特許第6554801号(P6554801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554801
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】冗長通信装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/656 20180101AFI20190729BHJP
   G06F 11/20 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G06F8/656
   G06F11/20 628
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-17700(P2015-17700)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-143187(P2016-143187A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】木田 宏彦
【審査官】 三坂 敏夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−245077(JP,A)
【文献】 特開2005−251055(JP,A)
【文献】 特開2006−031312(JP,A)
【文献】 特開2007−025933(JP,A)
【文献】 特開2010−036546(JP,A)
【文献】 特開昭58−070670(JP,A)
【文献】 鈴木 宗之,「SPECIAL REPORTS 通信事業者向けIP変換システム」,東芝レビュー,株式会社東芝,2005年 2月11日,第60巻 第2号,第46頁-第49頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/00− 8/38
8/60− 8/77
9/44− 9/451
11/16−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用系IP交換機及び待機系IP交換機を少なくとも1つずつ有する冗長通信装置において、
上記運用系IP交換機は、
上記待機系IP交換機で部品交換が行われた後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信するソフトウェアデータ送信手段を有し、
上記待機系IP交換機は、
上記運用系IP交換機から受信したソフトウェアデータを、自装置のソフトウェアデータが格納されるデータ記憶部に書込むソフトウェアデータ更新手段を有し、
上記運用系IP交換機は、上記待機系IP交換機との通信により上記待機系IP交換機の故障を認識する故障認識手段をさらに備え、
上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で故障が発生し、部品交換により復旧した後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、
上記運用系IP交換機は、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数を読取るソフトウェア版数読取手段をさらに備え、
上記ソフトウェアデータ送信手段は、自装置のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数と、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数とで差異がある場合に、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信する
ことを特徴とする冗長通信装置。
【請求項2】
運用系IP交換機及び待機系IP交換機を少なくとも1つずつ有する冗長通信装置の制御方法において、
上記運用系IP交換機は、ソフトウェアデータ送信手段と故障認識手段とソフトウェア版数読取手段とを有し、上記待機系IP交換機は、ソフトウェアデータ更新手段を有し、
上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で部品交換が行われた後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、
上記ソフトウェアデータ更新手段は、上記運用系IP交換機から受信したソフトウェアデータを、自装置のソフトウェアデータが格納されるデータ記憶部に書込み、
上記故障認識手段は、上記待機系IP交換機との通信により上記待機系IP交換機の故障を認識し、
上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で故障が発生し、部品交換により復旧した後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、
上記ソフトウェア版数読取手段は、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数を読取り、
上記ソフトウェアデータ送信手段は、自装置のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数と、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数とで差異がある場合に、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信する
ことを特徴とする冗長通信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冗長通信装置及びその制御方法に関し、例えば、2重化冗長構成(運用系/待機系)のIP交換機を有するIP交換装置のソフトウェア更新に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加入者端末(電話端末)と接続(収容)して、IPネットワークに接続するIP交換機は、一般的に2重化以上の冗長構成となっている。以下では、2重化されたIP交換装置の運用系(アクティブ系)を「ACT系」、待機系(スタンバイ系)を「SBY系」とも呼ぶものとする。
【0003】
従来の冗長化IP交換装置としては、例えば特許文献1の記載技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−189321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の冗長構成のIP交換機は、ACT系とSBY系とでバージョン等まで同一のソフトウェア(ファームウェア)で動作させる必要がある。そして、従来の冗長構成のIP交換機では、ACT系からSBY系に切替える際に、系間通信路を用いてデータ同期(ACT系からSBY系へのデータ複製)を行う。
【0006】
また、従来の冗長構成のIP交換機では、一般的に、IPネットワーク上の管理装置にソフトウェアファイルを配置してソフトウェア更新を実施する。故障発生などにより予備パッケージと交換した際、ソフトウェア版数が他系と異なったものを交換した場合は、当該管理装置よりソフトウェア更新を実行することになる。IP交換機の管理装置としては、例えば、エレメントマネジメントシステム(以下、「EMS」と略称する)や、オペレーションシステム(以下、「OpS」と略称する)と呼ばれる装置がある。
【0007】
一般的にIP交換機等に適用するソフトウェアは、複数回にわたって更新(例えば、バージョンアップや修正パッチのリリース)が行われる。そして、冗長構成のIP交換機において、一方の系に故障が発生して部品交換(例えば、ソフトウェアがインストールされたパッケージやモジュールの交換)が行われた場合には、交換部品にインストールされたソフトウェアと、正常に動作しているACT系(運用系)のソフトウェアとで同一のソフトウェア(バージョンや修正パッチまで含めて同一のソフトウェア)とする必要がある。このとき、部品交換が行われた系のIP交換機については、管理装置を用いて、各更新条件や注意事項を確認しながらソフトウェアの更新を行う必要がある。2つの系のソフトウェアに差分があるとき、部品交換を行った系について、バージョンアップ及び複数の修正パッチ適用等を要する場合もある。ソフトウェアのバージョンアップや修正パッチは、段階的に適用しなくてはならない場合もあるからである。
【0008】
このように、従来の冗長構成のIP交換機では、複数段階の手順で更新を行うことは、多くの確認を必要とするため手間がかかり、注意事項の確認漏れなどの人為的なミスにより、二次的な故障を引き起こす可能性があった。
【0009】
そのため、効率的かつ確実にソフトウェアの更新を行うことができる冗長通信装置及びその制御方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明は、運用系IP交換機及び待機系IP交換機を少なくとも1つずつ有する冗長通信装置において、(1)上記運用系IP交換機は、上記待機系IP交換機で部品交換が行われた後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信するソフトウェアデータ送信手段を有し、(2)上記待機系IP交換機は、上記運用系IP交換機から受信したソフトウェアデータを、自装置のソフトウェアデータが格納されるデータ記憶部に書込むソフトウェアデータ更新手段を有し、(3)上記運用系IP交換機は、上記待機系IP交換機との通信により上記待機系IP交換機の故障を認識する故障認識手段をさらに備え、(4)上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で故障が発生し、部品交換により復旧した後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、(5)上記運用系IP交換機は、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数を読取るソフトウェア版数読取手段をさらに備え、(6)上記ソフトウェアデータ送信手段は、自装置のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数と、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数とで差異がある場合に、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信することを特徴とする冗長通信装置。
【0011】
第2の本発明は、運用系IP交換機及び待機系IP交換機を少なくとも1つずつ有する冗長通信装置の制御方法において、(1)上記運用系IP交換機は、ソフトウェアデータ送信手段と故障認識手段とソフトウェア版数読取手段とを有し、上記待機系IP交換機は、ソフトウェアデータ更新手段を有し、(2)上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で部品交換が行われた後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、(3)上記ソフトウェアデータ更新手段は、上記運用系IP交換機から受信したソフトウェアデータを、自装置のソフトウェアデータが格納されるデータ記憶部に書込み、(4)上記故障認識手段は、上記待機系IP交換機との通信により上記待機系IP交換機の故障を認識し、(5)上記ソフトウェアデータ送信手段は、上記待機系IP交換機で故障が発生し、部品交換により復旧した後、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信し、(6)上記ソフトウェア版数読取手段は、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数を読取り、(7)上記ソフトウェアデータ送信手段は、自装置のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数と、上記待機系IP交換機のデータ記憶部に格納されるソフトウェアデータの版数とで差異がある場合に、自装置のデータ記憶部に格納された自装置のソフトウェアデータを、上記待機系IP交換機に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、効率的かつ確実にソフトウェアの更新を行う冗長通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るIP交換装置の動作(制御方法)の各ステップについて示した説明図である。
図2】実施形態に係るIP交換装置の機能的構成について示したブロック図である。
図3】実施形態に係るIP交換装置におけるソフトウェアの更新履歴について示した説明図である。
図4】実施形態に係る各IP交換機のソフトウェア版数の遷移について示した説明図(その1)である。
図5】実施形態に係る各IP交換機のソフトウェア版数の遷移について示した説明図(その2)である。
図6】実施形態に係る各IP交換機のソフトウェア版数の遷移について示した説明図(その3)である。
図7】実施形態に係る各IP交換機のソフトウェア版数の遷移について示した説明図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による冗長通信装置及びその系切替え方法の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。ここで、実施形態の冗長通信装置は、冗長構成をなしている2つのIP交換機を備えるIP交換装置である。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図2は、この実施形態のIP交換装置1の機能的構成、及びその周辺の接続構成について示したブロック図である。
【0016】
図2に示すように、IP交換装置1は、2台のIP交換機10(10−1、10−2を備えており、この2台のIP交換機10−1、10−2により冗長構成が組まれている。以下では、IP交換機10−1を「第1の交換機」、IP交換機10−2を「第2の交換機」とも呼ぶものとする。IP交換装置1では、IP交換機10−1、10−2のいずれか一方がACT系(運用系)として動作し、他方がSBY系(待機系)として動作するアクティブ・スタンバイの冗長構成が採用されているものとする。なお、IP交換装置1を構成するIP交換機10の数は限定されないものであるが、少なくとも1台のACT系(運用系)と1台のSBY系(待機系)(計2台)で構成されるものとして説明する。
【0017】
IP交換機10−1、10−2の間は、系間通信路20により接続されており、相互に通信して連携可能な構成となっている。系間通信路20の構成は限定されないものであり、例えば、イーサネット(登録商標)ケーブルや種々のデータ伝送ケーブル等で直結する構成としてもよいし、ネットワーク(例えば、スイッチやルータ等)を経由する構成としてもよい。
【0018】
IP交換機10−1、10−2は、それぞれ、加入者線30(例えば、ツイストペアケーブル等の線路)及びメタルUNI(User Network Interface)40を介して加入者端末50に接続(収容)し、電話サービス等を提供している。IP交換装置1では、IP交換機10−1、10−2のいずれか一方が故障等により停止した場合でも、加入者端末50にサービス提供を継続することができる。
【0019】
また、IP交換機10−1、10−2は、それぞれネットワークNを経由してEMS60と通信可能な構成となっている。EMS60は、IP交換機10−1、10−2に対する管理に係る処理(ソフトウェアの更新処理を含む)を実行する端末である。
【0020】
また、それぞれのIP交換機10−1、10−2には、種々のコマンド(命令)実行や情報出力(例えば、コマンドの実行結果の出力)が可能なコンソール70を接続することが可能となっているものとする。コンソール70としては、例えば、種々のシリアルインタフェース(シリアルケーブル)等を用いて接続し、コマンドラインインタフェースとして機能する端末を適用することができる。コンソール70としては、例えば、シリアルインタフェース(例えば、RS−232C等のインタフェース)を備えたPCに、コマンドラインインタフェースとして機能するエミュレータ等のソフトウェアをインストールして構築するようにしてもよい。なお、コンソール70については、直接シリアルケーブルでIP交換機10に接続せずにネットワーク等を経由して接続(例えば、TELNETやSSH(Secure Shell)等のリモート接続)する構成としてもよい。
【0021】
次に、IP交換機10−1、10−2の内部構成について説明する。この実施形態では、IP交換機10−1、10−2のハードウェア構成は同一であるものとして説明する。
【0022】
各IP交換機10は、内部バス13が配置された本体(シャーシ、筐体)に、複数の基板型の部品(以下、「パッケージ」又は「PKG」と呼ぶ)が脱着可能に搭載される構造となっているものとする。IP交換機10では、故障が発生したパッケージを抜取り、正常なパッケージ(予備パッケージ)を挿入することにより故障からの回復が可能な構成となっている。なお、IP交換機10を構成する各部品としては、基板型のパッケージに限定されず、本体に脱着可能な構造であればその他の形状や構造とするようにしてもよい。
【0023】
この実施形態の例では、IP交換機10−1、10−2のそれぞれに、制御パッケージ11と、N個のインタフェースパッケージ12(12−1〜12−N)が搭載されているものとして説明する。IP交換機10に搭載するパッケージの数や組合せについては限定されないものであり、当該IP交換機10の機能に必要なものが搭載されていればよい。
【0024】
各インタフェースパッケージ12は、外部のネットワークと接続するためのネットワークインタフェースの機能を担っている。インタフェースパッケージ12は、例えば、加入者線30と接続するインタフェースや、図示しない上位ネットワークと接続するインタフェース等を備えている。各インタフェースパッケージ12は、制御パッケージ11からの制御に応じた動作を行う。
【0025】
制御パッケージ11は、当該IP交換機10の全体を制御する機能を担っている。この実施形態では、制御パッケージ11は、不揮発メモリ111、制御処理部112、及び系間通信部113を有しているものとして説明する。
【0026】
制御処理部112は、各インタフェースパッケージ12に対する制御や、他方のIP交換機10との連携(系間通信部113を介して通信して連携)する処理等を行うものである。制御処理部112は、一部又は全部の機能について、ソフトウェア的に構成されている。制御処理部112は、図示しないプロセッサやメモリ等により構成されるコンピュータ112aを備えている。コンピュータ112aは、不揮発メモリ111からソフトウェアデータD(プログラムデータ)を読込んで実行することにより起動し、ソフトウェアデータDのプログラムに従って動作することで種々の制御処理を行うことが可能な構成となっている。なお、コンピュータ112aは内部にメモリやキャッシュを備えて内部だけでソフトウェアデータDを実行する構成としてもよいし、不揮発メモリ111をワークメモリとしてソフトウェアデータDを実行する構成としてもよい。図2では、説明を簡易とするためにソフトウェアデータDを1つの構成要素として示しているが、ソフトウェアデータDは複数のファイルやデータ領域で構成されるものであってもよい。
【0027】
また、制御処理部112は、コンソール70と接続可能なシリアルインタフェース112bを備えており、コンソール70からの接続受入れ(例えば、コマンドラインインタフェース等による接続受入れ)が可能となっている。
【0028】
不揮発メモリ111は、制御処理部112の動作に必要となる種々のデータを格納するための記憶手段であり、少なくともソフトウェアデータDを記憶している。不揮発メモリ111としては、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の不揮発性のデータ記録媒体を適用することができる。
【0029】
系間通信部113は、系間通信路20を介して、他方のIP交換装置1(制御パッケージ11)と通信するためのインタフェースの機能を担っている。制御処理部112は、系間通信部113を介して、他方のIP交換装置1(制御パッケージ11)と通信し連携が可能となっている。
【0030】
各IP交換機10間の系間通信による監視方式や監視項目については限定されないものであるが、例えば、ECC(Error Check and Correct memory)機能によるメモリ故障監視や、内部クロック断検出機能などによる部品または回路故障検出が行われる。各IP交換機10の制御パッケージ11は、自装置に対するヘルスチェックや、他方のIP交換機10に対する監視(生存確認)を行う。そして、各IP交換機10は、自装置又は他系で故障を検出した場合に他方にその故障発生を通知する処理や、系切替制御(例えば、SBY系からACT系への切替え等)を行うものとする。
【0031】
次に、各IP交換機10の不揮発メモリ111に記憶されるソフトウェアデータDの更新について説明する。
【0032】
図3は、ソフトウェアデータDの版数(バージョン)及び修正パッチの適用順序の例について示した説明図である。
【0033】
図3に示すように、ソフトウェアデータDについては、最初の版数(01版)以後、02版、03版がリリースされている。図3に示すように現在ソフトウェアデータDの最新の版数は03版となっている。そして、現在までに、ソフトウェアデータDの03版については、4つの修正パッチ(03版の修正パッチ001版〜004版)がリリースされている。03版の修正パッチ001版〜004版については、修正パッチ001、002、003、004とリリース順に適用(上書き)していく必要があるものとする。
【0034】
例えば、IP交換機10にソフトウェアデータDの02版がインストールされている状態から、「03版の修正パッチ002版」を適用した状態とするには、02版から03版にバージョンアップした後、「03版の修正パッチ001版」、「03版の修正パッチ002版」の順序で適用する必要がある。基本的には、各版数のソフトウェアデータDや修正パッチについては、EMS60で管理されており、EMS60から各IP交換機10にバージョンアップや修正パッチ適用の制御処理が行われる。
【0035】
しかし、この実施形態では、ACT系のIP交換機10とSBY系のIP交換機10とで、ソフトウェアデータDの内容(版数及び修正パッチ)が一致しない場合には、系間通信(系間通信路20)により、ACT系のIP交換機10からSBY系のIP交換機10に、不揮発メモリ111のデータ(少なくともソフトウェアデータDの領域を含むデータ)がコピーされる。この場合、ACT系のIP交換機10における不揮発メモリ111のデータ(イメージデータ)が、そのままSBY系のIP交換機10にコピーされることになるので、バージョンアップや修正パッチの適用等の順序を無視して一度のコピーでソフトウェアデータDの同期が行われることになる。
【0036】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態のIP交換装置1の動作(実施形態に係る制御方法)について図1図4図7を用いて説明する。
【0037】
図1は、IP交換装置1を構成する第2のIP交換機10−2で故障が発生し復帰するまでの動作の例について示した説明図である。図4図6は、各IP交換機10におけるソフトウェアデータDの内容の遷移の例について示した説明図である。
【0038】
まず、ここでは初期状態として、図4に示すように、第1のIP交換機10−1がACT系(運用系)として動作し、第2のIP交換機10−2のSBY系(待機系)として動作しているものとする。そして、第1のIP交換機10−1と第2のIP交換機10−2とでソフトウェアデータDの内容は「03版の修正パッチ002版」まで適用された状態に統一されているものとする。
【0039】
そして、第1のIP交換機10−1の制御パッケージ11と、第2のIP交換機10−2の制御パッケージ11との間では、系間通信が行われ相互に監視処理等が行われる。
【0040】
そして、ここでは、図1のステップS101に示すように、第2のIP交換機10−2の制御パッケージ11で故障が発生し、第2のIP交換機10−2から第1のIP交換機10−1に故障発生が通知されたものとする。故障通知を受けると、第1のIP交換機10−1は、第2のIP交換機10−2を故障系(以下、「FLT系」と呼ぶ)になったと認識し、系間通信により第2のIP交換機10−2をFLT系とする制御処理を行う。FLT系(故障系)とは、SBY系(待機系)と異なり、第1のIP交換機10−1に故障等が発生してもACT系(運用系)とはならない状態であるものとする。
【0041】
次に、第2のIP交換機10−2で故障が発生しFLT系となったことは、外部(例えば、EMS60)でも検知されたものとする。そして、ステップS102に示すように、保守作業員等により、第2のIP交換機10−2の制御パッケージ11が、予備パッケージに交換されたものとする。
【0042】
このとき、予備の制御パッケージ11におけるソフトウェアデータDは、図5に示すように02版であったものとする。すなわち、パッケージ交換が行われた直後では、図6に示すように、第1のIP交換機10−1のソフトウェアデータDは「03版の修正パッチ002版」まで適用された状態であり、第2のIP交換機10−2のソフトウェアデータDは「02版」の状態となる。
【0043】
次に、図1のステップS103に示すように、保守作業員により、第1のIP交換機10−1に接続されたコンソール70が操作(コマンド入力操作)され、第1のIP交換機10−1において、他系(第2のIP交換機10−2)のソフトウェアデータDの版数を読取る処理が行われたものとする。これにより、第1のIP交換機10−1に接続されたコンソール70には、第2のIP交換機10−2におけるソフトウェアデータDの内容が表示されることになる。すなわち、保守作業員は、第1のIP交換機10−1に接続されたコンソール70を操作することにより、第1のIP交換機10−1と第2のIP交換機10−2のソフトウェアデータDの内容(差分の有無)を確認することができる。
【0044】
次に、図1のステップS104に示すように、保守作業員により、第1のIP交換機10−1に接続されたコンソール70が操作(コマンド入力操作)され、第1のIP交換機10−1の不揮発メモリ111のデータ(少なくともソフトウェアデータDを含む領域のデータ)を、第2のIP交換機10−2の不揮発メモリ111にコピーする処理が行われたものとする。ステップS104の処理により、図7に示すように、第1のIP交換機10−1と第2のIP交換機10−2とでソフトウェアデータDの内容は「03版の修正パッチ002版」まで適用された状態に統一されることになる。
【0045】
次に、図1のステップS105に示すように、保守作業員により、第1のIP交換機10−1に接続されたコンソール70が操作(コマンド入力操作)され、第2のIP交換機10−2をFLT系(故障系)からSBY系(待機系)に変更する処理が行われたものとする。ステップS105の処理により、IP交換機10−1、10−2の状態は、故障前の状態(図1に示す状態)に復旧することになる。
【0046】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0047】
IP交換装置1では、系間通信を用いて、不揮発メモリ111のソフトウェアデータDを含む領域のデータをコピーすることにより、簡単にSBY系(待機系)のIP交換機10におけるソフトウェア版数を、ACT系(運用系)と同じ版数として復旧させることができる。
【0048】
仮に、EMS60にソフトウェアデータDのファイル(各バージョンのデータ及び各修正パッチのデータ)を配置して更新する場合は、保守作業員が更新条件や注意事項を確認しながら更新する必要がある。この場合、条件によっては、何回かに分けて更新するなど手間がかかったり、注意事項の確認漏れなどの人為的なミスにより、二次的な故障を引き起こす可能性があるが、この実施形態のIP交換装置1ではそのような問題発生を抑制することができる。
【0049】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0050】
(B−1)上記の実施形態では、本発明の冗長系通信装置をIP通信装置(複数のIP交換機を有する装置)に適用する例について説明したが、系間通信が可能な冗長構成の通信装置であれば、他のサービス(アプリケーション)を実行する通信装置(例えば、呼制御装置やWebサーバ等の他の用途の通信装置)に適用するようにしてもよい。
【0051】
(B−2)上記の実施形態では、SBY系(待機系)のIP交換機10で故障が発生し、部品交換(制御パッケージ11の交換)後に、ソフトウェアデータDのコピーを行うことについて説明したが、ACT系(運用系)のソフトウェアデータDのデータをSBY系(待機系)にコピーする契機は故障に限定されない。例えば、SBY系(待機系)のIP交換機10で、故障時以外の部品交換(制御パッケージ11の交換)が行われたことを契機に、ソフトウェアデータDのデータをコピーするようにしてもよい。この場合、例えば、SBY系(待機系)のIP交換機10で、部品交換(ソフトウェアデータDが記憶された制御パッケージ11の交換)が行われたことを、ACT系(運用系)のIP交換機10に通知することで、ソフトウェアデータDのコピーを開始する契機とするようにしてもよい。
【0052】
(B−3)上記の実施形態の図4図7の例では、SBY系(待機系)で交換された制御パッケージ11のソフトウェアデータDの版数が、ACT系(運用系)よりも古い場合について示したが、逆に交換した制御パッケージ11のソフトウェアデータDの版数がACT系(運用系)よりも新しい場合であっても、ソフトウェアデータDのコピーの手順は変わらない。ソフトウェアデータDのコピーは、不揮発メモリ111上のイメージデータとして行われるため、ソフトウェアデータDの版数の影響を受けないためである。
【0053】
(B−4)上記の実施形態において、コンソール70からのコマンド入力に応じて実行される動作(上述のステップS103、S104の動作)については、自動的に第1のIP交換機10−1と第2のIP交換機10−2とで行うようにしてもよい。例えば、IP交換機10−1の制御パッケージ11(制御処理部112)は、第2のIP交換機10−2が故障から復旧した後(制御パッケージ11の交換後)に、自動的に、第2のIP交換機10−2のソフトウェアデータDの版数を読取り、自装置の版数と異なる場合のみ、ソフトウェアデータDのコピー処理を実行するようにしてもよい。
【0054】
(B−5)上記の実施形態では、図1図4図7に示すように、当初からSBY系(待機系)であった第2のIP交換機10−2で故障が発生した場合の例について説明したが、当初からACT系(運用系)として動作している第1のIP交換機10−1で故障が発生した場合でも同様の処理が可能である。例えば、ACT系(運用系)として動作している第1のIP交換機10−1で故障が発生した場合、第1のIP交換機10−1がFLT系(故障系)となり、第2のIP交換機10−2がACT系(運用系)となるため、その後の動作については、第1のIP交換機10−1と第2のIP交換機10−2の取扱いが逆になるだけで上述の図1図4図7と同様の処理によりソフトウェアデータDのコピー等を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1…IP交換装置、10、10−1、10−2…IP交換機、11…制御パッケージ、111…不揮発メモリ、D…ソフトウェアデータ、112…制御処理部、112a…コンピュータ、112b…シリアルインタフェース、113…系間通信部、13…内部バス、12、12−1〜12−N…インタフェースパッケージ、20…系間通信路、30…加入者線、40…メタルUNI、50…加入者端末、60…EMS、N…ネットワーク、70…コンソール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7