(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
以下、第1実施形態の概要を説明する。なお、以下の説明において、同様の構成については同一番号を付して説明する。第1実施形態の瞳孔間距離計1は、例えば、左右の被検眼Eの位置に基づいて被検者の瞳孔間距離を測定する。
【0012】
瞳孔間距離計1(
図1参照)は、例えば、測定用マーク移動部と、演算部と、表示制御部と、を主に備える(
図3、
図4参照)。なお、制御部70が、測定用マーク移動部、演算部、表示制御部等を兼ねるようにしてもよい。もちろん、別途、測定用マーク移動部、演算部、表示制御部がそれぞれ設けられる構成としてもよい。
【0013】
測定用マーク移動部は、左右の検査窓6を介して被検眼Eに対して左右それぞれに形成(例えば、表示)された測定用マークの形成位置を移動させる。演算部は、例えば、被検眼Eに対して位置合わせされた測定用マークMの形成位置に基づいて、被検者の瞳孔間距離を演算する。表示制御部は、演算部によって演算された瞳孔間距離の演算結果を0.5mmより小さい間隔(表示ピッチ)で結果表示部7に表示する。これによって、検者は、眼鏡の作製、フィッティングのための良好な瞳孔間距離を得ることができる。
【0014】
なお、表示制御部は、演算部によって演算された瞳孔間距離の演算結果を0.5mm間隔と、0.5mmより小さい間隔とで結果表示部7に表示してもよい。例えば、瞳孔間距離の演算結果を0.5mm間隔と、0.5mmより小さい間隔とを結果表示部7に同時に表示してもよい。
【0015】
なお、瞳孔間距離計1は、さらに出力モード切換部(例えば、制御部70)を備えてもよい。出力モード切換部は、演算部によって演算された瞳孔間距離の演算結果を第1出力モードと、第2出力モードと、を切り換えてもよい。なお、第1出力モードは、例えば、演算部によって演算された瞳孔間距離の演算結果を0.5mm間隔で結果表示部7に出力する出力モードである。なお、第2出力モードは、例えば、演算部によって演算された瞳孔間距離の演算結果を0.5mmより小さい間隔で結果表示部7に出力する出力モードである。この場合、表示制御部は、出力モード切換部によって切換られた出力モードに対応する間隔で結果表示部7に演算結果を表示してもよい。これによって、検者は、瞳孔間距離の利用目的に応じて、結果表示部7に出力させる瞳孔間距離の表示間隔を切り換えできる。
【0016】
なお、第2出力モードは、例えば、瞳孔間距離の演算結果を0.1mm間隔で結果表示部7に出力する出力モードであってもよい。0.1mm間隔での表示は、0.5mm間隔より細かく、例えば、数値として扱いやすい。
【0017】
なお、出力モード切換部は、切換スイッチ(例えば、測定モード切換ボタン24)を備えてもよい。切換スイッチは、例えば、第1出力モードと、第2出力モードを切り換えるために検者によって操作されてもよい。この場合、出力モード切換部は、検者の操作に応じた切換スイッチからの出力に基づいて第1出力モードと、第2出力モードとを切り換えてもよい。
【0018】
以下、第2実施形態の概要を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一番号を付して説明する。第2実施形態の瞳孔間距離計1は、例えば、左右の被検眼Eの位置に基づいて被検者の瞳孔間距離を測定する。
【0019】
瞳孔間距離計1(
図1参照)は、例えば、表示部(例えば、ディスプレイ36)と、演算部と、表示制御部と、を主に備える(
図3、
図4参照)。なお、制御部70が、演算部、表示制御部等を兼ねるようにしてもよい。もちろん、別途、演算部、表示制御部がそれぞれ設けられる構成としてもよい。
【0020】
表示部は、例えば、被検眼Eの前方に配置され、左右の検査窓6を介して被検眼Eの左右それぞれに対して測定用マークMを表示させる。演算部は、測定用マークMの表示位置に基づいて、被検者の瞳孔間距離を演算する。
【0021】
表示制御部は、例えば、検者の操作に応じて操作部(例えば、移動ボタン22,23)から出力された操作信号に基づいて表示部の表示を制御してもよい。例えば、表示制御部は、第1表示制御を実行してもよい。第1表示制御とは、例えば、測定移動範囲(例えば、表示領域Ac)において、測定用マークMの表示位置を被検眼Eに対して所定のピッチで左右方向に移動させる表示制御であってもよい。
【0022】
なお、測定移動範囲とは、例えば、測定用マークMの移動範囲であり、予め設定された測定範囲から定められてもよい。予め設定された測定範囲とは、例えば、想定される瞳孔間距離の個人差を考慮して設定された瞳孔間距離の測定範囲である。例えば、瞳孔間距離の測定範囲は40〜90mmの範囲に予め設定されてもよい。もちろん、具体的な数値設定についてはこれに限定されず、適宜設定可能である。なお、測定移動範囲外(例えば、表示領域Ac−Al間、表示領域Ac−Ar間、表示領域Al,Arなど)において、測定用マークMが表示可能であってもよい。
【0023】
なお、表示制御部は、例えば、測定用マークが測定移動範囲の左右いずれかの限界に達した場合、第1表示制御とは異なる第2表示制御を実行する。なお、第2表示制御は、例えば、表示部の表示領域の一部または全部を点灯、点滅または消灯させる表示制御であってもよいし、測定用マークMを点滅あるいは消灯させる表示制御であってもよい。第2表示制御は、表示部を観察する検者が第1表示制御と区別できる表示制御であることが好ましい。
【0024】
以上のように、第2実施形態の瞳孔間距離計1は、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達した場合、表示部の表示を変化させる。これによって、検者は、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達したことを確認することができる。
【0025】
なお、操作部は、検者の操作に基づいて測定用マークMを被検眼Eに対して左方向に移動させるための左移動信号と、測定用マークMを被検眼Eに対して右方向に移動させるための右移動信号と、を出力してもよい。この場合、表示制御部は、測定用マークMが左側移動限界に達した場合と、測定用マークMが右側移動限界に達した場合のいずれかにおいて、第2表示制御を実行してもよい。例えば、検者は、操作部を操作して測定用マークMを左右いずれかに移動させる際、表示部の表示の変化を確認することによって、測定用マークMが測定移動範囲の左右いずれかの限界に達したことを確認することができる。
【0026】
なお、表示制御部は、測定用マークMが左側移動限界(例えば、セグメントSa)に達しているときに操作部から左移動信号が出力された場合、あるいは測定用マークMが右側移動限界(例えば、セグメントSl)に達しているときに操作部から右移動信号が出力された場合のいずれかの場合において、第2表示制御を実行してもよい。
【0027】
<実施例>
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例の瞳孔間距離計(以下、本距離計ともいう)1は、被検者の瞳孔間距離を測定するための装置である。本距離計1は、例えば、被検眼Eに照明光を照射し、角膜頂点に輝点を形成させる。この輝点は、照明光の虚像(角膜反射像)であり、角膜頂点の位置に形成される。本距離計1は、左右の角膜頂点に形成された輝点及び本距離計1の機械中心の位置に基づいて、被検者の瞳孔間距離を測定する。
【0028】
<外観>
図1、
図2を参照して、本距離計1の外観を説明する。
図1は、本実施例の瞳孔間距離計1を上方から見たときの概観を示す。
図2は、本実施例の瞳孔間距離計1を
図1のW方向から見たときの外観図である。
【0029】
本距離計1は、筺体2と、額当て3と、鼻当て4と、観察窓5と、検査窓6(
図2参照)と、結果表示部7を主に備える。筺体2には、電源ボタン21と、移動ボタン22と、移動ボタン23と、測定モード切換ボタン24と、作業距離変更ボタン25等が配置される。移動ボタン22は、例えば、左移動ボタン22Lと右移動ボタン22Rを備える。移動ボタン22は、被検者の右眼側に表示される後述の測定用マークMを左右に移動させるときに用いられる。移動ボタン23は、例えば、左移動ボタン23Lと右移動ボタン23Rを備える。移動ボタン23は、被検者の左眼側に表示される後述の測定用マークMを左右に移動させるときに用いられる。例えば、右移動ボタン22R,23Rが押されると、測定用マークMを検者の右側に移動させるための右移動信号が制御部70に出力される。例えば、左移動ボタン22L,23Lが押されると、測定用マークMを検者の左側に移動させるための左移動信号が制御部70に出力される。測定モード切換ボタン24は、測定モードを右眼測定モード、左眼測定モード、両眼測定モードのいずれかに切り換える場合に用いられる。右眼測定モードでは、被検者の右眼の瞳孔から瞳孔間距離計1の機械中心を通る中心軸O1までの距離(片眼瞳孔間距離)を測定する。左眼測定モードでは、被検者の左眼の瞳孔から瞳孔間距離計1の機械中心をとおる中心軸O1までの距離(片眼瞳孔間距離)を測定する。作業距離変更ボタン25は、瞳孔間距離の計算に用いられる作業距離を変更するために用いられる。筺体2の内部には、後述する測定光学系30が収納される。
【0030】
額当て3は、被検者の額に当接され、被検者と本距離計1との位置を固定するために用いられる。鼻当て4は、被検者の鼻に当接され、被検者の鼻と本距離計1の中心軸O1とを一致させるために用いられる。観察窓5は、検者が被検眼を観察するために用いられる。検査窓6は、後述する固視標を被検者に観察させるために用いられる。結果表示部7は、測定された瞳孔間距離などを表示するために用いられる。
【0031】
<測定光学系>
図3を参照して、本距離計1の測定光学系30を説明する。本距離計1の測定光学系30は、固視標照明用光源31と、固視標32と、ミラー33と、凸レンズ34と、接眼レンズ35と、ディスプレイ(表示手段)36と、を主に備える。
【0032】
固視標照明用光源31は、固視標32を背後から照明する。固視標照明用光源31は被検眼に向けて光を照射する照射手段として機能する。凸レンズ34の焦点距離及びその配置は、固視標が容易に見えるように考慮されている。
【0033】
接眼レンズ35は、検者が被検者の角膜上にできた輝点を観測する際に用いられる。接眼レンズ35は、角膜上にできた輝点の付近にピントが合うように考慮されている。ディスプレイ36は、後述する測定用マークMを形成(例えば、表示)させる。
【0034】
なお、本実施形態のディスプレイ36には、透過型ディスプレイの一種であるセグメント型液晶ディスプレイを用いている。セグメント型液晶ディスプレイの各セグメントは、例えば、透明金属コートを施されたガラスをフォトエッチングして製造される。ただし、セグメント型の液晶ディスプレイでなくともよく、例えば、マトリックス型の液晶ディスプレイを用いてもよい。セグメント型液晶ディスプレイについては、特許文献2に記載されている。
【0035】
ディスプレイ36は、固視標32と被検眼の角膜との間に配置される。ディスプレイ36は、例えば、被検者の角膜頂点から30mmの位置に配置されているが、これに限らない。ディスプレイ36から角膜頂点までの距離は、既知であって演算が容易であればよい。
【0036】
なお、本実施例において、固視標の呈示距離(作業距離)は固定されている。本距離計1では、まず固定された作業距離での瞳孔間距離を求め、この結果を利用して異なる作業距離での瞳孔間距離を計算で求める。したがって、本実施例では、瞳孔間距離計1によって測定された瞳孔間距離データを補正することによって、任意の作業距離での瞳孔間距離を測定することが可能である。なお、本実施例において、任意の作業距離は、予め設定された作業距離の中から作業距離変更ボタン25によって選択される。
【0037】
例えば、制御部70は、測定された瞳孔間距離と設定された作業距離のデータに基づいて、次式より設定された作業距離に対する瞳孔間距離を演算して求める。作業距離Dmは、本距離計1に固有であって既知である。作業距離Dmの時の瞳孔間距離をPDm、求める作業距離Dnでの瞳孔間距離をPDnとすると、PDnは以下の式で算出される。
【0039】
なお、VDは角膜頂点距離(例えば、日本人は12mmとして計算)、Rは眼球回旋半径(例えば、13mm)で測定精度の関係で定数として扱っても支障はない。Lは無限遠を見た状態の被検眼の角膜頂点とディスプレイ36との距離であり、設計上既知の値である。このようにして求められた瞳孔間距離は、例えば、予めメモリ72に記憶されていてもよい。なお、瞳孔間距離の計算方法は、特許文献1及び特許文献2に記載の方法を利用してもよい。
【0040】
前述のように、補正計算をすることで、任意の作業距離での瞳孔間距離を測定することができる。このため、本実施例では、被検者が固視標を融像しやすいように作業距離を近距離にしている。
【0041】
<制御系>
図4を参照して、本距離計1の制御系を説明する。本距離計1の制御系は、制御部70、メモリ72などを主に備える。制御部70は、結果表示部7と、電源ボタン21と、移動ボタン22と、移動ボタン23と、測定モード切換ボタン24と、作業距離変更ボタン25と、固視標照明用光源31と、ディスプレイ36、メモリ72等と接続される。
【0042】
図5は、本実施例に用いられるディスプレイ36を示す概略図である。ディスプレイ36は、例えば、被検者の上下方向に延びるライン状の測定用マークMを表示する。例えば、ディスプレイ36には、ライン状のセグメントが縦方向に多数配列されている。なお、
図5において説明の都合上、各セグメントの領域を点線で示している。
【0043】
ディスプレイ36は、各セグメントを偏光表示することによって測定用マークMを表示させる。例えば、あるセグメントの両端に電圧を掛けると、偏波面を曲げる液晶の作用がなくなり、その部分は、偏光板により光を透過することができず、暗いライン(測定用マークM)として見える。例えば、制御部70は、電圧を加えるセグメントの番号,位置等を制御し、セグメントの番号,位置等に基づいて、瞳孔間距離の算出および出力等を行ってもよい。なお、測定用マークMは必ずしもライン状である必要はなく、位置合せできるものであればよい。
【0044】
<操作方法および制御動作>
以下、本実施例の瞳孔間距離計1の操作方法を、瞳孔間距離計1の制御を交えて説明する。まず、検者は、電源ボタン21を操作し、瞳孔間距離計1の電源を入れる。電源が入ると、制御部70は、固視標照明標光源31を点灯させる。
【0045】
そして、測定モード切換ボタン24を操作し、両眼測定モード、右眼測定モード、左眼測定モードを切り換え、所望の測定モードに切り換える。各測定モードは、検者によって測定モード切換ボタン24が操作される度に切り換わる。以下の説明では、例えば、両眼測定モードが選択されたものとして説明する。
【0046】
次に検者は、作業距離変更ボタン25を押し、作業距離の設定を変更する。例えば、制御部70は、作業距離変更ボタン25が押される度に作業距離を30cm、40cm、50cm、60cm、1m、2m、無限遠など、作業距離を切り換える。制御部70は、選択された作業距離を結果表示部7に表示してもよい。前述のように、本距離計1で測定された瞳孔間距離のデータを補正計算することで、選択された作業距離における被検者の瞳孔間距離を間接的に測定する。なお、作業距離の設定変更は、測定後に行ってもよい。
【0047】
続いて、検者は、瞳孔間距離計1の額当て3を被検者の額に当てる。また、検者は、鼻当て4を被検者の鼻に当てる。そして、検者は、被検者に検査窓6を覗かせ、固視標を固視させる。
【0048】
固視標照明用光源31を出射し固視標32を照明した照明光は、ミラー33で反射され、凸レンズ34を介し、角膜に入射する。角膜表面は凸面鏡の役割をはたし、虚像を結ぶ。この虚像は角膜の曲率が小さいので、微小な輝点として見える。被検者が固視標32を固視していれば、被検者の両眼の視軸は作業距離点で交差し、角膜上の輝点は角膜頂点上に位置する。
【0049】
検者は、観察窓5を覗き、接眼レンズ35を介して被検眼に形成された輝点を観察する。そして、検者は、移動ボタン22と、移動ボタン23を操作し、角膜輝点Pに重なるように測定用マークMを移動させる。制御部70は、移動ボタン22と、移動ボタン23からの操作信号を受け付け、測定用マークMの表示位置を移動させる。このように、制御部70は、ディスプレイ36に形成された測定用マークMの形成位置を移動させる測定用マーク移動手段として機能する。
【0050】
例えば、
図5(a)に示す状態において、検者は右移動ボタン22Rを2回押す。制御部70は、右移動ボタン22Rからの操作信号を受け付ける。制御部70は、被検者の右眼側に表示された測定用マークMの表示位置を被検眼Eに対して右側に移動させる。例えば、制御部70は、右移動ボタン22Rが一度押されると、セグメントSeを消灯し、セグメントSfを点灯させる。制御部70は、右移動ボタン22Rがもう一度押されると、セグメントSfを消灯し、セグメントSgを点灯させる。
図5(a)に示す状態から、右移動ボタン22Rが2回押されることによって、セグメントSgの位置に形成された角膜輝点Pが、測定用マークMと重なるようになる。このように、検者は、移動ボタン22を操作して、角膜輝点Pと重なる位置に測定用マークMを表示させる。同様に、検者は、被検者の左眼に関しても角膜輝点Pの位置に測定用マークMを移動させる。
【0051】
制御部70は、測定用マークMの表示位置を被検眼の瞳孔の位置として検出し、瞳孔間距離の算出を行う。例えば、制御部70は、式(1)に基づいて、被検者の瞳孔間距離の算出を行う。なお、制御部70は、例えば、測定用マークMを表示しているセグメント及び作動距離変更ボタン25によって選択された作業距離に対応する距離をメモリ72から読み込んでもよい。そして、制御部70はメモリ72から読み込んだ距離を結果表示部7に表示させてもよい。
【0052】
<算出結果の表示方法>
以下、本実施例の瞳孔間距離計1における測定結果の表示方法について説明する。本実施例の瞳孔間距離計1は、例えば、0.5mmの表示ピッチ(表示間隔)で測定結果を結果表示部7に表示する。さらに、本実施例の瞳孔間距離計1は、0.5mmより細かい表示ピッチで測定結果を表示してもよい。これによって、眼鏡の調整をより細かく行える。したがって、カスタムレンズの作製、または眼鏡フレームのフィッティングが良好に行われ、眼鏡の性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0053】
さらに、例えば、複数の表示ピッチで瞳孔間距離の測定結果を表示してもよい。これによって、検者は、利用目的に応じた瞳孔間距離の測定結果を取得してもよい。
【0054】
例えば、本実施例の瞳孔間距離計1は、式(1)等によって算出された瞳孔間距離の測定結果の表示ピッチを切換できてもよい。例えば、瞳孔間距離計1は、測定結果を表示するときの表示ピッチを所定の表示ピッチの範囲から選択し、測定結果の表示ピッチを切り換えてもよい。さらに、瞳孔間距離計1は、予め設定された複数の表示ピッチの間で測定結果の表示ピッチを切換できてもよい。より詳細には、瞳孔間距離計1は、例えば0.1mm〜0.5mmの間から選択された表示ピッチに切り換えてもよいし、例えば0.1mmと0.5mmとで表示ピッチを切り換えてもよい。このように、表示ピッチを切換できることによって、利用条件に応じた測定結果を取得できることが好ましい。
【0055】
例えば、図示無き眼鏡レンズ加工装置に出力するための瞳孔間距離は、細かいピッチで出力されることが好ましい。一方、仮枠検査やレフラクターを用いて視力検査をするときに用いる瞳孔間距離は、細かいピッチで出力する必要がない場合がある。これは、仮枠やレフラクターを使用する場合は、例えば、被検眼に対する位置合わせの自由度が高いからである。
【0056】
このように、瞳孔間距離は、種々の目的に利用されるため、目的に応じた表示ピッチで出力されることが好ましい。
【0057】
本実施例の場合、表示ピッチ0.1mmで測定結果を表示する第1出力モードと、表示ピッチ0.5mmで測定結果を表示する第2出力モードの2種類の出力モードが用いられる。
図6(a)は、第1出力モードにおける結果表示部7の一例を示す。
図6(b)は、第2出力モードにおける結果表示部7の一例を示す。本実施例の瞳孔間距離計1は、例えば、測定モード切換ボタン24を長押しすることによって、第1出力モードと第2出力モードとを切り換えてもよい。例えば、制御部70は、測定モード切換ボタン24が長押しされることによって出力される出力モード切換信号を受け取り、結果表示部7の出力モードを切り換えてもよい。
【0058】
<換算方法>
以下、選択された表示ピッチに適するように瞳孔間距離の算出結果を換算する方法について説明する。
図7は、算出された片眼の瞳孔間距離の数値の一例を示すものである。
【0059】
例えば、
図7(a)は、表示ピッチ0.1mmの場合に、片眼の瞳孔間距離の算出結果を換算したときの換算結果を示す。
図7(b)は、表示ピッチ0.5mmの場合に、片眼の瞳孔間距離の算出結果を換算したときの換算結果を示す。
【0060】
本実施例では、例えば、瞳孔間距離の算出結果を丸めることによって換算を行う。なお、丸めるとは、与えられた数値を、ある一定の丸め幅の整数倍がつくる系列の中から選んだ数値に置き換えることである。この置き換えた数値を丸めた数値と呼ぶ(日本工業規格JISZ8401「数値の丸め方」参照)。
【0061】
図7(a)に示すように、例えば、瞳孔間距離の算出結果が32.223、32.281、32.315であったとする。これらの算出結果を表示ピッチ0.1mmで表示するとき、制御部70は、例えば、丸め幅0.1mmで数値を丸める。例えば、32.223を丸め幅0.1mmで丸める場合、32.223は、32.2と32.3の間の数値である。さらに、32.223は、32.2と32.3の中間の値である32.25より小さい値である。従って、32.223は、32.3よりも32.2に近い数値であるため、32.2に丸められる。同様に、32.281は、32.2と32.3の中間の値である32.25より大きい値であるため、32.3に丸められる。同様に、32.315は、32.2と32.3の中間の値である32.25より大きい値であるため、32.3に丸められる。
【0062】
なお、上記の算出結果を表示ピッチ0.5mmで表示するとき、制御部70は、例えば、丸め幅0.5mmで数値を丸める。例えば、32.223を丸め幅0.5mmで丸める場合、32.223は、32.0と32.5の間の数値である。さらに、32.223は、32.0と32.5の中間の値である32.25より小さい値である。従って、32.223は、32.5よりも32.0に近い数値であるため、32.0に丸められる。同様に、32.281は、32.0と32.5の中間の値である32.25より大きい値であるため、32.5に丸められる。同様に、32.315は、32.0と32.5の中間の値である32.25より大きい値であるため、32.5に丸められる。
【0063】
以上のように、瞳孔間距離の算出結果を複数の方法で換算することによって、各表示ピッチに適した瞳孔間距離を取得することができる。これによって、本実施例の瞳孔間距離計1は、検者の所望する表示ピッチで瞳孔間距離を出力することができる。なお、丸め幅は、0.5及び0.1に限らず、他の値を用いてもよいが、0.5以下であることが好ましい。
【0064】
なお、以上の説明において、測定結果の表示ピッチを切り換えて表示できるとしたが、これに限らない。例えば、測定結果を複数の表示ピッチで同時に結果表示部7に表示してもよい。この場合、検者は、目的に適した表示ピッチで出力された数値だけを読み取ってもよい。
【0065】
<測定用マークの移動限界表示>
なお、本実施例の瞳孔間距離計1は、測定用マークMが測定移動範囲(表示領域Acに相当)の限界に達したときに、ディスプレイ36の表示を変更してもよい。これによって、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達したことを検者に報知してもよい。なお、測定移動範囲とは、例えば、予め設定された測定範囲から求まる測定用マークMの移動範囲のことである。したがって、測定移動範囲の限界とは、瞳孔間距離計1によって測定可能な瞳孔間距離の最大値、あるいは最小値が算出されるときに測定用マークMが表示される位置である。例えば、本実施例において、測定用マークMがセグメントSa及びセグメントSlによって形成されている場合、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達している。
【0066】
以下、本実施例において、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達したときの表示について説明する。本実施例の瞳孔間距離計1は、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達した場合、ディスプレイ36の表示制御を第1表示制御から第2表示制御に切り換える。第1表示制御とは、例えば、左右の被検眼に対して測定用マークMを表示し、移動ボタン22,23からの操作信号に基づいて、測定用マークMを左右に移動させる通常時の表示制御である。第2表示制御とは、第1表示制御とは異なる表示制御であり、測定移動範囲の限界が識別できる表示制御である。例えば、第2表示制御は、表示領域Acの両側の表示領域Ar,Alを点滅させる表示制御である。なお、第2表示制御は上記の表示制御に限らず、種々の方法が考えられる(詳しくは後述する)。
【0067】
図8(a)は、測定用マークMが測定移動範囲の右側の限界に達している場合を示すものである。この状態で、検者が右移動ボタン22Rを押したとする。右移動ボタン22Rの操作によって出力された右移動信号は制御部70に入力される。
【0068】
制御部70は、測定用マークMが測定移動範囲の右側の限界に達している状態で右移動信号を受け付けると、表示領域Ar,Alを点滅させる(
図8(b)参照)。
【0069】
このように、制御部70は、測定用マークMが測定移動範囲の左右いずれかの限界に達している場合、測定移動範囲を超える方向の操作信号を受け取ると、ディスプレイ36の表示制御を第1表示制御から第2表示制御に変更してもよい。ディスプレイ36の表示が切り替わることによって、検者は、測定用マークMを右方向または左方向にこれ以上動かせないことを確認できる。
【0070】
以上のような処理について、
図9に示す制御フローチャートについて説明する。
図9は、測定用マークMの移動限界表示に関する制御フローチャートの一例である。
図9のステップ1において、制御部70は、移動ボタン22,23から出力される操作信号(移動信号)を取得する。制御部70は、操作信号を取得するとステップ2に進む。
【0071】
ステップ2において、制御部70は、例えば、取得された操作信号が右移動信号であった場合、ステップ3に進み、操作信号が左移動信号であった場合、ステップ4に進む。なお、制御部70は、左移動ボタン22L,23Lが押された場合、操作信号が左移動信号であると判別し、右移動ボタン22R,23Rが押された場合、操作信号が右移動信号であると判別してもよい。
【0072】
ステップ3において、制御部70は、例えば、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の右側の限界であるか判別する。例えば、本実施例において、制御部70は、測定用マークMをセグメントSlに表示している場合、測定用マークMが測定移動範囲の右側の限界であると判別する。制御部70は、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の右側の限界であった場合はステップ5に進み、限界でない場合はステップ6に進む。
【0073】
ステップ4において、制御部70は、例えば、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の左側の限界であるか判別する。例えば、本実施例において、制御部70は、測定用マークMをセグメントSaに表示している場合、測定用マークMが測定移動範囲の左側の限界であると判別する。制御部70は、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の左側の限界であった場合はステップ5に進み、限界でない場合はステップ7に進む。
【0074】
ステップ5において、制御部70は、第2表示制御を行う。例えば、制御部70は、ディスプレイ36の表示領域エリアAl,Arを点滅させる。これによって、検者は測定用マークMが右の移動限界に達していることを確認できる。制御部70は、第2表示制御を行うと本処理を終了する。
【0075】
ステップ6において、制御部70は、第1表示制御を行う。例えば、制御部70は、測定用マークMの表示位置を右に移動させ、本処理を終了する。
【0076】
ステップ7において、制御部70は、第1表示制御を行う。例えば、制御部70は、測定用マークMの表示位置を左に移動させ、本処理を終了する。
【0077】
以上のように、本実施例の瞳孔間距離計1は、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の限界に達している場合に、ディスプレイ36の表示制御を変更する。これによって、検者は、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の限界に達したことを確認できる。
【0078】
例えば、従来のように、ノブなどの操作部材の移動をリニアポテンショメータ等によって検出する場合、測定用マークMの移動限界は操作部材の物理的な操作範囲、測定用マークMの移動限界を確認することができる。しかしながら、本実施例のように、移動ボタン22,23によって測定用マークMの移動指示を受け付ける場合、検者は測定用マークMが移動限界に達しているかどうか確認しにくい。したがって、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達しているにも関わらず、検者によって移動ボタン22,23が押される可能性があった。また、移動限界によって測定用マークMが移動しないことを瞳孔間距離計1の故障だと誤解される可能性があった。本実施例の瞳孔間距離計1は、測定用マークMの表示位置が測定移動範囲の限界に達したことを確認できるので、上記のような誤操作を少なくできる。なお、
図9の制御フローは一例であり、別の制御フローによって制御してもよい。
【0079】
なお、制御部70は、移動ボタン22,23からの操作信号が無い場合であっても、測定用マークMが測定移動範囲の限界に達したときに、ディスプレイ36の表示制御を変更してもよい。
【0080】
なお、以上の説明において、第2表示制御は、例えば、表示領域Al,Arを点滅させるものとしたが、これに限らない。例えば、第2表示制御は、測定用マークMの移動位置が測定移動範囲の限界に達したことを識別できる表示制御であればよい。例えば、第2表示制御は、表示領域Al,Arを点灯する制御でもよい。例えば、第2表示制御は、表示領域Al,Arの一方を点滅(または点灯、消灯)する制御でもよい。例えば、第2表示制御は、ディスプレイ36の一部の領域を点滅(または点灯、消灯)する制御でもよいし、ディスプレイ36の全ての領域を点滅(または点灯、消灯)する制御でもよい。例えば、第2表示制御は、測定用マークMを点滅(あるいは消灯)する制御でもよい。
【0081】
なお、本実施例では、測定用マークMを移動させる場合、移動ボタン22,22等を操作するものとしたが、これに限らない。例えば、図示無きリニアポテンショメータと連動するノブを操作することによって、測定用マークMを移動させてもよい。このような構成は、特許文献1及び特許文献2に説明されている。