(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動く部位を含む第1の部位を励起するための第1のRFパルスを有するとともに、前記第1のRFパルスが印加されている間勾配パルスは印加されない複数の第1のシーケンスを実行するスキャン手段と、
前記複数の第1のシーケンスの各々を実行することにより発生する第1の磁気共鳴信号を受信するn個のチャネルを有するコイルと、
前記n個のチャネルの各々が受信した第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記チャネルごとに、前記第1の磁気共鳴信号の情報を含む第1のk空間データを生成するデータ生成手段と、
前記n個のチャネルの中から、前記動く部位の端部の近くに配置されるm(<n)個のチャネルを選択するチャネル選択手段と、
前記データ生成手段により生成された前記m個のチャネルの前記第1のk空間データに基づいて、被検体の体動を表す第1の体動信号を生成する体動信号生成手段と、
を有する磁気共鳴装置。
前記第2のシーケンスは、前記第2の磁気共鳴信号を収集するためのデータ収集期間の後に、横磁化を消失させるためのキラーパルスを有する、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
前記第1の体動信号の信号値に基づいて、前記イメージングシーケンスを実行することが可能な体動信号の信号値の範囲を表すウィンドウを設定するウィンドウ設定手段を有する、請求項14に記載の磁気共鳴装置。
前記第1のシーケンスは、前記第1の磁気共鳴信号を収集するためのデータ収集期間の後に、横磁化を消失させるためのキラーパルスを有する、請求項1〜20のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
動く部位を含む第1の部位を励起するための第1のRFパルスを有するとともに、前記第1のRFパルスが印加されている間勾配パルスは印加されない複数の第1のシーケンスを実行するスキャン手段と、
前記複数の第1のシーケンスの各々を実行することにより発生する第1の磁気共鳴信号を受信するn個のチャネルを有するコイルと、
前記n個のチャネルの各々が受信した第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記チャネルごとに、前記第1の磁気共鳴信号の情報を含む第1のk空間データを生成するデータ生成手段とを有する磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記n個のチャネルの中から、前記動く部位の端部の近くに配置されるm(<n)個のチャネルを選択するチャネル選択処理と、
前記データ生成手段により生成された前記m個のチャネルの前記第1のk空間データに基づいて、被検体の体動を表す第1の体動信号を生成する体動信号生成処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)1は、マグネット2、テーブル3、受信コイル(以下、単に「コイル」と呼ぶ)4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体13が収容される収容空間21を有している。またマグネット2は、超伝導コイル22、勾配コイル23、およびRFコイル24などのコイルを有している。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、RFコイル24はRFパルスを印加する。
【0013】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、収容空間21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体13は収容空間21に搬送される。
コイル4は、被検体13の胴部に取り付けられている。
【0014】
図2は、コイル4の説明図である。
コイル4はn個のチャネルを有している。以下では、n=8、即ち、コイル4が8個のチャネルを有する例について説明するが、nはn=8に限定されることはなく、本発明は、n≧2、即ち、コイル4が2個以上のチャネルを有する場合に適用することができる。
【0015】
コイル4は、コイル部4aとコイル部4bとを有している。コイル部4aは、被検体13の前側(腹部側)に配置されるコイルであり、4つのチャネルCH1、CH2、CH3、およびCH4を有している。4つのチャネルCH1〜CH4は2行2列に並んでいる。
【0016】
コイル部4bは、被検体13の後側(背中側)に配置されるコイルであり、4つのチャネルCH5、CH6、CH7、およびCH8を有している。4つのチャネルCH5〜CH8は2行2列に並んでいる。
第1の形態では、コイル部4aおよび4bは肝臓の近くに取り付けられる。
【0017】
図3は、コイル部4aのチャネルCH1〜CH4と肝臓との位置関係を概略的に示す図である。
図3(a)はzx面内におけるチャネルの位置を示しており、
図3(b)は
図3(a)のd−d断面におけるチャネルの位置を示している。第1の形態では、x方向は左右方向(Right-Left (RL)direction)に対応し、y方向は前後方向(Anterior-Posterior (AP)direction)に対応し、z方向は頭尾方向(Superior-Inferior (SI)direction)に対応している。
【0018】
チャネルCH1およびCH2はx方向(RL方向)に並んでおり、チャネルCH3およびCH4もx方向(RL方向)に並んでいる。チャネルCH3は、チャネルCH1と比較すると、x方向(RL方向)の位置は同じであるが、z方向(SI方向)の位置が異なっている。また、チャネルCH4は、チャネルCH2と比較すると、x方向(RL方向)の位置は同じであるが、z方向(SI方向)の位置が異なっている。チャネルCH1およびCH2は、肝臓の肺側の端部E1の近くに配置されているが、チャネルCH3およびCH4は、肝臓の肺側の端部E1から−z方向に離れた位置に配置される。例えばチャネルCH3は、肝臓の肺側とは反対側の端部E2の近くに配置される。
【0019】
図4は、コイル部4bのチャネルCH5〜CH8と肝臓との位置関係を概略的に示す図である。
図4(a)はzx面内におけるチャネルの位置を示しており、
図4(b)は
図4(a)のd−d断面におけるチャネルの位置を示している。
【0020】
チャネルCH5およびCH6はx方向に並んでおり、チャネルCH7およびCH8もx方向に並んでいる。チャネルCH7は、チャネルCH5と比較すると、x方向の位置は同じであるが、z方向の位置が異なっている。また、チャネルCH8は、チャネルCH6と比較すると、x方向の位置は同じであるが、z方向の位置が異なっている。チャネルCH5およびCH6は、肝臓の端部E1の近くに配置されているが、チャネルCH7およびCH8は、肝臓の端部E1から−z方向に離れた位置に配置される。
図1に戻って説明を続ける。
【0021】
MR装置1は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、およびコンピュータ8、操作部11、および表示部12などを有している。
【0022】
送信器5はRFコイル24に電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイル23に電流を供給する。受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。尚、マグネット2、送信器5、および勾配磁場電源6を合わせたものがスキャン手段に相当し、受信器7はデータ生成手段に相当する。
【0023】
コンピュータ8は、表示部12に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置1の各種の動作を実現するように、MR装置1の各部の動作を制御する。コンピュータ8は、プロセッサ9および記憶部10などを有している。
【0024】
記憶部10には、プロセッサ9により実行されるプログラムや、後述するデータベース(
図10参照)などが記憶されている。尚、記憶部10は、コンピュータで読取り可能な非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体としては、例えば、CD−ROMを用いることができる。プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行するための手段を実現する。
図5は、プロセッサ9が実現する手段の説明図である。プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、チャネル選択手段91および呼吸信号生成手段92などを構成する。
【0025】
チャネル選択手段91は、後述するデータベース(
図10参照)に基づいて、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3及び
図4参照)の近くに配置されるm個のチャネルを選択する。
【0026】
呼吸信号生成手段92は、後述するナビゲータスキャンNS(
図6参照)により得られたk空間データに基づいて、呼吸信号Sres(
図14参照)を生成する。尚、呼吸信号生成手段92は体動信号生成手段に相当する。
【0027】
プロセッサ9は、チャネル選択手段91および呼吸信号生成手段92を構成する一例であり、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、これらの手段として機能する。
【0028】
操作部11は、撮影技師により操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置1は、上記のように構成されている。
【0029】
図6は、第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、ナビゲータスキャンNSが実行される。
ナビゲータスキャンNSでは、複数のナビゲータシーケンスN
1〜N
aが実行される。以下、各ナビゲータシーケンスについて説明する。尚、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aは同じシーケンスチャートで表されるので、以下では、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aのうち、代表してナビゲータシーケンスN
1を取り上げて、ナビゲータシーケンスについて説明する。
【0030】
ナビゲータシーケンスN
1は、被検体の呼吸信号を取得するために実行されるシーケンスである。ナビゲータシーケンスN
1は、励起パルスEX1とキラーパルスKとを有している。励起パルスEX1はRFコイル24により印加され、キラーパルスKは勾配コイル23により印加される。第1の形態では、励起パルスEX1が印加されている間、勾配パルスは印加されていない。したがって、励起パルスEX1は、スライス選択を行わずに被検体を励起するための非選択RFパルスであるので、励起パルスEX1を印加することにより、広範囲の部位(例えば、肝臓および肺を含む胴部)を励起することができる。第1の形態では、励起時に勾配パルスが印加されないので、大きな騒音を立てずに励起を行うことができる。励起パルスEX1を印加した後、データ収集期間DAにおいて、k空間の中心のデータを表すMR信号Aが収集される。データ収集期間DAの後に、横磁化を消失させるためのキラーパルスKが印加される。キラーパルスKは、x方向、y方向、z方向のどの方向に印加してもよい。第1の形態では、y方向(AP方向)に印加された例が示されている。尚、ナビゲータシーケンスN
1の実行中における騒音を低減するため、キラーパルスKの立上り時間Tuおよび立下り時間Tdのスルーレート(slew rate)SRは小さいことが望ましい。スルーレートSRは、例えば、SR=20(T/m/s)に設定することができる。
【0031】
図6では、ナビゲータシーケンスN
1により得られるMR信号Aについて説明したが、他のナビゲータシーケンスN
2〜N
aも、ナビゲータシーケンスN
1と同じシーケンスチャートで表される。したがって、他のナビゲータシーケンスN
2〜N
aを実行した場合も、MR信号Aが得られる。
図7に、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aにより得られるMR信号Aを示す。尚、
図7では、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aにより得られるMR信号Aを区別するために、符号Aに添え字「1」、「2」、「3」、・・・「a−1」、「a」が付されている。
【0032】
ナビゲータシーケンスN
1〜N
aは、励起時に勾配パルスが印加されず、更に、キラーパルスKのスルーレートSRが小さい値に設定されている。したがって、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aは、ペンシルビーム型のナビゲータシーケンスと比較すると、シーケンス実行中における騒音を十分に低減することができる。
【0033】
しかし、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aは、非選択励起パルスEX1で被検体を励起するので、被検体の励起される部位が広範囲に渡る。したがって、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aは、ペンシルビーム型のナビゲータシーケンスとは異なり、肺と肝臓とをSI方向に円柱形状に貫くように局所的に励起することができない。このため、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aを実行することにより、MR信号A
1〜A
aを得ることができるが、MR信号A
1〜A
aをフーリエ変換しても、肝臓の端部E1(
図3および
図4参照)のz方向(SI方向)の位置情報を得ることができないという問題がある。
【0034】
そこで、本願発明者は、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aにより得られたMR信号を用いて呼吸信号を得る方法を考え出した。以下に、このような呼吸信号を得る方法について、
図8を参照しながら説明する。
【0035】
図8は、チャネルCH1〜CH8と肝臓との位置関係を概略的に示す図である。
図8では、被検体が息を吐いたときの肝臓を実線で示しており、被検体が息を吸ったときの肝臓の位置を破線で示してある。
図8(a)はzx面内におけるコイル部4aのチャネルCH1〜CH4の位置を示しており、
図8(b)はzx面内におけるコイル部4bのチャネルCH5〜CH8の位置を示している。
【0036】
先ず、チャネルCH1〜CH4(
図8(a))について考える。
被検体が息を吐いた場合、肝臓の肺側の端部E1はz方向に動くので、肝臓はチャネルCH1およびCH2に近づく。したがって、チャネルCH1およびCH2の受信信号の信号値は、肝臓の影響を受けて増加すると考えられる。一方、チャネルCH3およびCH4から見ると、肝臓は離れていく。したがって、チャネルCH3およびCH4の受信信号の信号値は減少すると考えられる。
【0037】
次に、被検体が息を吸った場合について考える。この場合、肝臓の端部E1は−z方向に動くので、肝臓はチャネルCH1およびCH2から離れる。したがって、チャネルCH1およびCH2の受信信号の信号値は減少すると考えらえる。一方、チャネルCH3およびCH4から見ると、肝臓は近づいてくるので、チャネルCH3の受信信号の信号値は増加すると考えられる。
【0038】
したがって、チャネルCH1〜CH4のうち、肝臓の肺側の端部E1の近くに位置するチャネルCH1およびCH2の受信信号は、被検体が息を吐くと増加し、被検体が息を吸うと減少する。このため、肝臓の肺側の端部E1の近くに位置するチャネルCH1およびCH2は、受信信号の増減するタイミングが一致することが分かる。
【0039】
次に、チャネルCH5〜CH8(
図8(b)参照)について考える。チャネルCH5〜CH8の場合、チャネルCH5〜CH8のうちチャネルCH5およびCH6が肝臓の端部E1の近くに位置する。したがって、チャネルCH5およびCH6の受信信号は、チャネルCH1およびCH2(
図8(a)参照)の受信信号と同様に、被検体が息を吐くと増加し、被検体が息を吸うと減少する。
【0040】
上記のように、8個のチャネルCH1〜CH8のうち、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6は、受信信号の増減のタイミングが一致すると考えられる。したがって、これらのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号を合成することにより、被検体の呼吸により信号値が増減する呼吸信号が得られることがわかる。
【0041】
そこで、第1の形態では、8チャネルの受信信号のうち、チャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8の受信信号は使用せずに、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号を使用し、呼吸信号を求める。以下に、第1の形態において、呼吸信号を求める方法について説明する。
【0042】
図9は、呼吸信号の生成手順を表すフローを示す図である。
ステップST0では、撮影技師が被検体にコイル部4aおよび4bを取り付ける。撮影技師は、被検体の肝臓が存在している大体の位置の見当をつけて、コイル部4aとコイル部4bとの間に肝臓が位置するように、コイル部4aおよび4bを被検体に取り付ける。コイル部4a(チャネルCH1、CH2、CH3、およびCH4)は被検体の腹部に取り付けられ、一方、コイル部4b(チャネルCH5、CH6、CH7、およびCH8)は被検体の背中に取り付けられる(
図2参照)。被検体13にコイル4を取り付けた後、被検体13はマグネット2の収容空間21に搬送される。被検体13をマグネット2の収容空間21に搬送した後、ステップST1に進む。
【0043】
ステップST1では、チャネル選択手段91(
図5参照)が、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるm個のチャネルを選択する。以下に、m個のチャネルを選択する方法について説明する。
【0044】
第1の形態では、被検体をスキャンする前に、記憶部10(
図5参照)に、コイル4のチャネルの情報を含むデータベースが予め記憶されている。
図10に、データベースに登録されているデータを概略的に示す。
【0045】
データベースには、コイルを表す項目aと、コイルのチャネルを表す項目bと、チャネルが肝臓の肺側の端部E1の近くに配置されるか否かを表す項目cが登録されている。項目cの記号「○」は、チャネルが肝臓の端部E1の近くに配置されることを示している。ここでは、m=4、即ち、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されている。
【0046】
チャネル選択手段91は、データベース(
図10参照)を参照し、データベースの項目cの情報に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されているm個のチャネルを選択する。ここでは、
図10に示すように、肝臓の端部E1の近くに配置されるm個のチャネルとして、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が登録されている。したがって、チャネル選択手段91は、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択する。これらのチャネルを選択した後、ステップST2に進む。
【0047】
ステップST2では、ナビゲータスキャンNS(
図7参照)が実行される。以下に、ナビゲータスキャンNSについて、
図11〜
図14を参照しながら説明する。
【0048】
先ず、
図11に示すように、ナビゲータシーケンスN
1が実行される。ナビゲータシーケンスN
1は非選択RFパルスEX1(
図6参照)を用いて励起を行うので、ナビゲータシーケンスN
1が実行されることにより、広範囲の部位(例えば、肝臓および肺を含む胴部)を励起することができる。励起された部位から発生したMR信号A
1はコイル4(
図1参照)で受信される。
【0049】
コイル4はチャネルCH1〜CH8を有しているので、MR信号A
1は、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。チャネルCH1〜CH8で受信された信号は、受信器7に送信される。受信器7は、各チャネルから受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。したがって、ナビゲータシーケンスN
1を実行することにより、チャネルごとに、MR信号A
1の情報を含むk空間データを得ることができる。ここでは、k空間データを、符号「A
11」、「A
12」、「A
13」、「A
14」、「A
15」、「A
16」、「A
17」、「A
18」で概略的に示してある。k空間データA
11〜A
18は、コンピュータ8(
図1参照)に供給される。
コンピュータ8では、k空間データA
11〜A
18に基づいて、呼吸信号の信号値を求める(
図12参照)。
【0050】
図12は、呼吸信号の信号値を求めるときの説明図である。
呼吸信号生成手段92(
図5参照)は、ステップST1で選択されていないチャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8のk空間データA
13、A
14、A
17、およびA
18は破棄し、ステップST1で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データA
11、A
12、A
15、およびA
16のみを合成する。ここでは、呼吸信号生成手段92は、選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データA
11、A
12、A
15、およびA
16を加算することにより、これらのk空間データを合成する。これにより、合成データSY
1が得られる。
【0051】
合成データSY
1を取得した後、呼吸信号生成手段92は、合成データSY
1を時間積分し、積分値S
1を算出する。呼吸信号生成手段92は、積分値S
1を、ナビゲータシーケンスN
1の実行時における被検体の呼吸信号の信号値S
1として求める。
【0052】
ナビゲータシーケンスN
1を実行した後、次のナビゲータシーケンスN
2が実行される(
図13参照)。
【0053】
図13は、ナビゲータシーケンスN
2の説明図である。
ナビゲータシーケンスN
2を実行することにより、被検体から、MR信号A
2が収集される。MR信号A
2は、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。チャネルCH1〜CH8で受信された信号は、受信器7に送信される。受信器7は、各チャネルから受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。したがって、ナビゲータシーケンスN
2を実行することにより、チャネルごとにk空間データA
21〜A
28を得ることができる。k空間データA
21〜A
28は、コンピュータ8(
図1参照)に供給される。
【0054】
呼吸信号生成手段92は、ステップST1で選択されていないチャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8のk空間データA
23、A
24、A
27、およびA
28を破棄し、ステップST1で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データA
21、A
22、A
25、およびA
26のみを合成(加算)することにより、合成データSY
2を生成する。そして、呼吸信号生成手段92は、合成データSY
2を時間積分し、積分値S
2を求める。積分値S
2が、ナビゲータシーケンスN
2における被検体の呼吸信号の信号値S
2として使用される。
【0055】
以下同様に、ナビゲータシーケンスN
3〜N
aが実行される。呼吸信号生成手段92は、チャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8のk空間データを破棄し、選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データのみを合成(加算)する。そして、合成データを時間積分し、積分値を算出する。したがって、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aを実行することにより、呼吸信号を得ることができる。
図14に、ナビゲータシーケンスN
1〜N
aを実行することにより得られた呼吸信号Sresを概略的に示す。呼吸信号Sresが得られたら、
図9のフローを終了する。
【0056】
第1の形態では、肝臓の端部E1の近くに位置するチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データのみを合成(加算)している。チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号は同じタイミングで増減するので、これらのチャネルのk空間データのみを合成することにより、被検体の呼吸に応じて大きく変化する呼吸信号Sresを取得することができる。
【0057】
第1の形態では、励起時に勾配パルスが印加されないナビゲータシーケンスN
1〜N
aを実行している。したがって、ナビゲータシーケンス実行中の騒音を十分に軽減することができる。また、第1の形態では、ナビゲータシーケンスにより得られたMR信号をコイルで受信するが、肝臓の端部E1から離れた位置に配置されたチャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8のk空間データは破棄し、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データのみを合成することにより、呼吸信号の信号値を求めている。先に説明したように、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号の増減するタイミングは同じであるので、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データを合成することにより、被検体の呼吸に応じて信号値が大きく変化する呼吸信号Sresを取得することができる。したがって、励起時に勾配パルスが印加されるペンシルビーム型のナビゲータシーケンスを用いなくても被検体の呼吸信号を得ることができるので、シーケンス実行中の騒音を十分に軽減しながら、被検体の呼吸に応じて信号値が大きく変化する呼吸信号Sresを取得することができる。
【0058】
第1の形態では、データベースには、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が登録されている(
図10参照)。しかし、高品質な呼吸信号を生成できるのであれば、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の全てを登録する必要はなく、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの1チャネル、2チャネル、又は3チャネルのみを登録してもよい。
【0059】
また、第1の形態では、データベースには、肝臓の端部E1に位置するチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が登録されている。しかし、被検体の呼吸により増減する呼吸信号を得ることができるのであれば、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6とは別のチャネルを登録してもよい。例えば、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の代わりに、肝臓の端部E2(
図3参照)の近くに位置するチャネルCH3およびCH4を登録しておいてもよい。
図3を参照しながら説明したように、チャネルCH3およびCH4は、被検体が息と吐くと受信信号が減少し、被検体が息を吸うと受信信号は増加すると考えられる。したがって、チャネルCH3およびCH4は、受信信号の増減するタイミングが一致すると考えられるので、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の代わりに、チャネルCH3およびCH4を登録しても、被検体の呼吸により増減する呼吸信号を得ることが可能となる。
【0060】
尚、第1の形態では、コイル4を被検体に取り付けた場合、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が肝臓の端部E1の近くに位置決めされることが前提となっている。したがって、データベースには、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が肝臓の端部E1の近くに位置するチャネルとして登録されている。しかし、コイルの種類に応じて、チャネルの寸法、チャネルの並ぶ方向、チャネルと肝臓との位置関係、コイルに含まれるチャネルの数などは異なる。したがって、コイル4とは別のコイルを用いて呼吸信号を生成する場合は、データベースに、当該別のコイルが有する複数のチャネルのうち、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを登録しておけばよい。
【0061】
第1の形態では、ナビゲータシーケンスは、キラーパルスKを有している(
図6参照)。したがって、次のナビゲータシーケンスを開始する前に、呼吸信号の信号値の誤差の原因となる横磁化を消失することができるので、高品質な呼吸信号を得ることができる。
【0062】
尚、第1の形態では、ナビゲータシーケンスの実行中の騒音を低減するために、キラーパルスKの立上り時間および立下り時間のスルーレートSRを小さくしている。しかし、スルーレートSRの小さいキラーパルスの代わりに、sinusoidal ramp(参考文献:F. Hennel, F. Girard, and T. Loenneker, ““Silent” MRI With Soft Gradient Pulses”, Magnetic Resonance in Medicine 42:6-10 (1999) )を有するキラーパルスを用いてもよい。
【0063】
(2)第2の形態
第1の形態では呼吸信号を生成する例について説明したが、第2の形態では、呼吸信号と画像とを生成する例について説明する。尚、MR装置のハードウエア構成は、第1の形態と同じである。
【0064】
図15は、第2の形態においてプロセッサが実行する処理の説明図である。
プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、スライス設定手段90〜判定手段94などを構成する。
【0065】
スライス設定手段90は、操作部11から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
【0066】
チャネル選択手段91は、第1の形態と同様に、データベース(
図10参照)に基づいて、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3及び
図4参照)の近くに配置されるm個のチャネルを選択する。
【0067】
呼吸信号生成手段92は、第1の形態と同様に、ナビゲータスキャンNSにより取得されたデータに基づいて呼吸信号Sres(
図14参照)を生成する。また、呼吸信号生成手段92は、後述する呼吸信号Sres1(
図21参照)も生成する。
【0068】
ウィンドウ設定手段93は、呼吸信号Sresに基づいて後述するウィンドウW(
図20参照)を設定する。
【0069】
判定手段94は、後述する本スキャンMSにおいてナビゲータシーケンスを実行するたびに、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入っているか否かを判定する。
【0070】
プロセッサ9は、スライス設定手段90〜判定手段94を構成する一例であり、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、これらの手段として機能する。
【0071】
図16は、第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第2の形態では、ローカライザスキャンLS、ナビゲータスキャンNS、および本スキャンMSが実行される。以下に、これらのスキャンについて説明する。
【0072】
ローカライザスキャンLSは、スライスを設定するために使用される画像を取得するためのスキャンである。
ナビゲータスキャンNSは、第1の形態で実行されたナビゲータスキャンNS(
図6参照)と同じである。
本スキャンMSは、肝臓の画像を取得するためのスキャンである。
【0073】
以下に、ローカライザスキャンLS、ナビゲータスキャンNS、および本スキャンMSを実行するときのフローについて説明する。
【0074】
図17は、
図16に示すスキャンを実行するためのフローを示す図である。
ステップST10では、撮影技師が被検体にコイル部4aおよび4bを取り付ける。撮影技師は、被検体の肝臓が存在している大体の位置の見当をつけて、コイル部4aとコイル部4bとの間に肝臓が位置するように、コイル部4aおよび4bを被検体に取り付ける。コイル部4a(チャネルCH1、CH2、CH3、およびCH4)は被検体の腹部に取り付けられ、一方、コイル部4b(チャネルCH5、CH6、CH7、およびCH8)は被検体の背中に取り付けられる(
図2参照)。被検体13にコイル4を取り付けた後、被検体13をマグネット2の収容空間21に搬送し、ステップST11に進む。
【0075】
ステップST11では、ローカライザスキャンLS(
図16参照)が実行される。ローカライザスキャンLSは、スライスを設定するために使用される画像LDを取得するためのスキャンである。ローカライザスキャンLSでは、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。
図18に、ローカライザスキャンLSにより取得された画像LDの一例として、コロナル画像が示されている。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST12に進む。
【0076】
ステップST12では、撮影部位にスライスL1〜Lnが設定される。
図19に、設定されたスライスL1〜Lnを概略的に示す。撮影技師は、操作部11を操作し、画像LDを参考にして、スライスL1〜Lnを設定するために必要な情報を入力する。スライス設定手段90(
図15参照)は、入力された情報に基づいて、スライスL1〜Lnを設定する。第2の形態では、肝臓を撮影するので、肝臓を含む撮影部位にスライスL1〜Lnが設定される。スライスL1〜Lnを設定した後、ステップST13に進む。
【0077】
ステップST13では、チャネル選択手段91(
図15参照)がチャネルを選択する。チャネルの選択方法は、第1の形態のステップST1におけるチャネル選択方法と同様である。したがって、チャネル選択手段91は、データベース(
図10参照)に基づいて、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択する。チャネルを選択した後、ステップST14に進む。
【0078】
ステップST14では、ナビゲータスキャンNSを実行する。ナビゲータスキャンNSは、第1の形態のナビゲータスキャンNS(
図14参照)と同じである。呼吸信号生成手段92は、ステップST13で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6により得られたk空間データのみを合成し、呼吸信号S
res(
図14参照)を求める。ナビゲータスキャンNSを実行した後、ステップST15に進む。
【0079】
ステップST15では、ウィンドウ設定手段93(
図15参照)が、呼吸信号S
resに基づいてウィンドウWを設定する。
図20に、ウィンドウWの一例を示す。ウィンドウWは、本スキャンMSにおいて後述するイメージングシーケンスDAQ1〜DAQz(
図21参照)が実行可能な呼吸信号の信号値の範囲を表している。以下に、ウィンドウWを設定する方法の一例について簡単に説明する。
【0080】
ウィンドウ設定手段93は、呼吸信号S
resに基づいて、呼吸信号の極大値の平均値P1を求める。次に、呼吸信号の極小値の平均値P2を求め、極大値の平均値P1と極小値の平均値P2との差ΔDを求める。そして、極大値の平均値P1を中心として、差ΔDのx%(例えば、x=20)の範囲Wを設定する。このようにして設定された範囲Wを、イメージングシーケンスDAQ1〜DAQz(
図21参照)が実行可能な呼吸信号の信号値の範囲を表すウィンドウWと定める。ウィンドウWが本スキャンMSを実行するときにどのように使用されるかについては後述する。ウィンドウWを設定した後、ステップST16に進む。
【0081】
ステップST16では、本スキャンMSが実行される。
図21は、本スキャンMSの説明図である。
図21には、本スキャンMSで実行されるナビゲータシーケンスおよびイメージングシーケンスと、ナビゲータシーケンスを実行することにより得られた呼吸信号S
res1とが概略的示されている。本スキャンMSで実行されるナビゲータシーケンスは、第1の形態のナビゲータシーケンス(
図6参照)と同じシーケンスチャートで表されるものである。
【0082】
本スキャンMSでは、先ず、ナビゲータシーケンスN
b〜N
cが実行される。ナビゲータシーケンスN
b〜N
cの各々が実行されるたびに、呼吸信号生成手段92は、ステップST13で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6により得られたk空間データを合成し、呼吸信号の信号値を求める。
図21では、ナビゲータシーケンスN
b〜N
cを実行することにより求められた呼吸信号の信号値が、符号「P
b」、「P
b+1」、・・・「P
c」で示されている。
【0083】
判定手段94(
図15参照)は、ナビゲータシーケンスN
b〜N
cを実行するたびに、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入っているか否かを判定する。そして、信号値がウィンドウWの外側からウィンドウWの内側に入り込んだときに、イメージングシーケンスDAQ
1が実行される。
【0084】
図21を参照すると、ナビゲータシーケンスN
b〜N
c−1の信号値P
b〜P
c−1はウィンドウWの外側である。しかし、ナビゲータシーケンスN
cの信号値P
cはウィンドウWの内側に入り込んでいる。したがって、ナビゲータシーケンスN
cの直後にイメージングシーケンスDAQ
1が実行される。
【0085】
イメージングシーケンスDAQ
1を実行した後、ナビゲータシーケンスN
c+1〜N
dが実行される。ナビゲータシーケンスN
c+1〜N
dの各々が実行されるたびに、呼吸信号生成手段92は、ステップST13で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のk空間データを合成し、呼吸信号の信号値を求める。そして、呼吸信号の信号値がウィンドウWの外側からウィンドウWの内側に入り込んだときに、次のイメージングシーケンスDAQ
2を実行する。
図21を参照すると、ナビゲータシーケンスN
c+2〜N
d−1の信号値P
c+2〜P
d−1はウィンドウWの外側である。しかし、ナビゲータシーケンスN
dの信号値P
dはウィンドウWの内側に入り込んでいる。したがって、ナビゲータシーケンスN
dの直後にイメージングシーケンスDAQ
2が実行される。
【0086】
以下同様に、各スライスの画像再構成に必要なイメージングデータが取得されるまで、ナビゲータシーケンスを繰り返し実行し、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入ったときに、イメージングシーケンスを実行する。第2の形態では、イメージングシーケンスDAQ
1〜DAQ
zが実行されることにより、各スライスの画像再構成に必要なイメージングデータが取得されたとする。したがって、イメージングシーケンスDAQ
zが実行されたら、本スキャンMSが終了する。
【0087】
第2の形態では、ナビゲータスキャンNSにより呼吸信号Sresを求めた後、イメージングシーケンスが実行可能な呼吸信号の信号値の範囲を表すウィンドウWを設定する(
図20参照)。そして、本スキャンMSにおいて、ナビゲータシーケンスを実行し、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入ったときにイメージングシーケンスを実行する。したがって、本スキャンMSにおいて、イメージングシーケンスDAQ
1〜DAQ
zが実行されるときの呼吸位相のばらつきを十分に小さくすることができるので、体動アーチファクトが低減された画像を得ることができる。
【0088】
第2の形態では、呼吸信号の極大値の平均値P1に基づいて、ウィンドウWを設定している。しかし、体動アーチファクトを低減できるのであれば、必ずしも、呼吸信号の極大値の平均値に基づいて、ウィンドウWを設定する必要はない。例えば、呼吸信号の極小値の平均値に基づいて、ウィンドウWを設定してもよい。
【0089】
第2の形態では、撮影技師が操作部11から入力した情報に基づいて、スライス設定手段90がスライスを設定している。しかし、画像LDに基づいて、スライス設定手段90が自動でスライスを設定してもよい。
【0090】
(3)第3の形態
第2の形態では、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6をデータベースに登録しておき、データベースの情報を参照することにより、チャネルCH1〜CH8の中から、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択している。第3の形態では、データベースにチャネルを登録せずに、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択する例について説明する。尚、MR装置のハードウエア構成は、第1の形態と同じである。
【0091】
図22は、第3の形態においてプロセッサが実行する処理の説明図である。
プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、スライス設定手段90〜判定手段94などを構成する。
【0092】
スライス設定手段90は、操作部11から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
【0093】
チャネル選択手段91は、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3および
図4参照)の近くに配置されるチャネルを選択する。チャネル選択手段91は、プロファイル作成手段911、算出手段912、および特定手段913を有している。プロファイル作成手段911は、後述するチャネル選択用スキャンES(
図23参照)により得られたk空間データに基づいてプロファイル(
図27参照)を作成する。プロファイルについては後述する。算出手段912は、プロファイルの特性を表す特性値を算出する。特定手段913は、特性値に基づいて、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3および
図4参照)の近くに配置されるチャネルを特定する。
【0094】
呼吸信号生成手段92は、ナビゲータスキャンNSにより取得されたデータに基づいて呼吸信号Sres(
図14参照)を生成する。また、呼吸信号生成手段92は呼吸信号Sres1(
図21参照)も生成する。
【0095】
ウィンドウ設定手段93は、呼吸信号Sresに基づいてウィンドウW(
図20参照)を設定する。
【0096】
判定手段94は、後述する本スキャンMSにおいてナビゲータシーケンスを実行するたびに、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入っているか否かを判定する。
【0097】
プロセッサ9は、スライス設定手段90〜判定手段94を構成する一例であり、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、これらの手段として機能する。
【0098】
図23は、第3の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第3形態では、ローカライザスキャンLS、チャネル選択用スキャンES、ナビゲータスキャンNS、および本スキャンMSが実行される。第3の形態は、第2の形態と比較すると、ローカライザスキャンLS、ナビゲータスキャンNS、および本スキャンMSが実行される点は同じであるが、ローカライザスキャンLSとナビゲータスキャンNSとの間に、チャネル選択用スキャンESが実行される点が異なっている。したがって、第3の形態では、主に、チャネル選択用スキャンESについて説明する。
【0099】
図23には、チャネル選択用スキャンESで実行されるシーケンスHが示されている。チャネル選択用スキャンESでは、シーケンスHが1回だけ実行される。シーケンスHは、励起パルスEX0と、補正用勾配パルスCPと、読出し勾配パルスRPと、キラーパルスK0とを有している。励起パルスEX0はRFコイル24により印加され、補正用勾配パルスCP、読出し勾配パルスRP、およびキラーパルスK0は、勾配コイル23により印加される。チャネル選択用スキャンESでは、励起パルスEX0が印加されている間、勾配パルスは印加されていない。したがって、励起パルスEX0は、スライス選択を行わずに被検体を励起するための非選択RFパルスであるので、励起パルスEX0を印加することにより、広範囲の部位(例えば、肝臓および肺を含む胴部)を励起することができる。チャネル選択用スキャンESでは、励起時に勾配パルスが印加されないので、大きな騒音を立てずに励起を行うことができる。励起パルスEX0を印加した直後に、補正用勾配パルスCPおよび読出し勾配パルスRPが印加される。読出し勾配パルスRPの大きさが一定に保持されている期間が、MR信号Bを収集するためのデータ収集期間DBとして使用される。勾配パルスCPおよびRPはz方向(SI方向)に印加される。データ収集の後に、横磁化を消失させるためのキラーパルスK0が印加される。第3の形態では、キラーパルスK0は、y方向に印加されているが、x方向又はz方向に印加してもよい。尚、チャネル選択用スキャンESの実行中における騒音を低減するため、補正用勾配パルスCP、読出し勾配パルスRP、およびキラーパルスK0の各々の立上り時間および立下り時間のスルーレートSRは長いことが望ましい。スルーレートSRは、例えば、SR=20(T/m/s)に設定することができる。尚、スルーレートSRを小さくする代わりに、sinusoidal rampの手法を用いてもよい。
【0100】
以下、第3の形態において、
図23のスキャンを実行するときのMR装置の動作フローについて説明する。
【0101】
図24は、
図23に示すスキャンを実行するためのフローを示す図である。
ステップST10、ST11、およびST12は、第2の形態と同様であるので、説明は省略する。ステップST12において、スライスを設定した後、ステップST13に進む。
【0102】
ステップST13では、チャネル選択用スキャンESが実行される。チャネル選択用スキャンESは、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択するために実行されるスキャンである。以下に、チャネル選択用スキャンESについて説明する(
図25参照)。
【0103】
図25はチャネル選択用スキャンESの説明図である。
チャネル選択用スキャンESでは、シーケンスH(
図23参照)が1回実行される。シーケンスHを実行することにより、MR信号Bが収集される。MR信号Bは、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。
【0104】
チャネルCH1〜CH8で受信された信号は、受信器7に送信される。受信器7は、各チャネルから受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。したがって、シーケンスHを実行することにより、チャネルごとに、MR信号Bの信号強度の情報を含むk空間データB
1〜B
8を得ることができる。チャネル選択用スキャンESを実行した後、ステップST130に進む。
【0105】
ステップST130では、チャネル選択手段91(
図22参照)が、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを選択する。以下に、ステップST130について説明する。尚、ステップST130はステップST131およびST132を有するので、ステップ131およびST132について順に説明する。
【0106】
ステップST131では、プロファイル作成手段911(
図22参照)がk空間データB
1〜B
8の各々をz方向に逆フーリエ変換(IFT:Inverse Fourier Transformation)する。これにより、
図26に示すように、チャネルごとに、プロファイル(F1〜F8)を作成することができる。
【0107】
図27は、プロファイルF1〜F8の説明図である。
プロファイルF1〜F8は、肝臓を含む部位内のz方向における各位置と信号値との関係を表すプロファイルである。
図27の左側には、プロファイルF1〜F4が示されており、
図27の右側には、プロファイルF5〜F8が示されている。
【0108】
プロファイルF1〜F8のz方向の中心位置zcは、スライスL1のz方向の位置z1と、スライスLnのz方向の位置znとの中間位置に設定されている。各プロファイルのz方向の両端の位置は、符号「za」および「zb」で示してある。zaとzcとの間の距離Δd1と、zcとzbとの間の距離Δd2は、Δd1=Δd2である。Δd1およびΔd2は、例えば、20cmに設定することができる。
プロファイルF1〜F8を作成した後、ステップST132に進む。
【0109】
ステップST132では、プロファイルF1〜F8の各々の特性を表す特性値を求め、特性値に基づいて、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを特定する。以下では、先ず、プロファイルCH1〜CH8の各々の特性値を求める方法について説明し、次に、特性値に基づいてチャネルを特定する方法について説明する。
【0110】
図28〜
図30は、プロファイルCH1〜CH8の各々の特性値を求める方法の説明図である。
算出手段912(
図22参照)は、先ず、プロファイルF1〜F8の各々を、z方向の中心位置zcを基準にして、za〜zcの範囲の領域raと、zc〜zbの範囲の領域rbに分ける。
図28に、領域raおよびrbを示す。
【0111】
各プロファイルを領域raおよびrbに分けた後、算出手段912は、各プロファイルに対して、領域raにおける積分値(面積)Saと、領域rbにおける積分値(面積)Sbとを算出する。
図29に、領域raの積分値Saと、領域rbの積分値Sbとを示す。
【0112】
積分値SaおよびSbを算出した後、算出手段912は、プロファイルごとに、積分値SbとSaの比を算出する。
図30に、プロファイルごとに算出した積分値の比を示す。
図30では、プロファイルF1〜F8の比は、符号「J1」〜「J8」で示されている。第3の形態では、積分値の比が、プロファイルの特性値として求められる。
【0113】
比J1〜J8を比較すると、比J1〜J8は、チャネルの配置位置に応じて、大きい値を持つ比と、小さい値を持つ比に分けることができる。以下に、この理由について説明する。
【0114】
先ず、比J1〜J8のうちの4つの比J1〜J4(
図30の左側参照)について考える。
チャネルCH1およびCH2は、中心位置zcに対してz方向に配置されているが、チャネルCH3およびCH4は、中心位置zcに対して−z方向に配置されている。したがって、領域rbでは、チャネルCH1およびCH2は、チャネルCH3およびCH4よりも高い感度を有する。このため、チャネルCH1およびCH2のプロファイルF1およびF2の積分値Sbは、チャネルCH3およびCH4のプロファイルF3およびF4の積分値Sbよりも大きい値となる。一方、領域raでは、チャネルCH1およびCH2は、チャネルCH3およびCH4よりも低い感度を有する。このため、チャネルCH1およびCH2のプロファイルF1およびF2の積分値Saは、チャネルCH3およびCH4のプロファイルF3およびF4の積分値Saよりも小さい値となる。
【0115】
したがって、チャネルCH1およびCH2の比J1およびJ2は、チャネルCH3およびCH4の比Jよりも大きくなることがわかる。
【0116】
上記の説明では、チャネルCH1〜CH4の比J1〜J4について説明したが、チャネルCH5〜CH8の比J5〜J8も同様に説明することができる。チャネルCH5およびCH6の比J5およびJ6は、チャネルCH7およびCH8の比J7およびJ8よりも大きくなる。
【0117】
したがって、比J1〜J8の中から、値の大きい比を特定することにより、肝臓の端部E1の近くに配置されているチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択することができる。
【0118】
そこで、特定手段913(
図22参照)は、比J1〜J8を値の大きい順に並び替え、値の大きい順に4つの比を特定する。ここでは、J1、J2、J5、およびJ6が、値の大きい4つの比として特定される。したがって、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されているチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択することができる。
チャネルを選択した後、ステップST14に進む。
【0119】
ステップST14では、ナビゲータスキャンNSを実行する。ナビゲータスキャンNSは、第1の形態で実行されるナビゲータスキャンNS(
図6参照)と同じである。呼吸信号生成手段92は、ステップST130で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6により得られたk空間データのみを合成し、呼吸信号S
res(
図14参照)を求める。ナビゲータスキャンNSを実行した後、ステップST15に進む。
【0120】
ステップST15では、ウィンドウ設定手段93(
図22参照)が、呼吸信号S
resに基づいてウィンドウW(
図20参照)を設定する。ウィンドウWの設定方法は、第2の形態の方法と同じである。ウィンドウWを設定した後、ステップST16に進む。
【0121】
ステップST16では、本スキャンMSが実行される。第3の形態の本スキャンMSは、第2の形態の本スキャンMS(
図21参照)と同じである。したがって、第3の形態の本スキャンMSについては、
図21を参照しながら説明する。
【0122】
本スキャンMSでは、先ず、ナビゲータシーケンスN
b〜N
cが実行される。ナビゲータシーケンスN
b〜N
cの各々が実行されるたびに、呼吸信号生成手段92は、ステップST130で選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6により得られたk空間データを合成し、呼吸信号の信号値を求める。そして、信号値がウィンドウWの外側からウィンドウWの内側に入り込んだときに、イメージングシーケンスDAQ
1が実行される。
【0123】
以下同様に、各スライスの画像再構成に必要なイメージングデータが取得されるまで、ナビゲータシーケンスを繰り返し実行し、呼吸信号の信号値がウィンドウWに入ったときに、イメージングシーケンスを実行する。第3の形態では、イメージングシーケンスDAQ
1〜DAQ
zが実行されることにより、各スライスの画像再構成に必要なイメージングデータが取得されたとする。したがって、イメージングシーケンスDAQ
zが実行されたら、本スキャンMSが終了する。
【0124】
第3の形態では、チャネル選択用スキャンESを実行し、チャネル選択用スキャンESにより収集されたMR信号に基づいて、チャネルCH1〜CH8のプロファイルF1〜F8を作成する。そして、プロファイルF1〜F8の比J1〜J8を算出する。比J1〜J8の値は、チャネルの配置位置に応じて、大きい値と小さい値に分けることができるので、比J1〜J8に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを選択することができる。
【0125】
第3の形態では、チャネル選択用スキャンESを実行し、チャネルを選択している。したがって、コイル部4aおよび4bが肝臓の端部E1に対してS(Superior)側又はI(Inferior)側に大きくずれた位置に配置されても、チャネル選択用スキャンESを実行することにより、チャネルCH1〜CH8の中から、比が大きい値になるチャネルが選択される。したがって、コイル部4aおよび4bが肝臓の端部E1に対してS側又はI側にずれた位置に配置されても、被検体の呼吸により信号値が増減する呼吸信号を生成することができる。
【0126】
第3の形態では、コイル4とは別のコイルを用いて被検体を撮影する場合であっても、チャネル選択用スキャンESを実行することにより、当該別のコイルが有するチャネルの中から、肝臓の端部E1の近くに配置されたチャネルを選択することができる。したがって、データベースに、撮影に使用するコイルごとに、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを登録しておく必要がないので、データベースのメンテナンスに掛かる負担を軽減することもできる。
【0127】
第3の形態では、プロファイルの特性値として、プロファイルの積分値の比(J1〜J8)を算出している。しかし、肝臓の端部E1の近くに位置するチャネルを特定することができるのであれば、積分値の比の代わりに別の特性値を求めてもよい。例えば、プロファイルごとに、領域raの信号値の最大値と、領域rbの信号値の最大値とを算出し、最大値の比を、プロファイルの特性値としてもよい。
【0128】
尚、第3の形態では、ステップST132で求めた比J1〜J8(
図30参照)に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択している。しかし、高品質な呼吸信号を生成できるのであれば、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の全てを選択せずに、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの1チャネル、2チャネル、又は3チャネルのみを選択してもよい。
【0129】
また、第3の形態では、チャネル選択手段91は、チャネルCH1〜CH8の中から、プロファイルの比が大きい4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択している。しかし、被検体の呼吸により増減する呼吸信号を得ることができるのであれば、プロファイルの比が小さいチャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8を選択してもよい。
【0130】
第1〜第3の形態では、選択されたチャネルのk空間データを加算することにより、合成データを得ている。しかし、k空間データの合成は加算に限定されることはなく、例えば、k空間データを重付け加算することにより合成データを得てもよいし、k空間データを乗算することにより合成データを得てもよい。更に、第1〜第3の形態では、合成データの積分値を呼吸信号の信号値として採用している。しかし、合成データの積分値とは別の値(例えば、合成データの最大値)を呼吸信号の信号値として用いてもよい。
【0131】
第2および第3の形態では、本スキャンMSは2Dスキャンであるが、3Dスキャンでもよい。
【0132】
第1〜第3の形態では、被検体の体動信号の例として、呼吸信号が示されている。しかし、本発明は呼吸信号の取得に限定されることはない。例えば、チャネルCH1〜CH8の中から、心臓の端部の近くに配置されるチャネルを選択することにより、心臓の拍動の情報を含む心拍信号を取得することも可能である。