(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
放射性同位元素(RI)から放出されるガンマ線を利用したがん診断法として、単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography、以下、SPECTとする)検査が知られている。
【0003】
このSPECT検査では、放射性核種のテクネチウム99m(Tc−99m)を、疾病部に集積し易い性質を有する薬剤に結合させた核医学診断用薬剤(放射性同位元素標識化合物、RI標識化合物)を患者に投与して、テクネチウム99mから放出されるガンマ線を放射線検出カメラ(ガンマカメラ)で検知して画像化することで、疾病の検査を行う。
【0004】
使用するテクネチウム99mは、準安定状態(meta stable)にあり、基底状態(ground state)のテクネチウム99(Tc99)に核異性体転移する際、140keVのガンマ線を放出する。ガンマ線は、物質を透過する力が強いため、患者の体を透過して外部に放出される。SPECT検査では、テクネチウム99mの核異性体転移によるガンマ線を検出して、疾病部を可視化する。例えば、ある血液中に集積するテクネチウム99mの核医学診断用薬剤を用いてSPECT検査を行い、心筋血流イメージングや脳機能イメージングが出来る。
【0005】
ところで、テクネチウム99mは、親核種のモリブデン99(Mo99)がベータ崩壊して生じる娘核種であり、テクネチウム99mの製造原料として、モリブデン99が用いられる。テクネチウム99mは、親核種のモリブデン99からモリブデン99−テクネチウム99mジェネレーターを使用したミルキングにより取り出し、製造されている。
【0006】
テクネチウム99mの半減期は、6.01時間と短く、一方、モリブデン99の半減期は、66時間であるため、ジェネレーターの一回の購入で、約1週間にわたりテクネチウム99mを取り出すことが可能である。ジェネレーターは、モリブデン99をアルミナカラムに吸着させた装置であり、生理食塩水を用いてテクネチウム99mを溶出させる。
【0007】
ここで、市販のジェネレーターはモリブデン99をアルミナカラムに吸着させることから、多量のモリブデンを含む試料を処理することが出来ないという課題がある。又、加速器や原子炉で製造したモリブデン99には、多量のモリブデン100やモリブデン98が含まれているため、アルミカラムを使用して、テクネチウム99mを効率よく分離、精製することが出来ないという課題がある。
【0008】
そこで、特許文献1(国際公開第2014/057900号)には、核種抽出装置と、案内ラインと、ポンプと、蒸発ヒーターと、排気ラインと、導入ラインと、を備えるRIの単離装置が開示されている。核種抽出装置は、親核種及び娘核種を含むRIが含有した水及び有機溶媒から前記RIの一方の核種を前記有機溶媒に抽出する。案内ラインは、前記RIの一方の核種を抽出した前記有機溶媒を前記核種抽出装置から蒸発・溶出槽に案内する。ポンプは、前記案内ラインに前記有機溶媒を送る。蒸発ヒーターは、前記蒸発・溶出槽に案内された前記有機溶媒を蒸発させる。排気ラインは、蒸発した前記有機溶媒を前記蒸発・溶出槽から排出する。導入ラインは、前記蒸発・溶出槽に溶出用の液体を導入する。これにより、一方の核種を有機溶媒に抽出し、その有機溶媒を蒸発・溶出槽に送り、そこから蒸発乾固により一方の核種を取り出し、その一方の核種を溶出する作業を連続的に行うことが出来るため、多量のRIを効率的に単離することが可能となるとしている。
【0009】
又、非特許文献1(R.E.BOYD, “Technetium-99m Generators - The Available Options”, International Journal of Applied Radiation and Isotopes, 1982, Vol. 33, pp. 801-809)には、モリブデン99とテクネチウム99mが含有した水酸化ナトリウム水溶液を95度の環境下で空気バブリングし、メチルエチルケトンを加えて、バブリングによる攪拌でメチルエチルケトンにテクネチウム99mを抽出して、この抽出液を水相と分離し、小さいアルミナカラムでメチルエチルケトン中のモリブデン99を除去して蒸発容器に移し、加熱によりメチルエチルケトンを蒸発・乾固して、残ったテクネチウム99mを生理食塩水で溶解して、テクネチウム99mを分離・精製することが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るテクネチウム99m単離システムの概念図である。本発明の実施形態に係るテクネチウム99m単離システム1は、
図1に示すように、初期導入制御部10と、微細混合制御部11と、分離制御部12と、取出導入制御部13と、蒸発制御部14と、溶出制御部15と、を備える。
【0022】
初期導入制御部10は、モリブデン99(Mo99)とテクネチウム99m(Tc99m)を含有した水溶液Wと、テクネチウム99mが溶解可能な有機溶媒Oとを抽出槽20に導入する。微細混合制御部11は、抽出槽20に導入された水溶液Wと有機溶媒Oとの混合液Mを攪拌しながらヒーターH1で加熱するとともに、当該混合液Mに超音波Uを印加することで、水溶液Wと有機溶媒Oとを微細混合させる。
【0023】
分離制御部12は、微細混合された混合液Mを、水溶液Wと有機溶媒Oとの二相に分離させる。取出導入制御部13は、二相に分離された有機溶媒Oを、前記モリブデン99を吸着する吸着カラム13aに通過させて、蒸発溶出槽21に導入する。
【0024】
蒸発制御部14は、蒸発溶出槽21の内部を減圧しながら、当該蒸発溶出槽21に導入された有機溶媒OをヒーターH2で加熱するとともに、当該有機溶媒Oに超音波Uを印加することで、当該有機溶媒Oを蒸発させて、残渣物Rを残す。溶出制御部15は、残渣物Rに生理食塩水Sを導入して、当該残渣物Rからテクネチウム99mを生理食塩水Sに溶出させる。
【0025】
これにより、テクネチウム99mの単離処理を高純度で、且つ、迅速に行うことが可能となる。即ち、本発明では、抽出槽20における水溶液Wと有機溶媒Oとに対して、攪拌と加熱に加えて、超音波Uを印加させることで、水溶液Wと有機溶媒Oとを相互に微細に混合させて、水溶液Wと有機溶媒Oとの界面の表面積を飛躍的に増加させる。特に、水溶液Wと有機溶媒Oとの微細混合により、水溶液W中に有機溶媒Oの水滴が微細分散する、又は有機溶媒O中に水溶液Wの水滴が微細分散する(バブリング)。
【0026】
すると、この状態では、有機溶媒Oに対するテクネチウム99mの抽出平衡速度(溶解平衡速度)が著しく大きくなり、水溶液W中に既に存在するテクネチウム99m及びモリブデン99のβ壊変から生成されるテクネチウム99mが直ぐに有機溶媒Oに移行することになる。従って、有機溶媒Oに対するテクネチウム99mの抽出平衡を、通常の攪拌単独、加熱単独、又はこれらの組み合わせと比較して加速させ、抽出平衡に到達する時間を飛躍的に短縮させることが可能となる。
【0027】
又、本発明では、分離した有機溶媒Oを吸着カラム13aを介して蒸発溶出槽21に導入するため、吸着カラム13aが有機溶媒O中のモリブデン99等を吸着することで、蒸発溶出槽21へ供給される有機溶媒O中のテクネチウム99mの純度を高めることが出来る。
【0028】
そして、本発明では、蒸発溶出槽21におけるテクネチウム99mを含む有機溶媒Oに対して、減圧と加熱に加えて、超音波Uを印加させることで、有機溶媒Oと空気との接触面積を広げ、有機溶媒Oの揮発速度を加速させる。これにより、有機溶媒Oの蒸発に要する時間を飛躍的に短縮させることが可能となり、全体としての処理時間を大幅に短縮させ、目的物のテクネチウム99mを含む残渣物Rを素早く得ることが出来る。
【0029】
又、有機溶媒Oの蒸発後に残る残渣物Rのテクネチウム99mは、ほぼ100%の純度であり、この残渣物Rに生理食塩水Sを供給すれば、残渣物Rからテクネチウム99mが容易に生理食塩水Sに溶出される。このテクネチウム99mが溶出された生理食塩水Sは、SPECT検査等に直ぐに使用することが出来る。
【0030】
特に、テクネチウム99mの半減期は約6時間と短いことから、本発明では、目的物のテクネチウム99mのみを高純度で、且つ、短時間に取得することが出来るため、テクネチウム99mの利用可能性を大幅に拡大させることが出来るのである。又、処理時間の短縮は、作業者への放射線被ばくのリスクを下げ、安全性を向上させることが出来る。
【0031】
ここで、モリブデン99及びテクネチウム99mを含有した水溶液Wの種類に特に限定は無く、モリブデン99の種類に応じて適宜設定される。例えば、モリブデン99が酸化物の場合は、アルカリ性の水溶液Wが設定され、モリブデン99が金属の場合は、酸性の水溶液Wが設定される。アルカリ性の水溶液Wとして、例えば、モリブデン99及びテクネチウム99mを含有した水酸化ナトリウム水溶液を挙げることが出来る。又、水酸化ナトリウム水溶液のpHに特に限定は無いが、例えば、pHが10〜14の強塩基性の水酸化ナトリウム水溶液を挙げることが出来る。
【0032】
又、テクネチウム99mが溶解可能な有機溶媒Oの種類に特に限定は無いが、例えば、水溶液に溶解可能なケトン、アルコール等を挙げることが出来る。具体的には、メチルエチルケトンを採用することが出来る。
【0033】
又、抽出槽20に導入される水溶液Wと有機溶媒Oとの比率に特に限定は無いが、例えば、水溶液Wの重量:有機溶媒Oの重量が、6:4〜3:7の範囲内であると好ましく、5:5〜4:6の範囲内であると更に好ましく、5:5であると最も好ましい。このような比率を採用することで、水溶液W中のテクネチウム99mを有機溶媒Oに速やかに移行させることが可能となる。尚、本発明では、攪拌と加熱と超音波とを組み合わせることで、水溶液の重量:有機溶媒の重量が、5:5〜4:6である場合は、水溶液中のテクネチウム99mが有機溶媒に90%以上移行する。
【0034】
又、初期導入制御部10の水溶液Wの導入方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、抽出槽20の上方に水溶液ライン10aを設置し、導入開始の際に、水溶液ライン10aの開閉バルブ10bを開状態にすることで、抽出槽20の内部に水溶液Wを導入し、所定量の水溶液Wの導入が完了すると、水溶液ライン10aの開閉バルブ10bを閉状態にする方法を挙げることが出来る。有機溶媒Oの導入方法も同様であり、抽出槽20の上方に有機溶媒ライン10cを設置し、導入開始の際に、有機溶媒ライン10cの開閉バルブ10dを開状態にすることで、抽出槽20の内部に有機溶媒Oを導入し、所定量の有機溶媒Oの導入が完了すると、有機溶媒ライン10cの開閉バルブ10dを閉状態にする方法を挙げることが出来る。
【0035】
又、微細混合制御部11の攪拌方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、攪拌翼11aによる回転型の攪拌方法を挙げることが出来る。又、抽出槽20が上下に振動可能な構成である場合は、上下振動のシェイカー型の攪拌方法でも構わない。
【0036】
又、回転型の攪拌方法の場合、攪拌時間に特に限定は無いが、例えば、水溶液Wと有機溶媒Oとの総量(混合液Mの総量)やテクネチウム99mの半減期を考慮して、10分〜40分の範囲内であると好ましく、20分〜30分の範囲内であると更に好ましい。又、攪拌翼11aの回転数に特に限定は無いが、例えば、微細混合の確実性を考慮して、100rpm〜1500rpmの範囲内であると好ましく、300rpm〜1000rpmの範囲内であると更に好ましい。
【0037】
又、微細混合制御部11の加熱方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、抽出槽20の周囲にコイル型のヒーターH1を巻き付ける加熱方法を挙げることが出来る。又、ヒーターH1の加熱温度に特に限定は無いが、例えば、有機溶媒Oの沸点以下で、且つ、当該有機溶媒Oの沸点から所定の減算値(例えば、20度)を減算した値までの間の温度を採用することが出来る。これにより、有機溶媒Oの突沸を確実に防止することが出来る。具体的には、有機溶媒Oの沸点を考慮して、10度〜90度の範囲内であると好ましく、20度〜80度の範囲内であると更に好ましく、40度〜80度の範囲内であると更に好ましい。
【0038】
又、微細混合制御部11の超音波Uの印加方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、抽出槽20の周囲に超音波発生器11bを設置して、超音波発生器11bを駆動させることで、超音波発生器11bから発生する超音波Uを抽出槽20内の混合液Mに印加させる方法を挙げることが出来る。又、超音波Uの周波数に特に限定は無いが、例えば、水溶液Wと有機溶媒Oとの微細混合を考慮して、10kHz〜50kHzの範囲内であると好ましく、20kHz〜40kHzの範囲内であると更に好ましい。
【0039】
又、分離制御部12の分離方法に特に限定は無いが、例えば、微細混合された混合液を所定時間放置して二相に分離する方法や微細混合された混合液を遠心分離して二相に分離する方法等を挙げることが出来る。
【0040】
又、分離制御部12の放置方法に特に限定は無いが、例えば、微細混合された混合液Mに、攪拌、加熱、超音波印加等の処理を全て停止して、自然放置する方法を挙げることが出来る。又、放置時間に特に限定は無いが、例えば、水溶液Wと有機溶媒Oとの二相分離に要する時間を考慮して、2分〜10分の範囲内であると好ましく、5分であると更に好ましい。
【0041】
又、分離制御部12の遠心分離方法に特に限定は無いが、例えば、抽出槽20を遠心分離可能に構成して、微細混合後の混合液を抽出槽20で遠心分離する方法や微細混合後の混合液を抽出槽20から取り出して遠心分離機に投入し、遠心分離機を駆動して二相に分離する方法を挙げることが出来る。
【0042】
又、取出導入制御部13の取り出し方法と導入方法は、分離制御部12の分離方法に応じて適宜設定される。分離制御部12が、抽出槽20内で混合液の放置により二相に分離させる場合は、例えば、
図1に示すように、抽出槽20のうち、二相に分離された有機溶媒Oが滞留する位置に取り出しライン13bの入口を設置し、蒸発溶出槽21の上方の位置に取り出しライン13bの出口を設置し、取り出しライン13bの閉状態の開閉バルブ13cにおいて、混合液Mの放置が完了した際に、取り出しライン13bの開閉バルブ13cを開状態にすることで、抽出槽20の有機溶媒Oが取り出しライン13bを通過して蒸発溶出槽21に導入する。そして、有機溶媒Oの取り出しを完了すると、取り出しライン13bの開閉バルブ13cを閉状態にする方法を挙げることが出来る。
【0043】
尚、上述の場合、取り出しライン13bの開閉バルブ13cの下流側に吸着カラム13aが設けられる。吸着カラム13aの吸着剤は、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライト、活性炭等を挙げることが出来る。又、取り出しライン13bには、例えば、有機溶媒Oを吸い取る送液ポンプ等を適宜設けても良い。
【0044】
又、分離制御部12が、遠心分離機で混合液を二相に分離させる場合は、取出導入制御部13は、遠心分離後の遠心分離機内の上澄み液を取り出しライン13bで吸い取って取り出し、吸着カラム13aを経由して蒸発溶出槽21に導入する方法を挙げることが出来る。
【0045】
又、抽出槽20には、分離後の水溶液Wを外部に放出するリークライン20aが設けられ、リークライン20aの開閉バルブ20bの開閉により、水溶液Wの放出が制御される。
【0046】
又、蒸発制御部14の減圧方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、蒸発溶出槽21の上方に設けられた排出ポンプ14aを駆動して、蒸発溶出槽21内の空気を外部に排出して、蒸発溶出槽21の内部の圧力を、大気圧よりも所定の減圧値だけ低い圧力に減圧する方法を挙げることが出来る。又、減圧値に特に限定は無いが、例えば、有機溶媒Oの蒸発速度の向上と安全性とを考慮して、大気圧の5%〜20%の範囲内であると好ましく、大気圧の10%であると更に好ましい。
【0047】
又、蒸発制御部14の加熱方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、蒸発溶出槽21の周囲にコイル型のヒーターH2を巻き付ける加熱方法を挙げることが出来る。又、ヒーターH2の加熱温度に特に限定は無いが、例えば、有機溶媒Oの沸点以下で、且つ、当該有機溶媒Oの沸点から所定の減算値(例えば、20度)を減算した値までの間の温度を採用することが出来る。これにより、有機溶媒Oの突沸を確実に防止することが出来る。具体的には、有機溶媒Oの沸点を考慮して、20度〜80度の範囲内であると好ましく、40度〜80度の範囲内であると更に好ましい。
【0048】
又、蒸発制御部14の超音波Uの印加方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、蒸発溶出槽21の周囲に超音波発生器14bを設置して、超音波発生器14bを駆動させることで、超音波発生器14bから発生する超音波Uを蒸発溶出槽21内の有機溶媒Oに印加させる方法を挙げることが出来る。又、超音波Uの周波数に特に限定は無いが、例えば、有機溶媒Oの蒸発促進を考慮して、10kHz〜50kHzの範囲内であると好ましく、20kHz〜40kHzの範囲内であると更に好ましい。
【0049】
又、溶出制御部15の導入方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、蒸発溶出槽21の上方に食塩水ライン15aを設置し、有機溶媒Oの蒸発が完了した際に、食塩水ライン15aの開閉バルブ15bを開状態にすることで、蒸発溶出槽21の内部に生理食塩水Sを供給し、所定量の生理食塩水Sの導入が完了すると、食塩水ライン15aの開閉バルブ15bを閉状態にする方法を挙げることが出来る。
【0050】
溶出制御部15は、生理食塩水Sへのテクネチウム99mの溶出を完了すると、テクネチウム99mが溶出された生理食塩水Sを蒸発溶出槽21から放出することで、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収する。
【0051】
ここで、溶出制御部15の回収方法に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、蒸発溶出槽21の下方に回収ライン15cを設置し、テクネチウム99mの溶出が完了した際に、回収ライン15cの開閉バルブ15dを開状態にすることで、蒸発溶出槽21の内部の生理食塩水Sを回収ライン15cを経由して外部に放出し、所定量の生理食塩水Sの放出が完了すると、回収ライン15cの開閉バルブ15dを閉状態にする方法を挙げることが出来る。
【0052】
ところで、抽出槽20へ導入する水溶液Wの製造方法に特に限定は無いが、例えば、水溶液Wを製造する製造制御部16を水溶液ライン10aを介して抽出槽20に連結することで、連続的に水溶液Wを抽出槽20に導入しても良い。
【0053】
ここで、製造制御部16の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、加速器や原子炉で発生させた中性子線Rを収納容器16aのモリブデン酸化物16bに照射したり、モリブデン金属の焼結体16bにガンマ線Rを照射したりすることで、モリブデン99及びテクネチウム99mを生成し、生成したモリブデン99及びテクネチウム99mに水溶液Wを導入して、モリブデン99及びテクネチウム99mを含有した水溶液Wを製造する方法を挙げることが出来る。尚、モリブデン99の生成反応は、中性子線Rを利用する場合は、98Mo(n,γ)99Mo反応となり、ガンマ線Rを利用する場合は、100Mo(γ,n)99Mo反応となる。そして、製造制御部16で製造した水溶液Wを水溶液ライン10aを介して抽出槽20に導入する。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係るテクネチウム99m単離方法の実行手順を説明する。先ず、作業者は、テクネチウム99m単離システム1の製造制御部16において、収納容器16aのうち、放射線R(例えば、ガンマ線)が照射される位置に、モリブデン酸化物16bをセットする。そして、作業者は、テクネチウム99m単離システム1を起動すると、製造制御部16は、放射線Rをモリブデン酸化物16bに照射し、所定のモリブデン99の生成反応(例えば、100Mo(γ,n)99Mo反応)により、モリブデン99及びテクネチウム99mを生成し、水溶液W(例えば、水酸化ナトリウム水溶性)を収納容器16aに供給することで、モリブデン99及びテクネチウム99mを含有した水溶液Wを作製する(
図2:S101)。
【0055】
次に、テクネチウム99m単離システム1の初期導入制御部10は、モリブデン99とテクネチウム99mを含有した水溶液Wと、テクネチウム99mが溶解可能な有機溶媒Oとを抽出槽20に導入する(
図2:S102)。
【0056】
具体的には、初期導入制御部10は、水溶液ライン10aの閉状態の開閉バルブ10bを開状態にして、所定量の水溶液Wを抽出槽20に供給するとともに、有機溶媒ライン10cの閉状態の開閉バルブ10dを開状態にして、所定量の有機溶媒Oを抽出槽20に供給する。この際、初期導入制御部10は、水溶液Wと有機溶媒Oとの比率が所定値(例えば、水溶液Wの重量:有機溶媒Oの重量が5:5)になるように水溶液Wと有機溶媒Oとを導入する。
【0057】
すると、
図3に示すように、水溶液Wと有機溶媒Oとを単に抽出槽20に導入しただけでは、水溶液Wと有機溶媒Oとは、基本的に混合しないため、混合液Mは、それぞれの比重により、水溶液Wの比重よりも比重が小さい有機溶媒Oが上になった二相に分離する。
【0058】
そして、初期導入制御部10の導入が完了すると、テクネチウム99m単離システム1の微細混合制御部11は、抽出槽20に導入された水溶液Wと有機溶媒Oとの混合液Mを攪拌しながらヒーターH1で加熱するとともに、当該混合液Mに超音波Uを印加することで、水溶液Wと有機溶媒Oとを微細混合させる(
図2:S103)。
【0059】
具体的には、微細混合制御部11は、抽出槽20内の攪拌翼11aを所定の回転数(例えば、500rpm)で回転させ、ヒーターH1に電力供給して、ヒーターH1の熱を抽出槽20内の混合液Mに加えて、混合液Mの温度を所定の加熱温度(例えば、60度)まで加熱する。微細混合制御部11は、攪拌と加熱と同時に、超音波発生器11bを起動して、所定の周波数(例えば、36kHz)の超音波Uを抽出槽20内の混合液Mに印加させる。
【0060】
すると、
図3に示すように、二相に分離した水溶液Wと有機溶媒Oとが、攪拌と加熱と超音波Uの印加を受けて、相互に微細に混合し、水溶液W中に有機溶媒Oの水滴が微細分散する、又は有機溶媒O中に水溶液Wの水滴が微細分散する。これにより、水溶液W中に存在するテクネチウム99mが直ぐに有機溶媒Oに移行する。
【0061】
そして、微細混合制御部11は、所定時間(例えば、20分)だけ攪拌と加熱と超音波Uの印加とを行うと、テクネチウム99m単離システム1の分離制御部12は、微細混合された混合液Mを、水溶液Wと有機溶媒Oとの二相に分離させる(
図2:S104)。
【0062】
具体的には、分離制御部12は、微細混合制御部11による攪拌と加熱と超音波Uの印加を所定時間(例えば、5分間)全て停止し、混合液Mを自然放置する。すると、
図3に示すように、微細混合した水溶液Wと有機溶媒Oとは、基本的に混合しないことから、それぞれの比重により、再度、水溶液Wに対して有機溶媒Oが上になる二相に分離する。
【0063】
そして、分離制御部12が放置を完了すると、テクネチウム99m単離システム1の取出導入制御部13は、二相に分離された有機溶媒Oを取り出して、蒸発溶出槽21に導入する(
図2:S105)。
【0064】
具体的には、取出導入制御部13は、取り出しライン13aの閉状態の開閉バルブ13bを開状態にすることで、抽出槽20の有機溶媒Oを取り出しライン13aに通過させて、蒸発溶出槽21に供給する。この際、取出導入制御部13は、取り出しライン13aの開閉バルブ13bを調整することで、所定量の有機溶媒Oを蒸発溶出槽21に供給する。
【0065】
すると、
図4に示すように、テクネチウム99mを含有する有機溶媒Oが蒸発溶出槽21の内部に貯められる。
【0066】
そして、取出導入制御部13が導入を完了すると、テクネチウム99m単離システム1の蒸発制御部14は、蒸発溶出槽21の内部を減圧しながら、当該蒸発溶出槽21に導入された有機溶媒OをヒーターH2で加熱するとともに、当該有機溶媒Oに超音波Uを印加することで、当該有機溶媒Oを蒸発させて、残渣物Rを残す(
図2:S106)。
【0067】
具体的には、蒸発制御部14は、排出ポンプ14aを駆動して、蒸発溶出槽21の内部の圧力を所定の減圧値(例えば、大気圧の10%)だけ減圧し、ヒーターH2に電力供給して、ヒーターH2の熱を蒸発抽出槽21内の有機溶媒Oに加えて、有機溶媒Oの温度を所定の加熱温度(例えば、60度)まで加熱する。蒸発制御部14は、減圧と加熱と同時に、超音波発生器14bを起動して、所定の周波数(例えば、36kHz)の超音波Uを蒸発溶出槽21内の有機溶媒Oに印加させる。
【0068】
すると、
図4に示すように、テクネチウム99mを含有する有機溶媒Oが蒸発溶出槽21の内部で著しく蒸発し、有機溶媒O中のテクネチウム99mが残渣物Rとして現れる。蒸発制御部14は、蒸発溶出槽21の内部の有機溶媒Oが殆ど蒸発するまでの所定時間(例えば、15分)だけ、上述の減圧と加熱と超音波Uの印加とを行う。
【0069】
そして、蒸発制御部14が蒸発を完了すると、テクネチウム99m単離システム1の溶出制御部15は、残渣物Rに生理食塩水Sを導入して、当該残渣物Rからテクネチウム99mを生理食塩水Sに溶出させる(
図2:S107)。
【0070】
具体的には、溶出制御部15は、食塩水ライン15aの閉状態の開閉バルブ15bを開状態にすることで、蒸発溶出槽21の内部に生理食塩水Sを供給する。
【0071】
すると、
図4に示すように、テクネチウム99mを含む残渣物Rが生理食塩水Sに溶出され、その生理食塩水Sはテクネチウム99mを含有することになる。
【0072】
そして、溶出制御部15が導入を完了すると、テクネチウム99mが溶出された生理食塩水Sを蒸発溶出槽21から放出することで、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収する(
図2:S108)。
【0073】
具体的には、溶出制御部15は、回収ライン15cの閉状態の開閉バルブ15dを開状態にすることで、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収ライン15cを経由して外部に放出する。作業者は、例えば、回収ライン15cの出口に回収瓶を用意して、回収ライン15cから放出される生理食塩水Sを回収瓶に入れて、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収する。このテクネチウム99mを含有する生理食塩水Sは、例えば、SPECT検査等に直接使用することが出来る。
【0074】
ところで、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収した後に、抽出槽20には、モリブデン99を含有する水溶液Wが残存することになる。モリブデン99は、β壊変により、テクネチウム99mに成長することから、S102に戻って、初期導入制御部10が、抽出槽20に新たな有機溶媒Oを導入することで(
図2:S102)、水溶液Wに残存するモリブデン99を再利用して、テクネチウム99mを抽出することが出来る。上述と同様に、初期導入制御部10は、水溶液Wと有機溶媒Oとの比率が所定値(水溶液Wの重量:有機溶媒Oの重量が5:5)になるように有機溶媒Oを導入し、その後、S103からS108までを実行し、再度、テクネチウム99mを含有する生理食塩水Sを回収することが出来る。
【0075】
尚、本発明の実施形態では、テクネチウム99m単離システム1に初期導入制御部10と、微細混合制御部11と、分離制御部12と、取出導入制御部13と、蒸発制御部14と、溶出制御部15と、製造制御部16と、を備え、水溶液の製造からテクネチウム99mを含有する生理食塩水Sの回収までを自動的に行うよう構成したが、一部が手動で構成されても、本発明の作用効果を有する。
【0076】
又、本発明の実施形態では、テクネチウム99m単離システム1が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実行するステップを本発明のテクネチウム99m単離方法として提供することも可能である。更に、各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。
【実施例】
【0077】
以下、実施例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0078】
先ず、
図1に基づいて、実施例に係るテクネチウム99m単離システム1を作製した。
図5は、実施例に係るテクネチウム99m単離システムの正面写真である。
図5に示すように、抽出槽20は約1Lの溶液を収納可能とし、蒸発溶出槽21は約500mLの溶液を収納可能とした。抽出槽20には、攪拌翼を内蔵し、抽出槽20の周囲にはコイル型のヒーターを設置した。蒸発溶出槽21の周囲には、コイル型のヒーターを設置した。テクネチウム99m単離システム1の各部は、抽出槽20と蒸発溶出槽21の下方に設けられた制御装置に内蔵した。
【0079】
放射線施設内で、100Mo(γ,n)99Mo反応で製造した、モリブデン99とテクネチウム99mとを含有した水溶液Wとして、テクネチウム99mを含有した4M(mol/m
3)の水酸化ナトリウム水溶液を500mL用意した。又、有機溶媒Oとしてメチルエチルケトン(沸点、約80度)を500mL用意した。そして、水酸化ナトリウム水溶液とメチルエチルケトンとを水溶液ラインと有機溶媒ラインとを用いて抽出槽20に導入した。水酸化ナトリウム水溶液の重量:メチルエチルケトンの重量は5:5とした。
【0080】
ここで、モリブデン99とテクネチウム99mとを含有する水酸化ナトリウム水溶液のガンマ線スペクトルを測定した。
図6は、実施例に係るモリブデン99とテクネチウム99mとを含有する水酸化ナトリウム水溶液のガンマ線スペクトルの一例を示す。
図6に示すように、モリブデン99のピークとテクネチウム99mのピークが見られ、水酸化ナトリウム水溶液にモリブデン99とテクネチウム99mとが含有されていることが理解される。又、不純物として放射性同位元素のニオブ96(Nb96)のピークも見られた。
【0081】
次に、水酸化ナトリウム水溶液とメチルエチルケトンとを導入した抽出槽20において、攪拌と加熱と超音波の印加を約20分間、実施した。攪拌翼の回転数は、約500rpmとし、ヒーターの加熱温度は、約60度とし、超音波の周波数は、36kHzとした。ヒーターの加熱温度は、メチルエチルケトンの沸点(80度)から所定の減算値(20度)を減算した値に設定した。
【0082】
又、攪拌と加熱と超音波の印加とを完了すると、全てを停止して、約5分間、自然放置し、水酸化ナトリウム水溶液とメチルエチルケトンとを二相に分離させた。そして、取り出しラインを使って、上方にあるメチルエチルケトンを吸い取って、吸着カラム13aを経由して、メチルエチルケトン中のモリブデン99等を吸着させるとともに、吸着カラム13aから放出されたテクネチウム99mを含有するメチルエチルケトンを蒸発溶出槽21に導入した。
【0083】
更に、メチルエチルケトンを導入した蒸発溶出槽21において、減圧と加熱と超音波の印加を約15分間、実施した。減圧値は、大気圧の10%とし、ヒーターの加熱温度は、約60度とし、超音波の周波数は、36kHzとした。ヒーターの加熱温度は、上述と同様に、メチルエチルケトンの沸点(80度)から所定の減算値(20度)を減算した値に設定した。
【0084】
減圧と加熱と超音波の印加とを完了すると、メチルエチルケトンが全て揮発して、残渣物だけ残った。残渣物に生理食塩水を導入して、残渣物を生理食塩水に溶出させ、生理食塩水を回収ラインを用いて回収した。
【0085】
ここで、蒸発溶出槽21に入れたメチルエチルケトンのガンマ線スペクトルを測定した。
図7は、実施例に係るメチルエチルケトンのガンマ線スペクトルの一例を示す。
図7に示すように、テクネチウム99mのピークとカリウム40(K40)のピークとが見られたが、当初存在したモリブデン99のピークとニオブ96のピークは見られなかった。カリウム40のピークも測定されているが、これは、自然界に存在するカリウムの同位体である。そのため、上述の操作により、テクネチウム99mのみを実質的に抽出することが出来たことを示している。従って、テクネチウム99mを高純度(ほぼ100%)で単離することが出来た。又、テクネチウム99mの収率は、有機溶媒中のテクネチウム99mの放射能/水酸化ナトリウム水溶液中のテクネチウム99mの放射能で表され、90%以上の値が得られた。テクネチウム99mを高収率で単離することが出来た。
【0086】
処理時間について計算すると、1Lの混合液に対して、攪拌・加熱・超音波印加の20分と、放置の5分と、減圧・加熱・超音波印加の15分とで約40分の処理時間となった。
【0087】
これに対して、実施例に係るテクネチウム99m単離システム1において、抽出槽20と蒸発溶出槽21とから超音波発生器をそれぞれ外して、比較例に係るテクネチウム99m単離システムを構成し、同じ量の上述の水酸化ナトリウム水溶液と上述のメチルエチルケトンとを、攪拌・加熱と、放置と、減圧・加熱とを実施した。
【0088】
すると、超音波印加を用いない場合は、1Lの混合液に対して、攪拌・加熱の30分と、放置の5分と、減圧・加熱・超音波印加の25分とで約60分の処理時間となった。つまり、実施例では、(60分−40分)/60分*100=33.3%の処理時間の短縮を実現することが出来た。尚、実施例の条件の最適化を行うことで、テクネチウム99mの収率をほぼ100%に近づけることが出来るとともに、処理時間を更に短縮することが出来る。
【0089】
従って、実施例では、テクネチウム99mの単離処理を高純度で、且つ、迅速に行うことが可能であることが明らかになった。
【解決手段】初期導入制御部10は、モリブデン99とテクネチウム99mを含有した水溶液Wと、有機溶媒Oとを抽出槽20に導入する。微細混合制御部11は、抽出槽20に導入された水溶液Wと有機溶媒Oとの混合液Mを攪拌しながら加熱するとともに、当該混合液Mに超音波Uを印加することで、水溶液Wと有機溶媒Oとを微細混合させる。分離制御部12は、微細混合された混合液Mを、水溶液Wと有機溶媒Oとの二相に分離させる。取出導入制御部13は、二相に分離された有機溶媒Oを、前記モリブデン99を吸着する吸着カラム13aに通過させて、蒸発溶出槽21に導入する。蒸発制御部14は、蒸発溶出槽21の内部を減圧しながら、当該蒸発溶出槽21に導入された有機溶媒Oを加熱するとともに、当該有機溶媒Oに超音波Uを印加する。溶出制御部15は、残渣物Rに生理食塩水Sを導入して、当該残渣物Rからテクネチウム99mを生理食塩水Sに溶出させる。