(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体の動く部位を含む第1の部位から得られた第1のナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第1のプロファイルを作成する第1のプロファイル作成手段と、
前記第1のナビゲータデータに対して、前記第1のナビゲータデータに混入した不要信号の影響を低減するためのフィルタ処理をする手段と、
前記第1のナビゲータデータをフィルタ処理することにより得られた第2のナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第2のプロファイルを作成する第2のプロファイル作成手段と、
前記第2のプロファイルに基づいて、前記第1のプロファイルをマスク処理するためのテンプレートを作成するテンプレート作成手段と、
前記テンプレートを用いて前記第1のプロファイルのマスク処理を行うマスキング手段と、
前記第1のプロファイルをマスク処理することにより得られた第3のプロファイルに基づいて、前記動く部位の位置を求める手段と、
を有するデータ処理装置。
被検体の動く部位を含む第1の部位から得られたナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第4のプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、
前記第4のプロファイルに対して、前記第4のプロファイルの不要信号のピークを低減するためのフィルタ処理を行うフィルタ手段と、
前記第4のプロファイルをフィルタ処理することにより得られた第5のプロファイルに基づいて、前記第4のプロファイルをマスク処理するためのテンプレートを作成するテンプレート作成手段と、
前記テンプレートを用いて前記第4のプロファイルのマスク処理を行うマスキング手段と、
前記第4のプロファイルをマスク処理することにより得られた第6のプロファイルに基づいて、前記動く部位の位置を求める手段と、
を有するデータ処理装置。
被検体の動く部位を含む第1の部位から得られた第1のナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第1のプロファイルを作成する第1のプロファイル作成処理と、
前記第1のナビゲータデータに対して前記第1のナビゲータデータに混入した不要信号の影響を低減するためのフィルタ処理をすることにより得られた第2のナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第2のプロファイルを作成する第2のプロファイル作成処理と、
前記第2のプロファイルに基づいて、前記第1のプロファイルをマスク処理するためのテンプレートを作成するテンプレート作成処理と、
前記第1のプロファイルを前記テンプレートでマスク処理することにより得られた第3のプロファイルに基づいて、前記動く部位の位置を求める処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
被検体の動く部位を含む第1の部位から得られたナビゲータデータに基づいて、前記第1の部位における信号強度の情報を含む第4のプロファイルを作成するプロファイル作成処理と、
前記第4のプロファイルに対して前記第4のプロファイルの不要信号のピークを低減するためのフィルタ処理をすることにより得られた第5のプロファイルに基づいて、前記第4のプロファイルをマスク処理するためのテンプレートを作成するテンプレート作成処理と、
前記第4のプロファイルを前記テンプレートでマスク処理することにより得られた第6のプロファイルに基づいて、前記動く部位の位置を求める処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0015】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、「受信コイル」と呼ぶ)4などを有している。
【0016】
マグネット2は、被検体13が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、静磁場を発生させるための超伝導コイル、勾配磁場を印加するための勾配コイル、およびRFパルスを送信するためのRFコイルなどを有している。超伝導コイルの代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0017】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体13はボア21に搬送される。
【0018】
受信コイル4は、被検体13の腹部から胸部に掛けて取り付けられている。受信コイル4は、被検体13からの磁気共鳴信号を受信する。
【0019】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、コンピュータ8、操作部11、および表示部12などを有している。
【0020】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して検波などの信号処理を実行する。
【0021】
コンピュータ8は、表示部12に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ8は、プロセッサ9およびメモリ10などを有している。
【0022】
図2はプロセッサ9が実行する処理を示す図である。メモリ10には、プロセッサ9により実行されるプログラムが記憶されている。プロセッサ9は、メモリ10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。プロセッサ9は、メモリ10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、第1のプロファイル作成手段91〜検出手段96などを構成する。
【0023】
第1のプロファイル作成手段91は、ナビゲータデータNDに基づいて、SI方向の各位置の信号強度を表すプロファイルF
1(
図14参照)を作成する。
フィルタ手段92は、ナビゲータデータNDをフィルタ処理する。
第2のプロファイル作成手段93は、ナビゲータデータNDをフィルタ処理することにより得られたナビゲータデータND´に基づいて、SI方向の各位置の信号強度を表すプロファイルF
2(
図16参照)を作成する。
テンプレート作成手段94は、プロファイルF
2に基づいて、プロファイルF
1をマスク処理するためのテンプレートTL(後述する
図19参照)を作成する。
マスキング手段95は、テンプレートTLを用いてプロファイルF
1をマスク処理する。
検出手段96は、プロファイルF
1をマスク処理することにより得られたプロファイルF
3に基づいて、肝臓のエッジの位置を検出する。
【0024】
プロセッサ9は、第1のプロファイル作成手段91〜検出手段96を構成する一例であり、メモリ10に記憶されたプログラムを実行することによりこれらの手段として機能する。尚、検出手段96は位置を求める手段に相当し、プロセッサ9がデータ処理装置に相当する。
【0025】
操作部11は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0026】
第1の形態では、肝臓のエッジの位置を検出するためのナビゲータシーケンスが実行される。
図3に、第1の形態で実行されるナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dを概略的に示してある。以下に、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dを実行するときの手順について説明する。
【0027】
先ず、オペレータは、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dを実行する前に、肝臓のエッジの動きを検出するための領域(以下、「ナビゲータ領域」と呼ぶ)R
navを設定する。
図4に、オペレータが設定したナビゲータ領域R
navを概略的に示す。ナビゲータ領域R
navのSI方向の範囲は位置P
1〜P
zに設定されている。また、ナビゲータ領域R
navの中心位置P
cは、肝臓の肺側のエッジ13aの近傍に位置決めされている。ナビゲータ領域R
navを位置決めした後、肝臓のエッジの位置を検出するためのナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dが順に実行される。以下に、肝臓のエッジの位置を検出する方法について説明する。
【0028】
尚、以下では、第1の形態における肝臓のエッジの位置の検出方法を説明する前に、第1の形態の検出方法の効果を明確にするために、先に、第1の形態とは別のやり方で肝臓のエッジの位置を検出する方法について先に説明する。そして、第1の形態とは別の検出方法について説明した後に、第1の形態の検出方法について説明する。
【0029】
図5は、第1の形態とは別のやり方で肝臓のエッジの位置を検出するためのフローチャートを示す図である。
ステップST11では、肝臓のエッジの動きを検出するためのナビゲータシーケンスNS
aが実行される。ナビゲータシーケンスNS
aを実行されることにより、ナビゲータ領域R
nav(
図4参照)から、肝臓の動きを検出するためのMR信号が発生する。このMR信号は受信コイル4(
図1参照)で受信される。受信コイル4で受信されたMR信号は受信器7(
図1参照)に供給される。受信器7は、受信コイルから受け取った信号に対して、検波などの信号処理を行い、信号処理により得られたデータを出力する。したがって、ナビゲータシーケンスNS
aを実行することにより、ナビゲータ領域R
navからナビゲータデータを得ることができる。
図6に、ナビゲータシーケンスNS
aを実行することにより得られたナビゲータデータNDを概略的に示す。ナビゲータデータNDは、コンピュータ8(
図1参照)に供給される。ナビゲータデータNDを得た後、ステップST12に進む。
【0030】
ステップST12では、ナビゲータデータNDを逆フーリエ変換することにより、実空間のデータを表すプロファイルが作成される。
図7に、ナビゲータデータNDから得られたプロファイルF
1の一例を概略的に示す。プロファイルF
1の横軸はナビゲータ領域R
nav内のSI方向の各位置を表しており、縦軸は各位置の信号強度を表している。ナビゲータシーケンスNS
aは肝臓が高信号となるように設計されている。したがって、プロファイルF
1の肝臓側は高信号となる。一方、肺は空気を含んでいるので、肺側の信号は低くなる。したがって、プロファイルF
1には、肺と肝臓との間に、信号強度の段差が現れる。プロファイルF
1を作成した後、ステップST13に進む。
【0031】
ステップST13では、プロファイルF
1に基づいて肝臓のエッジの位置を検出する。以下に、肝臓のエッジの位置の検出方法について説明する。
【0032】
先ず、プロファイルF
1の信号強度Sの最大値S
H1と最小値S
L1とを求める。
図8に、最大値S
H1と最小値S
L1とを示す。最大値S
H1と最小値S
L1とを求めた後、最大値S
H1と最小値S
L1との差ΔD
1を求める。差ΔD
1を求めた後、以下の式を用いて、肝臓のエッジの位置を検出するための閾値THを算出する。
TH=k
1・ΔD
1+S
L1 ・・・(1)
【0033】
ここで、式(1)の係数k
1は、0<k
1<1の値であり、被検体をスキャンする前に予め決められている値である。例えば、k
1=0.5である。式(1)の係数k
1、差ΔD
1、および最小値S
L1は既知の値であるので、閾値THを求めることができる。
図9にk
1=0.5に設定した場合の閾値THを概略的に示す。閾値THを算出した後、プロファイルF
1の中から、SI方向の位置P=P
i(i=1〜z−1)における信号強度S=S
iと、位置P=P
iに対してI方向に隣接する位置P=P
i+1における信号強度S=S
i+1とを取り出す。そして、信号強度S
iと、信号強度S
i+1と、閾値THとを比較し、以下の式を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める。
S
i<TH S
i+1≧TH ・・・(2)
ここで、S
i:位置P=P
iにおけるプロファイルF
1の信号強度
S
i+1:位置P=P
i+1におけるプロファイルF
1の信号強度
TH:閾値
【0034】
以下に、式(2)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める手順について説明する。
【0035】
図10は、式(2)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める手順の説明図である。
先ず、i=1の場合について考える。i=1では、位置P=P
1におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
1」であり、P=P
2におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
2」である。
図10を参照すると、S
1<THであり、且つS
2<THである。したがって、i=1では、式(2)は満たさない。式(2)を満たさない場合、iをi=1からi=2にインクリメントする。
【0036】
i=2では、位置P=P
2におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
2」であり、P=P
3におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
3」である。
図10を参照すると、S
2<THであり、且つS
3<THである。したがって、i=2でも、式(2)は満たさない。式(2)を満たしていない場合、iをi=2からi=3にインクリメントする。
【0037】
以下同様に、式(2)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1が見つかるまで、iの値をインクリメントする。ここで、i=aの場合について考える。i=aでは、位置P=P
aにおけるプロファイルF
1の信号強度は「S
a」であり、P=P
a+1におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
a+1」である。
図10を参照すると、S
a<THであり、且つS
a+1>THであるので、信号強度S
aおよびS
a+1が、式(2)を満たす信号強度として求められる。
【0038】
信号強度S
aは位置P
aにおける信号強度であり、信号強度S
a+1は位置P
a+1における信号強度である。したがって、信号強度が閾値THに近い値をもつときの位置P
aおよびP
a+1を特定することができる。そして、位置P
aおよびP
a+1のうちのいずれか一方の位置が、ナビゲータシーケンスNDを実行したときの肝臓のエッジのSI方向の位置として検出される。ここでは、位置P
aおよびP
a+1のうちのS側の位置P
aが、ナビゲータシーケンスNDを実行したときの肝臓のエッジのSI方向の位置として検出されるとする。肝臓のエッジの位置を検出したら、
図5のフローを終了する。
【0039】
以下同様に、ナビゲータシーケンスNS
b〜NS
d(
図7参照)の各々を実行するときも、
図5のフローに従って肝臓のエッジの位置が検出される。したがって、被検体の呼吸状態を表す呼吸信号を得ることができる。
【0040】
しかし、実際には、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dを実行した場合、B0不均一などが原因で、励起領域が広範囲に広がってしまう。したがって、受信コイル4が受信するMR信号には、ナビゲータ領域R
navに含まれる肝臓や肺の信号だけでなく、ナビゲータ領域R
navの外側に存在する組織(例えば、体表面の近傍の脂肪)による不要信号が混入する。また、ナビゲータ領域R
navに脂肪(内臓脂肪)が含まれている場合は、受信コイル4が受信するMR信号には、ナビゲータ領域R
navの内側に存在する脂肪による不要信号も混入する。したがって、実際には、プロファイルF
1は、不要信号の影響を受けて、以下の様な波形になる(
図11参照)。
【0041】
図11は、不要信号の影響を受けたプロファイルF
1の波形の一例を概略的に示す図である。
図11には、式(1)を用いて算出した閾値THが示されている。
図11の場合、閾値THを用いて求められる肝臓のエッジのSI方向の位置Pは、P=Pa´となる。しかし、位置Pa´は、肝臓のエッジの実際の位置P
realからI側にずれているので、肝臓のエッジの位置の検出誤差が大きくなってしまうという問題がある。そこで、閾値THの式(1)で使用されているk
1の値を、k
1=0.5よりも小さくすることが考えられる。
図12に、k
1=0.3に設定した場合の閾値THを示す。
図12では、閾値THを用いて求められる肝臓のエッジのSI方向の位置Pは、P=Pa”となる。しかし、位置Pa”は、肝臓のエッジの実際の位置P
realからS側にずれているので、やはり肝臓のエッジの位置の検出誤差が大きくなってしまうという問題がある。そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ね、肝臓のエッジの検出精度を高める方法を考え出した。以下に、第1の形態における肝臓のエッジの検出方法について説明する。
【0042】
図13は、第1の形態において、肝臓のエッジの位置を検出するためのフローチャートを示す図である。
ステップST11は、
図5に示すステップST11と同じである。したがって、ステップST11を実行することにより、ナビゲータ領域R
navからナビゲータデータND(
図6参照)を得ることができる。ナビゲータデータNDを得た後、ステップST12に進む。
【0043】
ステップST12では、第1のプロファイル作成手段91(
図2参照)が、ナビゲータデータNDを逆フーリエ変換し、SI方向の信号強度の情報を含むプロファイルを作成する。
図14に、ナビゲータデータNDから得られたプロファイルF
1の一例を概略的に示す。プロファイルF
1の横軸はナビゲータ領域R
nav内のSI方向の各位置を表しており、縦軸は各位置の信号強度を表している。プロファイルF
1を作成した後、ステップST120に進む。
【0044】
ステップST120では、フィルタ手段92(
図2参照)が、ナビゲータデータNDをフィルタ処理する。
図15に、ナビゲータデータNDをフィルタ処理することにより得られたナビゲータデータND´を概略的に示す。フィルタとしては、例えば、ガウス分布型フィルタを使用することができる。フィルタ処理を実行した後、ステップST121に進む。
【0045】
ステップST121では、第2のプロファイル作成手段93(
図2参照)が、フィルタ処理により得られたナビゲータデータND´を逆フーリエ変換する。
図16に、ナビゲータデータND´を逆フーリエ変換することにより得られたプロファイルF
2を概略的に示す。第1の形態では、フィルタ処理により得られたナビゲータデータND´を逆フーリエ変換するので、不要信号のピークが低減されたプロファイルF
2を得ることができる。プロファイルF
2を作成した後、ステップST122に進む。
【0046】
ステップST122では、テンプレート作成手段94(
図2参照)が、プロファイルF
2に基づいてテンプレートTLを作成する。テンプレートTLは、後述するステップST123においてプロファイルF
1をマスク処理するときに使用されるものである。以下に、テンプレートTLを作成する方法について説明する。尚、ステップST122は、2つのステップST122aおよびST122bに分けられているので、ステップST122aおよびST122bについて順に説明する。
【0047】
ステップST122aでは、テンプレート作成手段94が、プロファイルF
2の肺側の信号強度と肝臓側の信号強度とを区別するための閾値THpを設定する(
図17参照)。
【0048】
図17は、閾値THpを設定するときの説明図である。
テンプレート作成手段94は、プロファイルF
2の信号強度Sの最大値S
H2と最小値S
L2とを求める。最大値S
H2と最小値S
L2とを求めた後、最大値S
H2と最小値S
L2との差ΔD
2を求める。差ΔD
2を求めた後、以下の式を用いて、閾値THpを算出する。
THp=k
2・ΔD
2+S
L2 ・・・(3)
【0049】
ここで、係数k
2は、0<k
2<1であり、k
2の値は、被検体のスキャンを行う前に予め決定されている。具体的には、閾値THpが肺側の信号値と肝臓の信号値との間の値を有するように、k
2の値が決定される。k
2の値は、例えば、多数の被検体を実際にスキャンすることにより得られたデータを参考にして決定することができる。例えば、k
2=0.2と決定することができる。
図17には、k
2=0.2に設定した場合の閾値THpの一例を概略的に示してある。閾値THpを求めた後、ステップST122bに進む。
【0050】
ステップST122bでは、テンプレート作成手段94がプロファイルF
2を2値化する。具体的には、プロファイルF
2の信号強度のうち、閾値THpよりも小さい信号強度が論理値0(ゼロ)に設定され、閾値THp以上の信号強度が論理値1に設定されるように、プロファイルF
2を2値化する。
図18に、2値化されたプロファイルF
2を示す。
図18の上側には、2値化される前のプロファイルF
2が示されており、
図18の下側には、2値化された後のプロファイルF
2が示されている。2値化された後のプロファイルF
2が、マスク処理を行うためのテンプレートTLとして用いられる。テンプレートTLは、位置P1〜Pxの範囲Rx1において論理値「0」であり、位置Px+1〜Pzの範囲Rx2において論理値「1」に設定されている。
図19に、プロファイルF
2から得られたテンプレートTLを概略的に示しておく。テンプレートTLを作成した後、ステップST123に進む。
【0051】
ステップST123では、マスキング手段95(
図2参照)が、テンプレートTLを用いてプロファイルF
1のマスク処理を行う。以下に、マスク処理について説明する。
【0052】
図20は、マスク処理の説明図である。
マスキング手段95は、SI方向のピクセルごとに、プロファイルF
1の信号強度とテンプレートTLの論理値とを乗算する。テンプレートTLの位置P1〜Pxの範囲Rx1では、論理値が「0」である。したがって、プロファイルF
1とテンプレートTLとを乗算することにより、プロファイルF
1の位置P1〜Pxの範囲Rx1の信号強度をゼロに設定することができる。一方、テンプレートTLの位置Px+1〜Pzの範囲Rx2では、論理値が「1」である。したがって、プロファイルF
1とテンプレートTLとを乗算しても、プロファイルF
1の位置Px+1〜Pzの範囲Rx2の信号強度は保持される。
【0053】
このようにして、プロファイルF
1のマスク処理が行われる。
図20では、プロファイルF
1をマスク処理することにより得られたプロファイルを符号「F
3」で示してある。プロファイルF
3の範囲Rx1の信号強度はゼロであるが、プロファイルF
3の範囲Rx2の信号強度は、プロファイルF
1の信号強度と同じ値である。
図21に、マスク処理により得られたプロファイルF
3を概略的に示しておく。マスク処理の後、ステップST13に進む。
【0054】
ステップST13では、検出手段96(
図2参照)が、マスク処理により得られたプロファイルF
3に基づいて、肝臓のエッジの位置を検出する。以下に、肝臓のエッジの位置の検出方法について説明する。
【0055】
検出手段96は、先ず、肝臓のエッジの位置を検出するために使用する閾値THqを設定する(
図22参照)。
【0056】
図22は、閾値THqを設定するときの説明図である。尚、
図22には、参考のため、式(1)を用いて算出された閾値TH(
図11参照)も示してある。
【0057】
検出手段96は、マスク処理により得られたプロファイルF
3の信号強度Sの最大値S
H1と最小値S
L1とを求める。最大値S
H1と最小値S
L1とを求めた後、最大値S
H1と最小値S
L1との差ΔD
1を求める。差ΔD
1を求めた後、以下の式を用いて、閾値THqを算出する。
THq=k
1・ΔD
1+S
L1 ・・・(4)
【0058】
尚、マスク処理により得られたプロファイルF
3の最小値S
L1は、S
L1=0である。したがって、式(4)は、以下の式で表すことができる。
THq=k
1・ΔD
1+S
L1
=k
1・(S
H1−S
H1)+S
L1
=k
1・S
H1 ・・・(5)
【0059】
ここで、式(5)の係数k
1は、0<k
1<1の値であり、被検体をスキャンする前に予め決められている値である。例えば、k
1=0.5である。したがって、式(5)に、最大値S
H1を代入することにより、閾値THqを算出することができる。マスク処理により得られたプロファイルF
3は最小値S
L1がS
L1=0であるので、式(5)により算出された閾値THqは、式(1)により算出された閾値THよりも、ΔTHだけ低い位置に設定することができる。閾値THqを算出した後、マスク処理により得られたプロファイルF
3の中から、位置P=P
i(i=1〜z−1)における信号強度S=S
iと、位置P=P
iに対してI方向に隣接する位置P=P
i+1における信号強度S=S
i+1とを取り出す。そして、信号強度S
iと、信号強度S
i+1と、閾値THqとを比較し、以下の式を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める。
S
i<THq S
i+1≧THq ・・・(6)
ここで、S
i:位置P=P
iにおけるプロファイルF
3の信号強度
S
i+1:位置P=P
i+1におけるプロファイルF
3の信号強度
THq:閾値
【0060】
以下に、式(6)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める手順について説明する。
【0061】
図23は、式(6)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1を求める手順の説明図である。
位置P
1〜P
xでは、マスク処理により得られたプロファイルF
3の信号強度はゼロである。したがって、i=1〜x−1の場合、式(6)の条件(S
i<THqおよびS
i+1≧THq)は満たさない。そこで、検出手段96は、i=1〜x−1については、肝臓のエッジ位置の検出範囲から除外し、i=xから肝臓のエッジ位置の検出を開始する。
【0062】
i=xでは、位置P=P
xにおけるプロファイルF
3の信号強度は「S
x=0」であり、P=P
x+1におけるプロファイルF
3の信号強度は「S
x+1」である。
図23を参照すると、S
x<THqであり、且つS
x+1<THqである。したがって、i=xでは、式(6)は満たさない。式(6)を満たさない場合、iをi=xからi=x+1にインクリメントする。
【0063】
i=x+1では、位置P=P
x+1におけるプロファイルF
3の信号強度は「S
x+1」であり、P=P
x+2におけるプロファイルF
3の信号強度は「S
x+2」である。
図23を参照すると、S
x+1<THqであり、且つS
x+2<THqである。したがって、i=x+1でも、式(6)は満たさない。式(6)を満たしていない場合、iをi=x+1からi=x+2にインクリメントする。
【0064】
以下同様に、式(6)を満たす信号強度S
iおよびS
i+1が見つかるまで、iの値をインクリメントする。ここで、i=aの場合について考える。i=aでは、位置P=P
aにおけるプロファイルF
1の信号強度は「S
a」であり、P=P
a+1におけるプロファイルF
1の信号強度は「S
a+1」である。
図23を参照すると、S
a<THであり、且つS
a+1>THであるので、信号強度S
aおよびS
a+1が、式(6)を満たす信号強度として求められる。
【0065】
信号強度S
aは位置P
aにおける信号強度であり、信号強度S
a+1は位置P
a+1における信号強度である。したがって、信号強度が閾値THqに近い値になるときの位置P
aおよびP
a+1を特定することができる。検出手段96は、位置P
aおよびP
a+1のうちのいずれか一方の位置を、肝臓のエッジのSI方向の位置として検出する。ここでは、位置P
aおよびP
a+1のうちのS側の位置P
aが、肝臓のエッジのSI方向の位置として検出される。肝臓のエッジの位置を検出したら、
図13に示すフローが終了する。
【0066】
したがって、マスク処理により得られたプロファイルF
3を用いた場合、位置P
aが、肝臓のエッジのSI方向の位置として検出される。
【0067】
ここで、マスク処理により得られたプロファイルF
3を用いて検出された肝臓のエッジの位置Pa(
図23参照)と、マスク処理されていないプロファイルF
1を用いて検出された肝臓のエッジの位置Pa´(
図11参照)との違いについて、
図24を参照しながら説明する。
【0068】
図24の上側には、マスク処理により得られたプロファイルF
3を用いて検出された肝臓のエッジの位置Paが示されており、
図24の下側には、マスク処理されていないプロファイルF
1を用いて検出された肝臓のエッジの位置Pa´が示されている。位置Paは、肝臓のエッジの実際の位置P
realにほぼ一致しているが、一方、位置Pa´は、肝臓のエッジの実際の位置P
realからΔxだけずれている。したがって、マスク処理により得られたプロファイルF
3を用いることにより、肝臓のエッジ位置の検出誤差を小さくできることがわかる。
【0069】
尚、
図14〜
図23は、ナビゲータシーケンスNS
aを実行したときの肝臓のエッジ位置を検出する手順について説明されているが、ナビゲータシーケンスNS
b〜NS
d(
図14参照)の各々を実行するときも、
図13のフローに従って肝臓のエッジの位置が検出される。したがって、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dの各々を実行したときの肝臓のエッジの位置を検出することができる。
図25に、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dの各々を実行したときの肝臓のエッジの位置を概略的に示す。肝臓のエッジの位置は被検体の呼吸によって変化するので、被検体の呼吸信号S
resを得ることができる。
【0070】
第1の形態では、ナビゲータデータNDをフィルタ処理せずに逆フーリエ変換することにより、プロファイルF
1を得ている(
図14参照)。また、ナビゲータデータNDをフィルタ処理することによりナビゲータデータND´を求め、ナビゲータデータND´を逆フーリエ変換することによりプロファイルF
2を得ている(
図16参照)。したがって、フィルタ処理の効果により、不要信号の影響によるピークが低減されたプロファイルF
2を得ることができる。そして、プロファイルF
2を2値化することにより、テンプレートTLを作成している(
図19参照)。上記のように、プロファイルF
2は不要信号の影響によるピークが小さいので、プロファイルF
2を2値化することにより、肺側の信号がゼロであり、肝臓側の信号が1であるテンプレートTLを作成することができる。テンプレートTLを作成した後、テンプレートTLを用いてプロファイルF
1のマスク処理が行われる(
図21参照)。上記のように、テンプレートTLは肺側の信号がゼロであるので、テンプレートTLを用いてプロファイルF
1をマスク処理することにより、プロファイルF
1に現れていた肺側の不要信号のピークを消去することができる。したがって、マスク処理により得られたプロファイルF
3の肺側の信号はゼロとなる。第1の形態では、このプロファイルF
3に基づいて、肝臓のエッジの位置を検出するための閾値THqを求める(
図22参照)。閾値THqは、閾値THよりもΔTHだけ低い位置に設定することができるので、閾値THqを用いることにより、肝臓の内側の位置(例えば、
図24に示す位置Pa´)を肝臓のエッジの位置として誤検出する可能性を低くすることができる。また、プロファイルF
3は肺側の信号がゼロであるので、肺の内側の位置(例えば、
図12に示す位置Pa”)を肝臓のエッジの位置として誤検出する可能性も低くすることができる。したがって、肝臓のエッジの検出精度を向上させることができるので、高品質の呼吸信号を得ることができる。
【0071】
尚、第1の形態では、マスク処理により得られたプロファイルF
3は、範囲Rx1の信号強度がゼロに設定されている(
図20参照)。しかし、肝臓のエッジの位置を十分な精度で検出することができるのであれば、マスク処理により得られたプロファイルF
3の範囲Rx1の信号強度を、必ずしもゼロに設定する必要はない。例えば、プロファイルF
3の範囲Rx1の信号強度が、(マスク処理されていない)プロファイルF
1の範囲Rx1の信号強度の1/Nの値(Nは、例えば、N=10)に設定されるように、プロファイルF
1のマスク処理を行ってもよい。
【0072】
第1の形態では、プロファイルF
1をテンプレートTLでマスク処理し、マスク処理により得られたプロファイルF
3に基づいて肝臓のエッジの位置を検出するための閾値THqを求めている。これにより、肝臓のエッジの位置の検出精度を向上させることができる。このことを検証するため、被検体を実際にスキャンし、肝臓のエッジの位置を検出するための実験を行った。以下に、実験結果について説明する。
【0073】
図26は、実験結果を示す図である。
図26(a)は、第1の形態の方法を用いて(マスク処理により得られたプロファイルF
3を用いて)検出された肝臓のエッジの位置を表すデータD1を示している。データD1の横軸は時間を表しており、データD1の縦軸はナビゲータ領域のSI方向の位置P1〜Pzの範囲を示している。データD1内に示されている実線は、検出された肝臓のエッジの位置を示している。
【0074】
一方、
図26(b)は、比較例として、
図11に示す方法を用いて(マスク処理していないプロファイルF
1を用いて)検出された肝臓のエッジの位置を表すデータD2を示している。データD2内に示されている実線は、検出された肝臓のエッジの位置を示している。
【0075】
図26(b)では、例えば、時点t1〜t2の時間範囲、時点t3〜t4の時間範囲において、肝臓のエッジの検出位置が、肝臓のエッジの実際の位置よりも大きくI側(肝臓側)にずれており、検出誤差が大きいことがわかる。一方、
図26(a)では、
図26(b)と比較すると、検出された肝臓のエッジのI側への位置ずれが抑制されており、検出誤差が小さくなっていることがわかる。
【0076】
(2)第2の形態
第2の形態では、第1の形態とは別の方法でテンプレートTLを作成する例について説明する。
尚、第2の形態におけるMR装置は、第1の形態のMR装置と比較すると、プロセッサ9で実行される処理が異なるが、その他の点については、第1の形態のMR装置100と同じである。したがって、第2の形態のMR装置については、主に、プロセッサについて説明する。
【0077】
図27は、第2の形態におけるプロセッサの処理の説明図である。
プロファイル作成手段901は、ナビゲータデータNDに基づいて、SI方向の各位置の信号強度を表すプロファイルF
4(
図29参照)を作成する。
フィルタ手段902は、プロファイルF
4のフィルタ処理を実行する。
テンプレート作成手段903は、プロファイルF
4をフィルタ処理することにより得られたプロファイルF
5(
図30参照)に基づいて、プロファイルF
4のマスク処理するためのテンプレートTL(
図31参照)を作成する。
マスキング手段904は、テンプレートTLを用いてプロファイルF
4のマスク処理を行う。
検出手段905は、プロファイルF
4をマスク処理することにより得られたプロファイルF
6に基づいて、肝臓のエッジの位置を検出する。
【0078】
プロセッサ9は、プロファイル作成手段901〜検出手段905を構成する一例であり、メモリ10に記憶されたプログラムを実行することによりこれらの手段として機能する。尚、検出手段905は、位置を求める手段に相当する。
【0079】
図28は、第2の形態において、肝臓のエッジの位置を検出するためのフローチャートを示す図である。
ステップST11は、第1の形態におけるステップST11と同じである。したがって、ステップST11を実行することにより、
図6に示すナビゲータデータNDが得られる。ナビゲータデータNDを得た後、ステップST12に進む。
【0080】
ステップST12では、プロファイル作成手段901(
図27参照)が、ナビゲータデータNDを逆フーリエ変換することにより、SI方向の信号強度の情報を含むプロファイルを作成する。
図29に、ナビゲータデータNDから得られたプロファイルF
4の一例を概略的に示す。プロファイルF
4の横軸はナビゲータ領域R
nav内のSI方向の各位置を表しており、縦軸は各位置の信号強度を表している。プロファイルF
4を作成した後、ステップST120に進む。
【0081】
ステップST120では、フィルタ手段902(
図27参照)が、プロファイルF
4をフィルタ処理する。
図30に、プロファイルF
4をフィルタ処理することにより得られたプロファイルを概略的に示す。
図30では、プロファイルF
4をフィルタ処理することにより得られたプロファイルを符号「F
5」で示してある。フィルタとしては、例えば、移動平均フィルタを使用することができる。フィルタ処理により、不要信号のピークが低減されたプロファイルF
5を得ることができる。フィルタ処理を実行した後、ステップST122に進む。
【0082】
ステップST122では、テンプレート作成手段903(
図27参照)が、プロファイルF
5に基づいてテンプレートTLを作成する。テンプレートTLの作成方法は、第1の形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
図31に、プロファイルF
5に基づいて作成されたテンプレートTLを概略的に示す。テンプレートTLを作成した後、ステップST123に進む。
【0083】
ステップST123では、マスキング手段904(
図27参照)が、テンプレートTLを用いてプロファイルF
4のマスク処理を行う。マスク処理は、第1の形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
図32に、プロファイルF
4をマスク処理することにより得られたプロファイルを概略的に示す。
図32では、プロファイルF
4をマスク処理することにより得られたプロファイルを符号「F
6」で示してある。マスク処理の後、ステップST13に進み、プロファイルF
6を用いて、第1の形態と同様の手法で肝臓のエッジの位置を検出し、フローを終了する。
【0084】
第2の形態では、プロファイルF
4をフィルタ処理することにより、不要信号のピークが低減されたプロファイルF
5を作成している。したがって、プロファイルF
5を2値化することにより、肺側の信号強度がゼロに設定され、肝臓側の信号強度が1に設定されたテンプレートTLを作成することができる。このように、プロファイルF
5に基づいてテンプレートTLを作成した場合でも、マスク処理により、プロファイルF
4から肺側の信号を削除することができるので、肝臓のエッジの検出精度を向上させることができる。
【0085】
(3)第3の形態
第3の形態では、第1の形態で説明した肝臓のエッジの検出方法を用いて被検体のスキャンを行う別の例について説明する。尚、第3の形態におけるMR装置は、第1の形態のMR装置と比較すると、プロセッサ9で実行される処理が異なるが、その他の点については、第1の形態のMR装置100と同じである。したがって、第3の形態のMR装置については、主に、プロセッサについて説明する。
【0086】
図33は、第3の形態においてプロセッサ9が実行する処理を示す図である。
プロセッサ9は、第1のプロファイル作成手段91〜判断手段98などを有している。
第1のプロファイル作成手段91〜検出手段96は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。
ウインドウ設定手段97は、後述するウインドウW(図 参照)を設定する。
判断手段98は、ウインドウWに基づいて、イメージングデータを画像再構成用のイメージングデータとして受け入れるか否かを判断する。
【0087】
プロセッサ9は、メモリ10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、第1のプロファイル作成手段91〜判断手段98を構成する。
次に、第3の形態で実行されるスキャンについて説明する。
【0088】
図34は第3の形態で実行されるスキャンを示す図である。
第3の形態では、ローカライザスキャンLX、プレスキャンA、および本スキャンBが実行される。
【0089】
ローカライザスキャンLXは、スライスやナビゲータ領域を設定するために使用される画像を取得するためのスキャンである。
プレスキャンAは、後述するウインドウW(
図40参照)を求めるためのデータを取得するためのスキャンである。
本スキャンBは、肝臓の画像を取得するためのスキャンである。
以下に、ローカライザスキャンLX、プレスキャンA、および本スキャンBを実行するときのフローについて説明する。
【0090】
図35は、
図34に示すスキャンを実行するためのフローチャートを示す図である。
ステップST1では、ローカライザスキャンLXを実行する。
図36に、ローカライザスキャンLXにより取得された画像LDを概略的に示す。ローカライザスキャンLXを実行した後、ステップST2に進む。
【0091】
ステップST2では、オペレータは、画像LDに基づいて撮影領域にスライスを設定する。
図37に、オペレータにより設定されたスライスL1〜Lnを概略的に示す。第3の形態では、肝臓を撮影するので、肝臓を含む領域にスライスL1〜Lnが設定される。また、オペレータは、画像LDに基づいてナビゲータ領域R
navも設定する。ナビゲータ領域R
navのSI方向の範囲は位置P
1〜P
zに設定されている。また、ナビゲータ領域R
navの中心位置P
cは、肝臓の肺側のエッジ13aの近傍に位置決めされている。スライスL1〜Lnおよびナビゲータ領域R
navを設定した後、ステップST3に進む。
【0092】
ステップST3では、プレスキャンAが実行される(
図38参照)。
図38は、プレスキャンAで実行されるシーケンスの説明図である。
プレスキャンAでは、第1の形態で説明したナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dが順に実行される。したがって、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dの各々を実行したときの肝臓のエッジの位置を検出することができる。
図39に、ナビゲータシーケンスNS
a〜NS
dの各々を実行したときの肝臓のエッジの位置を概略的に示す。肝臓のエッジの位置は被検体の呼吸によって変化するので、プレスキャンAを実行することにより、被検体の呼吸信号S
resを得ることができる。プレスキャンAを実行した後、ステップST4(
図35参照)に進む。
【0093】
ステップST4では、ウインドウ設定手段97(
図33参照)が、呼吸信号S
resに基づいてウインドウWを設定する。
図40に、ウインドウWの一例を示す。ウインドウWは、本スキャンBにおいてイメージングシーケンスDAQ
1〜DAQ
z(後述する
図41参照)を実行するときの基準となる肝臓のエッジ13aの範囲を表している。以下に、ウインドウWを設定する方法の一例について簡単に説明する。
【0094】
ウインドウ設定手段98は、呼吸信号S
resから、被検体が息を吐き終わったときの肝臓のエッジ13aの位置Pexを特定する。被検体が息を吐いている間、エッジ13aの位置はS方向に移動するが、被検体が息を吸い始めると、エッジ13aの位置はI方向に移動し始める。したがって、エッジの位置の極大値を検出することにより、被検体が息を吐き終わったときのエッジ13aの位置Pexを特定することができる。位置Pexを特定した後、ウインドウ設定手段98は、この位置Pexに対して一定の範囲を、ウインドウWとして設定する。ウインドウWが本スキャンBを実行するときにどのように使用されるかについては後述する。ウインドウWを設定した後、ステップST5に進む。
【0095】
ステップST5では、本スキャンBが実行される。
図41は、本スキャンBの説明図である。
本スキャンBでは、先ず、ナビゲータシーケンスNS
d+1〜NS
eが実行される。ナビゲータシーケンスNS
d+1〜NS
eの各々が実行されるたびに、
図13に示すフローに従って肝臓のエッジ13aの位置が検出される。
図41では、ナビゲータシーケンスNS
d+1〜NS
eを実行することにより検出された肝臓のエッジ13aの位置が、符号「P
d+1」、「P
d+2」、・・・「P
e」で示されている。
【0096】
判断手段98(
図33参照)は、ナビゲータシーケンスNS
d+1〜NS
eを実行するたびに、検出された肝臓のエッジの位置がウインドウWに入っているか否かを判断する。そして、肝臓のエッジ13aの位置がウインドウWの外側からウインドウWの内側に入り込んだときに、イメージングシーケンスDAQ
1が実行される。
【0097】
図41を参照すると、ナビゲータシーケンスNS
d+1〜NS
e−1では、肝臓のエッジ13aの位置はウインドウWの外側であるが、ナビゲータシーケンスNS
eにおいて肝臓のエッジの位置はウインドウWの内側に入り込む。したがって、ナビゲータシーケンスNS
eを実行した直後に、イメージングシーケンスDAQ
1が実行される。
【0098】
イメージングシーケンスDAQ
1を実行した後、ナビゲータシーケンスNS
e+1〜NS
fを実行し、肝臓のエッジの位置を検出する。そして、肝臓のエッジの位置がウインドウWの外側からウインドウWの内側に入り込んだときに、次のイメージングシーケンスDAQ
2を実行する。
図41を参照すると、ナビゲータシーケンスNS
e+2〜NS
f−1では、肝臓のエッジ13aの位置はウインドウWの外側であるが、ナビゲータシーケンスNS
fにおいて肝臓のエッジ13aの位置はウインドウWの内側に入り込む。したがって、ナビゲータシーケンスNS
fを実行した直後に、イメージングシーケンスDAQ
2が実行される。
【0099】
以下同様にナビゲータシーケンスを実行し、肝臓のエッジ13aの位置がウインドウWに入ったときに、イメージングシーケンスを実行する。そして、最後のイメージングシーケンスDAQ
zを実行したら本スキャンBを終了する。本スキャンBを終了した後、イメージングシーケンスDAQ
1〜DAQ
zにより収集されたイメージングデータに基づいて画像を再構成し、
図35のフローを終了する。
【0100】
第3の形態では、第1の形態で説明した方法を用いて肝臓のエッジの位置を検出するので、肝臓のエッジの位置の検出精度を向上させることができる。したがって、体動アーチファクトが低減された画像を取得することができる。
【0101】
第3の形態では、第1の形態で説明した方法を用いて肝臓のエッジの位置を検出しているが、第2の形態で説明した方法を用いて肝臓のエッジの位置を検出してもよい。
【0102】
尚、第1〜第3の形態では、動く部位の位置を求める例として、肝臓のエッジの位置を求める例について説明されている。しかし、本発明は、肝臓のエッジの位置を求める例に限定されることはなく、肝臓のエッジとは別の部位の位置(例えば、心臓のエッジの位置)を求める場合にも適用することができる。