(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554839
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】経口用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20190729BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20190729BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20190729BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20190729BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20190729BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20190729BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20190729BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20190729BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20190729BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20190729BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/192
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/46
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/08
A61P29/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-51755(P2015-51755)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2015-199704(P2015-199704A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2018年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-75985(P2014-75985)
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松土 貴一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 純一
【審査官】
参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−096749(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/133408(WO,A1)
【文献】
特開2008−081462(JP,A)
【文献】
特開2007−131561(JP,A)
【文献】
特開平05−335279(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/041887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61K 9/08
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 31/192
A61K 47/18
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/46
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン、カルボシステイン、および甘味剤を含有し、前記甘味剤がスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビア又はサッカリンナトリウムであることを特徴とする経口用組成物。
【請求項2】
剤形が、顆粒剤、散剤、口腔内崩壊錠、口腔内速溶錠、チュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤、ドライシロップ剤または液剤である請求項1に記載の経口用組成物。
【請求項3】
甘味剤の含有量が、イブプロフェン1質量部に対して0.02質量部以上である請求項1に記載の経口用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェン、カルボシステインを含有する組成物に関し、さらに詳しくは口腔刺激が抑制され、服用性が向上したイブプロフェン含有経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
頭痛薬や総合感冒薬の有効成分として汎用されているイブプロフェンは、苦味や口腔刺激等の不快感を有することからイブプロフェンを含む組成物において、不快感を抑制することは、組成物の服用性を向上させ、製品の差別化を図ることができるなど、大きなメリットがある。従って、イブプロフェンと甘味剤等を組み合わせた服用性向上に関する特許出願は複数存在する(特許文献1、特許文献2)。しかし、いずれもイブプロフェン由来の口腔刺激を十分抑制するものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-290199
【特許文献2】特開2001-106639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はイブプロフェン由来の口腔刺激を抑制し、服用性良好な経口用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イブプロフェンにカルボシステインと甘味剤を組み合わせることで、口腔刺激が大きく抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(1)イブプロフェン、カルボシステインおよび甘味剤を含有することを特徴とする経口用組成物、
(2)剤形が、顆粒剤、散剤、口腔内崩壊錠、口腔内速溶錠、チュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤、ドライシロップ剤または液剤である(1)に記載の経口用組成物、
(3)甘味剤が、高甘味度甘味剤である(1)に記載の経口用組成物、
(4)高甘味度甘味剤が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビア又はサッカリンナトリウムである(3)に記載の経口用組成物、
(5)甘味剤の含有量が、イブプロフェン1質量部に対して0.02質量部以上である(1)に記載の経口用組成物、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、有効成分としてイブプロフェンを配合した服用性の良い製剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のイブプロフェンの含有量は、経口用組成物中50質量%以下が好ましく、3質量%〜44質量%が特に好ましい。50質量%を超えるとイブプロフェンの口腔刺激を抑制できない場合があるからである。
【0008】
本発明のカルボシステインの含有量は、経口用組成物中90質量%以下が好ましく、8質量%〜76質量%がより好ましく、8質量%〜55質量%が特に好ましい。また、イブプロフェン1質量部に対して0.8〜5 質量部が好ましく、さらに好ましくは1.25〜3.5質量部である。
【0009】
本発明の甘味剤としては、例えばスクラロース、アスパルテーム、ステビア、グリチルチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムK、ソーマチン、ネオテーム等の高甘味度甘味剤、アマチャ抽出物、砂糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、水飴、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、トレハロース、乳糖、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトールが好ましい。このうち、特に好ましいのは、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、グリチルチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムK、アマチャ抽出物、ソーマチン、ネオテームであり、最も好まし
いのはスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビアまたはサッカリンナトリウムである。甘味剤の含有量は、経口用組成物中1質量%〜10質量%が好ましく、4質量%〜8質量%がより好ましい。また、甘味剤の含有量は、イブプロフェン1質量部に対して0.02質量部以上が好ましい。本発明の甘味剤としてスクラロースを配合する場合は、イブプロフェン1質量部に対して0.03質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。アスパルテームを配合する場合は、0.02質量部以上が好ましく、さらに好ましくは0.17質量部以上である。アセスルファムKを配合する場合は、イブプロフェン1質量部に対して0.02質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましい。ステビアを配合する場合は、イブプロフェン1質量部に対して0.005質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がさらに好ましい。サッカリンナトリウムを配合する場合は、イブプロフェン1質量部に対して0.02質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましい。
【0010】
本発明の経口用組成物としては、固形剤のみならず、液剤(懸濁剤含む)も含まれる。
【0011】
本発明の経口用組成物は、イブプロフェンを被覆しなくてもイブプロフェンの口腔刺激を抑制することから、通常被覆を行うことが困難な、例えば顆粒剤、散剤、口腔内崩壊錠、口腔内速溶錠、チュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤等が好ましく、特に水や温湯に溶解または分散させて服用するタイプの散剤や顆粒剤(例えばドライシロップ剤)として実施する意義が大きい。本発明の経口用組成物の製造方法は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
以下に、製造例、実施例、比較例を挙げ、本説明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例等に何ら限定されるものではない。
【0013】
製造例
(1)各組成物の調製
下記に示す実施例1〜10及び比較例1〜3の経口用組成物を調製した。
【0014】
実施例1
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、スクラロース30mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0015】
実施例2
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、アスパルテーム120mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0016】
実施例3
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、アスパルテーム104mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0017】
実施例4
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、アスパルテーム52mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0018】
実施例5
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、アスパルテーム26mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0019】
実施例6
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、アセスルファムカリウム120mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0020】
実施例7
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、ステビア15mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0021】
実施例8
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mg、サッカリンナトリウム120mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0022】
実施例9
イブプロフェン450mg、カルボシステイン1500mg、アスパルテーム120mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0023】
実施例10
イブプロフェン450mg、カルボシステイン1500mg、アスパルテーム26mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0024】
比較例1
イブプロフェン600mg、スクラロース30mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0025】
比較例2
イブプロフェン600mg、アスパルテーム104mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0026】
比較例3
イブプロフェン600mg、カルボシステイン750mgを量り、30メッシュの篩を通し、乳鉢ですりつぶして混合した。
【0027】
(2)試験方法
上記実施例1〜5及び比較例1〜3の組成物を表2に示した一回服用量をパネルが口に含み、5秒後、さらに20mLの水を口に含み、5秒後に吐き出し、感じた口腔刺激の最大値を、比較例1をコントロールとして表1の評価基準に基づき評価した。上記実施例6〜10の組成物についても、同様の方法で試験を行い、比較例1をコントロールとして表1の評価基準に基づき評価した。
【0028】
【表1】
【0029】
結果を表2〜3に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
ここで、甘味度とは甘味剤の対砂糖甘味度に処方中の高甘味度甘味剤の重量比をかけた値と定義した。対砂糖甘味度は同じ濃度の砂糖水溶液と比較した際に、甘味強度を砂糖水溶液の何倍感じるかであり、スクラロースを600倍、アスパルテームを200倍、アセスルファムKを200倍、ステビアを180倍、サッカリンナトリウムを450倍として計算した。
【0033】
比較例1、2、3に示したとおり、イブプロフェンと甘味剤、イブプロフェンとカルボシステインを用いた場合に口腔刺激に大きな変化はなく、口腔刺激は甘味度や一回服用量による口腔刺激改善効果はみられなかった。これに対し、イブプロフェン、カルボシステイン、及び甘味剤を組み合わせた実施例1〜10の組成物は、口腔刺激が大きく抑制されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、従来のフィルムコーティングや糖衣といった方法を用いないでも、イブプロフェンを含有した服用性が良好な経口用組成物を提供することが可能となったので、剤形のバリエーションが広がり、消費者のニーズに、より的確に対応できるようになった。