特許第6554903号(P6554903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554903
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20190729BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20190729BHJP
【FI】
   F25B1/00 304W
   F24F11/30
   F25B1/00 101Z
   F25B1/00 387G
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-99635(P2015-99635)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-217559(P2016-217559A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】土浦 雅人
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−304373(JP,A)
【文献】 特開2002−081808(JP,A)
【文献】 特開2016−070555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口及び吐出口を備え、冷媒を前記吸入口から吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を前記吐出口から吐出する圧縮機と、
冷媒を外気と熱交換させるための室外熱交換器と、
冷媒を膨張させるための膨張弁と、
冷媒を室内気と熱交換させるための複数の室内熱交換器と、
冷媒を気液分離するためのアキュムレータと、
冷房運転時に、前記圧縮機の前記吐出口から吐出された冷媒が、前記室外熱交換器、前記膨張弁、複数の前記室内熱交換器、前記アキュムレータをこの順に流れてから、前記圧縮機の前記吸入口に戻されるように、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記膨張弁、複数の前記室内熱交換器、及び前記アキュムレータを接続する冷媒通路と、
前記圧縮機の前記吐出口に接続される第一ポートと、前記室内熱交換器に接続される第二ポートと、前記室外熱交換器に接続される第三ポートと、前記アキュムレータに接続される第四ポートとを有し、冷房運転時に前記第一ポートと前記第三ポートが連通するとともに前記第二ポートと前記第四ポートが連通するように制御される四方弁と、
冷房運転時に前記冷媒通路のうち前記室内熱交換器よりも下流側であって且つ前記四方弁よりも上流側の部分を流れる冷媒を、前記圧縮機の前記吸入口に導くバイパス通路と、
前記バイパス通路に介装され、開くことによって前記バイパス通路内の冷媒の流通が許可され、閉じることによって前記バイパス通路内の冷媒の流通が禁止されるように構成されるバイパス開閉弁と、
前記バイパス開閉弁の開閉動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
冷房運転時に、複数の前記室内熱交換器のうち運転中の室内熱交換器の総運転容量が小さいほど低くなるように、前記総運転容量に基づく前記圧縮機の下限回転速度を定める下限回転速度設定処理と、
冷房運転時における前記圧縮機の実回転速度が、前記下限回転速度以上であるときに前記バイパス開閉弁が開き、冷房運転時における前記圧縮機の実回転速度が、前記下限回転速未満であるときに前記バイパス開閉弁が閉じるように、前記バイパス開閉弁の開閉動作を制御する開閉弁制御処理と、
を実行する、空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記下限回転速度設定処理は、設定した下限回転速度以上の回転速度で前記圧縮機が作動したときに、前記圧縮機の前記吸入口に吸入される冷媒に液冷媒が含まれないように、前記総運転容量に基づいて下限回転速度を定める処理である、空気調和装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和装置において、
前記制御装置は、冷房運転時に前記室内熱交換器内に寝込んでいるオイルを前記圧縮機に戻すためのオイル戻し制御が実行されているときに、前記バイパス開閉弁が閉じるように、前記バイパス開閉弁を制御する、空気調和装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の空気調和装置において、
前記制御装置は、前記空気調和装置による冷房運転の開始時から、前記空気調和装置の運転が安定するまでの時間として予め定められている所定時間が経過する前は、前記バイパス開閉弁が閉じるように、前記バイパス開閉弁を制御する、空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器、及びアキュムレータを備ええ、冷媒の凝縮作用及び蒸発作用を利用して空調を実行する空気調和装置が知られている。このような空気調和装置の冷房運転時には、圧縮機の吐出口から吐出された冷媒が、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器、アキュムレータをこの順に流れ、その後、アキュムレータから圧縮機の吸入口に気相の冷媒が戻される。このとき室内熱交換器内の冷媒が室内気と熱交換することにより、室内が冷房される。一方、暖房運転時に、圧縮機の吐出口から吐出された冷媒が、室内熱交換器、膨張弁、室外熱交換器、アキュムレータをこの順に流れ、その後、アキュムレータから圧縮機の吸入口に気相の冷媒が戻される。このとき室内熱交換器にて冷媒と室内気とが熱交換することにより、室内が暖房される。
【0003】
特許文献1は、上記構成に加え、室外熱交換器と膨張弁との間に設けられた気液分離器と、気液分離器で気液分離された気相冷媒を圧縮機の吸入口に戻すためのバイパス通路と、バイパス通路に介装されたバイパス開閉弁と、バイパス開閉弁の開閉動作を制御する制御装置とを備える空気調和装置を開示する。特許文献1に記載の空気調和装置によれば、冷房運転時に、以下の条件が全て成立したときに、バイパス開弁が開き、それ以外のときにバイパス開閉弁が閉じるように、制御装置によりバイパス開閉弁の開閉動作が制御される。
・圧縮機の回転速度(運転周波数)が所定の高回転速度以上である
・外気温度が任意の設定値以上である
・室内温度が任意の設定温度同等以上である
・室内ファンモータの回転速度が任意の設定回転速度以上である
【0004】
特許文献1に記載の空気調和装置において、上記条件を全て満たしてバイパス開閉弁が開いた場合、気液分離器で気液分離された気相冷媒がバイパス通路を通って圧縮機に戻される。このため、室外熱交換器を流出した気相冷媒が膨張弁、室内熱交換器、アキュムレータをバイパスする。よって、冷媒がこれらを通過する際における圧力損失は生じない。その結果、冷房運転時における冷凍効率を高めることがでる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−96479号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、近年の建築技術の進歩に伴い、建築物の高断熱化も進んでいる。従って、室内の寒暖の差も小さくなりつつあり、それに伴って、室内空調時における空調負荷も小さくなってきている。空調負荷が小さい場合、空気調和装置に備えられる圧縮機の回転速度が低くされる。つまり、現状の建築物の室内空調においては、ほとんどの場合、圧縮機は低回転速度で作動している。
【0007】
特許文献1に記載の制御によれば、バイパス開閉弁を開くための条件に、圧縮機の回転速度(運転周波数)が所定の高回転速度以上であるという条件が含まれる。このことは、圧縮機の回転速度が所定の高回転速度未満である場合、すなわち圧縮機の回転速度が低い場合には、バイパス開閉弁が閉じていることを意味する。ここで、上記したように、現状の建築物の室内空調においては、ほとんどの場合、圧縮機の回転速度が低い。よって、特許文献1に記載の制御方式によりバイパス開閉弁を開閉制御した場合、ほとんどの場合、バイパス開閉弁が閉じている。従って、冷房運転時における冷凍効率を十分に高めることができない。
【0008】
本発明は、冷房運転時における冷凍効率をより一層高めることができるように構成された空気調和装置を提供することを目的とする。
【0009】
(課題を解決するための手段)
本発明は、吸入口(11a)及び吐出口(11b)を備え、冷媒を吸入口から吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出口から吐出する圧縮機(11)と、冷媒を外気と熱交換させるための室外熱交換器(14)と、冷媒を膨張させるための膨張弁(21)と、冷媒を室内気と熱交換させるための複数の室内熱交換器(22)と、冷媒を気液分離するためのアキュムレータ(18)と、冷房運転時に、圧縮機の吐出口から吐出された冷媒が、室外熱交換器、膨張弁、複数の室内熱交換器、アキュムレータをこの順に流れてから、圧縮機の吸入口に戻されるように、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、複数の室内熱交換器、及びアキュムレータを接続する冷媒通路(30)と、圧縮機の吐出口に接続される第一ポート(13a)と、室内熱交換器に接続される第二ポート(13b)と、室外熱交換器に接続される第三ポート(13c)と、アキュムレータに接続される第四ポート(13d)とを有し、冷房運転時に第一ポートと第三ポートが連通するとともに第二ポートと第四ポートが連通するように制御される四方弁(13)と、冷房運転時に冷媒通路のうち複数の室内熱交換器よりも下流側であって且つ四方弁よりも上流側の部分を流れる冷媒を、圧縮機の吸入口に導くバイパス通路(38)と、バイパス通路に介装され、開くことによってバイパス通路内の冷媒の流通が許可され、閉じることによってバイパス通路内の冷媒の流通が禁止されるように構成されるバイパス開閉弁(61)と、バイパス開閉弁の開閉動作を制御する制御装置(40)とを備え、制御装置が、冷房運転時に、複数の室内熱交換器のうち運転中の室内熱交換器の総運転容量が小さいほど低くなるように、総運転容量に基づく圧縮機の下限回転速度(R1)を定める下限回転速度設定処理(S4)と、冷房運転時における圧縮機の実回転速度(R)が下限回転速度以上であるときにバイパス開閉弁が開き、冷房運転時における圧縮機の実回転速度が下限回転速度未満であるときにバイパス開閉弁が閉じるように、バイパス開閉弁の開閉動作を制御する開閉弁制御処理(S6,S8,S9)と、を実行する、空気調和装置(1)を提供する。
【0010】
この場合において、下限回転速度設定処理は、設定した下限回転速度以上の回転速度で圧縮機が作動したときに、圧縮機の吸入口に吸入される冷媒に液冷媒が含まれないように、総運転容量に基づいて下限回転速度を定める処理であるのがよい。
【0011】
本発明に係る空気調和装置によれば、冷房運転時にバイパス開閉弁が開いている場合、室内熱交換器を流出した冷媒は、バイパス通路を経由して圧縮機の吸入口に戻される。バイパス通路を流れる冷媒は、少なくともアキュムレータをバイパスする。このため、冷媒がアキュムレータを通過することによる圧力損失は生じない。こうしてアキュムレータを通過する分の圧力損失が低減されるため、冷房運転時における冷凍効率が高められる。
【0012】
ここで、バイパス通路を流れる冷媒はアキュムレータをバイパスするため、バイパス通路内の冷媒に液冷媒が含まれていると、圧縮機の吸入口に液冷媒が吸入されることになる。圧縮機に液冷媒が吸入された場合、圧縮機が液冷媒を圧縮をするため好ましくない。この点に関し、本発明においては、バイパス開閉弁が開いているときは、圧縮機の実回転速度が、必ず、運転中の室内熱交換器の総運転容量に基づいて定められる下限回転速度以上であり、下限回転速度は、その下限回転速度以上の回転速度で圧縮機が作動したときに、圧縮機の吸入口に吸入される冷媒に液冷媒が含まれないように、運転中の室内熱交換器の総運転容量に基づいて定められている。よって、バイパス開閉弁が開いているときであっても、圧縮機に液冷媒が吸入されることはなく、それ故に、圧縮機が液冷媒を圧縮することはない。
【0013】
さらに、バイパス開閉弁の開閉動作に影響する圧縮機の下限回転速度は、運転中の室内熱交換器の総運転容量に基づいて、総運転容量が小さいほど小さくなるように、定められる。これによれば、総運転容量が小さい低負荷運転時には、圧縮機の回転速度が相対的に小さくされるが、このとき本発明においては圧縮機の下限回転速度も小さくされる。つまり、圧縮機の下限回転速度は、負荷に応じて変動する。従って、低負荷運転時には、バイパス開閉弁を開いてもよい圧縮機の回転速度領域の下限が低くされる。そのため、低負荷運転時であっても、室内熱交換器を流出したガス冷媒がアキュムレータをバイパスするように、バイパス開閉弁を開いておくことが可能になる。よって、低負荷運転時であっても室内熱交換器を流出したガス冷媒をアキュムレータを通さずに直接圧縮機に戻すことにより、冷房運転時における冷凍効率を高めることができる。
【0014】
また、バイパス通路は、冷房運転時に、冷媒通路のうち室内熱交換器よりも下流側であって且つ四方弁よりも上流側の部分を流れる冷媒を、圧縮機の吸入口に導くように構成される。これによれば、バイパス開閉弁が開いている場合、室内熱交換器から流出した冷媒は、四方弁及びアキュムレータをバイパスして、圧縮機の吸入口に流入する。このため、冷媒が四方弁及びアキュムレータを通過することによる圧力損失は生じない。こうして四方弁及びアキュムレータを通過することによる圧力損失分が低減されるため、冷房運転時における冷凍効率がより一層高められる。
【0015】
また、制御装置は、冷房運転時に室内熱交換器内に寝込んでいるオイルを圧縮機に戻すためのオイル戻し制御が実行されているときに、バイパス開閉弁が閉じるように、バイパス開閉弁を制御するとよい。これによれば、オイル戻し制御の実行時にオイルとともに液冷媒がバイパス通路を経由して圧縮機の吸入口に流入することが防止される。
【0016】
また、制御装置は、空気調和装置による冷房運転の開始時から、空気調和装置の運転が安定するまでの時間として予め定められている所定時間が経過する前は、バイパス開閉弁が閉じるように、バイパス開閉弁を制御するとよい。空気調和装置の始動直後においては、空気調和装置の運転状態が不安定である。不安定な運転状態である時にバイパス開閉弁を開いた場合、バイパス通路内を液冷媒が流れる虞がある。この点に関し、本発明においては、空気調和装置の冷房運転の始動完了後であって所定時間経過する前は、バイパス開閉弁が閉じている。よって、始動初期にバイパス通路を経由して圧縮機に液冷媒が供給されることが効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る空気調和装置の概略構成を示す図である。
図2】室外機及び室内機の内部構成を示す図である。
図3】制御装置がバイパス開閉弁の開閉を制御するために実行する開閉弁制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
図4】制御装置が実行する下限回転速度演算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る空気調和装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る空気調和装置1は、室外機10と、複数の室内機20a,20b,20c,20dと、冷媒配管30(冷媒通路)を備える。室外機10及び複数の室内機20a,20b,20c,20dが冷媒配管30により並列的に接続される。
【0019】
図2は、空気調和装置1に備えられる室外機10の内部構成及び室内機20a,20b,20c,20dの内部構成を示す図である。図2においては、複数の室内機のうち室内機20aのみの内部構成を示すが、全ての室内機の内部構成は同じである。
【0020】
図2に示すように、室外機10は、圧縮機11と、オイルセパレータ12と、四方弁13と、室外熱交換器14と、室外側電子膨張弁15と、サブ熱交換器16と、過冷却コイル17と、アキュムレータ18とを備える。また、室内機20a,20b,20c,20dは、それぞれ、室内側電子膨張弁21と、室内熱交換器22とを備える。これらの構成要素が、第一配管31、第二配管32、第三配管33、中間配管34、アキュムレータ入口配管35及び、アキュムレータ出口配管36により接続される。第一配管31、第二配管32、第三配管33、中間配管34、アキュムレータ入口配管35、及びアキュムレータ出口配管36が、冷媒配管30(冷媒通路)を構成する。
【0021】
圧縮機11は例えばガスエンジン等の動力源に接続され、動力源からの駆動力を受けて回転作動する。圧縮機11は吸入口11a及び吐出口11bを有する。圧縮機11は、吸入口11aから冷媒ガスを吸入し、内部で冷媒ガスを圧縮し、圧縮した冷媒ガスを吐出口11bから吐出する。なお、図2には2台の圧縮機11,11が並列的に接続されている例が示されているが、圧縮機の個数は1個でもよいし、3個以上でもよい。また、複数の圧縮機を直列接続してもよい。
【0022】
圧縮機11の吐出口11bは第一配管31の一端に接続される。第一配管31の途中にオイルセパレータ12が介装される。オイルセパレータ12は、圧縮機11の吐出口11bから吐出されたオイルを回収する。回収されたオイルは圧縮機11の吸入口11a側に戻される。
【0023】
第一配管31の他端に四方弁13が接続される。四方弁13は、第一ポート13a、第二ポート13b、第三ポート13c、及び、第四ポート13dを有する。四方弁13の第一ポート13aは、第一配管31を介して圧縮機11の吐出口11bに接続される。四方弁13の第二ポート13bは、第二配管32を介して複数の室内機に備えられるそれぞれの室内熱交換器22に接続される。四方弁13の第三ポート13cは、第三配管33を介して室外熱交換器14に接続される。そして、四方弁13の第四ポート13dは、アキュムレータ入口配管35を介してアキュムレータ18に接続される。
【0024】
四方弁13は、第一ポート13aが第二ポート13bに連通するとともに第三ポート13cが第四ポート13dに連通する暖房時切換状態と、第一ポート13aが第三ポート13cに連通するとともに第二ポート13bが第四ポート13dに連通する冷房時切換状態とを、選択的に実現することができるように構成される。
【0025】
第三配管33を介して四方弁13の第三ポート13cに接続された室外熱交換器14は、その内部を流通する冷媒と外気とを熱交換させる。この室外熱交換器14には中間配管34の一端が接続される。中間配管34の他端は、複数の室内機にそれぞれ備えられる室内熱交換器22にそれぞれ接続される。室内熱交換器22は、その内部を流通する冷媒と室内気とを熱交換させる。
【0026】
中間配管34の途中の部分であって室外機10側に配置される部分に過冷却コイル17が介装される。過冷却コイル17は、内部を通る冷媒を過冷却させる。また、中間配管34の位置Aから位置Bまでの間の部分は、2つの配管(配管L1、配管L2)に分岐している。配管L1には一方向弁19が介装され、配管L2には室外側電子膨張弁15が介装される。冷房運転時には冷媒は配管L1を流れ、暖房運転時には冷媒は配管L2を流れる。配管L2に介装された室外側電子膨張弁15は、そこを流れる冷媒を膨張させる。室外側電子膨張弁15は開度調整可能な流量調整弁でもあり、配管L2を流れる冷媒の流量を調整することができる。
【0027】
中間配管34の途中の部分であって室内機20a,20b,20c,20d内に配置される部分にそれぞれ室内側電子膨張弁21が介装される。室内側電子膨張弁21は、そこを流れる冷媒を膨張させる。室内側電子膨張弁21は開度調整可能な流量調整弁である。それぞれの室内機に備えられる室内側電子膨張弁21は、それぞれ個別に作動することができる。従って、ある室内機の運転を停止する場合、その室内機の室内熱交換器22に冷媒が流入しないように、その室内機の室内側電子膨張弁21が閉じられる。
【0028】
また、上述したように、複数の室内熱交換器22は、それぞれ、第二配管32を通じて四方弁13の第二ポート13bに接続されている。よって、室内熱交換器22から第二配管32側に流出した冷媒は、第二配管32を通って四方弁13の第二ポートに流入する。
【0029】
アキュムレータ入口配管35を介して四方弁13の第四ポート13dに接続されたアキュムレータ18は、さらにアキュムレータ出口配管36を介して圧縮機11の吸入口11aに接続される。このアキュムレータ18は、アキュムレータ入口配管35側から冷媒を導入し、導入した冷媒を気液分離する。アキュムレータ18内で気液分離されたガス冷媒が、アキュムレータ出口配管36を経由して圧縮機11の吸入口11aに戻される。
【0030】
また、アキュムレータ入口配管35と中間配管34が分岐配管37により接続される。分岐配管37にサブ熱交換器16が介装される。分岐配管37を流れる冷媒は、サブ熱交換器16に入り、サブ熱交換器16にて、例えば圧縮機11の動力源たるガスエンジンを冷却した冷却水と熱交換する。
【0031】
また、第二配管32とアキュムレータ出口配管36がバイパス配管38(バイパス通路)により接続される。このバイパス配管38にはバイパス開閉弁61が介装される。さらに、第一配管31とアキュムレータ入口配管35がホットガスバイパス配管39により接続される。このホットガスバイパス配管39にホットガスバイパス開閉弁62が介装される。
【0032】
また、本実施形態に係る空気調和装置1は、制御装置40を備える。制御装置40は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成とする。制御装置40は、少なくとも、圧縮機11の駆動、四方弁13の切換動作、バイパス開閉弁61の開閉動作、ホットガスバイパス開閉弁62の開閉動作を制御する。
【0033】
また、冷媒回路の各所に温度センサ及び圧力センサが取り付けられる。これらの各種センサのうち、吐出温度センサ51は第一配管31に取り付けられており、圧縮機11から吐出された冷媒の温度(吐出温度)を検出する。吸入温度センサ52はアキュムレータ出口配管36に取り付けられており、圧縮機11に吸入される冷媒の温度(吸入温度)を検出する。また、吸入圧力センサ53はアキュムレータ出口配管36に取り付けられており、圧縮機11の吸入口11aに通じるアキュムレータ出口配管36内の圧力、すなわち圧縮機11の吸入口11a側の冷媒圧力(吸入圧力)PLを検出する。また、外気温度センサ54は、室外機のハウジングに取り付けられており、外気温度Toutを検出する。また、図示しないが、圧縮機11に回転速度センサが取り付けられている。この回転速度センサは圧縮機11の実回転速度(単位時間当たりの回転数)Rを検出する。各センサにより検出された温度情報、圧力情報、及び回転速度情報は、制御装置40に入力される。
【0034】
次に、上記構成の空気調和装置1の空調動作について説明する。本実施形態に係る空気調和装置1は、空調モードが暖房モードであるか冷房モードであるかをユーザがリモコンなどを操作することにより設定することができるようにされている。そして、設定された空調モードに従って、室外機10が空調運転する。
【0035】
空気調和装置1の空調モードが暖房モードであるときに、すなわち暖房運転時に、四方弁13の切換状態が暖房時切換状態になるように、制御装置40が四方弁13の切換動作を制御する。空気調和装置1の空調モードが冷房モードであるときに、すなわち冷房運転時に、四方弁13の切換状態が冷房時切換状態になるように、制御装置40が四方弁13の切換動作を制御する。図2において、冷房運転時における冷媒の流れが実線の矢印により示され、暖房運転時における冷媒の流れが破線の矢印により示される。
【0036】
まず、暖房運転について説明する。ガスエンジンなどの動力源の駆動により圧縮機11が作動すると、圧縮機11は、アキュムレータ出口配管36内の低圧ガス冷媒を吸入口11aから吸入するとともに吸入した低圧ガス冷媒を圧縮して高温高圧ガス冷媒を生成する。そして、生成した高温高圧ガス冷媒を吐出口11bから吐出する。吐出口11bから吐出された高温高圧ガス冷媒は第一配管31を流れる。
【0037】
第一配管31の途中に介装されているオイルセパレータ12によって、圧縮機11から第一配管31に流出したオイルが回収される。回収されたオイルは圧縮機11に戻される。また、第一配管31の途中にはホットガスバイパス配管39が接続されている。ホットガスバイパス配管39に介装されたホットガスバイパス開閉弁62は、空気調和装置1の運転中に、例えば冷媒回路内の冷媒圧力が高すぎるようなときに開くように、制御装置40によりその開閉動作が制御される。ホットガスバイパス開閉弁62が開いている場合、第一配管31内の一部のガス冷媒はホットガスバイパス配管39を流れてアキュムレータ入口配管35に至り、さらにアキュムレータ入口配管35からアキュムレータ18に導入される。ホットガスバイパス開閉弁62が閉じている場合、第一配管31内のガス冷媒は四方弁13の第一ポート13aに入る。
【0038】
四方弁13は、暖房運転時に暖房時切換状態になるように制御装置40によりその切換動作が制御されているから、暖房運転時には、四方弁13の第一ポート13aが第二ポート13bに連通する。そのため第一配管31から四方弁13の第一ポート13aに入った高温高圧ガス冷媒は、第二ポート13bから四方弁13を流出して第二配管32に流れる。
【0039】
第二配管32の途中にはバイパス配管38が接続されている。バイパス配管38に介装されたバイパス開閉弁61は、暖房運転時に閉じるように制御装置40によりその開閉動作が制御される。従って、暖房運転時には、第二配管32内の冷媒は、バイパス配管38を流れることなく室内機側の室内熱交換器22に流入する。室内熱交換器22に流入した高温高圧ガス冷媒は、室内熱交換器22内を流通する間に室内気と熱交換し、室内に熱を吐き出して凝縮する。つまり、暖房運転時には室内熱交換器22が凝縮器として機能する。このとき高温高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内気が暖められて、室内が暖房される。
【0040】
室内気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室内熱交換器22から中間配管34に流出する。そして、中間配管34の途中に介装された室内側電子膨張弁21で膨張することにより中圧化される。その後、室外機側の過冷却コイル17を通過することにより過冷却される。過冷却コイル17を流出した冷媒の一部は、中間配管34に接続されている分岐配管37を流れる。そして、分岐配管37に設けられているサブ熱交換器16に入り、このサブ熱交換器16によって、例えばエンジン冷却水と熱交換する。サブ熱交換器16で熱交換した冷媒は、分岐配管37からアキュムレータ入口配管35を流れてアキュムレータ18に導入される。
【0041】
一方、中間配管34から分岐配管37に流れなかった冷媒は、配管L2を流れ、配管L2に介装された室外側電子膨張弁15を通る。室外側電子膨張弁15を通ることにより冷媒が低圧化される。室外側電子膨張弁15を通った冷媒は、室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入した冷媒は室外熱交換器14内を流通する間に外気と熱交換し、外気の熱を奪って蒸発する。つまり、暖房運転時には室外熱交換器14が蒸発器として機能する。
【0042】
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化して室外熱交換器14から第三配管33に流出し、その後、四方弁13の第三ポート13cに入る。暖房運転時には、四方弁13の第三ポート13cが第四ポート13dに連通しているから、第三配管33から四方弁13の第三ポート13cに入った冷媒は第四ポート13dから四方弁13を流出してアキュムレータ入口配管35を流れる。アキュムレータ入口配管35を流れた冷媒はアキュムレータ18に導入される。アキュムレータ18では導入された冷媒が気液分離され、気液分離された低温低圧のガス冷媒がアキュムレータ出口配管36に流出する。そして、アキュムレータ出口配管36内のガス冷媒が圧縮機11の吸入口11aに戻される。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内暖房が継続される。
【0043】
次に、冷房運転について説明する。圧縮機11が作動すると、圧縮機11の吐出口11bから第一配管31に高温高圧ガス冷媒が吐出される。高温高圧ガス冷媒は第一配管31を流れ、オイルセパレータ12を経由して四方弁13の第一ポート13aに入る。
【0044】
四方弁13は、冷房運転時には冷房時切換状態になるように制御装置40によりその切換動作が制御されているから、冷房運転時には、四方弁13の第一ポート13aが第三ポート13cに連通する。そのため第一配管31から四方弁13の第一ポート13aに入った高温高圧ガス冷媒は、第三ポート13cから四方弁13を流出して第三配管33に流れる。第三配管33に流れた高温高圧ガス冷媒は室外熱交換器14に流入する。室外熱交換器14に流入した冷媒は室外熱交換器14内を流通する間に外気と熱交換し、外気に熱を吐き出して凝縮する。つまり、冷房運転時には室外熱交換器14が凝縮器として機能する。
【0045】
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化し、室外熱交換器14から中間配管34に流出する。中間配管34に流出した液冷媒(或いは気液二相冷媒)は、配管L1を通過する。その後、一部の冷媒が分岐配管37を流れ、分岐配管37に設けられているサブ熱交換器16にて熱交換する。サブ熱交換器16で熱交換した冷媒は、分岐配管37からアキュムレータ入口配管35を流れてアキュムレータ18に導入される。
【0046】
分岐配管37を流れなかった冷媒は、中間配管34に介装されている過冷却コイル17を通過し、その後、室内機側の室内側電子膨張弁21を通る。この室内側電子膨張弁21で冷媒が膨張することにより蒸発しやすいように低圧化される。その後、冷媒は室内熱交換器22に流入する。室内熱交換器22に流入した冷媒は室内熱交換器22内を流通する間に室内気と熱交換し、室内気の熱を奪って蒸発する。つまり、室内熱交換器22は冷房運転時に蒸発器として機能する。このとき冷媒が室内気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内が冷房される。
【0047】
室内気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化し、室内熱交換器22から第二配管32に流出する。ここで、上述したように、第二配管32は、バイパス配管38によりアキュムレータ出口配管36に接続されている。また、バイパス配管38に、バイパス開閉弁61が介装されている。このバイパス開閉弁61は、暖房運転時には閉じているが、冷房運転時には、後述する所定の条件が成立した時に、開く。バイパス開閉弁61が開いている場合、第二配管32内の冷媒が、バイパス配管38を経由してアキュムレータ出口配管36に流入する。一方、バイパス開閉弁61が閉じている場合、第二配管32内の冷媒は、バイパス配管38を通らずに、四方弁13に向かう。そして、四方弁13の第二ポート13bに入る。冷房運転時には四方弁13の第二ポート13bが第四ポート13dに連通しているから、第二配管32から四方弁13の第二ポート13bに入った冷媒は、第四ポート13dから四方弁13を流出してアキュムレータ入口配管35に流入する。アキュムレータ入口配管35を流れた冷媒はアキュムレータ18に導入される。アキュムレータ18では導入された冷媒が気液分離され、分離された低温低圧のガス冷媒がアキュムレータ出口配管36に流出する。そして、アキュムレータ18からアキュムレータ出口配管36内に流入したガス冷媒、及び、バイパス配管38を経由してアキュムレータ出口配管36内に流入したガス冷媒が、圧縮機11の吸入口11aに戻される。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、室内冷房が継続される。
【0048】
上記の説明からわかるように、冷房運転時には、圧縮機11の吐出口11bから吐出された冷媒が、室外熱交換器14を流れることにより凝縮され、次いで、室内側電子膨張弁21を流れることにより膨張され、次いで、複数の室内機20a,20b,20c,20dに備えられるそれぞれの室内熱交換器22を流れることにより蒸発され、その後、アキュムレータ18に導入されて気液分離されてから、気液分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入口11aに戻されるように、圧縮機11、室外熱交換器14、室内側電子膨張弁21、複数の室内熱交換器22、及びアキュムレータ18が、この順で、冷媒配管30により接続される。
【0049】
また、複数の室内機20a,20b,20c,20dのそれぞれに備えられている室内熱交換器22は、それぞれ独立して動作する。従って、例えば空気調和装置1の冷房運転時に、冷房すべき空間の設定温度と実温度との差が小さい場合、その空間に設置されている室内熱交換器22は停止している。停止している室内熱交換器22には冷媒は流入しない。一方、冷房すべき空間の設定温度と実温度との差が大きい場合、その空間に設置されている室内熱交換器22は運転している。運転している室内熱交換器22には冷媒が流入する。
【0050】
また、本実施形態に係る空気調和装置1は、バイパス配管38と、バイパス開閉弁61とを備える。バイパス配管38は、冷房運転時に冷媒配管30のうち複数の室内熱交換器22よりも下流側であって且つ四方弁13及びアキュムレータ18よりも上流側の部分を流れる冷媒、すなわち、冷房運転時において室内熱交換器22から流出した冷媒が流れる第二配管32内の冷媒を、圧縮機11の吸入口11aに導く。また、バイパス開閉弁61は、バイパス配管38に介装され、開くことによってバイパス配管38内の冷媒の流通が許可され、閉じることによってバイパス配管38内の冷媒の流通が禁止されるように構成される。
【0051】
そして、本実施形態においては、冷房運転時であって且つ所定の条件が成立した時にバイパス開閉弁61が開く。バイパス開閉弁61が開いている場合、運転中の室内熱交換器22(蒸発器)を流出して第二配管32内を流れる冷媒がバイパス配管38を流れることにより四方弁13及びアキュムレータ18をバイパスする。このようにして冷媒が四方弁13及びアキュムレータ18をバイパスすることにより、これらの構成要素を通過する際の圧力損失の発生を防止することができる。こうして圧力損失が低減されることにより、空気調和装置1の冷凍効率を高めることができる。
【0052】
冷房運転時にバイパス開閉弁61が開いている場合、上述したようにバイパス配管38を冷媒が流れるが、バイパス配管38を流れる冷媒に液冷媒が含まれていると、圧縮機11の吸入口11aに液冷媒が流入する。圧縮機11に液冷媒が流入すると、冷媒の吸入過熱度が低下して圧縮機11が液冷媒を圧縮するようになる。圧縮機11が液冷媒を圧縮すると、圧縮機11の作動に支障を来す虞がある。このような不具合の発生を防止するため、本実施形態に係る空気調和装置1においては、バイパス開閉弁61が開いているときは、圧縮機11に吸入される冷媒に液冷媒が含まれていないように、バイパス開閉弁61の開閉動作が制御装置40によって制御される。
【0053】
図3は、制御装置40がバイパス開閉弁61の開閉動作を制御するために実行する制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンは、空気調和装置1が始動したときに起動し、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。
【0054】
このルーチンが起動すると、制御装置40は、まず、図3のステップ(以下、ステップ番号をSと略記する)1にて、空気調和装置1が冷房運転中であるか否かを判断する。空気調和装置1が冷房運転中でない場合(S1:No)、制御装置40は、S9に処理を進め、バイパス開閉弁61に閉作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が閉じる。また、既にバイパス開閉弁61が閉じているときは、その状態が維持される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。
【0055】
一方、S1にて空気調和装置1が冷房運転中であると判断した場合(S1:Yes)、制御装置40は、S2にて、空気調和装置1の始動が完了してから15分経過したか否かを判断する。空気調和装置1の始動が完了してから15分経過していない場合(S2:No)、制御装置40はS9に処理を進め、バイパス開閉弁61に閉作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が閉じる。また、既にバイパス開閉弁61が閉じているときは、その状態が維持される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。
【0056】
一方、S2にて空気調和装置1の始動が完了してから15分経過していると判断した場合(S2:Yes)、制御装置40は、S3にて、現在オイル戻し処理中ではないか否かを判断する。オイル戻し処理中であると判断した場合(S3:No)、制御装置40はS9に処理を進め、バイパス開閉弁61に閉作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が閉じる。また、既にバイパス開閉弁61が閉じているときは、その状態が維持される。ここで、オイル戻し処理とは、冷房運転時においては、各室内熱交換器22に滞留している(寝込んでいる)オイルを圧縮機11に戻すように、冷媒回路内に冷媒を流す処理である。このオイル戻し処理は、所定の時間間隔ごと(例えば10時間ごと)に、定期的に行われる。オイル戻し処理が実行された場合、全ての室内熱交換器22に冷媒が流される。このオイル戻し処理中にバイパス開閉弁61が開いていると、液冷媒がオイルとともに圧縮機11の吸入口11aに流入するため好ましくない。よって、オイル戻し処理中は、バイパス開閉弁61が閉じるように、バイパス開閉弁61の開閉動作が制御装置40により制御される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。
【0057】
S3にてオイル戻し処理中ではないと判断した場合(S3:Yes)、制御装置40は、S4にて、下限回転速度R1を演算する。ここで、下限回転速度R1の意味を説明する。圧縮機11の回転速度が低い場合、圧縮機11の吸入口11aに吸入される冷媒の圧力である吸入圧力PLが高くなって、冷媒が液化しやすくなる。このため、圧縮機11の回転速度が低いと、圧縮機11に吸入される冷媒に液冷媒が含まれる虞がある。つまり、圧縮機11の回転速度が低い状態でバイパス開閉弁61が開いていると、バイパス配管38内の冷媒に液冷媒が含まれる虞がある。そして、圧縮機11が液冷媒を圧縮した場合、圧縮機11が作動不良を起こす虞がある。下限回転速度R1は、このような事態(圧縮機11の液圧縮)が生じないような圧縮機11の回転速度の下限値である。
【0058】
圧縮機11の液圧縮を回避するためには、室内熱交換器22での冷媒の蒸発を促進させる必要がある。従って、下限回転速度R1は、圧縮機11の液圧縮が回避される程度に室内熱交換器22で冷媒を十分に蒸発させて圧縮機11に吸入される冷媒に液冷媒が含まれないような圧縮機11の回転速度の下限値ともいえる。このような下限回転速度R1は、室内熱交換器22の運転容量に依存する。具体的には、下限回転速度R1は、室内熱交換器22の運転容量が大きいほど高くされ、室内熱交換器22の運転容量が小さいほど低くされる。なお、個々の室内熱交換器22の運転容量は固定値(例えば14kW)である。本実施形態においては、空気調和装置1が複数の室内熱交換器22を備えている。この場合、下限回転速度R1は、冷房運転中の室内熱交換器22の運転容量の総和である総運転容量Pに依存する。総運転容量Pは、冷房運転中の室内熱交換器22の台数、及び、冷房運転している室内熱交換器22の運転容量の大きさによって変動する。そして、下限回転速度R1は、総運転容量Pが大きいほど高くされ、総運転容量Pが小さいほど低くされる。
【0059】
図4は、S4にて下限回転速度R1を演算するために制御装置40が実行する下限回転速度演算処理(下限回転速度設定処理)の流れの一例を示すフローチャートである。図4によれば、制御装置40は、下限回転速度R1を演算するにあたり、まず、図4のS41にて、冷房運転中の室内熱交換器22を検出する。次いで、冷房運転中の室内熱交換器22の総運転容量Pを計算する(S42)。そして、総運転容量Pが大きいほど高く、総運転容量Pが小さいほど低くなるように、総運転容量Pに基づいて、下限回転速度R1を演算する(S43)。
【0060】
上記した下限回転速度演算処理によれば、例えば、室内機20a、20b、20cにそれぞれ備えられる室内熱交換器22の運転容量がそれぞれ14kWであり、室内機20dに備えられる室内熱交換器22の運転容量が28kWであるとする。また、室内機20a,20b,及び20dに備えられる室内熱交換器22が冷房運転中であり、室内機20cに備えられる室内熱交換器22が停止中であるとする。この場合、総運転容量Pは、14+14+28=56kWである。このようにして求められた総運転容量Pに、例えば所定の正の定数αを乗じることにより、下限回転速度R1が求められる。定数αは、予め実験等によって求められる。このようにして、下限回転速度R1が、総運転容量Pが大きいほど高く、総運転容量Pが小さいほど低くなるように、総運転容量Pに基づいて定められる。
【0061】
図3のS4にて下限回転速度R1を演算した後に、制御装置40は、S5にて、回転速度センサから入力された回転速度情報に基づいて、現在の圧縮機11の実回転速度Rを取得する。続いて、制御装置40は、実回転速度Rが下限回転速度R1以上であるか否かを判断する(S6)。
【0062】
S6にて、実回転速度Rが下限回転速度R1未満であると判断した場合(S6:No)、制御装置40は、S9に処理を進めて、バイパス開閉弁61に閉作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が閉じる。また、既にバイパス開閉弁61が閉じているときは、その状態が維持される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。
【0063】
一方、S6にて、実回転速度Rが下限回転速度R1以上であると判断した場合(S9:Yes)、制御装置40は、S7に処理を進め、前回にバイパス開閉弁61を閉作動させた後に、15分経過しているか否かを判断する。S7にて15分経過していないと判断した場合(S7:No)、制御装置40は、S9に処理を進めて、バイパス開閉弁61に閉作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が閉じる。また、既にバイパス開閉弁61が閉じているときは、その状態が維持される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。
【0064】
一方、S7にて15分経過していると判断した場合(S7:Yes)、制御装置40は、S8に処理を進めて、バイパス開閉弁61に開作動信号を送る。これにより、バイパス開閉弁61が開く。また、既にバイパス開閉弁61が開いているときは、その状態が維持される。その後、制御装置40はこのルーチンを終了する。図3において、S6,S8,S9の処理が、本発明における開閉弁制御処理に相当する。
【0065】
制御装置40が上記したバイパス開閉弁61の制御処理を実行した場合、空気調和装置1の冷房運転時に以下の条件が全て成立したときに、バイパス配管38に介装されたバイパス開閉弁61が開く。
条件1):空気調和装置1の始動完了後15分経過以上している
条件2):オイル戻し処理中ではない
条件3):圧縮機11の実回転速度Rが下限回転速度R1以上である
条件4):バイパス開閉弁61が、前回「閉」操作されたときから15分以上経過している
【0066】
上記した条件1)〜条件4)のうち、条件1)が不成立であるとき、すなわち空気調和装置1の始動完了から15分経過していないときに、バイパス開閉弁61を閉じておくことにより、不安定な始動初期時にバイパス配管38を経由して液冷媒が圧縮機11の吸入口11aから圧縮機11内に供給されることを防止することができる。
【0067】
また、条件2)が不成立であるとき、すなわち空気調和装置1がオイル戻し処理中であるときに、バイパス開閉弁61を閉じておくことにより、オイル戻し処理中に圧縮機11にオイルとともに液冷媒が圧縮機11に吸入されることを防止することができる。
【0068】
また、条件4)が不成立であるとき、すなわちバイパス開閉弁61が、前回「閉」操作されたときから15分経過していないときに、バイパス開閉弁61を閉じておくことにより、バイパス開閉弁61の開閉動作間隔が15分以上にされる。このようにしてバイパス開閉弁61の開閉動作間隔を所定の時間間隔以上にすることで、バイパス開閉弁61の耐久性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態においては、条件3)が不成立であるとき、すなわち圧縮機11の実回転速度Rが下限回転速度R1未満であるときにも、バイパス開閉弁61が閉じられる。言い換えれば、圧縮機11の実回転速度Rが下限回転速度R1以上であるときに、バイパス開閉弁61が開く。
【0070】
上述したように、下限回転速度R1は、その回転速度以上で圧縮機11が作動しているときに、圧縮機11の吸入口11aに吸入される冷媒に液冷媒が含まれないような回転速度として定められている。従って、圧縮機11が下限回転速度R1以上の回転速度で作動している限り、室内熱交換器22からバイパス配管38を経由して圧縮機11の吸入口11aに戻された冷媒に液冷媒が含まれていないことになる。つまり、バイパス開閉弁61が開いているときは、必然的に、圧縮機11の実回転速度が下限回転速度R1以上であり、それ故に、バイパス配管38を流れる冷媒に液冷媒は含まれない。よって、圧縮機11が液圧縮することもない。
【0071】
また、バイパス開閉弁61の開閉動作に影響を及ぼす下限回転速度R1は、総運転容量Pが小さいほど小さくなるように、総運転容量Pに基づいて定められる。ここで、総運転容量Pは、運転中の室内熱交換器22の台数、及び、運転中の室内熱交換器22の運転容量によって変動する。したがって、本実施形態においては、総運転容量Pが小さい低負荷運転時には、圧縮機11の実回転速度Rが相対的に小さくされるが、このとき圧縮機11の下限回転速度R1も小さくされる。よって、低負荷運転時(圧縮機11の実回転速度Rが低いとき)においては、バイパス開閉弁61を開いてもよい圧縮機11の回転速度領域の下限が低く設定される。そのため、低負荷運転時であっても、室内熱交換器22を流出したガス冷媒がアキュムレータ18をバイパスするように、バイパス開閉弁61を開いておくことが可能になる。よって、低負荷運転時であっても室内熱交換器22を流出したガス冷媒をアキュムレータ18を通さずに、直接、圧縮機11に戻すことにより、冷房運転時における冷凍効率を高めることができる。
【0072】
また、上記特許文献1においては、バイパス開閉弁を開くための条件に、「外気温度が所定温度以上」という条件を設定している。本実施形態では、バイパス開閉弁61を開くための条件にこのような外気温度条件が盛り込まれていない。よって、低外気温度の冷房運転時においても、上記条件1)〜4)を満たす限り、バイパス開閉弁61が開く。このため、より一層、冷房運転時における冷凍効率を高めることができる。
【0073】
また、上記特許文献1においては、バイパス開閉弁を開くための条件に、「室内設定温度が所定温度以上」という条件を設定している。本実施形態では、バイパス開閉弁61を開くための条件にこのような室内設定温度条件が盛り込まれていない。よって、室内設定温度が低い場合でも、上記条件1)〜4)を満たす限り、バイパス開閉弁61が開く。このため、より一層、冷房運転時における冷凍効率を高めることができる。
【0074】
また、上記特許文献1においては、バイパス開閉弁を開くための条件に、「室内ファンモータの回転速度が所定回転速度以上」という条件を設定している。本実施形態では、バイパス開閉弁61を開くための条件にこのようなファンモータ回転速度条件が盛り込まれていない。よって、室内ファンの風量が低い場合でも、上記条件1)〜4)を満たす限り、バイパス開閉弁61が開く。このため、より一層、冷房運転時における冷凍効率を高めることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。例えば、上記実施形態にて説明した下限回転速度R1は、冷房運転中の室内熱交換器22の総運転容量Pが小さいほど低くなるように、総運転容量Pの大きさが反映された回転速度であればよく、そのような前提の下であれば、他の要因をも考慮して下限回転速度R1を定めることもできる。また、下限回転速度R1は、冷房運転中の室内熱交換器22の総運転容量Pに基づいて得られた回転速度に、所定の安全率を乗じた回転速度、或いは所定の回転速度を加算した回転速度に定めることもできる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…空気調和装置、10…室外機、11…圧縮機、11a…吸入口、11b…吐出口、13…四方弁、13a…第一ポート、13b…第二ポート、13c…第三ポート、13d…第四ポート、14…室外熱交換器、15…室外側電子膨張弁、18…アキュムレータ、20a,20b,20c,20d…室内機、21…室内側電子膨張弁(膨張弁)、22…室内熱交換器、30…冷媒配管(冷媒通路)、31…第一配管、32…第二配管、33…第三配管、34…中間配管、35…アキュムレータ入口配管、36…アキュムレータ出口配管、37…分岐配管、38…バイパス配管(バイパス通路)、39…ホットガスバイパス配管、40…制御装置、51…吐出温度センサ、52…吸入温度センサ、53…吸入圧力センサ、54…外気温度センサ、61…バイパス開閉弁、62…ホットガスバイパス開閉弁、P…総運転容量、R…実回転速度、R1…下限回転速度、
図1
図2
図3
図4