(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冷凍装置において、圧縮機などを制御するパワーモジュール等の電装品の冷却構成として、上記可変コンダクタンスヒートパイプを利用して、電装品を冷媒回路の冷媒で冷却することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1−4の技術は、何れも、ヒートパイプを横置きとし、その一端に蒸発部を、他端に凝縮部を配置し、その凝縮部の蒸発部とは反対側にガス溜め部やタンクを配置している構成である。このため、横方向に長くコンパクト化が困難であり、また高価格につくなどの欠点がある。更に、不凝縮ガスのガス溜め部やタンクが必須で、そのガス溜め部やタンクを配置する分、大型化する欠点がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑み、その目的は、冷凍装置の電装品の冷却システムにおいて、不凝縮ガスを溜めたガス溜め部やタンクを配置しない場合であっても、電装品を良好に冷却しつつ、電装品の冷却システムとしてコンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、可変コンダクタンスヒートパイプとしての熱搬送部を設け、この熱搬送部を立てた状態で配置して内部の作動流体の流れ方向を上下方向とすると共に、横方向に蒸発部と凝縮部とを配置する。更に、熱搬送部の内部で不凝縮ガスを上記蒸発部と凝縮部との双方に作用させる構成を採用する。
【0010】
即ち、第1の発明は、冷媒回路(10)を有した冷凍装置(1)の電装品の冷却システムにおいて、立てた状態で配置され、内部に作動流体(F)が封入された板状の熱搬送部(90,100)と、上記冷媒回路(10)を流れる冷媒が供給される熱交換器(80)とを備え、上記熱搬送部(90,100)の内部には、上記作動流体(F)の蒸発により上記電装品を冷却する蒸発部(91)と、上記熱交換器(80)に供給される冷媒により上記作動流体(F)を凝縮させる凝縮部(92)とが横方向に区画されると共に、上記蒸発部(91)の上部と上記凝縮部(92)の上部とを連結して上記蒸発部(91)のガス状の作動流体(F)を上記凝縮部(92)に導くガス通路(94)が形成され、上記熱搬送部(90,100)の内部には、上記作動流体(F)と共に不凝縮ガス(N)が封入され
、上記不凝縮ガス(N)は、上記熱搬送部(90,100)を立てた状態で、上記ガス通路(94)内に位置するような比重であることを特徴とする。
【0011】
上記第1の発明では、立てた状態で配置された熱搬送部の内部では、作動流体は上下方向に流れる。そして、その立てた状態の熱搬送部の内部に、蒸発部と凝縮部とが横方向に配置されているので、熱搬送部は従来の横方向に長く配置するヒートパイプに比べて上下長さと横方向長さとの差を短縮できて、全体としてコンパクト化できる。
【0012】
また、蒸発部と凝縮部とが横方向に並んで配置されるので、蒸発部にて電装品から熱を奪って蒸発したガス状の作動流体は蒸発部の上部からガス通路を横方向に流れて凝縮部の上部に流入し、その後、凝縮部で冷媒回路の冷媒に放熱して凝縮し、液状になって凝縮部の下方に向って流れる。ここで、熱搬送部には不凝縮ガスが封入されている。この不凝縮ガスは、立てた状態の熱搬送部の上部の少なくとも中央部位、すなわち、ガス通路に位置している。従って、作動流体は蒸発部の上部と凝縮部の上部との間に位置して、その蒸発部と凝縮部とに作用するので、従来の凝縮部のみに作用する場合に比して、蒸発部や電装品の温度を所定温度範囲に保持する能力が向上する。しかも、従来のようにガス溜め部やタンクが不要であるので、その分、コンパクト化を図ることが可能である。
【0013】
第2の発明は、上記電装品の冷却システムにおいて、上記熱搬送部(90,100)の内部において、上記不凝縮ガス(N)は、上記ガス通路(94)に位置し、
上記作動流体(F)の温度低下により体積増加して上記蒸発部(91)の上部への流入量と上記凝縮部(92)の上部への流入量が増大することを特徴とする。
【0014】
上記第2の発明では、作動流体の温度が上昇すると、その温度上昇に応じて不凝縮ガスはガス状の作動流体により圧縮され、ガス状の作動流体の体積比が相対的に大幅に増える。従って、熱搬送部は不凝縮ガスの存在の影響をさほど受けず、ヒートパイプとして機能する。逆に、作動流体の温度が低下すると、その温度低下に応じて不凝縮ガスの体積が増えて不凝縮ガスの一部が凝縮部に流入して凝縮部に作用するため、凝縮部の一部は作動できなくなる。また、蒸発部では、上記体積増加した不凝縮ガスの圧力によって作動流体は蒸発圧力まで下がることができず、蒸発部も作動し難くなる。従って、作動流体と不凝縮ガス双方の種類や量を適切に選定すると、熱搬送部を可変コンダクタンスヒートパイプとして機能させて、電装品を良好に冷却しつつ、蒸発部や電装品の温度を所定温度以下に低下しないようにすることが可能である。
【0015】
第3の発明は、上記電装品の冷却システムにおいて、上記熱搬送部(100)の内部に開口して、該熱搬送部(100)の内部に存在する上記不凝縮ガス(N)の量を調整する不凝縮ガス貯留部(110)を有することを特徴とする。
【0016】
上記第3の発明では、不凝縮ガスの量を増量できるので、熱搬送部の内部に存在する不凝縮ガスの増減変化量を大きく変更できるので、電装品の温度制御性が良くなる。また、熱搬送部がヒートパイプとして機能する場合には、不凝縮ガスの全てを不凝縮ガス貯留部に押し込めることができて、不凝縮ガスがヒートパイプの動作を妨げることを防止できる。
【0017】
第4の発明は、上記電装品の冷却システムにおいて、上記不凝縮ガス貯留部(110)に貯留される不凝縮ガス(N)の温度は、外気温度に調整されることを特徴とする。
【0018】
上記第4の発明では、外気温度が高い場合には、熱搬送部がヒートパイプとして機能する動作温度を高くすることができるので、外気温度が高くて露点が高い場合にも、電装品の温度を露点以上の温度に制御できて、電装品の結露を確実に防止することができる。
【0019】
第5の発明は、上記電装品の冷却システムにおいて、上記熱搬送部(90,100)の内部には、上記蒸発部(91)の下部と上記凝縮部(92)の下部とを連結して上記凝縮部(92)の液状の作動流体(F)を上記蒸発部(91)に導く液通路(95)が形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記第5の発明では、板状の熱搬送部では、作動流体が蒸発部で電装品から熱を奪ってガス状となり、その蒸発部の上部から横方向のガス通路を経て凝縮部の上部に流入し、その凝縮部で冷媒回路の冷媒に放熱して凝縮し、その下部から横方向の液通路を経て蒸発部の下部に流入し、この蒸発部で再度電装品から熱を奪ってガス状になることを繰り返す。従って、板状の熱搬送部であっても、熱媒体を上下方向に循環させて、板状の熱搬送部をヒートパイプとして良好に機能させることができる。
【0021】
第6の発明は、上記電装品の冷却システムにおいて、上記電装品は、電力変換装置(60)のパワー素子(63)であることを特徴とする。
【0022】
上記第6の発明では、電力変換装置のパワー素子の温度が所定温度未満になって結露することが確実に防止される。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明の電装品の冷却システムによれば、可変コンダクタンスヒートパイプとしての板状の熱搬送部のコンパクト化が可能である。また、非凝縮ガスのガス溜め部やタンクを配置することなく可変コンダクタンスヒートパイプとして機能できる。
【0024】
第2の発明によれば、不凝縮ガスが蒸発部の上部と凝縮部の上部との間のガス通路に位置するので、不凝縮ガスを蒸発部と凝縮部の双方に作用させて、蒸発部や電装品の温度が所定温度以下に低下することを確実に防止できる。
【0025】
第3の発明によれば、不凝縮ガス貯留部を配置するので、その分、大型化するが、可変コンダクタンスヒートパイプとしての機能の向上が図れる。
【0026】
第4の発明によれば、外気温度が高くて露点が高い場合にも、電装品の結露を確実に防止することができる。
【0027】
第5の発明によれば、板状の熱搬送部であっても、熱媒体を上下方向に循環させて、板状の熱搬送部をヒートパイプとして良好に機能させることが可能である。
【0028】
第6の発明によれば、電力変換装置のパワー素子の結露を確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0031】
《発明の第1の実施形態》
以下では、本発明の第1の実施形態に係る電装品冷却システム(70)を適用する空気調和機(1)を説明する。空気調和機(1)は、冷媒回路(10)を有して冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。この空気調和機(1)は、室内に設置される室内ユニット(20)と、室外に設置される室外ユニット(30)とを有している。室内ユニット(20)と室外ユニット(30)とが、2本の連絡配管(11,12)によって互いに接続されることで、閉回路となる冷媒回路(10)が構成される。冷媒回路(10)には、冷媒が充填される。冷媒回路(10)において冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
図1に、本実施形態に係る電装品冷却システム(70)を適用する空気調和機(1)の冷媒回路(10)を示す。
【0032】
〈室内ユニット(20)〉
図1に示すように、室内ユニット(20)は、室内熱交換器(21)、室内ファン(22)、及び室内膨張弁(23)を有している。室内熱交換器(21)は、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器で構成する。室内熱交換器(21)では、その伝熱管の内部を流れる冷媒と、室内ファン(22)が送風する空気とが熱交換する。室内膨張弁(23)は、例えば電子膨張弁で構成する。
【0033】
〈室外ユニット(30)〉
室外ユニット(30)は、室外熱交換器(31)、室外ファン(32)、室外膨張弁(33)、圧縮機(34)、四方切換弁(35)、電力変換装置(60)、及び電装品冷却システム(70)を有している。室外熱交換器(31)は、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器で構成する。室外熱交換器(31)では、その伝熱管の内部を流れる冷媒と、室外ファン(32)が送風する空気とが熱交換する。室外膨張弁(33)は、例えば電子膨張弁で構成する。圧縮機(34)は、例えばスクロール圧縮機等の回転式圧縮機で構成する。四方切換弁(35)は、第1から第4までのポートを有し、冷媒回路(10)の冷媒の循環方向を切り換える。この例では、四方切換弁(35)は、冷房運転時に第1ポートと第2ポートを連通させ且つ第3ポートと第4ポートを連通させる状態(
図1の実線で示す状態)となり、暖房運転時に第1ポートと第3ポートを連通させ且つ第2ポートと第4ポートとを連通させる状態(
図1の破線で示す状態)となる。
【0034】
図2は、実施形態に係る室外ユニット(30)の概略の横断面図である。
図2に示すように、室外ユニット(30)は、箱形のケーシング(40)を有している。ケーシング(40)は、前面パネル(41)、後面パネル(42)、第1側面パネル(43)、及び第2側面パネル(44)を有している。前面パネル(41)は、室外ユニット(30)の前側に設けられている。この前面パネル(41)には、室外空気が吸い込まれる吸込口(41a)が形成されている。また、前面パネル(41)は、ケーシング(40)の本体に対して着脱自在に構成されている。後面パネル(42)は、室外ユニット(30)の後側に設けられている。後面パネル(42)には、室外空気が吹き出される吹出口(42a)が形成されている。第1側面パネル(43)は、室外ユニット(30)の幅方向(
図2の矢印Xで示す方向)の一端側に設けられている。第1側面パネル(43)には、吹出口(43a)が形成されている。第2側面パネル(44)は、室外ユニット(30)の幅方向の他端側に設けられている。
【0035】
また、ケーシング(40)は、縦仕切板(45)と横仕切板(46)とを有している。ケーシング(40)の内部空間は、縦仕切板(45)によって幅方向に2つの空間に仕切られる。これらの空間のうち、第1側面パネル(43)側の空間は、室外熱交換器(31)を収容する熱交換器室(47)である。また、これらの空間のうち、第2側面パネル(44)側の空間は、横仕切板(46)によって更に前後に2つの空間に仕切られている。前後2つの空間のうち、後側の空間は圧縮機(34)を収容する圧縮機室(48)であり、前側の空間は電装品を収容する電装品室(49)である。電装品室(49)は、前面パネル(41)側に、開口部(以下、サービス開口部(41b))を有している。
【0036】
具体的に、電装品室(49)内には、
図2に示すように電力変換装置(60)及び電装品冷却システム(70)が収容されている。電力変換装置(60)は、圧縮機(34)のモータへ電力を供給する。この電力変換装置(60)では、プリント基板(61)上に、複数のパワー素子(63)等の電装品が実装されている。本実施形態のパワー素子(63)は、インバータ回路(図示は省略)のスイッチング素子(例えばIGBTやMOSFET)である。すなわち、パワー素子(63)は、作動中(圧縮機(34)の運転中)に多くの熱を発する発熱部品であり、空気調和機(1)を正常に動作させるためには、これらのパワー素子(63)を動作可能な温度(例えば90℃)を越えないように冷却してやる必要がある。本実施形態では、電装品冷却システム(70)によって、パワー素子(63)を冷却する。
【0037】
〈電装品冷却システム〉
電装品冷却システム(70)は、冷媒ジャケット(80)とヒートパイプ(90)とを備えている。
【0038】
−冷媒ジャケット(80)−
図3は、冷媒ジャケット(80)の平面図である。本実施形態の冷媒ジャケット(80)は、本体部(80b)と冷却管(15)とを備えている。本体部(80b)は、扁平な直方体状であり、例えばアルミニウムなどの金属によって形成する。本体部(80b)には、
図3に示すように、2つの貫通孔(80a)が設けられ、これらの貫通孔(80a)には冷却管(15)が挿入されている。詳しくは、冷却管(15)は、一方の貫通孔(80a)を通り抜けた後にU字状に折り返して、もう一方の貫通孔(80a)を通り抜けている。
【0039】
また、冷却管(15)は、冷媒回路(10)を構成する冷媒配管の一部を利用して構成され、本実施形態では、冷却管(15)は、銅配管である。この冷却管(15)は、本実施形態では、冷媒回路(10)における高圧の液ラインに接続され、冷却管(15)には、熱交換器(21,31)で凝縮した後の高圧の液冷媒が流通する。つまり、この冷媒ジャケット(80)は、冷却管(15)によって、冷媒回路(10)を流れる冷媒(冷凍サイクルに使用する冷媒)が供給されており、冷媒ジャケット(80)は、本発明における熱交換器の一例である。
【0040】
−ヒートパイプ(90)−
図4は、ヒートパイプ(90)の縦断面を示す。ヒートパイプ(90)は、鉛直に立てた状態で配置され、内部に封入された作動流体(F)が蒸発と凝縮(相変化)を行うことで熱を搬送する。すなわち、ヒートパイプ(90)は、本発明の熱搬送部の一例である。
【0041】
図4に示すように、ヒートパイプ(90)は、板状の形態を有している。この例では、ヒートパイプ(90)は、2枚の金属板(90a)を向かいあわせて互いに接合することによって形成されている。本実施形態では、これらの金属板(90a)はアルミニウムの板である。
【0042】
ヒートパイプ(90)では、これらの金属板(90a)の一方に、相手側の金属板(90a)の合わせ面とは反対側に膨らんだ箇所(膨出部)が部分的に形成されることによって、これらの金属板(90a)の間に、作動流体(F)を封入する空洞部が形成されている。このような空洞部は、例えばロールボンド法によって形成することができる。上記ヒートパイプ(90)内の作動流体(F)は、例えばリチウム、ナフタレン、メタノール、アンモニア等である。
【0043】
このヒートパイプ(90)では、金属板(90a)の概ね中央部に、膨出していない部分(仕切部(93)と呼ぶ)を縦方向に設けることによって、
図4に示すように、左右に並んだ2つの空洞部が形成されている。
図4に示した左側の空洞部は、後述する蒸発部(91)であり、右側の空洞部が、後述する凝縮部(92)である。この蒸発部(91)内には、複数の壁部(91b)が縦方向に設けられ、それにより内部が複数の狭流路(91a)として仕切られている。同様に、凝縮部(92)内にも複数の壁部(92b)が縦方向に設けられ、内部が複数の狭流路(92a)として仕切られている。
【0044】
また、ヒートパイプ(90)では、蒸発部(91)の上部と凝縮部(92)の上部とを繋ぐ、横方向に伸びた空洞部も形成されている。上部同士を繋ぐ空洞部は、後述するように、蒸発部(91)においてガス状になった作動流体(F)を凝縮部(92)に導くためのガス通路(94)として使用する。この例では、凝縮部(92)の上端は、蒸発部(91)の上端よりも上寄りであり、ガス通路(94)は、蒸発部(91)から凝縮部(92)に向って上り勾配となっている。
【0045】
また、ヒートパイプ(90)には、蒸発部(91)の下部と凝縮部(92)の下部とを繋ぐ、横方向に伸びた空洞部も形成されている。下部同士を繋ぐ空洞部は、後述するように、凝縮部(92)において液状になった作動流体(F)を蒸発部(91)に導くための液通路(95)として使用する。この例では、凝縮部(92)の下端は、蒸発部(91)の下端よりも上寄りであり、液通路(95)は、凝縮部(92)から蒸発部(91)に向って下り勾配となっている。
【0046】
そして、上記ヒートパイプ(90)内には、作動流体(F)と共に不凝縮ガス(N)が封入されている。その不凝縮ガス(N)の封入量は作動流体(F)の封入量よりも少ない。上記不凝縮ガス(N)としては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等である。
【0047】
上記ヒートパイプ(90)内に作動流体(F)と共に封入された不凝縮ガス(N)は、ヒートパイプ(90)が立てた状態で配置される関係上、その比重でヒートパイプ(90)内の上部の少なくとも中央部、すなわち、ガス通路(94)に位置し、その体積が多い場合には蒸発部(91)の上部や凝縮部(92)の上部にも流入する。
【0048】
上記ヒートパイプ(90)の外面において蒸発部(91)に対応する箇所には、電装品(ここではパワー素子(63))を固定するための領域が設けられている。より具体的には、複数のパワー素子(63)を接触させる平坦な面(A)が形成されている。また、ヒートパイプ(90)の外面において凝縮部(92)に対応する箇所には、冷媒ジャケット(80)が固定される。そのため、冷媒ジャケット(80)を固定する部分は、冷媒ジャケット(80)の本体部(80b)に見合った広さの平坦な面(B)が形成されている。
【0049】
電装品冷却システム(70)は、空気調和機(1)の室外ユニット(30)に組み込まれる。組み込みには、種々の手順が考えられるが、一例として以下を挙げる。
【0050】
まず、プリント基板(61)に実装されているパワー素子(63)にヒートパイプ(90)を予め固定しておく。ヒートパイプ(90)をパワー素子(63)に固定するには、例えば、ヒートパイプ(90)にねじ穴やブラケットを設けておいて、それをプリント基板(61)にねじ止めすることなどが考えられる。
【0051】
また、冷媒ジャケット(80)は、室外ユニット(30)内に組み込んで、冷却管(15)を冷媒回路(10)に接続しておく。
【0052】
そして、サービス開口部(41b)から、ヒートパイプ(90)が取り付けられたプリント基板(61)を室外ユニット(30)の中に入れ、冷媒ジャケット(80)をヒートパイプ(90)に固定する。具体的な固定手段としては、両者をねじ止めして、冷媒ジャケット(80)とヒートパイプ(90)とを固定することなどが考えられる。なお、ヒートパイプ(90)とパワー素子(63)との間や、ヒートパイプ(90)と冷媒ジャケット(80)との間には、熱伝導グリースを塗布しておくのが望ましい。
【0053】
〈空気調和機(1)における電装品の冷却〉
空気調和機(1)では、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行われる。例えば、冷房運転では、圧縮機(34)で圧縮された冷媒が、室外熱交換器(31)で凝縮する。凝縮した冷媒は、例えば全開状態の室外膨張弁(33)を通過し、冷却管(15)を流れる。圧縮機(34)の運転時には、電力変換装置(60)から圧縮機(34)に電力が供給され、その際にパワー素子(63)が発熱してその温度が上昇する。
【0054】
また、暖房運転では、圧縮機(34)で圧縮された冷媒が、室内熱交換器(21)で凝縮する。これにより、室内空気が加熱される。凝縮した冷媒は、例えば全開状態の室内膨張弁(23)を通過し、冷却管(15)を流れる。暖房運転でも、電力変換装置(60)から圧縮機(34)に電力が供給され、その際にパワー素子(63)が発熱してその温度が上昇する。
【0055】
このように冷房運転や暖房運転において発熱したパワー素子(63)は、電装品冷却システム(70)によって冷却される。
【0056】
まず、空気調和機(1)の停止中は、ヒートパイプ(90)内の作動流体(F)は液状であり、ヒートパイプ(90)の下方に溜まっている。この例では、空気調和機(1)の停止中は、作動流体(F)の液面が蒸発部(91)の中程にあるものとする。
図4には、停止中における作動流体(F)の液面を模式的に示した。
【0057】
電力変換装置(60)が動作してパワー素子(63)の温度が上昇すると、蒸発部(91)内に溜まっている作動流体(F)がパワー素子(63)の熱によって蒸発させられる。すなわち、蒸発部(91)の狭流路(91a)内では、作動流体(F)の気泡が発生し、狭流路(91a)内は、ガス状の作動流体(F)と液状の作動流体(F)が混在した状態となる。ヒートパイプ(90)は、鉛直に立てた状態で配置されているので、狭流路(91a)内の気泡は、その浮力によって、狭流路(91a)内を上方に向って上って該狭流路(91a)の上端から流出する。このとき、本実施形態では、狭流路(91a)内を上昇する気泡(ガス状の作動流体(F))が、液通路(95)内や蒸発部(91)の下部付近の液状の作動流体(F)を、蒸発部(91)内に効率的に上方に引き上げる作用を発揮する。
【0058】
狭流路(91a)の上端から出たガス状の作動流体(F)は、ガス通路(94)を通って凝縮部(92)へ導入される。凝縮部(92)の上端は、蒸発部(91)の上端よりも上寄りなので、ガス通路(94)内のガス状の作動流体(F)は、容易に凝縮部(92)の上部にまで流れ込むことができる。
【0059】
そして、ヒートパイプ(90)では、凝縮部(92)の外側には冷媒ジャケット(80)が固定されているので、凝縮部(92)に入ったガス状の作動流体(F)は、冷媒ジャケット(80)に放熱することになる。つまり、ヒートパイプ(90)は、パワー素子(63)の熱を冷媒ジャケット(80)に搬送しているのである。
【0060】
この冷媒ジャケット(80)の熱は、本体部(80b)に広がりつつ冷却管(15)に伝わり、更に、冷却管(15)内の冷媒に伝わる。これにより、パワー素子(63)が冷却され、パワー素子(63)は動作可能な所定温度に維持される。なお、冷房運転時は、冷却管(15)を流れた冷媒は、室内膨張弁(23)で減圧された後、室内熱交換器(21)で蒸発する。また、暖房運転時は、冷却管(15)を流れた冷媒は、室外膨張弁(33)で減圧された後、室外熱交換器(31)で蒸発する。
【0061】
そして、凝縮部(92)において冷媒ジャケット(80)に放熱した作動流体(F)は凝縮して液状になる。狭流路(92a)内の作動流体(F)は、重力によって狭流路(92a)内を下方に向かって流れ、狭流路(92a)から液通路(95)へ流出する。本実施形態では、狭流路(92a)内を流れる液状の作動流体(F)が、ガス通路(94)内や凝縮部(92)の上部付近のガス状の作動流体(F)を凝縮部(92)内に効率よく引き込む作用を発揮する。
【0062】
液通路(95)内の作動流体(F)は、凝縮部(92)から連続的に流れ込んでくる作動流体(F)に押されて蒸発部(91)へ導入される。なお、凝縮部(92)の下端は、蒸発部(91)の下端よりも上寄りなので、液状の作動流体(F)は、蒸発部(91)へ容易に流れ込むことができる。
【0063】
以上のように、電装品冷却システム(70)では、ヒートパイプ(90)内で作動流体(F)が相変化しつつヒートパイプ(90)の内部を循環し、パワー素子(63)の熱を冷媒ジャケット(80)に搬送している。
【0064】
〈不凝縮ガスの作用〉
上記ヒートパイプ(90)内に封入された不凝縮ガス(N)は、作動流体(F)によってパワー素子(63)の熱を冷媒ジャケット(80)に搬送してパワー素子(63)を冷却する機能を確保しつつ、パワー素子(63)を所定温度(t0)未満に冷却し過ぎないように機能して、パワー素子(63)が結露することを防止する。
【0065】
具体的に、パワー素子(63)が所定温度(t0)以上の高いとき、作動流体(F)の温度が上昇するに従って作動流体(F)は、その特性上、その飽和蒸気圧力が指数関数的に急激に上昇する。一方、不凝縮ガス(N)はその特性上、温度上昇による圧力上昇が絶対温度に比例するため、作動流体(F)の圧力上昇に比べて僅かな圧力上昇としかならない。その結果、不凝縮ガス(N)はガス状の作動流体(F)により圧縮されて体積が減少し、ガス状の作動流体(F)の不凝縮ガス(N)に対する体積比が大幅に増える。従って、作動流体(F)は、不凝縮ガス(N)の存在にさほど影響を受けることなく、パワー素子(63)の熱を蒸発部(91)から凝縮部(92)に搬送して冷媒ジャケット(80)に良好に伝達するので、ヒートパイプとしての機能が確保される。
【0066】
一方、作動流体(F)の温度が低下すると、作動流体(F)の飽和蒸気圧力が急激に低下し、そのため、不凝縮ガス(N)が膨張して体積が増え、不凝縮ガス(N)はガス通路(94)から凝縮部(92)の上部やその下方にまで膨張して、それ等部位を覆うことになる。その結果、凝縮部(92)での作動流体(F)の凝縮が行われ難くなる。また、上記膨張した不凝縮ガス(N)は、蒸発部(91)の上部やその下方にまで位置して、それ等部位を覆うため、蒸発部(91)に存在する作動流体(F)は、不凝縮ガス(N)の圧力によって蒸発圧力にまで低下することができず、蒸発し難くなり、蒸発部(91)での作動流体(F)の蒸発性能が低下する。その結果、ヒートパイプ(90)は、パワー素子(63)を冷却するヒートパイプとして機能し難くなる。
【0067】
以上の不凝縮ガス(N)の作用から、本実施形態では、パワー素子(63)が固定される蒸発部(91)の温度が所定温度未満に低下しないように、作動流体(F)の種類と量及び不凝縮ガス(N)の種類と量とを各々適切に選定して、ヒートパイプ(90)を可変コンダクタンスヒートパイプとして機能させている。
【0068】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、立てた状態で使用されるヒートパイプ(90)において、蒸発部(91)と凝縮部(92)とを横方向に並んで配置しているので、ヒートパイプ(90)を、その上下方向長さと横方向長さに差が少ない四角形状とすることができる。従って、従来のように一方向(横方向)に長い形状に比べてヒートパイプ(90)をコンパクト化できる。
【0069】
また、立てた状態のヒートパイプ(90)では、蒸発部(91)でガス状になった作動流体(F)は、その蒸発部(91)の上部からその横方向に位置するガス通路(94)を経て凝縮部(92)の上部に流入する。そして、その後、その凝縮部(92)の下部からその横方向に位置する液通路(95)を経て蒸発部(91)の下部に流入することを繰り返す。このように、作動流体(F)は上下方向に循環して、作動流体(F)の流れが円滑であるので、パワー素子(63)の熱を冷媒ジャケット(80)に良好に伝達できる。
【0070】
更に、立てた状態で使用されるヒートパイプ(90)の内部に作動流体(F)と共に不凝縮ガス(N)が封入されているので、立てた状態のヒートパイプ(90)内で不凝縮ガス(N)は、ヒートパイプ(90)上部のガス通路(94)に位置していて、作動流体(F)の温度低下時には、体積膨張してガス通路(94)の横方向に位置する蒸発部(91)と凝縮部(92)との双方に作用し、蒸発部(91)と凝縮部(92)の双方の機能を低下させるので、パワー素子(63)の温度を所定温度未満に低下しないように確実に制御できて、冷凍装置の電装品としてのパワー素子(63)の結露を確実に防止できる。
【0071】
しかも、従来のような不凝縮ガスのガス溜め部やタンクを要することなく、可変コンダクタンスヒートパイプとして機能できるので、更なるコンパクト化が可能である。
【0072】
(発明の第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態を示す。
【0073】
本実施形態では、上記第1の実施形態のヒートパイプ(90)の構成に、更に不凝縮ガスリザーバを設けたものである。
【0074】
具体的に、
図5のヒートパイプ(100)において、ガス通路(94)の上方に、断面四角形状の不凝縮ガスリザーバ(不凝縮ガス貯留部)(110)が配置される。この不凝縮ガスリザーバ(110)は、内部に不凝縮ガスを貯留すると共に、凝縮部(92)の上部にスリット(110a)を通じて開口している。
【0075】
また、上記不凝縮ガスリザーバ(110)は、上記スリット(110a)により凝縮部(92)やガス通路(94)及び蒸発部(91)とは断熱されていると共に、外壁部が外気に晒されている。従って、不凝縮ガスリザーバ(110)の温度は外気の温度にほぼ等しくなる。
【0076】
〈不凝縮ガスリザーバ(110)の作用〉
本実施形態では、不凝縮ガスリザーバ(110)に貯留する不凝縮ガスによって、ヒートパイプ(100)が持つ不凝縮ガスの量が極めて増量される。従って、不凝縮ガスの作用は上記第1の実施形態と基本的に同様であるが、作動流体(F)の圧力に応じてガス通路(94)に位置する不凝縮ガスの一部が不凝縮ガスリザーバ(110)に出入りして、ヒートパイプ(100)の内部に存在する不凝縮ガスの量が調整されるので、蒸発部(91)の蒸発性能や凝縮部(92)の凝縮性能を大きく変更できて、パワー素子(63)の温度制御性を良くすることが可能である。
【0077】
また、ヒートパイプ(100)がパワー素子(63)を冷却するヒートパイプとして動作している状態では、ガス通路(94)に位置する不凝縮ガスは、蒸発部(91)上部のガス状の作動流体(F)の圧力により不凝縮ガスリザーバ(110)内に押し込められる。従って、作動流体(F)によるヒートパイプ機能は不凝縮ガスによって妨げられることがなく、パワー素子(63)の冷却性能が向上する。
【0078】
一方、パワー素子(63)を所定温度未満に低下させないことが必要な時には、作動流体(F)の圧力低下により不凝縮ガスリザーバ(110)の不凝縮ガスが凝縮部(92)やガス通路(94)、蒸発部(91)に多量に流出して、凝縮部(92)及び蒸発部(91)の機能を大きく低下させる。
【0079】
従って、本実施形態では、パワー素子(63)を冷却するヒートパイプ機能の作動時と非作動時との伝熱性能の差を大きく取ることが可能であるので、パワー素子(63)を所定温度以上の状況下で冷却する冷却機能と、パワー素子(63)を所定温度(t0)に維持する(所定温度(t0)未満に低下させない)温度維持機能とを明確に切り換えながら、上記冷却機能を高めることが可能である。
【0080】
更に、不凝縮ガスリザーバ(110)内の不凝縮ガスが外気温度に保持されているので、外気温度が高い場合には、上記冷却機能と温度維持機能との切り換え点、すなわち所定温度(t0)を高くできる一方、外気温度が低い場合には所定温度(t0)を低くできる。従って、外気温度が高い場合、すなわち露点が高い場合には、所定温度(t0)も高くなるので、この所定温度(t0)を上記高い露点を越える温度に設定できて、パワー素子(63)の結露を確実に防止できる。一方、外気温度が低い場合には、露点も低いために、所定温度(t0)が低く設定されてもパワー素子(63)の結露を招くことは確実に防止できる。
【0081】
尚、本実施形態では、不凝縮ガスリザーバ(110)をスリット(110a)を通じてヒートパイプ(100)に接続して断熱したが、更に、不凝縮ガスリザーバ(110)を外気温度に近い電装品ボックスに接続したり、外気と熱交換するためのヒートシンクに不凝縮ガスリザーバ(110)を接続しても良い。
【0082】
(その他の実施形態)
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0083】
電装品冷却システム(70)で冷却する電装品は、パワー素子(63)には限定されない。例えば、リアクトル等の冷却に用いてもよい。
【0084】
また、ヒートパイプ(90)を配置する向きは、鉛直には限定されない。例えば、斜めに配置してもかまわない。
【0085】
更に、凝縮部(92)の上端を蒸発部(91)の上端よりも上寄りにすることは必須でないし、凝縮部(92)の下端を蒸発部(91)の下端よりも上寄りにすることも必須でない。例えば、凝縮部(92)の上端と蒸発部(91)の上端との高さ位置を一致させ、凝縮部(92)の下端と蒸発部(91)の下端との高さ位置を一致させても良い。
【0086】
加えて、蒸発部(91)や凝縮部(92)には、狭流路(91a,92a)は必須ではない。勿論、狭流路(91a,92a)を設けることでヒートパイプ(90)の熱搬送の効率は向上するが、電装品冷却システム(70)に求められる能力等に応じて、狭流路(91a,92a)の要否を判断すればよい。
【0087】
また、不凝縮ガスリザーバ(110)に温度センサを設けて、その温度信号に基づいて不凝縮ガスリザーバ(110)の温度を外気温度に制御しても良い。