(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラのプロペラ直径をDpとしたとき、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心位置と、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの中心高さにおける前記舵の前縁との距離が、1.0Dp以下である請求項1又は2に記載の近接二軸船のフィン付舵。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進装置においては、主機によりプロペラを回転させて推進力を得るのが一般的である。
船舶が一機の主機と一基のプロペラとを備えた、いわゆる一軸船の場合、船舶が大型化すると、当然ながら、一基のみのプロペラに作用する荷重度が増加する。十分な推進力を得るには、プロペラの回転速度を高めたり、プロペラの径を大きくする必要がある。すると、プロペラの周速が速くなるので、プロペラ翼端近傍の圧力が下がって、水中に気泡が生じる現象であるキャビテーションが過大に発生することがある。キャビテーションが発生すると、船尾船底を通じて船体が振動する。また、キャビテーションによってプロペラにエロージョンが生じることがあり、プロペラの耐久性に悪影響を及ぼす。
【0003】
そこで、船舶を、二基の主機と二基のプロペラとを備えた二軸船とすることによって、上記のような問題が解決できることが知られている。二軸船とすると、一基当たりのプロペラの荷重度が低減されてプロペラ効率が向上し、キャビテーション発生を抑制することができる。
【0004】
船尾に二基のプロペラを配置する例としては、オーバーラッピングプロペラ(OLP;Overlapping Propellers)方式、インターロックプロペラ方式、及び、プロペラを左右並列する方式などがある。
このうち、OLP方式では、二基のプロペラを前後にずらして配置し、船尾から見た場合に二基のプロペラの少なくとも一部が重なるように配置する。OLP方式を採用することで推進性能が一軸船から5〜10%程度改善できる。
インターロックプロペラ方式では、一方のプロペラの翼と翼との間に他方のプロペラの翼が入るように配置する。
プロペラを左右並列する方式では、プロペラを船長方向の同じ位置に並べて配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、OLP方式を用いた場合、後方に配置されたプロペラは、一回転する間に、前方のプロペラによって加速された速い流れと船幅方向(船の幅方向)中心近傍の遅い流れの中を交互に通過する。そのため、後方のプロペラのプロペラ翼に掛かる荷重が大きく変動する。その結果、OLP方式を用いた二軸船では、一軸船と比較して、後方のプロペラのプロペラ軸のベアリングに作用するベアリングフォースが過大となる可能性がある。
また、前方のプロペラの回転により、速度の速い回転流が新たに形成されるため、後方のプロペラは非常に複雑な流れの中で動作する必要があり、必然的にキャビテーションが発生する範囲が広がってしまう。その結果、過大な振動が発生する恐れがある。更に、前方のプロペラのプロペラ翼の先端からチップボルテックスキャビテーション(翼端渦キャビテーション)を発生した場合、発生した気泡が後方のプロペラのプロペラ翼面上で破裂するなどして、そのプロペラ翼にエロージョンを発生させる可能性もある。
【0007】
また、インターロックプロペラ方式の場合、一方のプロペラの翼と他方のプロペラの翼とが干渉しないように、双方のプロペラの回転を制御しなければならず、回転制御が難しくなる。また、万が一、一方のプロペラの翼と他方のプロペラの翼とが干渉した場合、プロペラが損傷してしまう。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることができる近接二軸船のフィン付舵、船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、近接二軸船のフィン付舵は、船尾船体に設けられた左舷プロペラおよび右舷プロペラと、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの後方において、前記船尾船体の船幅方向中心に配置された
、舵軸とともに鉛直軸線回りに回転する1つの舵
と、前記舵の両舷に
同じ高さでそれぞれ
舵面に直交する方向に向かって延びるように設けられた翼断面形のフィンと、を備え、前記船幅方向中心側における前記左舷プロペラのプロペラ翼の先端と前記右舷プロペラのプロペラ翼の先端との距離は、0mより大きく1.0m以下とされ、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの回転方向は、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上部において船幅方向中心側から外側に向かって回転する外回りとされ、 前記フィンは、外回りに回転する前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの後流によって前進方向の推力を発生させるよう設けられ、前記フィンは、前記舵の上下方向において、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの上端よりも下方、かつ、前記左舷プロペラおよび前記右舷プロペラの中心高さよりも上方に設けられ
、前記フィンの先端が、右舷プロペラ及び左舷プロペラの回転半径よりも内側で、前記回転半径の外縁近傍に位置し、かつ、前記船幅方向中心の近傍に発生する縦渦と、前記回転半径が重なる領域内に位置するように延びている。
【0010】
このように、右舷プロペラおよび左舷プロペラを船幅方向中心の近傍に近接させて配置する(近接二軸方式と呼称)ので、船幅方向中心近傍の縦渦を効率良く回収することができ、推進性能を向上することができる。また、右舷プロペラおよび左舷プロペラは、インターロックプロペラ方式のように互いに干渉することもない。そして、右舷プロペラおよび左舷プロペラを並列で配置しているので、OLP方式に比較し、後方プロペラにおけるベアリングフォース過大、キャビテーション範囲拡大、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
さらに、舵の両舷に設けたフィンにより、左舷プロペラおよび右舷プロペラの後流によって前進方向の推力を発生させることができるので、推進性能の向上を図ることができる。
【0011】
また、右舷プロペラおよび左舷プロペラの後流を効率よくフィンに当てて、前進方向の推力を効率よく発生させることができる。
【0013】
この発明の第
二態様によれば、近接二軸船のフィン付舵は、第一又は第二態様において、複数対のフィンが、舵の両舷から放射状に延びるよう設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、右舷プロペラおよび左舷プロペラからの後流により、より多くの前進方向の推力を発揮させることができる。
【0014】
この発明の第
三態様によれば、近接二軸船のフィン付舵は、第一から第四態様の何れか一つの態様において、左舷プロペラおよび右舷プロペラのプロペラ直径をDpとしたとき、左舷プロペラ及び右舷プロペラの中心位置と、左舷プロペラおよび右舷プロペラの中心高さにおける舵の前縁との距離が、1.0Dp以下であるようにしてもよい。
このように構成することで、舵の前縁を右舷プロペラおよび左舷プロペラに近づけることができ、右舷プロペラおよび左舷プロペラからの後流を舵面およびフィンに確実に当てることができる。これによって、舵効きおよび推進性能を向上させることができる。
【0015】
この発明の第
四態様によれば、近接二軸船のフィン付舵は、第一から第五態様の何れか一つの態様において、船尾船体は、一軸船型の船尾構造を有するようにしてもよい。
このような構成によれば、一軸船型の船尾構造を有する場合において、上記した各態様における作用効果を特に顕著に奏することができる。
【0016】
この発明の第
五態様によれば、船舶は、第一から第六態様の何れか一つの態様における近接二軸船のフィン付舵を備えるようにしてもよい。
このような構成によれば、右舷プロペラおよび左舷プロペラを船幅方向中心の近傍に近接させて配置することで、推進性能の向上を図ることができる。右舷プロペラおよび左舷プロペラにおけるベアリングフォース、キャビテーション、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
さらに、舵の両舷に設けたフィンにより、推進性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る近接二軸船のフィン付舵、船舶によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態に係る近接二軸船のフィン付舵、船舶を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る近接二軸船のフィン付舵の構成を示す下面図である。
図2は、近接二軸船のフィン付舵の構成を示す側面図である。
ここでは、船舶として、多軸船の一種である一軸船型の船尾構造を有する二軸船1を例に説明する。
図1に示すように、この実施形態における二軸船1の推進装置は、右舷プロペラ10Rと、左舷プロペラ10Lと、舵40Aと、を備えている。
【0020】
右舷プロペラ10Rは、船体の船尾である船尾船体3の船底4の右舷側の下方に設けられている。右舷プロペラ10Rは、右舷プロペラ軸12Rの一端に接続されている。船尾船体3の内部の右舷側に、右舷主機18Rが設けられている。右舷プロペラ軸12Rは、船底4に設けられたボッシング11Rを通して船尾船体3内部に貫通し、他端が右舷主機18Rに接続されている。右舷主機18Rは、右舷プロペラ軸12Rを介して右舷プロペラ10Rを回転させる。
左舷プロペラ10Lは、船尾船体3の船底4の左舷側の下方に設けられている。左舷プロペラ10Lは、左舷プロペラ軸12Lの一端に接続されている。船尾船体3の内部の左舷側には、左舷主機18Lが設けられている。左舷プロペラ軸12Lは、船底4に設けられたボッシング11Lを通して船尾船体3内部に貫通し、他端が左舷主機18Lに接続されている。左舷主機18Lは、左舷プロペラ軸12Lを介して左舷プロペラ10Lを回転させる。
【0021】
図1、
図2に示すように、右舷プロペラ軸12R、左舷プロペラ軸12Lは、船尾船体3から後方に突出した後端部が、右舷プロペラ10R、左舷プロペラ10Lの前方で、シャフトブラケット13R、13Lにより回転自在に支持されている。シャフトブラケット13R、13Lは、右舷プロペラ軸12R、左舷プロペラ軸12Lを回転自在に支持する筒状支持部14R、14Lと、筒状支持部14R、14Lから上方に向けてV字状に延び、上端が船尾船体3の船底4に接続された複数のストラット15R、16R、15L、16Lと、を備えている。
【0022】
右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとは、互いのプロペラ翼が干渉しない程度の距離を隔てて船幅方向中心Cを中心として対称に配置されている。すなわち、この二軸船1は、OLP方式やインターロックプロペラ方式ではなく、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとを並列させた方式とされている。
ここで、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとの距離を、船幅方向中心C側における右舷プロペラ10Rの最外周部と左舷プロペラ10Lの最外周部との間隔であるプロペラチップ間距離dで表す。その場合、プロペラチップ間距離dは、プロペラ翼同士の接触の恐れがなく、かつ、縦渦を捉えられるように右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとを船幅方向中心Cに近く配置できるよう、なるべく小さく設定するのが好ましい。具体的には、以下のようにして決定される。
【0023】
すなわち、二軸船1は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとを並列させた方式とするため、プロペラチップ間距離dは、0mより大きく設定する。プロペラチップ間距離dは、より好ましくは、0.1m以上とするのが好ましい。これは、加工誤差や組み立て誤差を考慮しても右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとが干渉しないようにするためである。
【0024】
また、プロペラチップ間距離dは、好ましくは1.0m以下、より好ましくは0.5m以下に設定する。これは、船幅方向中心C近くの縦渦を捉えることで、推進性能をより向上させることができるからである。
【0025】
図3は、本発明の第一実施の形態に係る船舶の左右両舷のプロペラチップ間距離dと、船舶の推進性能との関係を示すグラフである。
図3において、横軸は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとのプロペラチップ間距離dの値を示している。縦軸は、船舶の推進性能指標であり、同じ船尾船体3に一組のプロペラおよび主機で推進させる一軸船とした場合の推進性能を1.0として正規化した値を示している。ここで、推進性能は馬力性能のことであり、同一速力を出すために必要な馬力が小さいほど性能が良い、すなわち燃費性能が良いことになる。従って、縦軸の推進性能指標の数値が小さくなるほど推進性能が良く、数値が大きくなるほど推進性能が悪い。したがって、一軸船と比較して推進性能を向上させるためには、推進性能を1.0以下にする必要がある。したがって、プロペラチップ間距離dの上限を、1.0mと設定するのが好ましい。
【0026】
これは、例えば、以下のように説明される。
図4は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lと渦との関係を模式的に示す概念図である。
図4において、船幅方向中心線Cの近傍の領域80には、縦渦V2、V1が発生している。この領域80の直径をDvと仮定する。この領域80の縦渦V2、V1を効率良く回収して推進性能向上を図るために、二軸船の右舷プロペラ10R、左舷プロペラ10Lの回転方向は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lとの上部において船幅方向中心Cから外側に向かって回転する外回りR2,R1とする。
右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lは、その領域80と重なる領域S2、S1の範囲で、効率良く縦渦V1,V2を回収できる。そして、プロペラチップ間距離dを小さくすればするほど、領域S2及び領域S1を併せた面積が大きくなるため、推進性能をより向上させることができる。
【0027】
また、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lの中心高さは、同一の位置である必要はない。ただし、二軸船1の操縦性を考慮すると同一の位置であることが好ましい。
【0028】
また、船尾船体3における右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lと同じ高さの先端部9の位置は、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lの回転面の船首側の端の位置と比較して、船首側にあることが好ましい。
【0029】
舵40Aは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの後方であって、船幅方向中心C上に設けられている。
舵40Aは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lよりも後方側(船尾側)に配置されている。舵40Aは、翼断面形状で、船尾船体3の船底4から鉛直下方に延びる舵軸41に取り付けられている。舵40Aは、舵軸41とともに鉛直軸線回りに回転し、二軸船1の針路方向を変更する。
【0030】
舵40Aの右舷側および左舷側の舵面42R,42Lには、フィン43R,43Lが設けられている。この実施形態において、右舷側のフィン43Rと、左舷側のフィン43Lとは、同じ高さに設けられ、舵面42R,42Lに対して直交して側方に延びるよう設けられている。
フィン43R,43Lは、船長方向において翼断面形状を有している。また、フィン43R,43Lは、舵40Aの上下方向において、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの上端Puと下端Pdとの間の範囲内に設けられている。これにより、右舷側のフィン43Rには、右舷プロペラ10Rの後流が当たり、左舷側のフィン43Lには、左舷プロペラ10Lの後流が当たるようになっている。これらのフィン43R,43Lは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの後流が当たることによって、前進方向の推力を発生させるように設けられている。
【0031】
フィン43R,43Lは、断面視翼形で、その前縁43gが後縁43rよりも下方に位置するように取り付けられて上向きのキャンバを有する小翼である。また、フィン43R,43Lの先端は、右舷プロペラ10R,左舷プロペラ10Lの回転半径Rpよりも内側で、かつ、上向きの流れが強くなる領域まで延びている。
【0032】
このような舵40Aによれば、フィン43R,43Lによって、舵面42R,42Lの近傍において、右舷プロペラ10Rと左舷プロペラ10Lの回転半径Rpよりも内側に発生する上向きの流れから発生する揚力を利用して、推進性能(推進効率)の向上化を図ることができる。
このような構成により、フィン43R,43Lを装備した船舶では、フィン43R,43Lを装備していない船舶と同じ船速を得るのに馬力が少なくて済む。また、フィン43R,43Lを装備していない船舶と同じ馬力を与えた場合、船速が増加することとなる。これにより、燃費低減効果が得られる。
【0033】
ここで、舵40Aの前縁40fと、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lは、なるべく近接させるのが好ましい。これは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lにより生成される速い流れを舵40Aおよびフィン43R,43Lに流入させるためである。具体的には、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lのプロペラ直径をDpとしたとき、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの中心位置Pcと、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの中心高さPhにおける舵40Aの前縁40fpとの距離Lは、1.0Dp以下とするのが好ましい。
【0034】
したがって、上述した第一実施形態の近接二軸船のフィン付舵および船舶によれば、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lを船幅方向中心Cの近傍に近接させて配置するので、船幅方向中心C近傍の縦渦を効率良く回収することができ、推進性能を向上することができる。また、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lは、インターロックプロペラ方式のように互いに干渉することもない。それにより、二軸船1を容易に製造することが可能となる。そして、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lを並列で配置しているので、OLP方式に比較し、後方プロペラにおけるベアリングフォース過大、キャビテーション範囲拡大、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
さらに、舵40Aの両舷に設けたフィン43R,43Lにより、左舷プロペラ10Lおよび右舷プロペラ10Rの後流によって前進方向の推力を発生させることができるので、推進性能の向上を図ることができる。
このようにして、二軸船1によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
【0035】
また、上記二軸船1の推進装置によれば、フィン43R,43Lが、舵40Aの上下方向において、左舷プロペラ10Lおよび右舷プロペラ10Rの上端Puと下端Pdとの間に設けられている。これにより、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの後流を効率よくフィン43R,43Lに当てて、前進方向の推力を効率よく発生させることができる。
【0036】
さらに、上記二軸船1の推進装置によれば、一対以上のフィン43R,43Lが、舵40Aの両舷から、それぞれ舵面42R,42Lに直交する方向に向かって延びるよう設けられている。これにより、外回りに回転する右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lからの後流により、前進方向の推力を発生させることができる。
【0037】
また、上記二軸船1の推進装置によれば、左舷プロペラ10L及び右舷プロペラ10Rの中心位置Pcと、左舷プロペラ10Lおよび右舷プロペラ10Rの中心高さPhにおける舵40Aの前縁40fpとの距離Lが、1.0Dp以下であるようにした。これにより、舵40Aの前縁40FPを右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lに近づけることができ、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lからの後流を舵40A面およびフィン43R,43Lに流入させることができる。これによって、舵効きおよび推進性能を向上させることができる。
【0038】
加えて、上記二軸船1の推進装置によれば、船尾船体3は、一軸船型の船尾構造を有する場合において、上記した各作用効果を特に顕著に奏することができる。
【0039】
(第一実施形態の変形例)
ここで、第一実施形態では、右舷側のフィン43Rと、左舷側のフィン43Lとを、同じ高さに設け、舵面42R,42Lに対して直交して側方に延びるよう設けるようにしたが、これに限るものではない。例えば、右舷側のフィン43Rと、左舷側のフィン43Lとで、高さが異なっていてもよい。また、右舷側のフィン43R、左舷側のフィン43Lは、舵面42R,42Lに対し、直交せずに斜め上方または斜め下方に向かって延びるように設けても良い。
また、舵40Aに、一対の右舷側のフィン43R、左舷側のフィン43Lだけでなく、複数対の右舷側のフィン43Rと、左舷側のフィン43Lとを設けるようにしてもよい。
【0040】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかる近接二軸船のフィン付舵および船舶の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と舵40Bに設けたフィンの構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、この発明の第二実施形態に係る近接二軸船のフィン付舵を後方から見た図である。
図5に示すように、この実施形態における二軸船1は、上記第一実施形態と同様の構成で設けられた右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lと、舵40Bと、を備えている。
【0041】
舵40Bは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの後方であって、船幅方向中心C上に設けられている。
舵40Bの右舷側および左舷側の舵面42R,42Lには、フィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lが放射状に設けられている。すなわち、この実施形態において、右舷側のフィン44Rと、左舷側のフィン44Lとは、同じ高さに設けられ、舵面42R,42Lに対して直交して側方に延びるよう設けられている。さらに、右舷側のフィン45Rと左舷側のフィン45Lは、フィン44R,44Lの上側に設けられて、舵面42R,42Lから斜め上方に向かって延びるよう設けられている。右舷側のフィン46Rと左舷側のフィン46Lは、フィン44R,44Lのした側に設けられて、舵面42R,42Lから斜め下方に向かって延びるよう設けられている。
【0042】
フィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lは、それぞれ、船長方向において翼断面形状を有している。また、フィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lは、舵40Bの上下方向において、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの上端Puと下端Pdとの間の範囲内に設けられている。これにより、右舷側のフィン44R,45R,46Rには、右舷プロペラ10Rの後流が当たり、左舷側のフィン44L,45L,46Lには、左舷プロペラ10Lの後流が当たるようになっている。これらのフィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lは、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lの後流が当たることによって、前進方向の推力を発生させるように設けられている。
【0043】
したがって、上述した第二実施形態の近接二軸船のフィン付舵および船舶によれば、複数対のフィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lが、舵40Aの両舷から放射状に延びるよう設けられている。これにより、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lからの後流により、より多くの前進方向の推力を発揮させることができる。
【0044】
また、上記二軸船1の推進装置によれば、上記第一実施形態と同様、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lを船幅方向中心Cの近傍に近接させて配置するので、船幅方向中心C近傍の縦渦を効率良く回収することができ、推進性能を向上することができる。また、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lは、インターロックプロペラ方式のように互いに干渉することもない。それにより、二軸船1を容易に製造することが可能となる。そして、右舷プロペラ10Rおよび左舷プロペラ10Lを並列で配置しているので、OLP方式に比較し、後方プロペラにおけるベアリングフォース過大、キャビテーション範囲拡大、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
そして、舵40Aの両舷に設けたフィン44R,45R,46R、44L,45L,46Lにより、左舷プロペラ10Lおよび右舷プロペラ10Rの後流によって前進方向の推力を発生させることができるので、推進性能の向上を図ることができる。
このようにして、二軸船1によれば、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制しつつ、推進性能を向上させることが可能となる。
【0045】
(第二実施形態の変形例)
ここで、第二実施形態では、右舷側のフィン44R,45R,46Rと、左舷側のフィン44L,45L,46Lとを、同じ高さに設けるようにしたが、これに限るものではない。例えば、右舷側のフィン44R,45R,46Rと、左舷側のフィン44L,45L,46Lとで、高さが異なっていてもよい。また、右舷側、左舷側にそれぞれ4枚以上のフィンを設けるようにしてもよい。
【0046】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。