特許第6554819号(P6554819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554819
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】振動吸収装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20190729BHJP
   F16F 15/14 20060101ALI20190729BHJP
   F16F 15/16 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F16F15/134 A
   F16F15/14 Z
   F16F15/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-38468(P2015-38468)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160986(P2016-160986A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】神保 優
(72)【発明者】
【氏名】井下 芳尊
(72)【発明者】
【氏名】水口 博貴
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−160983(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/14
F16F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの振動を吸収する振動吸収装置であって、
前記振動吸収装置は、
前記エンジンの動力を伝達する動力伝達軸に設けられるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、第1の減衰器が収納される第1の収納室と、
前記ハウジングに設けられ、第2の減衰器が収納される第2の収納室と、
前記第1の収納室と前記第2の収納室との間に設けられるシール部材と、
を備え、
前記第1の収納室と前記第2の収納室との間が前記シール部材によりシールされ、前記第1の減衰器と前記第2の減衰器が互いに異なる使用環境で作動し、
前記ハウジングの内部には、センタープレートが設けられ、
前記シール部材の一方の端部には、前記第1の収納室側に向けて延設され、前記ハウジングの内壁に当接する当接部が設けられ、
前記シール部材の他方の端部には、前記第2の収納室側に向けて延設され、前記センタープレートに固定部材を用いて固定される固定部が設けられるすることを特徴とする振動吸収装置。
【請求項2】
エンジンの振動を吸収する振動吸収装置であって、
前記振動吸収装置は、
前記エンジンの動力を伝達する動力伝達軸に設けられるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、第1の減衰器が収納される第1の収納室と、
前記ハウジングに設けられ、第2の減衰器が収納される第2の収納室と、
前記第1の収納室と前記第2の収納室との間に設けられるシール部材と、
を備え、
前記第1の収納室と前記第2の収納室との間が前記シール部材によりシールされ、前記第1の減衰器と前記第2の減衰器が互いに異なる使用環境で作動し、
前記ハウジングの内部には、センタープレートが設けられ、
前記シール部材の一方の端部には、前記第1の収納室側に向けて延設され、前記ハウジングの内壁に当接する当接部が設けられ、
前記シール部材の他方の端部には、前記センタープレートに形成された切欠き部に差し込まれる差し込み部が設けられることを特徴とする振動吸収装置。
【請求項3】
前記第1の収納室と前記第2の収納室との間が、前記シール部材により液密的にシールされ、
前記第1の減衰器は、振動吸収体が液体に浸された状態で作動する湿式の減衰器であり、前記第2の減衰器は、振動吸収体が液体に浸されていない状態で作動する乾式の減衰器である、請求項1または請求項2に記載の振動吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動源と成るエンジンの振動を吸収する振動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては、自動車のエンジンのトルク変動に起因してクランク軸で発生する回転変動を低減する装置が提案されている。例えば、従来の捩り減衰装置は、コイルばねを有するダンパと、慣性質量体を有する振動減衰器を備えている。ダンパのコイルばねは、グリースが充填された室に収容されており、振動減衰器も、同じ室に収容されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−4101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の捩り減衰装置においては、形式の異なる二つの減衰器(ダンパと振動減衰器)が同じ室に収容されており、二つの減衰器を異なる使用環境で作動させることができないという問題があった。例えば、一方の減衰器(ダンパ)は湿式の使用環境で(コイルばねがグリースに浸された状態で)作動させるのが適しており、もう一方の減衰器(振動減衰器)は乾式の使用環境で(慣性質量体がグリースに浸されていない状態で)作動させることが適しているような場合もあり得る。そのような場合であっても、従来の捩り減衰装置では、二つの減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させるには何らかの対策が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、二つの形式の異なる減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させることのできる振動吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の振動吸収装置は、エンジンの振動を吸収する振動吸収装置であって、前記振動吸収装置は、前記エンジンの動力を伝達する動力伝達軸に設けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられ、第1の減衰器が収納される第1の収納室と、前記ハウジングに設けられ、第2の減衰器が収納される第2の収納室と、前記第1の収納室と前記第2の収納室との間に設けられるシール部材と、を備え、前記第1の収納室と前記第2の収納室との間が前記シール部材によりシールされ、前記第1の減衰器と前記第2の減衰器が互いに異なる使用環境で作動するように構成されている。
【0007】
この構成により、第1の収納室と第2の収納室との間がシール部材によりシールされるので、二つの減衰器(第1の減衰器と形式の異なる第2の減衰器)を互いに異なる使用環境で作動させることができる。したがって、二つの減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させることができる。例えば、第1の減衰器を湿式で作動させ、第2の減衰器を乾式の環境のもとで作動させることができる。
【0008】
また、本発明の振動吸収装置では、前記第1の収納室と前記第2の収納室との間が、前記シール部材により液密的にシールされ、前記第1の減衰器は、振動吸収体が液体に浸された状態(例えば、グリースが充填された状態)で作動する湿式の減衰器であり、前記第2の減衰器は、振動吸収体が液体に浸されていない状態で作動する乾式の減衰器であってもよい。
【0009】
この構成により、第1の収納室と第2の収納室との間がシール部材により液密的にシールされるので、第1の減衰器を湿式で(振動吸収体が液体に浸された状態で)作動させ、第2の減衰器を乾式で(振動吸収体が液体に浸されていない状態で)作動させることができる。
【0010】
また、本発明の振動吸収装置では、前記ハウジングの内部には、センタープレートが設けられ、前記シール部材の一方の端部には、前記第1の収納室側に向けて延設され、前記ハウジングの内壁に当接する当接部が設けられ、前記シール部材の他方の端部には、前記第2の収納室側に向けて延設され、前記センタープレートに固定部材を用いて固定される固定部が設けられてもよい。
【0011】
この構成により、シール部材の一方の端部に設けられた当接部がハウジングの内壁に当接し、シール部材の他方の端部に設けられた固定部がセンタープレートに固定部材を用いて固定される。このようにして、第1の収納室と第2の収納室との間をシール部材によってシールすることができる。
【0012】
また、本発明の振動吸収装置では、前記ハウジングの内部には、センタープレートが設けられ、前記シール部材の一方の端部には、前記第1の収納室側に向けて延設され、前記ハウジングの内壁に当接する当接部が設けられ、前記シール部材の他方の端部には、前記センタープレートに形成された切欠き部に差し込まれる差し込み部が設けられてもよい。
【0013】
この構成により、シール部材の一方の端部に設けられた当接部がハウジングの内壁に当接し、シール部材の他方の端部に設けられた差し込み部がセンタープレートに形成された切欠き部に差し込まれる。このようにして、第1の収納室と第2の収納室との間をシール部材によってシールすることができる。
【0014】
また、本発明の振動吸収装置では、前記ハウジングの内部には、センタープレートが設けられ、前記シール部材の一方の端部には、前記ハウジングの内壁に形成された切欠き部に差し込まれる差し込み部が設けられ、前記シール部材の他方の端部には、前記第2の収納室側に向けて延設され、前記センタープレートに当接する当接部が設けられてもよい。
【0015】
この構成により、シール部材の一方の端部に設けられた差し込み部がハウジングの内壁に形成された切欠き部に差し込まれ、シール部材の他方の端部に設けられた当接部がセンタープレートに当接する。このようにして、第1の収納室と第2の収納室との間をシール部材によってシールすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1の収納室と第2の収納室との間をシールするシール部材を備えることにより、二つの形式の異なる減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態における振動吸収装置を車両に適用した場合の構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態における振動吸収装置の構成を示す軸方向からみた平面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における振動吸収装置の構成を示す図2のIII−III断面での要所部分説明図である。
図4】(a)図3に示すセンタープレートに対して片側に設けられるシール部材の形状を示す側面図である。(b)図3に示す片側のシール部材の形状を示す軸方向からみた平面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態における振動吸収装置の構成を示す図3の変形例である。
図6】(a)図5に示す片側のシール部材の形状を示す側面図である。(b)図5に示す片側のシール部材の形状を示す軸方向からみた平面図である。(c)図5に示すシール部材の部分形状を説明する変形例である。
図7】本発明の第3の実施の形態における振動吸収装置の構成を説明する図3の変形例である。
図8】(a)図7に示す片側のシール部材の形状を示す側面図である。(b)図7に示す片側のシール部材の形状を示す軸方向からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の振動吸収装置6について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、自動車の振動源となるエンジン等の振動を吸収する振動吸収装置の場合を例示する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の振動吸収装置の構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の振動吸収装置を、車両に適用した場合の構成図である。図1に示すように、車両1は、エンジン2と変速機3を備えており、エンジン2の回転駆動力(変速機3からの出力)は、デファレンシャルギア装置(デフ)4を介して、左右の車輪5に分配して伝達される。エンジン2と変速機3との間には、エンジン2の振動を吸収するための振動吸収装置6が備えられている。図1の例では、振動吸収装置6が変速機3の側に設けられているが、本発明の範囲はこれに限定されず、振動吸収装置6はエンジン2の側に設けることもできる。また、振動吸収装置6は、変速機3のハウジング内に設けることもできる。
【0020】
図2および図3は、振動吸収装置6の構成を説明する説明図である。図2および図3に示すように、振動吸収装置6は、エンジン2の動力(回転駆動力)を伝達するクランク軸7に固定され、クランク軸7と一体回転するハウジング8を備えている。図2および図3に示すように、ハウジング8は、クランク軸7の軸方向からみた平面視で中空の円形状(リング形状)に構成され外周がクランク軸7の軸方向に沿って水平となり、ハウジングカバーと変速機側の軸方向端部が溶接により一体となって、ハウジング8の内径の固定孔41にてクランク軸7にボルト等の締結部材42により取り付けられている。
【0021】
この振動吸収装置6は、形式の異なる二つの減衰器(第1の減衰器と第2の減衰器)をハウジング内部に収納する。そして、図2および図3に示すように、ハウジング内には、第1の減衰器であるオイル式ダンパ9が収納される第1の収納室10と、第2の減衰器であるオイル式とは形式の異なる振り子式ダンパ11が収納される第2の収納室12が径方向異なる位置に設けられている。この場合、第1の収納室10は外周側(クランク軸7の径方向外側)に配置され、第2の収納室12は内周側(クランク軸7の径方向内側)に配置されている。すなわち、オイル式ダンパ9が振り子式ダンパ11よりも径方向外側に配置されている。
【0022】
具体的には、ハウジング8は、図3に示されるように、ハウジング8の内部中央にセンタープレート13が設けられ、センタープレート13の軸方向両側および外周の周囲を覆うハウジングプレート14により構成されている。なお、センタープレート13はドリブンプレートと呼ぶこともでき、ハウジングプレート14はドライブプレートと呼ぶこともできる。センタープレート13には、質量体15が外周側(径方向外側)で転動する転動面16を有する環状の転動面部材17と、質量体15の内周側(径方向内側)への移動を規制する規制面18を有するプレス加工された環状の規制面部材19が取り付けられている。転動面部材17は固定ピン20によりセンタープレート13に位置決めされて固定されており、質量体15は軸方向の側面が規制面18から径方向に連続的に延びる側壁190によって軸方向の移動が規制されており、規制面部材19は質量体15に対して径方向の外側および内側でそれぞれ固定ピン(かしめピン)20、21により、図3に示すようにセンタープレート13を軸方向の両側から挟んで位置決めされて固定されている。また、規制面部材19を固定する固定ピン21により、センタープレート13とフライホイール40とは間に規制面部材19を挟んで一体に固定されており、図示しないクラッチを介してフライホイール40は変速機3の入力軸へとつながるよう構成されている。この様に、ハウジングプレート14により第1の収納室10が形成され、センタープレート13と転動面部材17と規制面部材19により第2の収納室12が形成されている。
【0023】
また、図2および図3に示すように、第1の収納室10と第2の収納室12との間には径方向へのオイルの流れを阻止するシール部材22が取り付けられている。このシール部材22により、第1の収納室10と第2の収納室12との間が液密的にシールされており、オイル式ダンパ9と振り子式ダンパ11が互いに異なる使用環境で作動することが可能である。この場合、オイル式ダンパ9は、振動吸収体であるコイルスプリング23がグリースに浸された状態(例えば、コイルスプリング23の周囲にグリースが充填された状態)で作動することが可能であり、振り子式ダンパ11は、振動吸収体である金属から成る質量体15がグリースに浸されていない状態で作動することが可能である。ここでグリースは成分としてオイルを含み、オイル式ダンパ9の伸縮によるダンパ機能を得るとき(ダンパ作動時)に所定温度以上になると、グリースは液体状へと変化する。このため、オイル式ダンパ9は湿式の減衰器と呼ぶことができ、振り子式ダンパ11は乾式の減衰器と呼ぶことができる。この構成ではエンジン2で発生する振動がクランク軸7に伝わり、オイル式ダンパ9ではクランク軸7に固定されるハウジング8からコイルスプリング9に振動が伝わり、コイルスプリング9の伸縮により振動が吸収された後、センタープレート13を介して変速機側へと伝わる構成となっている。また、この場合、振り子式ダンパ11では、センタープレート13に対して両側に設けられる質量体15が同時に、周方向に円弧状となった規制面18に規制された状態で、第2の収容室内を周方向に円弧状となった転動面16に沿って径方向および周方向に転動することによりエンジン2からの振動が吸収された後、変速機側に伝わるようになっている。
【0024】
オイル式ダンパ9と振り子式ダンパ11は、公知のものを利用することができる。なお、ここでは、湿式の減衰器がオイル式ダンパ9であり、乾式の減衰器が振り子式ダンパ11である場合を例示して説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、湿式の減衰器としてオイル式ダンパ以外のものを使用してもよく、乾式の減衰器として振り子式ダンパ以外のものを使用してもよい。
【0025】
図4はセンタープレート13に対して軸方向の両側に設けられる片側での、本実施の形態におけるシール部材22の構成を説明する図である。図4に示すように、シール部材22はセンタープレート13に対して左右対称形状となっており、クランク軸7の軸方向からみた平面視で中空の円形状(リング形状)に構成されている。シール部材22の一方の端部は、外周側(クランク軸7の径方向外側)すなわち第1の収納室10の側に向けて延ばされており、第1の収納室10を形成するハウジングプレート14の内壁に圧接した状態で当接している。また、シール部材22の他方の端部は、内周側(クランク軸7の径方向内側)すなわち第2の収納室12の側に向けて延ばされており、固定ピン20によりセンタープレート13と一体に固定されている。この場合、図4(a)に示すように、シール部材22の一方の端部に、ハウジングプレート14の内壁に当接するフランジ状の当接部24がリング状に設けられており、シール部材22の他方の端部に、センタープレート13に固定ピン20により固定される固定部25が周方向において、図4(b)に示すよう等間隔で数箇所に設けられている。
【0026】
このような本発明の第1の実施の形態の振動吸収装置6によれば、第1の収納室10と第2の収納室12との間がシール部材22により確実にシールされるので、二つの減衰器(オイル式ダンパ9と振り子式ダンパ11)を互いに異なる使用環境で作動させることができる。そのため、二つの減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させることができる。
【0027】
より具体的には、第1の収納室10と第2の収納室12との間がシール部材22により液密的にシールされるので、オイル式ダンパ9を湿式で(コイルスプリング23がグリースに浸された状態で)作動させ、振り子式ダンパ11を乾式で(質量体15がグリースに浸されていない状態で)作動させることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、シール部材22の一方の端部に設けられた当接部24がハウジングプレート14の内壁に当接し、シール部材22の他方の端部に設けられた固定部25が固定ピン20を用いてセンタープレート13に固定される。このようにして、第1の収納室10と第2の収納室12との間をシール部材22によって液密的にシールすることができる。
【0029】
また、本実施の形態では、第2の減衰器(振り子式ダンパ11)を設けないこととするだけで、減衰器が一つのみ(第1の減衰器のみ)の振動吸収装置6の態様とすることができる。したがって、第2の減衰器あり/なしという二つの態様を同一プラットフォームで作ることができる。そのため、従来、第2の減衰器なしの振動吸収装置6を作るには、そのための金型製作が必要とされていたところ、本実施の形態によれば、そのような金型製作が不要となり、その分、低コスト化を図ることができる。また、オイル式ダンパ9の収納室(第1の収納室10)と振り子式ダンパ11の収納室(第2の収納室12)を分ける(シール部材22で区切る)ことにより、2つの収納室間に区切りのない従来の構成に比べて、オイル式ダンパ9のために使用するグリースの量を削減することができ、その分、低コスト化を図ることができる。上記構成において、センタープレート13に対して、質量体15、転動面16を有する転動面部材17、規制面18を有する規制面部材19およびシール部材22を軸方向の両側に左右対称で設けているが、片側のみに設けることもできる。
【0030】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の振動吸収装置6について説明する。ここでは、第2の実施の形態の振動吸収装置6が、図3に示す第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。第1の実施の形態と同じ構成要素には、同じ図番を付与している。
【0031】
図5および図6は、第2実施の形態のシール部材26の構成を示す図である。図5および図6に示すように、シール部材26の一方の端部は、外周側(クランク軸7の径方向外側)すなわち第1の収納室10の側に向けて延ばされており、ハウジングプレート14の内壁に当接している。また、シール部材26の他方の端部は、センタープレート13の側面に軸方向に形成された切欠き部27に周方向において等間隔に複数個所で差し込まれている。この場合、シール部材26の一方の端部に、図6(a)に示すように、ハウジングプレート14の内壁に当接する当接部28が設けられており、図6(b)に示すリング形状のシール部材26の他方の端部に、センタープレート13の切欠き部27に差し込まれる差し込み部29が、図6(c)のように設けられているともいえる。
【0032】
このような本発明の第2の実施の形態の振動吸収装置6によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0033】
本実施の形態では、シール部材26の一方の端部に設けられた当接部28がハウジングプレート14の内壁に当接し、シール部材26の他方の端部に設けられた差し込み部29がセンタープレート13の切欠き部27に差し込まれる。このようにして、第1の収納室10と第2の収納室12との間を、比較的低コストで簡単な構成によりシール部材26によって液密的にシールすることができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態の振動吸収装置6について説明する。ここでは、第3の実施の形態の振動吸収装置6についても同様、第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0035】
図7および図8は、第3の実施の形態のシール部材30の構成を示す図である。図7および図8に示すように、シール部材30の一方の端部は、図7に示すようにハウジングプレート14の内壁に軸方向に沿って形成された切欠き部31に差し込まれている。また、シール部材30の他方の端部は、内周側(クランク軸7の径方向内側)すなわち第2の収納室12の側に向けて延ばされており、センタープレート13の側面に当接している。この場合、シール部材30の一方の端部に、ハウジングプレート14の切欠き部31に差し込まれる差し込み部32が図8(a)のように設けられており、シール部材30の他方の端部に、センタープレート13に当接する当接部33が図8(b)のように設けられている。
【0036】
このような本発明の第3の実施の形態の振動吸収装置6によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0037】
本実施の形態では、シール部材30の一方の端部に設けられた差し込み部32がハウジングプレート14の内壁に形成された切欠き部31に差し込まれ、シール部材30の他方の端部に設けられた当接部33がセンタープレート13に当接する。このようにして、第1の収納室10と第2の収納室12との間をシール部材30によって液密的にシールすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる振動吸収装置は、二つの減衰器をそれぞれの減衰器に適した使用環境で作動させることができるという効果を有し、自動車のエンジンの振動を吸収する振動吸収装置等として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2 エンジン
3 変速機
4 デファレンシャルギア装置(デフ)
5 車輪
6 振動吸収装置
7 クランク軸
8 ハウジング
9 オイル式ダンパ(第1の減衰器)
10 第1の収納室
11 振り子式ダンパ(第2の減衰器)
12 第2の収納室
13 センタープレート(ドリブンプレート)
14 ハウジングプレート(ドライブプレート)
15 質量体(振動吸収体)
16 転動面
17 転動面部材
18 規制面
19 規制面部材
20 固定ピン
21 固定ピン
22 シール部材
23 コイルスプリング(振動吸収体)
24 当接部
25 固定部
26 シール部材
27 切欠き部
28 当接部
29 差し込み部
30 シール部材
31 切欠き部
32 差し込み部
33 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8