【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のコア及び該複数のコアを包囲する共通のクラッドを有するマルチコアファイバの各コアと、一つのコア及び該コアを包囲するクラッドを各々有する複数のシングルコアファイバの各コアとを或る軸線に沿って光学的に結合する光コネクタであって、
前記マルチコアファイバの前記複数のコアからそれぞれ出射される、互いに平行な光軸を有する複数のビームを受け、光軸が互いに傾斜するように該複数のビームを出射する第1光学系と、
前記第1光学系から出射された前記複数のビームを受け、前記複数のシングルコアファイバの複数の前記コアに向けて、光軸が互いに平行となるように該複数のビームを出射する第2光学系と、
を備え、
前記第1光学系に入射される前記複数のビームの光軸は、前記軸線に対して平行であり、
前記第1光学系は前記複数のビームに対して共通のレンズを有し、前記第1光学系に入射した前記複数のビームは、それらの光軸が一点で交差したのち互いに間隔を拡げながら前記第1光学系から出射され、
前記第2光学系から出射された前記複数のビームの光軸は、前記軸線に垂直な面に対して傾斜しており、
前記第2光学系は、前記複数のビームを、前記軸線の延伸方向である第1方向において互いに異なる位置にそれぞれ集光する、光コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態による光コネクタは、複数のコア及び該複数のコアを包囲する共通のクラッドを有するマルチコアファイバの各コアと、一つのコア及び該コアを包囲するクラッドを各々有する複数のシングルコアファイバの各コアとを或る軸線に沿って光学的に結合する光コネクタであって、マルチコアファイバの複数のコアからそれぞれ出射される、互いに平行な光軸を有する複数のビームを受け、光軸が互いに傾斜するように該複数のビームを出射する第1光学系と、第1光学系から出射された複数のビームを受け、複数のシングルコアファイバの複数のコアに向けて、光軸が互いに平行となるように該複数のビームを出射する第2光学系とを備え、第1光学系に入射される複数のビームの光軸は、軸線に対して平行であり、第2光学系から出射された複数のビームの光軸は、軸線に垂直な面に対して傾斜しており、第2光学系は、複数のビームを、軸線の延伸方向である第1方向において互いに異なる位置にそれぞれ集光する。
【0012】
この光コネクタでは、第2光学系が、第1方向において互いに異なる位置に複数のビームそれぞれを集光する。これにより、光軸方向における複数のシングルコアファイバの各端面の位置が互いにずれている場合であっても、各端面位置に対して各ビームの集光点の位置を容易に合わせることができる。従って、第2光学系と複数のシングルコアファイバとの結合損失の増大を抑制できる。また、この光コネクタでは、第2光学系から出射された複数のビームの光軸が、軸線に垂直な面に対して傾斜している。これにより、各シングルコアファイバの端面へ各ビームを適切な角度で入射させることが可能となるので、接続損失を低減しつつ、各シングルコアファイバの端面への各ビームの入射角をより大きくして反射戻り光を効果的に低減できる。
【0013】
また、上記の光コネクタにおいて、軸線と直交する方向における一端側のビームから他端側のビームにかけて集光位置が第1方向に単調に変化してもよい。これにより、例えば複数のシングルコアファイバの各端面が面一の状態で光軸に対して傾斜しているような場合に、各端面位置に対して各ビームの集光点の位置を合わせることができる。従って、例えば複数のシングルコアファイバを束ねた状態で各端面を一括して研磨する等の簡易な方法によって、反射戻り光を低減することができる。
【0014】
また、上記の光コネクタにおいて、第2光学系は、複数のビームの光軸上にそれぞれ配置され、対応するビームを集光する複数のレンズを有し、第1方向における複数のレンズの主点の位置が互いに異なってもよい。これにより、第1方向における複数のビームの集光位置を容易に異ならせることができる。
【0015】
また、上記の光コネクタにおいて、レンズに入射するビームの光軸と当該レンズの光軸との間隔は、軸線と直交する方向における一端側のビームから他端側のビームにかけて変化してもよい。レンズに入射するビームの光軸を該レンズの光軸からずらすことによって、ビームの光軸を偏向することが可能となるので、複数のビームの光軸を軸線に垂直な面に対して容易に傾斜させることができる。更に、光軸のずれ量(すなわちレンズに入射するビームの光軸と当該レンズの光軸との間隔)が、軸線と直交する方向における一端側のビームから他端側のビームにかけて変化していることによって、第1光学系からの互いに傾斜した複数のビームを、光軸が互いに平行となるようにして出射することができる。これにより、複数のビームの光軸を傾斜させつつ互いに平行とする機能と、第1方向における複数のビームの集光位置を互いに異ならせる機能とを、レンズにおいて併せて実現できるので、部品点数を少なくすることができる。
【0016】
また、上記の光コネクタにおいて、第2光学系は、第1光学系から出射された複数のビームを受け、光軸が互いに平行となるように該複数のビームを出射する光学部品を有し、複数のレンズは、光学部品から出射された複数のビームを受けて該複数のビームをそれぞれ集光し、レンズに入射するビームの光軸と当該レンズの光軸との間隔は、複数のレンズにおいて互いに等しくてもよい。このように、第2光学系は、複数のビームの光軸を互いに平行とする機能と、第1方向における複数のビームの集光位置を互いに異ならせる機能とを、それぞれ別の部品(光学部品及びレンズ)によって実現してもよい。このような構成であっても、上記の第2光学系を好適に実現することができる。また、レンズに入射する複数のビームの各光軸が互いに平行なので、各レンズの位置合わせ(光軸調整)が容易となる。
【0017】
また、上記の光コネクタにおいて、第1光学系はGRINレンズを有し、マルチコアファイバと対向するGRINレンズの端面は、軸線に垂直な面に対して傾斜してもよい。このように第1光学系がGRINレンズを有することによって、マルチコアファイバからの複数のビームを、光軸が互いに傾斜するようにして出射することができる。また、GRINレンズの端面が複数のビームの光軸に対して垂直である場合、反射戻り光が生じる。上記の光コネクタのように、GRINレンズの端面が軸線に垂直な面(すなわち複数のビームの光軸に対して垂直な面)に対して傾斜していることによって、このような反射戻り光を低減することができる。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光コネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光コネクタを含む光学装置の断面を模式的に示す図である。なお、図中にはXYZ直交座標系が示されている。光学装置50Aは、光コネクタ1Aと、マルチコアファイバ30と、複数のシングルコアファイバ40とを備える。光コネクタ1Aは、マルチコアファイバ30の各コアと、複数のシングルコアファイバ40の各コアとを軸線A1に沿って光学的に結合する。XYZ直交座標系は、Z方向が軸線A1の延伸方向(第1方向)と一致するように設定されている。
【0020】
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図であって、マルチコアファイバ30のXY断面を表している。マルチコアファイバ30は、光軸方向に垂直な面内において二次元状に配列された複数のコア31と、複数のコア31を一括して包囲する共通のクラッド32とを有する。一例では、マルチコアファイバ30は7つのコア31を有しており、そのうち1つがマルチコアファイバ30の中心軸線上に配置され(以下、中心コアという)、他の6つがその周囲に等間隔(中心間隔H1)で配置されている(以下、周辺コアという)。各コア31は、クラッド32よりも高い屈折率を有し、それぞれ別個の光を伝搬する。なお、マルチコアファイバ30の端部は円筒状のフェルール35に挿通され、保持されている。Z方向におけるマルチコアファイバ30及びフェルール35の端面は面一に研磨加工されて平坦となっており、軸線A1に垂直な平面に対して−X方向に僅かに傾斜している(
図1参照)。該平面に対する端面の傾斜角は、例えば8°である。
【0021】
再び
図1を参照する。光コネクタ1Aは、Z方向に沿って並ぶ第1光学系10A及び第2光学系20Aを備える。Z方向における第1光学系10Aの一端はマルチコアファイバ30の端面と光学的に結合され、他端は第2光学系20Aの一端と光学的に結合されている。第1光学系10Aは、マルチコアファイバ30の複数のコア31(
図2参照)からそれぞれ出射される、互いに平行な光軸を有する複数のビームを受ける。なお、
図1には、複数のコア31からそれぞれ出射される複数のビームのうち、1つの中心コア31から出射されるビームL2と、2つの周辺コア31からそれぞれ出射されるビームL1,L3とが示されている。第1光学系10Aに入射される複数のビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aは互いに平行であり、且つ軸線A1に対して平行である。第1光学系10Aは、これらのビームL1〜L3を、出射後の光軸L1a〜L3aが互いに傾斜するように(すなわち、平行と異なるように)出射することにより、光軸L1a〜L3aの間隔を調整する。
図1に示される例では、ビームL2にビームL1及びL3が次第に近づくように、第1光学系10AがビームL1及びL3の光軸L1a,L3aをビームL2の光軸L2aに対して傾斜させる。これにより、光軸L1a〜L3aは、一つの点Qで交差したのち互いに間隔を拡げながら第1光学系10Aの他端へ延びる。
【0022】
本実施形態の第1光学系10Aは、GRINレンズ11及びガラスブロック12を有する。GRINレンズ11は、軸線A1に垂直な面内においてレンズ作用のための屈折率分布(例えば中心から外周に向けて屈折率が徐々に減少するような分布)を有し、軸線A1に沿ってマルチコアファイバ30と光学的に結合されている。一例では、Z方向におけるGRINレンズ11の一端面11aは、平坦に研磨加工され、軸線A1に垂直な平面に対して+X方向に僅かに傾斜しており、マルチコアファイバ30及びフェルール35の端面と接合されている。該平面に対する端面11aの傾斜角は、例えば8°である。また、方向ZにおけるGRINレンズ11の他端面11bは、平坦に研磨加工され、軸線A1に対して垂直となっている。
【0023】
マルチコアファイバ30から出射されたビームL1〜L3は、一端面11aからGRINレンズ11の内部に入射する。入射した時点ではビームL1〜L3はそれぞれ一定の放射角を有するが、GRINレンズ11のレンズ作用によって、これらのビームL1〜L3は平行化(コリメート)され、他端面11bから出射される。なお、このように各ビームL1〜L3が平行化された状態でGRINレンズ11の他端面11bから出射されるように、GRINレンズ11の一端面11aと他端面11bとの距離が規定される。また、ビームL1及びL3は、入射時点での光軸L1a,L3aがGRINレンズ11のレンズ中心から離れているため偏向されて、光軸L2aに対する前述した傾斜が付与される。
【0024】
ガラスブロック12は、屈折率が一定(例えば1.5程度)であり、軸線A1を中心軸線とする円柱形状を有する。そして、ガラスブロック12は、GRINレンズ11のレンズ中心とガラスブロック12の中心軸線とが互いに一致するように、軸線A1に沿ってGRINレンズ11と光学的に結合されている。一例では、Z方向におけるガラスブロック12の一端面12a及び他端面12bは、平坦に研磨加工され、軸線A1に対して垂直となっている。そして、一端面12aは、GRINレンズ11の他端面11bと接合されている。一端面12aに入射したビームL1〜L3は、互いに傾斜した光軸L1a〜L3aを維持しながらガラスブロック12内部を伝搬し、他端面12bから出射される。出射されるときの光軸L1a〜L3aの間隔は、ガラスブロック12におけるビームL1〜L3の伝搬長(すなわち一端面12aと他端面12bとの光学距離)によって調整される。本実施形態では、後述するように複数のシングルコアファイバ40のコア同士の間隔がマルチコアファイバ30のコア31同士の間隔よりも大きいので、光軸L1a〜L3aの間隔が拡大するようにガラスブロック12の長さが確保される。
【0025】
第2光学系20Aは、Z方向における一端に、第1光学系10Aから出射されたビームL1〜L3を受ける。Z方向における第2光学系20Aの他端は、複数のシングルコアファイバ40と光学的に結合されている。第2光学系20Aは、複数のシングルコアファイバ40の各コアにそれぞれ向けて、光軸L1a〜L3aが互いに平行となるようにビームL1〜L3を出射するとともに、ビームL1〜L3を集光する。このとき、第2光学系20Aは、ビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aを軸線A1に対して僅かに傾斜させる。その結果、光軸L1a〜L3aは、軸線A1に垂直な面に対して傾斜することとなる。また、第2光学系20Aは、ビームL1〜L3を、Z方向において互いに異なる位置(換言すればZ座標が互いに異なる位置)にそれぞれ集光する。
【0026】
本実施形態の第2光学系20Aは、レンズアレイ23を有する。レンズアレイ23は、複数のビームL1〜L3と同数の複数のレンズ22と、複数のレンズ22を一体に保持する本体部(ベース)21とを有し、軸線A1に沿ってガラスブロック12と光学的に結合されている。一例では、Z方向における本体部21の一端面21aは、平坦に研磨加工され、軸線A1に対して垂直になっており、ガラスブロック12の他端面12bと接合されている。また、方向Zにおける本体部21の他端面21bは、軸線A1に垂直な平面に対して−X方向に僅かに傾斜しており、空間を隔てて複数のシングルコアファイバ40の端面と対向している。該平面に対する他端面21bの傾斜角は、例えば8°である。
【0027】
図3は、Z方向(シングルコアファイバ40側)から見たレンズアレイ23の正面図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った断面を模式的に表す図である。なお、
図4における破線はレンズ22を設計するために用いられる仮想的な外形線を表しているが、実際にはレンズ22は本体部21と一体化されており、仮想線において境界は存在しない。
【0028】
複数のレンズ22は、本体部21の他端面21bと一体に形成されており、該他端面21bを通過する複数のビームの光軸上にそれぞれ配置され、互いに重なり合っている。一例では、
図3に示されるように中心のレンズ22の周囲に6つのレンズ22が配置されている。中心のレンズ22は、マルチコアファイバ30の中心コア31から出射された1本のビームに対応する。周囲の6つのレンズ22は、マルチコアファイバ30の6つの周辺コア31から出射された6本のビームに対応する。各レンズ22の光軸間隔は、複数のシングルコアファイバ40のコア同士の中心間隔と等しい。
図4に示されるようにレンズ22は凸レンズであり、それらの光軸A2は、軸線A1と平行である。複数のレンズ22は、それぞれに入射したビームを集光しつつ、シングルコアファイバ40へ向けて出射する。
【0029】
また、
図4に示されるように、Z方向における複数のレンズ22の主点22aの位置(すなわち各主点22aのZ座標)は互いに異なっており、X方向における一端側のレンズ22から他端側のレンズ22にかけて、主点22aの位置がZ方向に単調に変化している。これは、本体部21の他端面21bが軸線A1に垂直な面に対して傾斜しており、且つ、各レンズ22の他端面21bからの高さh1が互いに等しいことによる。
【0030】
図5は、複数のシングルコアファイバ40を示す斜視図である。
図6は、
図5に示されたVI−VI断面(XY断面)を示す断面図である。シングルコアファイバ40の本数はマルチコアファイバ30のコア31の数と等しく、一例では7本である。
図6に示されるように、複数のシングルコアファイバ40は、一つのコア41と、コア41を包囲するクラッド42とを各々有する。各コア41は、クラッド42よりも高い屈折率を有する。複数のシングルコアファイバ40の各端部は円筒状の複数のフェルール46にそれぞれ挿通され、保持されている。更に、複数のフェルール46は一つに束ねられて一体化されており、円筒状のリング材47(
図5参照)に収容されて保持されている。このような状態において、複数のシングルコアファイバ40のコア41の光軸は、互いに平行であり且つ軸線A1(
図1参照)と平行である。コア41の光軸同士の中心間隔H2(フェルール46の直径と等しい)は、マルチコアファイバ30のコア31の光軸同士の中心間隔H1(
図2参照)よりも大きい。Z方向における各シングルコアファイバ40の端面40aと、フェルール46の端面46aと、リング材47の端面47aとは、互いに面一になるようにまとめて研磨加工が施されて平坦となっており、軸線A1に垂直な平面に対してX方向に僅かに傾斜している。該平面に対する端面40a、46a、及び47aの傾斜角は、例えば8°である。
【0031】
ここで、
図7は、複数のシングルコアファイバ40とレンズアレイ23との光結合の態様を拡大して示す図である。先の
図5に示されたように、複数のシングルコアファイバ40の各端面40aは、互いに面一となっており且つ軸線A1に垂直な平面に対してX方向に傾斜している。従って、X方向に並ぶシングルコアファイバ40の各端面40aのZ方向位置は、単調に一定量ずつシフトしている。そこで、本実施形態では、Z方向における複数のレンズ22の主点22aの位置が、各シングルコアファイバ40の端面40aのZ方向位置に応じて互いに異なるように設定されている(
図4参照)。これにより、各シングルコアファイバ40の端面40aのZ方向位置に各ビームの集光位置を合わせることができる。すなわち、各レンズ22と各シングルコアファイバ40の端面40aとの距離が各レンズ22の焦点距離と等しくなり、各ビームの集光位置が各シングルコアファイバ40の端面40aと一致する。一例では、X方向における一端側のビームL3から他端側のビームL1にかけて集光位置がZ方向に単調に変化する。
【0032】
また、本実施形態では、各ビームを偏向する為に、少なくとも1つのレンズ22において、レンズ22に入射するビームの光軸と、当該レンズ22の光軸とが互いにずれている。そのずれ量、すなわちレンズ22に入射するビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aと各レンズ22の光軸A2との間隔W1〜W3は、X方向における一端側のビームL1から他端側のビームL3にかけて変化している。
【0033】
一例では、X方向における一端側のビームL1の光軸L1aと、対応するレンズ22の光軸A2との間隔W1は、ほぼゼロである。従って、+X方向に傾斜してレンズ22に入射したビームL1は、殆ど偏向されずに光軸L1aの傾斜角度を維持したままレンズ22から出射される。これに対し、X方向中央に位置するビームL2の光軸L2aと、対応するレンズ22の光軸A2との間隔W2は、間隔W1よりも大きい。従って、X方向に傾斜せずに(すなわちZ方向に沿って)レンズ22に入射したビームL2は、間隔W2に応じた角度だけ+X方向に偏向されて、ビームL1と平行な光軸でもってレンズ22から出射される。また、X方向における他端側に位置するビームL3の光軸L3aと、対応するレンズ22の光軸A2との間隔W3は、間隔W2よりも更に大きい。従って、−X方向に傾斜してレンズ22に入射したビームL3は、間隔W3に応じた角度だけ+X方向に大きく偏向されて、ビームL1,L2と平行な光軸でもってレンズ22から出射される。このように、レンズ22からの出射時の平行光軸と入射時の光軸との成す角度が大きいビームほど、レンズ22の光軸と該ビームの光軸との距離が大きく設定される。
【0034】
以上に説明した本実施形態の光コネクタ1Aによって得られる効果について説明する。本実施形態の光コネクタ1Aでは、第2光学系20Aが、Z方向において互いに異なる位置に複数のビームL1〜L3それぞれを集光する。これにより、光軸方向における複数のシングルコアファイバ40の各端面40aの位置が互いにずれている場合であっても、これらの位置に対して各ビームL1〜L3の集光点の位置を容易に合わせることができる。従って、第2光学系20Aと複数のシングルコアファイバ40とのデフォーカスの回避を容易にできるので、結合損失の増大を抑制できる。また、この光コネクタ1Aでは、第2光学系20Aから出射された複数のビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aが、軸線A1に垂直な面に対して傾斜している。これにより、各シングルコアファイバ40の端面40aへ各ビームL1〜L3を適切な角度で入射させることが可能となるので、接続損失を低減しつつ、各端面40aへの各ビームL1〜L3の入射角をより大きくして反射戻り光を効果的に低減できる。
【0035】
また、本実施形態のように、X方向における一端側のビームL1から他端側のビームL3にかけて、集光位置がZ方向に単調に変化してもよい。これにより、例えば複数のシングルコアファイバ40の各端面40aが面一の状態で光軸に対して傾斜しているような場合に、各端面位置に対して各ビームL1〜L3の集光点の位置を合わせることができる。従って、例えば複数のシングルコアファイバ40を束ねた状態で各端面40aを一括して研磨する等の簡易な方法によって、反射戻り光を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態のように、第2光学系20Aは、光軸L1a〜L3a上にそれぞれ配置され、対応するビームL1〜L3を集光する複数のレンズ22を有し、Z方向における複数のレンズ22の主点22aの位置が互いに異なってもよい。これにより、Z方向における複数のビームL1〜L3の集光位置を容易に異ならせることができる。
【0037】
また、本実施形態のように、レンズ22に入射するビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aと当該レンズ22の光軸A2との間隔W1〜W3は、X方向における一端側のビームL1から他端側のビームL3にかけて変化してもよい。レンズ22に入射するビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aを該レンズ22の光軸A2からずらすことによって、光軸L1a〜L3aを偏向することが可能となるので、光軸L1a〜L3aを軸線A1に垂直な面に対して容易に傾斜させることができる。更に、光軸L1a〜L3aのずれ量(すなわち間隔W1〜W3)が、X方向における一端側のビームL1から他端側のビームL3にかけて変化していることによって、第1光学系10Aからの互いに傾斜した複数のビームL1〜L3を、光軸L1a〜L3aが互いに平行となるようにして出射することができる。これにより、光軸L1a〜L3aを傾斜させつつ互いに平行とする機能と、Z方向における複数のビームL1〜L3の集光位置を互いに異ならせる機能とを、レンズ22において併せて実現できるので、部品点数を少なくすることができる。
【0038】
また、本実施形態のように、第1光学系10AはGRINレンズ11を有し、マルチコアファイバ30と対向するGRINレンズ11の端面11aは、軸線A1に垂直な面に対して傾斜してもよい。このように第1光学系10AがGRINレンズ11を有することによって、マルチコアファイバ30からの複数のビームL1〜L3を、光軸L1a〜L3aが互いに傾斜するようにして出射することができる。また、GRINレンズ11の端面11aが入射前の光軸L1a〜L3aに対して垂直である場合、マルチコアファイバ30への反射戻り光が生じる。本実施形態のように、GRINレンズ11の端面11aが軸線A1に垂直な面(すなわち入射前の光軸L1a〜L3aに対して垂直な面)に対して傾斜していることによって、このような反射戻り光を低減することができる。
【0039】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る光コネクタを含む光学装置の断面を模式的に示す図である。光学装置50Bは、光コネクタ1Bと、マルチコアファイバ30と、複数のシングルコアファイバ40とを備える。光コネクタ1Bは、マルチコアファイバ30の各コアと、複数のシングルコアファイバ40の各コアとを軸線A1に沿って光学的に結合する。なお、マルチコアファイバ30及び複数のシングルコアファイバ40の各構成は、マルチコアファイバ30の端面が軸線A1に対して垂直である(傾斜していない)点を除き、前述した第1実施形態と同様である。
【0040】
光コネクタ1Bは、Z方向に沿って並ぶ第1光学系10B及び第2光学系20Bを備える。第1光学系10Bは、マルチコアファイバ30と第2光学系20Bとの間の光軸上に配置され、これらと光学的に結合されている。第1光学系10Bは、第1実施形態の第1光学系10Aと同様の機能を有し、その構成が第1光学系10Aと異なる。すなわち、本実施形態の第1光学系10Bは、コリメートレンズ13といった凸レンズによって構成されている。コリメートレンズ13は、マルチコアファイバ30の端面から焦点距離fだけ離れた位置に配置されている。マルチコアファイバ30から出射されたビームL1〜L3は、コリメートレンズ13に入射する。入射した時点ではビームL1〜L3は一定の拡がりを有するが、コリメートレンズ13によってこれらのビームL1〜L3は平行化(コリメート)されて出射される。また、ビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aは、コリメートレンズ13への入射時点では互いに平行であるが、光軸L1a,L3aがコリメートレンズ13のレンズ中心から離れているため偏向される。これにより、コリメートレンズ13から焦点距離fだけ離れた位置においてビームL1〜L3が互いに交差するように、ビームL1,L3に第1実施形態と同様の傾斜が付与される。そして、第1実施形態と同様に、コリメートレンズ13と第2光学系20Bとの間の距離が任意に設定されることによって、光軸L1a〜L3aの間隔が調整される。
【0041】
第2光学系20Bは、レンズアレイ23及びプリズム24を有する。レンズアレイ23の構成は、第1実施形態と同様である。プリズム24は、第1光学系10Bから出射された複数のビームL1〜L3を受け、光軸L1a〜L3aが互いに平行となるように該複数のビームL1〜L3を出射する光学部品である。プリズム24は、コリメートレンズ13と光学的に結合された光入射面24aと、レンズアレイ23の一端面21aと光学的に結合された光出射面24bとを有する。光入射面24aは、平坦であり、軸線A1に対して垂直である。光出射面24bは、複数のビームL1〜L3にそれぞれ対応する複数の面24b1〜24b3を含む。面24b2は軸線A1に対して垂直であり、X方向に傾斜せずに(すなわちZ方向に沿って)プリズム24に入射したビームL2の光軸L2aは、面24b2を通過する際に屈折せず、軸線A1に沿って出射される。一方、面24b1は軸線A1に垂直な面に対して+X方向に傾斜しており、+X方向に傾斜してプリズム24に入射したビームL1の光軸L1aは、面24b1を通過する際に−X方向に屈折し、ビームL2と平行な光軸でもって出射される。また、面24b3は軸線A1に垂直な面に対して−X方向に傾斜しており、−X方向に傾斜してプリズム24に入射したビームL3の光軸L3aは、面24b3を通過する際に+X方向に屈折し、ビームL2と平行な光軸でもって出射される。このように、プリズム24は、各ビームL1〜L3の傾斜に対応して傾斜した面24b1〜24b3を有することにより、各ビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aを互いに平行とする。
【0042】
従って、第1実施形態と異なり、レンズアレイ23の一端面21aには光軸L1a〜L3aが互いに平行とされたビームL1〜L3が入射する。このため、本実施形態のレンズアレイ23では、光軸L1a〜L3aを互いに平行とする機能は不要である。すなわち、本実施形態では、レンズ22に入射するビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aと、各レンズ22の光軸A2との間隔は、複数のレンズ22において互いに等しい。但し、この間隔はゼロではなく、有意の値をもっている。このため、各レンズ22から出射されるビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aは、軸線A1に対して僅かに傾斜する。その結果、光軸L1a〜L3aは、軸線A1に垂直な面に対して傾斜することとなる。なお、第1実施形態と同様に、レンズアレイ23は、ビームL1〜L3を、Z方向において互いに異なる位置(換言すればZ座標が互いに異なる位置)にそれぞれ集光する。
【0043】
本実施形態の光コネクタ1Bによれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態において、第2光学系20Bは、光軸L1a〜L3aを互いに平行とする機能と、Z方向におけるビームL1〜L3の集光位置を互いに異ならせる機能とを、それぞれ別の部品(プリズム24及びレンズアレイ23)によって実現している。このような構成であっても、第2光学系20Bを好適に実現することができる。また、レンズアレイ23に入射するビームL1〜L3の光軸L1a〜L3aが互いに平行なので、各レンズ22の位置合わせ(光軸調整)が容易となる。
【0044】
なお、本実施形態のように、マルチコアファイバ30の端面は軸線A1に垂直な面に対して傾斜していなくてもよい。第1実施形態においても同様である。また、本実施形態においても、第1光学系として、コリメートレンズ13に代えて
図1に示されたGRINレンズ11が用いられてもよい。
【0045】
本発明による光コネクタは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態では複数のシングルコアファイバの端面のZ方向位置がX方向に単調に変化している場合を例示したが、複数のシングルコアファイバの端面のZ方向位置が複雑に変化しているような場合であっても、第2光学系によって各ビームの集光位置を各端面に合わせることが可能である。