前記第1抵抗、第1コンデンサおよびトランジスタのベース電極に接続され、前記トランジスタのコレクタ電極は、前記第2抵抗、第1スイッチモジュールに接続され、前記第1スイッチモジュールは、整流モジュールを介して偏波制御モジュールに接続され、受信されるレーダ信号は、アンテナモジュールに受信された後、対応するマイクロ波フロントエンドモジュールによるアンテナ信号の選択により中間周波数信号に変換され、さらに中間周波増幅モジュールによって増幅され、対応するアナログデジタル変換モジュールを介してデジタル信号に変わり、メモリモジュールによりキャッシュされてから、偏波デジタル処理モジュールによりメモリにキャッシュされた情報から偏波情報を抽出し、車速検出トリガーモジュールで第1所定値を超える車速を検出すると、第1コンデンサの放電をトリガーして前記トランジスタのベース電極がオフになり、コレクタ電極電位が上昇して第1のスイッチモジュールがオンになり、偏波制御モジュールによりアンテナモジュールを制御して偏波補正を実行することを特徴とする、偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置。
【請求項2】
前記車速検出トリガーモジュールは、車速検出サブモジュールとスイッチ制御サブモジュールを含み、前記車速検出サブモジュールは、車載レーダ装置が配置されている車両の車速を検出するものであり、前記スイッチ制御サブモジュールは、前記車速検出サブモジュールで検出した車速に従って前記第1コンデンサの充放電を制御するものであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1抵抗と第1コンデンサの充電時間は、前記の偏波制御モジュールの制御で偏波補正を行う少なくとも1つの間隔周期であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記のアンテナモジュールは双極アンテナを採用することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記の第1スイッチモジュールはサイリスタであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載レーダ技術分野に関し、より具体的には、本発明は偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーネットワーキング技術の発展と共に、車載レーダ技術の応用空間はますます大きくなっている。例えば、高速道路には多くの車両があり、様々な予想外の事態が発生することがあり、車載レーダ装置は、車両から外部障害物までの距離を検出して表示することができ、検出は迅速かつ便利であり、計算は簡単であり、リアルタイムで制御することは容易である。しかしながら、いかにしてスマート車両レーダ装置の性能を改善するかは、業界が直面している課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題点に鑑み、本発明の実施形態は、上述した課題を部分的または完全に解決できる、スマート車載レーダ装置の偏波損失を効果的に低減でき、さらにスマート車載レーダ装置の性能を向上させることができるスマート車載レーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述した課題を解決するために、本発明は下記の構成を採用する。
本発明の1つの実施形態の偏波損失を低減するスマート車載レーダ装置は、レーダ波を送信する送信ユニットと、外部対象から送信されたレーダ波を受信する受信ユニットとを含むスマート車載レーダ装置であって、
前記の受信ユニットは、アンテナモジュール、2つのマイクロ波フロントエンドモジュール、2つの局部発振モジュール、2つの中間周波増幅モジュール、2つのアナログデジタル変換モジュール、メモリモジュール、偏波デジタル処理モジュール、偏波制御モジュール、車速検出トリガーモジュール、整流モジュール、トランジスタ、第1抵抗、第2抵抗、第1コンデンサ、および、第1スイッチモジュールを含み、
前記アンテナモジュールと前記局部発振モジュールは、いずれも2つのマイクロ波フロントエンドモジュールに接続され、前記2つのマイクロ波フロントエンドモジュールは、それぞれ2つの中間周波増幅モジュールに接続され、2つの中間周波増幅モジュールは、それぞれ2つのアナログデジタル変換モジュールに接続され、2つのアナログデジタル変換モジュールは、いずれもメモリモジュールに接続され、前記メモリモジュールは、偏波デジタル処理モジュールに接続され、前記偏波制御モジュールは、前記アンテナモジュールに接続され、前記車速検出トリガーモジュールは、前記第1抵抗、第1コンデンサおよびトランジスタのベース電極に接続され、前記トランジスタのコレクタ電極は、前記第2抵抗、第1スイッチモジュールに接続され、前記第1スイッチモジュールは、整流モジュールを介して偏波制御モジュールに接続され、受信されるレーダ信号は、アンテナモジュールに受信された後、対応するマイクロ波フロントエンドモジュールによるアンテナ信号選択によって中間周波数信号に変換され、さらに中間周波増幅モジュールによって増幅され、対応するアナログデジタル変換モジュールを介してデジタル信号に変わり、メモリモジュールによりキャッシュされてから、偏波デジタル処理モジュールによりメモリモジュールにキャッシュされた情報から偏波情報が抽出され、車速検出トリガーモジュールで第1所定値を超える車速を検出すると、第1コンデンサの放電はトリガーされて前記トランジスタのベース電極がオフになり、コレクタ電極電位が上昇して第1のスイッチモジュールがオンになり、偏波制御モジュールがアンテナモジュールを制御して偏波補正を実行する、スマート車載レーダ装置である。
【0005】
本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置によれば、そのアンテナモジュールは、双極アンテナを採用してもよく、すなわち、任意的な偏波信号を検出でき、かつ、偏波デジタル処理モジュールによってリアルタイムで偏波情報を処理し抽出することができ、高速でリアルタイムの特徴を有し、また、車両が高速走行する時、車載レーダ装置はある程度の偏波損失を有するが、本発明は、車両が高速で走行する時、共振干渉による偏波損失を調整することができ、すなわち、車速検出トリガーモジュールによって車速を検出し、かつ、車速が共振干渉を形成する第1所定値になると偏波制御モジュールがアンテナモジュールを制御し、偏波補正を行うことにより、スマート車載レーダ装置の偏波損失を低減し、さらにスマート車載レーダ装置の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置の構成概略図である。
図2図2は、本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置おける受信ユニットの構成ブロック図である。
図3図3は、本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置において、偏波制御モジュールを制御して偏波補正を行う概略図である。
図4図4は、本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置において、局部発振モジュールにおける信号干渉を防止する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照すると、本発明の1つの実施形態のスマート車載レーダ装置の構成概略図であり、該装置は、レーダ波を送信する送信ユニット1と、外部対象から送信されたレーダ波を受信する受信ユニット2を含む。図2を参照し、偏波情報の抽出を実現するため、具体的な実施例として、前記受信ユニット2は、アンテナモジュール201、2つのマイクロ波フロントエンドモジュール202、局部発振モジュール203、2つの中間周波増幅モジュール204、2つのアナログデジタル変換モジュール205、メモリモジュール206、偏波デジタル処理モジュール207、偏波制御モジュール208を含む。また、図3を参照し、本発明の他の偏波干渉の制御を実現するため、本発明の車載レーダ装置は、さらに車速検出トリガーモジュール209、整流モジュール210、第1スイッチモジュール211、トランジスタVT、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第1コンデンサC1を含む。
【0008】
実際に実行するとき、前記アンテナモジュール201と前記局部発振モジュール203はいずれも2つのマイクロ波フロントエンドモジュール202に接続され、前記の2つのマイクロ波フロントエンドモジュール202は、それぞれ2つの中間周波増幅モジュール204に接続され、2つの中間周波増幅モジュール204はそれぞれ2つのアナログデジタル変換モジュール205に接続され、2つのアナログデジタル変換モジュール205はいずれもメモリモジュール206に接続され、前記メモリモジュール206は偏波デジタル処理モジュール207に接続され、前記偏波制御モジュール208は前記アンテナモジュール201に接続され、前記車速検出トリガーモジュール209は前記第1抵抗R1、第1コンデンサC1およびトランジスタVTのベース電極に接続され、前記トランジスタVTのコレクタ電極は前記第2抵抗R2および第1スイッチモジュール211に接続され、前記第1スイッチモジュール211は整流モジュール210を介して偏波制御モジュール208に接続されている。
【0009】
実際に実行するとき、アンテナモジュール201は外部対象から発信されたレーダ信号を受信することに用いられ、マイクロ波フロントエンドモジュール202は、アンテナモジュール201が受信した信号を選択し、かつ、局部発振モジュール203からの局部発振信号と混合して中間周波信号に変更させることに用いられ、中間周波増幅モジュール204は、マイクロ波フロントエンドモジュール202から発信された信号を中間周波増幅させ、アナログデジタル変換モジュール205は中間周波増幅された信号をデジタル信号にA/D変換し、A/D変換されたデジタル信号情報は、メモリモジュール206によりキャッシュされ、偏波デジタル処理モジュール207は、メモリモジュール206にキャッシュされた情報から偏波情報を抽出し、アンテナモジュール201は左円偏波信号及び右円偏波信号を受信するために双極アンテナを使用してもよく、ここでは贅言を要しない。
【0010】
なお、車速が所定値を超えると、車載レーダ装置のアンテナが容易に共振し、すなわち車載レーダ装置のアンテナが共振干渉し、これにより偏波損失が増加し、抽出された偏波情報の偏りが生じる。この課題を解決するために、本発明は、車速検出トリガーモジュール209により車速が第1所定値より多いと検出されると、前記第1コンデンサの放電をトリガーして前記トランジスタVTのベース電極がオフとなり、コレクタ電極電位が上昇して第1スイッチモジュール211がオンとなるように制御し、偏波制御モジュール208によりアンテナモジュール201を制御して偏波補正を実行する。実際に実行するとき、第1所定値として、テストで異なる種類のアンテナの共振干渉が発生した車速値を確定すればよいが、具体的な車速値は限定されていない。また、本発明における前記第1スイッチモジュール211は、サイリスタなど、トリガー信号で制御電極をトリガーすることによってオンになるデバイスを採用すればよい。また、もう1つの実施形態によれば、前記車速検出トリガーモジュール209は、車速検出サブモジュールおよびスイッチ制御サブモジュールを含んでもよい。前記車速検出サブモジュールは、車載レーダ装置が配置されている車両の車速を検出し、前記スイッチ制御サブモジュールは、前記車速検出サブモジュールで検出した車速に従って前記第1コンデンサの充放電を制御する。
【0011】
なお、車速が所定値より小さいとき、共振干渉の影響は小さく、すなわち、偏波損失の影響はほとんどないため、偏波補正をオフにする必要がある。本発明において、車速が第2所定値より小さい時、すなわち、車速検出トリガーモジュール209により車速が第2所定値より小さいと検出されたとき、前記第1コンデンサの充電を制御することにより、偏波補正をオフにするが、実際に実行するときには、車速が低下しても共振干渉が一定期間継続する可能性があるため、偏波制御モジュールを一定期間動作させる必要がある。これを達成するために、本発明において、第1抵抗R1と第1コンデンサC1の充電時間で制御を実現することが可能であり、すなわち、整流モジュールの出力電圧は第1抵抗R1を介して第1コンデンサC1を充電し、第1コンデンサC1両端に掛かる電圧がトランジスタVTを再びオンにするのに十分なほど上昇したとき、第1スイッチモジュールとしてのサイリスタの制御極は再度等価的に接地され、トリガー電圧はなく、すなわち、第1スイッチモジュールとしてのサイリスタはオフになり、偏波制御モジュールは動作せず、すなわち、充電時間は偏波制御モジュールの動作時間であり、少なくとも1つの完全な偏波補正を達成することを確実にするため、本発明において、偏波制御モジュールが少なくとも1つの完全な補正サイクルで機能することを保証するため、前記第1抵抗R1と第1コンデンサC1の充電時間は、前記偏波制御モジュールの制御で偏波補正を行う少なくとも1つの間隔周期であり、ここでは贅言を要しない。
【0012】
また、図4を参照し、局部発振モジュール203は、起動時に、回路内の電流の急激な変化により、局部発振モジュール203に対する大きな信号干渉が形成される。この課題を解決するために、本発明は、さらに第3抵抗R3、第4抵抗R4、第2コンデンサC2、第1整流ダイオードVD1、第2整流ダイオードVD2および第2スイッチモジュール212を含む。第2スイッチモジュールがサイリスタである場合を例とすると、局部発振モジュールが配置されている回路がオンになると,コンデンサの特性によって、第2コンデンサC2両端に掛かる電圧は急激に変化することはできず、すなわち、第2コンデンサC2両端に掛かる電圧はゼロであり、第2スイッチモジュール212としてのサイリスタはトリガー電圧がないからオフになり、したがって、局部発振モジュールを流れる電流は第2整流ダイオードVD2によって整流された半波電流であり、この時、第2コンデンサC2は、第1整流ダイオードVD1と第3抵抗R3によって充電され、所定の時間遅延した後、第2コンデンサC2両端に掛かる電圧は第2スイッチモジュール212としてのサイリスタのオンレベルに上がり、第2スイッチモジュール212としてのサイリスタはオンになり、すなわち、電流は、徐々に上昇していき、急激な電流変化の影響が少なくなり、局部発振モジュールに対する信号干渉が少なくなる。
【要約】
本発明は、偏波損失を低減できるスマート車載レーダ装置を開示し、そのアンテナモジュールは、双極アンテナを採用してもよく、すなわち、任意的な偏波信号を検出でき、かつ、偏波デジタル処理モジュールを通してリアルタイムで偏波情報を処理し抽出することができ、高速でリアルタイムな特徴を有し、また、車両が高速走行する時、車載レーダ装置はある程度の偏波損失を有するが、本発明は、車両が高速走行する際に共振干渉によって生じる偏波損失を調整することができ、すなわち、車速検出トリガーモジュールによって車速を検出し、かつ、車速が共振干渉を形成する第1所定値になると、偏波制御モジュールはアンテナモジュールを制御して偏波補正を行うことにより、スマート車載レーダ装置の偏波損失を低減し、さらにスマート車載レーダ装置の性能を向上させる
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4