(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の舌圧測定装置では、弁及び加圧部によってバルーン内の圧力を所定の圧力に調整した後、舌圧測定を行っているので、正確な測定値が得られるという利点があるものの、弁及び加圧部からなる圧力調整機構を設けなければならない分、部品コスト及び組立コストが上昇し、ひいては舌圧測定装置が高価なものになる。舌圧測定装置が高価なものになると、舌圧測定装置の普及が妨げられて高齢者のQOL向上という目的を達成することができない。
【0008】
そこで、特許文献1の舌圧測定装置の圧力調整機構を省略し、大気圧を基準としてバルーン内の圧力を測定する方法が考えられる。ところが、圧力調整機構を省略すると、
図15に示すような接続構造の場合、測定誤差が生じてしまう恐れがある。すなわち、接続作業としては
図15(a)〜(c)に示す順で進んでいき、まず、バルーン式プローブ100の筒部材102の端部を、メスコネクタ106に挿入するとともに雄ねじ103を雌ねじ107に螺合させる。このとき、(b)に示すようにシール部材104がメスコネクタ106の内周面に密着してシール状態となる。そして、雄ねじ103を雌ねじ107にさらに螺合させていくと、シール部材104及び筒部材102の端部が軸方向に移動していき、シール部材104及び筒部材102が移動したことによって、測定系の内部の空気が圧縮され、測定系の内部の圧力が大気圧よりも高い圧力状態となる。つまり、大気圧を基準として測定しようとした際に、測定系の内部の圧力、すなわちバルーン内の圧力が既に大気圧以上になっているので、測定誤差が生じてしまう。
【0009】
また、バルーン式プローブの接続構造としては、ねじを用いない構造として、例えばルアーテーパ等があるが、この場合も、バルーン式プローブの筒部材が軸方向に移動することになるので、上述したように測定系の内部の圧力が大気圧よりも高い圧力となり、測定誤差が生じてしまう。
【0010】
また、口腔関連圧力としては、舌圧以外にも、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などがあり、いずれも正確に測定したいという要求があり、また、口腔関連以外の圧力測定においても
図15に示すような接続構造では同様な問題が生じ得る。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定系の内部の圧力を調整する圧力調整機構を設けずに大気圧を基準として安価に圧力を測定する場合に、測定系の内部の圧力がプローブの接続によって大気圧よりも上昇してしまうのを抑制し、圧力を正確に測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、プローブの接続作業時には測定系の内部と外部とを連通状態にして測定系の内部の圧力を大気圧と同等にしておき、接続作業後には測定系の内部と外部とを遮断して測定系の内部の圧力が外部に逃げないようにした。
【0013】
第1の発明は、
外力の作用によって変形する中空状の受圧部と、該受圧部の内部に連通する筒部材とを有し、圧力を測定するためのプローブと、
上記プローブに管を介して接続される圧力検知部を有し、大気圧を基準にして上記受圧部の内部の圧力を測定するための圧力測定装置とを接続する圧力測定用プローブの接続構造において、
上記プローブの上記筒部材には、上記管に設けられたコネクタに挿入されて接続される接続部と、上記筒部材の内部と外部とを連通させる連通孔とが設けられ、
上記プローブには、上記連通孔を大気に開放する大気開放状態と、上記連通孔を大気に非開放にする非開放状態とに切り替えるための切替部材が設けられ
、
上記切替部材は、上記筒部材が相対的に動作可能に挿入される筒状に形成され、
上記切替部材の周壁部には、該周壁部を貫通する貫通孔が設けられ、
上記プローブには、上記連通孔の周縁部を囲むように形成され、上記連通孔と上記切替部材における周壁部の内周面との間をシールするシール部材が設けられ、
上記切替部材は、上記筒部材に対して動作させることにより、上記シール部材の内方に上記貫通孔が配置されて上記連通孔を大気に開放する大気開放状態と、上記シール部材の外方に上記貫通孔が配置されて上記連通孔を大気に非開放にする非開放状態とに切り替えられることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、プローブを圧力測定装置に接続する際には、初めに、切替部材によってプローブの筒部材の連通孔を大気開放状態にしておき、この大気開放状態で筒部材の接続部を、管のコネクタに挿入して接続する。筒部材の接続部を管のコネクタに挿入する際には、連通孔が大気に開放されているので、受圧部、筒部材及び管からなる測定系の内部の圧力は大気圧と同等になる。その後、切替部材によって連通孔を非開放状態に切り替えると、測定系の内部が外部と遮断され、測定系の内部の圧力は大気圧と同等のまま維持される。この状態でプローブの受圧部を被測定者の口腔に挿入して例えば舌等によって受圧部を押圧すると、受圧部が変形して内部の圧力が上昇し、この圧力が圧力測定装置の圧力検知部によって検知される。したがって、測定前における測定系の内部の圧力を大気圧とすることができるので、圧力測定装置の圧力調整機構を省略して大気圧を基準としながら、正確な圧力が得られる。
【0015】
尚、プローブの受圧部の位置を変えることで、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力等も測定することが可能であるし、口腔関連圧力以外の圧力を測定することもできる
。
【0016】
また、切替部材を筒部材に対して動作させて、シール部材の内方に切替部材の貫通孔が配置されると、筒部材の連通孔と切替部材の貫通孔とが連通し、これにより、連通孔が貫通孔を介して大気に開放される。一方、この大気開放状態から切替部材を筒部材に対して動作させて、シール部材の外方に切替部材の貫通孔を配置すると、連通孔と、切替部材における周壁部の内周面との間がシール部材によりシールされて該周壁部によって連通孔が覆われ、これにより、連通孔が非開放状態になる。
【0017】
第
2の発明は、第
1の発明において、
上記切替部材は、上記筒部材の中心線周りに回動することにより、上記連通孔を大気に開放する大気開放状態と、上記連通孔を大気に非開放にする非開放状態とに切り替えられることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、大気開放状態と非開放状態とに切り替える際に、切替部材を筒部材の中心線周りに回動させるだけで済み、操作性がより一層良好になる。
【0019】
第
3の発明は、第
2の発明において、
上記筒部材の上記接続部には、上記コネクタに対して相対的に回動するのを阻止する回り止め部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、筒部材がコネクタに対して回動しなくなるので、切替部材を筒部材の中心線周りに回動させる際に、筒部材が切替部材につられて回動してしまうのが抑制される。
【0021】
第
4の発明は、第1から
3のいずれか1つの発明において、
上記コネクタには、コネクタ側係合部が設けられ、
上記切替部材には、上記連通孔を大気に開放する大気開放状態にあるときに上記コネクタ側係合部から離脱し、上記連通孔を大気に非開放にする非開放状態にあるときに上記コネクタ側係合部に係合する切替部材側係合部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、連通孔が非開放状態にあるとき、切替部材側係合部がコネクタ側係合部に係合するので、切替部材がコネクタから不意に離脱することはない。一方、連通孔を大気開放状態にすると、切替部材側係合部がコネクタ側係合部から離脱するので、プローブをコネクタから容易に取り外すことが可能になる。
【0023】
第
5の発明は、第1から
4のいずれか1つの発明において、
上記プローブの上記筒部材は、上記受圧部よりも硬い硬質材料で構成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、圧力の測定時やプローブの接続作業時に、プローブの筒部材が潰れに難くなるので、筒部材の潰れによって測定系の内部の圧力が変動し難くなる。これにより、圧力の測定精度が向上する。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、プローブの受圧部の内部に連通する連通孔を筒部材に設け、この連通孔を大気開放状態と非開放状態とに切り替えるようにしたので、プローブの接続時には測定系の内部の圧力を大気圧と同等にしておき、接続後には測定系の内部と外部とを遮断して測定圧が外部に逃げないようにすることができる。これにより、測定系の内部の圧力を調整する圧力調整機構を設けずに大気圧を基準として安価に圧力を測定する場合に、正確な測定値を得ることができる。
【0026】
また、筒部材が挿入される切替部材の周壁部に貫通孔を設け、プローブに、連通孔の周縁部を囲むように形成されたシール部材を設け、切替部材を筒部材に対して動作させることにより、シール部材の内方に切替部材の貫通孔を配置して連通孔を大気に開放する大気開放状態と、シール部材の外方に切替部材の貫通孔を配置して連通孔を非開放にする非開放状態とに切り替えるようにしたので、切替部材を筒部材に対して相対的に移動させるだけで連通孔を大気開放状態と非開放状態とに切り替えることができ、操作性を良好にすることができる。
【0027】
第
2の発明によれば、切替部材を筒部材の中心線周りに回動させることによって連通孔を大気開放状態と非開放状態とに切り替えることができるので、操作性をより一層良好にすることができる。
【0028】
第
3の発明によれば、筒部材がコネクタに対して回動しなくなるので、切替部材を筒部材の中心線周りに回動させる際に、筒部材が切替部材につられて回動してしまうのを抑制することができ、大気開放状態と非開放状態とに確実に切り替えることができる。
【0029】
第
4の発明によれば、連通孔が非開放状態にあるときにコネクタと切替部材とを係合させることができるので、切替部材がコネクタから不意に離脱するのを抑制できる。
【0030】
第
5の発明によれば、プローブの筒部材が硬質材料で構成されているので、圧力の測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るバルーン式プローブ1を示している。バルーン式プローブ1は、例えば舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力を測定する際に使用する口腔関連圧力測定用のものであり、
図10に示す圧力測定装置60に接続される。圧力測定装置60は、圧力検知部61と、表示部62と、電源部63とを備えている。圧力検知部61は、例えば圧電素子等を有しており、バルーン式プローブ1内の空気の圧力変動を電圧によって得ることができるように構成されている。また、圧力検知部61は、大気圧を検知することができるように構成されており、この大気圧を基準にしてバルーン式プローブ1内の空気の圧力を得ることができる。表示部62は、圧力検知部61で検知された圧力を視覚によって認識できるように表示するためのものであり、例えば、バルーン式プローブ1内の空気の圧力を、大気圧を基準として数値で表示してもよいし、色や、表示セグメントの個数等でバルーン式プローブ1内の空気の圧力の高低を相対的に表示するようにしてもよい。電源部63は、圧力検知部61及び表示部62に電力を供給するためのものであり、例えば電池等で構成することができる。このように、本実施形態の圧力測定装置60は、特開2001−275994号公報に開示されている圧力測定装置とは異なり、バルーン式プローブ1内の空気の圧力を所定の圧力に調整するための弁や加圧部等からなる圧力調整機構が無いので安価な装置とすることができる。
【0034】
圧力測定装置60の圧力検知部61には、バルーン式プローブ1内の空気の圧力変動を伝えるためのチューブ(管)64が接続されている。チューブ64は、測定時にバルーン式プローブ1内の空気の圧力が変動した際に膨張しないように構成された周知のものであり、柔軟性を有する管であってもよいし、硬質部材からなる管であってもよい。
図1に仮想線で示すようにチューブ64の先端部には、コネクタ70が設けられている。尚、この実施形態において先端側とは
図1等において上側、即ち、被測定者の口腔に挿入する側であり、基端側とは
図1等において下側である。
【0035】
図2や
図3、
図9に示すように、コネクタ70は、チューブ64の内部に連通する円筒状に形成され、基端部がチューブ64の先端部に挿入されて気密に接続されている。
図4及び
図9(a)に示すように、コネクタ70の内周面には、一対の平坦面71、71が形成されている。平坦面71、71は、コネクタ70の内周面の中心線方向中間部から基端部に亘って延びており、互いに対向している。コネクタ70の材料としては、例えば硬質プラスチックを挙げることができ、ポリアセタールやポリカーボネート等が好ましい。
【0036】
コネクタ70の先端面には、コネクタ側係合部72、72が中心線方向に突出するように設けられている。コネクタ側係合部72、72は、コネクタ70の周方向に互いに間隔をあけて配置されている。コネクタ側係合部72には、コネクタ70の周方向に延びる溝72aが形成されている。溝72aは、コネクタ70の内方に向けて開放するとともに、長手方向(コネクタ70の周方向)の一端部も開放している。また、コネクタ70の外周面には、溝70aが形成され、この溝70aにOリングからなるシール部材73が配設されている。
【0037】
図1〜
図4に示すように、バルーン式プローブ1は、外力の作用によって変形する中空状の受圧部であるバルーン10と、バルーン10の内部に連通する筒部材20と、筒部材20に設けられた連通孔21を大気開放状態と非開放状態とに切り替えるための切替部材40とを備えている。
【0038】
バルーン10は、全体が例えば天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等の弾性体で構成されており、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力が外力として作用した際に容易に潰れ変形し、外力が取り除かれると元の形状に復元する性質を有している。バルーン10は横方向に扁平な形状とされている。これにより、バルーン10を口腔に挿入した際に例えば舌の上に置いた際に安定させることが可能になるので舌圧を測定しやすくなる。バルーン10の大きさは、被測定者の舌の上に載る程度の大きさとされている。バルーン10は、筒部材20に接続されている。
【0039】
筒部材20は、バルーン10を構成する材料よりも硬質な硬質材料、例えば硬質プラスチックで構成されており、特に、ポリカーボネートが好ましい。
図4に示すように、筒部材20の内部は、バルーン10の内部と連通している。
図2及び
図3に示すように、筒部材20の基端部には、チューブ64に設けられたコネクタ70に挿入されて接続される筒状の接続部21が設けられている。
図4に示すように、接続部21は、コネクタ70の平坦面71、71が形成された部位まで挿入される。
図8にも示すように、接続部21の外周面には、コネクタ70の平坦面71、71に当接する当接面21a、21aが形成されている。当接面21a、21aは、筒部材20の中心線方向と平行に延びており、互いに筒部材20の周方向に離れている。当接面21a、21aは、接続部21におけるコネクタ70への挿入方向を基準としたとき、挿入方向先端部から基端部近傍に亘って延びている。接続部21の当接面21a、21aがコネクタ70の平坦面71、71に当接することで、接続部21がコネクタ70に対して回動するのが阻止される。つまり、当接面21a、21aは、接続部21がコネクタ70に対して相対的に回動するのを阻止する回り止め部である。これにより、例えば後述する接続作業時にコネクタ70を把持しておけば、筒部材20に対して回動力が作用しても、筒部材20が中心線周りに回動することはなくなる。
【0040】
図8に示すように、筒部材20の外周面には、長手方向中央部よりも基端部寄りの部位に、周方向に連続して延びる第1溝20aと第2溝20bとが設けられている。第1溝20aは第2溝20bよりも筒部材20の基端部に近い側に位置しており、接続部21に形成されたものである。
図4に示すように、第1溝20a及び第2溝20bには、それぞれOリングからなる第1シール部材S1及び第2シール部材S2が嵌め込まれている。第1シール部材S1は、接続部21をコネクタ70に挿入した状態で、該コネクタ70の内周面に密着し、接続部21の外周面と、コネクタ70の内周面との間をシールするためのものである。
【0041】
図8に示すように、筒部材20の外周面には、長手方向中央部よりも先端寄りの部位に、周方向に連続して延びる第3溝20cが設けられている。
図4に示すように、第3溝20cには、Oリングからなる第3シール部材S3が嵌め込まれている。
【0042】
筒部材20におけるバルーン10と接続部21との間の部分は略円筒形状であり、従って、筒部材20の外周面は、バルーン10と接続部21との間が円周面で構成されている。筒部材20には、該筒部材20の内部と外部とを連通させる連通孔24が筒部材20を貫通するように設けられている。
図8(b)にも示すように、連通孔24は、第2溝20bと第3溝20cとの間において筒部材20の長手方向中央部よりも先端寄りに位置付けられている。筒部材20の外周面において連通孔24の周りには、連通孔24の周縁部を囲むように環状に延びる第4溝20dが設けられている。
図4に示すように、第4溝20dには、第4シール部材S4が嵌め込まれている。第4シール部材S4は、連通孔24の周縁部を囲むように形成されたOリングからなり、連通孔24の周縁部と、後述する切替部材40における周壁部の内周面との間をシールするためのものである。
【0043】
図3や
図4に示すように、切替部材40は、筒部材20が相対的に動作可能に挿入される円筒状に形成されている。切替部材40は、筒部材20を構成する材料と同様な硬質材料で構成されており、例えば硬質プラスチックであり、特に、ポリカーボネートが好ましい。
【0044】
切替部材40の内径は、第2シール部材S2、第3シール部材S3及び第4シール部材S4がそれぞれ該切替部材40の内周面に密着するように設定されている。第2シール部材S2及び第3シール部材S3は、切替部材40の内周面において長手方向に離れた部位にそれぞれ密着し、これにより、シール性が確保される。また、第4シール部材S4は、切替部材40の内周面において第2シール部材S2及び第3シール部材S3が密着する部位の間に密着し、これにより、連通孔24と切替部材40の周壁部の内周面との間のシール性が確保される。
【0045】
切替部材40の先端部には、径方向外方へ延出するフランジ41が設けられている。
図7(b)に示すように、フランジ41は、平面視で楕円形に近い形状であり、所定方向に長くなっている。
【0046】
切替部材40の基端部には、コネクタ70のコネクタ側係合部72、72に係合する切替部材側係合部42、42が設けられている。
図7(c)に示すように、切替部材側係合部42、42は、切替部材40の外周面から突出して周方向に延びる突条部で構成されており、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。切替部材側係合部42、42は、コネクタ側係合部72、72の溝72a、72aに対して該溝72a、72aの長手方向の開放部分から入り込むことによって係合する。
【0047】
また、切替部材40の周壁部には、該周壁部を貫通する貫通孔43が設けられている。
図4に示すように、貫通孔43の形成部位は、切替部材40に筒部材20を挿入して組み付けた状態で、筒部材20の連通孔24と一致する部位である。
【0048】
すなわち、切替部材40は、筒部材20に対して回動させることが可能になっている。切替部材40を筒部材20に対して回動させることにより、
図4に示すように、第4シール部材S4の内方に貫通孔43が配置される状態と、
図6に示すように、第4シール部材S4の外方に貫通孔43が配置される状態とに切り替えられる。第4シール部材S4の内方に貫通孔43が配置される状態では、貫通孔43と連通孔24とが連通するので、連通孔24が貫通孔43を介して大気に開放される大気開放状態になる。一方、第4シール部材S4の外方に貫通孔43が配置される状態では、連通孔24が切替部材40の周壁部によって覆われ、かつ、連通孔24の周縁部が第4シール部材S4によってシールされるので、連通孔24は大気と連通しない、即ち、大気に非開放とされる非開放状態になる。つまり、切替部材40は、連通孔24を大気に開放する大気開放状態と、連通孔24を大気に非開放にする非開放状態とに切り替えるための部材である。
【0049】
この実施形態1の測定系とは、バルーン10、筒部材20、コネクタ70及びチューブ64で構成された系であり、測定時に閉空間を形成する。
【0050】
次に、上記のように構成されたバルーン式プローブ1を圧力測定装置60に接続する要領について説明する。尚、圧力測定装置60の圧力検知部61には予めチューブ64の基端部が接続されており、このチューブ64の先端部にはコネクタ70が設けられている。
【0051】
まず、
図2及び
図4に示すように、バルーン式プローブ1の切替部材40を筒部材20の中心線周りに回動させて第4シール部材S4の内方に切替部材40の貫通孔43を配置し、連通孔24を大気開放状態にする。大気開放状態では、切替部材40におけるフランジ41の長手方向と、バルーン10の断面の長手方向とが直交する位置関係となるので、フランジ41の長手方向の両端部が突出することになる。これにより、大気開放状態であること、及び切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72に係合していないことが明確に判別できる。
【0052】
その後、筒部材20の接続部21をコネクタ70に挿入する。このとき、切替部材側係合部42、42をコネクタ側係合部72、72の間に配置し、切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72、72に干渉しないようにしておく。そして、接続部21をコネクタ70に深く挿入していき、接続部21の当接面21a、21aをコネクタ70の平坦面71、71に当接可能な位置に配置する。また、接続部21の挿入により、接続部21の外周面に設けられている第1シール部材S1がコネクタ70の内周面に摺接しながらコネクタ70の基端側へ向けて押し込まれていく。接続部21を深く挿入することで、測定系の内部の容積が減少する方向に変化することになるが、連通孔24が大気開放状態になっているので、測定系の内部の空気が連通孔24及び貫通孔43を通って外部に排出される。よって、測定系の内部の圧力が上昇することはなく、大気圧と同等になる。
【0053】
接続部21を完全に挿入した後、切替部材40を筒部材20の中心線周り(
図4の矢印Aに示す方向)に約90°回動させて
図6に示すように第4シール部材S4の外方に切替部材40の貫通孔43を配置し、連通孔24を非開放状態にする。切替部材40の回動方向は、切替部材側係合部42、42をコネクタ側係合部72、72の溝72a、72aに対して長手方向の開放部分から挿入する方向である。回動角度は90゜に限られるものではなく、非開放状態にできる回動角度であればよい。切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72、72の溝72a、72aに入り込むことでコネクタ側係合部72、72に係合する。
【0054】
切替部材40を90°回動させると、切替部材40におけるフランジ41の長手方向と、バルーン10の断面の長手方向とが一致する。これにより、非大気開放状態であること、及び切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72に係合していることが明確に判別できる。
【0055】
切替部材40は測定系の外部に配置されているので、切替部材40を回動させる動作は、測定系の内部の容積を変化させない動作である。よって、測定系の内部の圧力は殆ど変化しない。連通孔24を非開放状態にすると、連通孔24が切替部材40の周壁部によって覆われ、かつ、連通孔24の周縁部が第4シール部材S4によってシールされるので、測定系の内部が外部と遮断され、測定系の内部の圧力は大気圧と同等のままで維持される。
【0056】
次に、上記のようにして接続する際に測定系の圧力が大気圧と同等であるか否かを試験した結果について説明する。図示しないが、試験には、一般のデジタル圧力計を用い、このデジタル圧力計にチューブ64及びコネクタ70に相当する部材を接続し、値が0になったのを確認する。その後、バルーン式プローブ1の連通孔24を大気開放状態にしてから接続部21をコネクタ70に相当する部材に挿入し、挿入が完了したら、連通孔24を非開放状態にして接続を完了する。バルーン式プローブ1の接続完了後、30秒後の圧力値は、接続前の値と略同じであった。一方、
図15に示す従来の接続構造の場合は、接続完了後、30秒後の圧力値が接続前の値と比べて明確に高かった。このことから、本実施形態に係る接続構造では、接続後においても測定系の内部の圧力を大気圧と同等にすることができることが分かる。
【0057】
次に、バルーン式プローブ1を使用する場合について説明する。バルーン式プローブ1の切替部材40を手で持ち、バルーン10を被測定者の口腔へ挿入する。切替部材40及び筒部材20は硬質部材で構成されているので、手で持ったときに潰れ変形することはなく、不要な圧力変動が抑制される。被測定者は、バルーン10を舌の上に置いた状態でバルーン式プローブ1を固定する。必要に応じて、手で切替部材40を持つこともできる。この場合も、不要な圧力変動が抑制される。
【0058】
そして、被測定者は舌でバルーン10を押圧すると、バルーン10が押圧力に応じて潰れて内部の空気が筒部材20を通ってチューブ64に排出され、このことによる圧力変動が圧力測定装置60の圧力検知部61で検知される。圧力検知部61で検知された圧力は表示部62に表示されるので、例えば被測定者や周囲の医療従事者等が圧力を容易に把握することができる。
【0059】
また、バルーン10を口腔に挿入した状態で口に液体を含み、嚥下動作を行ったときの圧力変化を連続的にモニターすることで、嚥下舌圧の変化を測定できる。このようにして種々の動作を行ったときの圧力を測定することにより、被測定者の舌の機能を解析することができる。そして、舌圧と摂食、嚥下機能との関係に基づいて被測定者の摂食、嚥下機能を評価することができる。
【0060】
また、摂食、嚥下機能が低下している被測定者に対しては、バルーン式プローブ1のみを使用して舌圧を高める訓練を繰り返し行うことにより、摂食、嚥下機能を回復できる可能性がある。摂食、嚥下機能が回復したか否かは、上述のようにしてバルーン式プローブ1を使用して舌圧を測定することで判断できる。
【0061】
バルーン式プローブ1は使用後にコネクタ70から取り外してもよい。バルーン式プローブ1をコネクタ70から取り外す際には、切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72、72の溝72a、72aから抜ける方向に、切替部材40を回動させる。切替部材側係合部42、42がコネクタ側係合部72、72の溝72a、72aから抜けると、筒部材20の接続部21をコネクタ70から抜くことができ、これにより、バルーン式プローブ1をコネクタ70から取り外すことができる。
【0062】
以上説明したように、この実施形態1に係るバルーン式プローブ1の接続構造によれば、バルーン式プローブ1のバルーン10の内部に連通する連通孔24を筒部材20に設け、この連通孔24を切替部材40の回動動作によって大気開放状態と非開放状態とに切り替えることができる。これにより、バルーン式プローブ1の接続時には測定系の内部の圧力を大気圧と同等にしておき、接続後には測定系の内部と外部とを遮断して測定圧が外部に逃げないようにすることができる。したがって、測定系の内部の圧力を調整する圧力調整機構を圧力測定装置60に設けずに大気圧を基準として安価に圧力を測定することができ、その測定値を正確に得ることができる。
【0063】
さらに、この実施形態では、切替部材40を筒部材20の中心線周りに回動させることによって連通孔24を大気開放状態と非開放状態とに切り替えることができるので、操作性をより一層良好にすることができる。
【0064】
また、筒部材20の接続部21をコネクタ70に挿入したときに、接続部21の当接面21a、21aをコネクタ70の平坦面71、71に当接させて筒部材20がコネクタ70に対して回動しないようにすることができる。これにより、切替部材40を筒部材20の中心線周りに回動させる際に、筒部材20が切替部材40につられて回動してしまうのを抑制することができ、大気開放状態と非開放状態とに確実に切り替えることができる。
【0065】
また、連通孔24が非開放状態にあるときに、コネクタ側係合部72、72と切替部材側係合部42、42とを係合させることができるので、切替部材40がコネクタ40から不意に離脱するのを抑制できる。
【0066】
(実施形態2)
図12は本発明の実施形態2に係るバルーン式プローブ1及びコネクタ70を示している。実施形態2では、切替部材側係合部及びコネクタ側係合部を省略している点で実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同一であるため、以下、実施形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0067】
実施形態2の筒部材20の接続部21の外周面21aはコネクタ70への挿入方向を基準としたときに挿入方向先端へ行くほど小径となるテーパー面で構成されている。また、コネクタ70の内周面70bは、接続部21の外周面21aが嵌まるように形状が設定されており、コネクタ70の基端へ行くほど小径となるテーパー面で構成されている。
【0068】
バルーン式プローブ1を接続する際には、筒部材20の接続部21の外周面21aをコネクタ70の内周面70bに挿入して嵌めることで、係合部が無くても、接続部21がコネクタ70から抜けにくくなる。
【0069】
実施形態2の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0070】
(実施形態3)
図13及び
図14は、本発明の実施形態3に係るバルーン式プローブ1及びコネクタ70を示している。実施形態3では、切替部材側係合部及びコネクタ側係合部を省略して実施形態2と同様な接続構造にしている点と、切替部材40を中心線方向移動させることによって連通孔24を大気開放状態と非開放状態とに切り替えるようにしている点とで実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0071】
切替部材40の中心線方向の長さは実施形態1のものに比べて短く設定されており、コネクタ70への接続状態において切替部材40を中心線方向に移動させることができるようになっている。
図13に示すように、第4シール部材S4の内方に貫通孔43が配置される状態となるまで切替部材40を中心線方向に移動させると、貫通孔43と連通孔24とが連通するので、連通孔24が貫通孔43を介して大気に開放される大気開放状態になる。一方、切替部材40を中心線方向(
図13に矢印Bで示す方向)に移動させて、
図14に示すように第4シール部材S4の外方に貫通孔43が配置される状態になると、連通孔24が切替部材40の周壁部によって覆われ、かつ、連通孔24の周縁部が第4シール部材S4によってシールされるので、連通孔24は非開放状態になる。
【0072】
実施形態3の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができるとともに、切替部材40を中心線方向に移動させるという、簡単な操作で大気開放状態と非開放状態とに切り替えることができる。
【0073】
実施形態3において、切替部材40を回動させることにより、連通孔24を大気開放状態と非開放状態とに切り替えることもできる。
【0074】
尚、バルーン式プローブ1を使用して舌下筋圧を測定する場合には、バルーン10を舌の下に置けばよく、また、口唇圧を測定する場合には、バルーン10を上唇と下唇とで挟むように配置すればよく、また、頬圧力を測定する場合には、バルーン10を頬の内側に配置すればよい。
【0075】
また、バルーン式プローブ1は例えば口腔関連機能の回復のために用いられる訓練用具として使用することもできる。
【0076】
また、上記実施形態1〜3では、バルーン式プローブ1を口腔関連圧力の測定に使用する場合について説明しているが、これに限らず、各種圧力を測定する場合に使用することができる。バルーン10の形状は測定対象に合わせて自由に設定することができる。
【0077】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。