特許第6554788号(P6554788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554788
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/52 C
   H01L21/52 F
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-244783(P2014-244783)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-111078(P2016-111078A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 一永
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−297860(JP,A)
【文献】 特開2008−013383(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/034019(WO,A1)
【文献】 特開2004−111607(JP,A)
【文献】 米国特許第05409543(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材とを含む積層体を、減圧炉内に投入する準備工程と、
前記準備工程後、前記減圧炉内を真空排気する一次減圧工程と、
前記一次減圧工程後、前記減圧炉内を1〜500Paの水素雰囲気にして、前記減圧炉外に前記減圧炉との間に開閉可能な隔壁を介して設置された金属線を加熱して、あるいは、前記減圧炉内に、前記搬送ステージ、冷却板及び熱板との間に開閉可能な隔壁を介して設置された金属線を加熱して、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程と、
前記熱線式加熱工程後、前記金属線を前記1〜500Paの水素雰囲気下に保持したまま、前記減圧炉内雰囲気から前記隔壁により遮蔽する遮蔽工程と、
前記遮蔽工程後、前記減圧炉内を101.3×10Paより大きい圧力の水素雰囲気にして、接合温度まで加熱して前記はんだ材を溶融する加熱工程と、
前記加熱工程後、接合温度に保持したまま前記減圧炉内を再び真空雰囲気にしてはんだ融液中の気泡を除去する気泡除去工程と
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱線式加熱工程の前に、前記金属線が前記1〜500Paの水素雰囲気下に保持され、前記減圧炉内雰囲気から遮蔽されている、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱線式加熱工程において、金属線を1500℃以上であって2000℃以下に加熱する、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記気泡除去工程において、前記隔壁を開いて前記金属線を加熱し、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程を1回以上実施する、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記熱線式加熱工程において、前記少なくとも1つの被接合部材及び/または前記少なくとも1つのはんだ材の酸化物を、はんだ溶融温度以下で還元する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びこれに用いられる接合組立装置に関する。本発明は、特には、従来よりも高品質で信頼性の高いはんだ接合層を備える半導体装置を製造することができる半導体装置の製造方法及びかかる方法に用いられる、メンテナンス性に優れた接合組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力用半導体装置を製造する方法として、主に次の3つの方法が実施されている。第一の方法では、まず還元雰囲気の連続炉(トンネル炉)を用いて、予備はんだをおこない、シリコンチップの裏面電極上にはんだを設ける。つづいて、そのはんだを介して絶縁基板にシリコンチップをはんだ付けする。その後、ワイヤボンディングをおこなう。そして、絶縁基板上にシリコンチップをはんだ付けしたものを、大気中でフラックスを用いて、銅などでできた金属ベースにはんだ付けする。第二の方法では、還元雰囲気の連続炉を用いて、シリコンチップと絶縁基板とをはんだ付けする。その後、ワイヤボンディングをおこなう。そして、絶縁基板上にシリコンチップをはんだ付けしたものを、還元雰囲気の連続炉を用いて金属ベースにはんだ付けする。第三の方法では、不活性雰囲気の減圧炉を用いて、シリコンチップと絶縁基板と金属ベースとをフラックス入りはんだを介してはんだ付けする。その後、ワイヤボンディングをおこなう。
【0003】
ところで、パワーモジュールなどの電力用半導体装置では、大電流が流れるため、シリコンチップの発熱量は数十〜数千ワットと非常に大きい。そのため、電力用半導体装置には、優れた熱放散特性が要求される。しかし、シリコンチップと絶縁基板との間のはんだ接合層や、絶縁基板と金属ベースとの間のはんだ接合層に気泡(ボイド)が存在すると、これらの気泡は熱放散を妨げるため、熱放散特性の著しい低下をもたらし、半導体装置の破壊を招く原因となる。したがって、はんだ接合層中に気泡をできるだけ存在させないことが重要である。
【0004】
はんだ接合層中に気泡が発生する原因として、積層体を構成する金属部材表面の残留酸化物及びはんだ材料中の炭酸ガスなどの溶存ガスがはんだ溶融時に気泡として残ることが挙げられる。また、はんだ付け時に、はんだや絶縁基板などの被接合部材の表面に吸着した吸着物、または酸化スズや酸化銅や酸化ニッケルが還元され、それによって生じたHOがガス化して気泡として残ることも原因として挙げられる。また、はんだ付け時に使用するフラックスの気化により発生するガスやフラックスそのものがはんだ接合層中に残留することも原因の一つである。
【0005】
したがって、はんだ接合層中の気泡を低減させるため、一般に、被接合部材表面の酸化を防止してその表面を清浄に保ったり、溶存ガスのないはんだ材料や濡れ性のよいはんだ材料を使用したりするなどの対策が講じられている。また、はんだ付けプロファイルを最適化したり、被接合部材の変形を制御したり、減圧雰囲気ではんだ付けをおこなうなどの対策が講じられている。
【0006】
はんだ付け方法に関する提案も多数なされている。例えば、処理容器と、真空排気と高純度ガス導入とにより低酸素濃度雰囲気を生成することによって処理容器内の雰囲気とその圧力とを制御する手段と、処理容器内に設けられた加熱手段とを備えたはんだ付け装置を用いて、回路基板を加熱手段により加熱し、処理容器内の雰囲気の圧力を制御することにより、はんだ接続を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、金属ベース、はんだ板、絶縁基板、はんだ板およびシリコンチップからなる積層体を減圧炉内に設置し、炉内を真空排気後、炉内を正圧の水素雰囲気にして積層体の各部材の表面を還元した後、はんだを加熱溶融させることを特徴とする半導体装置の製造方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
他にも、水素と窒素との混合ガス雰囲気下で加圧した状態ではんだの溶融温度以上の高溶融温度まで加熱し、次いで真空まで減圧し、窒素ガス雰囲気下で再度加圧した後に、はんだの溶融温度未満にまで温度を低下させてはんだを凝固させることによるはんだ付け方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
さらには、ホットワイヤー法のための反応装置を用い、タングステン線からなる触媒体でガスを分解することにより、水素ラジカル等の活性種を生成し、シリコンなどの基材表面汚染物を還元除去することも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−242069号公報
【特許文献2】特開2003−297860号公報
【特許文献3】特開2009−253157号公報
【特許文献4】特開2010−50252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、例えば、特許文献1の方法では、搭載部品の固定に液体が用いられるが、はんだ付け装置への投入前に別設備にて前処理(液体の塗布)を行う必要があり、作業工程の増加、及び作業時間の発生といった不利益がある。また、特許文献2の方法では、およそ300℃以上で水素の還元能力が効果的に発揮されるが、それ以下の温度域では被接合部材及びはんだの還元が不足し、接合性が悪化してしまう場合がある。水素ガスの還元能力を向上させるため、加熱温度をさらに高温化する手法も存在するが、シリコンチップの熱損傷が懸念される。
【0012】
特許文献3に開示された発明でも、300℃以上の高温条件とする必要があるのに加え、水素ガスの還元能力で処理しきれない被接合部材やはんだの酸化物を接合部に残存し、接合性が悪化してしまう懸念があり、十分なボイド発生の抑制効果を得ることができない。
【0013】
また、特許文献4に開示された方法は、主にシリコン表面に窒化珪素膜を形成することを開示しており、高濃度の水素ラジカルの発生はむしろ不利益になることが記載されているに過ぎず、接合における水素ラジカルの作用について何ら開示するものではない。
【0014】
従来技術及び特許文献1〜4に開示された技術では不十分な点を改良し、さらに高品質で信頼性の高いはんだ接合層を得ることができる半導体装置の製造方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、一実施形態によれば、半導体装置の製造方法であって、少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材とを含む積層体を、減圧炉内に投入する準備工程と、前記準備工程後、前記減圧炉内を真空排気する一次減圧工程と、前記一次減圧工程後、前記減圧炉内を低圧の水素雰囲気にして、前記減圧炉外に前記減圧炉との間に開閉可能な隔壁を介して設置された金属線を加熱して、あるいは、前記減圧炉内に、前記搬送ステージ、冷却板及び熱板との間に開閉可能な隔壁を介して設置された金属線を加熱して、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程と、前記熱線式加熱工程後、前記金属線を低圧雰囲気下に保持したまま、前記減圧炉内雰囲気から前記隔壁により遮蔽する遮蔽工程と、前記遮蔽工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして、接合温度まで加熱して前記はんだ材を溶融する加熱工程と、前記加熱工程後、接合温度に保持したまま前記減圧炉内を再び真空雰囲気にしてはんだ融液中の気泡を除去する気泡除去工程とを含む。
【0016】
前記半導体装置の製造方法において、前記熱線式加熱工程の前に、前記金属線が低圧雰囲気下に保持され、前記減圧炉内雰囲気から遮蔽されていることが好ましい。
【0017】
前記半導体装置の製造方法の、前記熱線式加熱工程において、金属線を1500℃以上であって2000℃以下に加熱することが好ましい。
【0018】
前記半導体装置の製造方法の、前記熱線式加熱工程における前記低圧の水素雰囲気が、1〜500Paの水素雰囲気であることが好ましい。
【0019】
前記半導体装置の製造方法の、前記気泡除去工程において、前記隔壁を開いて前記金属線を加熱し、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程を1回以上実施することが好ましい。
【0020】
前記半導体装置の製造方法の、前記熱線式加熱工程において、前記少なくとも1つの被接合部材及び/または前記少なくとも1つのはんだ材の酸化物を、はんだ溶融温度以下で還元することが好ましい。
【0021】
本発明は、また別の実施形態によれば、接合組立装置であって、少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材と備えてなる積層体を支持する搬送ステージであって、水平方向及び鉛直方向に移動可能な搬送ステージと、水平方向に離間されて設置される冷却板及び熱板であって、前記搬送ステージを介して前記積層体を冷却可能な冷却板と、前記搬送ステージを介して前記積層体を加熱可能な熱板と、水素分子ガス導入管と、不活性ガス導入管と、排気口とを減圧炉内に備えるとともに、前記減圧炉外に前記減圧炉との間に開閉可能な隔壁を介して設けられた、あるいは、前記減圧炉内に、前記搬送ステージ、冷却板及び熱板との間に開閉可能な隔壁を介して設けられた、少なくとも金属線及び活性種生成ガス導入管を備える活性種発生装置と、前記金属線を加熱する加熱手段とを備えてなる。
【0022】
前記接合組立装置において、前記活性種発生装置が、前記減圧炉外に、取り外し可能に設けられることが好ましい。
【0023】
前記接合組立装置において、前記開閉可能な隔壁が、シャッター機構であることが好ましい。
【0024】
前記接合組立装置において、前記活性種発生装置が、前記減圧炉外の側壁に設けられることが好ましい。
【0025】
前記接合組立装置において、前記金属線が、タングステン、モリブデン、白金、ニッケル、レニウムから選択される金属、あるいはそれらの一以上からなる合金であり、1000℃以上に加熱することにより、活性種生成ガスを加熱分解して活性種を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、金属線の加熱により生じる活性種の高い酸化物還元効果により、積層体の接合特性を向上させつつ、開閉可能な隔壁により、金属線の雰囲気を制御して、金属線の酸化劣化を防止し、製品特性の向上と製造方法における効率性を両立することができる。さらには、開閉可能な隔壁の存在により、金属線由来の金属粒子が、積層体に付着することを防止することができ、得られる半導体装置の接合不良などを防止することが可能になり、また、金属線の加熱による減圧炉内温度への影響が少ないという利点もある。本発明の方法によれば、はんだ中の気泡が除去され、また異種材料の接合により生じる金属ベースの反りが速やかに除去されるため、開始後、十数分以内に、従来よりも高品質で信頼性の高いはんだ接合層を有し、熱放散性に優れた半導体装置を得ることができる。従来に比べて、低い温度域、例えば、300℃以下で還元効果を有し、かつ水素ガスや不活性ガスの使用量が少なくて済み、またフラックスを使用する必要がない。そのため、処理時間の短縮と高い接合品質、運転コストの低減効果や、環境負荷の低減といった効果を得ることができ、量産される複数の製品間でのばらつきをなくし、品質を安定化させることが可能になる。
【0027】
また、本発明の一実施形態に係る接合組立装置によれば、金属線を減圧炉内雰囲気から遮断した雰囲気に保持することができるため、金属線の酸化劣化による寿命低下を防止し、また、金属線由来の金属粒子が、被接合部材及び減圧炉内を汚染することを防止することができる。そして、金属線を内蔵する活性種発生装置のメンテナンスサイクルを大幅に低減することができる。さらには、活性種発生装置を、減圧炉外に取り外し可能に構成した実施形態においては、活性種発生装置を、減圧炉とは独立して別個に取り扱うことが可能となり、減圧炉を停止することなく、金属線の交換や装置内の洗浄などのメンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる接合組立装置を概略的に説明する図である。
図2図2は、本発明の一実施形態にかかる接合組立装置において、はんだ付けをおこなう、被接合部材及びはんだからなる積層体の構成を模式的に示した図である。
図3図3は、本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法における、温度プロファイル、チャンバー内雰囲気および圧力、金属線通電、シャッター開、並びに処理動作の一例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0030】
本発明の第一実施形態として、減圧炉外もしくは減圧炉内に開閉可能な隔壁を介して設けられた金属線を加熱する、熱線式加熱工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法において好ましく用いられる接合組立装置について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1に本発明の一実施形態に係る接合組立装置の概略図を示す。接合組立装置は、減圧炉11内に、搬送ステージ13と、冷却板15と、熱板16と、還元性ガス導入管17と、不活性ガス導入管18とを主として備え、減圧炉11外に、前記減圧炉11との間に開閉可能な隔壁303を介して設けられた、少なくとも金属線201及び活性種生成ガス導入管202を備える活性種発生装置20をさらに備えてなる。本明細書において、還元性ガスとは、減圧下で、半導体装置を構成するはんだ及び被接合部材に対して高い還元性を有するガスをいう。活性種生成ガスとは、金属線201により接触分解されて、高い還元性を有する、不対電子を有する元素を生成し得るガスをいい、例えば、アンモニア、四フッ化炭素、六フッ化硫黄などのハロゲン含有ガス等が挙げられるが、これらには限定されない。還元性ガス及び活性種生成ガスは、特定のガスには限定されないが、以下の本実施形態の説明においては、還元性ガス及び活性種生成ガスの一例として、水素分子ガスを用いて説明し、また活性種生成装置の一例として、原子状水素発生装置について説明する。なお、還元性ガス及び活性種生成ガスは典型的には同一であるが、後述する半導体装置の製造方法における温度、圧力条件下で、両者が反応することがなければ、還元性ガス及び活性種生成ガスが異なっていてもよい。
【0032】
減圧炉11は、炉本体110およびこれにパッキン112を介して被せられ、炉内部を気密状態に保つ蓋体111から主として構成される。減圧炉11には、炉内に水素分子ガスaを供給するための水素分子ガス導入管17、炉内に窒素ガスbなどの不活性ガスを供給するための不活性ガス導入管18、および排気口113が設けられている。炉本体110の底部には、熱板16と冷却板15とが、離間して設置されている。搬送ステージ13は、搬送レール14により、熱板16と冷却板15との間を行き来することができるように構成されている。搬送ステージ13はまた、図示しない別の機構により、鉛直方向上下にも可動に構成される。
【0033】
減圧炉11の蓋体111の一部を構成する側壁部には、原子状水素発生装置20との接続口となる開口部114が設けられる。そして、この開口部114に対し、開閉可能な隔壁となるシャッター機構30が、減圧炉11の内側から取り付けられる。シャッター機構30は、駆動機構301と、シャッター303と、これらを繋ぐシャフト302とから実質的に構成される。そして、駆動機構301によりシャッター303を上下に移動することで、開口部114を覆う隔壁の開閉が可能になる。図示する「シャッター開」状態では、開口部114が露出し、炉外にある原子状水素発生装置20との間で、気体を含む物質の連通が可能になる。「シャッター閉」状態では、シャッター303が、開口部114を覆い、減圧炉11と原子状水素発生装置20との間が遮断される。なお、本発明において開閉可能な隔壁は、上下に駆動するシャッター機構には限定されず、原子状水素の流路を実質的に狭めることのない種々の態様が可能である。
【0034】
原子状水素発生装置20は、一端に開口部をもつ略円筒形の本体内に、金属線201を収容し、本体に、水素分子ガス導入管202と、電源接続端子203と、のぞき窓204と、大気開放バルブ205とを備える。開口部には、フランジが設けられ、減圧炉11との接続部206となる。
【0035】
水素分子ガス導入管202は、原子状水素発生装置20本体の、開口部と異なる一端に設けられ、水素分子ガス導入管202から、減圧炉11に向かう気体の流路が形成されるように構成される。そして、図示する実施形態においては、気体の流れと略平行に、2本のコイル状の金属線201が取り付けられている。金属線201は、その表面が水素分子ガス導入管202から導入される水素分子ガスに十分に接触可能な態様で取り付けられていればよく、また、金属線201は熱や酸化により劣化しうるため、金属線201は交換可能に原子状水素発生装置20に取り付けられていることが好ましい。
【0036】
金属線201は、電源接続端子203を介して接続した、直流もしくは交流電源装置40により、1000℃以上、好ましくは1500℃以上、さらに好ましくは1600℃以上であって、好ましくは2000℃以下に加熱することが可能な線状の金属部材であって、水素分子ガスの接触分解反応により、還元性の原子状水素(水素原子)を生成することができるものである。金属線201は、複数回繰り返して使用することが可能であり、例えば、約1000回程度繰り返して使用することが可能であるが、繰り返し使用回数は特定の回数には限定されるものではない。本明細書において、水素分子ガスとは、気体状の水素分子をいい、金属線の加熱により生成される原子状水素と区別して用いられる。金属線を構成する材料は、例えば、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、白金、トリウム、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム、パラジウム、ニッケル、レニウム、あるいはこれらの一以上を主成分とする合金であってよく、タングステンを用いることが好ましいが、上記機能を有するものであれば、特定の金属には限定されない。金属線201は、直径が、例えば、0.1mm〜1.0mm、好ましくは、0.3mm〜0.8mmのものを使用することができるが、このような直径には限定されない。金属線201は、単線であってもよく、2以上の金属線を組み合わせて複線にしたものであってよい。
【0037】
なお、図示する金属線201の配置は、一例であり、特定の態様には限定されない。単線もしくは複線とした金属線201を、1本、あるいは3本以上設けても良く、気体の流路に垂直に配置してもよい。またこのような、単線もしくは複線にした金属線201を、例えば、ジグザグ形状(Z字形状、U字形状)、らせん状(渦巻き状)、網目状、格子状、またはこれらを適宜、組み合わせた形状としたものであってもよい。金属線201の表面積が大きくなり、かつ、水素分子ガスと効率的に接触分解反応を生じさせる形態であればよい。水素分子ガスと金属線201との接触面積を大きくすることで、より多くの還元性の原子状水素を生成させるためである。
【0038】
原子状水素発生装置20の内部壁面は、耐圧性、耐熱性、かつ絶縁性を確保するように構成する。原子状水素発生装置20の内部は、通常、減圧状態に保持されるためである。また、金属線201の周囲は、非常に高温となり、かつ電流・電圧が印加されるためである。
【0039】
のぞき窓204は、金属線の通電状態、及び金属線の径の減少や断線といった酸化劣化状態等を原子状水素発生装置20の外部から監視するために任意選択的に設けられていてもよい。また、大気開放バルブ205は、減圧状態にある原子状水素発生装置20の圧力を常圧に戻すために設けられる。
【0040】
原子状水素発生装置20は、接続部206で、減圧炉11との間で気密状態を保持して接続することができ、また、簡単な機構により取り外すことができる。特に、減圧炉11の開口部114をシャッター機構30により閉鎖した状態においては、減圧炉11の内部に影響を及ぼすことなく原子状水素発生装置20を取り外すことができる。したがって、減圧炉11を停止することなく、原子状水素発生装置20のメンテナンス、例えば、金属線の交換や装置内の洗浄を行うことが可能になる。
【0041】
原子状水素発生装置20の形状や内部構造、金属線201の位置、減圧炉11と接続する開口部の位置、並びに、減圧炉11に対する取り付けの態様は図示する実施形態には限定されないが、金属線に対し、重力方向下方に、減圧炉11と接続する開口部が存在することは好ましくない。熱せられて蒸発した金属線の一部が、固体化して微粒子となり、減圧炉に拡散して被接合体である積層体に付着することを防止するためである。金属微粒子の積層体への付着は、積層体の絶縁特性の低下をもたらすおそれがあり、特に、金属線の重力方向下方に、遮るものがなく積層体が存在すると、金属微粒子が積層体に付着しやすい。本実施形態においては、金属線201が、減圧炉11から少なくとも隔壁を介する程度の距離に配置され、金属線201の重力方向下方に積層体が存在しないため、金属線由来の金属微粒子の飛散及び積層体への付着を、大幅に低減できる。原子状水素発生装置20はまた、金属線で生成した原子状水素が、減圧炉11に到達するまでの流路に、障壁が存在しない構造、例えば、狭窄部や屈曲部が少ない構造であることが好ましく、図示するように金属線201の位置から、減圧炉に達するまでの気体の流路の断面積が実質的に変化せず、かつ流路が直線状であることがより好ましい。原子状水素が衝突の衝撃により減少し、還元対象物にまで届かないことを防止するためである。
【0042】
原子状水素発生装置20は、図示するように、減圧炉11の側壁であって、熱板16に面した蓋体111を構成する側壁の外部に取り外し可能に設けられることが好ましい。減圧炉11内に流入する原子状水素は、排気口113に向かって流れるため、原子状水素の流路であって、シャッター302の近傍に積層体10が位置するように、排気口50及び積層体10との相対的な位置関係により、原子状水素発生装置20の設置位置を決定し、減圧炉11の開口部114を設けることができる。原子状水素発生装置のほかの取り付け態様については、後述する。
【0043】
冷却板15は、少なくとも冷却面を有し、冷却温度及び速度を調節可能な任意の冷却機構を備えるものであれば、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。冷却板15は、一例として、炉外の、冷却板15の冷却水dを循環させるチラー60に接続されていてもよい。この場合、炉本体110の、好ましくは底部であって、冷却板15の下方には、冷却水の循環のための図示しない出入口が設けられていてもよい。なお、冷却板15は、他の機構で積層体を冷却するものであってもよい。また、熱板16は、加熱面を少なくとも有し、加熱温度及び速度を調節可能な任意の加熱機構を備えるものであれば、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。例えば、熱板16としては、搬送ステージ13を介して、積層体10を、常温〜400℃の範囲で加熱可能なヒーター等であってよい。
【0044】
冷却板15と、熱板16とは、減圧炉11の底部に、離間して設置される。冷却板15と、熱板16とは、例えば、10mm〜50mm程度の距離をおいて、設置されることが好ましい。また、冷却板15の冷却面と、熱板16の加熱面が、減圧炉11内の底部から、略同一の高さに位置するように設置されることが好ましい。また、冷却板15の冷却面と、熱板16の加熱面は、略同一の面積を有することが好ましい。なお、図示する実施形態では、冷却板15、熱板16は、それぞれ、減圧炉11内の底部から離間して設置されている。冷却板15、熱板16から炉本体への熱移動を避け、効率の良い冷却もしくは加熱を行うためである。しかしながら、このような設置態様に替えて、好適な断熱材を配置して、冷却板15、熱板16を減圧炉11内の底部に接して設置することもできる。
【0045】
図示しない任意選択的な構成として、冷却板15と、熱板16との間に、断熱壁として機能する仕切り板を設けてもよい。また、熱板16の外周に断熱壁を設けてもよい。かかる構成により、熱板16と冷却板15とが近接した領域における温度の不均一部分をなくすことができる。かかる構成により、保温効果を奏することができる。
【0046】
搬送ステージ13は、積層体10を保持し、積層体10の移動手段として機能する。搬送ステージ13及びその駆動機構は、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。搬送ステージ13は、熱板16と冷却板15との間を、搬送レール14により、水平方向に移動可能に構成される。すなわち、図1における左右方向に移動することができ、また、図示しない機構により鉛直方向にも移動可能に構成され、位置A、B、C、D間を移動することができる。搬送ステージ13の鉛直方向の可動範囲は、0mm〜50mmとすることが好ましい。搬送ステージ13は、その上に着脱可能な均熱板(図示せず)を備えることが好ましい。均熱板は、接合対象となる積層体10を保持することができ、均熱化に供するものであればよく、例えば、2〜3mmのカーボン板からなる均熱板を使用することができる。
【0047】
水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18は、減圧炉本体111に取り付けられる。水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18は、減圧炉外の図示しない水素分子ガス供給源および不活性ガス供給源にそれぞれ接続されて、減圧炉11内に、水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18を供給する。なお、水素分子ガス導入管17は、水素分子ガスのみならず、前述したその他の活性種生成ガスを、単独であるいは水素分子ガスとともに導入する機能を果たす場合もある。あるいは、他の活性種生成ガスを減圧炉11内に導入するための、図示しないさらに別の管が設けられていてもよい。また、不活性ガス導入管18は、典型的には窒素ガス導入管であるが、その他の不活性ガスを導入するものであってもよい。
【0048】
水素分子ガス導入管17の、炉内への噴出口は、水素分子ガスが熱板16により熱せられて、積層体10を構成するはんだを還元し、排気口113から炉外に排出することが可能な位置とすることできる。好ましくは、冷却板15よりは熱板16に近い領域、すなわち、図1における紙面右側領域であれば、側壁の下方、中段、上方、天井部のいずれであってもよい。一方、不活性ガス導入管18は、減圧炉11内に、窒素ガスなどの不活性ガスを略均一に導入して、炉内雰囲気を置換することができるように構成されていればよく、特定の態様には限定されない。
【0049】
減圧炉11は、内部が真空に耐えることができ、かつ気密性を保持することができる炉体であればよく、その容量等は限定されるものではない。内部が、原子状水素もしくはその他の活性種により劣化されにくい材料で構成されていることが好ましく、例えば、SUS304やSUS316などのステンレスや表面処理を施したステンレス及びアルミニウム合金で構成することができる。減圧炉11の排気口113は炉内を真空引きするために用いられるほか、炉内で積層体10の構成部材の還元の結果生成する、酸素含有化合物や、硫化物、塩化物などを含んだ水素含有化合物等の排出口ともなる。排気口113には、真空ポンプ等の減圧装置50が接続される。
【0050】
減圧炉11内には、さらに、図示しない圧力測定装置及び/または温度測定装置を備えてもよい。炉内の全圧、及び任意選択的に水素分圧を、圧力測定装置を用いてモニタリングすることで、及び/または積層体10を構成する部材の温度を温度測定装置を用いてモニタリングすることで、減圧炉11内部における反応の調節が可能になる。
【0051】
なお、図示はしないが、原子状水素発生装置20の他の設置態様として、減圧炉11の天井部にあたる蓋体111の外部に設置することもできる。この場合、例えば、原子状水素発生装置20自体の構成は、図1に示すものと同様にして、原子状水素発生装置20と減圧炉11との間を、原子状水素流路を狭めることなく接続する湾曲管などで接続することができる。あるいは、原子状水素発生装置20は、減圧炉11の内部、例えば図1に示す減圧炉11内部の熱板の上方に、取り外し可能に設置することもできる。この場合、例えば、シャッター機構を、減圧炉の側壁や天井部ではなく、原子状水素発生装置20の開口部に設ける。あるいは、減圧炉11内部の熱板の上方に、壁面により囲まれた空間を設けて内部に金属線を設置し、開口部に開閉可能なシャッター機構をとりつけることもできる。このように構成することで、金属線は、減圧炉11の内部にあっても、減圧炉11の内部雰囲気から隔離することができ、いずれの形態でも、開口部が、熱板に直接向かい合わないような角度とすることで、金属線由来の金属微粒子が、熱板上にある積層体を汚染しないように構成することができる。
【0052】
本実施形態による接合組立装置は、後述する半導体装置の製造方法において、積層体の接合に好ましく用いられ、接合することが可能な対象は、少なくとも1つの被接合部材と、少なくとも1つのはんだ材との積層体であり、特には、少なくとも2つの被接合部材間にはんだ材を介した任意の積層体である。しかし、かかる装置の接合の対象となる積層体としては、半導体装置に限定されず、電力変換器、通電回路、プリント配線板等が挙げられる。
【0053】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法について、説明する。本発明に係る半導体装置の製造方法は、積層体の準備工程と、一次減圧工程と、熱線式加熱工程と、金属線遮蔽工程と、はんだ材の溶融加熱工程と、気泡除去工程と、再還元工程と、冷却工程と、二次減圧工程と、減圧炉解放工程とから主として構成される。
【0054】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、製造対象となる半導体装置の一例としては、IGBTモジュールやIPMなどのパワーモジュールが挙げられる。特には、少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材との接合体を備えてなる半導体装置であってよく、典型的には、少なくとも2つの被接合部材間にはんだ材を介した積層構造体を備えてなる半導体装置であってよく、より典型的には、金属回路板を有するセラミック等の絶縁基板上に、シリコンチップ等の素子がはんだ付けされたものを、金属ベース上にはんだ付けしてなる積層構造体を備えてなる半導体装置である。
【0055】
図2を参照すると、半導体装置を構成する積層体10は、典型的には、金属ベース1上に、絶縁基板2を、絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3を介して積層し、さらにその上にシリコンチップ4を、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5を介して積層してなる。図2においては、半導体素子の一例として、シリコンチップを挙げて説明したが、本発明において接合対象となりうる半導体素子は、シリコンチップには限定されず、SiCチップ、GaNチップが挙げられるが、これらには限定されない。以下の説明においては、図2に示す積層体10を、被接合部材ならびにはんだ材の一例として説明するが、本発明における製造対象となる積層体の構造はこれに限定されるものではない。
【0056】
半導体素子のコレクタ電極面、金属ベース、及び絶縁基板の表面を構成する典型的な被接合部材(接合母材)としては、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及び/またはこれらの一以上を主成分とする合金が挙げられるが、これらには限定されない。
【0057】
典型的なはんだ材としては、鉛フリーはんだ、好ましくは融点が約190〜290℃の鉛フリーはんだを用いることができ、より好ましくは融点が約210〜290℃の鉛フリーはんだを用いることができる。好ましい実施態様として、融点が約190〜290℃の鉛フリーのSn含有はんだを用いる。Sn含有鉛フリーはんだには、Snはんだ、Sn−Ag系はんだ、Sn−Cu系はんだ、Sn−Sb系はんだ(融点:約190〜290℃),Sn−Bi系(融点:約270℃)などが含まれる。より好ましくはSn−Ag系はんだである。Sn−Ag系はんだには、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Ag−Cu−In、Sn−Ag−Cu−S、およびSn−Ag−Cu−Ni−Geなどが含まれる。より好ましくは、Sn−3.5Ag−0.5Cu−0.1Ni−0.05Geはんだ、またはSn−3.5Ag−0.5Cuはんだである。同様に、Sn−Sb系はんだも、パワーデバイスのダイボンド接合には広く用いられる。Sn−Sb系はんだには、Sn−Sb、Sn−Sb−Ag、Sn−Sb−Ag−Cu、Sn−Sb−Ag−Cu−Niなどが含まれる。好ましくは、Sn−5Sb、Sn−8Sb、Sn−13Sb、Sn−8Sb−3Ag、Sn−8Sb−3Ag−0.5Cu、Sn−8Sb−3Ag−0.5Cu−Ni0.03〜0.07wt.%などである。また、はんだ材は、はんだ板であってもよく、ペースト状はんだであってもよく、その形態は限定されない。
【0058】
次に、本発明に係る半導体装置の製造方法における各工程を、図3を参照して説明する。図3は、本発明にかかる半導体装置の製造方法における、温度プロファイル、減圧炉内雰囲気および圧力、金属線通電、シャッターが開かれている状態、並びに処理動作の一例を示すチャートである。
【0059】
準備工程として、図2に示すように、複数の被接合部材およびはんだ材を積層し、積層体10を形成する。次いで、この積層体10を、減圧炉11内の搬送ステージ13上に載置する。積層体10の搬送ステージ13への載置は、適切な装置で行うこともできるし、手動で行うこともできる。上記のバッチ式接合組立装置において、1回の操作で接合する積層体10は、図示するように1つであってもよく、複数であってもよい。
【0060】
搬送ステージ13上に積層体10を載せ、図3に示すチャートにしたがってはんだ付けを開始する。準備工程後、前記減圧炉内を真空排気する一次減圧工程(タイミングT0からT1)では、まず減圧炉11が密封され、炉内の減圧が開始される(タイミングT0)。この脱気処理時には、搬送ステージ13は、熱板16および冷却板15のいずれからも離れた待機状態である、図1の位置Aにある。タイミングT0〜T8の全工程において、減圧装置50は、常に作動した状態として、減圧炉11内の排気を継続することが好ましい。
【0061】
準備工程及び一次減圧工程においては、減圧炉11と、金属線201とは、隔壁として機能するシャッター303により、遮断されている。金属線201は、本発明の方法を開始する前から、例えば1〜500Pa程度の低圧の水素雰囲気下もしくは不活性ガス雰囲気下、好ましくは真空状態下に保持されており、好ましい実施形態においては、減圧炉11から隔離された原子状水素発生装置20内にある。
【0062】
前記一次減圧工程後、前記減圧炉内を低圧の水素雰囲気にして、金属線を加熱して、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程を行う(タイミングT1からT2)。かかる工程はまた、原子状水素により被接合部材及びはんだ材を還元する一次還元工程ということもできる。ここで、低圧の水素雰囲とは、1〜500Pa程度の水素雰囲気をいうものとする。減圧炉に導入される水素分子ガスの流量は、例えばマスフローコントローラーなどで制御される。
【0063】
熱線式加熱工程では、搬送ステージ13が、熱板16の上方であって、熱板16により加熱される位置、すなわち図1の位置Cに移動し、積層体10の加熱を開始する。また、減圧炉11内の真空度が、1〜10Pa、例えば5.73Paに達すると、減圧炉11内に、水素分子ガス導入管17から、水素分子ガスaの導入が開始される(タイミングT1)。また、減圧炉11内の圧力が、1〜500Pa、好ましくは、10〜300Paになると、隔壁であるシャッター303が開かれる。次いで、水素分子ガス導入管17が閉じられ、原子状水素発生装置20の水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの導入に切り替えられる。そして、ほぼ同時に、金属線201は通電により加熱される。なお、金属線201に通電するタイミングは、シャッター303が開く前であっても開いた後であってもよく、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの導入の前であっても後であってもよいが、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの導入は、シャッター303が開いた後である必要がある。原子状水素発生装置20内の圧力を上昇させないためである。図3のチャートにおいては、金属線201に通電されるタイミングあるいは通電可能なタイミングを、「金属線通電」として示した。金属線201の温度が例えば1600℃に達すると、原子状水素発生装置20に導入された水素分子ガスaが分解され、高い還元能力を有する原子状水素の状態となる。
【0064】
なお、他の実施形態においては、タイミングT1において搬送ステージが熱板16の上方であって、熱板16により直接に加熱されない位置である図1の位置Bへ移動し、熱板16により加熱されることなく金属線への通電が行われてもよい。また、水素分子ガス導入管17が閉じられ、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの導入に切り替えられる態様に代えて、水素分子ガス導入管17及び水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスの導入が、一定時間にわたり同時に行われる状態があってもよい。2系統で水素分子ガスを導入することで、水素分子ガス流量が多くなり、所望の水素圧力を素早く形成できる利点が得られるためである。
【0065】
金属線201の好ましい加熱温度は、金属線201を構成する金属材料もしくは合金材料によって異なり、例えば、金属線として、タングステンを用いる場合には、1600〜1800℃とすることができる。積層体10を構成する各部材表面の還元処理に必要な金属線201の加熱継続時間(タイミングT1からタイミングT2までの時間)は、例えば、10秒〜5分とすることができ、好ましくは、30秒〜120秒とすることができる。金属線201の好ましい加熱時間は、金属線201を構成する金属材料もしくは合金材料によっても異なり、例えば、金属線として、タングステンを用いる場合には、30秒〜120秒とすることができる。
【0066】
水素分子ガス導入管202から導入された水素分子ガスaは、加熱された金属線201に接触し、原子状水素(水素原子)が生成する。この間、減圧炉11及び原子状水素発生装置20内の圧力は、例えば、1〜500Pa、好ましくは10〜300Paに保持されるように、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの流量を制御しながら、減圧装置50を作動させて、減圧炉11内の減圧(排気)も継続させる。これにより、原子状水素は、原子状水素発生装置20から減圧炉11に流入し、積層体10を構成する各部材表面の還元処理に寄与する。原子状水素による還元反応の結果、生成されて減圧炉内の雰囲気に放出される物質、例えば、水や水素化合物に属する硫化水素、塩化水素などが、排気cとして減圧炉11外に排出される。また、金属線201が通電されている期間においては、同時に熱板16により積層体10を構成する各部材が加熱され、積層体10を構成するはんだ材3、5の温度は、部材にもよるが、約100〜200℃となる。このように、熱線式加熱工程では、従来の水素分子ガスによる還元に必要とされていた温度よりも低い温度で還元の効果を実現することができる。なお、熱線式加熱工程においては、原子状水素源として原子状水素発生装置20に導入される水素分子ガスに替えて、あるいは水素分子ガスに加えて、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄などのハロゲン含有ガスを使用することもできる。
【0067】
タイミングT2において、金属線201への通電及び、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの供給を停止する。その後、水素が排気され、減圧炉11及び原子状水素発生装置20内が、例えば、1〜100Pa、好ましくは1〜50Pa以下にある状態(図3には表示せず)で、シャッター303を閉じる。この操作は隔壁を閉じて、金属線201を減圧状態のまま、減圧炉11内の雰囲気から遮蔽する遮蔽工程に該当する。この遮蔽工程により、次いで減圧炉11が曝される種々の雰囲気、特には、減圧炉の大気開放時の大気曝露による金属線201の酸化劣化及び寿命の短縮を防止することができる。
【0068】
また、タイミングT2において、搬送ステージ13が、位置Bにある場合には位置Cに移動する。遮蔽工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして接合温度まで加熱して前記はんだ材を溶融する加熱工程を実施する(タイミングT2からT3)。かかる工程はまた、熱線式加熱工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして前記積層体の各部材の少なくとも被接合表面を還元する二次還元工程ということもできる。本明細書において、正圧とは、101.3×10Paより大きい圧力をいうものとする。加熱工程では、減圧炉11内に再び、水素分子ガス導入管17から水素分子ガスaを導入して、炉内を、正圧の水素雰囲気にする。積層体10は位置Cにある搬送ステージ13を介して加熱され、目標とする接合温度に到達するまでその状態で保持される。図3における、タイミングT3〜T5における一定温度が、接合温度を示すものである。昇温速度は、毎秒約1〜30℃とすることができ、約5〜10℃とすることが好ましい。
【0069】
ここで、熱板16の温度は、積層体を構成するはんだの液相線温度に対して約25℃程度以上高い温度であるのが好ましい。例えば、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5として、液相線温度が221℃のSn−3.5Agはんだを用い、かつ絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3として、液相線温度が243℃のSn−8Sbはんだを用いる場合、熱板16の温度は、熱板16の面内のばらつきを考慮して、270〜280℃とすることができる。また、例えば、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5として、液相線温度が221℃のSn−Ag系はんだを用い、かつ絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3として、液相線温度が219℃のSn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用いる場合、上記記述にしたがえば、熱板16の温度は、245〜250℃である。しかし250℃以上で水素分子の還元力の効果が明らかに発揮されることを鑑みれば、十分に還元力が発揮されるための熱板16の加熱温度は、290℃以上であって、350℃以下であることが好ましい。なお、半導体素子が、SiCチップである場合には、熱板16の加熱温度は、例えば、290℃〜500℃程度であってよいが、特定の加熱温度には限定されない。
【0070】
目標の接合温度に到達するまでの昇温過程(タイミングT2〜T3)において、減圧炉11内の圧力が、正圧であるため、積層体10の各部材の隙間に、水素分子ガスが浸透しやすくなり、水素分子ガスによる還元作用も進行する。したがって、絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5、絶縁基板2および金属ベース1の各表面の還元が促進され、被接合表面、例えばワイヤボンディングをおこなう表面などの濡れ性が確保される。また、各はんだ材3、5が溶融し、そのときに生じた気泡に水素分子ガスが充填され、それによって気泡が活性化する。すなわち、気泡中にあるガス成分が水素に置換され、その後のタイミングT3〜T5における気泡除去工程、及び再還元工程よって十分に活性化される。はんだ材3、5が溶融している間は、減圧炉11内の酸素濃度は例えば30ppm以下、好ましくは10ppm以下に保たれ、かつ露点は−30℃以下、好ましくは−50℃以下に保たれる。
【0071】
前記加熱工程後、積層体10の構成部材が目標の接合温度に達すると、接合温度に保持したまま前記減圧炉内を再び真空雰囲気にしてはんだ融液中の気泡を除去する気泡除去工程を実施する(タイミングT3からT4)。気泡除去工程では、再び減圧炉11内の減圧が開始される(タイミングT3)。そして、減圧炉11内の真空度が例えば10Paに達した後、さらに、例えば、30秒〜1分間、減圧が継続される。それによって、減圧炉11内の真空度はおおよそ1Paに達する。この減圧の継続により、はんだ材と被接合部材との間の濡れ不足によって発生する気泡、およびはんだ材中に含まれる溶存ガスによって発生する気泡の両方がほとんど除去される。ここで、減圧の継続時間(T3〜T4)を30秒〜1分間としたのは、急激な減圧など行う場合には,液体中に発生した気泡が急激に外部に排出される際に、泡が弾ける作用と同様にはんだが飛散し、はんだボールや外周部にはんだの飛散が発生する懸念があるからであり、かつ、減圧を1分間より長く継続してもさらなる気泡除去効果が得られないからである。
【0072】
タイミングT3からT4までの間は、水素分子ガス導入管17からの水素分子ガスaの供給を行うことなく、シャッター303を閉じた状態としたまま、単に減圧のみを行ってもよい。あるいは、タイミングT3で減圧を開始した後、いったん真空度を、例えば1〜10Pa程度にまでした後、タイミングT4までに間に、再度、シャッター303を開き、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの供給を開始し、金属線201を加熱して、熱線式加熱工程を1回以上実施してもよい。具体的には、原子状水素発生装置20内に水素分子ガス導入管202から水素分子ガスを供給し、減圧炉11及び原子状水素発生装置20内の圧力を、1〜500Pa、好ましくは10〜300Paとした後、金属線201に通電して、原子状水素を発生させ、減圧炉に流入させて、還元処理を行うことができる。このとき、タイミングT3からT4までの間に、シャッター開、水素分子ガス導入管202からの水素分子ガスaの供給、金属線の通電と、水素分子ガスaの供給停止、通電の停止、シャッター閉の一連の操作を1回だけ実施してもよいし、一連の操作を1セットとして、これを複数セット繰り返してもよい。あるいは、短時間に金属線の通電と停止を複数回繰り返す場合には、シャッターは開いたままでもよい。また、通電の時間は、前述のように10秒〜5分とすることができ、通電を停止している時間は、30秒〜120秒とすることが好ましい。金属線201への通電と、通電の停止とを繰り返す場合には、繰り返し回数は2〜5回とすることが好ましいが、特定の回数には限定されない。なお、図3において、タイミングT3からT4で「金属線通電」としたのは、この区間で通電を継続することを必須とするものではなく、この区間において通電可能であることを示すものである。
【0073】
前記気泡除去工程後、接合温度に保持したまま再び前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にする再還元工程を実施する(タイミングT4〜T5)。かかる工程は、タイミングT1〜T2における原子状水素による一次還元工程、タイミングT2〜T3における水素分子ガスによる二次還元工程に次ぐ還元工程であり、三次還元工程ともいう。三次還元工程では、まず、減圧炉11内に再び、水素分子ガス導入管17から、水素分子ガスが導入される(タイミングT4)。減圧炉11内の圧力が正圧に達した後、さらに、30秒〜1分間以上5分程度継続して水素分子ガスが導入される(T4〜T5)。但しこの時間は対象の加熱する積層体の大きさによって変わるため、この時間に限定されるものではない。水素分子ガスの導入を継続する理由は、上述した1分間の減圧継続時にはんだ材3、5中の気泡がはんだ材3、5の外に除去される際にはんだ材3、5中に残るトンネル状の孔(気泡が通った跡)を、水素分子ガスの還元作用により塞ぐためである。つまり、はんだ材3、5中の気泡には酸化成分の気体が充満しているので、この気泡が通過する際に接触したはんだ部分は酸化してしまう。そのため、気泡の通過部分のはんだが濡れずに、トンネル状の開気泡が残ってしまう場合があった。タイミングT4〜T5で再還元工程を実施をすることで、この開気泡の中に水素分子ガスが充満することによって、酸化した内面が還元され、はんだの濡れがよくなり、開気泡がはんだで埋まることになる。この間、シャッター303は閉じて、金属線201は減圧炉11内雰囲気から遮蔽されたままである。
【0074】
また、減圧炉11内への水素分子ガスの導入を継続するもう一つの理由は、水素分子ガスによる還元と熱板16による加熱保持により、はんだ材5の表面張力を低減させ、それによってはんだフィレット形状を安定化させて、はんだ亀裂発生寿命を向上させるためである。水素分子ガス導入の継続をおこなわないで、炉内減圧の後、直ちに冷却を開始してはんだ材を凝固させると、はんだ材の表面張力が大きいため、はんだフィレット形状が不均一になり、温度サイクルなどによるはんだ亀裂の発生寿命が短くなってしまう場合がある。はんだ材5の表面張力を小さくするには、タイミングT4〜T5において、はんだ材5を接合温度で加熱保持するか、水素分子ガスにはんだ材5をさらす時間を長くするか、またはそれらを組み合わせればよい。ただし、水素分子ガスの導入を1分間より長く継続しても、気泡が通った跡の孔を埋める効果や、はんだフィレット形状の安定化効果にあまり違いはみられないため、水素分子ガス導入の継続時間は、30秒〜1分間とすることが好ましい。
【0075】
本発明のある実施形態においては、前記熱線式加熱工程から加熱工程(T1〜T3)を複数回繰り返して含んでもよい。すなわち、このタイミングT1〜T3の操作を1サイクルとして、T1〜T3を複数サイクル、例えば2〜5サイクル繰り返してもよい。T1〜T3を複数サイクル繰り返すことで、はんだ溶融前に、効率的に金属表面を改質することができる。
【0076】
あるいは、上記タイミングT1〜T3の操作の繰り返しはせずに、もしくはT1〜T3の操作の繰り返しとともに、タイミングT3〜T5の気泡除去工程及び再還元工程を複数回繰り返してもよい。一例として、大面積基板を接合する場合や、気泡が抜けにくい場合には、T3〜T5の気泡除去工程及び再還元工程の操作を1サイクルとして、T3〜T5を複数サイクル、例えば2〜5サイクル繰り返す構成としてもよい。このようにして減圧と加圧を繰り返すことによって、溶融中のはんだに揺動が起こり、気泡が抜けやすくなるので、気泡除去効果が得られるためである。ただし、気泡除去工程の繰り返し回数が5回までは回数の増加とともに気泡率が小さくなるが、6サイクル以上繰り返してもそれ以上の効果は得られない場合が多い。これらの繰り返し操作に加えて、T1〜T5を複数回繰り返す構成とすることも出来る。
【0077】
再還元工程後、減圧炉11内を正圧の水素雰囲気にしたまま積層体10を急冷する冷却工程を実施する(タイミングT5〜T6)。冷却工程では、搬送ステージ13が、レール14を移動し、熱板16から冷却板15に移動される(位置D)。それによって、積層体10の冷却が開始される(タイミングT5)。積層体10は、例えば、毎分300℃の速度で冷却される。この際、炉内では、正圧の水素雰囲気が維持される。
【0078】
冷却板15の温度および冷却時間は、はんだの冷却速度(凝固速度)を考慮して選定される。すなわち、本実施の形態では、熱膨張係数の異なるシリコンチップ4と絶縁基板2と金属ベース1とが同時にはんだ付けされるため、はんだ付けが完了した状態では、熱膨張係数の最も大きい金属ベース1が絶縁基板2の側に凸状となるように反ってしまう場合がある。その影響で、はんだ接合層を介して接合された積層体10には、最大0.3mm程度の反りが生じ得る。この反りが、次のワイヤボンディング工程まで持ち越されると、電気特性不良の発生原因となるので、ワイヤボンディング前に反りを除去する必要がある。そのためには、絶縁基板2と金属ベース1との間のはんだ接合層を短時間にクリープさせればよい。
【0079】
クリープ速度を速くするために、冷却速度を毎分250℃以上、例えば毎分300℃とするのが好ましい。本出願人による、特開2003-297860号公報では、冷却速度が毎分250℃以上であれば、24時間以内に金属ベース1の反りが0〜−0.1mmの範囲(“−”は絶縁基板2側に凸であることを表す)に収まり、ワイヤボンディングへの悪影響をなくすことができることが示されている。換言すれば、冷却速度が毎分250℃未満では、金属ベース1の反りを十分に戻すことができず、ワイヤボンディングに悪影響を及ぼすおそれがある。また、はんだのクリープを速くして接合後の積層体10の残留応力をできるだけ前の工程で除去すれば、金属ベース1の変形を安定化させることができる。従って、冷却板15の温度および冷却時間は、はんだの冷却速度が毎分250℃以上となるように選定される。
【0080】
そして、前記冷却工程後、前記減圧炉内を真空排気する二次減圧工程を実施する(タイミングT6〜T7)。二次減圧工程では、積層体10の温度が例えば50〜60℃になったら、減圧炉11内の水素の排気が開始される(タイミングT6)。
【0081】
前記二次減圧工程後、前記減圧炉内を正圧の窒素雰囲気にした後、前記減圧炉を開放する工程を実施する(タイミングT7〜T8)。かかる工程では、水素の排気により、減圧炉11内の真空度が、例えば1〜10Paになったら、減圧炉11内に窒素ガスが導入される(タイミングT7)。そして、減圧炉11内が窒素ガスで置換され、炉内の水素濃度が爆発限界以下に達した後、減圧炉11が大気開放される(タイミングT8)。シャッター303は、熱線式加熱工程(T1〜T2)後の遮蔽工程、あるいは任意選択的に気泡除去工程(T3〜T4)中に並行して行うさらなる熱線式加熱工程後の遮蔽工程で、閉状態にした後、閉じたままである。そして、原子状水素発生装置20内部は、後続の工程(タイミングT2〜T8、あるいはT4からT8)を実施する間も、低圧の水素雰囲気状態、好ましくは真空状態に保持する。
【0082】
図3のタイミングT0〜T8の一連の操作は、繰り返し工程の回数にもよるが、概ね15分以内で完了することができる。そして、かかる工程を含む半導体装置の製造方法により、気泡のない高品質なはんだ接合層を有する半導体装置が得られる。なお、ここでは、窒素雰囲気を一例として説明したが、窒素に限定されず、任意の不活性ガスを用い、不活性ガス雰囲気とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る半導体装置の製造方法及び接合組立装置は、IGBTモジュールや、IPMなどのパワーモジュールの製造において好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 金属ベース
2 絶縁基板
3 絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材
4 シリコンチップ
5 シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材
10 積層体
11 減圧炉
110 炉本体
111 蓋体
112 パッキン
113 排気口
114 開口部
13 搬送ステージ
14 搬送レール
15 冷却板
16 熱板
17 水素分子ガス導入管(活性種生成ガス導入管)
18 不活性ガス導入管
20 原子状水素発生装置(活性種発生装置)
201 金属線
202 水素分子ガス導入管(活性種生成ガス導入管)
203 電源接続端子
204 のぞき窓
205 大気開放バルブ
30 シャッター機構
301 駆動部
302 シャフト
303 シャッター(隔壁)
40 電源装置
50 減圧装置
60 チラー
a 水素分子ガス
b 窒素ガス
c 排気
d 冷却水
図1
図2
図3