(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス冷媒と潤滑油の二相状態で流れる冷媒吸入配管を有し、主軸を回転させることにより旋回スクロールを旋回運動させ、前記旋回スクロールおよび固定スクロールそれぞれの台板上に設けられた板状渦巻歯を互いに噛み合わせて形成した圧縮室の容積を減少させながら中心部へと移動させて前記ガス冷媒を圧縮し、前記旋回スクロールが旋回運動することにより発生する遠心力のアンバランスはバランスウェイトを回転させることで打ち消すようにしているスクロール圧縮機において、
前記バランスウェイトの外周部には前記旋回スクロールに対向する側を開口部とした複数の凹部が設けられ、
前記複数の凹部の間には分割壁が形成されるとともに、前記複数の凹部の両端には側壁が形成され、
前記旋回スクロールが旋回運動を行うことで発生するスラスト荷重を受け止めるスラスト荷重受面に給油通路を設け、
前記給油通路から供給された潤滑油を、前記バランスウェイトの外周部に設けた前記凹部の開口部からスラスト軸受に供給することを特徴とするスクロール圧縮機。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールそれぞれの台板上に設けられた板状渦巻歯を互いに噛み合わせることにより、固定スクロールと旋回スクロールとの相互間にガス冷媒を圧縮する圧縮室が形成されている。また、ガス冷媒の吸入室は圧縮室の一番外周部に存在し、圧縮されて高温高圧となったガス冷媒の吐出ポートは圧縮室の一番内周部(中心部)に存在している。そして、旋回スクロールを旋回運動(公転運動)させることで、圧縮室を外周部から中心部に向かって移動させながら徐々に圧縮室の容積を減少させ、冷媒吸入口から吸入室に吸入されたガス冷媒を所定の比率で圧縮する圧縮動作を行い、吐出ポートから圧縮機密閉容器内の吐出室へ圧縮されて高温高圧となったガス冷媒を吐出する。
【0003】
図6はスクロール圧縮機50の概略構成を例示する断面側面図である。
図6に基づいてスクロール圧縮機50の構成および動作について説明する。
【0004】
ここで例示するスクロール圧縮機50は、冷凍サイクルを循環するガス冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧となったガス冷媒を吐出させるものである。このスクロール圧縮機50は、密閉容器6(密閉容器6a、6bで構成されている)内に固定スクロール1と固定スクロール1に対して旋回運動(公転運動)を行う旋回スクロール2を組み合わせた圧縮機構部を備えている。また、スクロール圧縮機50は、旋回スクロール2を軸支する主軸15を駆動する駆動部14(例えば、電動機やクラッチなどの回転駆動手段)を備えている。
【0005】
固定スクロール1は、台板1bと、台板1bの一方の面に立設された渦巻状突起である板状渦巻歯1aとで構成され、密閉容器6(密閉容器6a)にボルトなどで固定されている。また、旋回スクロール2は、台板2bと、台板2bの一方の面に立設され、板状渦巻歯1aと実質的に同一形状の渦巻状突起である板状渦巻歯2aとで構成されている。この固定スクロール1の板状渦巻歯1aと旋回スクロール2の板状渦巻歯2aとを互いに噛み合わせることで、相対的に容積が変化する圧縮室3が形成される。
【0006】
そして、固定スクロール1の板状渦巻歯1aと旋回スクロール2の板状渦巻歯2aとを互いに噛み合わせることで形成されている圧縮室3の外周部となる密閉容器6(密閉容器6b)には、ガス冷媒を圧縮室3に供給するための冷媒吸入配管11が設けられている。また、固定スクロール1の台板1bの中央部には、圧縮されて高温高圧となったガス冷媒を吐出する吐出ポート4が形成されている。そして、圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、固定スクロール1の台板1bに設けられている吐出弁装置5を介して密閉容器6内の吐出室7に吐出されるようになっている。この吐出室7に吐出された高温高圧のガス冷媒は、冷媒吐出口12から冷凍サイクルに吐出されることになる。
【0007】
旋回スクロール2は、自転運動を阻止するための自転運動阻止機構9により、固定スクロール1に対して自転運動をすることなく旋回運動を行い、旋回スクロール2(台板2bの板状渦巻歯2aの形成面とは反対側の背面2c)に作用するスラスト荷重(スラスト軸受押し付け荷重)Fを密閉容器6(密閉容器6b)のスラスト荷重受面6cで受け止めるようにしている。また、背面2cの略中心部には、中空円筒形状のボス部2dが形成されている。
【0008】
この旋回スクロール2に発生するスラスト荷重Fをスラスト荷重受面6cで受け止めるスラスト軸受は、旋回スクロール2の背面2cと、背面2cに対向する位置に配置されたスラスト荷重受面6cと、この二面間に充填された潤滑油で構成される。
【0009】
さらに、主軸15の一端部に設けられたクランクシャフト15a先端部のクランクピン15bにはバランスウェイト56が取り付けられている。このクランクピン15bに取り付けられたバランスウェイト56と中空円筒形状のボス部2d内周部との間には旋回スクロール2の駆動軸受17が設けられている。
【0010】
この主軸15の一方(クランクシャフト15a)は、密閉容器6(密閉容器6b)に設けられた主軸受18によって回転自在に軸支され、主軸15の他方は、密閉容器6(密閉容器6b)に設けられた副軸受19によって回転自在に軸支されている。また、主軸15と密閉容器6(密閉容器6b)との間には、潤滑油の移動を阻止するシャフトシール13が設けられている。
【0011】
そして、駆動部14の回転に伴って主軸15(クランクピン15b)が回転して旋回スクロール2が旋回運動(揺動運動)を行うことで生じる遠心力のアンバランスは、バランスウエイト56が回転することにより打ち消され、静バランスおよび動バランスが保たれるようになっている。
【0012】
これら、自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などがクランクシャフト15a近傍(周辺)に配設されている摺動部である。
【0013】
吐出弁装置5は、吐出ポート4の開口(高温高圧のガス冷媒の出口)を開閉する薄板状の吐出弁5aと、吐出弁5aの開度(浮上量)を規制するとともに吐出弁5aの過剰な変形を抑制する弁押さえ5bと、弁押さえ5bを吐出弁5aを介して固定スクロール1の台板1bに固定する固定ボルト5cとで構成されている。弁押さえ5bは、平坦部に続く湾曲部を先端部に有する形状となっており、この湾曲部の高さで吐出弁5aの浮上量すなわち開度が規制されている。吐出弁5aは、ガス冷媒の流れが吐出ポート4から密閉容器6内の吐出室7へと一方向の流れとなるように許容するものである。
【0014】
ここで、スクロール圧縮機50の動作について説明する。駆動部14の回転に伴って主軸15(クランクピン15b)が回転駆動されると、自転運動阻止機構9により自転を抑制された旋回スクロール2は、旋回運動(公転運動)を行う。旋回スクロール2が旋回運動を行うと、ガス冷媒は冷媒吸入配管11の冷媒吸入口11aから圧縮室3内へと流れ込み、ガス冷媒の吸入過程が開始される。さらに、旋回スクロール2の板状渦巻歯2aと固定スクロール1の板状渦巻歯1aとは互いに噛み合ってその相互間に圧縮室3を形成しているので、圧縮室3内に流入したガス冷媒は、旋回スクロール2の旋回運動に伴い圧縮室3の容積が縮小されていくため、所定の比率で圧縮されることになる。
【0015】
圧縮室3で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、固定スクロール1の台板1b中央部に設けられた吐出ポート4へと導かれる。この吐出ポート4の開口端(固定スクロール1の台板1b右端)には、吐出ポート4から密閉容器6内の吐出室7へとガス冷媒が一方向に流れることを許容する吐出弁装置5が設けられているので、吐出ポート4内のガス冷媒圧力が吐出室7内のガス冷媒圧力よりも高くなると、吐出弁装置5が開き、吐出ポート4内の高温高圧ガス冷媒を吐出室7へと吐出する。そして、吐出室7へと吐出された高温高圧のガス冷媒は、ガス冷媒吐出口12から冷凍サイクルへと吐出される。このようにして、スクロール圧縮機50は、ガス冷媒の吸入→圧縮→吐出を連続的に繰り返す。
【0016】
このようにして、駆動部14によって主軸15が回転駆動され、クランクピン15bに回転自在に取り付けられた旋回スクロール2が自転運動阻止機構9により自転を抑制されて旋回運動を行うと、ガス冷媒は冷媒吸入配管11の冷媒吸入口11aから圧縮室3内へと流れ込み、ガス冷媒の吸入過程が開始される。さらに、旋回スクロール2の板状渦巻歯2aと固定スクロール1の板状渦巻歯1aとが互いに噛み合って相互間に形成している圧縮室3内に流入したガス冷媒は、旋回スクロール2の旋回運動に伴って圧縮室3の容積が縮小されて所定の比率で圧縮されると旋回スクロール2にスラスト荷重Fが発生する(図中、左方向の矢印で示す荷重F)が、この旋回スクロール2に発生するスラスト荷重Fは旋回スクロール2の背面2cを介してスラスト荷重受面6cで受け止められる。
【0017】
そして、旋回スクロール2が固定スクロール1およびスラスト荷重受面6cに対して旋回運動を行うと、旋回スクロール2の背面2cとスラスト荷重受面6cとの摺接面間(旋回スクロール2の背面2cと、この旋回スクロール2の背面2cと対向する位置に配置されたスラスト荷重受面6cとの二面間)にスラスト荷重Fが作用して摺接面が接触することで摩耗が発生し、最悪の場合には焼き付きに至ることとなるが、冷媒吸入配管11の冷媒吸入口11aからガス冷媒とともに供給された環状流の潤滑油が給油通路6dを通って流れて摺接面間が潤滑されることで、摺接面における摩耗や焼き付きを防止するようにしている。
【0018】
また、本構成のスクロール圧縮機50では、駆動部14によって主軸15(クランクシャフト15a)が回転駆動されると、クランクピン15bに回転自在に取り付けられた旋回スクロール2が自転運動阻止機構9により自転を抑制されて旋回運動を行うように構成されている。
【0019】
このクランクシャフト15aが配置された近傍(周辺)の空間には多くの摺動部が存在し、信頼性の観点からクランクシャフト15a近傍に配設されている自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部への給油量確保が重要となる。
【0020】
しかしながら、スクロール圧縮機50の冷媒吸入配管11は圧力損失低減のため、旋回スクロール2の板状渦巻歯2aと固定スクロール1の板状渦巻歯1aとが互いに噛み合って相互間に形成している圧縮室3(スクロール吸入部)近傍に配設されることから、冷媒吸入配管11内でガス冷媒とともに流れる潤滑油(環状流の油)をクランクシャフト15aが配置された近傍(周辺)の空間やスラスト軸受などに給油することが困難である。このため、クランクシャフト15aが配置された近傍の空間に配設されている自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部が摩耗して信頼性が低下する問題がある。
【0021】
そのため、冷媒吸入配管11内のガス冷媒とともに流れる潤滑油(環状流の油)でクランクシャフト15aが配置された近傍の空間に配設されている多くの摺動部やスラスト軸受などを潤滑するスクロール圧縮機50では、冷媒吸入口11a付近の密閉容器6(密閉容器6b)に溝状の給油通路6dを設け、この溝状の給油通路6dから摺動部やスラスト軸受などに潤滑油を供給するようにしている。
【0022】
しかしながら、冷媒吸入配管11内のガス冷媒とともに流れる環状流の潤滑油が給油通路6dからクランクシャフト15aが配置された近傍の空間に配設されている多くの摺動部やスラスト軸受までの経路における空間がバランスウェイト56の配置により狭くなっており、特に、バランスウェイト56が回転することで、バランスウェイト56の外周面(
図9、
図10参照)が給油通路6dを塞ぐ回転区間(
図7、
図8参照)があり、その間は潤滑油の供給量を確保できなくなるため、摺動部やスラスト軸受への潤滑油の供給量が低下する問題がある。
【0023】
そして、潤滑油の供給量が低下すると、自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部に摩耗が発生し、信頼性が低下する問題があった。
【0024】
そこで、例えば、特許文献1では、鏡板と渦巻体とをもち、渦巻体が互いに噛合う二つのスクロールを備え、一方のスクロールを他方のスクロールに対し旋回運動させる駆動軸に偏心孔をもった旋回駆動部を設け、旋回運動する一方のスクロールの鏡板背面に軸を設け、この軸を前記偏心孔に嵌合させ、この偏心孔の底部に前記駆動軸に設ける給油路を開口させたスクロール圧縮機において、前記旋回駆動部にバランスウェイトを設けると共に、前記旋回駆動部に、長さ方向一端が前記偏心孔の底部に開口し、他端が前記旋回駆動部のスクロール側端面に開口する連通路を旋回駆動部におけるバランスウェイト側に設けたことにより、このバランスウェイトのスクロール側端面を、前記連通路から旋回駆動部のスクロール側端面に出た油のガイド面にでき、このガイド面に沿って前記スラスト軸受に給油することができることから、このスラスト軸受への給油量を安定させるようにしている。
【0025】
また、例えば、特許文献2では、バランスウェイトの公転軌跡と対応してフロントハウジングの上部に吸入口を設ける。又、バランスウェイトに対し吸入口からクランク室へ流入されたガス冷媒をスラスト方向へ変向する変向斜面を設ける。そして、前記変向斜面により変向されたガス冷媒を回転軸、可動スクロールを支持するラジアルベアリングや自転阻止機構などに供給して、ガス冷媒に含まれるミスト状の潤滑油によりベアリングや自転阻止機構の潤滑を行うようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るスクロール圧縮機の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、ここで説明するスクロール圧縮機は横置き型の例を示すが、縦置き型のものにも本発明を適用することができる。また、本発明はスクロール圧縮機に限らず、他の圧縮機やポンプに適用することができる。また、
図1を含め、以下の図面は模式的に表したものであり、各構成部材の大きさなどの関係についても実際のものとは異なる場合があり、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、従来と同一構成に関しては同一符号を用いる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるスクロール圧縮機20の概略構成を示す断面側面図である。
図1に基づいて、スクロール圧縮機20の構成および動作について説明する。
【0041】
ここで例示するスクロール圧縮機20は、例えば、空気調和装置や給湯装置、冷蔵装置、冷凍装置などの各種機器に用いられる冷凍サイクルを構成する要素の一つとなるものである。
【0042】
スクロール圧縮機20は、冷凍サイクルを循環するガス冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧となったガス冷媒を吐出させるものである。このスクロール圧縮機20は、密閉容器6(密閉容器6a、6bで構成されている)内に固定スクロール1と固定スクロール1に対して旋回運動(公転運動)を行う旋回スクロール2を組み合わせた圧縮機構部を備えている。また、スクロール圧縮機20は、旋回スクロール2を軸支する主軸15を駆動する駆動部14(例えば、電動機やクラッチなどの回転駆動手段)を備えている。
【0043】
固定スクロール1は、台板1bと、台板1bの一方の面に立設された渦巻状突起である板状渦巻歯1aとで構成され、密閉容器6(密閉容器6a)にボルトなどで固定されている。また、旋回スクロール2は、台板2bと、台板2bの一方の面に立設され、板状渦巻歯1aと実質的に同一形状の渦巻状突起である板状渦巻歯2aとで構成されている。この固定スクロール1の板状渦巻歯1aと旋回スクロール2の板状渦巻歯2aとを互いに噛み合わせることで、相対的に容積が変化する圧縮室3が形成される。
【0044】
そして、固定スクロール1の板状渦巻歯1aと旋回スクロール2の板状渦巻歯2aとを互いに噛み合わせることで形成されている圧縮室3の外周部となる密閉容器6(密閉容器6b)には、ガス冷媒を圧縮室3に供給するための冷媒吸入配管11が設けられている。また、固定スクロール1の台板1bの中央部には、圧縮されて高温高圧となったガス冷媒を吐出する吐出ポート4が形成されている。そして、圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、固定スクロール1の台板1bに設けられている吐出弁装置5を介して密閉容器6内の吐出室7に吐出されるようになっている。この吐出室7に吐出された高温高圧のガス冷媒は、冷媒吐出口12から冷凍サイクルに吐出されることになる。
【0045】
旋回スクロール2は、自転運動を阻止するための自転運動阻止機構9により、固定スクロール1に対して自転運動をすることなく旋回運動を行い、旋回スクロール2(台板2bの板状渦巻歯2aの形成面とは反対側の背面2c)に作用するスラスト荷重(スラスト軸受押し付け荷重)Fを密閉容器6(密閉容器6b)のスラスト荷重受面6cで受け止めるようにしている。また、背面2cの略中心部には、中空円筒形状のボス部2dが形成されている。
【0046】
この旋回スクロール2に発生するスラスト荷重Fをスラスト荷重受面6cで受け止めるスラスト軸受は、旋回スクロール2の背面2cと、背面2cに対向する位置に配置されたスラスト荷重受面6cと、この二面間に充填された潤滑油で構成される。
【0047】
さらに、主軸15の一端部に設けられたクランクシャフト15a先端部のクランクピン15bにはバランスウェイト16が取り付けられている。そして、バランスウェイト16の外周部16a(
図3参照)には、軸中心に向かった凹部16b(実施例では、
図3、
図4に示しているように3か所の凹部16b)が設けられ、この凹部16bには旋回スクロール2に対向する側(スラスト軸受側)のみに開口部16cが設けられている。また、クランクピン15bに取り付けられたバランスウェイト16と中空円筒形状のボス部2d内周部との間には旋回スクロール2の駆動軸受17が設けられている。なお、
図3、
図4に示しているように旋回スクロール2に対向する側(スラスト軸受側)のみに開口部16cを有する凹部16bを3か所設けている実施例を用いて説明しているが、凹部16bの数は適宜設けるようにすればよく、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0048】
この主軸15の一方(クランクシャフト15a)は、密閉容器6(密閉容器6b)に設けられた主軸受18によって回転自在に軸支され、主軸15の他方は、密閉容器6(密閉容器6b)に設けられた副軸受19によって回転自在に軸支されている。また、主軸15と密閉容器6(密閉容器6b)との間には、潤滑油の移動を阻止するシャフトシール13が設けられている。
【0049】
そして、駆動部14の回転に伴って主軸15(クランクピン15b)が回転して旋回スクロール2が旋回運動(揺動運動)を行うことで生じる遠心力のアンバランスは、バランスウエイト16が回転することにより打ち消され、静バランスおよび動バランスが保たれるようになっている。
【0050】
これら、自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などがクランクシャフト15a近傍(周辺)に配設されている摺動部である。
【0051】
吐出弁装置5は、吐出ポート4の開口(高温高圧のガス冷媒の出口)を開閉する薄板状の吐出弁5aと、吐出弁5aの開度(浮上量)を規制するとともに吐出弁5aの過剰な変形を抑制する弁押さえ5bと、弁押さえ5bを吐出弁5aを介して固定スクロール1の台板1bに固定する固定ボルト5cとで構成されている。弁押さえ5bは、平坦部に続く湾曲部を先端部に有する形状となっており、この湾曲部の高さで吐出弁5aの浮上量すなわち開度が規制されている。吐出弁5aは、ガス冷媒の流れが吐出ポート4から密閉容器6内の吐出室7へと一方向の流れとなるように許容するものである。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機20のバランスウェイト16の概略構成を示す
図1のA−A断面図であり、
図3は、バランスウェイト16の鳥瞰図であり、
図4は、バランスウェイト16の凹部16bおよび開口部16cにより、給油通路6dから凹部16bに供給された潤滑油を凹部16bに貯留し、開口部16cからスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成する図を示している。
【0053】
図に示しているように、バランスウェイト16の外周部16aには、複数の凹部16bを設け、この複数の凹部16bそれぞれの旋回スクロール2に対向する側であるスラスト軸受側のみに開口部16cを設けている。また、複数の凹部16bの間および開口部16cの間には分割壁16dが在り、複数の凹部16bおよび開口部16cの両端には側壁16eが存在している。そして、旋回スクロール2が旋回運動を行うことで発生するスラスト荷重Fを受け止めるスラスト荷重受面6cに設けた給油通路6d(
図2参照)から供給された潤滑油を、バランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bの開口部16cからスラスト軸受に供給するようにしている。
【0054】
このように、バランスウェイト16の外周部16aに、旋回スクロール2に対向する側であるスラスト軸受側のみに開口部16cを有する複数の凹部16bを設けたことで、バランスウェイト16が回転することに起因する、バランスウェイト16の外周面が給油通路6dを塞ぐ区間を低減し、潤滑油の供給量を増大させることができるようになる。さらに、複数の凹部16bそれぞれの開口部16cを旋回スクロール2側であるスラスト軸受側のみに設けたことで、給油通路6dから供給されて凹部16bそれぞれに貯留された潤滑油を開口部16c端の分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スラスト軸受への潤滑油の供給量を増大可能として信頼性の高いスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0055】
ここで、スクロール圧縮機20の動作について説明する。駆動部14の回転に伴って主軸15(クランクピン15b)が回転駆動されると、自転運動阻止機構9により自転を抑制された旋回スクロール2は、旋回運動(公転運動)を行う。旋回スクロール2が旋回運動を行うと、ガス冷媒は冷媒吸入配管11の冷媒吸入口11aから圧縮室3内へと流れ込み、ガス冷媒の吸入過程が開始される。さらに、旋回スクロール2の板状渦巻歯2aと固定スクロール1の板状渦巻歯1aとは互いに噛み合ってその相互間に圧縮室3を形成しているので、圧縮室3内に流入したガス冷媒は、旋回スクロール2の旋回運動に伴い圧縮室3の容積が縮小されていくため、所定の比率で圧縮されることになる。
【0056】
圧縮室3で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、固定スクロール1の台板1b中央部に設けられた吐出ポート4へと導かれる。この吐出ポート4の開口端(固定スクロール1の台板1b右端)には、吐出ポート4から密閉容器6内の吐出室7へとガス冷媒が一方向に流れることを許容する吐出弁装置5が設けられているので、吐出ポート4内のガス冷媒圧力が吐出室7内のガス冷媒圧力よりも高くなると、吐出弁装置5が開き、吐出ポート4内の高温高圧ガス冷媒を吐出室7へと吐出する。そして、吐出室7へと吐出された高温高圧のガス冷媒は、ガス冷媒吐出口12から冷凍サイクルへと吐出される。このようにして、スクロール圧縮機20は、ガス冷媒の吸入→圧縮→吐出を連続的に繰り返す。
【0057】
このようにして、駆動部14によって主軸15が回転駆動され、クランクピン15bに回転自在に取り付けられた旋回スクロール2が自転運動阻止機構9により自転を抑制されて旋回運動を行うとガス冷媒が所定の比率で圧縮され、旋回スクロール2に発生するスラスト荷重Fが背面2cを介してスラスト荷重受面6cで受け止められる。
【0058】
そして、本構成のバランスウェイト16を備えたスクロール圧縮機20では、バランスウェイト16の外周部16aに、旋回スクロール2に対向する側であるスラスト軸受側のみに開口部16cを有する複数の凹部16bを設けたことで、バランスウェイト16が回転することに起因する、バランスウェイト16の外周面が給油通路6dを塞ぐ区間(時間)を減らして潤滑油の供給量を増大させることができる。さらに、複数の凹部16bそれぞれの開口部16cを旋回スクロール2側であるスラスト軸受側のみに設けたことで、給油通路6dから供給されて凹部16bそれぞれに貯留された潤滑油を開口部16c端の分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スラスト軸受への潤滑油の供給量を増大可能として信頼性の高いスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0059】
また、冷媒吸入配管11内を内壁に沿って環状に流れる潤滑油(冷媒吸入口11aから供給された冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油)を給油通路6dから供給し、バランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bそれぞれに貯留された潤滑油を開口部16c端の分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スクロール圧縮機20の自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部が密集するクランクシャフト15aが配置された近傍の空間への給油量を増大することができる。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2であるスクロール圧縮機20の概略構成を示す断面側面図である。
【0060】
実施の形態1では、冷媒吸入配管11内を内壁に沿って環状に流れる潤滑油(冷媒吸入口11aから供給された冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油)を給油通路6dからバランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bに供給し、凹部16bそれぞれに貯留された潤滑油を開口部16c端の分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スクロール圧縮機20の自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部が密集するクランクシャフト15aが配置された近傍の空間への給油量を増大するようにしているが、実施の形態2では、潤滑油吸入口21からバランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bに潤滑油を供給し、凹部16bそれぞれに貯留された潤滑油吸入口21から供給された潤滑油を開口部16c端の分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スクロール圧縮機20の自転運動阻止機構9、シャフトシール13、駆動軸受17、主軸受18、そしてスラスト軸受などの摺動部が密集するクランクシャフト15aが配置された近傍の空間への給油量を増大するようにしている。
【0061】
このように、実施の形態2においても、潤滑油吸入口21から供給された潤滑油でスラスト軸受部品同士の接触を抑制し、摩耗を減らして装置長寿命化、信頼性の向上を実現することができるスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0062】
以上説明したように本発明によれば、ガス冷媒と潤滑油の二相状態で流れる冷媒吸入配管11を有し、主軸15を回転させることにより旋回スクロール2を旋回運動させ、固定スクロール1および旋回スクロール2それぞれの台板1b、2b上に設けられた板状渦巻歯1a、2aを互いに噛み合わせて形成した圧縮室3の容積を減少させながら中心部へと移動させてガス冷媒を圧縮し、旋回スクロール2が旋回運動することにより発生する遠心力のアンバランスはバランスウェイト16を回転させることで打ち消すようにしているスクロール圧縮機20において、バランスウェイト16の外周部16aには、少なくとも一つ以上の凹部16bを設け、凹部16bは、旋回スクロール2に対向する側のみに開口部16cが設けられていることにより、凹部16bによりバランスウェイト16の外周面が給油通路6dを塞ぐバランスウェイト16の回転区間を低減し、潤滑油の供給量を増大させることができる。さらに、凹部16bの開口部16cを旋回スクロール2側であるスラスト軸受側のみに設けたことで、給油通路6dから供給されて凹部16bに貯留した潤滑油を開口部16cからスラスト軸受へと供給することで、スラスト軸受への潤滑油の供給量を増大可能として信頼性の高いスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0063】
また、バランスウェイト16の外周部16aには複数の凹部16bが設けられ、複数の凹部16bそれぞれの旋回スクロール2に対向する側のみに開口部16cが設けられていることにより、複数の凹部16bによりバランスウェイト16の外周面が給油通路6dを塞ぐバランスウェイト16の回転区間を低減し、潤滑油の供給量を増大させることができる。さらに、複数の凹部16bそれぞれの開口部16cを旋回スクロール2側であるスラスト軸受側のみに設けたことで、給油通路6dから供給されて凹部16bそれぞれに貯留した潤滑油を開口部16cの分割壁16d、側壁16eで誘導してスラスト軸受に向かう潤滑油の流れを形成することで、スラスト軸受への潤滑油の供給量を増大可能として信頼性の高いスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0064】
また、旋回スクロール2が旋回運動を行うことで発生するスラスト荷重Fを受け止めるスラスト荷重受面6cに給油通路6dを設け、給油通路6dから供給された潤滑油を、バランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bの開口部16cからスラスト軸受に供給することにより、給油通路6dから供給された潤滑油でスラスト軸受への潤滑油の供給量を増大可能として信頼性の高いスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0065】
また、給油通路6dからバランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bの開口部16cを流れる潤滑油は、冷媒吸入口11aから供給された冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油であることにより、冷媒吸入口11aから供給された冷媒中に含まれるミスト状の潤滑油でスラスト軸受部品同士の接触を抑制し、摩耗を減らして装置長寿命化、信頼性の向上を実現することができるスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。
【0066】
また、バランスウェイト16の外周部16aに設けた凹部16bの開口部16cを流れる潤滑油は、潤滑油吸入口21から供給された潤滑油であることにより、潤滑油吸入口21から供給された潤滑油でスラスト軸受部品同士の接触を抑制し、摩耗を減らして装置長寿命化、信頼性の向上を実現することができるスクロール圧縮機20を提供することが可能となる。