特許第6554735号(P6554735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6554735-ターボ等化器および無線受信装置 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554735
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ターボ等化器および無線受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/005 20060101AFI20190729BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20190729BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20190729BHJP
   H04B 3/06 20060101ALI20190729BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20190729BHJP
   H03M 13/29 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H04B7/005
   H04L27/01
   H04L1/00 B
   H04B3/06 C
   H04B1/10 L
   H03M13/29
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-59459(P2015-59459)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-181738(P2016-181738A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年1月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発−300GHz帯シリコン半導体CMOSトランシーバ技術−に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛憲
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−188640(JP,A)
【文献】 特開2011−188206(JP,A)
【文献】 特開2010−178273(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0204991(US,A1)
【文献】 Dalin Zhu and Ming Lei,Enhanced Log-Likelihood Ratio Calculation for LDPC Coded SC-FDE Systems in 60-GHz Millimeter-Wave WLAN/WPAN,2011 IEEE Vehicular Technology Conference,米国,IEEE,2011年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
H03M 13/29
H04B 1/10
H04B 3/06
H04L 1/00
H04L 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル推定値に基づいて第1の雑音分散推定値を算出する第1の雑音分散推定部と、
MMSEフィルタにより等化された信号を用いて第2の雑音分散推定値を算出する第2の雑音分散推定部と、
前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第1の判断基準に基づいて選択し、第1の雑音分散選択値として出力する第1の雑音分散選択部と、
前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第2の判断基準に基づいて選択し、第2の雑音分散選択値として出力する第2の雑音分散選択部と、
前記第1の雑音分散選択値を用いてMMSEフィルタのフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、
前記第2の雑音分散選択値を用いてLDPC復号に用いる対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、
を具備するターボ等化器。
【請求項2】
前記第1の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理における初回演算時と2回目以降の演算時とでは、前記第1の判断基準が異なり、
前記第2の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理における初回演算時と2回目以降の演算時とでは、前記第2の判断基準が異なる、
請求項1に記載のターボ等化器。
【請求項3】
前記第1の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理における初回演算時には、前記第1の雑音分散推定値を選択し、前記第1の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項4】
前記第1の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理における2回目以降の演算時には、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値の大小関係に基づいて、いずれか1つを選択し、前記第1の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項5】
前記第1の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理における2回目以降の演算時には、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値の平均値を前記第1の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項6】
前記第2の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理において、前記第2の雑音分散推定値の入力以前であり、初回の対数尤度比の演算が開始された後には、前記第1の雑音分散推定値を選択し、前記第2の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項7】
前記第2の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理において、前記第2の雑音分散推定値の入力以前であり、初回の対数尤度比の演算が開始される前、又は、2回目以降の対数尤度比の演算時には、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値の大小関係に基づいて、いずれか1つを選択し、前記第2の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項8】
前記第2の雑音分散選択部は、ターボ等化の反復処理において、前記第2の雑音分散推定値の入力以前であり、初回の対数尤度比の演算が開始される前、又は、2回目以降の対数尤度比の演算時には、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値の平均値を前記第2の雑音分散選択値として出力する、
請求項2に記載のターボ等化器。
【請求項9】
受信信号に含まれる既知信号列と予め用意してある基準既知信号列との相関演算によりチャネル推定値を算出するチャネル推定部、
をさらに具備する請求項1から8のいずれか一項に記載のターボ等化器。
【請求項10】
アナログ受信信号に対してアナログ/デジタル変換処理を行い、デジタルの受信信号を出力するアナログ/デジタル変換部と、
前記デジタルの受信信号に対してターボ等化処理を行うターボ等化器と、
を具備し、
前記ターボ等化器は、
チャネル推定値に基づいて第1の雑音分散推定値を算出する第1の雑音分散推定部と、
MMSEフィルタにより等化された信号を用いて第2の雑音分散推定値を算出する第2の雑音分散推定部と、
前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第1の判断基準に基づいて選択し、第1の雑音分散選択値として出力する第1の雑音分散選択部と、
前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第2の判断基準に基づいて選択し、第2の雑音分散選択値として出力する第2の雑音分散選択部と、
前記第1の雑音分散選択値を用いてMMSEフィルタのフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、
前記第2の雑音分散選択値を用いてLDPC復号に用いる対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、
を含む、
無線受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雑音分散推定値を用いるターボ等化器、および、これを具備する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ等化器は、マルチパスによる符号間干渉(Inter-Symbol Interference:ISI)に対して強力な等化能力を持つ。ターボ等化器の一種として、ISI等化の演算量削減を図ることができる周波数領域SC/MMSE(Soft Canceller followed by Minimum Mean Squared Error filter)ターボ等化器が知られている。また、LDPC符号は、sum-product復号法との組み合わせによりシャノン限界に迫る優れた誤り訂正能力を持つ。sum-product復号法は、復号過程で全ての符号ビットの尤度を算出し、ターボ等化の反復処理におけるソフトレプリカを生成する過程で再符号化を行う必要がないので、LDPC符号は、ターボ等化器に適した誤り訂正符号と云える。以下、LDPC符号を用いる周波数領域SC/MMSEターボ等化器を、LDPC符号化周波数領域SC/MMSEターボ等化器という。
【0003】
LDPC符号化周波数領域SC/MMSEターボ等化器において、MMSEフィルタの係数およびLDPC復号器に与える対数尤度比(Logarithm of Likelihood Ratio:LLR)の算出には、受信信号の雑音分散(特許文献1参照)が用いられる。なお、雑音分散の推定精度は、受信性能に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−54900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術は、電力に基づいて雑音分散を推定するため、受信信号の位相雑音まで考慮した推定が困難であり、受信信号の位相雑音が比較的大きい環境下において、ターボ等化器の等化性能が劣化する。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、受信信号の位相雑音が比較的大きい環境下において、等化性能の劣化を抑えることができるターボ等化器および無線受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るターボ等化器は、チャネル推定値に基づいて第1の雑音分散推定値を算出する第1の雑音分散推定部と、MMSEフィルタにより等化された信号を用いて第2の雑音分散推定値を算出する第2の雑音分散推定部と、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第1の判断基準に基づいて選択し、第1の雑音分散選択値として出力する第1の雑音分散選択部と、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第2の判断基準に基づいて選択し、第2の雑音分散選択値として出力する第2の雑音分散選択部と、前記第1の雑音分散選択値を用いてMMSEフィルタのフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、前記第2の雑音分散選択値を用いてLDPC復号に用いる対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、を具備する構成を採る。
【0008】
本開示に係る無線受信装置は、アナログ受信信号に対してアナログ/デジタル変換処理を行い、デジタルの受信信号を出力するアナログ/デジタル変換部と、前記デジタルの受信信号に対してターボ等化処理を行うターボ符号器と、を具備し、前記ターボ符号器は、チャネル推定値に基づいて第1の雑音分散推定値を算出する第1の雑音分散推定部と、MMSEフィルタにより等化された信号を用いて第2の雑音分散推定値を算出する第2の雑音分散推定部と、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第1の判断基準に基づいて選択し、第1の雑音分散選択値として出力する第1の雑音分散選択部と、前記第1の雑音分散推定値と前記第2の雑音分散推定値のいずれか一方、あるいは、前記第1の雑音分散推定値及び前記第2の雑音分散推定値の平均値を、第2の判断基準に基づいて選択し、第2の雑音分散選択値として出力する第2の雑音分散選択部と、前記第1の雑音分散選択値を用いてMMSEフィルタのフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、前記第2の雑音分散選択値を用いてLDPC復号に用いる対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、を含む、構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、性質の異なる2種類の雑音分散を適切に選択し、MMSEフィルタ係数の算出およびLLRの算出に、選択した雑音分散を使用するため、受信信号の位相雑音が比較的大きい環境下、すなわち安価な局部発振器を使用する場合あるいはテラヘルツ帯といった高い周波数を使用する場合において、ターボ等化器の等化性能の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施の形態に係るターボ等化器を具備する無線受信装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本開示の一実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るターボ等化器を具備する無線受信装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、無線受信装置20は、無線受信部200と、アンテナ202と、ベースバンド部10と、を備える。
【0013】
無線受信部200は、アンテナ202で受信した無線受信信号203に対して、増幅処理、周波数変換処理等を行い、得られたアナログ受信信号201をベースバンド部10(ADC140)に出力する。
【0014】
ベースバンド部10は、ADC140と、ターボ等化器100と、を備える。ADC140は、アナログ受信信号201に対してアナログ/デジタル変換処理を行い、デジタルの受信信号101をターボ等化器100(チャネル推定部102および第1のフーリエ変換部106)に出力する。
【0015】
ターボ等化器100は、デジタルの受信信号101に対してターボ等化処理を行う。ターボ等化器100は、チャネル推定部102と、第1の雑音分散推定部104と、第1のフーリエ変換部106と、第2のフーリエ変換部108と、ソフトキャンセラ110と、フィルタ係数算出部112と、MMSEフィルタ114と、逆フーリエ変換部116と、第2の雑音分散推定部118と、第1の雑音分散選択部120と、第2の雑音分散選択部122と、加算部124と、外部LLR算出部126と、デインターリーバ128と、LDPC復号部130と、インターリーバ132と、ソフトシンボル生成部134と、第3のフーリエ変換部136と、ソフトレプリカ生成部138と、から主に構成される。
【0016】
チャネル推定部102は、受信信号101の既知信号部分を用いてチャネル推定を行う具体的には、チャネル推定部102は、プリアンブル内の既知信号列で構成されるチャネル推定フィールドを利用し、受信信号101のチャネル推定フィールドと予め用意されている基準チャネル推定フィールド(基準既知信号列)との相関演算によりチャネル推定を行う。
【0017】
そして、チャネル推定部102は、チャネル推定によって得られた相関特性をチャネル推定値103として、第1の雑音分散推定部104と第2のフーリエ変換部108に出力する。なお、チャネル推定部102は、1つの受信フレームに対して、一回、チャネル推定を行うため、ある1つの受信フレームの受信中にチャネル推定値103が変化することはない。
【0018】
第1の雑音分散推定部104は、チャネル推定値103から検出される遅延パスの電力と受信信号101の既知信号部分(パイロットシンボル)の電力とに基づいて、以下の式(1)により、第1の雑音分散推定値105を算出する。なお、第1の雑音分散推定値105は、チャネル推定値103と同様に、ある1つの受信フレームの受信中に変化することはない。
【数1】
なお、式(1)において、
【数2】
は第1の雑音分散推定値105、Kは推定に使用されるパイロットシンボルの個数、yは第l番目の個別フェージングパスについて逆拡散されたパイロットシンボルの電力、
【数3】
は第l番目の遅延パスの電力である。
【0019】
そして、第1の雑音分散推定部104は、第1の雑音分散推定値105を第1の雑音分散選択部120および第2の雑音分散選択部122に出力する。
【0020】
第1のフーリエ変換部106は、受信信号101に対してフーリエ変換処理を行うことにより、受信信号101を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する。そして、第1のフーリエ変換部106は、フーリエ変換処理の結果として得られる周波数領域受信信号107をソフトキャンセラ110に出力する。
【0021】
第2のフーリエ変換部108は、チャネル推定値103に対してフーリエ変換処理を行うことにより、チャネル推定値103を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する。そして、第2のフーリエ変換部108は、フーリエ変換処理の結果として得られる周波数伝達関数109をフィルタ係数算出部112およびソフトレプリカ生成部138に出力する。
【0022】
ソフトキャンセラ110は、周波数領域受信信号107からソフトレプリカ139を減算(ソフトキャンセル)することにより、周波数領域受信信号107から干渉成分をキャンセルする。なお、このとき、干渉成分以外にも所望信号成分もキャンセルされてしまうが、所望信号成分は加算部124で再生される。
【0023】
ソフトキャンセラ110は、残留干渉成分111をMMSEフィルタ114に出力する。なお、ソフトキャンセルが理想的に実施された場合、すなわちソフトレプリカ139が干渉成分と所望信号成分を再現しており、周波数領域受信信号107から干渉成分と所望信号成分が減算されることによって、残留干渉成分111には熱雑音、位相雑音といった雑音成分が残る。
【0024】
フィルタ係数算出部112は、周波数伝達関数109および第1の雑音分散選択値121に基づいて、以下の式(2)によりフィルタ係数113を算出し、MMSEフィルタ114に出力する。
【数4】
なお、式(2)において、Cはフィルタ係数113、
【数5】
は第1の雑音分散選択値121、
【数6】
は周波数伝達関数109、Δは干渉成分電力、Iは単位行列、は複素共役転置処理である。
【0025】
MMSEフィルタ114は、フィルタ係数113を用いて残留干渉成分111に対してMMSE規範の周波数領域等化処理を行う。そして、MMSEフィルタ114は、周波数領域等化処理によって得られた被等化残留干渉成分115を逆フーリエ変換部116に出力する。
【0026】
逆フーリエ変換部116は、被等化残留干渉成分115に対して逆フーリエ変換処理を行うことにより、被等化残留干渉成分115を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する。そして、逆フーリエ変換部116は、逆フーリエ変換処理の結果として得られる時間領域被等化残留干渉成分117を第2の雑音分散推定部118および加算部124に出力する。
【0027】
第2の雑音分散推定部118は、時間領域被等化残留干渉成分117を用いて第2の雑音分散推定値119を算出する。
【0028】
ここで、第2の雑音分散推定値119は、ターボ等化の反復処理において、初回はソフトレプリカ139が存在せず、ソフトキャンセラ110においてソフトキャンセルが行われないので、時間領域被等化残留干渉成分117には所望信号成分が含まれている。従って、第2の雑音分散推定部118は、初回には、以下の式(3)により第2の雑音分散推定値119を算出する。
【数7】
なお、式(3)において、
【数8】
は第2の雑音分散推定値119、xi (i=1,…,m)は時間領域被等化残留干渉成分117、x'iはxiの仮判定点、
【数9】
はx'i-xiの相加平均である。
【0029】
一方、第2の雑音分散推定値119は、ターボ等化の反復処理において、2回目以降はソフトレプリカ139が生成されており、ソフトキャンセラ110においてソフトキャンセルが行われるので、前述のとおり理想的には時間領域被等化残留干渉成分117には干渉成分および所望信号成分が含まれず雑音成分が存在する。従って、第2の雑音分散推定部118は、2回目以降には、以下の式(4)により第2の雑音分散推定値119を算出する。
【数10】
なお、式(4)において、
【数11】
は第2の雑音分散推定値119、xi (i=1,…,m)は時間領域被等化残留干渉成分117、
【数12】
はxiの相加平均である。
【0030】
なお、第2の雑音分散推定部118は、IQ平面上で分散を計算しているため、位相雑音まで含めた雑音分散を推定することができる。また、第2の雑音分散推定部118は、第1のフーリエ変換部106におけるフーリエ変換処理単位で雑音分散を推定するため、位相雑音の時間変動に追従して雑音分散を推定することができる。また、第2の雑音分散推定部118は、ターボ等化器の反復処理の度に雑音分散を推定するため、ターボ等化器の反復処理による時間領域被等化残留干渉成分117の改善に追従して雑音分散を推定することができる。
【0031】
第2の雑音分散推定部118は、推定した第2の雑音分散推定値119を第1の雑音分散選択部120および第2の雑音分散選択部122に出力する。
【0032】
第1の雑音分散選択部120は、第1の判断基準に基づいて、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のいずれか一方、あるいは、2つの雑音分散推定値の平均値を選択し、選択結果である第1の雑音分散選択値121をフィルタ係数算出部112に出力する。
【0033】
第1の雑音分散選択部120は、第1の判断基準として、ターボ等化の反復処理において、MMSEフィルタ114の初回の等化処理時には、まだ第2の雑音分散推定値119が推定されていないため、第1の雑音分散推定値105を選択する。
【0034】
一方、第1の雑音分散選択部120は、MMSEフィルタ114における2回目以降の等化処理時には、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119の両方が存在しているため、様々な判断基準に基づいて選択処理を行う。
【0035】
例えば、第1の雑音分散選択部120は、他の第1の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119の大小関係に基づいて選択処理を行う。この大小関係は、例えば、第1の雑音分散推定部104の推定傾向によって決めることができる。
【0036】
すなわち、第1の雑音分散推定値105が理論値に対して小さめに推定されることが予め分かっている場合には、第1の雑音分散選択部120は、他の第1の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のうち大きい方を選択する。逆に、第1の雑音分散推定値105が理論値に対して大きめに推定されることが予め分かっている場合には、第1の雑音分散選択部120は、他の第1の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のうち小さい方を選択する。
【0037】
あるいは、第1の雑音分散選択部120は、他の第1の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119の平均値を選択する。
【0038】
第2の雑音分散選択部122は、第2の判断基準に基づいて、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のいずれか一方、あるいは、2つの雑音分散推定値の平均値を選択し、選択結果である第2の雑音分散選択値123を外部LLR算出部126に出力する。
【0039】
第2の雑音分散選択部122は、他の第2の判断基準として、ターボ等化の反復処理において、第2の雑音分散推定値119の入力以前であり、初回の外部LLR算出部126の演算が既に開始されている場合には、第1の雑音分散推定値105を選択する。
【0040】
一方、第2の雑音分散選択部122は、他の第2の判断基準として、第2の雑音分散推定値119の入力以前であり、初回の外部LLR算出部126の演算がまだ開始されていない場合、又は、2回目以降の外部LLR算出126の演算時には、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119の大小関係に基づいて選択することができる。この大小関係は、例えば、第1の雑音分散推定部104の推定傾向によって決めることができる。
【0041】
すなわち、第1の雑音分散推定値105が理論値に対して小さめに推定されることが予め分かっている場合には、第2の雑音分散選択部122は、他の第2の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のうち大きい方を選択する。逆に、第1の雑音分散推定値105が理論値に対して大きめに推定されることが予め分かっている場合には、第2の雑音分散選択部122は、他の第2の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119のうち小さい方を選択する。
【0042】
あるいは、第2の雑音分散選択部122は、他の第2の判断基準として、第1の雑音分散推定値105と第2の雑音分散推定値119の平均値を選択する。
【0043】
加算部124は、時間領域被等化残留干渉成分117にソフトシンボル135を加算することにより所望信号成分を再生し、再生信号125を外部LLR算出部126に出力する。
【0044】
外部LLR算出部126は、第2の雑音分散選択値123および再生信号125に基づいて、以下の式(5)により外部LLR127を算出し、デインターリーバ128に出力する。
【数13】
なお、式(5)において、
【数14】
は外部LLR127、
【数15】
は第2の雑音分散選択値123、yは再生信号125である。
【0045】
デインターリーバ128は、外部LLR127に対してデインターリブ処理を行い、その結果として得られる第1の事前LLR129をLDPC復号部130に出力する。
【0046】
LDPC復号部130は、例えば、sum-product復号法を用いて第1の事前LLR129に対して復号処理を行い、事後LLR131をインターリーバ132に出力する。
【0047】
インターリーバ132は、事後LLR131に対してインターリブ処理を行い、その結果として得られる第2の事前LLR133をソフトシンボル生成部134に出力する。
【0048】
ソフトシンボル生成部134は、例えば、以下の式(6)によりソフトシンボル135を生成し、加算部124および第3のフーリエ変換部136に出力する。
【数16】
なお、式(6)において、Sはソフトシンボル135、
【数17】
は第2の事前LLR133である。
【0049】
第3のフーリエ変換部136は、ソフトシンボル135に対してフーリエ変換処理を行うことにより、ソフトシンボル135を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する。そして、第3のフーリエ変換部136は、フーリエ変換処理の結果として得られる周波数領域ソフトシンボル137をソフトレプリカ生成部138に出力する。
【0050】
ソフトレプリカ生成部138は、例えば、以下の式(7)によりソフトレプリカ139を生成し、ソフトキャンセラ110に出力する。
【数18】
なお、式(7)において、Rはソフトレプリカ139、
【数19】
は周波数伝達関数109、Sはソフトシンボル135である。
【0051】
なお、LDPC符号は、符号構造にインターリーバを持つため、図示しない無線送信装置がインターリーバを備えない場合がある。この場合、図1から、デインターリーバ128およびインターリーバ132が削除され、第1の事前LLR129の代わりに外部LLR127がLDPC復号部130に出力され、第2の事前LLR133の代わりに事後LLR131がソフトシンボル生成部134に出力される。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、2種類の雑音分散推定値を算出する。第1の雑音分散推定値は、既知信号列の相関特性の電力に基づいて推定される。第2の雑音分散推定値は、MMSEフィルタにより等化された信号の分散に基づいて推定される。周波数領域SC/MMSEターボ等化器では、ソフトキャンセラにおけるソフトキャンセルが理想的に行われた場合、受信信号から干渉成分および所望信号成分が除去されるため、MMSEフィルタ出力は熱雑音、位相雑音といった雑音成分になる。したがって、MMSEフィルタ出力の分散を計算することにより、雑音分散を精度よく推定することが可能となる。ただし、現実には、ソフトキャンセルが理想的に行われることはないため、第2の雑音分散の推定精度が第1の雑音分散の推定精度よりも必ずしも良いとは限らない。
【0053】
そこで、本実施の形態では、選択したいずれか一方の雑音分散推定値あるいは2つの雑音分散推定値の平均値を用いて、MMSEフィルタ係数の算出およびLDPC復号におけるLLR算出を行う。
【0054】
これにより、本実施の形態によれば、受信信号の位相雑音が比較的大きい環境下、すなわち安価な局部発振器を使用する場合あるいはテラヘルツ帯といった高い周波数を使用する場合において、ターボ等化器の等化性能の劣化を抑えることができる。
【0055】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
上記実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0057】
また、上記実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0058】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0059】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により,LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、雑音分散推定値を用いるターボ等化器、および、これを具備する無線受信装置に用いるに好適である。
【符号の説明】
【0061】
10 ベースバンド部
20 無線受信装置
100 ターボ等化器
102 チャネル推定部
104 第1の雑音分散推定部
106 第1のフーリエ変換部
108 第2のフーリエ変換部
110 ソフトキャンセラ
112 フィルタ係数算出部
114 MMSEフィルタ
116 逆フーリエ変換部
118 第2の雑音分散推定部
120 第1の雑音分散選択部
122 第2の雑音分散選択部
124 加算部
126 外部LLR算出部
128 デインターリーバ
130 LDPC復号部
132 インターリーバ
134 ソフトシンボル生成部
136 第3のフーリエ変換部
138 ソフトレプリカ生成部
140 ADC
200 無線受信部
202 アンテナ
図1